[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【習作】1レスSS集積所【超短編】
24
:
>>19再投稿御免
:2015/12/13(日) 08:39:00 ID:zxRi0QNM0
「これは…、不幸かな…。」
今、自分は幸福か不幸か、と問われたらの答えを私はひとり呟いた。
広い城の庭園を散歩中のことである。突然のにわか雨によって、私は四阿に避難を余儀なくされた。
私の種族が他のものだったならば、こんな雨など気にせず部屋まで濡れて帰るだろうが…。
「ひぅっ…!」
風に煽られた雨だれが、私の手の甲に落ちる。それだけで私は快楽を感じてしまう。
そう、背に負った翼のマント、血に染まった紅い瞳、血を啜るための牙…、私は、吸血鬼だ。
雨雫の届かぬ四阿の椅子に腰掛けて、真水のもたらす快楽の中、ある一人のことを夢想する。
幼馴染のあの子、身分の違いこそあれずっと一緒に遊んでた彼、人のままでは決して一緒になれなかった衛兵、今の執事服に身を包んだ従者。
彼のことを想うと、心が、キュンとなる。そして身体が火照りだす。心臓が、どきどきと早鐘を打つ。私は、アンデッドのはずなのに。
ふと、思う。もし、私が魔物にならなかったら。私は、政略のまま結婚し、彼は市井の娘と結ばれ…。
もしかしたら、彼にはその方がよかったのかもしれない。私はわたしの寿命分、彼を永遠という牢獄に繋ごうとしているのだから。
でも、でも…!
それでも彼と一緒になりたかった。好きだった。いつも私を守ってくれた。大好きだった。
ああ、彼の腕に抱かれたい…。彼のぬくもりがほしい…!彼の命の奔流で満たされたい…!
ふと、顔をあげると、こちらに続く道を、大きな傘をもって駆ける人影が。
ああ、彼だ、かれだ! 今、ここにいてほしい、彼が来てくれた!
彼は、そうして傘を広げて、従者然として身を正す。
でも、そうじゃない。私は傘を持つ彼の腕に、自分のを絡める。
頬を染めてくれる彼、そんな未来の夫と共に、二人並んで、歩き出す。
これで、よかったのだ。人の何もかもを捨ててでも、私は、こうなりたかった。
雨の道も、二人なら、怖くない。もう、私は一人じゃない。
「にわか雨とは、不幸でしたね、姫様。」
「ううん、いま私は、とぉっても幸せよ…。」
そうして、私たちは、この幸せな道を、二人並んで、歩んでいくのだった…。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板