したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

RPGキャラバトルロワイアル11

664第六回放送 ◆6XQgLQ9rNg:2013/02/25(月) 00:10:13 ID:l3C8pPeQ0
 ◆◆
 
「――時間だ」

 天高く昇る陽光が照らす世界を侵略するような声音が、空気を振動させる。

「諸君はよく闘った。されど、未だ闘いが終焉に辿り着いてなどいないことは、諸君こそがよく知っていよう。
 耳を傾けよ。心に刻みつけよ」

 酷く落ち着いているというのに、その声音は、揺れる空気は草木をざわめかせ水面に波紋を投げかけ痛んだ大地に皹を入れる。

「13:00よりB-06、C-06。
 15:00よりA-06、A-07。
 17:00よりB-07、C-07。
 禁止エリアは以上となる。今更潰えるなど望むところではなかろう。しかと記憶しておけ」

 底知れぬ憎悪に満ち満ちた声に、世界中が震え怯えているようだった。 

「ニノ。
 魔王。
 ジャファル。
 ヘクトル。
 ちょこ。
 ゴゴ。
 セッツァー・ギャッビアーニ。
 ――以上、七名が此度の敗者だ」
 
 敗れし者たちの名が告げられた瞬間、島の奥深くがどくりと脈打つ。
 蠕動にも似た鼓動は、その音韻たちをも嚥下するかのようだった。
 
「敗れた者たちは何も語らない。“想い”を抱くことすら許されない。
 潰えた“想い”はすべからく蹂躙される。他ならぬ勝者たちによって、だ。
 そうして栄えた世は数知れぬ。そうして骸となった者たちは数になどし切れまい。
 奪いし者として生を謳歌する気分は如何ほどであろうか。
 いずれの世でも勝者であった者も、かつての世で敗者であった者も。
 今この瞬間に我が声を耳にしている者は皆、勝者と名乗る強奪者どもなのだ」
 
 声に乗る色を吸い上げて、果てなる底で何かが蠢動する。 
 未熟で不完全で未完成で弱々しいながらも、その蠢きは微かに地表を震わせる。

「強奪者どもよ。
 屍の頂点で命の尊さを謳う滑稽さを自覚せよ。
 なれの果てとなった“想い”を足蹴にして、自身の“想い”を主張するがいい。
 愛も勇気も欲望も希望も――そして、理想も。
 諸君の足元に、確かに積み重なっているのだ。
 そうやって積み上げた屍と“想い”の先へ至るがいい」

 風が、逆巻いた。
 それは力強い西風ではなく、心をざわつかせるような荒い突風だった。

「その場所こそが我の――魔王の居城。諸君が目指すべき終着点は、すぐそこだ」

665第六回放送 ◆6XQgLQ9rNg:2013/02/25(月) 00:11:31 ID:l3C8pPeQ0
 ◆◆
 
 感応石の明滅が収束する。
 一片の光もないその広間には、果てもなく底もない憎悪の闇だけが溢れ返っている。
 その中心で、オディオはそっと目を閉じる。
 瞼の裏にあるのもまた、深い深い暗闇でしかない。
 それだけしか、見えはしない。
 しかしながら。
 見えはしないからといって、暗闇以外のものが存在しないというわけでは、決してない。
 漆黒と暗黒とを世界中から集束させより集め固め切ったような闇の向こうに、見えなくとも存在するものがある。
 それは決して消えない始まりの記憶。輝かしくも痛みを伴う想い出のかたまり。
 オディオの意識が介在しない深奥で、それは、わだかまり沈殿し滞り、燻っている。 
 人知れず、燻り続けているのであった。


※オディオの居城は墜落したロマリア空中城@アークザラッド2をオディオの力により改修したものです。
 現状では、遺跡ダンジョン地下71階にある感応石と連動する巨大感応石を搭載していることや、
 最深部のガイデルのいた場所がOPENINGでの玉座の間に改修されていることが確定しています。
 他にも、幾つかの変更点、追加点があるかもしれません。お任せします。
 現在は、C-7上空に待機しています。
 オディオの空間操作能力で、触れることも触ることも不可能ですが、メイメイさんの店のように強力に隔離されているわけではありません。

※カエルが察知した存在は、クロノ達に敗れたプチラヴォス達を進化・融合させて生み出された新たなるラヴォス“死を喰らうもの”でした。
 本文中にて、クロノ達が戦った個体よりかは劣ると記述しましたが、それは誕生時点でのことです。
 強者達の戦いの記憶と遺伝子を収集し、敗者達の憎悪をはじめとした負の感情を吸収した今、かなりの力を持つと思われます。
 姿形能力など、細かい点を含め、後々の書き手の方々にお任せします。
 ただし、“死を喰らうもの”は“時を喰らうもの”@クロノ・クロスとは別個体であり、
 オディオが自らやこの殺し合いに関係しない思念が混ざることを望まなかったころもあり、時間と次元を超越する能力は備えておりません。

※メイメイさん@サモンナイト3はあくまでも、傍観者としてオディオは召喚しました。
 オディオは彼女を自身の戦力としては絶対に扱いません。

666 ◆6XQgLQ9rNg:2013/02/25(月) 00:12:38 ID:l3C8pPeQ0
以上、投下終了となります。

ご意見ご指摘ご感想等、何かありましたらおっしゃってくださいませ。

667SAVEDATA No.774:2013/02/25(月) 09:18:25 ID:D1/qdlSI0
執筆と投下、お疲れ様です。
読みに徹することを選んでいる以上、禁止エリア関連のお話には応えることが
出来なかったのですが、せめて楽しんで読ませていただきました。

しかしまぁ、オディオはこじらせていくばかりだなぁ……。
絶望を紛らわせるキツめの酒が殺し合いだろうってジョウイの推論もあったけれど、
このぶんだと憎しみも酒のようなものになっていそうで胸に痛い。
よく選ばれた語彙が読む側を耽溺させるのだけど、だからこそオディオがこの酒に
楽しく酔うことは出来ないだろうな、と、より強く感じることが出来る。
ここでオディオの始まりも省みられたのだけど、良い意味でオルステッドだとしか思えない。
単品でも十二分に楽しめましたし、これが後々にどう効いてくるかも楽しみです。

668SAVEDATA No.774:2013/02/25(月) 20:48:19 ID:HhEI8AZw0
執筆投下お疲れ様です
状況や心理がしっかり描かれながらも詩的になりすぎず、
雰囲気と読みやすさのバランスが良かったと思います
玉座の情景が浮かんできました

そして、序盤から一貫している憎しみに塗りつぶされた様子だけでなく、
徐々に明らかになりつつある覆い隠された内面が滲んでくるようでした
なんのかんの言ってやっぱり過去を引きずっているあたりに
すごくオルステッドらしさを感じました
参加者たちの声はオルステッドに届くのか、対オディオの展開が気になります

669SAVEDATA No.774:2013/02/26(火) 04:28:29 ID:J3P5Fkh20
お疲れ様でしたー!
やっぱりそこには反応するよなー、オディオ>愛、希望、勇気、欲望
かつてはそれらを全て持っていた勇者オルステッド
その始まりを自ら省みても恨むしかないこいつはジョウイでさえも背負えるのか
オディオ自身は背負えまいと踏んでいるけどはてさて
以前にゴゴ視点でも書かれたけどオディオの見る世界の掘り下げというのもどんどんなされてきてなんか感慨深い

670SAVEDATA No.774:2013/03/05(火) 11:03:40 ID:ojrPod0M0
さて、WIKIにも収録されたし、一週間以上経ったし、これはそろそろ予約皆勤の話とかに移るべきなのではないかな

671SAVEDATA No.774:2013/03/05(火) 11:04:10 ID:ojrPod0M0
×皆勤 ○解禁

672SAVEDATA No.774:2013/03/05(火) 14:42:55 ID:rBr2avaU0
一応、予約は3/2の時点で◆wq氏のが入ってますね。
解禁についての話はとくには無かったですが、自分は話がなくても大丈夫だと思ってました。
Wiki収録から二日程度経過してれば、普段は離れているという方も気づくでしょうから。
ただ、小回りがきく人数で回ってる以上、スレの動きはどうしても少なくなるわけで。
せめて投下に対する感想で「解禁いつにします?」くらいは言うべきでしたね……申し訳ない。

というわけで、後手後手に回ってますが、自分は今の予約は問題なしです。
ただ、それも予約分が楽しみな側の意見なんで、もしも何かあるなら書き手さんがトリ出して
議論スレかなと。人数が少ないと議論も成立しがたくなるので、そのときは進行役なり引き受けます。

673SAVEDATA No.774:2013/03/05(火) 20:17:06 ID:InItjcbE0
もう予約が入っていますし、前後してしまいますが予約解禁ということでよいかと。
放送投下直後に予約が入ったのならば議論すべきかと思いますが、
投下されてそれなりの日数が経過していますので問題ないかと思います。
もっと早く予約解禁の話を持ち出せていればよかったですね、申し訳ないです。

というわけで、個人的にはこのまま◆wqJoVoH16Y氏の投下をお待ちしたく思います。

674670:2013/03/06(水) 11:03:19 ID:U8gD3dfA0
>>672
指摘ありがとうございます。
放送後に予約解禁の話もなく、予約時に本スレでの反応もなかったため、気づきませんでした。
予約解禁の話がなかったばかりに予約していいのか分からず、出遅れたという書き手の方がいない限りは通してよろしいかと。

675<ワタナベ>:<ワタナベ>
<ワタナベ>

676SAVEDATA No.774:2013/03/15(金) 15:55:37 ID:tluQtX5g0
月報集計お疲れ様です。
RPG 150話(+ 1)  7/54 (- 0)  13.0(- 0)

677SAVEDATA No.774:2013/04/01(月) 23:57:07 ID:zbr.hMG20
ブーー……ブー……(エイプリルフールにドキッとしたw 心臓に悪いネタとしたらばの配色だw)

678SAVEDATA No.774:2013/04/02(火) 07:21:01 ID:0OBtZV/o0
ブー ブー
今年中に完結しますようにブー

679世界最寂の開戦 1 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:23:22 ID:RwfT774k0
波打たぬ響きが止み、静寂が訪れる。
都合六度ともなる放送だが、その威は何ら衰えることはない。
むしろ告げられ名が一つ増えるたび、音に乗るその感情は火にかけた鍋が煮詰まるように純粋に、強大になっていく。

【にくい】

水気のない砂や枯れた草は微風に巻き上がり、不規則に散乱した石や岩の破片は天頂に昇った太陽に煌々と灼かれている。
置換も代替も出来ぬ奔流の通り過ぎた先には、やはり死せる沈黙が広がっていた。

「……つー訳だ。あいつらは、死んだよ。俺が起きた時には、もう」

その沈黙を揺らすように、アキラがぼそりと呟く。
崩れた石礫の中に交じる、明らかに人工物めいた調度の石細工の破片。
その一つに背を預けて座り、アキラは大きく息をついた。
再び、沈黙が大気に淀んでいく。立ち尽くす者も、アキラと似たような岩に背を預けている者も、
震えと共に五指を握りしめるか、顎に汗を伝らせながら喉を鳴らすか、
それに準ずる動作をするばかりで、言葉を発する者はいない。
天頂の陽光は白く、熱い。

「……で、そろそろ教えてくれねえか。なんでそいつらここにいる」

嘆息の後、沈黙を破ったアキラの声が、ここにいる5人のうち、3人の身体を残る2人――ピサロとカエルに向けさせる。
2人はアキラへと身体を向けたまま不動をつらぬく。
「黙ってねえで、なんとか言えよ。何があったかは知らねえがこっちは――う”、ぬぃ……」
起き上がろうとしたアキラの体が、尻が地面から浮くか浮かないかというあたりで再び沈む。
腿の銃創や後頭部の瘡蓋など、あちらこちらの傷が陽光に劣らない熱を放っていた。
「ヒールタッチじゃ、限界かよ……」
「お、おい! 大丈夫か――」
ストレイボウがアキラに駆け寄ろうとするのを阻むように、カエルが一歩前に出る。
それとほぼ同時に、ピサロもまたアキラへと近づいた。
イスラとアナスタシアは座ったまま、微動だにしない。
「ケアルガ」「ベホマ」
ストレイボウが合間に入ろうとするよりも速く、2人がアキラの傷に掌を重ねると、二つの魔力光がアキラを包む。
柔い光、最上級の回復魔法の中で、アキラの傷から熱が霧散していき、そして傷そのものも幾分かに減じていく。

「お前ら……いや……そういうことかよ……糞……」

680世界最寂の開戦 2 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:24:02 ID:RwfT774k0
敵意をひとまず散らしたアキラがそう吐き捨てると光は収まり、死闘に傷んだアキラも半ば回復した。
それに代わりピサロとカエルの上体が崩れ、地面に手を付く。
「おい、無理をするなカエル! あれだけの召喚をした後にそんな――」
「構うな。自分にかけても意味もないのだ。ならばこれでいい」
肩をストレイボウに支えられて喘鳴するカエルの表情は覆面に隠れて判然としない。
「……便利だね。回復手段がある奴は、ご機嫌取りが楽で」

鼻を鳴らす先には、地面に腰掛けるイスラ。薄い悪意の籠る冗談を飛ばしながら、イスラは横目にアナスタシアを見た。
地面に突き立てたアガートラームを背もたれにして書をめくる聖女は、何の反応も見せない。
「……とりあえず、アンタらが認めたんだ。お前らがここにいることにとやかくは言わねえ。で、こっからどうする?」

アキラの問いに再び沈黙が流れる。だが先ほどまでと異なり、沈黙が破られるのに時間はかからなかった。
「5時間後には禁止エリアで埋まっちまう。なんとかしねえと全滅だ」
「全滅ではあるまい。名が呼ばれていなかった以上、あの小僧、恐らく首輪を外しているぞ」
ピサロの指摘に、膝を抱えたイスラの爪が肉に食い込んだ。
「ジョウイ=ブライト。紅の暴君を奪い……否、変生させて逃げた男、か」
「ってことはなにか? ジョウイが生きてるの分かっててオディオは俺たちを殺しに来たってことか?
 手でも組んだってのか? いくらなんでも、ぞっとしねえぞ」
「――違う。アイツは言った。愛も勇気も欲望も希望も――そして、理想も、と。
 誰も彼もを憎むアイツは、誰とも組まない。裏切られることの意味を、知ってるから」
そう言ってストレイボウは太陽を仰ぎ見た。陽の光に灼かれたまま、空を睨み付ける。
「……ジョウイとオディオは繋がっていない、としてだ。じゃあジョウイとオディオは敵対してるのか?」
「どうだろうな。だが、仮に奴がオディオの敵だとしても、
 お前たちの味方だとするなら、あのような大立ち回りをする理由もないだろうが」
地面の石と砂を掴んで弄びながら問うが、南の森に向いたピサロはにべもなく吐き捨てる。
「その思惑がなんにせよ、小僧をこのまま放置する訳にもいくまい。
 奴が、遺跡を――否、“その下に眠る力”を掌握しようものならば、な」
「……ジョウイ……ジョウイ=ブライト……ッ!」
「それに、オディオも放っておけねえ。俺たちを潰しにかかってるんなら、もう受け身に回ってる時間はねえよ」
頭巾の緩みを絞りながら応ずるカエルの言に、イスラの拳が血を流すほど固く引き絞られる。

「あの小僧、そしてオディオの打倒。まあ、方針はそれしかあるまいな。
 とはいえ、小僧のいるであろう遺跡に行くにせよ、オディオの居場所を探すにせよ、
 禁止エリアから出ねば話になるまい。となれば、首輪を外さねばならんが」
「…………」
「外せるだろう人はね……マリアベルは、死んだんだ。今更、誰のせいだなんて、言う気もないけどね」
「――ああ……俺が、殺した。言い訳の余地など微塵もない……ッ!」
「うだうだ今更言っても仕方ねえだろ。何とか外して、俺たちはあいつ等をぶちのめすしかねえんだ」

ピサロが纏め、アナスタシアが沈黙し、イスラが指摘し、カエルが認め、アキラが確かにする。
五者はそれぞれが別の方向を向いて動きを止める。
風が大地の砂を撫でて、再び静寂が訪れる。高き場所の雲だけが微速で動いていた。
乾いた凪の荒野には、無だけが広がっている。


「違う。それじゃ、きっとダメだ」

681世界最寂の開戦 3 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:24:45 ID:RwfT774k0
その荒野に、湿り気が混じった。
くたびれ、擦り切れたローブの裾で砂を切りながら、ストレイボウは一歩踏み出す。
「……どういう意味だ、魔術師。首輪を外す妙手でもあるということか?」
「それとも、ジョウイやオディオと戦いたくないってこと?」
ピサロが、イスラが、ストレイボウの言葉に疑問を返す。
「あ、いや……そういう意味じゃ、ないんだ……その、なんていうか……」
だが、とたんに音は縮れて掠れ、喘鳴のように醜くなっていく。
前に突きだした手は虚空を泳ぎ、汗ばんだ指を踊らせる。
「おい、いったい……」
立ち上がろうとしたアキラをカエルの腕が制する。
しばし浮かせた腰を、アキラは再び落とした。
「落ち着け。伝えようと思うのならば、伝わる」
カエルの言葉の後、数分。
喘鳴は少しずつ収まり、最後の深呼吸と共に消えた後、ストレイボウは再び言葉を紡いだ。
「ピサロにはまだだったし、カエルも直接は言っていなかったな。
 丁度いいから、もう一度聞いてくれ。あの時の、ルクレチアの話だ」
今一度語られるのは、ルクレチアの英雄伝説。
オルステッドとストレイボウの、永遠に忘れられないであろう物語。
数人にとってはもう既に聞き終えた話であったが、合いの手を挟むものは誰もいなかった。
「……」「そうか……貴様が、な」
カエルは無言で、ピサロは腕を組み一言だけ漏らす。
だが、それ以上の動作は今のところなかった。
「で、もう一度聞かされて、だからどうだっていうのさ」
「あの時、魔王山で隠された抜け道を見つけたとき、俺の中で全部が爆発した。
今ならオルステッドを出し抜ける。このチャンスを逃せば、俺は一生オルステッドの引き立て役だ。
誰も気づいていない今なら。これは俺に与えられた正当な権利なんだと。
アリシアを隣に侍らせ、オルステッドの上に立つ唯一無二の機会だと」
ストレイボウは震える両手で顔を覆い、眼窩に指を食い込ませる。
だが、言葉だけは止めなかった。
「後は、前に言ったとおりだ。悦楽が更なる喜悦を呼び“行くところまで行き着いた”。
 その先に何があるのかなんて考えもせず、俺は俺の感情を止めることができなかった」
そこでストレイボウは言葉を区切り、もう一度深呼吸する。
肺を限界まで膨らませ、すべてを排する。

「――――だから、もうあんなのは嫌だ。
 今しかないとか、こうしなきゃいけないとか、自分に縛られて、何もかもを見失うのは、嫌なんだ」

その有らん限りの、『後悔』と『決意』を。

682世界最寂の開戦 4 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:25:42 ID:RwfT774k0
「俺はあの時まで、オルステッドに対するの感情を認めることができなかった。
 そんなときに、チャンスを与えられたら、もう止まれなかった。
 それしか見えなくなった。それしか考えられなくなった」
両の手をゆっくりと顔から離しながらストレイボウは“省みる”。
己の行いを、己が悪いと断じ、そこで止めてしまった思考を再起動する。
「今もし、首輪を外すことができる手段が落ちてきて、
 オディオのいる場所への階段でもいきなり現れたら、俺たちはきっとそこに飛びつく。
 きっと信じられない位の勢いで突き進むだろう。あの時の俺のように、終わりまで一直線だ」
目的に対し、降って沸く解法。たどり着くべき結末へと遡るだけの作業。
今しかないと、これが天命なのだと思いこみ、走り抜ける。否、流される。
それがストレイボウの、罪人の歩んだ道の全てだ。

「だったら結局どうしろって言うんだよ!」
そこまで誰もがストレイボウの言葉を聞くばかりだった中で、ついに叫びが生ずる。
髪を掻き揚げながら立ち上がったイスラが、堰を切ったように喚く。
「首輪を外すな、ジョウイを倒すな、オディオを倒すなってことか?
 あんたの言ってることは全部観念ばっかで、何一つ具体的じゃない!!
 人生の反省会をしたいなら一人でやってろよ!!」
己の中で沸き立つ怒りに似た感情のまま、イスラはストレイボウに噛みつく。
だが、その瞳には戦いの後に絶えて久しい輝きが僅かに見えていた。

「ああ、もちろん、そういう意味じゃない。
 具体的な案ももちろん、無い。俺が言いたいのは最初から一つだけだ」
その視線を受けとめてから、ストレイボウは口内で言葉を選びながら返す。
ストレイボウが歩んだ道と彼らのこれから進む道は全く違う。
ただ、一つだけストレイボウが言えるとすれば。
道が違えど、歩き方が変わらないのであれば、
結末ががオルステッドの救いであれ、オルステッドの死であれ、
彼らの死であれ、彼らの生であれ――そこにある結果を受け入れるしかないということだ。

「イスラ、アナスタシア、アキラ、ピサロ、カエル。
 俺は、おまえ達に、俺のようになって欲しくない。“したいようにあってほしい”。それだけなんだ」

全員を見渡しながら、ストレイボウは願う。
機会を得て、感情に従って突き進んだだけでは、掴めないものがある。
場の状況に、己の感情に流され続け、あの結末を後悔し続けてきたストレイボウだからこそ言い切れる祈り。
それは、その場の誰もの心臓を穿った。

683世界最寂の開戦 5 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:26:23 ID:RwfT774k0
「首輪の解除法も、ジョウイ=ブライトの目的も、オディオの真意も分からない。
 この状況下で“足を止めろ”というのか、お前は」

カエルが呆れたような調子でストレイボウを揶揄する。
だが、覆面に覆われたその表情は、心なし笑っているように見えた。
そして背を向け十数歩ほど歩き、手頃な岩影に寝転がる。
「……何やってんだよ」
「正直、立っているのも億劫だったのでな。休めるうちに休むのは兵の常道だ」
イスラの問いに、何を当たり前という調子でカエルは応じた。
完全に弛緩したその体躯からは、戦闘への意識は微塵もない。
「おい、ンな悠長なことでいいのかよ……5時間後には禁止エリアで埋まっちまうってのに」
「逆を返せば、5時間はあるということだ。本気で潰そうと思えば、3時間あれば潰せるところを、な」
奇異と首を傾げるアキラの横を通り、ピサロは彼らから少し離れたところで、膝ほどの高さの石に腰掛ける。
カエルほどではないが、やはりその緊張は緩和されている。
ストレイボウを信頼したというよりは、
こいつらの行く末を案じて自分一人気を張るのも馬鹿らしいという調子だった。

「……アホくせ。おいイスラ、どうする?」
「どうするも、こうするも……ジョウイがいつ襲ってくるか分からないってのに、なんでこうも悠長にしてるんだか」

一番外様で肩身の狭いはずの2人が率先して休憩に入るこの状況に、
アキラもイスラも苦い顔をするしかなかった。
だが、途端に肩に重たいものを感じる。
緊張の糸が切れた途端、栓が外れたかのように、体中から泥のような疲労が表出する。
思えば、あの夜雨から半日近く戦いっぱなしだったのだ。
大なり小なりの休憩があったとは言え、マーダーへの対処や拘束したユーリル・アナスタシアへの警戒、
今後の対策などするべきことは山ほどあり、何のしがらみもない休憩など、最後はいつだったかも思い出せないほどだった。
だが、ここで意識を途切れさせては不味い。ここをジョウイに突かれたならば、為す術なく敗北するだろう。
それに対して答えたのは、ストレイボウだった。
「……なんとなくだがな、しばらくは来ない気がするんだ。今、来なかったから」
「どういう意味だ?」
「奇襲するなら、このタイミングを逃がす訳がないということだ。俺たちがそうであったように」
アキラの疑問に、ストレイボウの代わりに答えたのはカエルだった。
紅蓮やセッツァー、ピサロ、ゴーストロードとの死闘を重ね自分達は疲労している。
対して、ジョウイはその死闘から巧く自分を逃がしている。
ならば疲労に塗れた彼らがオディオの放送を仰ぎ聞く瞬間こそ、ジョウイにとって絶好の奇襲点であったはずだ。
あの機を逃さず魔剣とオディオを奪ったジョウイが、そのタイミングを見誤るはずもない。
だからこそ、ピサロもカエルもそれを警戒していたのだ。
だが、ジョウイは来なかった。
それはカエル・魔王が既に奇襲を仕掛けて警戒されたと判断したからか、奇襲するだけの余力がないからかは分からない。
「カードを切り損ねる奴ではない、ということだ。セッツァーの言葉でいうならば、な」
はっきりと分かるのは、ジョウイは奇襲というカードを捨てたということ。
今、切らなかったからだ。

「……ま、いいや。どうせ、今の俺たちからあいつを捜すのは無理なんだしな」

684世界最寂の開戦 6 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:27:01 ID:RwfT774k0
その言葉に納得したのか、アキラも腰を落ち着ける。
一人、また一人と弛緩していく中で、イスラの眉間の皺が限界まで潰れた。
「どいつもこいつも、何でそんな暢気なんだよ……これじゃ僕が――」
「――――まったくもって、馬鹿馬鹿しいわね」

誰一人として理解者もいないと絶望しかかったイスラに、こともあろうか聖女の手がさしのべられた。
イスラは疑うような視線でアナスタシアを見つめる。
これまで一言も喋らず、黙して本を読んでいたはずのアナスタシアの言葉に、
身体を休めた3人も、ストレイボウも、注目を集める。
「お題目は立派だけど、現実問題として首輪を解除しなきゃどうしようもな無いわよね?」
書から視線を外すことなく、独り言のように吐き捨てられる言葉は、これまでのやりとりを台無しにするものだった。

「時間をかけて、心の整理をつけて、いろいろな納得したけど手がかりはありませんので死にましたとか……何それ」
そういってアナスタシアは、スケベ本の中の袋とじが期待はずれだったような顔を浮かべる。
「私は厭よ、そんなの。死<納得>なんて、絶対にしない。
 私は生きる。生きて生きて、したいことをするのよ。どんな死だろうと私は受け入れない。
 激流の中で藁が一本でもあったら迷わずつかむ。
 誰が置いたかなんて考えない。死んだらそれすら出来ないんだから」
アナスタシアの言葉に、誰もが厭そうな顔を浮かべた。
それは彼らに水を差したからだけではなく、彼女の言葉もまた一つの真実であったからだ。
ストレイボウの後悔も、アナスタシアの後悔も、どちらも真実であり、故に譲る余地がない。
アナスタシアが本からストレイボウへ視線を移す。互いの視線に火花が見えた。
「貴方たちに、この状況を何とかする気が無いのはよく分かったわ。なら勝手にしなさい。私も勝手にするから」
互いに譲れない価値観。ならば、その結果は至極当然で、アナスタシアはため息を一つついて、その本を閉じた。

「―――――――勝手に、首輪を外させて貰うから」

だが、そこで放たれた言葉は、全く以て彼らの想像を超えていた。
「「「ちょっと待てぇッッ!!」」」
「「…………は?」」
アナスタシア以外の誰もが頓狂な声を上げる。
アナスタシアと共にあった3人は当然、声を上げ、
彼女をよく知らない2人も、彼らの会話から首輪解除の手段が根絶しているものだと思っていたからこそ、そう漏らすしかなかった。

685世界最寂の開戦 7 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:27:59 ID:RwfT774k0
「〜〜〜うるさいわね。何よいきなり大声だして」
「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお前」
「く、くく、くくくくくくくくくくくくくくくくくくく
 くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくく
 くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくく首輪を」
「はは、ははははははははははははははははははははは
 はははははははははははははははははははははははは
 はははははははははははははははは外せるのかッ!?」

ストレイボウたち3人はアナスタシアに詰め寄り、
古代文明を目の当たりにしカルチャーショックを受けた現代人のように舌をもつれさせながらかろうじてそう問いかけた。
彼らにしてみればアナスタシアは、ことあるごとにネガティブな発言をして何もせず引きこもっているか、
脳に重篤な危機を持った発言をして聖剣片手に阿修羅のように暴れるだけのボンクラでしかなかったのだ。
それが今になって首輪の解除出来ますと言っても、にわかには信じがたい。

「いきなり何よ眼を血走らせて……はっ! ま、真逆私に乱暴する心算じゃないでしょうね、
 スケベ本みたいに、スケベ本みたいにッ!!」
「そういうことを言うから信用できないんだよお前はッ!!」

自分の身体を庇うように抱きしめるアナスタシアに、イスラは心の底から怒り叫んだ。
一笑に付そうにも、無視するには余りに大きすぎる事実だった。
「で、出来るのかアナスタシア。本当に?」
「…………実は私、聖女やる前は首輪屋さんで働いてたの。首輪解除の免許あるのよ」
「首輪屋ってなンだよッ!! ンなピンポイントな免許ねーよ!!」
「というか、確か下級貴族と聞いたぞマリアベルから!」
「え、首輪解除って貴族の嗜みじゃないの?
 私、+ドライバーと−ドライバーより重たいもの持ったことがございませんの」
「どんな貴族だよ! そんな技術大国があったら逆に見てみたいよ!」

686SAVEDATA No.774:2013/04/29(月) 01:28:28 ID:x86Jhbq60
ぶっとびすぎだろwwwwww

687世界最寂の開戦 8 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:28:34 ID:RwfT774k0
不毛すぎるやりとりがしばし続く。アナスタシアは出来ると一点張りだが、
そう信頼するだけの材料が無いため、妄言の応酬にならざるを得なかったのだ。
「とにかく外せるんですー! トカゲ如きに外せるものが私に外せないわけないんですー!!」
「ぐ、確かにアシュレーはトカゲが外したって言ってたしな……!」
口を尖らせて拗ねるアナスタシアに、アキラがついに折れる。
アシュレーが真面目にそう言い、マリアベルもそれを納得していた。
アイシャも凄まじい技術で作られていたことを考えれば、
ファルガイアはトカゲでも技術に優れた、生命体レベルで技術溢れる科学世界なのかもしれない。
「か、仮にそうだとして、じゃあ何で今まで言わなかったんだ!?
 聞かれてなかったからとかは無しでだ!!」
「親御さんに教えて貰わなかったかしらァ!? 最後の最後まで切り札は取っておくものよ、坊や」
呼吸を落ち着けながら問うイスラに、アナスタシアは嘲るように応ずる。
「今! この場でッ!! 首輪に対し処方できるのはッ!!
 天上天下に我、アナスタシア=ルン=ヴァレリア唯独りッ!!
 その事実を理解する脳味噌があるのならば、頭を垂れて尊ぶがよろしくってよッ!!」
立ち上がり、手頃な岩に登って見下ろすようにアナスタシアは5人を睥睨する。
頭を垂れるかどうかはさておき、その意味を理解できないものはいない。
今、彼ら6人の生殺与奪を決めるのは、アナスタシアの細腕一本なのだということを。

「……やっぱり僕は、お前が大嫌いだアナスタシア……!」
「最高の評価をありがとう。美少年が悔しそうに見上げるだけでご飯が食べたくなるわね」

ふわりと岩から飛び降り、アナスタシアはイスラの横を通り過ぎた。
そのまま、手頃に置かれたデイバックをつかみ、東に歩く。
「という訳で、私は大変お腹が空いております。手持ちのデイバック全部よこしなさい。
 散逸したものもすべて。道具も武器も、身ぐるみ総て余すことなく。
 血が足りない。私は渇えたり、私は餓えたり。
 私を満たしてくれるならば、褒美に貴方たちの首輪も外してあげましょう」
誰もに、誰もに伝わるように、汚れた聖女は神託を告げる。
「ま、ただの実験台って意味だけどね。
 間違えないで。今貴方たちに必要なのは、私の貴方たちに対する好感度よ。
 そうね……ご飯食べてお腹休めて……3時間ってところかしら。バッドエンドに行かないよう、せいぜい励みなさい」

688世界最寂の開戦 9 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:29:22 ID:RwfT774k0
哄笑しながら、アナスタシアは彼らの元を離れようとする。
そして最後にストレイボウの横を通り過ぎようとした。
「どういうつもりだ、アナスタシ……ッ!」
問いただそうと肩を掴もうとしたストレイボウの手が止まる。
肩に触れようとした指の腹が、その痩身が震えきっているのを感じたのだ。
「――――肩を治して、血を足して、勘と指の駆動を取り戻して、空いた首輪で練習して……
 時間はいくらあっても足りないけど、何とか、3時間でもっていく」
ストレイボウにしか聞こえない音量で、アナスタシアが喋る。
喉から震えているのが、音にまで反映されていた。
「ほんと、貴方があんなこと言わなきゃ、こんなことするつもりなかったのに。まあ、休みながら私も考えてみるわ」
目線を会わせることなく、疎ましそうに聖女は魔術師に文句を垂れる。
そして、ストレイボウが何かを言うよりも早く、アナスタシアはその書物をストレイボウに渡した。
「やってやる。やってやるわよ。ブランクなんか知ったことか。
 信じてくれたんだもの、ここでやらなきゃ、私が廃る」
誓いを刻みつけるように呟きながら、アナスタシアはその場を離れた。

誰もが思い思いに散る中で、ストレイボウはふいに空を見上げた。
(悪いな、オルステッド。もう少しだけ待っていてくれないか)
放送を聞いて、確信したことが一つ。オディオは待っている。今か今かと、自分の元へ来いと待ち焦がれている。
手を伸ばせば届きそうな空を見て、終着点が近いと確信する。
「お前のことだ。俺たちがもしも逃げても、見逃してくれるんだろう」
逃げたのならば、彼の友はその背中を永遠に笑い続けるだろう。
ここまで来て逃げ出した愚者よ、癒えぬ傷を抱えて惨めに這い蹲っていろと。
「俺たちがお前と戦っても、勝っても負けても、まあそれなりに慰めにはなるだろうさ」
屍の上にオルステッドが立つか、彼らが立つか。違いはその程度だ。
どう転んでも、オルステッドの――オディオの掌からは逃れられないのだろう。

「今度はちゃんと考えてから決める。
 俺たちのしたいことを、俺の意志で、彼らの願いで、本気で考えてから」

ならば、せめて今度こそは、納得のいく答えを出そう。
あんな不意打ちの再会ではなく、全てを約束した上で。

「お互い気の遠くなるほど待ったんだ。後少し、待っていてくれよ、オルステッド」

天に掲げた手を握る。掴んだ空は、どこまでも蒼く突き抜けていた。

689世界最寂の開戦 10 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:29:58 ID:RwfT774k0
【C-7とD-7の境界(C-7側) 二日目 日中】

【カエル@クロノ・トリガー】
[状態]:瀕死:最大HP90%消失 精神ダメージ:中 覆面 右手欠損 左腕に『覚悟の証』の刺傷
    疲労:大 胸に小穴 勇気:真
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:俺がしたいこと、か……
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:クロノ復活直後(グランドリオン未解放)


【イスラ=レヴィノス@サモンナイト3】
[状態]:ダメージ:大、疲労:大 
[スキル]:心眼 勇猛果敢 フォース・プリズナー№666(Lv1〜4)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:僕が、今更……したいことだって……?
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている)

【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:ダメージ:中、疲労:大、心労:大 勇気:大
[スキル] ルッカの知識(ファイア、ファイガ、フレア、プロテクト)*完全復元は至難
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:決めよう。今度こそ、本当の意志で―― 
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:最終編
※アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません)

690世界最寂の開戦 11 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:30:48 ID:RwfT774k0
【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:ダメージ:中、疲労:極、精神力消費:極
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:俺がしたいこと? そんなもん――
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※松のメッセージ未受信です。

【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:首輪解除作業中 ダメージ:中 胸部に裂傷 重度失血 左肩に銃創 精神疲労:大
[スキル]:せいけんルシエド 
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:私がしたいこと、かぁ……
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:ED後


【ピサロ@ドラゴンクエストIV】
[状態]:クラス『ピュアピサロ』 ダメージ:大 ニノへの感謝 ロザリーへの純愛 精神疲労:大
[スキル]:魔封剣、デュアルショット、アルテマバスター*いずれも要バヨネット装備 ミーディアム:ラフティーナ
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:問うまでもないと思ったが……さて……
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:5章最終決戦直後

691世界最寂の開戦 12 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:31:31 ID:RwfT774k0
<リザーブ支給品(全てC-7とD-7の境界(C-7側)に集められている)>

【ドラゴンクエスト4】

・天空の剣(二段開放)@武器:剣 ※物理攻撃時クリティカル率50%アップ
・魔界の剣@武器:剣
・毒蛾のナイフ@武器:ナイフ
・デーモンスピア@武器:槍
・天罰の杖@武器:杖

【アークザラッドⅡ】

・ドーリーショット@武器:ショットガン
・デスイリュージョン@武器:カード
・バイオレットレーサー@アクセサリ

【WILD ARMS 2nd IGNITION】

・アガートラーム@武器:剣
・感応石×4@貴重品
・愛の奇蹟@アクセサリ:ミーディアム
・クレストグラフ@アクセサリ ※ヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイ・ヴォルテック、ハイパーウェポン
・データタブレット×2@貴重品

【ファイアーエムブレム 烈火の剣】

・フォルブレイズ@武器:魔導書

【クロノトリガー】

・“勇者”と“英雄”バッジ@アクセサリ:クリティカル率50%アップ・消費MP半減
・パワーマフラー@アクセサリ
・激怒の腕輪@アクセサリ
・ゲートホルダー@貴重品

【LIVE A LIVE】

・ブライオン@武器:剣
・44マグナム@武器:銃 ※残弾なし

【サモンナイト3】

・召喚石『天使ロティエル』@アクセサリ

692SAVEDATA No.774:2013/04/29(月) 01:32:18 ID:x86Jhbq60
ああ、もう、こういうの見るとほんと、最終盤なんだなぁ、ってのがひしひしと

693世界最寂の開戦 13 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:32:19 ID:RwfT774k0
【ファイナルファンタジーⅥ】

・ミラクルシューズ@アクセサリ
・いかりのリング@アクセサリ
・ラストリゾート@武器:カード

【幻想水滸伝Ⅱ】

・点名牙双@武器:トンファー

【その他支給品・現地調達品】

・召喚石『勇気の紋章<ジャスティーン>』@アクセサリ

・海水浴セット@貴重品

・拡声器@貴重品

・日記のようなもの@貴重品

・マリアベルの手記@貴重品

・バヨネット@武器:銃剣
*バヨネットはパラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます

・双眼鏡@貴重品

・不明支給品@魔王が初期に所持していたもの

・デイバック(基本支給品)×18

694世界最寂の開戦 14 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:33:24 ID:RwfT774k0
アララトス遺跡地下71階。
花舞い散る異界の楽園に、杯で顔を覆って寝そべる女が一人。
女――メイメイは、ゆっくりと杯を顔からどける。
「人の想いか……分かってた、つもりだったんだけどねぇ……」
少しばかり人の世界を渡って、人を理解したつもりではあったが、まだ未熟であったということか。
自嘲しながら、メイメイは胸元から眼鏡を取り出し、尖耳に掛ける。
そして、杯に再び酒を注ぎながら、仮の主の放送を心の中で反芻する。
回を重ねるごとに、感応石など無意味なほどに、言葉に感情が乗っていく。
今か、今かと、待ち人に焦がれる恋人のように。
果たして待っているのは、希望か、欲望か、勇気か、愛か、それとも――
「理想なのかしら。ねえ、魔王サマ?」
くい、と酒をあおりながら、楽園に住まうもう一人の魔王に問いかける。
だが、酒を飲み干せどもその返答はなかった。
「ちょっとちょっと、無視はひどいんじゃなぁい?」
怪訝に思いながら、メイメイは彼へと目を向ける。
虹色に輝く巨大感応石、その前に座り込むジョウイ=ブライトへと。
感応石の光にその周囲は淡く白んでいるが、血染めの冥界に染まった赤黒い外套だけは、その色を固持している。
地面を覆う魔王の外套は、まるで楽園を冥界に変えてしまうかのように、周囲に溶け込んでいた。

「――――あ、ああ……すいません……聞き取れなかったもので……
 ……もう少し、大きな声で、言ってもらえると助かります……」

今気づいたとばかりに、少しだけ首を持ち上げ、メイメイに背を向けたままジョウイは彼女に応ずる。
「……オル様ぁー、とりあえず貴方のことぉー認めてくれたみたいだけどぉー、よかったわねぇー」
「そうですね……とりあえず、貴種守護獣程度には、挑戦権を貰えたようで」
大声で言うメイメイに、ジョウイは返答する。
どことなく上の空の調子で、本当に喜んでいるようには思えない。
「なんか白々しいわねえ」
「そんなことはないですよ。いずれ、返礼には伺いますよ……“あの天空の玉座に”」
酒を注ぐメイメイの手が止まり、危うく杯から酒を溢してしまいそうになる。
杯を手首で操り、滴をうまく拾い上げたメイメイは、されど呑むことなく黒い背中を見据える。
「私、言ったっけ?」
「いいえ。ですが……やっと“識れました”。
 放送のときなら、必ず“そこ”から感応石に意志を送ってくるはずでしたから」
天空城の小型感応石からここの巨大感応石を経由して、島全域に放送を行う。
その構造を逆手に取り、ジョウイは、核識を継いだ魔王はついに玉座を視界に捉えたのだ。
「もっとも、オディオもそこは分かっているでしょう。
 僕が今更それを知ったところで、何がどうなるというわけでもないですから」
だが、ジョウイにとってそれはあまり重要な情報ではないらしい。
彼はやはり、あくまでも正門から入城するつもりなのだ。たった1人しか入れない門から。

695世界最寂の開戦 15 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:34:09 ID:RwfT774k0
「……ねえ、一つ聞いていいかしら?」
口を湿らせ、言葉を待つことしばし。沈黙を許可ととったか、メイメイは尋ねた。
「なんで、奇襲を避けたの? やろうと思ったら、行けたんじゃないの?」
「二番煎じで勝てるとも思えなかったので。時間が無いからこそ、万全を整えますよ」
「どのくらいかかりそう?」
「そうですね…………」
メイメイの問いに、ジョウイがしばし沈黙する。
魔王の外套が大地に更に溶け込み、どくりと、遺跡全体が僅かに震えた。

「“じゃあ”あと3時間で」

こともなげに、ジョウイはそう答えた。
くいと酒を呑むメイメイの眼鏡は、逆光で白んでいる。
「前から気になってたんだけど……結局貴方、彼らをどうしたいの?」
しん、と静まり返る。言葉が途切れたというだけではない。
花の靡きも、樹のしなりも、水の流れさえも、この箱庭の全てが、静寂に染まった。

「――――逃げて欲しい。
 もしも、もしもこの墓場から逃げおおせてくれれば……まだ、諦めもつくから。
 優勝することを諦めて、直接オディオと一戦交えることも、考えられたから」

血染めの背中はただそう答えた。鷹揚一つつけず、事実を諳んじるように、無感動に。
メイメイはしばし、その答えの意味を噛み締めながら、杯の水面を見る。
散り落ちた花弁の一枚が、そっと水面に降り立つ。

どくり。

その瞬間、水面が波立った。花弁によってではない。
杯が、持つ手が、メイメイの身体が、座る大地が、この部屋が――――遺跡が、震えた。
カタカタと、ガタガタと、グラグラと、哄笑するように、叫喚するように、痙攣した。
星の下に眠る死喰いが、ではない。この遺跡そのものが震えた。
誰かの心情を代弁するかのように、冥界の奥底から、卑しく響き渡る。

「……僕は……」

頭を上げて、伐剣の王は偽りの空の向こうに手を伸ばす。

「……誰かが死んで嬉しいと思ったことは、ない」

ぐちゃりと、虚空を握り潰す。金色の瞳が見つめる掌の中には、何も無かった。

696世界最寂の開戦 16 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:35:14 ID:RwfT774k0
【F7 アララトス遺跡ダンジョン地下71階 二日目 日中】

【ジョウイ=ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:クラス『伐剣王』 ダメージ:小 疲労:極 金色の獣眼(右眼)
    首輪解除済み 腹部に傷跡 『魔王』としての覚悟
    紋章部位 頭:蒼き門の紋章 右:不滅なる始まりの紋章
[スキル]:紋章術・蒼き門(Lv1〜4)、不滅なる始まり(Lv1〜3)
     フォース・クレストソーサー(Lv1〜4)
     アビリティドレイン、亡霊召喚、モルフ召喚
     返し刃のダブルアタック 盾の鼓動は紅く輝く 
[装備]:キラーピアス@DQ4 絶望の棍 天命牙双:左 ハイランド士官服 魔王のマント
[道具]:賢者の石@DQ4 不明支給品×1 基本支給品
[思考]
基本:優勝してオディオを継承し、オディオと核識の力で理想の楽園を創り、オディオを終わらせる。
1:3時間で、魔王として地下71階で迎撃の準備を整える
2:参加者を可能な限り殲滅し、その後死喰いを完全な形で誕生させる
3:メイメイに関してはしばらく様子見
[参戦時期]:獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているとき

[備考]
※ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
    
※無色の憎悪の『始まり』を継承し、憎悪を限定的に制御できるようになりました。
 ただし、毒性はそのままのため、日没までには憎悪に喰われます。

※マリアベルの欲望の残滓を魔剣に取り込んだことで、アビリティドレインが使用可能。
 無色の憎悪を介して伐剣王が背負った(魔剣に想いを取り込んだ者)の能力を限定的に使用できます。
 ただし、その為には死の痛みも含めた全てを背負う必要があります。
 また、ロードブレイザーのようなジョウイの理想に全く繋がらない想いは背負えません。

※アビリティドレインにより『災いを招く者』の力と誓約しました。
 その力とグラブ・ル・ガブルにより、亡霊騎士をモルフ化しました。
 この2体のみ維持のための魔力コストがなくなりましたが、破壊されれば再召喚はできません。

※放送時の感応石の反応から、空中城の存在と位置を把握しました


 *ロザリーが見たのは、死喰いに喰われたルクレチア@LALでした。
 ルクレチア以外の場所(魔王山等)が死喰いの中にあるかは不明。
 *召喚獣を使い、遺跡ダンジョンの地下1階〜地下70階までを把握しました。
 *メイメイが地下71階に待機し、オディオにも通じる状態でジョウイを観察しています
 *死喰いの誕生とは、憎悪によって『災いを招く者の闇魔道』を起動させることで、
  グラブ・ル・ガブルとプチラヴォスの亡霊をモルフとして再誕させることです。
  ただし、現在は闇魔道の半分がジョウイの魔剣に封じられたため、
  現時点ではジョウイにもオディオにも不完全な形でしか誕生できません。

697世界最寂の開戦 17 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:36:02 ID:RwfT774k0
――――さて……彼らはどうするつもりなのかしらね……

ジョウイを、そしてC7に集う彼らを傍観しながら、メイメイはようやく震え終わった酒に口をつける。
互いの初手は、示し合わせたように『待ち』となった。
ジョウイは既に己が在り方を決めてしまった。それが揺らぐことは、恐らくないだろう。
ならば後は、地上の彼らがどう決めるかが、この後の歴史の形を決定する。

――――少なくとも、オルステッド様の城にはいくのでしょう? 
    存在にさえ気づけば、行くことはもはや難しくはない……

死闘を乗り越えた彼らの手元には、欠片とはいえついに全ての貴種守護獣が揃った。
加えて、聖剣も鍵もある。辿り着くことは決して不可能ではないだろう。
賢者の智慧も揃った今、首輪も解除できるだろう。後は、そのあとどうするか、だ。

――――オルステッド様から逃げるのもいいでしょう……空中城は未知の世界……方法が無いわけではない……

逃げることは恥ではない。これだけの死を、想いを省みた今ならば、その貴さがわかるはずだ。

――――あるいは、オルステッド様を倒す……あの方を倒せば、貴方たちは元の世界に帰ることもできる……
    少なくとも、その程度のことくらいは私にもできるようになる……

戦うことは間違いではない。これだけの命を、祈りを託された今ならば、身体を突き動かすものがあるはずだ。

――――あるいは、魔剣を携えて現れた最後の魔王……彼もまた玉座を目指そうとしている……
    理想を夢見たおろかでとうとい魔法……彼と向かい合えば、最後にはオルステッド様に辿り着くことになるでしょう……

決着をつけることは過ちではない。愚かであることは、賢きであることに劣るとは限らない。


世界に正解などないのだ。あるのは、選択とその結果だけである。

――――魔王オディオといつ、どう向かい合うかは貴方達しだいよ。だけど、くれぐれも早まらないことね……
    貴方たちは、まだ“集まった”だけに過ぎないのだから……
    おぼろげだけど、まだ届き、掬えるものが観える……
    A6の地……みなしごの住まう家の中……銀色に輝く一枚の占符……
    A7の地……海の藻屑と共に漂う……昭和の魂……
    他にも、目を凝らせば、観えるモノもあるでしょう……

必ず見つけなければならない訳ではない。それも含め、選択と結果である。

698世界最寂の開戦 18 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:36:56 ID:RwfT774k0
――――どうか、どうか過たないで。
    魔力がどうだ、核がどうだ、感応石が、聖剣が、魔剣が、魔術が、
    必殺技が、合体技が、奇跡が――――そんなものじゃ、あの人に“本当の意味で届かない”。

それで終わるならば、あの雷で全ては決着している。
対峙するのは、あの“オディオ”。全ての魂の雷でもまだ照らし足りぬ、憎悪の天。

「必要なのは、一献の返盃。この墓碑<エピタフ>を駆け抜けて辿り着いた貴方の、答え」

この島にいたあらゆる人たち、否、全ての出来事の積み重ねた答え。
でなければオディオには届かない。全てを憎む始まりの彼を変えるには、それほどの想いが必要になる。


「難しく考えなくていいのよ。貴方にとって一番、大切な想い。譲れないもの、守りたいもの。それが、答えよ」


メイメイは誰かに、あるいは全ての者に向けるように、酒を向けた。
いよいよ開宴。最後の戦いは、オディオとの戦いは既に始まっている。


「この戦いの行くすえ……私がここで、見届けさせてもらうわ……」


虚空への乾杯。其れを以て、もっとも静かな最終決戦が此処に始まった。

699 ◆wqJoVoH16Y:2013/04/29(月) 01:38:13 ID:RwfT774k0
投下終了です。指摘、質問等あればどうぞ。

700SAVEDATA No.774:2013/04/29(月) 01:57:35 ID:umDWwpIY0
執筆投下お疲れ様でしたッ!
ストレイボウの言葉が重い。アイツにしか言えなくて、それだけに説得力があって。
んでも流されないのがアナスタシアなんだよなあ。だからこそ今、この場にいるわけだしね。
彼女がストレイボウに言葉を掛けた瞬間、鳥肌が立ったわ。
遂に、遂に首輪にメスが入るッ!
ジョウイはジョウイでもう覚悟は決まっているわけだけれども、彼にも時間はもうないわけで。
やらざるを得ないわけで。
あと3時間。
3時間でどうなるのか。その後も、どのような選択肢が取られるのか。
最終盤、これから多くの道があるれども、どうなるのか楽しみなシメ方でした!
GJですッ!

701SAVEDATA No.774:2013/04/29(月) 01:59:21 ID:x86Jhbq60
投下乙です。
ピサロとカエルの合流に毒を吐くイスラに少しホッとした。
ああいう毒を吐いても許されるだけの弛緩した場が見えて。
そっか、そういえばストレイボウも一度はオディオになったやつなんだもんなぁ。
一つのことに囚われて、流れに呑まれないでくれ、ってのは確かに省みた重みがある。

どう転んでもオルステッドの願いを超えるのは難しい。
その願いを超える何かを求めて、提示された空白の3時間、そこで求める不確定な何かが
サブイベントのような形で最後にプレゼンされて、RPGであることが強く意識させられる演出で上手い。
最終盤でできることもすることも限られてきたけど、そんな中でもフリーな部分が強調されてて、いい繋ぎの話だなぁ。

702SAVEDATA No.774:2013/04/29(月) 02:06:28 ID:HbyQAB.o0
投下お疲れ様でしたー!
おお、おお、おおおお
アキラやイスラの苛立ちも伝わってきて、ストレイボウの言葉も重いんだけど、それをひっくり返すアナスタシアw
なんかどっかで見た名乗りに思わず吹いたけど、しかしこれはもうほんと、いいな
前編と後編の双方あってこそだ
これからどうするのか、何がしたいのか
確かにほんと、イスラに限らず一時の感情で突っ切ってきたようなもんだもんな
特にいま残ってるメンバーは
そこで改めてどうするか、何をしたいか
対比されるように、全てを識ってるかのように三時間と言ったジョウイは覚悟完了してるんだけど
今回の話は本当にあのストレイボウの、そして最後のメイメイさんの言葉どりなんだよなあ
しかし既に他の方も言ってるけれど。こういう決戦前夜のフリータイムはRPGっぽいなw
夜会話とかプライベートアクションとかw
これは、この続きもまとめて予約されるだけじゃなくて、バラバラ予約もありえるし、それでもいいと思う

703SAVEDATA No.774:2013/04/29(月) 14:56:53 ID:4zFvjkCs0
執筆と投下、お疲れ様でした。
ああ……でもどうしよう、これ以上に言いようがないw
感想、というか物語の面だけを見ても思い浮かぶことはたくさんあるのですけれど、
巧く言葉にならなくて申し訳ない。

ただ、なんというべきか。
おもにコンシューマRPGの流れに添いながら、それでも自分は、勝手に
「クロスオーバーとかそんなんじゃない、書き手としてのスタンスを見せてくれ」
という問いかけを感じ取ってしまった。問いかけを行う意味を、氏は知っていると
勝手に信じてしまうくらいのものを見たと信じてしまった。
これは、正直言って形にしていい感想かどうか分からないのですけれど、
ここまで愚直で、かつ誠実な書き手は、私は氏以外に知らないのです。
話としてはトスアップであっても、こういう話を書くことの苦労にも幾許かの
心当たりがあるので、予約破棄などを挟んでも、氏の書く話を読めて良かった。
あなたがいなければ遊べないので、あなたがいてくれて良かった――と、これは
氏にかぎった話ではないのですが、今回の投下で改めて感じました。
そして、よほどの信頼がないと、こんなトスアップも返答も出来ないと思うので、
素晴らしい書き手さんが集まっている企画にも感謝することしきりです。
繰り返しになりますが、皆さん、お疲れ様です。そして、いつもありがとうございます。

704SAVEDATA No.774:2013/05/07(火) 23:18:28 ID:jQFQKNiY0
予約きたあああああ!!!

705SAVEDATA No.774:2013/05/15(水) 08:05:54 ID:wnYmZEC20
月報集計お疲れ様です。
RPG 151話(+ 1)  7/54 (- 0)  13.0(- 0)

706SAVEDATA No.774:2013/05/16(木) 17:22:25 ID:tkpLU44M0
そういえばサモナイ5が今日だっけ?

707 ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:31:12 ID:z1qYGbyw0
投下いたします

708天空の下で -変わりゆくもの- ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:32:17 ID:z1qYGbyw0
 吸い込む空気は、酷く乾いていた。砂っぽさが喉を通り肺に広がる感覚はざらついていて、決して爽快なものではない。
 けれど、そうやって呼吸をしているという事実は、確かな安堵をもたらしてくれる。
 胸に落ちるのは、埃っぽい安らぎと乾燥した落ち着きだった。
 それは、色濃い疲労と重い気だるさの真ん中で、どうしようもないほどに感じてしまう、心地よい生の実感だった。
 安らぎなど、どす黒く淀む感情を自覚したあの時に、置き去りにしたと思っていた。
 落ち着きなど、無力さと無様さと罪悪感を抱えた心には、相応しくなどないと思っていた。
 生の実感など、咎人である自分が得てはならないものだと、信じて疑わなかった。
 片膝を立てて地に座し、ストレイボウは、あたりを見回す。
 嵐の足跡と呼ぶには余りにも荒れ果てた地がある。土色をした荒野に、石細工の土台の残骸が夥しく散らばっている。
 ストレイボウは、もはや立ち塞がるもののないこの荒野に、寂寥感を覚えていた。

 夢の跡。
 そんな感想が胸を過るのは、ここで散っていった“想い”が、大きすぎて多すぎたからであり、そして。
 この、無機質ささえ感じる静けさが、自分が死した後の、灰色のルクレチアに似ていたからだった。
 その連想は、ストレイボウの胸をじわりと締め付け、刺さりっぱなしの棘のように、じくじくと痛みを与えてくる。
 決して消えない痛みだった。何があっても消してはならない痛みだった。
 それを自覚しても、気持ちは、静けさと同化するように凪いでいた。
 諦観や悲観や順応や居直りによって、そう在れるのではないと、今のストレイボウには分かっている。
 くっと、拳を握り締める。指先に力を込め、力の奥で息づくものを感じ取る。
 小さな鼓動だった。微かな脈動だった。
 けれどその鼓動があるから、痛みと向き合える。脈動を感じられるから、罪に背を向けずにいられる。

 ようやくだ。
 ようやくこれで、自分の意志で立ち上がることができる。
 多くの温もりがあった。数え切れない優しさがあった。沢山の“想い”があった。
 過去形でしか語れないのは、悲しいことだ。
 それでも悲嘆に囚われないでいられるのは、受け取ったものが確かにあるということに他ならない。
 それをオディオは、屍の上に立っているというのだろう。
 だとしても、ストレイボウは思うのだ。
 無数の死があったとしても、彼らがその胸に抱えていたものは、褪せず朽ちず綻びず、受け継がれているのだと。
 刻まれた想い出があり、胸の奥で息づく“想い”がある。
 だから今、イノチと共に生きていると、そう思えるのだ。
 かつてのストレイボウであれば、そんなものは生者の欺瞞だと唾棄し、勝者の傲慢だと罵ったことだろう。
 変わったのだ。
 変われたのだ。
 そのことは、ぜったいに、否定などできはしない。

709天空の下で -変わりゆくもの- ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:32:52 ID:z1qYGbyw0
「やっと、お前に向き合えそうだよ」

 葉で作った小舟をせせらぎに乗せるような様子で、敢えて口にする。
 届けと、聴こえろと、そんな風に肩肘を張る必要はない。口にした気持ちは、確かなものとして胸の奥で根付いているのだから。
 血のにおいが沁みついた大気に言の葉をくゆらせ、“想い”が溶けた空気に気持ちを浮かばせる。
 それで充分だと、思えたのだった。

「それが、貴様の望むことか?」
 
 意外なところからの言葉に目を丸くしながらも、ストレイボウは振り返る。
 紅玉色をしたピサロの瞳が、こちらへと向けられていた。
 無感情に見える人間離れした美貌に、ストレイボウは、素直に頷いてみせた。

「ああ、そうだな。より正確に言えば、俺の“したいこと”へ辿り着くために、俺はアイツに向き合いたい」

 ほう、と語尾上がりで、ピサロが相槌を打ってくる。
 試されているのかもしれないと思いながら、けれどストレイボウは、緊張も臆しも抱かなかった。
 
「対等に、なりたいんだ。アイツの隣に、並び立ちたいんだ」

 するりと、言葉が滑り出た。
 だからそれは、心の底から、ほんとうに望むことなのだろう。

「今まで、アイツを羨んで、妬み続けて、卑屈でいるばかりで……さ」

 それは、かつての忸怩たる自分への恨み言であり、恥ずべき過去であり、嫌悪の源泉であった。
 全てを受け入れられるほど強くはない。飲み込められるほどに達観してもいない。
 自嘲的な苦笑いだって浮かんでいるし、か細い語り口からは拭いきれない弱々しさが垣間見える。
 だけど、それでも。
 
「だからこそ、俺は」 

 ストレイボウは、ピサロから目を逸らさなかった。

「ほんとうの意味で、アイツの隣に行きたいんだ」

 ピサロの視線は揺るがず、表情も変わらない。

「貴様が望む、その場所は」

 ただ、その口だけが言葉を吐き出していく。

「輝かしい“勇者”の隣か?」

 ぽつり、ぽつりと。

「或いは、君臨者たる“魔王”の隣か?」
 
 零すようなピサロの問い方は、ストレイボウが彼に抱いていた印象とは、かけ離れていたものだった。
 そんなピサロに向けて、ストレイボウは、ゆっくりと首を横に振る。
 だからこそ、迷いも悩みも惑いもなく答えられるものがあるということは、大きな意味があるように思えた。

「いいや、どっちでもないさ」

710天空の下で -変わりゆくもの- ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:33:55 ID:z1qYGbyw0
 ◆◆
 
「どちらでもない、か」

 ストレイボウの答えを、呟くようにして繰り返すと、ピサロは目を伏せる。
 閉ざした視界に、イメージが広がっていく。
 そのイメージとは、先ほど知った、勇者オルステッドと魔王オディオが辿った道筋だった。
 かつてのピサロならば、愚かしい人間らしい末路だと一笑に付し、そんな人間如きが魔王を名乗るなどとはおこがましいと憤っていたに違いない。
 けれど今、ストレイボウが語ったその出来事は、ピサロの脳裏に生々しく焼き付いていた。

 ――私は、弱くなったか。
 
 ふと感じたその想いを否定する材料など、もはや“魔王”ではないピサロには、雀の涙ほどもありはしなかった。
 魔族である自分も、あれほど憎み蔑んでいた人間と変わりはしないと知ってしまったのだ。
 であるならば、魔族とは何なのか。エルフとは何なのか。モンスターとは、人間とは。
 その疑問の延長線上に、二つの肩書きが浮かび上がる。
“勇者”と“魔王”。
“勇者”は人間の希望であり、“魔王”は魔族の希望である。
 そして人間と魔族の間に、根深い対立構造がある以上、それらは、決して相容れぬ対極の存在であると信じて疑わなかった。
 だが、“魔王”オディオは違う。
 オディオは人間で、そうであるが故に、かつては“勇者”であった。
 そして、同時に。
 オルステッドは人間で、そうであるが故に、自ら“魔王”となったのだ。
 つまるところ、“魔王”オディオは、魔族の希望などではない。更に言うならば、統治者という意味での王ですらない。
 であるならば、ピサロがこれまで抱いてきた“魔王”の称号とは、何だったのか。

 そうして、ピサロは至る。
 宿敵――“勇者”ユーリルが直面した疑問へと、辿り着く。

 けれどピサロは迷わない。
 答えへと至るための欠片を、ピサロは既に持っていた。
 それは、ストレイボウの言葉であり、そして。
 そしてそれは、『ピュアピサロ』の胸をいっぱいに満たす、ロザリーの“想い”だった。
 ストレイボウの言葉を掴み取り、ロザリーの“想い”を感じ取り、ココロに溶かし込み流し込んでいく。 
 温もりに満ちた、柔らかでいて絶大な信頼が、ピサロの手を取ってくれる。
 思考が、道を往く。
 一人歩きをしない考えは、ゆっくりと、けれど着実に、ピサロを答えへと導いていく。
 
 ――私が“魔王”でなくとも。私を想ってくれる気持ちは、存在するのであろうな。 
 
“魔王”というのは称号や呼称であり、その名で呼ばれることは栄誉であり大義は在るのだろう。 
 だが、しかし。
“魔王”という言葉に、願いを拘束し思考を誘導する作用はない。そんなものが、在ってはならない。
 いつだって。
 いつだって、願いを抱いて意志決定するのは、“魔王”ではなく、自分自身の“想い”なのだ。
“魔王”が感情を呼ぶのではない。感情こそが、“魔王”を呼ぶ。

711天空の下で -変わりゆくもの- ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:34:36 ID:z1qYGbyw0
 であるならば、“魔王”とは。
 感情を解き放つものに、他ならない。

「“勇者”でもなく、“魔王”でもない。“オルステッド”という人間と、対等でありたいと望むのだな?」

 瞳を開け、再度問う。
 視線の先で、ストレイボウは、はにかんで頷いた。
 長い髪に隠されていてもよく分かるほどの微笑みからは、恥じ入りと同時に、清々しさが感じ取れた。
 ピサロの口元が、自然と綻ぶ。
 ストレイボウの清々しさを悪くないと感じ、その感覚は、ピサロに実感を与えてくれる。

“勇者”に“魔王”。“人間”に“魔族”。
 それらの間に大差はなく、対等となれる可能性を示しているという、実感を、だ。

 世には愚者が蔓延っている。あらゆるイノチには愚かさが根付いている。
 ただし、その愚かささえ自覚していれば。愚かさを自省し、自戒することが可能であれば。
 誰もが求め、愛し、共存し、笑い合い、手を取り合うこともできる。
 たった少しでいい。
 たった少しの気付きさえあれば、誰もが。
 誰かに頼らずとも、自らの意志で、共存を願えるのだ。
 そう思えるからこそ、こうして、ピサロはここにいられる。
 気付きが心を変えてくれたからこそ、ピサロは、こうも心穏やかにいられる。

 今更だ。
 今更、ロザリーの願いを心底から理解し、自分のものとできた。
 ようやっと、心が一つになれた。
 ピサロの“したいこと”が、改めて、ロザリーの願いと重なっていく。
 彼女が望む世が、ピサロの願う世となっていく。
 喪ってから気付くとは愚かしい。されど気付けたことは無駄ではない。
 ロザリーの息づきを、確かな力として感じられるのだ。
 それが無駄であるはずがない。
 弱さである、はずがない。

 空を、見上げる。
 蒼穹は透き通っていた。
 何処までも果てしなく、全てを包むように、何もかもを見通すように、真っ直ぐなままに広がっていた。
 真っ青な空を、共に見上げることはできなくとも。
 抱いた願いを、空に届けることはできるから。
 だからピサロは、真っ直ぐに。
 ただ真っ直ぐに、一人であっても、空を見上げるのだ。
 
「“勇者”、“魔王”、“人間”、“魔族”。そんな言葉に弄され、本質を見誤ったのが不覚であったか」

 今、ピサロは弱くなったのではない。
 もともとピサロは弱さを抱えていた。
 ただ、“魔王”という仮面が、その弱さを隠し通していただけだった。

712天空の下で -変わりゆくもの- ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:35:29 ID:z1qYGbyw0
「……そういう言い方も、できるのかもしれない。けど俺は、“勇者”も“魔王”も、“想い”を惑わす幻だなんて言いたくはないかな」

 やんわりと否定するストレイボウの声は、そよ風のようだった。

「むしろ、“魔王”も、“勇者”も、“想い”のカタチなんじゃないかなって思うよ。
 だから、“魔王”も、“勇者”も、イノチの数だけあるんじゃないんだろうか」

 遮るもののない碧空を眺めたままで、ピサロは、長い耳を傾ける。
 
「少なくとも俺たちは、“勇者”を知ってるんだ」

 温かくて、誇らしげで。
 だけれども、うら寂しさの孕む声を、ピサロは聴く。

「“救われぬ者”を“救う者”を――“勇者”ユーリルを、知ってるんだよ」

 その名を聞いた、瞬間。
 ピサロは息を呑み、目を見張った。
 果てしない天空を背景にして、翻る一つの影が映る。
 それは。
 その影は。
 どんな絶望的な状況でも、如何なる窮地に陥っても。
 数多くの人間のために、その足で大地を踏みしめ、その手で剣を握り締め、その意志を以って戦い続けた少年の姿だった。
 ピサロは知っている。
 全身を傷だらけにしても、血反吐を吐き続けながらも。
 決して膝を付かず、諦めず、俯かなかった、少年のことを。
 ピサロは覚えている。
 彼は、ピサロを破ったのだ。
 慣れ親しんだ山奥の村を滅ぼした者に、復讐するためではなく。
 人々の生活と命と平和を。
 戦えぬ者を。
 救われぬ者を。
 その全てを、両手で、“救う”ために。

713天空の下で -変わりゆくもの- ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:36:20 ID:z1qYGbyw0
「そうか……」

 ピサロは得心する。
 いつだって必死で、どんなときだって懸命だった彼がそうあれたのは。
 抱いた“想い”を貫き通し、全てを救いきって見せられたのは。
 きっと。
 きっと、彼の胸の内に確固たる“想い”が燃え盛っていたからなのだと。
 そしてそれは、熱く激しく苛烈な、貪欲なまでの“救い”の意志だったのだと。
 理解が広がった瞬間、笑いが零れた。
 ピサロが――デスピサロが敗北したのは、当然だ。
 揺るぎない強い“想い”を前にして、自分を見失った化物が、勝てるはずがない。
 
「奴は――ユーリルは」

 戦う以外の道など探そうともしなかった。求める気もありはしなかった。
 彼と自分の道は、剣を交え呪文を衝突させることでしか、交差することはないと思っていた。
 そうとしか思えなかったことが、やけに空虚なように感じられた。
 
「その身に何があったとしても、最期のその時まで」

 雷鳴が乱れ舞う夜雨の下で邂逅した彼は、デスピサロと同じだった。
 野獣のように叫び、喉が張り裂けても喚き、駄々を捏ねるように暴れていた。
 だとしても。
 だとしても、天空は今、見惚れるほどに晴れ渡っている。
 あの嵐があったからこそ、この天空が在るとさえ、思えるのだ。

「紛れもない、ユーリル自身が望むままの」

 囁くような言葉はか細い吐息と共に、美しい青の世界へと昇っていく。
 淀みなく透き通る、広大な青空は。
 彼方へと続いていそうな、雄大な天空は。
 余りにも。
 余りにも、眩くて。

「――“勇者”であったのだな」
 
 ピサロはその目を、すっと細めたのだった。

【C-7とD-7の境界(C-7側) 二日目 日中】

【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:ダメージ:中、疲労:中、心労:中 勇気:大
[スキル] ルッカの知識(ファイア、ファイガ、フレア、プロテクト)*完全復元は至難
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:“オルステッド”と向き合い、対等になる
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:最終編
※アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません)

【ピサロ@ドラゴンクエストIV】
[状態]:クラス『ピュアピサロ』 ダメージ:中 ニノへの感謝 ロザリーへの純愛 精神疲労:中
[スキル]:魔封剣、デュアルショット、アルテマバスター*いずれも要バヨネット装備 ミーディアム:ラフティーナ
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:すべての命が、自らの意志で手を取り合える世になるよう力を尽くす
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:5章最終決戦直後

714天空の下で -変わりゆくもの- ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:36:59 ID:z1qYGbyw0
<リザーブ支給品(全てC-7とD-7の境界(C-7側)に集められている)>

【ドラゴンクエスト4】
天空の剣(二段開放)@武器:剣 ※物理攻撃時クリティカル率50%アップ
魔界の剣@武器:剣
毒蛾のナイフ@武器:ナイフ
デーモンスピア@武器:槍
天罰の杖@武器:杖
【アークザラッドⅡ】
ドーリーショット@武器:ショットガン
デスイリュージョン@武器:カード
バイオレットレーサー@アクセサリ
【WILD ARMS 2nd IGNITION】
アガートラーム@武器:剣
感応石×4@貴重品
愛の奇蹟@アクセサリ:ミーディアム
クレストグラフ@アクセサリ ※ヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイ・ヴォルテック、ハイパーウェポン
データタブレット×2@貴重品
【ファイアーエムブレム 烈火の剣】
フォルブレイズ@武器:魔導書
【クロノトリガー】
“勇者”と“英雄”バッジ@アクセサリ:クリティカル率50%アップ・消費MP半減
パワーマフラー@アクセサリ
激怒の腕輪@アクセサリ
ゲートホルダー@貴重品
【LIVE A LIVE】
ブライオン@武器:剣
44マグナム@武器:銃 ※残弾なし
【サモンナイト3】
召喚石『天使ロティエル』@アクセサリ
【ファイナルファンタジーⅥ】
ミラクルシューズ@アクセサリ
いかりのリング@アクセサリ
ラストリゾート@武器:カード
【幻想水滸伝Ⅱ】
点名牙双@武器:トンファー
【その他支給品・現地調達品】
召喚石『勇気の紋章<ジャスティーン>』@アクセサリ
海水浴セット@貴重品
拡声器@貴重品
日記のようなもの@貴重品
マリアベルの手記@貴重品
バヨネット@武器:銃剣
  ※バヨネットはパラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます
双眼鏡@貴重品
不明支給品@魔王が初期に所持していたもの
デイバック(基本支給品)×18

715 ◆6XQgLQ9rNg:2013/05/19(日) 21:37:41 ID:z1qYGbyw0
以上、投下終了です。
ご意見ご指摘など、何かございましたらお願い致します。

716SAVEDATA No.774:2013/05/20(月) 00:39:22 ID:PVfYstBs0
投下お疲れ様でした!
正義の反対は正義だとかよく言われるけど、ピサロは本当に魔族のためを想って魔王をやってたんだよな
デスピサロだってロザリーへの愛ゆえに人間を憎んでで
ピサロ自身の愛のためって本人は言うだろうけど、こいつは言われてみればずっと誰かのために戦い続けてきたとも言えるんだよな……
だからこそ、魔王や勇者は想いの形であっても、思いを縛るものであってはならないというピサロとストレイボウの会話が心に響いた
勇者とは、英雄とは、魔王とは
このロワで問われ続けたものの無限の答えを含んだ答えがこの話だった

717SAVEDATA No.774:2013/05/20(月) 02:03:01 ID:yhpK0tvQ0
執筆と投下、お疲れ様でした。
なるほど、乾いた空にも色々あるよなあ。
古代王国に心を飛ばしていた魔王でなく、荒野に生きたものたちに導かれて
生を希求するようになったストレイボウの感じる世界と、彼が手放そうとしない痛み。
これらは、読む側も心地よく噛み締めたり、思い浮かべていけるものでした。
また、後半の「感情を解き放つものが魔王」とは、腑に落ちる表現だなと。
思えば勇者の雷も、魔王の誓いもそうだったのだけど、そのふたつのない蒼穹に解かれていく
ピサロの思考を追っていて、これまでの物語に改めて沁み入る心地がしました。
……しかし、こういう意味でもオディオは、こんな舞台まで作ってしまっても、首輪などを通して
憎しみを他者へ見せても、その感情さえ解き放ちきれていないようでなんとも言えないな……。
そして「したいこと」と「なすべきこと」とが、ピサロのなかでは重なったのかな。
ピサロに魔王として対面したジョウイのパートを拾った部分も細やかで素敵だなぁ、と。
乱戦や大人数のパートなどを書いたものを見ても、氏の作品はとにかくまとまっている印象が
強いのですが、二人。会話が可能な最小人数の話を読んで、改めて構成の妙に魅せられました。
SSも感情を、あるいは思惟を解き放つものなら、自分はじつに良いものを拝読していると思えます。ありがたいことです。

718Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 17:57:41 ID:lq/5fCmY0
お待たせしてしまい申し訳ありません
投下します

719Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 17:58:19 ID:lq/5fCmY0
        こうして、僕にはただ
        時間だけが残された。
   命も、道具も、全てアナスタシアに握られて
   手持ち無沙汰もいいところで
     ジョウイが襲撃でもしてきたなら
   その対処へと身も心も没頭できるというのに。
   そんな実現したらしたでごめんな可能性も
場当たり的に生きることも
ストレイボウの奴に切って捨てられたばかりで
今の僕には、本当に、何も、何もすることがなかった。
“したいようにあってほしい”だって?
なんだよ、それ、なんなんだよ、それ。
自分に縛られて
何もかもを見失うのがどれだけ愚かなことか。
そんなの、お前に言われないでも分かってるよ!
 教えて、もらったんだ!
         だけど、だけどさ。
      今更なんだ、今更なんだよ……。
ねえ、したいことを考えろって言われて足を止めてさ。
    それでもしたいことが見つからなかったら。
どうすればいいのかな?
どうしたら、僕はまた歩いていけるんだろ……。
      
            ▽

720Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 17:59:11 ID:lq/5fCmY0

           
             [アナスタシア]
            
 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆  [ピサロ]
 話し相手を           △
 選んでください 『カエル』 《グレン》
 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆      ▽
           [アキラ]
              
             [ストレイボウ]

721Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:00:02 ID:lq/5fCmY0

思えばその問いかけさえも今更だった。
昨日のまさに今ぐらいに、僕は問われたばかりだったじゃないか。
姉さんが死んだらどうするのか。
先生が死んだらどうするのか。
今は亡きおじさんに聞かれたばかりだったじゃないか。
僕はその時、なんて思った?
使い道のない自由に、何の意味がある。
そう思ったんじゃなかったのか。
まさにその使い道のない自由が、僕の目の前に転がっていた。
僕は何をするでもなく、へたり込み、ただ空だけを見上げていた。

どうしてこうなったんだろ。
僕はいったい何をしてるんだろ。

抜け殻のような自らのさまを自嘲する。
あの時、その言葉が正しいと心の底では感じながらも、どうしてあれだけストレイボウに噛み付いたのか。
何のことはない。
僕は、こうなることを予想してたんだ。
あいつの言うところの“行き着くところ”まで行きつけたならどれだけ楽だったろうか。
あいつがあんなことを言わなかったら、僕はきっと今頃、ジョウイを倒すことでも考えていただろう。
あいつがヘクトルの死体を弄んだから……だけじゃない。
確かにそのことへの怒りはある。
死を奪うというのは僕にとって何よりも許せない所業だ。
僕はジョウイを嫌いなままだし、今や憎んでると言っても間違いじゃない。
でも、あのヘクトルと打ち合ったからこそ僕にだって分かってる。
ジョウイの導きに応えてしまったのも、僕による終わりを受け入れてくれたのも、どっちもヘクトル自身の意志だったんだ。
そこまで分かっていながらもジョウイにとやかく言うのは、ただの八つ当たりなんじゃないか。
僕はジョウイの計画を阻止しようとして失敗した。
その取り戻し用がないミスを、ヘクトルのことを言い訳に取り戻そうとしてるんじゃないか。
いや、取り戻すだなんてそんな前向きなものじゃない。
僕は縋りたいだけなんだ。
かつて生きてできることと定めていたそれに、生き残ってしまった意味として縋りたいだけなんだ。

722Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:00:33 ID:lq/5fCmY0
それに元を正せばヘクトルを殺したのはあいつじゃない。
セッツァーとピサロだ。
セッツァーは既に死んだようだけど、ピサロに至ってはすぐそこにいる。
だったらそのピサロに怒りをぶつけることが、ヘクトルの敵討ちだと刃を向けることが僕のしたいことなのか?
……不思議とそうだとは思えなかった。
もしそれが答えなら、ストレイボウが余計なことを言うよりも前、アナスタシアがどうやってかあいつを連れてきた時点でそうしていたはずだ。
ジャスティーンの召喚に力を使い果たしていたからだとか、そんなのは理由にならない。
感情というものはそんな理屈で抑えられるものじゃない。
けど僕は、そうしなかった。
そんな気力さえなかった。
もうすべてが終わったことだったから。
ヘクトルを終わらせたのは、ヘクトル自身と、そして、この僕なんだって。
そんな、ほんの僅かな、それでいて、これだけは他の誰にも譲りたくない自負が僕にはあったから。

だから。

僕は、本当に、何もかも終わってしまったんだ。
僕のしたい事、したかったことに、決着をつけてしまったんだ。

つまりは、そういうこと。

ストレイボウが言った“したいようにあってほしい”というのは、ジョウイがどうとか、オディオがどうだとか、そんな目先のことだけじゃなくて。
きっと、ずっと、この先の未来へと続く望みで。
それは僕が二度目の生を受けてから、ずっと、ずっと、考えて来たことだったんだ。

「なんでだよ。なんでなんだよ……」

はじめは姉さんや先生のために生きたかった。
その望みが潰え、自らの命を奪おうとした時、あの大きな掌に止められた。
あの時初めて、僕は今まで抑えてきた僕の感情を、僕自身を、受け入れることができた。

「なんで、なんでみんな、いなくなっちゃったんだよ……」

そして、僕は、気づけば、彼を、ヘクトルの背中を追い始めていて。
おじさんの支えもあって、“いつか”を望めるようになっていたんだ。
この僕が、だよ? ずっとずっと、死ぬことばかりを考えて生きてきたこの僕が。
自分のことを誰かを悲しませる害悪としてしか見ていなかったこの僕が。
あろうことか、誰かの為に“生きられる”いつかを夢見れるようになってたんだ……。

723Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:01:09 ID:lq/5fCmY0

「なんで、僕だけ生き残ってるんだよ……」

けれど、その“いつか”を僕はこの手で振り払った。
僕が夢見た理想郷を、僕自身の手で終わらせた。

「僕だけ生き残って、どうしろっていうんだよ!?」

そのことに未練はあっても後悔はない。
それこそ感情のままに突き動かされただけだと言うやつがいるかもしれないけれど。
あの終わりは僕がありのままの自分で、ありのままの世界を見た上で決めた大切な終わりだった。
……終わりだったのに。
どうして僕だけ生き残ってるんだ?
どうして僕はまだ、続いてるんだ?
これ以上僕にどうしろっていうんだ。
僕は一体何がしたいっていうんだ……。

「どうやらまだ、自分の終わり方を決められていないようだな、適格者」

嫌な声が聞こえた。
聞きたくない奴の声がした。
誰か、などとは問うまでもない。
紅の暴君無き僕のことをそう呼ぶのはただ一人だ。
いっそこのまま無視してやろうかとも思ったが、見上げていた空に影が落ち、ぬうっと緑の顔が眼の前に迫る。
そいつはヘクトルやおじさんの巨体とは打って変わって背が低かった。
そんな背格好で覗きこまれたままではたまったもんじゃない。
顔と顔が接触しかねない距離にまで人間サイズの蛙に近づかれたらあの姉さんでさえ悲鳴を上げただろう。
……アティ先生なら分からないけど。
残念ながら先生ほど心の広くない僕は、そのままの体勢で腕を突き出し、跳ね除けたそいつへとうんざりとした視線をくれてやった。

724Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:01:44 ID:lq/5fCmY0

「……誰のせいだと思ってるんだよ」

ああ本当に、誰のせいだ。
誰のせいで、僕はこんなにも悩む事になったんだ。
例えばお前だよ、カエル。
お前がマリアベルを殺さなかったら、彼女をファリエルと会わせるために頑張るのも……悪く、なかったんだ。
今更だけどさ。
あまりにも、今更、だけどさ。
僕は、僕のことを捨てたものじゃないと言ってくれた彼女のことが嫌いじゃなかった。
あの時は素直に返せなかったけど、今なら言えるよ。
僕も君のこと、公平だとかどうとか、そんな理屈っぽいこと抜きにしてもさ。
多分、きっと、割りと、結構……好きだったよ。
あーあ、こんなことならあの時、ファリエルと会わせてあげるって約束でもしておくべきだったなあ。
そしたらさ。そしたらあんな、あんなアナスタシアなんか庇うこともなくて……。
無理、だろなあ。
全く、ほんとどうして、こんなメンツが残っちゃったんだろね?
神様だなんて信じたこと無いけどそれでもあんまりじゃないか。
アキラはまだいいよ。
ひねくれてるようで正義感に燃えているところとか、若干苦手なところもあるけど、一日足らずの付き合いでも悪いやつじゃないってそう思える。
けどさ、他はないんじゃないか。
ストレイボウは許せない。
同族嫌悪や全ての元凶ってこともあるけれど、自分だけ、したいこととやらを見つけていたりで腹が立つ。
アナスタシアは嫌いだ。
今になって吹っ切れて分けわかんない存在になって、今まで以上にあの手この手で僕の心をかき乱していく。
カエルとピサロは論外だ。
ヘクトルにブラッド、マリアベルの死は彼ら自身のものだけど、それでも、こいつらが僕から大切な人を奪ってったのには変わらないんだ。

誰かのために生きたかった。その誰かはもう、誰もいない。

全てが振り出しに戻ってしまった。
ゼロの虚無。
死にたいとも生きたいとも思えない、生命の始まりに。
あれもそれもこれも全部、全部――

725Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:02:14 ID:lq/5fCmY0

「そうだな。少し話をしよう」

なんだよ、自分のうちに引きこもることすら許してくれないのかよ。

「僕にお前と話したいことなんてないよ」
「俺にはある。お前を生かした分の責任がな。それに――あの時問うてきたのはお前だぞ?
 全部なくして、終わって、それでも足掻けるのはどうしてか、と」

そういえばそんなことを口にした。
でもそれは、もう終わったことだろ?

「その答えならもうもらったじゃないか」
「確かに俺は答えた。だがその答えは“二度目”の答えだ」

二度目?
二度目って何さ。

「前にも一度あったんだよ。俺が、俺にとっての全てとも言えた“勇者”を――親友を喪ったことが」

疑問が顔に出ていたのだろう。
僕が口にする前にカエルは勝手に喋りだす。

「勇者……?」
「ああ、そうだ。あいつは、勇気ある者だった。どんな相手にでも立ち向かい、いつも俺を助けてくれた。最後の時だってそうさ。
 あいつは俺を庇って、魔王に殺されたんだ……」

魔王って、あの魔王?
自分の親友の仇となんてお前は組んでたのかよ。
気が知れないにも程がある。
……まあ僕だって人のことは言えないけどさ。
紛いなりにも今の僕はヘクトル達の仇であるこいつらと運命共同体なんだし。
前なんか僕に呪いをかけた奴の手駒になってたことだってあるくらいだ。
だから、そこはどうだっていい。
僕が興味あるのはただ一つだ。

「それで。お前はどうしたのさ」
「どうもしなかったさ。俺は逃げた。魔王から、友の死から、自分自身から、友との最後の約束からさえも逃げて酒に溺れた」

726Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:02:44 ID:lq/5fCmY0
は?
なんだよそれ。
参考にもならないじゃないか。
反面教師にでもしろってのかよ。

「全然ダメじゃないか。そんなザマで僕に偉そうに説教したのかよ」
「ふっ、返す言葉もないな。だがな、イスラ。そんな俺でも、お前が言うように今こうして足掻けてる。
 あの時だってそうだ。友より託された王妃が攫われたと気付いた時、俺は気づけば動いていた。
 それまでどれだけ念じようと恐怖で後ろにしか進まなかった足が、あろうことか誘拐した魔物たちの本拠地へと乗り込んでたんだ」
「それがきっかけでお前は立ち直ったって、そういう話かよ」

それはめでたい話だね。
おめでとう。良かったね。
友から託されていた王妃様とやらがいてくれて。
僕には何も遺されてはないんだけど。

「いや、情けない話だが、王女を助けたあともしばらくぐずっていたよ。
 俺が近くにいたため、王妃様を危険にさらしめたのだと自分のことを責め、城から出て行きまた酒浸りの日々さ」

……話を聞けば聞くほど、気力が失われていき、反比例して冷ややかな心地になっていく。
僕は僕のことを散々嫌ってきたけど、世の中、下には下がいるんじゃないか?
もしかしてこれがこいつなりの慰め方なんだろうか。
下には下がいるから僕はまだ胸を張って生きろとかそんな感じの。

「つくづくダメな大人じゃないか。呆れて物が言えないよ」
「そう思うか? 俺もそう思うよ。王女さまを助けたことで友との約束を当面は果たせてしまったからだろうな。
 前以上に気が抜けてしまって、友の形見の品を落としてしまって、しかもそのままにしていた始末だ」
「……」

これには僕もドン引きだ。
流石に人としてどうかとさえ思えてきた。蛙だけどさ。それはいくらなんでも――

「カッコ悪いと思ったか? 鏡を見てみろ。今のお前も当時の俺と似たような顔をしているよ」

うわ、嫌だ。
一緒にするなよ。
蛙顔の自分を想像しちゃったじゃないか。

727Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:03:15 ID:lq/5fCmY0

「僕は当分自分の顔を見たくなくなったよ」
「くくく、そうか。それは悪かったな。まあともあれ、だ。そんなこんなで紆余曲折。
 クロノ達がその落とした品である勇者バッチを取り戻してくれたり、折れた勇者の剣を修復してくれたりでようやく俺は――」

やっとなんだよね?
いい加減、やっとなんだよね?

「立ち直った、のかな? 本当にようやくだね」
「それが実は、更に一晩考えた」

うわぁ……。

「結局立ち直るのにどれだけかかってるんだよ」
「十年だ。俺はあの時十年かかった。そう考えれば今回は随分速く立ち直れたものだ」

ふっとそれまでのやれやれだという感じの口調が鳴りを潜め、カエルの奴が笑みを浮かべる。
こいつにそんな笑みを浮かべさせるのは、きっと、あいつなんだろう。

「あいつが、あいつがいたから?」
「そうだな。友が、ストレイボウがいてくれたからだ。ただな……」

そこで一度、カエルは大きく息を吐いて目を閉じた。
瞼の裏には、これまで思い起こしてきた過去でも映っているのだろうか。
しばらくして目を開いたカエルは、力強く断言する。

「俺はあの時の十年が無駄だったとは思えない。時間を無駄にしたとも思えない。
 自慢じゃないがもし十年前、友を失い、魔王から逃げ、カエルの姿にされた直後にグランドリオンを渡されていても俺は受け取ることができなかったろうさ。
 俺にどうしろっていうんだとか、俺にこの剣を握る資格はないだとか言って逃げたに決まってる。
 万一手にしてたとしても、そのまま勢い任せで魔王城に突っ込んで返り討ちが関の山だったろうさ」

後悔はある。反省もある。

「逃げて逃げて逃げ続けた十年だったが、それでも、それでもだ。
 あの十年間、悩み、苦しみ、後悔し続けたからこそ、思い続けられたからこそ、俺はあの時、グランドリオンを俺の意思で手にとることができたんだ」

でもそこに自虐や嘲りの意思は感じられなかった。
こいつは本気で、今語った十年間を、何もなして来なかった十年間を今は肯定して受け入れてるんだ。
それはきっと、簡単なことじゃない。
十年かけて、十年もかけたからこそ、ようやくこいつは、受け入れられたんだ。

728Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:03:45 ID:lq/5fCmY0
「十年……。そんなにも僕にこのまま苦しみ続けろっていうのかよ。
 アナスタシアの大言壮語が本当なら後三時間もないっていうのに到底間に合わないじゃないか」
「そこだよ、小僧。俺が言いたいことは。ストレイボウの望んだことは」

そこ? そこってどこだよ。

「あいつは、足を止めろと言った。考えてから決めろと言った。したいことを慌ててとりあえずでいいから見つけろとは一言も言ってはいない」

それは、そうだけど……。

「今の俺の話を聞いただろ。お前がこうして悩む三時間は無駄にはならないさ。
 たとえこの三時間でお前がしたいことを見つけられなくとも、この三時間があったからこそ、お前はいつか、したいことを見つけ、したいようにあれるんだ」
「いつ、か」
「そう。いつか、だ。第一考えても見ろ。
 俺をぶん殴ってお前たちに説教したあのストレイボウは、十年どころか数百年も悩んだ末にようやく今、したいことを見つけれたんだぞ?
 それを三時間で成し遂げろだなんて無理難題もいいところだろうが。
 お前にも分かってるんだろ? 分かってるから苦しんでるんだろ?」
 あいつが俺たちに望んだ“したいようにあってほしい”というのは、ジョウイやオディオと戦うために、したいことを決めろということじゃない」

そうだ、あいつが、ストレイボウが、僕たちに望んだのは、“今”だけの話じゃない。
これから先の、ずっと、ずっとの話なんだ。
なら、したいことを考えるというのも、今だけのことじゃなくて。
これからも、何度も何度も考えては決め、考えては決めることで。
決めたはずのしたいことにさえも縛られるなということで。
だったら、あの言葉の意味は、あいつの、真意は――

「俺たちがこれからを、この先を生きていくいつかを目指して。“したいことを探し続けよう”。
 そういうことなんだって俺は受け取ったよ」

したいことを、探し、続け、る……?

「なあ、イスラ。お前はあの亡将との戦いで“生きたいとは、まだ思えない”などと言ってはいたが。
 “生きたいと思いたい”そうは願ってるんだろうさ。でなければそんなにも焦りはしまい。
 俺やストレイボウの言葉にも無関心で無反応でただそこにいるだけの存在だったろうさ」

迂闊にも見せてしまった僕の呆けた表情がそんなにも面白かったのか。
カエルは僕にふっと笑いかけて、

「お前は抜け殻じゃない。――ここまでだ。俺がとれる責任は、な」

そう話を締めくくった。
これで話は終わり。
もう話すことはないとばかりにカエルは僕に背を向ける。
僕は思わず、そいつを払いのけたばかりの腕を、今度はそいつに伸ばしていた。

729Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:04:16 ID:lq/5fCmY0
「おい、どこ行くんだよ。お前はどうするんだよ」
「さて、な。譲れない終わりだけが俺の宝石だと思っていたが、熱さを返そうとした当の友に、もう一度よく考えろと言われてしまったんでな。
 闇の勇者になってやると人様の夢まで継いじまったんだ。
 それこそ酒でも探して飲みながら、今一度ゆっくりと思いを馳せてみるとするさ」

冗談かそうじゃないのか判断しにくい言葉を残して、僕の腕をひらりとかわしたカエルは、そのまま遠ざかっていく。

「じゃあな、適格者。お前が嫌でも、時間が来ればまた会おう」
「おい、待てよ!」

その背中を、僕は今度は、自分の意志で引き止めていた。
こいつが襲撃してきたから僕はヘクトルを助けに行けなくて。
こいつが僕を庇ったから僕は死に損なって。
こいつがマリアベルを殺したからよりにもよってアナスタシアなんかに命を握られて。
こいつに関わると散々な目にあってばかりだけど。
それでも一つ、一つだけ。

こいつにしたいことがあったから。
伝えないといけない言葉があったのだと、今、思い出したから。

「カエル! 僕は確かに終わらせた! 全部じゃない! けど、大切な終わりを得た!
 お前があの時、余計なことをしやがったからだ! それだけだ、それだけだからな!」

730Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:04:50 ID:lq/5fCmY0

      振り返りもせずに隻腕を掲げ
ひらひらと手を振って
カエルは僕の前からいなくなった。
でもあいつとは、また会うことになるんだ。
また、か。
終わらせたはずの“いつか”。
振り払ったはずの“いつか”。
そんないつかも、あいつらが言うように
したいことを探し続けたなら。
僕はまた、新しくも懐かしい“いつか”へと
辿り着くことができるのかな?

            ▽

731Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:05:20 ID:lq/5fCmY0
【C-7とD-7の境界(C-7側) 二日目 日中】

【カエル@クロノ・トリガー】
[状態]:瀕死:最大HP90%消失 精神ダメージ:小 覆面 右手欠損 左腕に『覚悟の証』の刺傷
    疲労:中 胸に小穴 勇気:真
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:俺自身のしたいことも考えないとな
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:クロノ復活直後(グランドリオン未解放)


【イスラ=レヴィノス@サモンナイト3】
[状態]:ダメージ:中、疲労:中 
[スキル]:心眼 勇猛果敢 フォース・プリズナー№666(Lv1〜4)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:今はまだ、したいことはないけれど。“いつか”を望み、したいことを探し続けよう
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている)

732Talk with Knight  ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 18:07:25 ID:lq/5fCmY0
投下終了です
冒頭と結文にて、夜会話風に改行がおかしなことになってしまい申し訳ありません
夜会話風にスペースをいじっていたのですが、どうも上手く反映してもらえなかったようです
WIKIでは修正した上で収録出来れば幸いですが、無理なら普通の文体で収録します

733SAVEDATA No.774:2013/05/21(火) 18:44:10 ID:c4wb8hmQ0
執筆投下お疲れさまでした!
イスラ、立ち止まらないでいられてよかったなー。不安定さが抜け切ってないし、失ったものを一番気にしそうなこいつがどうなるか気になってたが、本当によかったわ
カエルの語りと、それに対するイスラの反応が巧妙で読んでて心地よかったし、なんかカエルがすごく大人に見えたわ。実際大人なんだけど、情けない過去を省みて、それを認めて伝えられるっていうのは、大人の魅力だなと感じたぜ
“したいこと”がまだ見つかってなくても、探し続ける過程はきっと、価値があるんだよな。立ち止まっても、俯いてしまっても、きっと明日を迎えられるような気にさせてくれる、素敵なお話でした

734SAVEDATA No.774:2013/05/21(火) 19:10:28 ID:hQYlf7Q20
執筆に投下、お疲れ様でした!
中央寄せ? なテキストからの「わあああ、夜会話! 夜会話だよぉ!」余裕でした……。
『サモンナイト3』にはこの企画をとおして初めて触ったのだけど、各話の戦闘が終わった後の
モノローグを眺めたり、夜会話したりの時間で心和む感覚も気に入ったんだよなー。

そして、各所で見てきたけれど◆iD氏、イスラがホントに巧い。
>多分、きっと、割りと、結構……好きだったよ。
こうやって、言葉で回り道して、ある意味では自分の本心さえ偽っていくところも、
それでも最後に、このままではイヤだと思えて相手に相対するところもたまらない。
氏や他の方から彼の魅力を教えてもらって、それが実プレイの追い風にもなったものです。
カエルもなあ、ゲームをやってて一番最初に「こいつカッコいいな、好きだなあ」と思ったヤツなんだけど、
よくよく考えてみればマジに不器用でダメで、食べ物なんか丸呑みに出来るカエルのくせに事実を
納得して飲み下すのには時間がかかってたヤツなんだよな……w
「うわぁ……」って反応に納得しちゃったくらいだったけど、けど、それでも「自分はいつか終わるだろうけど、
それは今じゃないしここでもないし、自分を終わらせる相手はお前でもない」みたいな思いにだけはまだ
正直でいられる二人にきっと無駄なものはない。
無駄なコトをやってたのかもなと笑ったり、あとで引いたりすることはあるかもしれなくても、酒と同じように
懊悩も足踏みも苦いと笑えりゃ上出来だと思う。
こういうことが出来そうだから、きっとカエルが好きで、こいつの話にそういう反応を返せるからイスラに
興味を抱くことが出来たんだろうなと、すっと水の沁みこむように思える話でした。
そんな話に触れられたことが、すごく嬉しくて楽しかった! GJっした!

735SAVEDATA No.774:2013/05/21(火) 19:14:59 ID:hQYlf7Q20
>>732
Wikiで調整したいのは、夜会話時の画面の表現(モノローグが真ん中寄せ)ですよね?
一応、真ん中寄せのタグは@Wikiにも存在してます。

#center(){ (本文) }

これで、なんとかなると思います。
本文の部分は改行なしでこのタグのなかに入れてやって、「&br()」という改行タグを
挟み込む感じになります(そうしないと、改行が反映されないはずなので)。

#center(){こうして、僕にはただ&br()時間だけが残された。&br()命も、道具も、全てアナスタシアに握られて…… }

こんな感じになるかな、と。
どうしてもひと手間かかる編集になってしまうので、時間がないよーって場合は
SS本文さえ収録してくだされば、こっちでいじっちゃうことも可能ですのでお気軽にどうぞ。

736 ◆iDqvc5TpTI:2013/05/21(火) 19:25:40 ID:lq/5fCmY0
>>735
まさにそのとおりです!>モノローグ〜
便利なタグを教えていただきありがとうございます。
時間はあるので自分でちまちまいじってみて、もしも無理ならその時は、お力をお借りします!

737SAVEDATA No.774:2013/05/22(水) 00:32:35 ID:nvxp2Pjg0
おお、来てみたら2本も投下来てた! 投下乙です!!

>天空の下で 
青空の下のストレイボウとピサロの邂逅。なんか涼やかでいいなあ。
前から思ってはいたが、ストレイボウがもはや悟りの境地に達している……!
雨夜のときはあんなひどい出会いだったのにw
ピサロともども勇者ひいては魔王についての考えも出てきたみたいだし、
オルステッドへの対面が楽しみになってくるぜ

>騎士会話
今度はカエルが悟りの境地に達してた! この元マーダーダメすぎますね(過去が)。
お互い、終わったはずなのに終わってない同士の会話がさわやかに熱い。
決めないこともまた決断ってのは、実にらしいと思います。
イスラもまだ道は続いているし、決断していないカエルもどうなるのか。続きが楽しみです!

あと、1点気になったのですが、カエルは現在ズタボロで覆面の状態ではなかったでしょうか。
文章的に、カエルの顔が見えたという風にとれたので。間違っていたらすいません。

738SAVEDATA No.774:2013/05/22(水) 01:54:58 ID:bf1lttzs0
>>737
指摘感謝です
いえ、当方、指摘されるまですっかり忘れていました
ズタボロ覆面蛙もそれはそれで不気味だったりしますのでw
その方向でイスラの悪態を修正させて頂きます

739 ◆iDqvc5TpTI:2013/05/22(水) 01:56:04 ID:bf1lttzs0
と、失礼
トリ出し忘れていました

740 ◆MobiusZmZg:2013/05/24(金) 12:53:35 ID:QkI15buI0
>>739
修正と前後して申し訳ありません。
Wiki関連では収録済みの作品を改変するといった問題があったので、こちらもトリつきで失礼します。

『Talk with Knight』について、Wikiへの収録を行なってみました。
普段の収録に加えて夜会話のパートと、それに続くシステムメッセージの部分をどう表現するかと
考えつつ区切り線であるとか……真ん中寄せの文章が多くなると、ちょっと行間の詰まり具合が
目立ってしまうので、独断でですが試験的に改行を加えさせてもらってます。
ただ、◆iD氏の見せたかったレイアウトや段落の分け方等は氏にしか解らない以上、これは差し出た真似です。
しかし編集し直すことは容易ですので、気軽に「もっとこうならない?」ですとか、あるいはご自身での修正をいただければ幸いです。
それと、修正が必要な箇所については通常の形式のままなはずなので、楽に修正は出来ると思います。
レイアウトについて考えていたあまり、ここが前後してしまったことは本当に申し訳ないです……。

741SAVEDATA No.774:2013/05/24(金) 13:28:45 ID:6r1zZBrI0
失礼します、専ブラを使用している場合に限りますがある程度、
◆iD氏の見せたかったレイアウトや段落の分け方 の参考になる方法があるので書き込ませていただきます。
今回の改行が上手くいかなかったのは半角スペースが続くとそれを省略する掲示板の仕様が原因です。
安価越しにチェックすればどのように見せたかったのかの判断材料にはなるかと思います。
長文失礼しました。

>>719>>720>>730

742SAVEDATA No.774:2013/05/24(金) 14:02:49 ID:QkI15buI0
>>741
お手数をおかけして申し訳ございません。
半角スペースなどの使用によるずれについては、すでに自分の知識としてあります。
その上で、……説明しづらいですがシステムメッセージの部分をどう埋もれないようにするか、
行間が詰まって見づらくならないよう、どう整えようかと考えていたという次第でした。
そちら以上の長文を繰っていながら、それを伝えられなかったことをお詫びします。
とりあえず、改行については詰めても見られるレベルだったので直しています。ご迷惑をおかけしました。

743 ◆iDqvc5TpTI:2013/05/24(金) 20:58:35 ID:N5te/xhw0
失礼します、◆iDqです
>>741の方、ご解説ありがとうございました
なるほど、そういう仕様だったのですね
長く使わせてもらっていましたが、今の今まで知りませんでした
お恥ずかしい限りです
氏の言うように、投下時の序文・結文は半角スペースの空白にて微調整をしまくっていました

また、WIKIに御収録いただきありがとうございます
こちらが投下から収録まで間を開けてしまったため、お手数おかけさせてしまい申し訳ありません
ただ、今回は、自前にあった>>735の方の申し出を私は断らせてもらっております
状況的には恐らく>>735の方=◆Mob氏と思われますが
ですので、まずは言ったように私に任せていただくか、或いは、事後報告ではなく、事前に編集してもいいか、お聞きいただければ幸いでした
真ん中寄せに関しては、投下時にこちらから助けを乞うた形なので問題なかったのですが
追加分の区切り線に関しては大丈夫なのですが、一部、意図していた再現とは誤った形に改変されていたため、修正させて頂きました

私不在で話が進んでいたため、先にこちらの方を直させて頂きました
カエルの覆面に関しての修正が後回しになってしまい、これからなことを謝罪させて頂きます
それでは

744 ◆iDqvc5TpTI:2013/05/24(金) 21:28:08 ID:N5te/xhw0
引き続きご報告します
カエルの覆面忘れの件についての修正が完了しました
大筋は変わりませんが、ところどころ、カエルの素顔が見えていること前提だった描写が変更されております
気になる方はご確認ください

745 ◆MobiusZmZg:2013/05/25(土) 06:08:14 ID:/.uitbnw0
ああ、トリップとまでも抜けてましたね……。
すみません、本当にそれしか言いようがありません。
書き手ならば作品をいじられて良い思いが出来るはずもないのに、事前にひと声
かけることも出来なかった自分が無能でした。本当に申し訳ありませんでした。

746 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:10:28 ID:rx0fW4yg0
投下します。

747聖女のグルメ 1 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:11:00 ID:rx0fW4yg0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


干し肉(固い)
パン(丸い)
ほしにく(量多め)
麺麭(ごつくて拳みたい)
☆肉(別にハイパーではない)
ブレッド(ジャムくらい寄越せ)
燻製肉(保存は利きそう)
水(炭酸ではない)
干しにく(投げたら誰か仲間にならないだろうか)
バケット(一応麦っぽい)
ぱん(武器に使えそう)
水(味はしない)
ほし肉(そもそもこれは豚なのだろうか、牛なのだろうか……)
ウォーター(魔法で精製したというオチはなかろうか)
くんせいにく(考え出すと、この燻製、何の植物でやったのだ……?)
アクア(そうか……すべては……そういうことだったのか……)
小麦粉でつくられ通常はイースト菌でふくらまされそれから焼かれる食物(ならばすべてはおそすぎる……)
数日間塩につけた後一晩水につけて塩抜きをしてから水を拭きひもで縛って吊るし、
金属の缶に包んだうえで底部に乾燥した木片を撒いて燃やし噴煙を浴びせた肉
(宇宙の全てが…うん、わかってきたぞ……そうか、空間と時間と俺との関係はすごく簡単―――――


「うわあ なんだか凄いことになっちゃったわ」

目の前に燦然と輝くその光景に、アナスタシアはそう感嘆せざるを得なかった。
肉、肉、肉。パン、パン、パン。肉パン、パン肉、にくにーく。
そんなものが眼前に広がっているのだ。彼女がそう漏らすのも無理は無かった。
「うーん、パンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンと
     パンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンと
     パンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンと
     パンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンと
     パンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンと
     パンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンとパンと
     干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と
     干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と
     干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と
     干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と
     干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と
     干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉と干肉がダブっちゃったか」
胡坐をかいて腕組みをしながら、アナスタシアは唸る。
落ち着いて考えてみれば、何の不可思議もないのだ。
ここに集まった6人、そして先の戦いで命を落とした者達、そして彼らが歩んだ道程で
手に入れたデイバック、かき集めて18人分。
そして1人のデイバックには成人男性相当で2日分の糧秣が入っており、
実質あの夜雨以降、まともに食事をとる余裕は誰にもなかった。
平均して、どのデイバックにも後1日3食分の糧秣は残っていた。
このパンと干し肉の海はできるのか。できる。できるのだ。
18人の3食分を全部同時にぶちまけるという狂気を容認するという条件下において。

748聖女のグルメ 2 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:11:42 ID:rx0fW4yg0
(あせるんじゃないわよ)
瞼を絞りながら、眼前の肉林を睨み付ける。
3食分ほど出して、パンと肉が連続した時点で、その無音の警告を感じるべきであった。
あのオディオが、人の食事に頓着するわけもないのだ。
その次は別の食物がでるだろうなどと、甘い考えを抱いたのが失着だったのだ。
全員に支給されたのはパンと干し肉と水のみ。
その考えに辿り着かず、行きつくところまで行った結果が、この肉林である。
(わたしは血が足りないだけなんだから)
自省しながらもその思考はやはりいろいろ足りていないのか、
するりと右手がパンを掴み、左手の指がつまんで千切り、口の中へパンを入れていく。
(ただおなかが減って死にそうなだけなんだから)
脳内でモノローグを終えるときには、既に3つのパンが眼前から消えていた。
「なにこのパン。グレた田舎小僧みたいな硬さ。こっちの干し肉は……おばあちゃん。うん、おばあちゃん」
ふうわりとは程遠い食感は、保存性以外の全ての美徳を投げ捨てていて、
表面に塩と固まった脂を浮かせた肉は、水気の欠片もない。
そんな、誰からも嫌われそうな食料であったが、アナスタシアの食するスピードは落ちなかった。
所作こそは貴人のそれを踏襲しているが、鬼気すら感ぜられるその食事は、優雅とは程遠い。
この世界には、彼女とパンと肉しかないのではないかとさえ思えるほど、唯一に閉じていた。

「よお」
その閉じたテーブルの対面に、1人の男が座る。
引いた椅子で床を鳴らすような無神経に、アナスタシアは僅かにパンを運ぶ手を止めて前を見た。
対面に胡坐をかいて座るは、天を衝くが如き怒髪の男アキラ。
その瞳には、いつもの真っ直ぐな気性には似合わぬ、僅かな陰りが感じられた。
「がつがつ、ぐぁつぐぁつ」
が、そんな所感などこの食事を妨げる理由にはならず、アナスタシアは再び肉とパンを喰らっていく。
思うに、この男は生き残りの中で今一番彼女と縁遠い。確かに2、3の語らいはしたが、
それこそ“状況が語らせた”ものに過ぎないのだ。
故に、アナスタシアは食事に没頭する。
少なくとも、目の前まで来て言葉に窮する男にかけてやる言葉など、彼女は持ち合わせていない。

実際、アキラの胸中はアナスタシアの見立てに近い。
アキラを羽虫か何かのように一瞥した後、アナスタシアはひたすら食事をしている。
まるでアキラのことを存在しないと思い込んでいそうなほど、その隔絶は明確だった。
その孤独の密度を前に、アキラの脳裏に影が過ぎる。幸運の怪物、蒼空の特異天。
あの悪夢が目の前の少女にダブったのは、気のせいだろうか。

(クソ、なんでこいつのところに来ちまったんだ)

749聖女のグルメ 3 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:12:20 ID:rx0fW4yg0
アキラは頭を掻きながら、ここまで自分を運んだ己の足を罵る。
だが、その罵倒が筋違いであることもアキラは承知していた。
そう、承知している。アキラは己がなぜここに出向いたかを承知している。
苦手に思う理由は山ほどある。
ユーリルの心を捕えていた茨の源泉である彼女に、好意を抱ける道理はない。
が、それを圧してでもアキラは彼女に言わなければならなかった。

(だけど、どう切り出すかな)
しかしいざ面を向かえば、苦手が顔を出す。
本題の中身が中身故、直球を投げるのも心苦しかった。
かといって好かぬ奴原と世間話をできるほど、腹芸が達者でもない。
(あー、もう、めんどくせえなあ)
そのため、ちらちらと飯を食うアナスタシアを横目にみることしかできぬアキラだった。
が、ふいに、アナスタシアを――アナスタシアの額に気づいた。

「あ、消えてら」
「――――ぶぁ(は)?」

アナスタシアがパンと肉を頬張ったまま間抜けな音をあげ、口からパンくずを溢す。
『なにを?』とか『なにが?』とか言うよりも、パンくずが地面に落ちるよりも早く。

「わたしの顔に落書きした屑野郎だァァァァァァァ!!!!!!!!」

鬼面の女が迷うことなく手近な石をブン投げてきた。
「危っ!? おいテメ、いきなり石投げる奴があるか!?」
慌てて投石を回避するアキラに、アナスタシアはさらに追撃を仕掛ける。
「だまらっしゃい! 善因には善果在るべし、悪因には悪果在るべしッ!!
 清きの柔肌に墨塗るような奴は焼いて砕いて轍になるべしッ!
 因果応報天罰覿面の道ォォォォォォ理ィッ、聖女<おとめ>の理此処に在りッ!!」
質量のある残像! 全身27ヶ所の関節を同時加速! 聖拳<ディバインフィスト>が火を噴くぜ!!
「いい加減にしやがれぇぇぇぇ!!!!!」
「痛っイイ!! お…折れるう〜〜〜〜!!!!!」
その幻想は、とっさにかけられたアームロックによってぶち殺されましたとさ。
まあ、全うなケンカもしたことのない小娘が近未来で生き抜いてきたアキラに素手ゴロで勝てるわけもなし。

「ど、どうかこの瞬間に言わせてほしい……『それ以上いけない』」
「お前が始めたんだろうがああああああああ!!!!」

ろくに力も込めていないアームロックを掛けながら、アキラは呆れた気分になった。
セッツァーと同等に見た自分が恥ずかしい。こんなバカなヤツに何を遠慮する必要があるのだ。
ただ、ただ謝らなければならないことを伝えるだけなのだから。

750聖女のグルメ 4 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:12:56 ID:rx0fW4yg0
「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというかミナデインしなきゃあダメなのよ」
「頼む、お前、もうホント黙ってくれ……」
干し肉を噛み千切りながら鼻を鳴らすアナスタシアに、アキラはぐったりと項垂れた。
「しっかし単調な味。ヘタクソなお遊戯みたい。バターかジャムかマヨネーズくらいないのかしら……
 あによ、不満そうに。悪かったっていったでしょうよ。お礼だってしてあげたでしょ?」
「それはアレか。あのヘタクソな味噌汁作るパントマイムのことか……ってンなことはいいんだよ!」
アナスタシアの応答を断つように、アキラは首を振った。
この女は泥沼だ。もがけばもがくほど、構えば構うほど引きずり込んでくる。
戯言に関しては全部無視するくらいが丁度いいのだ。
そうでなくては、この戯言に甘えて、永久に言えなくなりそうで。

「――――すまねえ」

咀嚼が途絶える。頭を下げたアキラのつむじが、アナスタシアからはくっきりと見えた。
「私が謝ることはあっても、貴方が私に謝ることなんてないと思うんだけど」
パンの切れ端で唇の脂を拭いながら、アナスタシアは距離を測るように言った。
その眼には退廃こそあれど、享楽はない。
「ちょこを、守れなかった」
絞り出されるように喉から吐き出されたのは、1人の少女の死。
その手に差し出されたのは、一枚の楽園。
夢に挑み、夢を歌い、そして夢を吸い尽くされた少女の成れの果て。

「助けられなかった。俺が、あいつを助けられなかった……!」
彼が頭を下げるべき話ではない。彼がどの程度疲弊していたかは言うまでもなく、
その中で彼は己が持てる者も、借りた力も全て使っている。
もうあれ以上に彼ができることなど、探す方が酷だ。
だが、それは彼にとって慰めにもならなかった。
あの時も、かの時も、そしてこの時も、彼だけが生き残った。生き残ってしまったのだ。
目の前の少女があの小さな子供を、どれだけ大事に思っていたかも知っている。
その上で今、目の前にあるものが全てなのだ。

アナスタシアはそっとカードを拾い、じっと見つめる。
怒っているのか、泣いているのか。濁った瞳は今一つ判別がつかない。
空いた手で手近な水筒を掴み、口の中のものをゆっくりと流し込む。
ぷは、と空いた水筒を煩雑に投げ捨て、言った。
「不思議なものね。もう少しクると思ってたんだけど」
2本の指で抓んだカードを揺らしながら、アナスタシアは嘆息した。
過程が抜け落ち、ただ結果のみ残された死は、アナスタシアに激情も落涙も齎さなかった。
あるいは、その現場を目撃すれば、せめて、放送の前にこの話をしている余裕があれば。
泣き叫び、狂い呻き、その死を受け入れなかっただろう。
時間とは残酷で、彼女の死はアナスタシアが否定も肯定もするまえに消化され<うけいれ>てしまった。

「ねえ、私の顔を見てくれない? 何も感じてないように見えて、実は涙を流してるとかそういうの、ある?」

751聖女のグルメ 5 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:13:31 ID:rx0fW4yg0
アキラが顔をあげた先には、アナスタシアの薄気味悪い笑みしかなかった。濁った瞳には涙の跡もない。
マリアベルが喪われようとした時に見せた、あの感情も拒絶をどこに置いてきたと聞きたくなるほどに。
「ない、か。これってひょっとして、どうでもよかったってことかしらね?」
「おい」
「ちょこちゃんには悪いことしたわね。わたしって、わたしが思ってる以上に薄情だわ」
「おい」
「ああ、まだ居たの。はいはい伝えてくれてサンキューね。用が済んだらオトモダチのとこに帰んなさい」
アナスタシアは速やかに会話を打ち切るべく、シッシと排斥を促す。
だが、アキラはその手首をつかみあげ、アナスタシアを強制的に立ち上らせる。
2人の視線が交差する。1つは退廃に濁り、もう1つは怒りに輝いていた。
「痛いんだけど。あなた、私に謝りに来たんじゃないの? 態度違わなくない?」
「……そのつもりだったがな、手前の腐り顔見たらその気も失せた」
確かに、アキラがここに来たのは、アナスタシアに謝るためだ。
ちょこがどれだけ、この女のことを信頼し、好意を抱き、共にありたいと願っていたか。
それを誰よりも知っているからこそ、それを叶えてやることのできなかった自分を許せず、
こうしてアナスタシアに頭を下げに来たのだ。
だがどうだ。目の前の女は、果たしてそれに値するのだろうか。
ちょこが抱いたイノリを受け止めるに値するほど、この女は良い女と言えるだろうか。
「手前はちょこに大した想いも持ってなかったかもしれないがな、
 あいつは最後まで、最後の最後まで、お前のことを想ってたんだよ!!」
アナスタシアを掴んだアキラの手が淡く輝く。ちょこをいやした時に掴んだ、
ちょこが抱くアナスタシアのイメージを、アナスタシアに送ろうとする。
「だから、分かれよ。ちょこがどれだけお前を想っていたのか、分かってやれよ!!」
「要らないわよ。そんな手垢のついたイメージなんて」
だが、突如バチリと力が奔り、アキラの手が弾き飛ばされる。
吹き飛ばされたアキラは一瞬驚愕し、そして再び怒りを浮かべた。
何のことはない。アナスタシアにイメージを注ぎ込もうとした瞬間、
接続された回路から、アナスタシアの思想が逆流したのだ。
アナスタシアの身体全てに染み渡り、詰め込まれた「生きたい」という唯一の想いが。

「聖剣貰う時に一回させてあげたからって、私が簡単に暴ける女だと思った?
 私の想いに干渉したかったら、ファルガイアを滅ぼす覚悟で来なさい」

せせら笑うアナスタシアに、アキラは怒りと苦渋を混ぜた表情を浮かべるしかなかった。
自分も満足な状態とはいえないが、それを差し引いてもここまで想いの密度が異なるとは。
私らしく生きたい。マリアベルに恥じないように生きたい。かっこいいお姉さんとして生きたい。
枝葉末端は異なれど、どの想いにも通ずるのは「生きたい」。アナスタシアを満たすのはその一念のみ。
アキラはやっと彼女がセッツァーに似ていると思った理由が、分かった気がした。
たった1つ懐いた感情――『欲望』ただそれだけで世界を捩じ伏せる。
『夢』と『欲望』。種類は異なれど、その在り方は紛れも無きあのセッツァーと同質だ。

752聖女のグルメ 6 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:14:40 ID:rx0fW4yg0
「手前は、それでいいってのか。生きたい、死にたくないってばかり言いやがって。
 守りたいものが無くなっちまったらそれで終わりか?
 ちょこのために、何かをしようって気にはならねえのかよ!!」
「少なくとも、今取り立てて思い浮かぶことは無いわね。貴方を砂にしても憂さも晴れるとは思えないし。
 それにね、『何がしたい』っての、今はそういうの考えたくないのよ。皆、ストレイボウに毒され過ぎよ」

まるで自分以外のものを蔑にするかのようなアナスタシアに吠えたが、
その返事として突然現れたストレイボウの名に、アキラは面食らう。
「したいことを決めたとしましょう。そのために生きようと思う。そこまではいいわ。
 その『したいこと』が強い想いであればあるほど、なるほど、その生は輝くわね。
 ……じゃあ、それが終わってしまったら? したいことをしてしまったら?」
意地悪く問いかけるアナスタシアの濁った瞳に、アキラはイスラを思い出した。
そして、その妖艶な笑みに、ユーリルの記憶の中で見たアナスタシアが重なった。
「『何かをするために生きる』ことは最後には『何かをするために死ねる』ことに至るのよ。
 だから、今は……いや、これからも本気で考えたくはないわね……
 何かをするために生きてるんじゃない。生きている私が何かをするの。私は、墓穴探して生きるわけじゃないのよ」
したいという願いは、いずれ人を死に誘う。純粋過ぎる生は、死と表裏一体なのだ。
故に誰よりも生を欲した欲界の女帝は生を濁す。輝かなければ、光は決して消えないと信じるように。

「不思議だな……ユーリルよりかは話が分かりそうなもんだが、あんたの方があいつよりクソに見える」
近くに並べられていたパンと肉を拾いあげ、アキラは怒りと共にそれを呑みこむ。
勇者と聖女。こうして2人の想いに触れたからこそ分かる。
アナスタシアとユーリルは置かれた立場は似ていても、その受け入れ方が真逆なのだ。
ユーリルは『自分は勇者だ』というところから始まり、
逆にアナスタシアは『私は英雄なんかじゃない』というところから始まっている。
そんな真逆なのに、アナスタシアがユーリルに同意を求めればどうなるかなど決まっている。
その答えがアナスタシアの思想に侵食されたあの茨の世界だったのだろう。
そう思えば、判別のつかない怒りがアキラに渦巻いてくる。
もし、あの時ユーリルに言った叫びをこの女に浴びせたところで、河童に水をかけるようなものだろう。
むしろ、好き勝手やった破綻者という点においては、アキラとして共感すべき点もある。
「死にたくねえから本気にならねえって言う奴よかは、あの雷<ヒカリ>の方がよっぽどマシだ」
だが、今のアキラには、アナスタシアの在り方は許容できないものだった。
勝手にしろと吐き捨てることが何故かできないほどに、アキラを苛立たせている。

753聖女のグルメ 7 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:15:12 ID:rx0fW4yg0
「それでいいのよ。貴方たちは貴方たちのために『したい』ことを探しなさいな。
 私は私が生きるために、目先の首輪を外すために全力を注ぐ。それでいいでしょ」
だが、そんな苛立ちすらアナスタシアには届かない。
問答はそれで終わりだと、聖剣を背にアナスタシアがどっかりと深く座る。
アキラもまた、それで終わりにすべきだとアナスタシアに背を向ける。
あの時、ちょこを戦いから引き離しておけば――そんな慙愧すら、あの女には勿体無い。
もはやアキラには、アナスタシアを気にする理由など、何一つあるはずも――

「あんたは、寂しくねーのかよ」

首だけで振り向いて、捨て台詞を吐く。
それは、アキラの言葉ではなかった。黒の夢を最後まで憐れんでいた一人の少女の切なる願いだった。
「一人で生きて、生きて……あんた、今、幸せか?」
ひとりじゃいやだと、あの子は最後まで言っていたのだ。
お前はどうなのだ。そんな子供と『けっこん』しようとしたお前は、それで幸せなのかと。

「そんなの決まってるでしょ」

そんなぶっきらぼうな問いに、ふう、と微かなため息をついて、彼女は微笑んだ。
退廃のままに、ただ、先ほどまでよりほんの少しだけ、熱を残して。

「幸せになりたいから、私は生きてるのよ」

754聖女のグルメ 8 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:15:45 ID:rx0fW4yg0
アナスタシアと別れて砂埃舞う荒野を歩きながら、アキラは思う。
イスラがアイツを嫌う理由がよく分かった。
アキラもアナスタシアとは、99%相容れないだろう。
分かり合えるとも思えないし、また、その気もない。
「それでも、寂しいって言えるなら、アンタはまだまともなんだろうよ」
だとしても、少なくとも、アイツはセッツァーとは違うのだ。
それだけは、アキラにとって喜ぶべきことだった。

「って、なんでンなことで安心してるんだ俺は……って、ああ、そうか」

不可思議な感情を辿り、アキラはその答えに辿り着く。
最後に見せたアナスタシアの眼が、ほんの少しだけ似ていたのだ。
水底に沈める前に眼帯を外したときに見た、あの彼女の瞳に。
機械仕掛けの英雄に遺された、唯一の人間に。


「あんたも、寂しかったのか――――なあ、アイシャ」


口にした名前と共に、アキラの脳裏にこれまでの道程が浮かび上がる。
ボロボロになって、能力を限界以上に使って、
そうやって歩いた道には、守れなかったものがあちこちに転がっていた。
一体、自分は何を成せたというのだろうか。
アキラのしたいことなど、最初から決まっている。『ヒーローになる』ことだ。
だが、『どうなっても大切なものを取りこぼさない者』が『ヒーロー』だというのならば、
果たして今の自分にそれを目指すことができるのだろうか。

「省みろ、か……」

ふいに、潮の匂いとともに僅かに冷たい北風がアキラの鼻を擽った。
北の大地をみつめながら、アキラは思う。
取りこぼしたもの、守れなかったもの、残ったもの、失くしたくないもの。
そして、それでも今ここに生きている自分。今こそ、それを見つめなければならないのかもしれない。
これからも、『ヒーロー』を目指すために。

755聖女のグルメ 9 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:17:40 ID:rx0fW4yg0
【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:ダメージ:中、疲労:大、精神力消費:大
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:本当の意味でヒーローになる。そのために……
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※松のメッセージ未受信です。


アキラの失せた荒野に、もぐもぐと咀嚼音だけが消えていく。
そこには道化めいた言葉も、作ったような表情もない。ただ無表情に滋養をかき集めている生き物がいた。
呻くような狼の鳴き声がする。紫の毛並を泳がせて彼女の横に侍ったのはルシエドだった。
セッツァーの幸運圏も収束し、実体化させられるほどにはアナスタシアも回復したらしい。
アナスタシアは何も言わず、ペットボトルの口を開いてルシエドの口元に流す。
ルシエドも何も言わず、それを舌で舐めていた。特段の意味は無い。ただの気分に近い。
「失望してる?」
主語も目的語も飛ばしたアナスタシアの問いは、今のくすんだ自分を嘲笑ったものだった。
明日を、未来を見つめない欲望は、ルシエドの好むところではない。
そう分かっていても、今のアナスタシアは――否、今のアナスタシアだからこそ、見つめたくは無かった。
「――私だってね。こんなしみったれた食事はごめんなのよ。
 もう少し、素敵なところで、おいしいランチを所望したいところ」
目を閉じて思う。例えば、美しい渓流の下で、水のせせらぎを聞きながら、
焼きたてのスコーンや卵のたっぷり入ったサンドイッチ、香ばしいアップルパイを食べたいものだ。
「でもその隣には、マリアベルも……あの子も、いないの」
それをみんなで一緒に食べられたら、どれだけ素晴らしいだろうか。何と輝く一枚の想い出になるだろうか。
だが、それはもう叶わない。彼女たちと共に歩む未来は、もう来ない。
あの子がいなくてもお腹は減るけど、あの子と一緒にご飯を食べることは、永遠にない。

756聖女のグルメ 10 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:18:20 ID:rx0fW4yg0
「アキラに言われなくたって、分かってるのよ。
 あの子が最後まで何を想っていたかなんて。きっと最後の最後まで、私を想ってくれた。
 そんな、あの子に、応えてあげたいと思う。何かしてあげたいと思う」

地面が、僅かに湿った気がした。水気にではなく、アナスタシアの懐く想いを吸収するかのように。
「でも、ダメなのよ……そう思ったら、どんどん、弱くなってくる。
 一人ぼっちで生きるくらいなら、って、思い始めてる……!!」
幸せになりたかった。今もなりたい。その欲望は今も高まり続けている。
ちょこを想えば想うほど、明日が色褪せていく。この先の人生に、共に寄り添ってくれると約束した少女はもういない。
強く明日を想えば想うほど、描かれる未来に欠けるものがくっきりと映ってしまう。
「マリアベルも、あの子も、そんなの望まない。だから私は生きたいって願うの」
ストレイボウのいう『したいこと』。
もしも、それを見つけてしまったら、私はきっとそれを叶えるだろう。
この欲望をその一点に集中させて、あらゆる障害を――オディオさえも――打ち砕いて叶えるだろう。
「したいことなんて、無いわ。理由をつけなきゃ生きられない人生なんて、それだけで不純よ。
 私は生きる。理由が無くても、未来に誰も待っていなくても、今に寄り添う人がいなくても」
そう想わないように、強く願う。
生きたい。生きたい。ただそれだけの想いを燃やし尽くす。
他は何も見ない。未来を想わない。したいことなんてない。死にたいなんて想わない。
例え、この青空の下に、あの小さな小さな光がもうないとしても、私は生きていく。
寄り添うと誓った良人として、ただ一人、バージンロードを歩いていく。

「きっと、それだけが、あの子に捧げられる返事なのよ」

ルシエドの毛並に己が身体を預け、アナスタシアは空を見上げた。
アナスタシアの感情に同調するように、空の感情にアナスタシアが同調するように、
澄んだ青空のはずの空が、くすんで見える。
きっとこの空が青空を取り戻すことはないだろう。
あの子のいない空はまるで夜のように暗くて、私はこれからそんな空の下を歩いていく。

少し、しんどい。


【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:首輪解除作業中 ダメージ:中 胸部に裂傷 重度失血(補給中) 左肩に銃創 精神疲労:中
[スキル]:せいけんルシエド 
[装備]:アガートラーム@WA2
[道具]:ラストリゾート@FF6
[思考]
基本:生きたいの。生きたいんだってば。どうなっても、あの子が、もういなくても。
1:『その時』にむけて、したいことをしよう
[参戦時期]:ED後

757聖女のグルメ 11 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:19:05 ID:rx0fW4yg0
<リザーブ支給品(全てC-7とD-7の境界(C-7側)に集められている)>

【ドラゴンクエスト4】
・天空の剣(二段開放)@武器:剣 ※物理攻撃時クリティカル率50%アップ
・魔界の剣@武器:剣
・毒蛾のナイフ@武器:ナイフ
・デーモンスピア@武器:槍
・天罰の杖@武器:杖

【アークザラッドⅡ】
・ドーリーショット@武器:ショットガン
・デスイリュージョン@武器:カード
・バイオレットレーサー@アクセサリ

【WILD ARMS 2nd IGNITION】
・感応石×4@貴重品
・愛の奇蹟@アクセサリ:ミーディアム
・クレストグラフ@アクセサリ ※ヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイ・ヴォルテック、ハイパーウェポン
・データタブレット×2@貴重品

【ファイアーエムブレム 烈火の剣】
・フォルブレイズ@武器:魔導書

【クロノトリガー】
・“勇者”と“英雄”バッジ@アクセサリ:クリティカル率50%アップ・消費MP半減
・パワーマフラー@アクセサリ
・激怒の腕輪@アクセサリ
・ゲートホルダー@貴重品

【LIVE A LIVE】
・ブライオン@武器:剣
・44マグナム@武器:銃 ※残弾なし

【サモンナイト3】
・召喚石『天使ロティエル』@アクセサリ

【ファイナルファンタジーⅥ】
・ミラクルシューズ@アクセサリ
・いかりのリング@アクセサリ

【幻想水滸伝Ⅱ】
・点名牙双@武器:トンファー

【その他支給品・現地調達品】
・召喚石『勇気の紋章<ジャスティーン>』@アクセサリ
・海水浴セット@貴重品
・拡声器@貴重品
・日記のようなもの@貴重品
・マリアベルの手記@貴重品
・バヨネット@武器:銃剣
*バヨネットはパラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます
・双眼鏡@貴重品
・不明支給品@魔王が初期に所持していたもの
・デイバック(基本支給品)×18*食品が現在アナスタシアが消費中


―――――――――――――――――――――――、

――――――――――――――――――――――――――――

758 ◆wqJoVoH16Y:2013/06/09(日) 20:20:04 ID:rx0fW4yg0
投下終了です。

759SAVEDATA No.774:2013/06/09(日) 21:16:17 ID:OO45orFs0
投下乙です。
ゲッターにゴローちゃんにやりたい放題詰め込んだ序盤に吹いたwww
ああもう、いいなぁ。
ここまでの積み重ねのおかげで、見ていてフラストレーションの溜まるほどの
アナスタシアの平坦さ(not肉体的な意味、感情的な意味で)がすごくらしく思えたり
そこで溜まったものを吐き出してくれるアキラに読んでいて救われて、
あんな答えを出したアナスタシアにもどこか共感できて。
アキラがポロって漏らしたカノンを省みるところとか、しんどいって思いながらも生きるために生きようとしてるアナスタシアとか大好きだ。

何度もこれが答えだ、って言わんばかりに主張してくれるロワだけど、そのたびにそれに劣らない何かを返してくるのがすごい人間臭くて、生きてるみたいですごい好きだ。
全く感想まとまらないけどすっごい楽しかったです。

760SAVEDATA No.774:2013/06/09(日) 23:17:16 ID:Dc1J1k/w0
執筆、投下お疲れさまでした!

ああこれ、アナスタシアだわ
この乾いた感じは、紛れもなくアナスタシアだなって思えた
たいせつな人を亡くして生きるのは辛いって、そんなの嫌になるくらい分かってる
分からざるを得ないくらいの時を、アナスタシアは過ごしてきたんだし、焔の災厄でアナスタシアが戦えたのだって大切な人たちと一緒に生きたいからなんだものね
でもだからといって、それを全て受け入れて認めてしまったら生きていられなくなるんだよなあ。自分の中の欲望と自分らしさを見限ることになっちゃう
そりゃあしんどいよな。しんどいに決まってる。そうやってでも生きていこうとするアナスタシアからは、どうにもない人間くささが漂ってた
このRPGロワでアナスタシアに感じてたのって、まさにこの、泥くさいほどの人間臭さだったから、余計にらしさを感じられたわ
けどだからこそ、アキラには受け入れられないところも多いのだろうなって思う
アキラが悪いってわけじゃあもちろんない。ただ、アキラが望むことの在りかは、アナスタシアの立ち位置からは遥かに遠い
けどだからこそ、互いに受け取れるものがあればいいなって思う
アキラの言葉は優しくて、まっすぐだから

ほんと今の生存者って、主催も含めて不器用でバカな奴らばっかりで、だからこそ魅力的だって、改めて思えました

761 ◆wqJoVoH16Y:2013/07/07(日) 21:52:15 ID:EsIb4FfY0
ピサロ、イスラ投下します。

762No.00「帝国軍諜報部式特別訓練」 ◆wqJoVoH16Y:2013/07/07(日) 21:53:57 ID:EsIb4FfY0
生きている間は輝いて。

思い悩んだりは決してしないで。

人生はほんの束の間だから。

いつだって時間はあなたから奪っていくよ。

――――――――――――――――――――――――世界最古の歌より。


土を踏む音が断続的に響く。踏みしめられた砂粒同士が噛み合い、砕けて粉になる。
鉄の軋む音が不規則に鳴る。銃身の中の駆動部が小さく動作を刻む。
足の運びは直線を選ばず、常に左右への動きを織り交ぜる。
左の銃口を常に前方へ、半身気味の身体を射線で覆う。
銃口の指し示す本当の前方へ、稲妻の軌道を刻んで疾駆する。
それが、イスラが行っていることの全てだった。

夏を想起させるほどの青空から照りつく太陽は容赦なく、
銃をつがえる左手の小指の先から汗が滴となって大地に吸い込まれる。
熱を吸う黒仕立ての上着は既に脱ぎ置かれていて、その背中にも汗が珠のように浮かんでいた。
カエルが言うだけ言って去った後、一人残されたイスラは「したいこと」を考え続けた。
だがカエルが言ったように、イスラが思ったように、イスラが求めるものはそんな一朝一夕で思い浮かぶことではない。
考えれば考えるだけ矮小な自分が頭をよぎり、思考を閉ざしてしまう。
だから、と言うわけではないが、イスラの身体は自然と歩くことを始めた。
立ち止まっていても何かが得られるとも思えなかったからか、単に座りっぱなしで体の節が痛みを覚えたからか。
イスラは銃の馴らしがてらに、身体を動かそうと思ったのだ。

唯一の懸念は銃や剣はおろか、全ての所持品を牛耳ったアナスタシアであったが、
そんな葛藤は肉とパンに囲まれて狼を枕に寝ているアナスタシアを見てどうでもよくなった。
3時間とほざいた大言壮語はどうなったのか、と言いたくもなったが、
寝てもなおしっかりと握られていた工具を見て、イスラはその言葉を飲み込む。
好き好んで会話を出来る相手ではないと経験しているイスラは、
寝ているのならば好都合と、集まった装備のいくつかと僅かな飲料水を見繕いその場を後にした。

763No.00「帝国軍諜報部式特別訓練」 ◆wqJoVoH16Y:2013/07/07(日) 21:54:52 ID:EsIb4FfY0
(僕の、したいこと……)
そうして元の場所に戻り、イスラはひたすらに銃を握って身体を動かしていた。
無論、専門の銃兵としての教育を受けていないイスラだ。今更銃撃戦をマスターしようなどとは露とも思っていない。
大ざっぱに狙って、なんとか引き金を引いて、かろうじて撃つ。その程度しかできないだろう。
だから、これはあくまでも訓練ではなく運動。気分転換に過ぎない。
強いて言うならば、馴らし。銃を握り続け、己が手――『ARM』に馴染ませる。
スレイハイムの英雄の教えを、少しでも身体に染み入らせるように。
銃口を向けた先、その先にあるものに少しでも手を伸ばすために。
一歩でも前に進めば、きっといつかにたどり着けると信じて。

――――貴方が、全てを失ってなお幾許かの想いを残すのであれば……“戦場を用意しよう”。

不意に、銃口の向く先が震える。
手を伸ばした先に見えるのは、影の如き黒外套。
己の行く先に立ち尽くすその影をみて、イスラは歯を軋らせた。
銃を下げ、続くステップを大きく踏む。前に倒れてしまいそうなほどの前傾姿勢から浮かび上がるのは、右手の剣。
自信の前方からみて己が半身にすっぽり隠れるようにしていた魔界の剣を現し、一気に踏み込む。
銃撃からの疾走でその影の懐に入り込む。後はその刃で、この手に立ちふさがるモノをこの手で。

――――違うよ、君は僕のことがきらいだろうけど。

死神の如き不吉をたたえた棍が、魔界の剣を弾き飛ばす。
見透かすように、敵足り得ぬというかのように、影はイスラの右手から刃を落とす。
そして影が煌めき、影の中から無数のツルギの影が浮かび上がる。
その全てがイスラが本来持っていたはずの、適格者であったはずの紅の暴君の形を取って。
無慈悲に、平等に――――

――――僕は君のことが嫌いじゃない、それだけだ。

顎を伝った汗が数滴、地面へ落ちる。
イスラの身体はおろか周囲含め何一つ異変など無く、変わらぬ太陽の熱光だけが降り注いでいた。
砂を削るような小さな音がして、イスラはそちらに目を向ける。
乾いた大地の上に、魔界の剣が突き刺さっていた。
じっと手をみる。確かめた右手には、びっしょりと汗が吹き出ていた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板