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一時投下スレ

984Whatever she brings we... ◆em4fuDEyHM:2009/05/15(金) 21:05:57 ID:???
「あれこそが、我らが大統領夫人(マイ・ファースト・レディ)」

スカーレットと早朝に合流したとき、彼女はマイク・Oの怪我を心配していた。
そっと傷口に触れる手は震えていたのを覚えている。彼女は恐怖してたのだ。
己の身に起こる事実が、夢ではなく現実だと受け止めねばならないことに。
今、目の前の敵を追い払っているが、内心はこの上なく怯え、逃げ出したいはずなのだ。

「野放しの暴力に屈せぬ毅然とした誇り、たれ。流石はあの方が見初めた女性ッ!! 」

スカーレットに、そして彼女の下で働いてる自分に誇りを馳せるマイク・O。
懐にあった金属の束を五指に挟み、口一杯に空気を吸いこむ。
ぷううーーっと膨らむ風船が、彼のやる気を比喩するかの如くムンムン拡大していく。

「ひっひィイイイイああああああああああああ……!! 」

スカーレットに追いかけられているブラックモアは、間抜けにもマイク・Oの射程距離に飛び込んだ。
飛び散るスライムに触れないよう、絶妙な距離をとってバルーンアートを象るマイク・O。
その形はアメリカに、アメリカの主たる女に捧げる特注の薔薇。

「拷問の世界は無い! 今ただちにッ! 処刑するうぅぅぅぅーーーーッ!! 」

薔薇は『黄の節制』を全て覆うほどの特大サイズだった。もはや逃げ場はない。
必死に逃げようともがくも、獲物は薔薇に押しつぶされて動くことができない。
これでは流石の『黄の節制』も中にいる本体ごとまとめて始末してしますだろう。
息切れを起こすスカーレットを抱えて、マイク・Oは風船から離れる。


バンッ


張り裂けた後の残ったのは
緋色に染まる地面とスライムだけだった。

「お疲れ様、マイク・O」
「お疲れ様でした、大統領夫人」

仰々しく改まるとマイク・Oは静かに立膝をつく。
家臣の礼に答えるかのように、スカーレットはしゃがみ、マイク・Oと目線を合わせた。


ゴキッ


そして優しくマイク・Oの首を折った。
天高く伸びる向日葵の茎をねじるように、大きく歪曲させて。
曲がった顔でマイク・Oが見たものは、先ほど自分が生けた薔薇の金属風船による残骸。
その中にある、スライムの塊から見える、長い黒髪の女。

「ガハッ……『彼女』は、ぞごのぞの『死体』は……何だど?……まざが…まざが……」

マイク・Oは知らない。
ラバーソールの『黄の節制』は単なるスライムではなく、変身能力も持ち合わせていることを。
ブラックモアが大きなマントを被っただけの服装なので、彼は気づけなかったのだ。
ブラックモアの全てがスライムから作られているということに。

「ぎざま夫人に何をじだぁぁぁぁぁーーーーー! 」
「とっくに入れ代わってたんだよ。お前が顔のスライム取ろうと必死になってる間にな。
 何のためにお前の顔を覆ったと思う? 一瞬でも目と耳の情報を奪うためだろーが」

スカーレットの反撃は完全にすり替わっていた。
エイジャの赤石の光線も、エイジャ自身が『黄の節制』に包まれてしまえば、太陽光を取り入ることができない。
赤石をスライムで包んだ後、スカーレットの身体全体を覆ってしまえば、呻く人形となる。
ラバーソールはスカーレットに成りすまし、赤石で追い詰めれば、スライムから逃げ惑う餌がマイク・Oに接近する。
マイク・Oに『ブラックモアらしき者』が近づいてきたのは至極真っ当な行為だったのだ。

「てめーでてめーの主人サマ殺しちまったら……世話ないよなぁ!? ヒヒヒヒヒヒヒヒ! 」
「う゛お゛お゛お゛お゛ーーーーーーーーっ」
「ゆっくり寝てな」

スカーレットは部下に助けを求めていた。懸命の抵抗していた。
それなのに家臣は主人を――。


ゴキャリ


「……かはー……」

任務はこれにて終了。護衛官はうめき声を上げて地に伏した。反転させた首が虚ろに宙を仰ぐ。




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