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初めてのデート

181PON:2011/01/11(火) 01:38:29 ID:zJ3qrQkU
美里と達也は、ノートの切れ端に書いた言葉を交換した。
互いに言葉を交わさずにこうしたのは、やはり怪盗レオンがどこで聞き耳を立てているか分からないからだ。いくら、いつもの賑やかさではないにしても、それでも女子学生の出入りは少なくない。その出入りの数だけ、怪盗の変装と疑わなければならないのだ。

『今回は、案外シンプルなんですね』
美里が受け取った紙には“Autumn”と書いてある。美里が好きな季節が秋だということを真に受けてと思われるが、裏には妹の亜樹の名前にも掛かっている。
そんな格好付けたものは美里に響かないことは既に証明済みだが、達也にはどうしても譲れないようだ。
一方、達也が受け取った紙には“学食”とあった。
それほど浮かれたようには見えないが、美里はこの場所がとても気に入ったようで、達也は思わずプッと声を漏らした。
『あっ!今、笑ったでしょう?』
『だって、あまりに面白くて・・・』
『別に、良いじゃないですか。ジャンルに縛られないように決めたんですからぁ・・・』
思うままに書いた言葉を笑われてしまい、美里は恥ずかしそうに俯く。そんな美里の仕草が、またも達也の嬉しい気持ちをくすぐった。
『そ、そんなことより、早く怪盗の被害者って学生を捜しましょうよ!』
『ちょっと、美里さん!声が大きいって・・・』
『あ・・・ごめんなさい』
すっかり達也のペースに巻き込まれ、美里は怪盗のことを口にしてしまった。周りの学生達は、こちらのことを気にしたようだが、さすがにこの言葉だけで怪盗レオンが学内で暗躍しているとまでは悟られなかった。
『こっちこそ、ごめんね。美里さんが可愛くて、つい調子に乗っちゃった・・・』
可愛いという言葉に反応し、美里の顔がカーッと赤くなった。
『もぉっ、これ以上からかうのはやめてくださいよぉ・・・』
『からかう、ねぇ・・・そういうつもりは全然ないんだけど。まぁ、いいや。わかったよ♪』
そう話す達也の仕草は、男性のものというよりも女性的に見えた。やはり、葛原明日香という外見がそうさせるのだろう。
『ねぇ、達也さん。今ので目立っちゃいましたし、場所を変えませんか?』
『そうだね。静かな場所の方が、作戦も練りやすいか・・・なら、自習室が便利だな』
『自習室・・・ですか?』
その響きに馴染みが無いのか、美里にはいまいちピンと来ていなかった。
『大学には、勉強部屋みたいな物もあるんだよ。防音設備のある部屋もあるし、今日みたいな日なら空いてるんじゃないかな』
確かに閉鎖された室内ならば、秘密の相談をするのには打ってつけの場所である。
『へぇー、そういった施設もあるんですね。・・・それならば、最初からそこで合言葉を決めれば良かったわ・・・』
『はははは・・・それはもう気にしない、気にしない!また、そこで考え直すこともできるし』
拗ねる表情を見せる美里に、達也はタイミングを間違えたと少しだけ後悔するのだった。

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