[
板情報
|
R18ランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
新アルテミスアナザーストーリー by BiBi
1
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2018/05/17(木) 20:09:42
ab.0001.info.01
『はじめに』
こんにちわ。BiBiといいます。ネット小説『生体実験』のアナザーストーリーを、ここ『したらば掲示板』に投稿していた者です。
ずっと投稿をサボっていましたが、また性懲りもなく再開させていただきます。しかも前回の続きからではなく、無謀にもオリジナルストーリーの設定を大幅に変更するという、アナザーにあるまじき暴挙をともなっての、最初からの再スタートとなります。
なお、この物語は、『SM小説 生体実験 (以降、『生体実験』、またはオリジナルストーリーと呼びます)』のアナザーストーリーです。オリジナルストーリーを既読である事を前提に書かれています。当アナザーの前に、オリジナルストーリーをお読み下さい。
下記の注意事項
>>2
-
>>5
をお読み下さい。
515
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/09(月) 21:01:51
ab.0421.Cyclops-P.11.32
(あぁ、なんだか眩暈がするわ)
貧血を起こしていた。見ると、もとから白磁のようだった肌は白蝋のように白くなり、桜色の唇も血の気を失っている。
ただしアルテミスの不死身体質は造血機能も飛躍的に高めるので、この程度の出血で意識を失う事はない。それどころか腰の上下するペースは遅くなるどころか、ますます速くなっていた。
『うぅむ、すごい出血だ。大丈夫かね?』
通信機のスピーカーからメビウス博士の声がした。アルテミスの状態は、コクピット内に設置されたカメラを通して見えている。しかし興奮状態の真性マゾには、メビウス博士の声は聞こえていない。
『はぁ……。どうかアテナ君にバレませんように……』
メビウス博士は困ったように独り言を呟くと、そのまま黙り込んだ。
何度目かの腰の突き上げで、尿道用の操縦桿が肥大したクリトリスをえぐり取った瞬間、アルテミスは全身を硬直させた。
「ぐひぃ! ひっ、ひ、ひ、ひくっ! い、イクッ! イグゥゥゥ!!」
もはや原形を留めていない秘裂から、潮が間欠泉のように噴出した。潮は血の色をしていた。
516
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/09(月) 21:02:31
ab.0422.Cyclops-P.11.33
アルテミスは三角木馬のようなシートに跨ったまま、絶えだえといった様子で、半ば失神していた。両手を吊るされていなかったら、シートから落ちてしまいそうだ。
(あ……あぁ……、こんなに気持ち良かったのは久しぶりだわ)
呆けたような顔で、自分の下腹部を見下ろした。シートも床も血の海だ。目を凝らすと、血に混じって小さな肉片と大便が散らばっている。
『ス君……ミス君……』
アルテミスは霞がかかったような目で、正面のカメラを見つめた。
『テミス君……アルテミス君?』
「あ……、ハ、ハイ、メビウス博士」
メビウス博士に呼ばれている事に、ようやく気付いた。
『アルテミス君、大丈夫かね?』
「はい、大丈夫です」
『そうか、それなら良いんだが。とりあえず操縦桿が滑って抜けてしまう事はなさそうだ。操縦桿のテストは終了だ』
「メ、メビウス博……」
『オリンポスに帰艦してくれたまえ』
メビウス博士は、アルテミスにみなまで言わせず、一方的に通信を切った。
517
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/09(月) 21:03:01
ab.0423.Cyclops-P.11.34
メビウス博士は通信を切ると、疲れたように溜息をこぼした。
「ふぅ……。危ないところだった。通信を切らなかったら、アルテミス君は間違いなく、テスト飛行を続けたいと言い出していただろうな」
そして手元のモニタを見ると、また溜息をこぼした。モニタには、下半身を血まみれにしたアルテミスが映っている。
「これ以上続けて、もしもそれがアテナ君にばれたらと思うと、もう気が気ではないよ」
アルテミスの友人のアテナは、キュクロプスPの操縦桿の件で激怒した事がある。その時は、アルテミスが自分の性的嗜好を告白して、なんとか怒りは収まった。しかし操縦桿の表面が棘で覆われている事を知ったら、さすがに黙っていないだろう。
「それにしても、まさかアルテミス君があそこまで乱れるとは……、とんでもない真性マゾだな」
別のモニタで、キュクロプスPの動きの録画映像を見た。映像の中で、キュクロプスPが宇宙空間をデタラメに飛行している。
(そういえば……)
アルテミスが腰を振るたびに操縦桿が不規則に動くので、キュクロプスPはデタラメに飛行する。しかしオリンポスには一度も衝突していない――、その事に、メビウス博士は気付いた。
(まさか半ば無意識のうちに、キュクロプスPをコントロールしていたのか……?)
メビウス博士は、アルテミスの操縦技術の高さを改めて知り、舌を巻いた。
518
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/09(月) 21:07:24
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP11 (
>>510-518
には、少しグロイシーンがあります。苦手な方はお読みにならないように。この章を読み飛ばしても、ストーリーの展開には影響ありません)
519
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/17(火) 20:42:00
ab.0424.intermission
>>3
『注意事項』にも記載されていますが、このアナザーストーリー全編に登場する人物、団体、地名、設定、世界観、その他全てが架空の物です。パロディーですらなく、完全に架空の物です。同じまたは似た名称があったとしても、それはただの偶然です。
520
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/17(火) 20:42:44
ab.0425.Prime Minister Dabu.06
ネオガイア星人が地球奪還作戦の準備を進めている頃、作戦の拠点に選ばれた日本は、新たに首相に就任した辞民党の駄部首相の大胆かつユニークな経済政策が功を奏して、史上まれにみる好景気に浮かれていた。
駄部首相の経済政策はダメノミクスと命名された。ダメノミクスは4つ政策で構成されていて、各々第一の柱、第二の柱、第三の柱、そして第四の柱と呼ばれた。
第一の柱では、少子化や年金問題といった辞民党政権下で起きた問題を、全て民捨党政権の失政によるものだという事にした。そのおかげで、辞民党への期待が一気に高まった。
第二の柱では、すでに破綻気味の年金を投入して、株価を引き上げた。年金破綻はさらに進んだが、株価上昇のおかげで、富裕層の懐は大いに潤った。
第三の柱では、平均賃金を正規雇用者だけの名目賃金で集計し、その一方で失業率を非正規雇用や休業者も就業者として集計して算出した。その結果、平均賃金が高くなり、失業率が低くなった。
第四の柱では、国の豊かさを示す指標の1つであるGDPの算出方法を変更して、計算上のGDPを引き上げた。
マスコミは、駄部首相のこの偉大な功績を毎日のように新聞の第一面で取り上げ、ネット上では、平日の真昼間から駄部首相を称賛する匿名の書き込みで溢れかえった。駄部首相は、民捨政権下で破綻した日本経済を立て直す、まさに救世主だった。
521
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/17(火) 20:43:51
ab.0426.Prime Minister Dabu.07
経済政策に先立って、駄部首相の最初の仕事は、内閣閣僚の任命だった。官房長官には、管(くだ)氏が任命された。駄部首相が記者会見などで使用する原稿の漢字にフリガナまで付けてくれる、とても頼りになる人物だ。他の閣僚も次々と任命された。誰もが駄部首相の事を気遣ってくれる、まさに適材適所といえる人選だった。
「閣僚はこれでいいでしょう。あとは検察庁ですね」
と、管官房長官。
「そので問題が1つあります。検事長の黒腹の定年が迫っています」
「黒腹?」
駄部首相が何かを思い出そうとするかのように天井を見上げたが、頭の中には何も思い浮かばない。
「誰だ、そいつ?」
「辞民党の守護神と呼ばれる人物です。辞民党の不祥事を全て不起訴にしてくれます。駄部内閣を盤石のものとするには、この守護神を検事総長にしなくてはなりません」
「ならすればいいだろ」
「いえ、今の検事総長が退任する前に、黒腹検事長が定年を迎えてしまうので、それは無理です」
「じゃあどうするんだ?」
駄部首相はカッとなって怒鳴り散らした。駄部首相は炎のように熱い漢(おとこ)なのだ。
「検察庁法ではなく公務員法を適用すればいいんですよ」
それに対して、管官房長官は冷静だ。と言うよりも、もとから常にしかめっ面なので、感情を読み取れない。
「検察庁法? 何だ、それは?」
熱い漢がさらに苛立ったように語気を強めた。
(まさかご存じないのですか!?)
管官房長官は喉元まで出かけた言葉をグッと飲み込んで、
「まぁとりあえずは黒腹の定年延長を発表して下さい。法的な問題は法務大臣に任せましょう」
と進言した。
数日後、黒腹検事長の定年延長が決定した。弁護士の資格を持つ法務大臣は、検察庁の人事に検察庁法ではなく公務員法を適用する前代未聞の人事について野党から追及されて、消え入りそうな声で『法の解釈を変更したから、全く違法ではない』と繰り返した。
522
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/17(火) 20:44:25
ab.0427.Prime Minister Dabu.08
内閣改造で内堀を埋め、検事長の定年延長で外堀を埋めた駄部首相に次に必要なのは、いわゆるブレーンの確保だった。適材適所で任命された閣僚は確かに優秀だったが、それとは別に頭脳となり得る人材が必要だったのだ。
「そういえば1人、優秀な男がいます。かなりの変わり者で、周囲からは異邦人などと呼ばれていますが、能力面では申し分ありません」
と、管官房長官。
「どんな奴だ?」
「実はすでに官邸に呼んでいます。今からお会いになりますか?」
管官房長官に呼ばれて、首相執務室に入ってきた鶉山は、にこやかに微笑んだ。
「はじめまして、総理。防衛省の鶉山です」
「おぉ、防衛省か。よく来たな」
駄部首相は防衛省と聞いて、嬉しそうに顔をほころばせた。
愛国心の強いこの首相は、愛読書のコミックに登場する、世界征服を目論むマッドサイエンティストと戦う地球防衛軍の司令官に自分を重ね合わせる事が好きで、防衛省に思い入れが強かった。
523
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/17(火) 20:46:20
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP
>>519-523
首相2
524
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/19(木) 17:50:16
ab.0428.intermission
>>3
『注意事項』にも記載されていますが、このアナザーストーリー全編に登場する人物、団体、地名、設定、世界観、その他全てが架空の物です。パロディーですらなく、完全に架空の物です。同じまたは似た名称があったとしても、それはただの偶然です。
525
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/19(木) 17:51:05
ab.0429.invasion.001
『侵攻』
駄部首相は今日も首相官邸でくつろいでいた。側近からはダメノミクス成功の報告が次々と届き、その一方で失敗や懸念材料を伝える報告は皆無だった。マスコミも毎日のように、ダメノミクスの成果を第一面で報道した。
ネットの匿名掲示板も、駄部首相を讃える投稿で溢れかえった。24時間365日、普通なら仕事や学校があるはずの時間帯でも投稿してくれる熱心な一般国民の活動に、駄部首相は感激した。
1週間前に秘書から手渡された予算案に関する資料にざっと目を通したが、書かれている内容がよく解らないので、見るのをやめた。
書棚から愛読書を1冊手に取った。駄部首相は勉強のために、毎日1冊ずつ本を読むのを日課にしていた。今日の1冊は、宇宙戦艦がエイリアンと戦うという内容のSFコミックだ。見ると、書棚には、大量のコミックがぎっしりと詰まっている。
(オレは宇宙戦艦の艦長だ。戦艦の名前は……ムサシ、ムサシがいい)
ページをめくりながら、主人公に自分を重ね合わせる。
(副官は……そうだ、中島亜矢だ。亜矢ちゃんはオレの副官で、恋人だ)
中島亜矢は、駄部首相のお気に入りの女子アナの1人だった。
コミックを読みながら白日夢に耽る、駄部首相の至福のひと時だ。その至福の時間を、電話の着信音が断ち切った。
「何だ? オレは忙しいんだ」
受話器を耳に当て、不機嫌そうに怒鳴りつけた。
「総理、大変です! テ、テレビをつけて下さい」
電話は管(くだ)官房長官からだった。
「テレビ? アニメの新番組でも始まったのか……?」
ブツブツ独り言を呟きながら、テレビをつけた。そしてテレビ画面を見て、口をポカンと開けた。
テレビには、緊張した面持ちの中島亜矢が映っていた。
『先ほど、さざなみ市上空に現れた謎の飛行物体は、依然として……』
声も、どことなく引きつっている。
526
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/19(木) 17:51:56
ab.0430.invasion.002
ここで、時間が少しだけ遡る。
1999年7月。宇宙船オリンポスでは、アルテミスがパーフェクトソルジャーとなり、由梨香が出産を終え、地球では日本の政権が民捨党から辞民党に移ってから、さらに幾日が経過した頃。
ついにネオガイア星人による地球侵攻が始まった。宇宙船オリンポスが、地球に降下を開始した。
オリンポスにドッキングしてた2隻の小型宇宙船――調査宇宙船と拷問研究所の宇宙船――は、衛星軌道上にとどまった。
ネオガイア星人の大半はオリンポスに乗り込み、2隻の小型宇宙船には必要最小限の人員しか搭乗していない。ちなみに2隻とも、ステルス機能によって、地球人に発見される心配はない。
オリンポスの降下先は、日本のさざなみ市だ。日本が選ばれたのはピタゴラス博士の勘違いが原因で、さざなみ市が選ばれたのはアルテミスの発言が原因だった。
オリンポスは、ネオガイア星のステルス機能によって、地球のレーダーで捉える事はできない。これは船体を透明にする機能も備えていて、肉眼で見る事もできない。
しかし、このステルス機能は、地球に降下する時にOFFにされた。あえてその巨大な船体を地球人に見せつけて、威圧するためだ。そんな訳で、地球人がオリンポスに気づいたのは、さざなみ市上空の雲を突き破るように、全長1キロメートルの巨大な船体が姿を現した時だった。
空気との摩擦熱でオレンジ色に発光しながら降下してくるオリンポスは、まるで地球人類を滅ぼすために天上から遣わされた怪物のようだった。ちなみに『空気との摩擦熱』と呼ばれているが、実際は空気が船体と擦れあって発熱しているのではない。
オリンポスは、さざなみ市の上空500メートルで停止した。
全長1キロメートルの宇宙船が高度500メートルに浮遊する光景は、まるでさざなみ市を覆いつくさんばかりだった。実際、船体で日光が遮られて、地上は夜のような暗さに包まれた。
人々は恐怖におののきながら、頭上を見上げた。しかしオリンポスが巨大すぎて、その形を視認する事ができない。
527
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/19(木) 17:52:28
ab.0431.invasion.003
ここで時間は、現在に戻る。
この未曾有の事態に、真っ先に現場に到着したのは、警察でも自衛隊でもなくマスコミだった。
テレビ局のレポーターが、オリンポスをバックに実況中継している。テレビ局では、女子アナの中島亜矢が、緊張気味の面持ちで原稿を読んでいた。中島アナの隣には、番組のレギュラーコメンテーターを務める、タレントのマツ子デトックスが座っている。
「先ほど、さざなみ市上空に現れた飛行物体は、依然として上空に停止したままです。正体は不明です。さざなみ市の皆さん、落ち着いて行動して下さい」
中島アナは一気にまくしたてると、一呼吸おいて、更に神妙な表情を浮かべた。
「ここでCMです。CMの後は、芸能界のご意見番マツ子デトックスさんを交えて、モデルの蛇原優里さんの恋人発覚疑惑の真相を探ります!」
ジャジャーン♪
効果音が流れ、番組は30秒のCMに入った。
528
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/19(木) 17:54:02
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP
>>519-523
首相2
>>524-528
侵攻
529
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/25(水) 18:23:37
ab.0432.invasion.004
場所は変わって、アメリカ合衆国ホワイトハウスでは、大統領ポッシュ3世が、大統領補佐官から、日本に出現した飛行物体の報告を受けていた。
「テロではないのだな?」
「はい。捕らえたテロリストを拷も……、過酷な尋問をしましたが、関与は認められません」
「尋問は誰がやった?」
「アメリカ軍の女性兵士です」
「だめだ。女兵士では、筋金入りのテロリストの口を割らせるのは無理だ。CIAで尋問しろ」
「いえ、大統領。その点は心配いりません。尋問を担当した女性兵士は、筋金入りの真性サディストです。彼女の尋問に耐えられる者は絶対にいません」
「そうか。で、問題の飛行物体について何か分ったか?」
「現時点で分かっているのは、大きさが全長1キロメートルある、という事くらいです」
「1キロメートル……」
ポッシュ大統領はゴクリと唾を飲み込んだ。1キロメートルというと、アメリカ海軍最大の空母の3倍ある。
「それと、あまり役に立つ情報とは思えませんが……、あの飛行物体の出現を予言していたという宗教団体があります」
「宗教団体? どうせ、のちに何とでも解釈できる表現を使っておいて、いざ事が起こったら『予言が的中した』とか言い出す、いつもの手口だろう」
「それが、そうでもないのです。大統領、これを」
補佐官が、1冊の本を取り出した。
「144ページです」
大統領はページをめくり、文字を指でなぞりながら読み始めた。その指が止まり、眉間にシワが刻まれた。
そこには、
『1999年7月、巨大な卵に乗って、恐怖の大王が降臨する』
そう記されていた。
「1999年7月という具体的な数字。そして『巨大な卵』というのは、あの宇宙船の形と一致しています。非科学的ですが、偶然とは思えません」
「まだ何とも言えないな。まずは、これの著者から話を聞きたい」
「それは不可能です。本の初刊の発刊日をご覧ください」
巻末には、1555年と書かれていた。
「その本は、400年以上も昔に書かれたものです。著者はもうこの世にいません」
「では本当に予言が当たったというのか? 著者の名前は?」
「ミシェル・ド・ノートルダム。信者はノストラダムスと呼んでいます」
「ノストラダムス? 初めて聞く名前だ。で、その宗教団体の名前は?」
「宇宙人類教団です」
「何だ、そのふざけた名前は? まぁいい。念のため監視しておけ」
「はい」
補佐官は短く返事をすると、声のトーンを落とした。
「大統領、例の飛行物体に関して、憂慮すべき懸念があります」
「何だ?」
ポッシュ大統領は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「この飛行物体は、透明になる事ができるようです。さらにレーダーをはじめ、いかなるセンサーでも捉える事ができません」
補佐官は一呼吸おいて、言葉を続けた。
「仮に出現場所が日本でなくワシントンDCだったとしても、これが頭上に現れるまで、我々は、その接近に気づく事すらできないという事です」
「…………」
「これが敵の兵器だとしたら、我が国の領空内への侵入を防ぐ術は、我々にはありません」
「…………」
ポッシュ3世は、疲れたように大きく息を吐て、ソファに腰を下ろした。
「主要各国と緊急会議を開きたい。ビデオ会議の手配をしてくれ」
530
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/25(水) 18:24:16
ab.0433.invasion.005
日本の首相官邸では、駄部首相が官房長官に怒鳴り散らしていた。
「あれの正体は何なんだ!? 何とかしろ! 俺は日本の総理大臣だぞ!」
「はい……粛々と対応を検討していますが……」
「あいつ、名前は……う、鶉山。あいつはどこに行った? こんな時こそあいつの出番だろ」
「それが……、先ほどから連絡が取れません」
管官房長官は額の汗を拭った。
「まぁ鶉山は変わり者ですから、行動は私にも予測不能でして……」
「そうだ! 年金問題や原発問題みたいに、あれも民捨党の責任という事にしろ」
「さすがにそれは無理です。辞民党で対策するしかありません」
「じゃあどうすればいいんだ! 何とかしろ! 俺を助けるのがオマエの仕事だろ!」
「とりあえず国民向けのパフォーマンスとして、緊急閣僚会議を開いて下さい。そうして時間を稼いで、アメリカがなんとかしてくれるのを待ちましよう」
官房長官は、緊急会議の準備とマスコミへの緊急記者会見の準備のため、部屋を出て行った。
1人残った駄部首相は、ソファに座り込んだ。
「こんな事なら、民捨党政権のままが良かった」
独り言を呟き、頭を抱えた。この未曽有の事態に対して、何一つ対策が思いつかない。
その後に開かれた緊急記者会見では、ひたすら「民捨党が」を繰り返した後、事前に決められたメディアから事前に決められた質疑応答を済ませると、そそくさと会見会場を立ち去った。
531
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/25(水) 18:24:57
ab.0434.invasion.006
駄部首相が頭を抱えている頃、アメリカ、ロシア、英国、フランス、中国。主要5か国の首脳によるビデオ会議が開かれていた。全員が、日本上空に出現した謎の飛行物体に関する会議だと分かっているので、やや神妙な面持ちだ。
会議の冒頭に、さざなみ一般市民が偶然撮影しネット上に投稿した、オリンポス出現の動画が再生された。映像には、雲を突き破るように降下してくる巨大な物体が映っている。
「諸君」
ポッシュ大統領が、モニタ越しに各国の首脳を見回した。
「すで知っていると思うが、この物体には、未知のテクノロジーが使用されている」
レーダーにまったく映らないという強力なステルス技術、そしてジェットもプロペラも使用せずに、全長1キロメートルの巨体を空中に浮遊させる技術だ。
「腹の探り合いはやめて、単刀直入にお尋ねする。これは、諸君たちのいずれの国の物かね?」
「我が国でもない」
「うちも違うぞ」
ポッシュ大統領の質問に、どの国も関与を否定した。
「うむ、分かった。アメリカも関与していない」
ポッシュ大統領は小さく頷いた。
「諸君。これの正体が何にせよ、大きな脅威である事には変わりない」
「まさか宇宙人、とかじゃないだろうな?」
「なら金星人か火星人あたりか?」
「いや、クリプトンかバルカン星人かも知れないぞ?」
各国首脳たちは冗談を交わしながらも、どの顔にも狡猾そうな表情が浮かんでいる。全員が内心では、この物体を開発した者と接触して未知のテクノロジーを独占できないかを、考えているのだ。
532
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/25(水) 18:25:31
ab.0435.invasion.007
そんな時、北朝鮮から、ビデオ会議に割込みの通信が入った。
「ん? 北朝鮮から? こんな忙しい時に何の用だ……?」
北朝鮮は取るに足らない小国だが、一応は核保有国なので無視する事はできない。ポッシュ大統領は渋々回線を繋いだ。
「重大な……発表……をする」
北朝鮮の通信回線は低品質で、音声が途切れ途切れだ。
「こ……の飛行……物体は、偉大な将軍さ……まが開発……なさった……人類史上かつてない……強力無比な新兵器である」
数秒の沈黙の後、
「あはははははははは!」
「ぎゃははははははは!」
「オイオイ、新兵器って、笑い殺す兵器か?」
「お、おい、やめろ。ヒーヒヒヒ……ほ、本当に死んでしまいそうだ。アハハハ……」
一同は笑い転げた。
中国主席だけは笑うのを我慢していたが、見ると、鼻の穴がヒクヒクしている。
「邪魔だ、さっさと切っちまえ!」
北朝鮮の高官が何か言おうとしたが、回線が切られた。
「着信拒否にできないのか?」
「既読無視というのはどうだ?」
「アハハハ、おい、これ以上笑わせるな」
「ヒィーヒヒヒヒ」
ついに中国主席も我慢できず、笑い声をあげた。
533
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/03/25(水) 18:26:32
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP
>>519-523
首相2
>>524-533
侵攻
534
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/06(月) 20:06:05
ab.0436.invasion.008
日本のテレビ局では、CMの間、人気女子アナの中島亜矢が、現場のレポーターをスマホで怒鳴りつけていた。
「この特別報道番組のために、プロ野球選手との合コンをわざわざキャンセルしたんだからさ! もうちょっとマシなネタを探してよね!」
「すみません、すみません、すみません」
現場のレポーターの泣きそうな声が返ってくる。
「ヘリでも何でもいいから、その変な物に乗り込んでよ!」
「そんな……無理です」
「無理? アンタ、そんなんじゃいつまでたっても現場担当よ? この役立たず!」
CMが終わり、番組が再開した。中島アナは、素早くスマホを切った。カメラに向き直った時には、清純派で人気の女子アナの顔に戻っていた。
「蛇原優里さんの恋人発覚疑惑の次は、女優の永沢エリカさんのその後について迫ります!」
ジャジャーンと効果音が流れた。
「マツ子さん、永沢エリカさんが先日の記者会見で涙を流していましたが……、それをご覧になってどう思いましたか?」
中島アナは、隣に座っているマツ子デトックスに話をふった。マツ子デトックスは、インテリコメンテーターとして有名なタレントだ。
「あんなのウソ泣きに決まってるわよ。あの厚化粧で有名なエリカが、アイラインをつけずに記者会見に来たのよ?」
アイラインとは、目をくっきりと際立たせるために瞼に塗る化粧品だ。これをつけた状態で涙を流すと、目の下に垂れてくるのだ。
マツ子デトックスが熱弁をふるっていると、番組スタッフが中島アナにメモを手渡した。
中島アナは、そのメモに目を通して、大きく頷いた。
「途中ですが、たった今、首相官邸から重大な発表がありました!」
マツ子デトックスは、話を途中で遮られて不機嫌そうな顔をしたが、何も文句は言えなかった。芸能人のスキャンダルや一般視聴者からの不倫嫁姑相談では饒舌を誇るインテリタレントだが、政治経済やサイエンス、芸術や文学などの分野は専門外なので、さざなみ市上空に出現した飛行物体に関しても発言できる事はないのだ。
「駄部首相は緊急閣議の結果、さざなみ市上空に出現した謎の飛行物体の呼称を『卵型UFO』にする、と発表しました! ここでいったんCMに入ります」
ジャジャーンと効果音が鳴り、番組はCMに入った。
CMの後、永沢エリカのウソ泣き疑惑について、芸能界のご意見番マツ子デトックスの鋭い指摘が花を咲かせた。
535
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/06(月) 20:06:38
ab.0437.invasion.009
主要国首脳によるビデオ会議は、紛糾していた。
最初のうちは本心を隠していたが、次第に、日本上空に出現した飛行物体に使われている未知のテクノロジーの独占を主張し始めたのだ。
ちなみに、飛行物体が出現地点である日本の権利を主張する者は、1人もいなかった。
「日本はアメリカ合衆国の同盟国だ。だから飛行物体に関する権利はアメリ……」
そんな時、各国首脳に熱弁中のポッシュ大統領の姿が、ビデオ会議のモニタから忽然と消えた。
「カ合衆国にあ……れ?」
ポッシュ大統領は周囲を見回して、自分が知らない場所にいる事に気づいた。
「何だ? ここはどこだ?」
「宇宙船オリンポスの中だ」
背後から声がした。声のした方を見ると、白人男性が1人立っている。
「誰だ!? 宇宙船だと? 馬鹿な冗談はやめろ」
ポッシュ大統領が気色ばんだ。くだらないジョークを言って周囲を凍らせるのは好きだが、ジョークを言われるのは嫌いだった。
「オリンポスは、日本の上空に停泊している宇宙船だ」
「日本の上空……、例の飛行物体か!」
「我々はネオガイア星から来た、オマエから見れば宇宙人という事になる」
「う、宇宙人……?」
地球人はいまだに地球外生命体との接触がない。ポッシュ大統領は、いきなり宇宙人だと名乗られて、訝しげな表情を作った。
しかし、すぐに、
(こいつが宇宙人かどうかに関係なく、このオリンポスという物体に未知のテクノロジーが使用されているのは確かだ)
側近の閣僚にしか見せた事のない狡猾そうな顔になり、マスコミ向けの温厚そうな顔に変わった。
「そ、そうか。私はアメリカ合衆国の大統領ポッシュ3世だ。ネオガイア星の諸君、地球へようこそ。地球人を代表して、諸君たちを歓迎する」
「…………」
「できれば友好関係を築いていきたい。アメリカ合衆国……、いやポッシュ家が、キミたちとの交易の窓口になろう。ポッシュ家は、何人もの大統領を輩出した名門なのだ」
「…………」
宇宙人だと名乗るその男は、ポッシュ大統領の話を無言で聞いていた。
536
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/06(月) 20:07:20
ab.0438.invasion.010
「な、何か私は変な事を言ったかね?」
ポッシュ大統領は少しムッとしたように、口をへの字に曲げた。無視されるのは、ジョークを言われるよりも嫌いなのだ。
「例えば……」
男が口を開いた。
「オマエが1匹のサルを捕まえたとしよう。そのサルから『自分が交易の窓口になる』と言われたら、どう思う?」
そう言って、男――ヘラクレスが侮蔑の笑いを浮かべた。
「へ? サル?」
30秒ほどして、言われた事の意味をやっと理解できたポッシュ大統領は、怒りで顔を真っ赤にさせた。チンパンジーに似た顔が、ニホンザルのように変わった。
「わ、私を誰だと思っている! アメリカ合衆国の大統領だぞ!」
「いい事を教えてやろう。オマエをアメリカから日本上空のオリンポスまで移動させた装置は、物質転送装置という。その名の通り、離れた2つの場所を瞬間移動させる技術だ」
「そ……それがどうした」
「分からないのか? なんて愚鈍な頭脳だ」
ヘラクレスは、あからさまに侮蔑の表情を浮かべた。
「つまりだ、物質転送装置を使えば、オマエたち地球人がどこに隠れようと、簡単に捕らえることができるし、軍事基地をはじめどんな施設へも、軍隊を送り込む事ができる、という事だ。地球人には、それを防ぐ手段はない」
1分近くして、ようやく意味を理解できたポッシュ大統領は口をポカンと開いた。
「物質転送装置1つをとっても、ネオガイア星人は圧倒的に優位な立場にあるのだ。にもかかわらず交易などとは……、これが笑わずにいられるか?」
ポッシュ大統領は、その場にへたり込んだ。
実際、物質転送装置は、それを持たない種族に対して、圧倒的な兵力になった。その気になれば、政府要人を簡単に誘拐できるし、軍事施設などに軍隊や爆弾などを転送する事もできる。
一定以上のテクノロジーを持つ星間種族は、この物質転送技術を使った攻撃を防ぐ装置を所有している。しかし地球人には、この攻撃から身を守る術はないのだ。
「3日間の猶予をやろう。その間に地球人は全ての武装を放棄し、ネオガイア星人に無条件降伏しろ」
ヘラクレスはそう告げると、ポッシュ大統領をホワイトハウスに転送した。
537
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/06(月) 20:07:55
ab.0439.invasion.011
ポッシュ大統領はホワイトハウスに戻ると、主要国の首相にネオガイア星人の事を話した。交易による利権を独占できない以上、主要国に情報を提供して、リスクを分散する方が賢明だと判断したのだ。
「…………」
「それは本当なのか? にわかに信じられんが……」
「こんなくだらないジョークを言って何になる? 全て本当だ」
「ネオガイア星人といったな? じゃあその未知のテクノロジーを我々主要国で独占するというのは……」
「無理に決まってるだろう! それどころか我々は絶滅の危機に瀕しているのだ」
「抵抗できないのか?」
「その宇宙人は『地球人は全ての武装を放棄しろ』と言ったのだろう?」
「そうだ」
「つまり地球人の武器は連中に効果がある、という事ではないのか? もしも全く効果がないのなら、武装放棄させる必要はないだろう?」
「…………」
「とりあえず今は、無用なパニックを防ぐために、国民には宇宙人の事は伏せておこう」
「では飛行物体の正体をどう説明するんだ?」
「そうだな……、北朝鮮が開発した新兵器って事にしておこう。北朝鮮も否定はしないだろう」
こうして、さざなみ市上空に浮遊する飛行物体は、北朝鮮が開発した飛翔体だが現時点では特に危険はない、と発表された。この発表を北朝鮮が否定する事はなく、むしろそれに便乗して、自国の技術力の高さをアピールした。
538
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/06(月) 20:09:04
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP
>>519-523
首相2
>>524-538
侵攻
539
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/14(火) 18:33:15
ab.0440.invasion.012
駄部首相のもとに、アメリカ大統領ポッシュ3世からホットラインがかかってきた。
「こ、これは、ポッシュ大統領」
駄部首相は受話器を持ったまま、愛想笑いを浮かべた。
『Mr.Dobu。日本の上空に出現した、例の飛行物体の件だが……』
ポッシュ3世は駄部首相を『Dobu』と呼んでいた。ただの勘違いなのだが、駄部首相本人は、自分がDabuではなくDobuと呼ばれている事に気づいていない。
『日本では何か進展はあったのか?』
「はい。例の飛行物体への対応について、緊急閣議を開きました。そして検討に検討を重ね、重大な決定をくだしました」
『重大な決定だと? まさか日本だけで攻撃するつもりなのか?』
「い、いえ。飛行物体の呼称を『卵型UFO』とする事が決定いたしました!」
『…………』
「あ、あのぉ、もしアメリカ合衆国ですでに呼称が決まっているなら、そちらに変更し……」
『オリンポスだ』
「へ?」
『オリンポスだ。あれの名前はオリンポスだ』
「オリンポスですか。ブラジルの山の名前ですね」
『ギリシャだ!』
ポッシュ大統領はおもわず激昂したが、深呼吸をしてなんとか気持ちを落ち着かせた。
『そんな事はどうでもいい。あれの正体が判明したのだ』
「はい。北朝鮮の新兵器ですね?」
『北朝鮮があんな物を作れる訳がないだろう!』
ポッシュ大統領は、さざなみ市上空の飛行物体がネオガイア星人と名乗る宇宙人の物である事、ネオガイア星人が地球人を遥かに上回るテクノロジーを持っている事、武装放棄と降伏を迫られている事を、駄部首相に話した。
主要各国の首相たちはポッシュ大統領の話をすぐに理解したが、駄部首相が理解できるまで30分以上も要した。
『我々はエイリアンどもの侵略には屈しない。各国と結束して抵抗の準備を始める。アメリカの同盟国である日本も参加してもらう』
「え!?」
『話は以上だ、Mr.Dobu』
そう言って、ポッシュ大統領は一方的にホットラインを切ってしまった。
540
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/14(火) 18:34:09
ab.0441.invasion.013
ポッシュ大統領は、軍事力が比較的ある国のリストを作って、各国の首相宛に、人類の同盟と宇宙人への徹底抗戦を打診した。
「シュレッダー首相、久しぶりだね」
「これはポッシュ大統領。前回の国連以来だね」
今回の電話の相手は、ドイツのシュレッダー首相だ。
「実はシュレッダー首相に重要な話があるのだ。例の日本上空に浮遊する物体の事だが――」
ポッシュ大統領は、その飛行物体がネオガイア星人のものである事、ネオガイア星人が地球人の征服を目論んでいる事、そして宇宙人に抵抗するため全人類が同盟を結ぶ必要性を、かいつまんで説明した。
シュレッダー首相は、さすが国の首相を務めるだけあって、話を1回聞いただけで理解した。
「うぅむ、まさか宇宙人の船だとは……」
「うむ、にわかに信じがたいが、事実だ」
「イヤイヤ、あれを北朝鮮が製造しという話よりは、ずっと真実味があるよ。一般市民はともかく、一国の首脳の中に、北朝鮮のホラ話を信じるようなマヌケはいないだろう」
「いや、実は1人だけいる」
ポッシュ3世は疲れたように天井を仰いだ。
「まぁ当の北朝鮮は得意満面で、自分たちの新兵器だと騙っているんだし、そういう事にしておこう。で、シュレッダー首相、宇宙人に抵抗する同盟の件だが、協力してくれるかね?」
「うむ、当然だ」
こうして、ドイツのシュレッダー首相をはじめ、どの国の首相も宇宙からの侵略者という話は半信半疑だった。しかしポッシュ大統領の説得のおかげで、多くの国が同盟への参加を承諾した。
同盟への参加を拒否したのは、中国と韓国の2国だけだった。
中国は、その異常に強い自尊心が、アメリカが同盟のリーダー的な立場になる事を許せず、参加を拒否した。
韓国は、宇宙人が日本上空に停泊しているのは日本の責任だと言い出し、日本が謝罪と賠償をしないかぎり同盟に参加しないと発表した。
では中国と韓国が日本と同盟を結んだかというと、そんな事はなかった。日中韓の3カ国は、世界から、侮蔑を込めて惨国民と呼ばれた。
宇宙からの侵略という、全人類、もしかしたら地球に生きる全ての生命体が滅亡の危機に直面しているというのに、地球人は互いに手を取り合う事ができなかった。
541
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/14(火) 18:35:56
ab.0442.invasion.014
ポッシュ大統領と各国首脳の会談に使用されたホットラインは、絶対に傍受できないと言われるほどセキュリティーが厳重だった。しかし高度なテクノロジーを有するネオガイア星人には、内容が筒抜けだった。
意外な事に、それで困ったのは地球人ではなく、むしろネオガイア星人の方だった。
たしかにネオガイア宇宙軍の戦力をもってすれば、地球人を武力制圧するのは容易だ。しかし不用意に地球人を武力制圧すれば、グレイから警戒される恐れがあるのだ。それは何としても避けたかった。グレイには、『ネオガイア星人は取るに足らない弱小種族』と思わせておく方がいい。
「このオリンポスの巨大な船体と物質転送装置の威力を見せれば、降伏すると思ったのだが、まさか抵抗を考えるとは……」
オリンポスから地上を見下ろしながら、ヘラクレスが忌々し気に呟いた。
「仕方ない。ここはやはり計画通り、この日本を拠点に少しずつ占領範囲を拡げていくしかないだろう。まず手始めに、さざなみ市の地球人どもを奴隷にしよう」
と、ピタゴラス博士。
「全く忌々しい下等生物どもだ。こんな連中が我々の先祖とは、実に嘆かわしい」
2人のネオガイア星人は、ヤレヤレといった風に肩をすくめた。
542
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/14(火) 18:36:41
ab.0443.invasion.015
オリンポスは、さざなみ市の上空500メートルに浮遊したまま、周囲に半径50キロメートルのバリアを張った。それはさざなみ市全体を覆いつくすのに十分な大きさだった。
さざなみ市の内外をつなぐ道路の数か所に、バリア解除装置が設置された。バリア解除装置は、車が1台通れるほどの隙間をバリアに開ける装置で、これによってさざなみ市への出入りが可能になる。
次に、アテナが開発した飲料型マゾ化薬が、さざなみ市の水源に混入された。
飲料型マゾ化薬は、梅本由梨香に使用された注射型マゾ化薬と比べて、効果の持続時間が数か月と短く、効力もずっと弱かった。しかし注射型と違い、飲料水などを介して投与が可能なので、浄水場や河川に混入すれば、広範囲の地球人に一気に投与する事ができる。
「フフン、地球人が虫のようだ」
ヘラクレスはオリンポスから地上を見下ろして、鼻で笑った。
「地球人どものTVをジャックして、連中に、我々の恐ろしさを教えてやろう」
「うむ。では……、マゾ化薬を混入した事だし、もう少し楽しもうではないか」
隣で、ピタゴラス博士が悪魔的な笑みを浮かべた。
543
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/14(火) 18:41:11
ab.0444.invasion.016
駄部首相はパニックに陥っていた。想定外の状況が目まぐるしく変化して、脳細胞が処理できないのだ。日本上空に全長1キロメートルの物体が浮遊している現状では、得意の国民向けのパフォーマンスもたいして効果はない。
できる事といったら、管(くだ)官房長官を呼び出して、怒鳴り散らすしかなかった。
「何とかしろ! 俺が失敗しないようにするのがオマエの仕事だろ!」
「はぁ……。まずはポッシュ大統領と会談をしてみては……」
「そんな事できる訳ないだろ! ポッシュと話なんかしたら、色々と要求されてしまうだろ! オマエ馬鹿じゃねぇの?」
「ば、ばか……ですか」
「そ、そうだ。民捨党だ。民捨党政権が悪かったせいで宇宙人が攻めてきた、という事にしろ」
「さすがにそれでは国民は納得しません」
「じゃあ……、え、えと……、そ、そうだ! 鶉山、あいつを呼べ!」
「はい」
管官房長官が鶉山に連絡を取ろうとしたその時、テレビの電源がついた。テレビに金髪碧眼の白人男性が映っている。
「我々は、ネオガイア星からやってきた宇宙人だ。地球は我々の所有物である。それから……」
有無を言わさぬ口調で語るのは、ピタゴラス博士だ。
「さざなみ市の水源に、人間をマゾに変える薬を混入した。水道水を飲めば飲むほど、マゾになっていく。飲んでマゾになるか、飲まないで脱水症状に陥るか、好きな方を選ぶがいい」
そこでテレビが切れた。
駄部首相と管官房長官は、茫然とテレビを見つめて、数秒後、両目を大きく見開いた。テレビのコンセントが抜けているのだ。
この映像は、日本だけでなく全世界に流れた。テレビ、パソコンモニター、携帯電話やスマホの画面など。しかも、コンセントを差し込んでいない機器や、バッテリー残量がゼロの機器まで全てだ。
さざなみ市の水道水の成分が調べられたが、薬品の類は全く検出されなかった。
しかし上空に浮遊する巨大な物体の存在と、件の映像ジャックの事実から、人々は、映像の男が地球人を遥かに上回るテクノロジーの持ち主である事を悟った。人間をマゾに変える薬の話を疑う者はいなかった。
マゾ化薬を混入されたさざなみ市の水は、被虐水と呼ばれるようになった。
544
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/14(火) 18:42:25
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP
>>519-523
首相2
>>524-544
侵攻
545
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/21(火) 19:21:49
ab.0445.invasion.017
アメリカのポッシュ大統領は、大統領執務室でピタゴラス博士の映像を見て、激怒した。
「宇宙人どもめ。せっかく北朝鮮の新兵器という事にしたのに……、もはや隠しておくのは無理だ」
大統領補佐官を呼び出した。
「日本に一番近いミサイル原潜はどれだ?」
「パリス・トランポリンです」
「もう我慢ならん! あの忌々しい宇宙人に核ミサイルを撃ち込んでやれ。先制攻撃で一気にけりをつける」
「そ、それは……。少しお待ち下さい」
「日本は同盟国です。我が国には、日本のアニメやコミック、Hentaiポルノのファンが大勢います。その日本に核ミサイルを撃てば、支持率に影響します」
「じゃあどうすればいいのだ?」
「まずは世論を味方につける必要があります」
補佐官は数秒の沈黙の後、やや声のトーンを落として、答えた。
「イラクを攻撃した時に使った例の手を使いましょう」
「イラクの時の……、あぁ、あの手か」
ポッシュ大統領は狡賢そうな顔になると、ペンタゴンを呼び出した。
「至急、海洋学者と特殊部隊を招集しろ」
3日後、太平洋沖の原油基地の一つが、謎の爆発を起こた。大量の原油が流出し、原油は海流に乗って南国の孤島に流れ着いた。その島は海鳥の生息地で、多くの海鳥が犠牲になった。
次の日、ポッシュ大統領は、ホワイトハウスで緊急会見を開いた。
「皆さん、非常に嘆かわしい発表をしなくてはなりません。日本が故意に原油基地を爆破した事が判明しました。これは環境テロです」
ポッシュ大統領のバックには大型のモニタが置かれ、油まみれの海鳥たちの映像が流れた。人々は映像を見て、涙を流した。
「我々はテロに屈しません。我々には自衛する権利があります。神のご加護を」
そこで記者会見が終了した。
会見終了後、大統領補佐官が小走りでやって来た。
「素晴らしい演説でした」
「何が素晴らしいだ! イラクでは石油の利権を手に入れたが、日本では何も得がない。忌々しい宇宙人め、どうせなら石油かダイヤでも掘れる所に着陸しろ」
ポッシュ大統領は忌々し気に毒づくと、リンカーン大統領の石像に唾を吐きかけた。
546
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/21(火) 19:22:22
ab.0446.invasion.018
日本の駄部首相は、ポッシュ大統領の会見の中継をTVで見て、憤慨した。
早速、PCの電源を入れると、大型匿名掲示板のサイトにアクセスした。『アメリカ』『ポッシュ』とキーワードを打ち込むと、いくつものスレッドがヒットした。
駄部首相は、それらに片っ端から投稿を始めた。。
「えぇと……、ポッシュを反日に認定する」
文章を打ち込み、【投稿する】をクリック。
クリック、クリック、クリック……。
さらには『好きな映画を挙げるスレ』や『おススメのホテルを挙げるスレ』などにも投稿していく。匿名掲示板への投稿は慣れているから、お手の物だ。
「ざまぁ見ろ! インターネットの力をなめるなよ! 真実はネットにあるのだ!」
PCのモニタに向かって威勢よく啖呵を切る。
そこへ官房長官が飛び込んできた。
「総理、何をなさってるんですか!?」
「何だ? 俺は今忙しいんだ」
「ネットの書き込みをしている場合じゃありません。ポッシュ大統領の会見をご覧になったでしょう?」
「あぁ、見た。だから今こうやって、ネットでポッシュを反日認……」
「それどころじゃありません。日本が危険なのです」
「危険?」
「まさか……本当に分からないのですか!?」
官房長官が、信じられないといった顔をした。
「アメリカは宇宙人に徹底抗戦する構えなのですよ?」
「そんな事分かってる!」
「そしてこのタイミングで、日本を環境テロの犯人に認定したんです」
「そんな事分かってる! だから今こうやって、アメリカを反日国家に認……」
「アメリカが日本をテロリストに認定したのは、日本上空にあるあの宇宙船を核攻撃するための布石なんです!」
「…………ほへ?」
「今すぐ、日本はテロには加担していないと声明を出して下さい! 総理、日本国民が、宇宙からの侵略だけでなく、同盟国からの核攻撃の脅威にさらされているんです! 今こそ、日本の首相としての責務を果たして下さい!」
「に、日本に核が……。た、た、大変だ!」
ようやく状況を理解できた駄部首相は、大急ぎで部屋を飛び出していった。
官房長官は短く溜息をこぼすと、書棚に目を移した。そこには駄部首相の愛読書、地球人を守るためにエイリアンと戦う宇宙戦艦や美少女戦士を描いたコミックが、ぎっしりと並んでいた。
「頼みますよ、総理」
駄部首相が飛び出していったドアを見つめながら、呟いた。
「それにしても、こんな緊急時に鶉山はどこに行ったんだ?」
窓の外は、快晴だった。
547
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/21(火) 19:23:13
ab.0447.invasion.019
アメリカの思惑も知らず、さざなみ市民は、飲料水を求めて、コンビニやスーパーに殺到した。店はここぞとばかりに全ての飲料品を大幅に値上げした。
「ラスベガスのホテルのレストランでも、ここまで高くはないぞ!?」
「すみません。ミネラルウォーターの入荷が滞っていまして……」
コンビニ店長は、詰め寄る客に申し訳なさそうに弁解したが、内心では思わぬ売り上げアップにほくそ笑んでいた。しかし、それも長くは続かなかった。さざなみ市はバリアによって市外との流通が遮断されているので、ミネラルウォーターが入って来ないのだ。
ネット上では、飲料品が定価の30倍という高値で転売された。彼らは転売ヤーと呼ばれた。
定価の30倍という法外な値段に怒った人々が、思わぬ反撃に出た。
支払方法をコンビニ決済にして注文して、料金を支払わないのだ。コンビニ決済には数日の猶予があるので、その間、転売ヤーは料金が支払われるのを待たなくてはならない。しかし支払いがないので、注文は自動的にキャンセルされる。すると転売ヤーは、また商品を出品し直さなくてはならない。出品されたら、またコンビニ決済で注文して料金を支払わない。これを繰り返すのだ。
しかし転売ヤーとそれに怒る人との攻防も、転売ヤー自身の在庫が底をついたため、長く続かなかった。
さざなみ市を手入りするには、バリア解除装置が設置された幹線道路のいくつかを通るしかない。当然そこには、ネオガイア宇宙軍によって検問が敷かれ、人や物資の出入が制限されていた。
昔の日本の関所に『入り鉄砲、出おんな』というのがあったが、さざなみ市も似たような状況だった。地球人が市内に入るのは比較的簡単だが、市外に出るのはほぼ不可能で、それに対して物資の類が市内に入るのは厳しく制限された。
それはまるで、ナチスのユダヤ人強制収容所や、パレスチナ人が閉じ込められているガザ地区のようだった。
548
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/21(火) 19:24:38
ab.0448.invasion.020
1か月とかからずに、コンビニもスーパーは、飲料品以外の在庫も少なくなってきて、店を閉じた。
市民の一部はマゾ化薬入りの水道水を飲んだが、多くの市民は店に押しよせた。そして、店のドアを叩き割り、飲料品を奪い合った。どさくさにまぎれて、食料品や書籍、化粧品などを奪う者もいた。市内のあちこちで、略奪行為が発生した。
この地上の光景を、ピタゴラス博士とヘラクレスは、オリンポスから見物していた。
「ギャハハハハ。なんて浅ましい連中だ」
「データには日本人は民度が高く礼儀正しい種族だと記録されていたが、飲み水がなくなったとたん本性がむき出しになったらしい」
2人のネオガイア星人は、蔑みの笑みを浮かべた。
「そうだな、せっかくだから飲み物を提供してやるか」
ピタゴラス博士が、何か妙案を思いついたのか、手をポンと叩いた。
さざなみ市のTVが、またジャックされた。画面に映るのは、ピタゴラス博士だ。
「さざなみ市民の諸君。水不足にあえぐキミ達に同情して、我々ネオガイア星人から飲み物を提供してやろう。オシッコだ。我々のオシッコにはマゾ化薬は入っていないから、安心して飲んでくれたまえ」
市内のあちこちに給水所が設置された。正確には、クーラーボックスが転送されただけだが。中には小さなボトルが詰まっていて、見ると、ボトルは黄色い液体で満たされていた。
549
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/04/21(火) 19:25:42
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP
>>519-523
首相2
>>524-549
侵攻
550
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/05/13(水) 19:56:33
ab.0449.invasion.021
駄部首相は、アメリカによる日本への核攻撃の可能性を官房長官から聞かされるや否や、政務を全て放棄して、体調不良を理由に緊急入院した。
入院先は、さざなみ市や東京都からできるだけ離れている、つまり仮に戦争になっても攻撃の対象にならなさそうな、森掛医院という個人病院だった。
駄部首相は病院に到着すると、若い巨乳の看護婦がいない事に激昂して、診察中の森掛院長を呼びつけた。
「オイ、俺は日本の総理大臣だぞ。なんで俺の担当がババァの看護婦なんだ!?」
「そ、そう言われましても……」
「俺は総理大臣だ。忖度(そんたく)しろ!」
最近覚えたばかりの『忖度』という単語を、ここぞとばかりに使う。
「忖度と言われましても……」
そこへ駄部首相のスマホが着信音を奏でた。着信メロディはアニメの主題歌だ。
「誰だ? 俺は今忙しいんだ!」
「アタシよ。民捨党の吊元よ」
(うげ!? なんで吊元が俺のスマホの番号を知ってい……、あ!)
駄部首相は、昨年の辞民党恒例のノーパンしゃぶしゃぶでの忘年会を思い出した。
その忘年会で、駄部首相は、酔っ払って吊元議員にイタズラ電話をしたのだ。その時、吊元議員のスマホは留守電になっていて、『テメェが産めよ。あぁ、産めねぇのか』とメッセージを残して電話を切ったのだが、番号を非通知にする184を押すのをうっかり忘れたのだ。
(クソ! いつもは184を押していたのに)
小さく舌打ちをする。
「何だ!? 俺は緊急入院中だ!」
「どうせ仮病でしょ? それより、さざなみ市はどうすんのよ!? アメリカが上空の宇宙船を核攻撃するって噂じゃない! 被虐水はどうするのよ? アンタ、一応は日本の首相でしょ?」
「う、うるさい! 被虐水は完全にコントロールされている!」
駄部首相はそう怒鳴ると、スマホを床に叩きつけた。
「そーり、そーり、そーり……」
スマホから、吊元議員のヒステリックな声が続いていた。
551
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/05/13(水) 19:57:07
ab.0450.invasion.022
「クソ、クソ、クソ! 民捨党め! いつもいつもいつも代案も出さず、俺の上げ足ばかり取りやがって」
駄部首相は忌々しげに喚き散らすと、隣で唖然としている森掛院長に向き直った。ここは誰かに八つ当たり押して鬱憤を晴らすしかない。
「若い看護婦がいないのか? じゃあその謝罪として、俺の嫁をこの森掛医院の名誉院長にしろ」
「そ、そんな無茶苦茶な……」
「忖度(そんたく)しろ! 俺は日本の総理大臣だぞ! 俺の決定は、国民の民意を得ているんだ!」
その時、病室のドアが静かに開いた。入ってきた人物を見て、駄部首相は怒鳴るのをやめた。
「な、なんでオマエがここにいるんだ!?」
「ククク。私は総理のブレーンですよ? 常に総理のおそばにいて、サポートするのが私の仕事です」
鶉山が鳩のような含み笑いをもらした。
「そ、そ、それじゃあ、アレ、アレを何とかしろ!」
「アレというのは、宇宙船オリンポス、別名卵型UFOの事ですか?」
「そうだ」
「オリンポスは宇宙を航行してきた宇宙船ですし、大気圏突入時の高熱でもダメージは受けていません。少なくとも現時点では、我々の武器であれを撃墜する事は不可能でしょう」
かなり悲観的な内容だが、鶉山の表情は、むしろ可笑しそうだ。
「うぅむ…………」
「万が一撃墜できたとしても、まぁオリンポスの質量が不明なのでハッキリとは言えませんが……、高度500メートルからあの巨大な物体が落ちてきたら、さざなみ市どころか近隣の街も壊滅して相当な被害が出ます。あの民捨党のことですから、きっと総理の責任を追及するでしょう」
「そ、それだけは絶対にダメだ!」
「ククク。困るというのは、人的被害が出る事ですか? それとも責任を問われる事ですか?」
「お、俺は……」
駄部首相がカッとなったように顔を紅潮させた。
552
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/05/13(水) 19:57:42
ab.0451.invasion.023
鶉山は、そんな駄部首相を興味深げに観察していた。駄部首相が気に入らない者に対して報復人事をする事は、政界では知れ渡っていて、それを恐れて誰も逆らわないのだが、鶉山は全く恐れていないように見えた。
実際、恐れていなかった。かつて本人が砂原都知事に語ったように、再就職に困らないだけの高いスキルとキャリアを持っているし、実家も日本有数の資産家なので、報復人事など全く恐れる必要がないのだ。
そんな2人のやり取りを、森掛院長はオロオロしながら見つめていた。
(もしかして私は、聞いてはいけない話を聞いてしまったんじゃないだろうか……)
目が、そう語っている
鶉山は、一瞬だけ何かを考えるように沈黙すると、
「幸い日本には新型宇宙生物特措法というものがあります。それを適用するのが先決ではないでしょうか?」
と進言した。
「しんがたうちゅ……、何だそれは?」
「本来は宇宙から隕石などに付着して地球に侵入したウイルスや細菌などに対処するための法律ですが、宇宙人にも適用できます」
鶉山は、駄部首相でも理解できるように、言葉を選びながら説明を加えた。(首相のくせに、そんな事も知らないのか!?)とは、おくびにも出さない。
「まぁ私に言わせれば、隕石の大気圏突入時の温度を考えれば、ウイルスや細菌の心配はほぼないんですがね」
「そんな法律があったのか。じゃあそれを適用すればいいんだな?」
「はい。それであの巨大な宇宙船をどうこうできるとは思えませんが、少なくとも国民には『政府は適切に対策をしている』とアピールできます。一時的ですが、国民のパニック防止には役立つでしょう」
「そうか……。それにしてもそんな法律があった事など知らなかった」
「えぇと……、総理がご存じないのも仕方ないかも知れません。この法律は民捨党政権が施行したものですから」
「民捨党だと!?」
駄部首相が両目を大きく見開いた。
「駄目だ駄目だ駄目だ! 民捨党が施行した法など使ったら、連中の手柄になってしまうだろうが!」
「おやおや、それは困りましたねぇ」
鶉山は、むしろ可笑しそうに「ククク」と含み笑いをした。何を考えているのか分からない、不気味な男だ。異邦人というあだ名も伊達ではない。
「どうしても総理が施行したという事になさりたいのなら、適当に法改正でもしますか?」
「そうだな、法改正すればいい」
「おや、私は冗談のつもりで申したのですが……。法改正となるとそれなりに日数を要しますよ?」
553
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/05/13(水) 19:58:13
ab.0452.invasion.024
「かまわん。俺は『立法府の長』だからな」
立法府の長を自称する駄部首相の顔は、自信に満ち溢れている。
「クックック、なるほど」
内閣総理大臣は行政府の長であって立法府の長ではないのだが、鶉山は駄部首相の発言を軽く流して、言葉を続けた。
「まぁ新型宇宙生物特措法はそれでいいとして、例の被虐水はどうしますか?」
「そうだな……」
駄部首相は指先を顎に当てて、無言になった。見ると、眉間にシワが刻まれている。そのまま考え込むこと数分、ハッと顔を上げて叫んだ。
「濾紙(ろし)だ! さざなみ市の各家庭に布製のろ紙を2枚ずつ郵送しろ」
「ろし……? 濾紙って、泥水とかをろ過する紙の事ですか? そんな物でどうするのですか?」
異邦人の異名を持つさすがの鶉山も、呆気にとられた
「被虐水を濾す(こす)に決まってるだろ! それに紙じゃなくて、布だ! 布だから、何度でも洗って使えるぞ」
鶉山は、何かを言おうとしたが、駄部首相を見て言葉を失った。駄部首相の顔は、布製の濾紙という案がよほど誇らしかったのか、自信に輝いていた。
(本当に被虐水をろ過できると思っているのか……。さすがに驚きましたね。この話題をこれ以上続けるのはやめておきましょう)
鶉山は話題を変えるキッカケを探そうと、室内を見回した。
「そういえば……、奥様は来られていないのですか?」
「あいつは『梅を見る会』に行っている」
「あぁ、『梅を見る会』ですか。どんな方を招待なさったのですか?」
「招待客は全て嫁が決めたから、俺は知らん。俺は招待客は募ったが、募集はしていない」
「なるほど、募りはしたけれど、募集はなさらなかったと。クックック」
鶉山が大きく頷いた。
その隣で、森掛院長が不思議そうに首を傾げている。頭の中で『募る』と『募集』の違いを探しているのだ。
「今後の予定はどうなさいますか? まずは対策本部を設置しておきますか? 2日もあれば設置できますが、総理の出席のご都合は?」
「そんな暇あるわけないだろ、俺は忙しいんだ。漫画家とのお食事会、閣僚のお誕生日パーティー、フグの試食会、大学の同窓会……、他にも支持者との会食の予定が詰まっているんだ」
支持者を大切にする駄部首相だった。
554
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/05/13(水) 19:59:19
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP
>>519-523
首相2
>>524-554
侵攻
555
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/06/18(木) 19:27:11
ab.0453.invasion.025
駄部首相と鶉山のやり取りを、森掛院長はオロオロしながら見つめていた。
(もしかして私は、聞いてはいけない話を聞いてしまったんじゃないだろうか……)
目が、そう語っている。
一国の首相が、この非常時に、布の濾紙を配布するとか、宇宙戦艦とか発言しているのだ。もう自分の耳を疑うか、首相の知性を疑うしかない。
そんな森掛院長の目の前から、突然、駄部首相の姿が消えた。森掛院長が驚いて周囲をキョロキョロ見回すが、駄部首相の姿はどこにもない。
この院長に対して、鶉山は特に慌てた様子もなく天井の一点を無言で見つめていた。それがさざなみ市の方向だとは、森掛院長は気づかなかった。
556
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/06/18(木) 19:27:41
ab.0453.invasion.025
駄部首相と鶉山のやり取りを、森掛院長はオロオロしながら見つめていた。
(もしかして私は、聞いてはいけない話を聞いてしまったんじゃないだろうか……)
目が、そう語っている。
一国の首相が、この非常時に、布の濾紙を配布するとか、宇宙戦艦とか発言しているのだ。もう自分の耳を疑うか、首相の知性を疑うしかない。
そんな森掛院長の目の前から、突然、駄部首相の姿が消えた。森掛院長が驚いて周囲をキョロキョロ見回すが、駄部首相の姿はどこにもない。
この院長に対して、鶉山は特に慌てた様子もなく天井の一点を無言で見つめていた。それがさざなみ市の方向だとは、森掛院長は気づかなかった。
557
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/06/18(木) 19:29:50
ab.0454.invasion.026
駄部首相は、森掛病院から姿を消したのとほぼ同時に、別の場所に像を結んだ。そこは知らない部屋だった。
呆けた顔で周囲をキョロキョロ見回して、背後に男が立っている事に気づいた。屠殺される豚のような悲鳴をあげながら男と反対の方へ逃げ、壁にへばりついた。おそるおそる男の顔を見る。その顔には見覚えがあった。
「ネ、ネ、ネオ……、ネネネ……」
走って逃げようとするが、腰が抜けて立てない。
「とても一国の首脳には見えないが……、オマエが駄部か?」
ピタゴラス博士が、侮蔑をこめた目で駄部首相を見下ろしていた。見ると、駄部首相がへたりこんだ床の上に、失禁した尿が水溜まりを作っている。
(TVで見た宇宙人だ。ど、どうする? きっと日本の総理大臣を人質にとる気だ。他人のフリをしようか? いやいや、そんな事をしたら、人質にする価値がないと判断されて、殺されてしまうかも知れない)
駄部首相は、めまぐるしく頭を回転させた。この首相は、保身のために脳細胞をオーバーブーストさせるスキルだがずば抜けて高い。
「は、はい。そうです」
考えに考えた末、ピタゴラス博士の方を振り向くと、消え入りそうな声で答えた。
558
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/06/18(木) 19:32:09
ab.0455.invasion.027
「そうか。オマエを見て、物質転送装置が故障したのかと思ったぞ」
ピタゴラス博士は、駄部首相のデータを表示させると、
「学歴といいキャリアといい、オマエのような男が、よく一国の首脳になれたな?」
本人と見比べながら不思議そうに首を傾げた。
自尊心の強い駄部首相は一瞬ムッとしたが、相手が秘書や閣僚ではなく宇宙人なので、いつものように激昂して怒鳴り散らす事はない。
「ん? たいしたキャリアがないと思ったが、アメリカの大学に留学して、政治学を修めているのか?」
ピタゴラス博士が、データの一部を見て感心したように頷いたが、すぐに怪訝そうな表情を浮かべた。
「変だな。そのアメリカの大学には、政治学の講座がないぞ? どういう事だ?」
「は、はぁ……」
駄部首相は、ばつが悪そうに目をそらした。
「フフン。まぁいい。オマエを観察していると、おおよその見当はつく。まぁ我々としては、あのポッシュという男よりも、むしろオマエのような男を歓迎したい」
「は、はぁ……。どうもありがとうございます」
『歓迎』と言われて、駄部首相は少しホッとした。恐怖とパニックで引きつってた顔に、必死に愛想笑いを浮かべる。
「オマエも知っての通り、我々はネオガイア星から来た。オマエたち地球人から見れば、宇宙人という事になる。しかしネオガイア星人の祖先は地球出身なのだ。したがって地球は、ネオガイア星人の所有物という事になる」
「そ、そんなご無体な……」
「アメリカのポッシュに地球の明け渡しを命じたが、あの男は我々に抵抗する気でいる。そこでだ……」
ピタゴラス博士が駄部首相の顔を覗き込んだ。
559
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/06/18(木) 19:39:40
ab.0456.invasion.028
「日本はネオガイア星人に全面降伏しろ。我々と地球人の兵力では、全く比較にならない。このままアメリカに協力しても、他の地球人と一緒に滅びるだけだぞ?」
「そ、そんな……。私はどうなります?」
「フフン。日本国民ではなく、真っ先に自分の心配をしたか。やはり見込んだ通りの男だ。日本が降伏すれば、国民は奴隷になるが、オマエの身の安全は保証してやろう」
「降伏します!」
駄部首相が返答するのに1秒と要しなかった。
「お、おい!? そんなにあっさりと降伏を決めていいのか? 日本国民は奴隷になるのだぞ?」
これには、さすがのピタゴラス博士も驚かされた。まさか一国の首脳が、自分の安全の為にあっさり降伏するとは、予想していなかったのだ。
「はい。私が総理大臣に選ばれたという事は、民意を得たという事です。総理大臣は立法府の長です。だから私の決定は、日本国民の総意なのです!」
「アハハハ、この地球人、実に面白い」
ピタゴラス博士は大笑いした。
「お、面白いですか? お褒めにあずかり光栄です。」
「では降伏文書に調印してもらおう」
ピタゴラス博士が、書類のような物を取り出した。
「降伏文書ですか!? えぇと、それには必要な手続きが……」
駄部首相は呆けた顔で天井を見上げた。しかし立法府と行政府の違いも分からない男が、降伏文書調印の手順を知っているわけがない。
「そんな手続きなどどうでもいい。今すぐ調印しろ」
「あのぉ、調印の前に……、さっきお約束した件は?」
駄部首相が卑屈な愛想笑いを浮かべながら、上目遣いにピタゴラス博士を見上げる。
「約束? 日本が降伏したら、オマエの安全は保障するというアレか? 心配するな。約束は守ってやる」
「ありがとうございます、ネオガイア星人様。ありがとうございます。ありがとうございます」
先程まで宇宙戦艦を建造して宇宙人を撃退すると息巻いていた男は、安堵の表情を浮かべながら、銀バエのように両手をすり合わせて感謝した。
駄部首相は、ピタゴラス博士から恭しく書類を受け取った。全てネオガイア星の文字で書かれていて内容は分からなかったが、自身の身の安全さえ約束されれば、他の事はどうでも良かった。
「では調印させていただきます」
1999年8月14日、日本はネオガイア星人に降伏した。
560
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/06/18(木) 19:51:42
ab.0457.invasion.029
駄部首相は物質転送装置で、先程までいた森掛病院に帰された。
「おやおや、降伏なさったのですか?」
駄部首相から降伏の話を聞かされたにもかかわらず、鶉山は特に驚いた様子はない。
その隣では、森掛院長が呆然と立ち尽くしている。それもそのはずで、自分の国の首相が目の前から突然消えて、再び現れたと思ったら、今度は本人の口から降伏の話を聞かされたのだ。
「う、う、宇宙人は日本人を皆殺しにする計画を立てていたのだ。俺が交渉し、その計画を中止させた。降伏は苦肉の選択だったのだ。俺だから交渉が成功したのだ。民捨党だったら、だめだったに決まってる」
駄部首相が一気にまくし立てた。ただし、一国の首相が自身の安全のために降伏した事は、口が裂けても言えない。
「それはさぞかし苦渋の選択だった事でしょう。お疲れさまでした、総理」
鶉山が感心したように大きく何度も頷いた。
「そうだ。苦肉の選択だったのだ」
鶉山につられるように、駄部首相も何度も頷いた。頷いている内に、自身の安全のためではなく日本人の命を守るために降伏したのだと思い込み始めた。
561
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/06/18(木) 19:53:31
ab.0458.invasion.030
駄部首相は、森掛病院からFAXで、降伏文書調印の件を日本政府に伝えた。すぐさま、官房長官から電話がかかってきた。
「何の用だ! 俺は忙しいんだ」
駄部首相はスマホに向かって怒鳴り散らした。
「総理。FAXを拝見しました。降伏文書に調印って、一体どういう事ですか?」
いつもは駄部首相の機嫌を損ねないように話す官房長官も、今回ばかりは、声に困惑と怒気がこもっている。
「う、宇宙人は日本人を皆殺しにする計画を立てていたのだ。俺が交渉し、その計画を中止させたのだ。民捨党だったら、日本人は全員死んでいたに決まってる」
「総理……。こればかりは、『民捨党が』をいくら連呼しても、国民は納得しません。とりあえず降伏文書はどんな内容だったのですか?」
「ま、まぁ普通だ」
駄部首相はバツが悪そうに語尾を濁らせた。降伏文書はネオガイア星の文字で書かれていて、駄部首相はその内容を全く確認せずにサインしたのだが、そんな事は言えない。
「普通って……。とりあえず宇宙人対策本部を設置しますので、ご出席ください」
官房長官は怒りを抑えた声でそう告げると、電話を切った。
その夜、宇宙人対策本部が設置された。しかし駄部首相は、フグの試食会、閣僚のお誕生日会、大学の同窓会、友人の漫画家との会食といった重要な政務が詰まっていて、対策本部に出席する事はできなかった。
562
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/06/18(木) 20:04:42
◆ 目次 ◆
>>1-5
はじめに ←初見の方は必ず最初にお読み下さい。
>>6-9
プロローグ
>>10-16
監獄にて
>>17-24
ロボットバトル1 アナザー
>>25-32
並行宇宙
>>33-46
肉体改造(アルテミス 1)
>>47-56
帰郷1
>>57-84
梅本由梨香001〜004 マゾ化薬実験1〜4
>>85-107
キュクロプスP01〜04
>>108-111
宇宙海賊
>>112-139
ラミアー 出産実験01〜05
>>140-150
SMスカウター01〜02
>>151-183
キュクロプスP5〜9
>>184-186
アルテミスの休暇
>>187-217
動物園の理沙
>>218-266
アルテミスの休暇(加筆修正版)
>>267-321
食糞実験
>>322-364
グレイ襲来
>>365-369
宇宙海賊2
>>370-390
パーフェクトソルジャー
>>391-411
首相
>>412-422
キュクロプスP10
>>423-447
ラミアー出産実験06〜07
>>448-464
吉岡
>>465-475
地球奪還作戦会議
>>476-518
キュクロプスP
>>519-523
首相2
>>524-562
侵攻
>>3
『注意事項』にも記載されていますが、このアナザーストーリー全編に登場する人物、団体、地名、設定、世界観、その他全てが架空の物です。パロディーですらなく、完全に架空の物です。同じまたは似た名称があったとしても、それはただの偶然です。
563
:
名無しさん
:2020/09/24(木) 12:22:54
このアナザーのアナザーを別サイトに投稿したいのですがかまいませんか?
一部は部分的に加筆修正して転用してもかまいませんか?
564
:
BiBi
◆8cBPUextJk
:2020/11/27(金) 20:06:07
>>563
私が書いた物に関しては、加筆修正の有無に関係なくご自由にどうぞ。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板