レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。
一時投下スレ
-
主な使用例は
「展開に問題がある可能性があるSS」
「或いはSSが完成したものの自信が無くて心配」
「本スレで指摘された所の修正部分」
そんな時はここに投下してください。
-
以上です。
タイトルは倉橋ヨエコの「人間辞めても」からです
・話の流れが不自然ではないか?
・早人吸血鬼化について
ご指摘をいただきたいと思っています。よろしくおねがいします。
-
投下乙です
私の気になった点は早人の回想シーンですね。
時間軸が吉良撃破後どれくらいかという点にもよりますが、
少なくとも四部の時点では夕食のメニューについて母と楽しく団らんするほど
親子仲はよくなかったと思われます。(吉良死亡後はわかりませんが・・・)
吸血鬼化については・・・どうなんでしょうね?私には判断できません。
ただ、死にそうな参加者に血を分けて蘇生、を繰り返していたら
いつまでたっても終わらないような気がするのも確かです。
気が付いたら参加者のほとんどが吸血鬼化、という事態にもなりかねないのでは?
-
投下乙です
まず、早人の吸血鬼化ですが、ルールに
>『参加者に能力を付与してしまう可能性』のあるアイテム、
>つまり石仮面・弓と矢・聖人の遺体などは不可
と記されています。
能力制限には吸血鬼化禁止とは書かれていませんが、参加者の能力付加は原則禁止なのでは?
他に、
・なぜ早人の足が元通りになったのか分からない(吸血鬼であっても、再生する描写はなかったはず)
・ヴァニラは「あやつら」って言うのか?
の二点が気になりました。
-
ヴァニラアイスの支給品にゾンビ馬があるんだから、リスクを冒さずに止血できるんじゃないか?
-
投下乙です。
個人的にはおもしろいと思うんですが…メタ的に言うと早人が太陽の元に出てきそうで…
そうなると太陽が危ないと気づかせる必要があるんですが…それが難しそうですよねぇ
早々に決めるべきでなく皆さんの意見を聞いたほうが良いかと
>>868
ヴァニラが早人につかうのは勿体無いって判断したんでないでしょうか?
少し遅くなりましたが投下します。
-
〈side A:レオーネ・アバッキオ〉
「―――……ぇ、ねぇ!聞えてるかしら、アバッキオ!」
ああ、聴こえてるさ。それこそお前の声が壊れたテープレコーダを繰り返し再生してるみたいにな。
まったく嫌になってくるってもんだ。
冷め切ったであろう目で目の前の少女を見つめる。相も変わらず同じことの繰り返しだ。俺はこの光景を後何度再生しなきゃいけねーんだ?
「―――……なのよ!ちゃんと私の言ってたこと聞いてた?…―――……んていうのは冗談きついわよ」
何度こいつに言い聞かせたことか。何度話したことか。
意図せずとも俺の口から溜息が漏れる。ああ、落ち着いてるさ。嫌というほど俺は落ち着いてる。
クールになろうぜ、レオーネ・アバッキオ…。
「いいか、ジョリーン…その団子頭に何が詰まってるか知らねぇが何度も同じことを言わせんじゃねえ。
俺は同行を許すって行ってるんだ。付いて行くも何も俺はダメだ、なんて一言も言ってねェぞ」
そうだ、事の発端は俺の提案から。
『現場』に向かうと宣言した俺に対してジョリーンは同行を申し出た。しかしながら正直な話、スタンドを見られることは俺にとっての最大のタブーだ。
隠せるべき場面で己の武器をほいほいと自慢げに披露するのは馬鹿がやることだ。そして俺は幸いなことに馬鹿じゃない。
覚悟が座ったジョリーンなら、スタンド像はともかく再生したときの様子を教えてやるぐらいならしてやってもいいかと思ったんだが…。
「それならどういうことよ?お前はここで残って家を守れって暗に言ってるの?あたし、家庭を守るっていう専業主婦にだけにはならないつもりなんだけど」
できることなら俺のスタンドを見せたくない。そして知られたくない。
ジョリーンがスタンド使いじゃなく再生を見られることがないなんていう楽観的考えは相当のマンモーニ(ママっ子)だ。
見張りの目が増えて悪いことはないし警戒する人数が多すぎるなんてこともないことは確かだ。
「この犬っころが番犬の役割をしっかり果たすように見えるのか、お前には?
支給品にクソなんか引っ掛けられた日には俺はこいつを蹴っ飛ばすぜ…ッ!」
顎でそいつを指し示す。相変わらず生意気な顔だ…。
とにかく、だ。
自分の身も守れないようなガキンチョを抱えて現場に赴くなんて俺はゴメンだね。
そもそも放送15分後に動く理由はその時間が一番「参加者に会わないだろう時間」だからだ。
…矛盾してるかって?ああ、クソッタレ、わかってるさ。
矛盾してるさ。
そう、俺は自分で同行を許しながらも必死こいてジョリーンと犬っころを残そうとしてる…。
自分で決めたことを捻じ曲げてでもな。
「イギーはそんな間抜けじゃないわ。それにこの子をそんな風に呼ばないで」
ああ、そうだ。決してそんなことはない。
俺がジョリーンとイギーをココに残したいのはこいつらが心配だからなんかじゃない。断じてそうじゃねぇ。
ただ再生を見られるのと、再生中に敵に襲われたときこいつらが足を引っ張るからだ…ッ!
-
イギーをあやす様に撫でるジョリーンがトリッシュと重なって見えるなんてことはない。
共通点なんていえば、同じぐらいの年頃で、ただ二人とも女の子であるってことだけだ。
「それでもイギーをここに一匹置いていくってのも酷な話だ。まぁ、俺としては犬一匹ぐらいって思うんだが懐かれてるお前の場合は違うだろ?
ああ、イギーも一緒に連れて行くってのも説得力のねぇー話だ。支給品はどうする?」
追い討ちをかけるように付け加えてやる。
ぐっと黙り込んだジョリーンを見るのはあまり気分がいいものじゃねーが、これも俺自身のためだ。
おとなしくパパの帰りでも待ってるんだな……。
「とにかく、だ。そろそろ時間だ。俺は…」
時計を見つめる俺の視線が止まる。せわしなく動いてた秒針が9を過ぎ、そして―
「―べート―ヴェン交響曲第九番の第四楽章『歓喜の歌』
う〜ん、じつに素晴らしいね。心が震える、そんな曲だ。
格好つけたような言い方すると、人間賛歌、ってとこかな? 」
俺の神経を逆なでするような声。妙に鼻に付く男の演説が始まった。
◆
正直トリッシュのこともあったし、ジョリーンとの遭遇もあって『こいつ』について考える暇がなかったな。
もちろん、俺たちをこんな狂ったブラッド・パーティーに招いた奴だ、招待状もなしでなんて礼儀知らずににはお灸を吸えてやらねといけねえ。
でもよ…、ここまでの奴だったとはな!
手の中に握られてるペンが俺の握力でミシリと音を立てる。慌てて離し、インクが漏れるなんて事を防ぐ。
やれやれ、冷静さを欠くような真似をするなんて…。感情を抑えろ、この世界じゃそれが常識だ…。
それに…ここで俺が弱みを見せたらどうする…?
放心したように、一点を見続けるジョリーン。大方さっき言ってた友人を亡くしたことが原因なんだろうな…。
人の死に慣れすぎた俺にはかける言葉が見つからなかった。
情けないことに俺はこの場にいて唯一ジョリーンを励ますことが出来たのに、どうすればいいかわからなかった。
「………ッ」
ペンを握ったままのジョリーンの手に俺自身のを重ねる。
こじ開けるように手を開くとピントの合わない目が俺の瞳で揺れる。
その動揺が俺に伝わる前に、無理矢理口を開く。
「調査は俺一人でやってくる…。お前は………少し頭を冷やせ……。」
一睨み効かすつもりはなかった。それでも俺自身少し目つきを厳しくしてしまったのはそうして欲しいと俺が願ったからだろうか。
ジョリーンは黙ったまま頷くと、イギーを抱きかかえ椅子に深く腰掛けた。
喫煙者の気持ちがわかった気がする。きっとこういうときに一煙吹かすんだろうな。
玄関の開いたドアから暁の風が吹き込んできた。生暖かいが風が俺を包み込む。
-
「アバッキオ…!」
呼び止められてドアを片手に振り返る。何事だろうか。付いて行く、とでも言うんじゃないだろうな…。
神経を張ったまま俺は振り返る。頭にに浮かんだ多くの説得の言葉。
決心を固めた女が如何に説得しづらいかは短い人生の中でも体験済みだ。
「…いってらっしゃい」
だけど俺を待っていたのは拍子抜けするような激励の言葉。おかげで一瞬だけ間抜けのような顔をジョリーンに晒す羽目になっちまった。
硬くなっていたジョリーンの顔がそれでか、笑顔になった。まったく、これだから女ってのは…。
むず痒いような気分になり、俺は努めて表情を鉄仮面に戻すと言葉を返すことなく扉の外に出てった。
そして…
「…行ってくる」
とてもじゃねーが面と向かってなんて言えねえ。こういう役はミスタの役だってのに…クソ!
柄にもねぇことやっちまったな…。
冷静になろうぜ、レオーネ・アバッキオ……。
深呼吸をしたときに香った草の匂いがどこか故郷を思い出させ、俺はゆっくりと現場に向かった。
◆
『そりゃあ…爺さんが負けたら……俺も死ぬからじゃねぇか』
まずこいつと面を会わすようなことがあったらその土手っ腹に蹴りをぶち込んでやる…ッ!
誰の手でもねぇ。もちろん足でもねぇ。そして俺自身のスタンドでもない。
この俺、直々に…その身に嫌というほど染み込ませてやるぜ………!
『あぁ…おクハッ、俺の息子が荒木に……利用さ…されててな……
絶対に…助けに…行かなきゃならねぇんだよ……』
だから今は笑ってるがいいさ…。ふんぞり返って待ってるが良いさ。
その腐りきった性根、再起不能にしてやる……ッ!
そうでもしねーと俺の腹の虫の居所が収まりそうにねぇからな…。待ってろよ、荒木飛呂彦!
『なぁ…爺さんよ……息子を………アンドレをた……』
…再生の声をBGMに考え事、か。最高じゃねえか。この舞台に相応しい、死と侮辱の匂いがぷんぷんしやがる。
ほんとなら放送が始まる前には再生を終えてる予定だったんだがな、少し警戒しすぎたか…。
現在位置は把握してる。幸い禁止エリアに指定されなかったことだしじっくり調査を進めるとするか…。
そう思ってるのに俺は驚くほど集中できてない。
気づけばあの放送の男、荒木飛呂彦のクソ生意気な態度ばかり思い出す。
忘れようと調査を勧めるが虫が湧き出るように俺の頭に侵食しては思考を乱す。
……少し気張りすぎか。
-
そうして気を抜いた俺の頭に浮かんだのは二人の女。
泣き崩れるアイツ、誇り高いまま死を迎えた彼女。麻薬中毒者が幻覚を見るように、俺の目の前で二人がちらつく。
「………クソッタレ!」
ジョリーンは…きっとここには来れないだろうな。
母親を亡くし、親友を亡くし、慕われてた少年も失った。あの年頃の女の子には堪えるだろう。
………俺だって堪えてるんだ、あいつが動揺しないはずがない。
認めるほかない、俺は今動揺…ではなく、そうだな、驚愕してる。
何に、かって?
それは、そうだな…。
トリッシュの死をわかっていたのに自分でもその名前を聞いたときに自分が衝撃を感じちまったこと。
26名という死亡者の多さに俺が甘さを感じちまったこと。
「………」
隣で再生を終えた自分の分身を見る。既にターゲットは物言わぬ死体となり、俺はそれに一時停止の命を告げていた。
手ががりは今すぐにでも見つかるだろう。それでも俺はすぐに動き出すことは出来なかった。
空を仰ぐように顔を上げる。ぼんやりとした頭を総動員しないとこの選択は選べそうになかった。
ギャングの俺がベビーシッター気取りか?ハッ、俺も焼きが回ったもんだ。
それでもこの機会は逃せねえ。今が一番がチャンスなんだ。
周りに人の気配は…どうだろうかね。一応気は張ってるがこの俺の警戒網を越えるぐらいのやつがいないとも限らねえ。
さて、どうすべきか…?
【レオーネ・アバッキオの場合】
1.再生を続ける
2.再生を中止、空条徐倫の元に戻る
3.再生を中止、周りにいるかもしれない参加者を探す。
◇ ◆ ◇
〈side B:空条徐倫〉
「ねぇ………、ねぇ!聞えてるかしら、アバッキオ!」
イライラ…してるんでしょうね。妙に口調を荒げる自分が珍しく思えた。
なんでイライラしてるかって?そうね、色々原因はあるわ。ただ一番の原因は彼ね。
この目の前にいる、やけに白けた目で私を見つめる男。レオーネ・アバッキオ、その人のせいね…。
「心配なのよ!ちゃんと私の言ってたこと聞いてた?…同行を許す、なんていったくせに今更『なし』なんていうのは冗談きついわよ」
やけにゆっくりとした動作で私の目も見るアバッキオ。半眼にあけられたそれは明らかに『面倒だ』との気持ちがありありと浮かんでる。
…こういう目は嫌と言うほど体験してるわ。そしてこういう目をしてる男って言うのは…。
やれやれ、厄介この上ないわ。
-
「いいか、ジョリーン…その団子頭に何が詰まってるか知らねぇが何度も同じことを言わせんじゃねえ。
俺は同行を許すって行ってるんだ。付いて行くも何も俺はダメだ、なんて一言も言ってねェぞ」
天井を仰ぐように見上げる。これだから大人って言うのは嫌いなのよ。
自分の都合ばかり通して平気で約束破り。大人の権力振りかざして子供を黙殺。
まったく、溜息つきたいのはこっちのほうよ。
「それならどういうことよ?お前はここで残って家を守れって暗に言ってるの?さっきから貴方と話してるとどうも私を現場に向かわせたくないように見えるわよ…。
それにあたし、家庭を守るっていう専業主婦にだけにはならないつもりなんだけど」
「この犬っころが番犬の役割をしっかり果たすように見えるのか、お前には?
支給品にクソなんか引っ掛けられた日には俺はこいつを蹴っ飛ばすぜ…ッ!」
皮肉にまじめに返すことを望んでたわけじゃないわ…。もちろんわかっててそうしてるんでしょうけど。
はぐらかされる様に話は進む。あたしは床に眠そうに伸びをするイギーを抱え挙げる。
少し嫌そうにしたけどそんなことかまいやしない。その柔らかな毛皮に顔をうずめると太陽のにおいがした。
「イギーはそんな間抜けじゃないわ。それにこの子をそんな風に呼ばないで」
「それでもイギーをここに一匹置いていくってのも酷な話だ。まぁ、俺としては犬一匹ぐらいって思うんだが懐かれてるお前の場合は違うだろ?
ああ、イギーも一緒に連れて行くってのも説得力のねぇー話だ。支給品はどうする?」
…もういいわ。
最初から行かせる気なんてなかったんでしょ、どうせ。
そうは思ってもやっぱり納得いかない。
あたしをか弱い女の子かなんかと誤解してるみたいだけどそんなことあるわけないじゃない…ッ!
自分の身ぐらい自分で守れる。そうやって過ごしてきたし、これからもそう。
だって、あたしは―――
「とにかく、だ。そろそろ時間だ。俺は…」
「―べート―ヴェン交響曲第九番の第四楽章『歓喜の歌』
う〜ん、じつに素晴らしいね。心が震える、そんな曲だ。
格好つけたような言い方すると、人間賛歌、ってとこかな? 」
口を開きかけたあたしを黙らせるには充分だった。
アバッキオの言葉も遮った男の声を六時間ぶりに聞きながら私は知らず知らずのうちに強くイギーを抱きしめていた。
◆
-
放送が木霊のようにリビングに響く。やけに耳に残るそれを感じながらふと目を手元に下ろす。
動揺もせずに名簿には脱落した参加者の欄に線が引かれていた。
禁止エリアもご丁寧に時間まできっちりと書き込まれている。
…それを見てあたしは喜べばいいのか悲しめばいいのかわからなかった。
エルメェスとエンポリオの名前が呼ばれたのに冷静に受け入れれたこと。
悲しいはずなのにそれをどうすればいいかわからないこと。
………そうよ、放送で名前を呼ばれたってことは死んだってこと。二度とあの二人に会えないってことだわ。
そう理解したとき、そう思ったとき、ビデオ再生のようにママの最後が思い出される。
鳥肌が全身を襲ったのと手に震えが走ったのは同時だった。
嫌だ。もう二人に会えないなんて嫌だ。
まだエルメェスには話してないことがある、やってないことがある。
返してない借りた百ドルのツケ。いかした顔した男子看守のホットニュース。FFと仕掛ける予定だったドッキリ。
エンポリオだってそうだ。
あたしを姉みたいに慕ってたあの可愛い少年はもういないの?もう会えないの?
幽霊の部屋にまた招待してよ。気まぐれにピアノをかき鳴らそうよ。またあたしを「おねえちゃん」って呼んでよ。
嫌よ、そんなの。嫌、二人に会えないなんてそんなの、そんなの―――ッ!!
「調査は俺一人でやってくる…。お前は………少し頭を冷やせ……。」
突然手を握られる。霞む視界に大きな手が映り、少しずつ視野が広がる。
ぼんやりと靄がかかっているような頭は以前働かないものの、目の前にいるのがレオーネ・アバッキオであることはわかった。
温かさを膝に感じるとアバッキオと同様にイギ−がその身を丸めこちらを見上げてる。
震えはまだ収まらなかった。それでも手を握り返し、イギーを抱きしめた。
それが今のあたしがすべきことだと思ったから。
大きな男の背中が遠ざかっていく。玄関の扉に近づきその手を扉にかける。
急激にこみ上げるなにかが命じるままにあたしは声を振り絞った。
そうでもしないとこの背中を見るのが最後になるんじゃないかって漠然とした不安に押しつぶされそうだったから。
「アバッキオ…!」
だから振り向いた彼を見てもあたしは何も言葉を用意してなかった。
少し目つきを仕事人のもにした男に対してあたしは宙ぶらりんな状態を維持するしかなかった。
結局無理矢理ひねり出した言葉は当たり障りのないただの挨拶だった。
-
「…いってらっしゃい」
間抜け面を晒したアバッキオを見て、少しだけ笑った。そうやって笑える自分がいることにほっとしてまた笑った。
イラッとしたような顔を一瞬だけするとそれでもアバッキオはもう一度表情を戻した。
そうしてまたその広い背中を見せると…
「…行ってくる」
扉が閉まるその直前に、最後にその背中があの日のあいつに重なって、またあたしは笑顔をなくした。
◆
寒かった。
頼れるものもなくして、寄りかかるものもなくして、あたしは一人だった。
窓に視線を向けるとちょうどお日様が顔出す頃であたしはそれからも顔を背けた。
イギーは相も変わらず私の腕の中で大人しく抱かれてくれてる。そうして欲しい、って私が思ってるのがわかってるのかしら。
どうすればいいのかしら、これから先………。
あのエルメェスが死んでしまった。まだ認められないし、認めたくない。
それでも微かに残った冷静な自分が騒ぎ立てる。熱く燃え滾る自分が叫ぶ。
……そうね。その通りよ。
アナスイだって、FFだって、ウェザーだって。
あたしは守られるだけの女の子じゃない。
ストーン・フリー。何者にも縛られない私自身の誓い。
立ち上がらないと…!これ以上失いたくないって言うなら失わせちゃいけない。
だったら自分の腕で掴み取れ。あたしにはそのための腕があるんだから。
それからあたしが家を飛び出なかったことが結果的に良いかどうかは判断できない。
ただあたしは今一度考えをしっかりと練り直さないといけなかった。
一番の論点は「アバッキオが信頼できるかどうか」
アナスイ、ウェザー、FF…そして『あいつ』。もう失いたくない。それが素直な気持ち。
現場に向かった彼は大丈夫かしら…?それにもしかしたらあの拡声器の声につられてあたしの仲間が来るって可能性も…。
すれ違いになったらどうしよう…。それが最大の懸念だわ…。
とにかく急がないと。決断はサクッと。COOLにいきましょうね、空条ジョリーン…
【空条徐倫の場合】
1.仲間を探しに出る
2.アバッキオの元に向かう
3.アバッキオの帰りを待つ
◇ ◆ ◇
-
〈side C:イギー〉
………んだよ。せったく人が心地良く寝てたってのに。マナーがなってねぇぞ、マナーが。
お袋にそこらの躾はされてねえのか、まったく…
それにしても何処の誰だ?
なんだ、ジョリーンのやつか…。まあいいだろ、いちいち抵抗するのも面倒だ。
それに大抵人間は犬の都合なんて無視だからな。ここは俺が大人になってやるか…。
最もあの男だったら今頃顔に強力な一発をふっかけてるだろうけどな。
それにしてもよく喋るもんだぜ。こうもキャンキャン騒がれるとこっちが騒ぐ気をなくすぜ…。
ま、いいか。もう一眠りと行くか…。
「―べート―ヴェン交響曲第九番の第四楽章『歓喜の歌』
う〜ん、じつに素晴らしいね。心が震える、そんな曲だ。
格好つけたような言い方すると、人間賛歌、ってとこかな? 」
今度は何だよ…。いいかげんにしねーと温和な俺様もプッツン来るぜ…ッ!?
◆
これだから人間ってのは嫌いなんだよ。
自分たちがこの世で一番賢いだ?やれやれ、その賢い人間様はそれじゃどうして26人も犠牲者を出してるんだ?
そもそもこれを開催したのも人間様じゃねーか。…いや、もしかしたらあの荒木って奴は人間じゃねぇかもしれんがね。
どうも奴からは匂いがしない。薄っぺらい無機質の匂い。
へっ、NYの酒場のゴミ箱の中のほうが何倍も嗅ぎ応えがあるってもんだぜ。
それにしても、アヴドゥルの奴もくたばったのか…。
俺をNYから引っ張り出したのが仇になったか。ただあいつほどのスタンド使いがこうもあっさりやられるとはちょっぴりだが、びっくりだぜ。
俺はあいつの強さだけは認めてたんだがな…。
まぁ、荒木、あのニセモノ野郎をぶっ飛ばすついでだ。てめぇの仇も気が向いたら取ってやるよ。
だから化けて出てくるんじゃねぇぞ?お前みたいなブ男が夢に出てくるなんてことは勘弁だぜ…。
そういうわけだ。いい夢見て眠りやがれよ、アヴドゥル。
さてと。そんなことより、この現状だ。
思ったとおりだがジョリーンのやつは動揺が酷い。心音も早くなってるし、額に浮かぶ脂汗も尋常じゃねえ。
野郎のほうもそれに対処できてねえ。全く使えねえ奴だ。
男であるもの、女一人エスコートできないようじゃこの先苦労するぜ?
今日だけ特別サービスだ。俺の毛皮で思う存分泣きな、ジョリーン…。
◆
-
野郎の奴がジョリーンをそのままにして家を出てからだいぶ経った。
ジョリーンの奴は相変わらず震えっぱなしだ。俺の体に伝わるほどの震えを感じる。
随分と危険な匂いだ…。
焦り、恐怖、義務感、決意。徐々に固まりだした匂いはジョリーンの体を蝕んでいく。
なに?決意が固まったことはいいことだって?
馬鹿言え、今のこいつは最高に視野が狭い状態だ。やれやれ…これだから人間は。
もっと俺みたいにドライに感じれないものかね。
いつだって俺の人生は気を抜いたら死、ボスの座から転落の日々だったからな。
まぁ、俺が特別すぎるってことか?
六時間一緒に過ごしたよしみだ。
ジョリーン、協力してやるよ…。だからといってそれがお前の望むことになるかどうかは俺の知ったこっちゃねぇ。
犬好きのお前にとって何が一番良いか、賢い人間様より聡明なこのイギー様が判断してやるよ!
【イギーの場合】
1.徐倫を引き留める
2.徐倫と一緒に家を出る
3.なるようになる
◇ ◆ ◇
〈side D:チョコラータ〉
死亡者が呼ばれるたびに震えが走る。三半規管に心地良くその声が轟く。
この死亡者はなにを見た?聞いたところ女性名だ。どうやって死んだ?
辱めを受けた後、ボロ雑巾のように捨てられたか?自らの体を売り、逆に裏をかかれたか?
僅かな勇気を振り絞り、自らを奮い立たせ死地に飛び込んでいったか?
惨めに泣き崩れ、恐怖に震えるところに現実を突きつけられたか?
これだ…ッ!この感覚………ッ!!
俺自身が望んでいたもの!どこまでも純粋な恐怖、絶望!
それのひとつひとつの結晶がこの結果…!
26人!最高のショーだッ!どこまでも充実した6時間、いまからでもそのテープが待ち遠しい…!
幸い自分がいるところは禁止エリアに指定されなかった。
死亡者?誰が忘れるようなことがあるか。空にいえる。メモを取るまでもないことだ…ッ。
あの駅から西に向かう途中に流れたこの放送は俺を最高に興奮させた。
こんなにワクワクしたのはいつ以来だろうか?
看取った老人の顔が絶望に染まったの見た時だろうか。初めて患者を殺したときだろうか。
今、俺は柄にもなく年を忘れて遠足を楽しみにする子供のようにスキップで移動中だ。
その俺の足も止まった。こうして壁に背を当てじっと気配を殺す。
いくらテンションを限界まで飛ばしたからといって自分を見失うようなことはしない。
霞む朝日の下、なにやら動く人影を見ればこんな状況だ。冷静さを取り戻すなんてわけない。
…落ち着きを取り戻した俺は冷静に脳を回転させる。
観察する相手の様子を伺う。
幸いなことにこっちには気づいていないようだ。気を配ってるのは伝わるが…集中力を欠いてるのか。
それがさっきの放送が原因だとしたら…おもしろい。
そして気づく。
知らず知らずのうちに自分は笑みを浮かべていただろう。
あれは…俺の目と脳が正常ならブチャラティの一味のレオーネ・アバッキオじゃないか……ッ!
-
そうわかったからこそなお一層冷静になれ、と呼びかける。
ここでの選択肢は外すことが出来ない。自分が一番わかってる。
そろそろ恐怖を生で見たい…!脅え、叫び、逃げ惑う参加者…!
突き落とされる絶望に…震え、命乞いをする弱者…!
「いやしんぼめ………ッ!」
いつもの口癖を呟く。セッコにいつも言い聞かせていた言葉は何より貪欲な自分に言っていたのかもしれないな…。
判断材料は三つだ。
ひとつはアバッキオの隣にしゃがむ人影。未知数のあれ、死体か?手を組んでる相手か?はたまた支給品か?
不確定要素に対してこの俺はどう動くべきか。
ふたつは奴の精神状態。スタンドは己の精神力。トリッシュが死んだ今、及ぼす影響はどの程度だろうか?
人によっても及ぼす影響は違うからな…。激昂する奴、我を忘れる奴、呆然とする奴…。
さてさて、奴の場合はどうかな?
みっつめは転がるデイバッグ。支給品、あの荒木のことだ。
自分だって意味のない物は入れない。奴の思考回路は俺と似てるからな…。
そう考えると最高のエンターテーメントを演出する何かが入ってもおかしくはない。
さぁ、どうしようか?とてもこの昂ぶりは収まりそうにないが…。
そうして俺は笑みを広げ思考を続けた。
【チョコラータの場合】
1.不意討ちでアバッキオを襲う
2.素性を隠して手を組む
3.このまま西に向かう
◇ ◆ ◇
〈side E:ホルマジオ〉
さぁて、 困ったことになっちまった…。
支給品を安全に確認しようと民家に向かったはいいが…どうしてこんなことになったんだが・・・。
溜息を吐きながら借り上げた坊主頭をぼりぼりと掻く。
そうしながらさっき流れた放送の内容をもう一度呼び起こす。
幸い禁止エリアと死亡者はチェック済みだ。放送を聞き逃すなんて間抜け以外の何者でもないぜ・・・。
と、言ってもしおんなことをしそうな奴が俺たちチームにいるんだけどな。悲しい現実だぜ、やれやれ。
最もそいつの名が呼ばれなかったってことは喜ばしいことだ。他の奴らも無事生き残ってるようだしな…。
目つきの悪い男達を脳裏に浮かべながら俺は知らず知らずのうちに苦笑いを浮かべる。全く頼りになる奴らだよ…。
それでも、全員が全員無事、ってわけにはいかなかったがな。
線が引かれてる名前をなぞる。さっきとは違う種類の溜息。
まったく喧嘩する相手を考えろ…。お前の性格だとここじゃ危ないとは思ってたけどよォ…。
しょうがねぇな、じゃ済まされないんだぜ。リーダーの身になってみろってんだ、あの馬鹿野郎…ッ!
-
そうして怒りに我を忘れた俺は一瞬だけ自分の状況を忘れちまった。
危うく窓から転落死しかけた俺は慌ててスタンドでサッシをつかみ体を元の状態に戻す。危ねえ、危ねえ…
うん?今の状況?
それがまた厄介の種でよォ、支給品を確認できない理由なんだよ。
おっと、玄関の扉の音だ。どうやらアイツは出て行ったか。
さてこっからは仕事人、ホルマジオでいかねぇとな。
頬を軽く叩いて気合を込める。うし、行くか。
ギャングになった以上、俺は外道だろうと人外だろうとなんだろうと汚名を被る覚悟は出来てる。
どれだけ非難されようと、卑怯だといわれようと、俺は…俺たちはそれでもやらなければならないことがある!
女子供、無関係な奴らを踏み台にしようともな!
ターゲットは女一人。傍に犬一匹か。
状況が状況だ、スタンド使いの可能性も高いな。
そうなると選択肢は三つだな。このまま指をくわえて待ってるなんてことは有りえねェ。
当然二人+一匹より、一人+一匹のほうが遥かに楽だからな。それに俺のスタンドは奇襲向けだ。
・・・だが無理に襲撃するメリットもないんだがな。話し合い・・・ですむって考えるのは甘ちゃんか…?
さて、時間制限つきだ。さっさっと決めて行動しちまうか。
なんたって俺たちは『行動したと思ったときには行動し終えてる』んだからな。
…ほんと、しょうかねぇ〜〜〜なぁ〜〜〜〜………!!
【ホルマジオの場合】
1.体を元に戻し、接触 情報を入手する
2.自らのデイバッグに身を縮ませ、拾ってもらう
3.問答無用で襲い掛かり、拷問する
◇ ◆ ◇
人生はいつだって重要な選択の連続だ。それも制限時間付きだから厄介この上ない。
しかし、だからこそ人生は おもしろい。
-
【E−6 北の現場(戦闘があった場所)/1日目 朝】
【レオーネ・アバッキオ】
【時間軸】:トリッシュ護衛任務を受けた後、ナランチャがホルマジオの襲撃を受ける前。
【状態】:健康、苛立ち
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:トリッシュの仇を討つ。それ以外のことは仲間と合流してから考える。
1:決断する
2:現場から支給品、リプレイともに出来るだけの情報を集めたい。
3:1,2の行動をする予定だがとりあえず休息。
4:エシディシ、カーズにも警戒。ただし、近距離パワー型スタンドのラッシュは効きそうにないので、上の4名に対する対抗策を模索する。
5:チームの仲間、あるいは、組織のメンバーの誰かと合流して協力を要請する。
6:サルディニア島で自分が死んだ? ボス=ディアボロを倒した? ボスに警戒?!何のことだ?! (とりあえず置いておく)
[備考]
※名簿に目を通しました。
※サンタナの名前と容姿、『露骨な肋骨』『憎き肉片』の2つの技の概要を知っています。
※参戦時期の関係上、まだディアボロを敵と認識していません。
※トリッシュの遺言を聞き若干混乱しています。
※近くにサンタナの首輪、ブンブーンのデイバッグ(不明支給品が0〜2個入り)、拡声器、が落ちてます。
【チョコラータ】
[時間軸]:本編登場直前
[状態]:最高にハイ
[装備]:ミスタの拳銃、
[道具]:顔写真付き参加者名簿、チョコラータのビデオカメラとテープ、支給品一式×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しみ、優勝して荒木にロワの記録をもらう
1:決断する
2:中央(繁華街)を通り西を目指す
3:ディアボロを拷問してボスの情報をはかせる
4:参加者に出会ったらどうするかはその場で考えるが、最終的には殺す
[備考]
※グリーンディの制限はまだ不明
※参加者が荒木に監視されていると推測しています
※思考3については、「できれば」程度に思っています
-
【E−6南東の民家/1日目 黎明】
【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:健康。アバッキオに殴られた腹が少し痛い(戦闘、生活には支障皆無)。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:打倒荒木! これ以上自分のような境遇の人を決して出さない。
1:決断する
2:アバッキオとともに“現場”に行き情報収集はする?
3:あいつ(空条承太郎)、他の協力者を捜す。
[備考]
※名簿に目を通しました。
【イギー】
【時間軸】:エジプト到着後、ペット・ショップ戦前
【状態】:健康。アバッキオに蹴られた所と落下の衝撃で少々痛い(戦闘、生活には支障皆無)。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:とりあえずこいつらに付き合うとするか
1:決断する
2:二人についていく。ただしアバッキオは警戒
3:承太郎たちも参加してるのか……
[備考]
※空条承太郎と空条徐倫の関係はほとんど気にしていません。気付いてないかも?
※名簿に目を通しました。
※二人の近くには【食糧の入ったデイパック】【地図など情報交換用のもの及び共通支給品が入ったデイパック】【上記の不明支給品の入ったデイパック】 が転がってます。
【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:健康。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3(本来はジョセフの物。ホルマジオ、ジョセフ共に未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
1:決断する
2:ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
3:ティッツァーノ、チョコラータの二名からもボスの情報を引き出したい。
4:もしも仲間を攻撃するやつがいれば容赦はしない。
5:仲間達と合流。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。
※現在、ジョリーンのいる民家の窓に張り付いてます。
※体は小さくなってます
-
投下完了しました。
誤字・脱字、矛盾点・修正すべき点、他気になる点などありましたら指摘お願いします。
・状態表の書き忘れ
・チョコラータのキャラクター性
・ジョリーンとアバッキオ視点の矛盾
その他、色々あると思いますのでじっくり読んでください。
指摘してくださると喜びで悶えます。同時に予約期限を過ぎてしまったことをお詫び申し上げます。
すみませんでした orz
それではよろしくお願いします。
-
両者投下乙!!
「人間やめても」
まず吸血鬼化についてですが、面白いですし自分はありだと思います。
ヴァニラのキャラじゃゾンビ馬は使わないだろうし
子供が右足欠損という大怪我で2時間以上持つとは考えられないので。
後、右足がいきなり生えた描写だけは修正しておくべきです
「Showmustgoon」
・チョコラータのキャラクター性
・ジョリーンとアバッキオ視点の矛盾ですが
問題ないかと思います。
少し気になったのはキャラごとの時系列のわかりにくさですかね
もう少し整理して書くと読みやすいかと思います。
お二人とも本投下をお待ちしております。
-
能力付与に引っかかるよ
-
両者とも投下乙です感想は本投下の際に
「人間やめても」
正直、早人の吸血鬼化には賛成しかねます
能力付加が禁止というのもありますが、
メタ的な発言をすればこれ以上吸血鬼系を増やして欲しくないというのが本音です
現状でも、タルカス、ブラフォード、エシディシ、カーズ、ヴァニラと昼間動けないキャラが五名います
そして、はっきり言わせて貰えばそれらのキャラは昼間の動かし方に困るというのが本音です
日が暮れる第三放送までの間、朝、午前、昼、日中、午後、夕方の6回は引きこもりが確定するわけですからね
だから一書き手としての意見を言わせて貰えば吸血鬼キャラは増やして欲しくないです
色々口の悪い事を言ってしまいましたが話は面白かったです!
これからも貴方のSSには期待していますね
-
能力付与とも言えるけど、「原作中での描写がない」と言うのが俺的な意見。
ヴァニラの吸血鬼化はあくまで「本編で吸血鬼化してる途中から参戦した」から出来る業だし。
さらに言うなら「ヴァニラは吸血鬼の殖やし方を知ってたのだろうか?」と言う点も挙げられる。
と言う訳で俺も上の方々同様賛成はできません。文章の構成や表現力は文句ないので修正を頑張ってください!
-
吸血鬼議論については私も反対派です。
そもそもヴァニラが吸血鬼を作れるかどうかも怪しいところです。
原作では石仮面をかぶって吸血鬼になったディオからは多くの吸血鬼、ゾンビが生まれましたが、
吸血鬼によって新たに生み出された吸血鬼にまで、他の吸血鬼を作る力があるかはわかっていません。
私の説では、石仮面を被って生まれた吸血鬼でないと新たな吸血鬼を生むことはできないのではないかと思っています。
アバ組の方は特に気になる点はありませんでした。
イギーの渋さに惚れたw
-
荒木の忘れんぼのせいで吸血鬼と呼ばれちゃってるけど
ヌケサクとヴァニラは屍生鬼なんだよな。そして屍生鬼には別にしもべを作る能力はない。
ってことで吸血鬼化は反対派
-
早人の怪我がひどいことが問題なのかな?
ゾンビ馬で傷口を閉じれば、体力がもつ限り大丈夫なのでは
吸血鬼化させるよりはゾンビ馬で応急処置の方がしっくりくると思われます
その場合、ヴァニラの心境を表すのが難しそうですが…
-
だから屍生人じゃないんだって。荒木もちゃんと分けてる。
荒木の忘れんぼとかねーよwww
両者ともちゃんと再生もしてるし、エキスか血を分けるかの違いなんだって。
-
>>890
ヴァニラ自身は自分の吸血鬼化に気がついているし、愛しのDIO様がやられるとは思ってなくて、
その他大勢は結構どうでもいいっぽい。
心境じゃないけど「治療道具は持ってても無駄」と考える理由としてはこんな感じでいいのかな?
>◆Y0KPA0n3C.
投下乙です。特に気になる点はありませんでした。本投下お待ちしております
-
たくさんの批評ありがとうございます。
皆様の意見を聞いて結構悩みましたがこのSSはボツにすることにしました。
吸血鬼化は禁則事項に書いてなかったのでいいんだと思ってましたorz
頑張って別のプロット立ててきます・・・。
-
没にするには惜しいけど、吸血鬼化を却下すると話そのものが変わっちゃうんもんな。
まぁ何にしても乙でした。今後の作品に期待します。
-
>>893
次のSS、待ってます、ボス………
残念でしたがまたの投下お待ちしております!
皆様ご指摘ありがとうございました。
本スレには火曜日ごろには投下できると思います。
投下までまた期間が開いてしまいますが今しばらくお待ちください…。
-
>>893
折角のプロットが勿体ないよ
俺はボツにする程じゃあないと思うがね
吸血鬼化が禁止かどうかは知らないが、
ヴァニラが「早人を吸血鬼化させて助ける」という意思を持つこと自体は何も不自然はないだろ?
(そもそも意思や思考にまで制限かけられないだろう)
もし吸血鬼化が禁止だとしても、他のスタンドが受けている制限と同じように、
「ヴァニラが早人を吸血鬼化させようとしたが、なぜかできなかった」
に変更するだけでいいと思う
>>886
仮に吸血鬼化したとしても、早人の現在地には雨が降っているので日光は届いていないのでは?
-
>>896
>「ヴァニラが早人を吸血鬼化させようとしたが、なぜかできなかった」
に変更したら話の内容大きく変わってくるだろ? 少なくともドノヴァンの死体食べるシーンは削んなきゃいけなくなる。
普通の人間が死体食べたがるってことはあるまいし
>早人の現在地には雨が降っているので日光は届いていない
確かにそうかもしれんが、雨雲はウェザーが北上させているとあるし、後のことを考えるとやっぱり早人の行動は制限されてしまうんだろう
-
俺も没にするほどの事じゃないと思うよ
能力付加どーたらって言うんだったら1stのミキタカとかどうなるんだって話だし
メタ的な理由で没にするのはリレー小説の面白味がなくなると思う
今回下水道とか地下鉄とかあるし吸血鬼増えても問題なくね?
早人なら他の参加者は襲わんだろうし、これ以上吸血鬼が増えることもない
ヴァニラが吸血鬼化する方法知ってるか?→DIOから聞いてると思った
-
>1stのミキタカ
たぶんヘブンズドアーのことだろうが、あれは終盤だったし、制限の謎を解き明かすのに必要だった。
今回の吸血鬼化は、必要性はともかく、まだ第一回放送終わって間もないから時期的に早すぎやしないかと思う
(この時ならいいとかいうのがあるわけじゃないけど)
第一、ロワはリレー小説。書き手さんが書くのに苦労するようなら、配慮するべき。
面白いからこんな展開やってみた→その後繋ぐ書き手さんがなかなか出てこない
という事態になったら大変だろう。
あ、別に超展開とかの冒険しちゃいけないってわけじゃあないぞ。SSとしては面白かったし。
-
お話の途中すみません… 猿さんこんにちわ…orz
エンポリオだってそうだ。
あたしを姉みたいに慕ってたあの可愛い少年はもういないの?もう会えないの?
幽霊の部屋にまた招待してよ。気まぐれにピアノをかき鳴らそうよ。またあたしを「おねえちゃん」って呼んでよ。
嫌よ、そんなの。嫌、二人に会えないなんてそんなの、そんなの―――ッ!!
「調査は俺一人でやってくる…。お前は………少し頭を冷やせ……。」
突然手を握られる。霞む視界に大きな手が映り、少しずつ視野が広がる。
ぼんやりと靄がかかっているような頭は以前働かないものの、目の前にいるのがレオーネ・アバッキオであることはわかった。
温かさを膝に感じるとアバッキオと同様にイギ−がその身を丸めこちらを見上げてる。
震えはまだ収まらなかった。それでも手を握り返し、イギーを抱きしめた。
それが今のあたしがすべきことだと思ったから。
大きな男の背中が遠ざかっていく。玄関の扉に近づきその手を扉にかける。
急激にこみ上げるなにかが命じるままにあたしは声を振り絞った。
そうでもしないとこの背中を見るのが最後になるんじゃないかって漠然とした不安に押しつぶされそうだったから。
「アバッキオ…!」
だから振り向いた彼を見てもあたしは何も言葉を用意してなかった。
少し目つきを仕事人のもにした男に対してあたしは宙ぶらりんな状態を維持するしかなかった。
結局無理矢理ひねり出した言葉は当たり障りのないただの挨拶だった。
「…いってらっしゃい」
間抜け面を晒したアバッキオを見て、少しだけ笑った。そうやって笑える自分がいることにほっとしてまた笑った。
イラッとしたような顔を一瞬だけするとそれでもアバッキオはもう一度表情を戻した。
そうしてまたその広い背中を見せると…
「…行ってくる」
扉が閉まるその直前に、最後にその背中があの日のあいつに重なって、またあたしは笑顔をなくした。
◆
寒かった。
頼れるものもなくして、寄りかかるものもなくして、あたしは一人だった。
窓に視線を向けるとちょうどお日様が顔出す頃であたしはそれからも顔を背けた。
イギーは相も変わらず私の腕の中で大人しく抱かれてくれてる。そうして欲しい、って私が思ってるのがわかってるのかしら。
-
どうすればいいのかしら、これから先………。
あのエルメェスが死んでしまった。まだ認められないし、認めたくない。
それでも微かに残った冷静な自分が騒ぎ立てる。熱く燃え滾る自分が叫ぶ。
……そうね。その通りよ。
アナスイだって、FFだって、ウェザーだって。
あたしは守られるだけの女の子じゃない。
ストーン・フリー。何者にも縛られない私自身の誓い。
立ち上がらないと…!これ以上失いたくないって言うなら失わせちゃいけない。
だったら自分の腕で掴み取れ。あたしにはそのための腕があるんだから。
それからあたしが家を飛び出なかったことが結果的に良いかどうかは判断できない。
ただあたしは今一度考えをしっかりと練り直さないといけなかった。
一番の論点は「アバッキオが信頼できるかどうか」
アナスイ、ウェザー、FF…そして『あいつ』。もう失いたくない。それが素直な気持ち。
現場に向かった彼は大丈夫かしら…?それにもしかしたらあの拡声器の声につられてあたしの仲間が来るって可能性も…。
すれ違いになったらどうしよう…。それが最大の懸念だわ…。
とにかく急がないと。決断はサクッと。クールにいきましょうね、空条徐倫…!
【空条徐倫の場合】
1.仲間を探しに出る
2.アバッキオの元に向かう
3.アバッキオの帰りを待つ
◇ ◆ ◇
-
〈side C:イギー〉
「この犬っころが番犬の役割をしっかり果たすように見えるのか、お前には?
支給品にクソなんか引っ掛けられた日には俺はこいつを蹴っ飛ばすぜ…ッ!」
………んだよ。せったく人が心地良く寝てたってのに。マナーがなってねぇぞ、マナーが。
ぎゃーぎゃー喚く人間どもの声を聞きながら俺は眠りから覚醒する。
眠気覚ましに欠伸を一発かまし今の自分の状況を把握する。
なんだよ、まだ随分暗いじゃねーか。お天道様と同時に起床、ブラックコーヒーを片手にってのが俺のいつものモーニング。
それと比べたらそれは、まぁ、対したもんだぜ…
安っぽくて廃れたホテルでももっと心地良い目覚めになるだろうってのに…やれやれ。
それにしてもこの俺の眠りを妨げたのは何処のどいつだ?………なんだ、ジョリーンのやつか…。
「イギーはそんな間抜けじゃないわ。それにこの子をそんな風に呼ばないで」
「それでもイギーをここに一匹置いていくってのも酷な話だ。まぁ、俺としては犬一匹ぐらいって思うんだが懐かれてるお前の場合は違うだろ?
ああ、イギーも一緒に連れて行くってのも説得力のねぇー話だ。支給品はどうする?」
まあいいだろ、いちいち抵抗するのも面倒だ。
それに大抵人間は犬の都合なんて無視だからな。ここは俺が大人になってやるか…。
最もあの男だったら今頃顔に強力な一発をふっかけてるだろうけどな。
「とにかく、だ。そろそろ時間だ。俺は…」
それにしてもよく喋るもんだぜ。こうもキャンキャン騒がれるとこっちが騒ぐ気をなくすぜ…。
ま、いい。もう一眠りと行くか…。
「―べート―ヴェン交響曲第九番の第四楽章『歓喜の歌』
う〜ん、じつに素晴らしいね。心が震える、そんな曲だ。
格好つけたような言い方すると、人間賛歌、ってとこかな? 」
目を瞑り夢の世界へ旅立とうとする俺を望んでもない目覚ましが遮る。
今度は何だよ…。いいかげんにしねーと温和な俺様もプッツン来るぜ…ッ!?
◆
-
「調査は俺一人でやってくる…。お前は………少し頭を冷やせ……。」
これだから人間ってのは嫌いなんだよ。
自分たちがこの世で一番賢いだ?やれやれ、その賢い人間様はそれじゃどうして26人も犠牲者を出してるんだ?
そもそもこれを開催したのも人間様じゃねーか。…いや、もしかしたらあの荒木って奴は人間じゃねぇかもしれんがね。
どうも奴からは匂いがしない。薄っぺらい無機質の匂い。
へっ、NYの酒場のゴミ箱の中のほうが何倍も嗅ぎ応えがあるってもんだぜ。
「アバッキオ…!」
「…いってらっしゃい」
それにしても、アヴドゥルの奴もくたばったのか…。
俺をNYから引っ張り出したのが仇になったか。ただあいつほどのスタンド使いがこうもあっさりやられるとはちょっぴりだが、びっくりだぜ。
俺はあいつの強さだけは認めてたんだがな…。
まぁ、荒木、あのニセモノ野郎をぶっ飛ばすついでだ。てめぇの仇も気が向いたら取ってやるよ。
だから化けて出てくるんじゃねぇぞ?お前みたいなブ男が夢に出てくるなんてことは勘弁だぜ…。
そういうわけだ。いい夢見て眠りやがれよ、アヴドゥル。
「…行ってくる」
さてと。そんなことより、この現状だ。
軋み閉まる扉を見て俺は下からジョリーンの奴を見上げる。
思ったとおりだがジョリーンのやつは動揺が酷い。心音も早くなってるし、額に浮かぶ脂汗も尋常じゃねえ。
野郎のほうもそれに対処できてねえ。それどころかこいつ一人置いてどっかに行きやがった。
一人にしとくのがいいんだって?やれやれ、これだから青臭い童貞(ガキ)どもは困る。
男であるもの、女一人エスコートできないようじゃこの先苦労するぜ?全く使えねえ奴だ。
こんなときは女のために思いっきり泣かせる胸のひとつやふたつ用意しとくもんだぜ?
そういうわけで今日だけ特別サービスだ。今だけは、俺の毛皮で思う存分泣きな、ジョリーン…。
◆
-
野郎の奴がジョリーンをそのままにして家を出てからだいぶ経った。
ジョリーンの奴は相変わらず震えっぱなしだ。俺の体に伝わるほどの震えを感じる。
随分と危険な匂いだ…。
その震えが止まったことから俺は更に鼻をひくつかせ、体から溢れるばかりの感情の臭いを嗅ぎ取る。
焦り、恐怖、義務感、決意。徐々に固まりだした匂いはジョリーンの体を蝕んでいく。
なに?決意が固まったことはいいことだって?
馬鹿言え、今のこいつは最高に視野が狭い状態だ。やれやれ…これだから人間は。
冷淡に生きること、死者を重んじること、ドライに生きること。
死が特別なものである人間にはそこらをやたら分別したがる。
弱肉強食。油断したら死を招くその世界にいる俺からしたらどれも大して変わらねぇ。
ただ死んだものに自分の中でどうけじめをつけるか。それが葬式であったり追悼であったりするわけだが。
死を無駄にしない、なんて二枚目くさいことは言わねぇぞ?
ただ俺はどんな死者にだって敬意を表すべきであって、そこに私情を含むかどうかは別物ってやつだ。
…まぁ、俺が特別すぎるってことか?
とにかく、こいつは死者の影追うばかりで肝心の自分の命が見えてねぇ。
目標ばかり目に行って足元がお留守。傍から見たらどうも危なっかしい。
…はぁ、めんどくさいことに首突っ込んじまったなぁ。仕方ねえ、これも犬好きのガキンチョどものためだ。
六時間一緒に過ごしたよしみあるしな、ジョリーン、協力してやるよ…。
だからといってそれがお前の望むことになるかどうかは俺の知ったこっちゃねぇ。
犬好きのお前にとって何が一番良いか、賢い人間様より聡明なこのイギー様が判断してやるよ!
【イギーの場合】
1.徐倫を引き留める
2.徐倫と一緒に家を出る
3.なるようになる
◇ ◆ ◇
-
〈side D:チョコラータ〉
死亡者が呼ばれるたびに震えが走る。三半規管に心地良くその声が轟く。
この死亡者はなにを見た?聞いたところ女性名だ。どうやって死んだ?
辱めを受けた後、ボロ雑巾のように捨てられたか?自らの体を売り、逆に裏をかかれたか?
僅かな勇気を振り絞り、自らを奮い立たせ死地に飛び込んでいったか?
惨めに泣き崩れ、恐怖に震えるところに現実を突きつけられたか?
これだ…ッ!この感覚………ッ!!
俺自身が望んでいたもの!どこまでも純粋な恐怖、絶望!
それのひとつひとつの結晶がこの結果…!
26人!最高のショーだッ!どこまでも充実した6時間、いまからでもそのテープが待ち遠しい…!
明るくなりかけた空の下、響く歓喜の放送は止まらない。
そして俺自身の興奮も留まることを知らない。
幸い自分がいるところは禁止エリアに指定されなかった。
死亡者?誰が忘れるようなことがあるか。空にいえる。メモを取るまでもないことだ…ッ。
あの駅から西に向かう途中に流れたこの放送は俺を最高に興奮させた。
こんなにワクワクしたのはいつ以来だろうか?
看取った老人の顔が絶望に染まったの見た時だろうか。初めて患者を殺したときだろうか。
今、俺は柄にもなく年を忘れて遠足を楽しみにする子供のようにスキップで移動中だ。
その俺の足も止まった。こうして壁に背を当てじっと気配を殺す。
いくらテンションを限界まで飛ばしたからといって自分を見失うようなことはしない。
霞む朝日の下、なにやら動く人影を見ればこんな状況だ。冷静さを取り戻すなんてわけない。
…落ち着きを取り戻した俺は冷静に脳を回転させる。
観察する相手の様子を伺う。
幸いなことにこっちには気づいていないよう。気を配ってるのは伝わるが…集中力を欠いてるのか。
今の俺の集中力ではそれがおもしろいほど手にとってわかる。
それがさっきの放送が原因だとしたら…おもしろい。
そして気づく。
知らず知らずのうちに自分は笑みを浮かべていただろう。
あれは…俺の目と脳が正常なら、ブチャラティの一味のレオーネ・アバッキオじゃないか……ッ!
-
そうわかったからこそなお一層冷静になれ、と呼びかける。
ここでの選択肢は外すことが出来ない。自分が一番わかってる。
そろそろ恐怖を生で見たい…!脅え、叫び、逃げ惑う参加者…!
突き落とされる絶望に…震え、命乞いをする弱者…!
「いやしんぼめ………ッ!」
いつもの口癖を呟く。セッコにいつも言い聞かせていた言葉は何より貪欲な自分に言っていたのかもしれないな…。
判断材料は三つだ。
ひとつはアバッキオの隣にしゃがむ人影。未知数のあれ、死体か?手を組んでる相手か?はたまた支給品か?
不確定要素に対してこの俺はどう動くべきか。
ふたつは奴の精神状態。スタンドは己の精神力。トリッシュが死んだ今、及ぼす影響はどの程度だろうか?
人によっても及ぼす影響は違うからな…。激昂する奴、我を忘れる奴、呆然とする奴…。
さてさて、奴の場合はどうかな?
みっつめは転がるデイバッグ。支給品、あの荒木のことだ。
自分だって意味のない物は入れない。奴の思考回路は俺と似てるからな…。
そう考えると最高のエンターテーメントを演出する何かが入ってもおかしくはない。
さぁ、どうしようか?とてもこの昂ぶりは収まりそうにないが…。
そうして俺は笑みを広げ思考を続けた。
【チョコラータの場合】
1.不意討ちでアバッキオを襲う
2.素性を隠して手を組む
3.このまま西に向かう
◇ ◆ ◇
〈side E:ホルマジオ〉
さぁて、 困ったことになっちまった…。
支給品を安全に確認しようと民家に向かったはいいが…どうしてこんなことになったんだが・・・。
溜息を吐きながら刈り上げた坊主頭をぼりぼりと掻く。
そうしながらさっき流れた放送の内容をもう一度呼び起こす。
-
幸い禁止エリアと死亡者はチェック済みだ。放送を聞き逃すなんて間抜け以外の何者でもないぜ。
と、言ってもそんなことをしそうな奴が俺たちチームにいるんだけどな。悲しい現実だぜ、やれやれ。
最もそいつの名が呼ばれなかったってことは喜ばしいことだ。他の奴らも無事生き残ってるようだしな…。
目つきの悪い男達を脳裏に浮かべながら俺は知らず知らずのうちに苦笑いを浮かべる。全く頼りになる奴らだよ…。
それでも、全員が全員無事、ってわけにはいかなかったがな。
線が引かれてる名前をなぞる。さっきとは違う種類の溜息。
まったく喧嘩する相手を考えろ…。お前の性格だとここじゃ危ないとは思ってたけどよォ…。
しょうがねぇな、じゃ済まされないんだぜ。リーダーの身になってみろってんだ、あの馬鹿野郎…ッ!
そうして怒りに我を忘れた俺は一瞬だけ自分の状況を忘れちまった。
危うく窓から転落死しかけた俺は慌ててスタンドでサッシをつかみ体を元の状態に戻す。危ねえ、危ねえ…
うん?今の状況?
それがまた厄介の種でよォ、支給品を確認できない理由なんだよ。
西急いだ俺は支給品の確認、それに加えて放送もあることもあり、身を潜める民家を探していた。
所が偶然聞える人の声。押さえ気味とはいえ、こんな状況、軽い口論であるその声は俺の耳にもばっちり届いていた。
そうして、俺はそいつらの情報を手に入れるためにも体を小さくして窓のサッシで聞き耳を立ててる、ってわけよ!
おっと、玄関の扉の音だ。どうやらアイツは出て行ったか。
さてこっからは仕事人、ホルマジオでいかねぇとな。
頬を軽く叩いて気合を込める。うし、行くか。
ギャングになった以上、俺は外道だろうと人外だろうとなんだろうと汚名を被る覚悟は出来てる。
どれだけ非難されようと、卑怯だといわれようと、俺は…俺たちはそれでもやらなければならないことがある!
女子供、無関係な奴らを踏み台にしようともな!
ターゲットは女一人。傍に犬一匹か。
状況が状況だ、スタンド使いの可能性も高いな。
そうなると選択肢は三つだな。このまま指をくわえて待ってるなんてことは有りえねェ。
当然二人+一匹より、一人+一匹のほうが遥かに楽だからな。それに俺のスタンドは奇襲向けだ。
…だが無理に襲撃するメリットもないんだがな。話し合い・・・ですむって考えるのは甘ちゃんか…?
さて、時間制限つきだ。さっさっと決めて行動しちまうか。
なんたって俺たちは『行動したと思ったときには行動し終えてる』んだからな。
…ほんと、しょうがねぇ〜〜〜なぁ〜〜〜〜………!!
【ホルマジオの場合】
1.体を元に戻し、接触 情報を入手する
2.自らのデイバッグに身を縮ませ、拾ってもらう
3.問答無用で襲い掛かり、拷問する
◇ ◆ ◇
-
人生はいつだって重要な選択の連続だ。それも制限時間付きだから厄介この上ない。
しかし、だからこそ人生は おもしろい。
【E−6 北の現場(戦闘があった場所)/1日目 朝】
【レオーネ・アバッキオ】
【時間軸】:トリッシュ護衛任務を受けた後、ナランチャがホルマジオの襲撃を受ける前。
【状態】:健康、苛立ち
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:トリッシュの仇を討つ。それ以外のことは仲間と合流してから考える。
1:決断する
2:現場から支給品、リプレイともに出来るだけの情報を集めたい。
3:近距離パワー型スタンドのラッシュは柱の男達に効きそうにないので、対抗策を模索する。
4:チームの仲間、あるいは、組織のメンバーの誰かと合流して協力を要請する。
5:サルディニア島で自分が死んだ? ボス=ディアボロを倒した? ボスに警戒?!何のことだ?! (とりあえず置いておく)
[備考]
※名簿に目を通しました。
※サンタナの名前と容姿、『露骨な肋骨』『憎き肉片』の2つの技の概要を知っています。
※参戦時期の関係上、まだディアボロを敵と認識していません。
※トリッシュの遺言を聞き若干混乱しています。
※近くにサンタナの首輪、ブンブーンのデイバッグ(不明支給品が0〜2個入り)、拡声器、が落ちてます。
【チョコラータ】
[時間軸]:本編登場直前
[状態]:最高にハイ
[装備]:ミスタの拳銃、
[道具]:顔写真付き参加者名簿、チョコラータのビデオカメラとテープ、支給品一式×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しみ、優勝して荒木にロワの記録をもらう
1:決断する
2:中央(繁華街)を通り西を目指す
3:ディアボロを拷問してボスの情報をはかせる
4:参加者に出会ったらどうするかはその場で考えるが、最終的には殺す
[備考]
※グリーンディの制限はまだ不明
※参加者が荒木に監視されていると推測しています
※思考3については、「できれば」程度に思っています
-
【E−6南東の民家/1日目 黎明】
【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:健康。アバッキオに殴られた腹が少し痛い(戦闘、生活には支障皆無)大きな焦り、強い心配。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:打倒荒木! これ以上自分のような境遇の人を決して出さない。
1:決断する
2:アバッキオとともに“現場”に行き情報収集する?
3:あいつ(空条承太郎)、他の協力者を捜す。
[備考]
※名簿に目を通しました。
【イギー】
【時間軸】:エジプト到着後、ペット・ショップ戦前
【状態】:健康。アバッキオに蹴られた所と落下の衝撃で少々痛い(戦闘、生活には支障皆無)。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:とりあえずこいつらに付き合うとするか
1:決断する
2:二人についていく。ただしアバッキオは警戒
3:承太郎たちも参加してるのか……
[備考]
※空条承太郎と空条徐倫の関係はほとんど気にしていません。気付いてないかも?
※名簿に目を通しました。
※二人の近くには【食糧の入ったデイパック】【地図など情報交換用のもの及び共通支給品が入ったデイパック】【上記の不明支給品の入ったデイパック】 が転がってます。
詳しくは59話「わらしべ長者」参照。
【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:健康。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
1:決断する
2:ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
3:ティッツァーノ、チョコラータの二名からもボスの情報を引き出したい。
4:もしも仲間を攻撃するやつがいれば容赦はしない。
5:仲間達と合流。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。
※現在、ジョリーンのいる民家の窓に体を小さくして張り付いてます。
※不明支給品は本来ジョセフのものです。いまだ未確認です。
-
投下完了しました。
誤字・脱字、矛盾点・修正すべき点、他気になる点などありましたら指摘お願いします。
一時投下スレにて指摘を下さった方々、及び支援を下さった方、ありがとうございました。
代理投下の方、よろしくお願いします。そして…ありがとうございます orz
-
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『おれは前スレが容量オーバーしてたから新スレを立ててテンプレを投下していたと
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 思ったらいつのまにか俺までさるさん規制を喰らって書き込めなくなってしまった』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった…
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ 催眠術だとか超スピードだとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
申し訳ないorz
◆Y0KPA0n3C. のさるさんもリセットされてるので自分でお願いします
重ね重ね申し訳ないっす……
-
地図氏、毎度毎度更新お疲れ様! あんたのおかげでモチベが維持されるうう!!
そして絵板SGEEEEEEEEEEEEEE
エリナとダービーがセットで飾るなんて誰が考えたか!
エリナの「こ、ど、く、うぇ」が「こwwwどwwwwくwwwうぇwwwwww」に見えたのは俺だけだな
-
>>912
なんでもありなスレに書き込んだほうがよかったかと
-
マイク・Oは生まれて間もない頃から『枷』を与えられた人生だった。
彼は子供のころから朝一番から外へ出て活発に遊び、ヘトヘトになりながら家に帰るのが日課だった。
家に帰れば母親がつくったスープを飲み干し、父親に今日の出来事を話す。
どこにでもあるような子供時代を送る、1人の少年だった。
「おいみんな、どうしたんだよ! 遊ぼうぜ?」
彼が最初に枷の洗礼を受けたのは、いつもと変わらない日曜日だった。
いつも遊んでいたはずの仲間たちが露骨にマイクから離れ、無視を決め込んだ。
マイクは『あいつの家のおやつを勝手に食ったのがバレたのか?』と唾を吐きながら家に帰った。
次の日、マイクはお小遣いを全額はたいて買った飴を友人に渡した。
マイクは仲直りの証のつもりだったのだが、友人は口を聞こうとしなかった。
口を聞こうとしなかったのは友人だけではなかった。
学校の先生も、近所のオヤジも、ボケ気味の婆も、マイクと口を聞こうとしなかった。
「ねぇパパ! どうしたらみんなと仲直りできると思う?」
マイクは晩御飯中に父親に相談するが、父は首を横に振るだけであった。
事情はわからなかったが、涙を流しながら抱きついてきた母をみてマイクは思った。
(ぼくはみんなと一生仲直りできないのかもしれない。ぼくがこの世界をそんな風にしてしまったんだ)
それからマイクは誰とも会話することもなく、青春時代をすごした。
両親とは毎日楽しく会話しているので寂しくはなかった。
周囲が冷徹な視線を送るのも、自分が招いた罰の結果と考えていた。
友人のおやつを勝手に食べなければ、もっとみんなと仲良くできたから。
(この世界にも大分慣れてきたな。絶えられない世界ではなかったんだ)
両親を愛し自然を愛し育ったマイクが、成人になったある日のことだった。
村で一番偉い長老に一家全員呼びだされたのだ。
「お前さんたちには悪いと思ってる。だがもう限界じゃ」
長老は自分たちに村を出て行く要求をしてきたのだ。
マイクには何がなんだかわからなかった。
わからなくて当然だった。
彼の故郷はとても閉鎖的で、情報が中々入ってきづらい場所だった。
“肌の色を問題視する”風潮が完全に広まってはいなかった。
だからこそ誰もが得体の知れない恐怖にかられて、マイク一家と距離をとっていた。
「若い衆が町まで行って調べてくれたんじゃ。お前さんたち一家はワシらを不幸にする」
謂れのない非難や風評が“事実”としてはびこる時代に、マイクは生まれていた。
どうして村を出て行かなければならないのか、マイクは納得できなかった。
この村の全てを愛しているというのに。この村の全ての敵意に耐えて生きていく世界を選んだというのに。
マイクの思いとは裏腹に、両親はあっさりと頭を垂れ、長老の指示に従った。
(今度は、故郷が無くなった世界に、耐えて生きなければならない世界なのか)
旅支度をすませ、村を後にしようとした時、1人の少女に話しかけられた。
-
「おにいちゃんは***なの?」
その少女はマイクのよく知る友人の娘だった。
聞いたこともない言葉を受けたマイクには、笑って答えるしかなかった。
少女は、金きり声を上げて走ってきた母親に連れられて、家の中に入っていった。
「マイク・Oです。なんでもやります」
それからのマイクの人生は、己の枷で実に苦しめられる人生だった。
就職はロクな働き口がなく、職についても真っ当と呼べる仕事は無かった。
昼は話したくもない中年女の罵声を浴び、夜は不当な理由で男からリンチを受ける。
全身を布で覆い隠しながら裏道を歩き、酒場のごみ箱を漁る毎日。
優しかった両親はすでに事故でこの世を去っていた。
(どこまで耐えればいいのかわからない世界だ。どうしていったいこうなった!? )
町に捨てられた新聞紙や、初老が営む古本屋で書を盗み、知識を蓄えた。
自分がなぜこんな境遇になってしまったのか。それを理解するには、全てが遅すぎた。
子供時代とはかけ離れた惨状に、マイクの怒りは勢いを増していた。
来る日も来る日も書物を漁り、ときにはページを破り食事の代わりにするほど、彼は没頭した。
すべては、この国に復讐するために。奴らのルールを知り尽くして優位に立つために。
(法とやらを仕切り、支配者気取りの世界にすむ政治家。今の俺は奴らを始末する世界にいるッ! )
極限にやせほそった身体と持ち前の知識を活動させて、マイクはとある政府関係舎に忍び込んだ。
マイクの目に最初に止まった高官らしき男の首に、ナイフを突きたてようと飛び掛った。
「見事だ。目前に接近するまで、まったく気配を感じ取らせないその動き。恐怖のかけらも感じられない」
しかし――暗殺は失敗した。確かに彼の両手はナイフを刺したはずだったのに。
マイクは捉えられ、逆に首筋にナイフを立てられてしまった。
「く……やはり栄養失調でまともに動けない世界だったのか」
「む? 随分と流暢な英語じゃあないか。***」
「その名で俺を呼ぶなッ! 貴様らがそんな風に呼ぶから俺はこんな生活を――」
「嘘をつけ。この屋敷は最新鋭の防犯措置をとっている。どうやって進入した? どこぞのスパイか?
よほどの教養がなければこの建物は突破できない。力だけの粗暴な奴らには無理だ」
「教養は大学に行かなければ身につかない世界か? 違う。本人の努力で身につく世界に教養はある」
「……名前を教えろ。私はファニー・ヴァレンタイン。議員の端くれだよ。少しお前に興味が湧いた」
ナイフは首筋を切ることは無かった。
代わりに、興味という名のナイフがマイクの心臓に刺さっていた。
この夜のマイクは久しぶりに暖かい暖炉の前で寝た。ゆらゆらと燃える火はマイクの心を溶かしていった。
(こんな夜もある……世界なのか)
数年後、マイクはアメリカ大統領専属SP部隊の長、および大統領夫人の護衛を一任されることとなる。
-
■
(あの方は周囲の目にも気にせず、私を重宝してくださった)
F-4から西へ。マイク・Oは身体に鞭を打たせる。
目指す当ては無い。あるのは忠義の思いだけ。
見た目で優劣を選ばない――まさに我が祖国の根底に流れる精神。
差別と偏見が渦巻いた世間に長い間、置かれていた青年は、このとき思い出したのだ。
そういえば自分が生まれた国は、自由の名の下に生まれた世界だった。
それを貫くのに、どれほどの理解と、どれほどの時間と、どれほどの心血を周りに注いだか。
ヴァレンタインは世の中をチェンジできる力とカリスマを持っていた。
(悪魔の手のひらへ探索を命じられたあの日のことは、忘れもしない)
とはいえ失脚を狙う過激な反対勢力の視線を感じ取れば、すぐに表舞台から舞台裏を回す配慮もあった。
ファニー・ヴァレンタインはマイク・Oにスタンド能力を授けることで、秘書から護衛官として代わる道を与えた。
チューブラー・ベルズによる大統領護衛の功績は反対勢力も黙らざるをえなかった。
持ち前の知能と言語能力も相まってか、理解者も増えていった。
“マイク・O、お前はあの夜このファニー・ヴァレンタイン大統領を殺したのだよ。重罪人だ。
だからお前が望むのなら、いつでも俺の元を去っていい。できるのならな、フフフフ”
叩かれる憎まれ口がいつも嬉しかった。
家族のように話し合っていた晩のような楽しさがマイク・Oに戻っていた。
己が大統領に尽くすのは忠義なのか、それとも親愛からなのか。
「――あ、マイク・Oじゃな〜い! おッはー、 ごきげんよう♪」
それは、今の彼にはどうでもいいことだった。
地から登る朝日とは逆に地に沈む大粒の涙。
「お、お、お……」
「ちょ、ちょっとマイク・O!? 」
「お会いしとうございました、大統領夫人(ファーストレディ)……ごきげん、麗わしゅう」
マイク・O――彼の出身はアメリカ合衆国だ。
【市街地(F-3北西部とF‐2北東部の境目)/1日目/早朝】
【マイク・O】
[時間軸]:SBR13巻、大統領の寝室に向かう途中
[状態]:左足に銃撃による傷が複数。全身に打撲。右肘に擦り傷。疲労
[装備]:金属片(方位磁針の外殻)
[道具]:支給品一式(方位磁針を除く)
[思考・状況]
基本行動方針:大統領夫人(スカーレット・ヴァレンタイン)を護る。
1.!!!
2.大統領夫人を命を賭けてでも護る。 無用な戦いは避けたい
3.自分の身は護るが自分から襲ったりはしない(下手な逆恨みで大統領夫人を危険に晒さない為)
4.襲ってきた相手には容赦なく反撃する。
5.大統領夫人を襲ったりしないのなら別に誰かに協力するのもやむを得ない。
6.できるだけ大統領夫人と共に脱出したいが無理そうなら大統領夫人を優勝させる為最後の二人になったら自決する覚悟。
7.マウンテン・ティムとナルシソ・アナスイの二人を警戒。
8.マウンテン・ティムをはじめ、どういうわけか死人ばかりだが気にしない。大統領夫人を襲うつもりなら元同僚でも容赦しない。
[備考]
※名簿はチェック済みです。一通り目を通しました。
※マウンテン・ティムが「裏切り者」(ルーシー・スティール)をかくまった謀反人であることは知っているようです。
※ナルシソ・アナスイのスタンド能力『ダイバー・ダウン』の一部(罠の作成)を知りました。
※マイク・Oが進んでいる方向は次の書き手さんにお任せします。
【スカーレット・ヴァレンタイン】
[スタンド]:なし
[時間軸]:ルーシーに眠らされた後
[状態]:健康、多少の動揺、仮眠中
[装備]:スーパーエイジャ(首飾りとして)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1(本人は確認済み、武器ではない)
[思考・状況]
1:マイク・O、見つけた! 少し疲れた……
2:政府公邸に行けば、誰か助けてくれるかも? もしくは鉄塔に行く?
[備考]
※ジェイル・ハウス・ロックは制限されていました。ミューミューが仮眠をとったので能力が解除されたようです。
-
投下終了です。
これで終わりではありません。
-
2、3日後にまた投下します。
-
投下乙です。
まず気になった点をいくつか
・マイクの過去話。
本編でもキャラが完成する前に死んだのでどうとも言えないけど一応オリ設定なので他の人の意見次第かと。俺的には問題なし。
・ファーストレディの状態表
まだ仮眠してるw
今後の投下でどうなるか分かりませんがスカーレットの描写も詳しく読みたいところ。
そして感想。
数少ない?“目的を果たした参加者”マイク・Oに乾杯!最初はぷかぷかだったのにw
キャラ追加後のSSに期待せざるを得ない展開でした。乙!
-
投下乙です
すごく引き込まれました
オリジナル設定ですが矛盾も違和感もなかったです
ミューミューの制限がちょっと厳しすぎる気がします
本体が眠るだけで解除というのは流石にキツいのでは…
一定の敷地内のみの効果、ミューミューから離れると解除などでは
ダメでしょうか?
-
投下乙って世界だな
過去話には俺も問題ないと思います
むしろ、今後マイクの過去はこの話で脳内補完されるでしょうw
再会を果たしたふたりですが、ロワ一のゲスと名高いハンサム顔も登場予定とのことで、一層楽しみです
-
>>920
ミューミューの制限は前回の話ですでに決められていましたので、こればっかりはどうにも。
あとジェイルハウスロックは人数を問わず発動させることが可能です。
むしろこうでもしないと永久にハメが成立してしまいます……。
ミューミュー引き篭もりで荒木顔面蒼白ロワイアルwww
-
気絶すると解除されるスタンドは結構あるな。
アレッシーやケニーG、ディスコ、ストレングス、オエコモバも(顔面ヒットした鉄球が爆発しなかった)。
スタンドディスクは本体が気絶すると飛び出す。
本体が眠ってもスタンドが発動するのは自動追尾型くらいじゃね?
-
ミューミューが徐倫をハメたときは数日は効果があったと思われる
その間ミューミューが眠らずにいたとは思えないんだよな
かなり強力な能力だから制限は仕方ないね
-
ヴァレンタインって遺体見つけてからトントン拍子でプレジテントになったんじゃなかったっけ?
-
>>925
マイク・Oと知り合った時期が、悪魔のてのひらを見つける前なんじゃね?
スカーレットが女学生としてヴァレンタインと知り合うのが15年前だから、トントン拍子ではない。
成人してすぐ出馬しても、ヴァレンタインは30代まで出世してない計算になるぞ。
-
最初確か軍人とかだったような
-
軍に所属していた頃に心臓発見→その後政界でのし上がる→今大統領
悪魔のてのひらの発見がいつ頃なのかはっきりしてないね
-
深い深い螺旋階段の底に、すやすやと眠るお姫様。
さりとて職業は、姫を茨の壁に閉じ込める魔女。
女看守長ミューミュー(ミュッチャー・ミューラー)は、無防備をさらけだしていた。
「……ん、う〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
右手は重たい瞼をこすり、左手は筋肉を緊張させながら天高く伸ばす。
3時間ほどの睡眠も、激務の彼女にとっては貴重なカンフル剤だ。
しかし彼女は知らなかった。
手のかかるお転婆ファーストレディ、スカーレットがいなくなっていることに。
スカーレットが『ジェイル・ハウス・ロック』の呪縛から逃れたことに。
「――ん? ハッ!」
ミューミューのスタンド『ジェイル・ハウス・ロック』は相手の記憶能力を3つまでに束縛する。
痴呆と化した人間は、3つの思考を堂々巡りにして生き続けるのだ。
その能力は永遠に気づかれない絶対の非戦闘系最強スタンドの一角……のはずだった。
「あたし何で眠……あの女? ――まさかっまさかこの私にッ!? 」
バトルロワイアル主催者、荒木飛呂彦は彼女の知らないところで待ったを掛けた。
チートな力……このロワイアルに水を差す能力を、健全な状態で修羅場に巻き込ませるのは好ましくない、と。
今のジェイル・ハウス・ロックは欠陥品。ある条件下で自動的に解除されてしまうのだ。
例えば――本人が眠ってしまった場合。
「一服盛りやがったのかァァァァァァァ!!! 」
吼えるミューミューの膝元には、丁寧に置かれたウェッジウッドのティーポットセットがある。
彼女の支給品であり、美味しい紅茶が何杯かいただける優雅な食器家具だ。
わがままを言うスカーレットを宥めるために、何度も煎れてあげたというのに。
当のスカーレットは外出を静止していたミューミューを見限っていたのだ。
「あたしが隕石を見に行ってる隙に……クソッ、完全に油断してたッ!! 」
ちなみにミューミューが飲んだ睡眠薬は2分間で目が覚める程度の代物なのだが……。
スカーレットに付き合わされた精神的ストレスと紅茶の温かさが彼女の睡眠欲を増やしたことを、知る由も無い。
……だがミューミューは己に置かれている恐ろしい状況を理解し始める。
自分の意思でしか解除されない『ジェイル・ハウス・ロック』、その謎の不調。
そして第一回目の放送を聞き逃すという致命的なミスに。
-
■ ■ ■
川尻早人の頑固さに呆れ、説得を断念してから、はや数十分。
進路はH-3サンタ・ルチア駅から真っ直ぐ北に。
途中リゾット・ネエロとペッシの戦闘を遠目に確認し、現在地はF-3。
(仗助が死んで、重ちーが死んで、早人が生きてて……)
馬の胴にもたれて名簿にト書きをする男、ラバーソール。
彼の足元から首元に纏わり着くスライムのスタンド『黄の節制』は、縦横無尽に形を変化させている。
他人に成りすませるラバーソールにとって、他者の生死のチェックの比重は誰よりも重い。
うっかり死者に変装するようでは、この状況で生き残れはしない。
(次の変装に相応しい相手、よく考えねぇとな)
ラバーソール本人→空条承太郎に割れている→却下
ヴァニラ・アイス→外を歩けない→論外
片桐安十郎→どこかで殺人を犯しているはず→危険人物に化ける→却下
J・ガイル→片桐と同じ(特定の相手には使えるかもしれないが)→却下
川尻早人→本物が負傷して動けないのでアシがつきにくい(オイシイ!)→1人で馬に乗る小学生→微妙
(仗助のときは上手くいったが、アイツは俺の能力を知らなかったからな)
承太郎たちが俺の能力を誰かに話しているかもしれない→ジョースター一行に化けるのは危険
もし接触した相手が化けた奴の知り合いで、“スタンドを出してくれ”と言われたら→ウェザー・リポートも危険
近くでウロウロしている参加者(ペッシ)に化ける→あいつスタンド使いなのか?
(となると、こいつしかねぇよなぁ、『今』は)
『黄の節制』は大振りのマントに形を変え、悩ましげな顔を象り、長い一束の前髪に曲がる。
その姿はサンタ・ルチア駅で出会った策士ブラックモア。
雨が無ければスタンドが使えないと語っていた彼ならば、誤魔化しはききそうだ。
(ブラックモアの知り合いは、会いたくねぇな……)
ブラックモアがアメリカ大統領の護衛官の1人であること。17世紀生まれの人間であること。
彼の素性のほとんどをラバーソールは知らない。他人の身辺調査は変装を趣味とする人間の宿命なのに。
もっとも、彼の知る『他人』のほとんどが、素性の知れない者たちなのだが。
-
「――ひぃっ! 」
大きく開けそうになった口を慌てて抑えるも、防ぎきれず。
そんな印象を与える叫び声だった。
ラバーソールは有無も言わず、馬に飛び乗って手綱を揺らした。
馬の頭を声の主に合わせて、力いっぱい腹を蹴る。
自分のスタンドがぐねぐねと変身する姿を見られたと、ラバーソールは考えていた。
「ま、待って! そんな、ブラックモアなの? どうしてあなたが……死んだはずじゃ」
微かに聞こえた一言は、ラバーソールの手を強く動かした。
手綱を引かれた馬が、4本足を必死に踏ん張って勢いを止める。
(放送は、聞き間違えちゃいねぇ)
ラバーソールには天地がひっくり返っても気づかぬことだが、この言葉は真実である。
そして彼と邂逅した女性――スカーレット・ヴァレンタインの言葉も真実である。
彼女はブラックモアが死んだ後の世界からバトル・ロワイアルに召還されたのだから。
このブラックモアが本物であろうとなかろうと、スカーレットは同じ質問をしただろう。
「……すみませぇん」
ラバーソールは――真実には辿りつかぬが――彼の口癖をつぶやいた。
ブラックモアが早朝まで生きていたのは、彼の目が見た紛れもない真実。名簿にも認められている存在。
サンタ・ルチア駅から遠く離れたこの地にいた女に、何がわかるというのか。奴の死を語るとは。
この女が一杯喰わそうとしているのか、ブラックモアが己に何らかの形で一杯喰わしていたのか。
「心中お察ししますがぁ、私はこの通り健在でございます。申し訳ありませぇん」
ごくごく当たり前の気持ちを、ラバーソールは吐露した。
演技であろうと無かろうと、向こうが己をブラックモアとして扱うのならば、こちらもその様に振舞う。
-
「――お気持ちはわかりますが、ファンタジーやメルヘンのような物、ではない世界です」
例え、女の付き添いの男(マイク・O)が怪しげな風船を金属から作り始めても。
例え、女の付き添いの男(マイク・O)が怪しげな風船を鳥に型を取り始めても。
例え、女の付き添いの男(マイク・O)が怪しげな風船を犬に型を取り始めても。
「大統領夫人(ファーストレディ)に挨拶も無しとは大統領補佐関係者失格の世界だ。
我が風船はお前が何者なのか調査し、かつ偽者ならば危険人物として処刑する世界を兼ねたッッ!! 」
ラバーソールは……7人同盟を結んだ時の行動を少し後悔し始めていた。
物騒な雰囲気から人様に話せない職業を持つ連中の集まりと先入観を持っていたことに。
まさか全身をコートに包んだ卑屈な男が、政府関係者と誰が考えるだろうか。
「お気持ちはわかります。礼を怠った事実は誠に申し訳ありませぇん。責は後ほど受けましょう。
しかし……私にも解せない世界です。名簿をご覧になられましたか。私は確かに存在(い)ますよ? 」
いつものラバーソールならば、即座にこの2人を始末していただろう。
彼がわざわざ問いただしたのは、『ブラックモアが死んでいる』を疑わない人間の存在。
何を持ってこの2人は確証を得ているのか。
断っておくが、ラバーソールはこの謎が荒木の仕業である――例えば並行世界の統括――とは考えていない。
『他者の生死確認が彼の能力にもっとも重要である』ゆえに、ブラックモアの謎をはっきりしておきたかっただけ。
「ちょっとマイク・O! 名簿ってこれのこと!? どうして話してくれなかったのよ! 」
「既にあなたが読了している世界かと。名簿は不可解な世界です。確かにブラックモアの名が載っています」
「死人なのに……この世界に、どうしてあなたはいるの? あなたはいったい誰なの? 」
彼らの言う『ブラックモア死亡』は、この世界で起こった事実ではない。この世界に招かれる前の出来事。
ラバーソールは……この事実を(推測の域を出ないが)理解した時点で考えるのを止めた。
ブラックモアに関しては謎が残るが、早い話が『ブラックモア変装はリスクが高い』だけ。
ラバーソールの思考回路にある最優先事項決定は、まったく別の方向へとシフトし始めていた。
「私は何者であろうと大統領に使える身。必要とあらば大統領夫人(ファーストレディ)にお供しまぁす。
怪しいと感じるのならば、今すぐ立ち去ります。我がスタンドは……雨が無ければ何もできませぇんので」
「そうだな……所詮、貴様は雨がなければ何も出来ない世界だ」
パカラパカラと踵を返し、北へ進むラバーソールの馬。
いぶかしむ2人に完全に背中を曝け出している。隙だらけだ。
マイク・Oの野次に振り向くことなく、ラバーソールは背中を見せ続ける。
捨てられる者の悲哀を背中で語ろうというのか。
「つまり雨が降る南に向かわない貴様は、偽者の世界ッッ! 」
-
しかし対応者はその背中に容赦なく鞭を奮う。
マイク・Oの『バルブ犬』と『バルブ鳥』の群れは一斉に巨大な得物へ襲い掛かった。
一度得物に触れれば、体内に入り込み、中で破裂を起こす。
風船は相手の体内を突き破り、まるで水風船が破裂するように、血を撒き散らす。
盛大に破裂する風船たちの断末魔に耳を傾ける、それがマイク・Oの日課。
「いいぞ!我がスタンド『チューブラー・ベル――」
今日も、日課は守られる。
「ううっぷぷ!? 」
聞きなれた破裂音のせいで、マイク・Oは判断が一瞬遅れていた。
風船は確かに割れた。ブラックモアに化けたラバーソールのスタンド『黄の節制』に食い込んで割れた。
ところが割れた場所は本体であるラバーソールの体内ではない。
「エメラルド・スプラッシュならぬ、イエロー・スプラッシュかね。警戒を解かなかったのは見事だ。
さすがSP……気にすんな、背中からスライムの散弾が飛んでくるなんて普通わからねぇよ」
マイク・Oは自分の風船たちが『黄の節制』の飛沫にくっ付いて割れたことを理解した。
ラバーソールの匂いがついていれば『バルブ』たちは本体以外も追尾して割れてしまう。
たとえ金属による開放があれど、『黄の節制』には痛みも何もない。
顔に纏わりつくスライムを必死に取り除こうとするが、もがけばもがくほど深みに嵌ってしまう。
「やめろよ……お前はそのまま楽に気が遠のいて『逝く』だけ――だっ!? 」
そのとき、着々と集まり得物を絡め取っていた『黄の節制』が突然爆発と共に吹き飛び、周囲に飛散した。
爆発は一度だけに収まらず、何度も何度も地面や壁を破壊していく。破壊はラバーソール本体付近にもかすった。
「あんたウチの護衛官に何してんのよォォォーーーーーッッ!! 」
■ ■ ■
「このすけこましがァァーーーッポ○コチン削りとってやるッ! 」
まさかの反撃にマイク・Oは驚きを隠すことが出来ない。彼の想像を雄に越えていた。
その正体はスカーレット・ヴァレンタインの持つエイジャの赤石。
赤石が通した太陽光は威力を増幅させ、船のエンジンを破壊するほどの怪光線になる。
スカーレットは無我夢中で赤石の秘密を使い、手当たり次第に光線を撒き散らしていた。
「おかげで顔にくっ付いていたスライムがほとんど取れた世界だ」
マイク・Oの顔に覆われていた『黄の節制』は本体ラバーソールの援助のために撤退したのだ。
じゅるりと地を這う姿がなんとも情けなく、マイク・Oはいつの間にか笑い始めていた。
これではどちらが守られているのかわからない。護衛官としては名折れである。
とはいえ、スカーレットのお転婆ぶりを見て、マイク・Oはそれでもいいと思い始めていた。
-
「あれこそが、我らが大統領夫人(マイ・ファースト・レディ)」
スカーレットと早朝に合流したとき、彼女はマイク・Oの怪我を心配していた。
そっと傷口に触れる手は震えていたのを覚えている。彼女は恐怖してたのだ。
己の身に起こる事実が、夢ではなく現実だと受け止めねばならないことに。
今、目の前の敵を追い払っているが、内心はこの上なく怯え、逃げ出したいはずなのだ。
「野放しの暴力に屈せぬ毅然とした誇り、たれ。流石はあの方が見初めた女性ッ!! 」
スカーレットに、そして彼女の下で働いてる自分に誇りを馳せるマイク・O。
懐にあった金属の束を五指に挟み、口一杯に空気を吸いこむ。
ぷううーーっと膨らむ風船が、彼のやる気を比喩するかの如くムンムン拡大していく。
「ひっひィイイイイああああああああああああ……!! 」
スカーレットに追いかけられているブラックモアは、間抜けにもマイク・Oの射程距離に飛び込んだ。
飛び散るスライムに触れないよう、絶妙な距離をとってバルーンアートを象るマイク・O。
その形はアメリカに、アメリカの主たる女に捧げる特注の薔薇。
「拷問の世界は無い! 今ただちにッ! 処刑するうぅぅぅぅーーーーッ!! 」
薔薇は『黄の節制』を全て覆うほどの特大サイズだった。もはや逃げ場はない。
必死に逃げようともがくも、獲物は薔薇に押しつぶされて動くことができない。
これでは流石の『黄の節制』も中にいる本体ごとまとめて始末してしますだろう。
息切れを起こすスカーレットを抱えて、マイク・Oは風船から離れる。
バンッ
張り裂けた後の残ったのは
緋色に染まる地面とスライムだけだった。
「お疲れ様、マイク・O」
「お疲れ様でした、大統領夫人」
仰々しく改まるとマイク・Oは静かに立膝をつく。
家臣の礼に答えるかのように、スカーレットはしゃがみ、マイク・Oと目線を合わせた。
ゴキッ
そして優しくマイク・Oの首を折った。
天高く伸びる向日葵の茎をねじるように、大きく歪曲させて。
曲がった顔でマイク・Oが見たものは、先ほど自分が生けた薔薇の金属風船による残骸。
その中にある、スライムの塊から見える、長い黒髪の女。
「ガハッ……『彼女』は、ぞごのぞの『死体』は……何だど?……まざが…まざが……」
マイク・Oは知らない。
ラバーソールの『黄の節制』は単なるスライムではなく、変身能力も持ち合わせていることを。
ブラックモアが大きなマントを被っただけの服装なので、彼は気づけなかったのだ。
ブラックモアの全てがスライムから作られているということに。
「ぎざま夫人に何をじだぁぁぁぁぁーーーーー! 」
「とっくに入れ代わってたんだよ。お前が顔のスライム取ろうと必死になってる間にな。
何のためにお前の顔を覆ったと思う? 一瞬でも目と耳の情報を奪うためだろーが」
スカーレットの反撃は完全にすり替わっていた。
エイジャの赤石の光線も、エイジャ自身が『黄の節制』に包まれてしまえば、太陽光を取り入ることができない。
赤石をスライムで包んだ後、スカーレットの身体全体を覆ってしまえば、呻く人形となる。
ラバーソールはスカーレットに成りすまし、赤石で追い詰めれば、スライムから逃げ惑う餌がマイク・Oに接近する。
マイク・Oに『ブラックモアらしき者』が近づいてきたのは至極真っ当な行為だったのだ。
「てめーでてめーの主人サマ殺しちまったら……世話ないよなぁ!? ヒヒヒヒヒヒヒヒ! 」
「う゛お゛お゛お゛お゛ーーーーーーーーっ」
「ゆっくり寝てな」
スカーレットは部下に助けを求めていた。懸命の抵抗していた。
それなのに家臣は主人を――。
ゴキャリ
「……かはー……」
任務はこれにて終了。護衛官はうめき声を上げて地に伏した。反転させた首が虚ろに宙を仰ぐ。
-
「さ〜て、このままDIOの館に行くか、駅に戻るか」
緋色に染まる2つの物体を、スタンドに食べるよう指示させて、ラバーソールは考える。
サンタ・ルチア駅で悪態をついた川尻早人のふんぞり返りっぷりを。
“余計なことをしてみろ! 僕が死んだらウェザーさんが黙っちゃいない!”――と。
あの時は渋々引き上げたものの、激化するスタンド使いとの戦いに、ラバーソールの不安がよぎる。
「ケッ足元みやがって。だが敵の情報は多いに越したことはねぇ……俺の能力に弱点はないんだからな」
【市街地(F-3北東部)/1日目/日中】
【ラバーソール】
[時間軸]:承太郎と戦闘中、ザリガニ食べてパワーアップした辺り。
[状態]:健康。仗助、重ちー、マイク・O、スカーレットを食べてパワーアップ!?
[装備]:ヨーロッパ・エクスプレス
[道具]:支給品一式 ×5(内一食分食料と方位磁石消費)、ギャンブルチップ20枚、ランダム支給品×1 (未確認)
スーパーエイジャ、サブマシンガン(消費 小)、巨大なアイアンボールボーガン(弦は張ってある。鉄球は2個)
二分間睡眠薬×1、剃刀&釘セット(約20個)
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残り、優勝。溺れるほどの金を手に入れる。
1.やっぱり早人から承太郎についての情報を聞きだすべきだったか?
2.参加者をできるだけ減らす。
3.状況によっては誰かに化ける(ブラックモアは死んだら使うのやめればいいかね、気になるけど)。
4.20時にDIOの館に向かう
5.この鳩、いったいどうしようかねぇ…?
[備考]
※ラバーソールは承太郎、花京院とロワで会った人間に変装できます(その場の状況で考えるようです)。
偽のスタンド像も出せますが性能はイエローテンパランスです。
死者の変装は“特殊な状況”にならない限りやらないようです。
※ラバーソールは仗助が自分自身の怪我も治せると勘違いしています。
※鳩は早人が同封した返事分、一回分の便箋を持っています。
※J・ガイル、アンジェロのスタンドについては理解し切れていません。水、及びそれに順ずるものを媒介とするとだけ把握しています。
※悪魔の虹メンバーとほとんど情報交換を行っていません。お互いの名前と姿ぐらいしか正確には把握していません。
※ラバーソールは仗助の顔のままです。素顔を承太郎以外に見せていません。
また、駅にいた悪魔の虹メンバーはイエローテンパランスの能力を「顔を変える」と誤解している可能性があります。
【二分間睡眠薬】
スカーレットの支給品その1。SBR出典。13巻登場。
ホット・パンツがルーシー・スティールに渡したもの。
飲めば誰でも最低2分間は眠る。スカーレットが原作で飲まされた。
ミューミューが2分間以上寝たのは、この薬+ストレス+紅茶の温(ry
薬は2つあり、うち1つが消費。
【メタリカ製 剃刀&釘セット】
スカーレットの支給品その2。第五部出典。58巻登場。
リゾット・ネエロのスタンド『メタリカ』がドッピオの血液から作り出したもの。
現在残っている剃刀と釘の数は併せて約20個。マイク・Oがラバーソール戦で使った金属はこれ。
ドッピオとリゾットが見れば、自分と関連があると気づくと思われる。
【スカーレット・ヴァレンタイン 死亡】
【マイク・O 死亡】
※死体はほとんど食べられました(金属が邪魔したせいで丸飲みは面倒だった模様)。
オエコモバと同じような状態です(死体の残骸がかろうじてわかる程度)。
-
■ ■ ■
ミューミューが覚醒し、ことの現状に慌てふためいているうちに、時計は午前八時を過ぎていた。
その同時刻、同場所にて……探る者が2人。
会話はしない。物音はたてない。目的は施設の調査。
リゾット・ネエロとペッシ両名は、ナチス研究所地下の侵入に成功していた。
正確にいえば、彼らが施設に侵入したのはミューミューが覚醒するずっと前の話だが。
(あの女はただの馬鹿か、自分に自信タップリのどっちなんだろうな)
慎重に慎重を重ねて行動しているが、自身が偶然によって助けられているとは、思いもしないだろう。
もし『ジェイル・ハウス・ロック』が発動し続けていれば、彼らも痴呆の海に飲み込まれていた。
リゾットたちは眠るミューミューを警戒し、接触を後回しにしたのだ。
彼女が眠っているフリをしてこちらの様子を伺っていたとしたら。強力な戦力としてスカウトできる。
今になっても襲われる気配がしないことも、リゾットのミューミュー評を高めていた。
必要以上の戦いを進んで行わない者は、死に急がない。短気だった仲間のギアッチョのようなヘマはしないだろう。
(それにしても……先に調査を優先して正解だった)
いずれにしろ、彼らは今、ナチス研究所の最下階の大きな空洞にいる。リゾットはその異様さに唾を飲んでいた。
『F-2・ナチス研究所駅』と説明のついた時刻表。
エリア中に点在する駅ととここの施設は地下鉄でつながっていたのだ。
(E-7のネアポリス駅と、H-3のサンタ・ルチア駅は地図で確認していた。この駅も経由先の一つか?
暗い構内を調べたいところだが、灯りを点けるわけにはいかない……まだ見ぬ同居者を探さないとな)
その矢先だった。
片手をバタつかせジェスチャーするペッシに、リゾットが気がついたのは。
ただ、その行動は言葉に表しにくい印象を与えていた。
(ペッシ……俺はお前に近づかない)
リゾットは地下鉄の駅を調べる前に、ペッシに以下の3つを命令していた。
1つ、ナチス研究所と地下鉄駅をつなぐ扉のノブに、スタンド『ビーチ・ボーイ』の釣り針を常に仕掛けておくこと。
1つ、『ビーチ・ボーイ』の針に誰かが触れたらすぐにジェスチャーで伝えること。
1つ、釣竿のスタンド『ビーチ・ボーイ』のパワーとテクニックで、得物を大人しくさせること。
ペッシはこの3つの動作を終える度に、まるでコンセントを抜いた掃除機のように脱力するのだ。
そして一時的な挙動不審になり、再び任務を繰り返す。鸚鵡返し鸚鵡返し鸚鵡返し鸚鵡返し。
……もう、おわかりだろうか?
ペッシが釣り上げた得物は、ミュッチャーミューラーその人。
釣り針に『ジェイル・ハウス・ロック』をかけながらも、暴れるリールに悶え苦しむスタンド使いであった。
「ぶげえぇッ! ば、ばたしが、ばるがっだ……だのぶ、ごろざないべ……」
数分後、ミューミューは『ジェイル・ハウス・ロック』を解除し、正気になったペッシに束縛されることとなる。
強くぶつけた赤い顔を無様に晒す女に、リゾットが真価を見抜くのは時間の問題だろう。
2人とも奇襲タイプのスタンド使い。直接的な戦闘には向いてはいない。初手で全てが決まる。
一歩間違えば、彼らは血を交えながら命を散らしていたかもしれない。
「お前は一人か? この施設にいるのはお前だけか? 返答次第では容赦しない」
痣をさすりながら半ベソをかくミューミューは、少し考えて返答した。
「わだじは、ひどりでず。ごごには、だれぼ、いばぜん」
ミューミューはリゾットにスカーレットのことを話すつもりは無いだろう。
ミューミューもまたスカーレットを見捨てていたのかもしれない。
互いが裏でこっそり三行半をつけて、別れた。お互い損得はなかった。
-
【ナチス研究所地下鉄駅ホーム(F-2)/1日目/日中】
【暗殺チーム(現在メンバー募集中)】
【リゾット・ネエロ】
[スタンド]:メタリカ
[時間軸]:サルディニア上陸前
[状態]:頭巾の玉の一つに傷、左肩に裂傷有り
[装備]:フーゴのフォーク
[道具]:支給品一式
[思考・状況] 基本行動方針:荒木を殺害し自由を手にする
1.ナチス研究所を拠点として確保するか考え中。ミューミューをどうする?
2.首輪を外すor首輪解除に役立ちそうな人物を味方に引き込む。
3.暗殺チームの合流と拡大。人数が多くなったら拠点待機、資材確保、参加者討伐と別れて行動する。
4.ブチャラティチームとプッチの一味は敵と判断、皆殺しにする
5.荒木に関する情報を集める。他の施設で使えるもの(者・物)がないか、興味(優先順位はG−1の倉庫)
[備考]
※F・Fのスタンドを自分と同じ磁力操作だと思いこんでいます
※F・Fの知るホワイトスネイクとケンゾーの情報を聞きましたが、徐倫の名前以外F・Fの仲間の情報は聞いてません
※荒木=パッショーネのボスを倒す。
※リゾット、及びペッシのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
→ 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない
『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない
※荒木に協力者がいる可能性有り
【ペッシ】
[時間軸]:ブチャラティたちと遭遇前
[状態]:頭、腹にダメージ(小)、喉・右肘に裂傷、強い悲しみと硬い決意
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(数不明)
重ちーが爆殺された100円玉
[思考・状況] 基本行動方針:『荒木』をぶっ殺したなら『マンモーニ』を卒業してもいいッ!
1.誰こいつ?
2.誰も殺させない。殺しの罪を被るなら暗殺チームの自分が被る。
3.チームの仲間(特に兄貴)と合流する
4.ブチャラティたちを殺す?或いは協力するべきなのか?信頼できるのか?
[備考]
※100円玉が爆弾化しているかは不明。とりあえずは爆発しないようです。
※暗殺チーム全体の行動方針は以下のとおりです。
基本行動方針:首輪を解除する
1.首輪解除のためナチス研究所を拠点として確保する。
2.首輪を分析・解除できる参加者を暗殺チームに引き込む。
3.1・2のために協力者を集める。
4.荒木飛呂彦について情報収集
5.人数が多くなれば拠点待機組、資材確保組、参加者討伐組と別れて行動する
【ミュッチャー・ミューラー】
[スタンド]:『ジェイル・ハウス・ロック』
[時間軸]:幽霊の部屋から出た直後
[状態]:全身に軽い打撲。腫れ上がった顔。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、フーゴの辞書(重量4kg)、ウェッジウッドのティーセット一式
[思考・状況]
1:ゲームには極力乗らない。身の安全を最優先。 ごめんなさい勘弁して。
2:他のスタンド使いを仲間にして、アラキを倒したい。
3:もうスカーレットを仲間だと思うようなことはしないよ(鉄塔に行ったのだろう。勝手に行け)。
[備考]
※ジェイル・ハウス・ロックは特定の条件下で自動的に解除されるよう制限されています。
ミューミューが寝ると解除されるのは確定しました。
※荒木のスタンドを「ホワイトスネイク」だと思っています。
※スカーレットがどうやってジェイル・ハウス・ロックから逃れたのか、焦っています。
※第一回放送を聞き逃しました。
【ウェッジウッドのティーセット一式】
第四部に登場する川尻早人のママ、川尻しのぶのお気に入り。
おいしい紅茶を味わえる高級品質。カップ、ポッド、茶葉が揃っています。一杯飲むと気分が落ち着くぞ。
スカーレットはこれに睡眠薬を盛った。ミューミューはキチンと洗浄してディバッグにしまった模様。
【女看守と大統領夫人 双方の合意の下、解散】
-
投下乙です
ラバーソールの現在の顔が仗助というのはミス?
既に死んでいる顔でうろつくという事は無いでしょう
今作中のラバーソールの考察から見て、彼が化ける相手は
第二放送までマイクor馬を破棄して早人
このどちらかが適当かと思います
-
思うにラバソの変装は能力上自分より小さい物に化けるのは不可能では
-
投下乙。
まずは誤字。バルブ→バブルですよ。
あとは>>936の「ミューミュー評」は「ミューミューの評」くらいですかね。
それと個人的には「チート」と言う表現をジョジョでは……と。「チートな力」と言う単語がなくてもその後の文は成立しますし。
では内容についてもひとつ。
メタリカの釘・剃刀セットはリゾットが生きてる以上微妙な立場では?
以前に「空条徐倫の手錠」で議論もあったし。
……あんまりダメ出しすると文句言ってるだけみたいでアレだな。
話自体は面白かった。相変わらずのラバソ無双w
どの人の戦闘の仕方もいかにもと言う感じだったし原作セリフの使い方も上手い。
だから早まって破棄したりはしないでください。他の人の意見も取り入れての本投下期待してます!
-
>>939
原作で花京院に化けてたからおk
徐々に(わざと?)変身を解いていって承太郎より大きくなったが、ココナッツジュースのあたりでは普段の花京院と同じくらいのサイズだった
-
ラバソは確か背が高くなかったような。
被って化けるんだから早人とかは無理っしょ
-
ラバーソールが1stのディアボロなみにロワのボス的存在になりそうだな
>>942
ラバーソールの身長は承太郎より一回り大きい、恐らく2メートル弱かな?
-
>>937
今地図を見てきて気付いたんだが、参加者に配布されている方の地図には
G-1に倉庫があることは明記されていません(湿地帯とあるだけです)
なので、リゾットの思考5は修正が必要かと…
-
投下乙です
上で指摘があるようなので感想だけ
マイク・Oと夫人の末路が原作と通じているところに
なんとも遣りきれないものがあって個人的に良いなと思いました
女性チームが解散してしまってちょっと残念
俺もラバーソールが自分より小さいもの(早人)に化けようとしていることは
原作でも描写(花京院、おばさん)があるので問題ないと思う
質量を変えられるのもイエテンの能力の一部なのでは?
もし不可能なら作中でブラックモアに化けている時点で突っ込まなければならない
ブラックモアがラバーソールより大柄だとは思えない
-
投下お疲れ様です!感想は本投下のときまで取っときます。
>>944
すみません、リゾットの思考は自分が書いたものです…
えー、とりあえず修正は◆em4fuDEyHM氏に合わせてwikiの前話も修正します。
申し訳ありません。
では投下します。
-
昇り始めた太陽が恨めしい。
今の今まで僕を照らすことなく日陰者にしてきた張本人はしたり顔でスポットライトを当て、表舞台に引きずり出した。
睨み付けるように顔をあげるとそんな僕を非難するように容赦ない光が脳をチリチリと焦がす。
立ちくらみを感じ思わず立ち止まる。
すべてのものに公平なはずの太陽さえも僕に圧力をかけているかと思うのは被害妄想だろうか?
そう思い、惨めであろう自分の姿を想像すると自虐的な笑みがこぼれた。
第一回放送を聞いてから一時間ほど。現在僕は進路を西にとり、線路か政府公邸を目指して歩き続けている。
先ほど存在に気づいた写真の同行者、吉廣氏には申し訳ないが彼にはポケットの奥底で黙って貰っている。
正直なことを言うと僕はまだ結論をだしてない。将来協力者になる可能性のある彼の機嫌を損なうのは頂けないがそれでも慎重な判断をすべきだと僕は思った。
それは吉廣氏が述べたことがあくまで彼『だけ』の話であり、あくまで彼の主観的な話であること。
吉廣氏が言った絶対に殺しあいに乗らない仲間、吉良吉影。
幸運なことにこの世界に来てから僕はいかに『絶対』というものが脆いか思い知ることができた。
そう考えると吉良吉影という人物が吉廣氏の言ったとおり『殺し合い』に乗らないか、どうか怪しいものだ。
仲間一人の証言をどこまで信じられるかだろうか。それこそ吉廣氏の言葉しか信用すべきものがないのにそんな相手に命を任せるなんて愚の骨頂だ。
何処の誰かのように生き残ることを強いられ、頼るものもなくし、仲間を失った者はこの舞台では容易く変わる。
なぜならこの僕、パンナコッタ・フーゴがそうだから。
そしてもう一方。
強盗、殺人、横領、暴行などなど…。彼の話を信じるならご対面はぜひとも遠慮したい。
吉廣氏が被害者側であり、多少の誇張表現が含まれていたとしても犯罪という分野に関わってることは間違いない。
危険人物である空条承太郎、及びその仲間たちがたとえチンピラのような分際であったとしても僕としてはそんな野蛮な人間に関わるのはゴメンだ。
…だからと言ってその集団が必ずしもこの舞台では『悪』とは断定できない。
なぜなら僕たち、パッショーネのギャングだってそうだから。
ブチャラティ、アバッキオ、ミスタ、ジョルノ、ナランチャ…。
彼らは僕と違う。困難が立ち塞がろうとそれから逃げることなく向かっていく。それがどんなに巨大な壁であろうと。
彼らは僕と違う。正しいと思う道を、進むべき道を切り開いていく。それがどんなに困難なものであっても。
『オレは“正しい”と思ったからやったんだ。
後悔はない……こんな世界とはいえ、オレは自分の“信じられる道”を歩いていたい!』
『“鍵”を渡すことはない。
そしてフーゴもアバッキオも無事でみんなのところに帰る!』
『この国の社会からはじき出されてよォーー…。俺の落ちつける所は………ブチャラティ、あんたといっしょの時だけだ………。』
『よお………オメーか、フーゴ』
『オレに“来るな”と命令しないでくれーーーーッ!トリッシュはオレなんだッ!オレだ!
トリッシュの腕のキズはオレのキズだ!!』
痛む頭を押さえる。直射日光から守るように目を日陰で覆うと僕の足はまた動き始めた。
時々僕は自分の頭脳が恨めしくなる。IQやらなんやらで人の可能性を決めつけるのは嫌だが、客観的に見たら僕は賢い部類に含まれるのだろう。
だったら、と願う。
僕はどうしてもっと聡明じゃないのだろうか?
或いはどうしてもっと間抜けじゃないのだろうか?
ああ、わかってるさ。悪態を吐きたくなるのを堪える。ここで言ったらそれは即ち自己否定になるだろう。
それでもわかってしまう。本心を客観的に見つめてしまう。
それが見えなければいいのに。
それが客観的でないと心底否定できればいいのに。
結局の所僕は脅えてるにすぎない。
決断を先伸ばしにしたのはどちらにでも都合が良いときに付けるようにとの下心からだ。
都合がいいほうに味方できるようにだ。
決断してしまったら……ゲームに乗ったとしたら……もう戻れないのだから。
一ヶ所に留まって参加者最後の二人になるまで待つという選択肢を取り上げられた僕はもうどうすればいいかわからない。
それが唯一の道だと、なけなしの勇気を振り絞った僕にはその道しか選べないように思えたのに…。
それを荒木は許してくれなかった。
-
殺すことも殺されることも御免だ。
人影に脅えてビクビクするのも勘弁だ。
それでもそうするしかないんだ……。
堪えきれなかった感情は溢れて口をつく。
「僕は……死にたくないんだよォ………ッ!」
歩くことに取りつかれたように僕の体は動き続ける。
意図せずとも漏れた呟きは誰に届くこともなく消えた。
嫌なんだ。
恐いんだ。
死にたくないんだ。
誰か助けてくれ。
「やあ」
ああ、確かに求めたさ。
「死にたくないんだ、って?」
助けてくれ、と願ったさ。
どうにかしてくれ、と思ったさ。
「それだったら…取引しようか?パンナコッタ・フーゴ君…」
けどこれは冗談キツいだろ?
目の前に聳え立つ政府公邸を背景に突如現れた男。
ゲームマスター、荒木飛呂彦。
選択する権利さえ奪われた僕はもう、乾いた笑いを漏らすしかなかった。
◇ ◆ ◇
「そう急かさないでください。警戒を緩めるにはここは危険すぎます。常に気を張って、ほんの少しの気配でも感じたら……」
「わかってるって、花京院。それにしたってこんな時間に襲いかかってくるような奴はいないと思うぜ?
せっかくのお天道様だってのに…もっと楽しまないとなッ!」
「ちょっと、グェスさん!…まったく………」
ため息と駆け出したあたしのあとを追いかけるような靴音が聞こえて思わず頬が緩む。
だらしない表情を曝してると頭で理解しながらもあたしはそれを変えることができなく、ただ花京院にそれを見られないようにまた少し足を速めた。
まったく…ハイスクールの女生徒じゃねーんだからと、今まで散々馬鹿にしてきた極めて『女の子』らしい行動に我ながら呆れる。
家族や知り合いにこんな光景を見られようものならそれこそこめかみにトリガーを突きつけてバン!だ。
言うまでもなく突きつけるのはあたし自身のこめかみだけど。
後ろからやって来た人影を横目で確認する。ちらりと視界に映った男…青年は息を弾ませながらあたしの横に並んだ。
-
平均身長よりやや高い、それでいて華奢な体。
呆れと心配からかすこし皺をよせた顔は男と言えどどこか美しくある。
なによりもその気高く孤高に輝く瞳はあたしにエメラルドを思い起こさせた。
「……?どうかしましたか?」
ばっちりとあたしと目があった花京院が聞いてくる。
キラキラ緑色に輝くお前の眼に見とれてた、なんてことを初なあたしが言えるわけもなく慌てて取り繕ったような言葉を返した。
「ああぁ…と…、えぇと…。そーいえばまだ朝食をとってないなぁー…ってな、思って。それで……」
上ずった自分自身の声を聞いてあたしはますます焦った。
こんな調子じゃ顔も赤くなってるんじゃないかと思い、それを隠すために平静を努めてに俯いた。
それでも花京院の奴は話しかけてくる。石を蹴飛ばし妙にぎこちないあたしに気を使って話しかけてるんだとしたら……くそ、意外に鈍いやつなんだな………。
あたしたちは今、政府公邸を目指して向かってる。
日記をパチったあたしの行動に花京院は最初、おおいに怒りを示した。
曰く『なんて危険な真似をッ!こんなことをしたら今すぐにでも荒木が取り返しに行動を起こすかもしれない……!』とのこと。
ただその一方で『貴女の行動は気高く勇気ある行動でした。誇りを持つべきでしょう。』とのこと。
別に誉められたかったからパチったわけじゃないし…ただ自分の手癖の悪さが出たっていうか…。
まぁ、誉められて嫌な奴はいなく、あたし自身もその大多数と一緒で満更でもなかった。
日記は荒木のスタンドによって細工が施されたのか開くこともできなかった。
そして花京院が言うにはだからこそ良いらしい。
『それだけ必死に荒木が隠したいものとは…』
そう言ってぶつぶつ呟いた後、最も近くにある施設、政府公邸で詳しく調べたいとの事をあたしに言ったわけ。
でもあたしとしても政府公邸に行くこと自体は大賛成だった。
そこに行けば食事も取れるだろうし、どっしりと腰を据えての情報交換もできる。
他の参加者に合う機会でもあるし、なにより体を休めるに最適な温かいベットだってあるだろうし…。
い、言っとくけどベッドっていうのは…その…イメージの中でもシングルベッドだからな!
キングサイズだとかツインベッドだとかあたしがこいつとチョメチョメだとか………。
そんなことは断じてないんだからな!
「そうだ、絶対ない………ッ!」
「???」
唐突なあたしの言葉に花京院は頭上に疑問符を浮かべる。
あたしはそれを気にかけずずんずんと足を進めた。
不意に喉の乾きを覚えた。
それもそうか…。なんてたってもう六時間も動きっぱなしだ。
この緊張状態…殺し合いの緊張状態は簡単に人の体力を奪う。
そう考えたとき、さっきのあたしが口走った『まだ朝食をとってない』っていう提案が現実味を帯びてきた気がした。
まぁ、それでも流石にここで鞄を広げてピクニックってわけにはいかねーな。
そう思って鞄を体の前に回す。中を手探りで物色するとお目当てのペットボトルが出てきた。
歩き食いする気分じゃなかったし、事実あまり腹は減ってなかった。
喉を潤す水の冷たさを感じるとあたしの体は満足したのか、欲求をようやく押さえた。
それでもそれはペットボトルの半分までもを消費するには充分で、あたしはふと補給ができなかったらどうしようと思った。
きっとそうやって別のことを考えてたからだろう。
あたしがペットボトルの蓋を絞めきる前に、デイバッグそれごとを落としてしまった。
慌てて拾おうと身を屈めたがそこには水でふやけた物を口からぶちまけたデイバッグがあるだけで、仕方なく使い物になるか微妙な用具を集め始めた。
この時ドラマでよくありがちな物を拾おうとして男女の手が重なり『あッ………』っていうワンシーンを思いだしてしまったのは内緒だ。
先に言うが期待なんてこれっぽちもしてないからな!
ただこういうシチュエーションはあたしにしては珍しいかなァ……って思っただけ。
-
結果としてあたしの手を花京院が包みこむなんて幻想は妄想に終わり、あたしは無事ふやけた地図と名簿に向かい合うことができたというわけ。
ただひとつを除いては。
「花京院………」
あたしの声の低さに何か読み取ったのか、花京院も柔らかな表情だったものを険しくするとあたしを見つめる。
黙ってあたしはそれを渡した。デイバッグの中で唯一濡れずにすんだ、正確にはなぜだか『濡れてない』日記を。
「これは………?」
「ああ、それだけじゃない。」
顎で促すように示すと今まで頑なに閉じていた表紙に力を込める。
すると、どうだろう。今までは開かなかった日記は急にその拘束を放ち、中身を曝し始めた。
真っ白な中身を。
「こ、これは………?!」
「何か条件があるんだろうな。とにかく思った以上にこいつはヘビーそうだな…。」
「急ごうぜ、花京院。そうとわかったらグズグスしてねぇで一刻も早く政府公邸に行かねえと。」
明らかに流れ出した緊迫感。
そこにはさっきまであった余裕は消え失せ、黙ったまま小走りになるあたしたちしかいなかった。
さっきまでの下らない妄想の数々を打ち消すように頭を振るとあたしは足を動かすことに集中する。
この雰囲気が好きかと言ったらもちろん好きじゃねーさ。
もっと緩くてダルそうな感じがあたしには合ってると自分ながらに思ってる。
大体こういうシリアスってのはキャラに合わないんでよォ。
そう思ってもあたしは今、たった今、この状況にはこれっぽちも不安を感じなかった。
なぜならあたしの横にはコイツがいてそしてコイツは言ってくれた。
『僕と友達になってください』ってな。
柄にもなく太陽が明るく見える。いつもと違う、あたしを優しく温かく包んでくれる太陽。
隣に並んでくれる奴がいる。それがこんなに嬉しいことなんて知らなかった。
それでも今だけは、この一瞬の幸せな時間に浸っていたいと思った。
◆
入り口に設けられた鉄門を慎重に開いていく。
いつもだったら気にならないであろう、それが軋む音に冷や汗を流しながらも二人して庭園に入る。
閉めるべきかどうか、少しの間悩んだが庭園内に警戒を張る花京院に聞くのも気がひけて、結局あたしはゆっくりと後ろ手に門を閉めた。
移動中に知ってびっくりしたがあたしのグー・グー・ドールズのような不思議な力は『スタンド』と言い、花京院もスタンド使いらしい。
運命を感じるだとかそんな狂言を吐いてる余裕はなく先行させたグー・グー・ドールズの視界に何か写らないか意識を集中させる。
……特に不審なものはなし。隣にいる花京院に頷きでそれを伝えると花京院も同様に頷きを返してくる。
それを合図に庭園内を疾走する。政府公邸の入り口まで全速力でかけていく。
あたしたちが呼吸を整え安堵の息をついたのは扉にあたしたちの体を滑り込ませた後だった。
ほっとあたしを戒めるかのように花京院が手を挙げる。反射的に視線を向けると広々とした玄関ホールの脇にある一室のドアを指していた。
依然スタンドを出し警戒を解かないまま扉の前にたつと、花京院のスタンドが扉の下より滑り込んだ。
中の安全を確認できたのか、扉を開くとそこは小さながらも政府公邸の名に恥じない立派な一室があった。
「…ふぅ」
「とりあえずは大丈夫そうですね」
そう言って互いに椅子に腰を下ろす。
うお、柔らけぇ。いい椅子使ってんな…。
「大きすぎる施設ってのも考えもんですね。これ程だと中に誰がいるかどうかもわからない」
「あたしたちはゲームに乗ってないッ!……なんて大声で主張するのも間抜けだしなぁ」
あたしの言葉に頷きなから花京院は自分のスタンド、法皇の緑を展開していく。
イソギンチャクみたいに触手を伸ばしてく様は見ていて気味が悪いが口に出すとなんだか悪いのでやめといた。
細切れになった緑の網は部屋中に広がりさらに隙間から外に出ていった。
-
「法皇の結界…僕のスタンドで簡単ですが警戒ラインを敷きました。これで安心して情報交換ができますね…。」
ソファーに座り直し、顔の前で手を組む。花京院はそうした後、組んだ手の向こう側から覗きこむようにあたしと目を合わせてきた。
この殺し合いに巻き込まれてからのことは歩きながらある程度は話終えていたから主だったものは自分達の境遇と互いの知り合いについてだった。
花京院の話が終わって真っ先に考えたことは花京院にあたしが犯罪者であることを言うべきかどうかだった。
花京院の正義感の強さは話だけでなく実際に荒木の部屋でもあたしは目撃している。
そしてその過酷という言葉が生ぬるいほどの冒険とその発端。
…普通友達のお母さんのためとは言え命をかけれるか?
あたしだったら少なくとも二つ返事で答えることも、躊躇いもなく首を縦に振ることもできないだろう。
そんな正義馬鹿…とまではいかないが、とにかくこいつがあたしが犯罪者であることを知ったらどうだろう…。
あたしは悩んだ。
相槌をうち、話を聞きながら必死で考えた。
適当な質問で話を引き延ばしながら脳みそをフル稼働させた。
そうして大袈裟なリアクションをとり時間を稼ぎ、あたしは結論を出した。
「――――…と、まぁ僕の話はこんな所でしょうか。」
「それじゃ、次はあたしの番だな。」
ソファーに改めて座り直す。姿勢を良くして背筋を伸ばすとあたしは口を開いた。
「まず最初に、花京院だから話しておく。あたしはアメリカにあるグリーン・ドルフィン刑務所に服役中の犯罪者だ」
重々しい口調を意識した。
驚愕に見開かれた目を見つめなおしまたあたしは口を開く。
「……はめられたんだ、あたしは。たぶんこんなこといっても信じてくれないだろうけど…信じてくれ、花京院。あれは確か夏だったかな…?」
正義感が強い花京院、だからこそなのか、こいつは甘ちゃんだ。それもあたしがびっくりするぐらいの。
だからきっとこいつはあたしを信じる。
気の毒でしたね、なんて同情を示してあたしが正真正銘の犯罪者なんてこれっぽっちも思わないだろう。
……罪悪感がないかって?友達を裏切ることにならないかって?
…それじゃなんて説明すればいいんだよ。
あたしは放火に殺人未遂に仮釈逃亡を重ねて刑期が12年あるベテラン囚人です、って言えばいいのかよ?
小心者で他人に嫌われるのが嫌で人生失敗してきました、なんて言えばいいのか?
……そんなこと………そんなこと言えッかよォ!
偽りの表情を貼り付けながらあたしは胸を痛めた。
きっと花京院はこの話を信じ、いもしない犯罪者に怒り、ありもない冤罪を被ったあたしを慰めるだろう。
罪悪感で胸が張り裂けそうだった。
それでも、あたしは初めてできた『友達』を失いたくなかったんだ……。
◆
「それにしても不思議ですね。『空条』なんて苗字はそうざらにあるものじゃないんですよ」
「でもあたし自身、あいつのフルネームは知らないからな…。かもしれない、だけであって違うかも」
「それでもなにか運命的な物を感じますね。同じ知り合いが同じ苗字…もしかしたら親戚かもしれない」
憂鬱な気分だったがそれをおくびにも出さずあたしは花京院の後に続く。
警戒を怠らずに次々と部屋を回っていく中で、あたしは気分を落ち込ませまいと無理に振舞っていた。
幸い状況が状況だったから、いつもと違うあたしでも怪しまれることはなかったようだ。
部屋の扉を開く。
相も変わらず高価な机やらソファーやらで部屋は快適に過ごせそうだ。
あたしには全部一緒に見えるが隣にいる花京院が言うにはその部屋その部屋で応接室、来客室、従者室等々……。
とにかくあたしが言いたいのはここが安全だと主張するにはまだ早い、ってことだ。
途方もなくある部屋の多さにあたしはいい加減勘弁だった。
-
ただでさえさっきのことがあって気持ちが落ちてるあたしには、部屋で隠れてる参加者をひたすら探すのはキツい作業だった。
まったくもういいだろ…。
少し投げやり気味に入り口から死角になった物陰を覗きこむ。
いなかったことにほっとしながらもあたしはうんざりし、隣に繋がる扉に手をかけた時だった。
花京院があたしの肩を掴む。
普段物腰が柔らかいコイツにしてはやけに強い…というか強引過ぎる。
そのまま部屋の壁際まで押し込まれるように移動を強制された。
少し痛む肩に顔をしかめつつ、見上げる花京院の顔は何処までも強張っている。
何かを言おうとして視線をさ迷わせ、花京院はそれでも黙ったままだ。
…あたしは覚悟した。
ああ、きっとさっきの嘘がバレたんだな。いや、もしかしたら最初から気づいてたのかもしれない。
それでも優しい花京院は口に出せなかっただけで。あたしがこうやって気持ちの整理をすることを見越していたのかもしれない。
でも…だからこそあたしは花京院が許せなかった。
お前が言ったんじゃない、友達だって。自分の言葉に責任とれよ、お前は。
お前がいう友達ってのはそんな軽いものなのか?気を使い合う必要があるのかよ。
空条ってヤツの母親のため、飛び出したお前と空条の間にはそういう遠慮があったのかよ。
八つ当たりだって……?
矛盾してるんじゃないかって?
そんなの知ったことかよ…ッ!
あたしの感情の昂りに合わすようにグー・グー・ドールズは姿を現す。
顔を歪めまいと堪える気持ちはきっと自分の傲慢な気持ちなんだろう。
それでも押さえきれなかった。耐えることなんてできなかった。
花京院…お前が言った『友達』が偽りだっていうなら……あたしは……あたしは…………ッ!
甲高い奇妙な音と銃撃音。
二つがあたしの耳に入った瞬間、体は突き飛ばされバランスを崩ししこたま頭をぶった。
振り返ったあたしの眼に映ったのは肩から血を流して崩れ落ちそうになる花京院。
そしてその向こうには部屋の切れ目から体を半身だけ出し片手に銃を持った青年。
瞬間身体を動かした。
怖いという気持ちが自分の中で湧き出る前に這いずるような格好で花京院に近づく。
歯をガチガチぶつけ合う音が自分の物とは思えず、それでも花京院の身体を無理矢理引っ張っていく。近くのソファーの裏側まで行かないとこのままじゃいい的だ。
もちろん襲撃者がそんなことを許してくれるはずがない。青ざめやけに若い、少年といっても通ずるようなそいつは今度は身体を完全に乗り出させて銃を持ち上げる。
あたしの脳裏に浮かんだのは一瞬で命を刈り取られた老人の最期。
あいつは直前まで自分の死に気づかなかった。痛みもなく、でも髪の毛一本も残さず瞬きする間に文字通り消された。
走馬灯のように駆け巡る映像の中でもあたしが感じた感情はひとつだった。
死にたくない。
少年がそうしてるのか、脳内に分泌された何かがそうさせているように見せているのか。
やけにゆっくりと狙いをつけている間にもあたしは命を諦めれなかった。
-
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
這い出る恐怖と諦めきれない後悔。
いったいあたしが何やったんだって言うんだ…ッ!
なんだよ、殺し合いって!
何であたしが殺されないといけないんだよ…ッ!
なんで……誰もあたしを助けてくれないんだよッ!
少年が引き金に指をかけたのとエメラルド色の閃光が走ったのは同時だった。
不意をつかれたのか、少年は顔をびっくりさせ眼を見開く。
それでも反射的にスタンドを出現させるとものすごいスピードで宙を舞う宝石を叩き落とす。
視線を固定されたまま首根っこを捕まれ、あたしは後ろに引っ張られる感覚に身を任せた。
あたしを庇うかのように広げられた手。
細身の身体をそらすようにして胸を張る。
傍らに並び立つはその気高い精神を象徴する叡知のエメラルド。
「法皇の緑ッ!」
多方から無数に飛びかかってきた射撃に流石の少年も対応しきれない。
一発、二発をスタンドの両の手で弾くのが精一杯。
三発目を射軸上から身体をずらした後は後退しながらなんとか直撃を免れるように部屋の扉から出ていった。
「グェスさん…」
花京院が振り向きあたしに語りかける。出血が続く肩を押さえながらも視線を合わせようとその場で片膝をついた。
「貴女のおかげです…。貴女が僕をこのソファーの後ろに導いてくれた。たったそれだけ、と貴女は言うかもしれません。
でもそのたったそれだけが僕と貴女の命を救ったんです。あの少年の襲撃から僕たちを救ったんです。」
肩に温かみを感じた。
なぜだか狭まった視界だが今は気にならない。
遠くでぼやけたように見える花京院の姿と声を必死でかき集める。
「貴女は誇るべきだ。友達の危機を救ってくれた、僕の最高に頼れる友達だと胸を張ってください」
少年はまだ隣の部屋にいる。
安心が慢心に繋がりかねない状況にも関わらずあたしはそれでも込み上げてくる何かに身を任せて眼を瞑った。
友達、か…。
「だったらよォ、花京院…。」
見開いた瞳で花京院を見つめ返す。今度はあたしが肩に手を置く番だった。
怪我をしてないほうの肩にあたしの手を重ねるとほんのりと花京院の体温を感じた。
「あたしにも助けさせてくれ。さっきみたいにお前の危機を救わせてくれよ…」
あたしが先に立ち上がる。花京院の手を引っ張って立ち上がるのを助けてやった。
手を握ったままあたしはまた言葉を重ねた。
「友達なんだから」
控えめながらも笑みを浮かべ頷く花京院を見てあたしは本当に嬉しかった。
◆
グェスさんが戦力として計算できるのは嬉しい誤算だった。
情報交換の段階でスタンド使いになったのも最近で戦闘の経験が皆無に近い彼女にあまり負担が大きいようのことは任せれないがそれでも一人より遥かに戦略が広まった。
廊下側の警戒を彼女に任せると僕はするすると法皇の緑を潜行させる。
不安がないと言ったら嘘になるが一直線で死角もなく、視野も通ずる廊下なら彼女でも大丈夫だろう。
なにより彼女はさっき僕の危機を救ってくれた人だ。ここで信頼しなきゃいつする?
中庭は僕自身の視覚で確認する。隣の部屋がどうなってるか、わからないが庭に面してる以上そちら側からの襲撃にも警戒を怠ってはならない。
なんせ敵は少年だけじゃないんだ。最悪他の参加者が襲い掛かってくるパターンもある。
なにより銃を持ってる彼に対して位置を把握してないのは致命的だ。今の僕の最優先事項は少年の位置を把握すること。
最大の利点、射程距離には自信のある僕のスタンドを広げ進めていく。この状態なら最悪塊になっている頭部の法皇さえ攻撃されなければ重症には到らないだろう。
隣の部屋は…バスルームか。政府公邸に恥じない広々とした優雅な空間も今の僕には厄介なものでしかない。
天井を伝って少年の姿を探る。気配を消して部屋中、それこそバスタブの中も、便座の内部も覗きこんだが彼を見つけることはできなかった。
こうなると彼はもうひとつ隣の部屋ということになるか…。
扉はガラス張りで閉めきったその状態でも僕のスタンドには充分な隙間だった。
音をたてることなく忍び込むように身体を捩じ込んでいく。もちろん、少年の捜索と警戒は怠ってない。グェスさんが何の合図を出さないことを考えるとやはりこの部屋に潜んでいるな……。
部屋はベッドルームだった。
英国風の四隅の柱が高い、いかにも高級感漂うベッド以外にこれといった家具はなく隠れそうなスペースもなかった。
…しかし中庭に人影はない。廊下にも少年はいない。となると…。
-
馬鹿らしいが隠れれるスペースは子供の遊びで一番候補になりそうなベッドの下しかない。
覚悟を決めて攻め込む。
ここでエメラルドスプラッシュは使わない。仮に射つ瞬間と少年が飛び出るタイミングが重なりようものなら、僕のスタンドは射撃の後の無防備な姿をさらすことになる。
そして法皇の緑を細くベッドの下に潜りこませるという手段もとれない。
僕が思い出したのはさっきの僕のエメラルドスプラッシュを弾いた時の少年のスタンド。
可能性でしかないが、見たものは確かだ。
弾いた両の手の甲にあった玉のようなものから煙が漂っていた。そして僕の戦いの勘があれは危険だと警報をならしている。
スタンドの能力がわからない以上迂闊には攻めれない。そうなると僕がとるべき手段は…。
意識を集中させて紐状になっていた法皇の緑を集結させる。人型に形づくっていくそれを臨戦態勢にすると僕は声を伝えた。
「抵抗するなら容赦しないッ!ベッドの下にいる少年、今すぐ出てこいッ!」
エメラルドスプラッシュを放てる態勢をとる。頭の片隅ではベッドの周りに法皇の結界を張るという選択肢も浮かび、とにかくどのタイミングで少年が出てきても対応できるよう神経を集中させた。
驚くことに少年は簡単に姿を現した。降伏を示す態度を微塵も見せず、堂々と僕のスタンドの前に立っている。
「…なんの真似だ?」
法皇の緑が僕の言葉を繋ぐ。少年は気だるそうに黙ったままいると、次に両手を挙げて克服の姿を見せた。
…不可解な行動だ。何が彼をそうさせた?
最初ベッドの下から這い出てこなかった理由は?すぐに降伏の意を示さなかったのは?
そして僕はその理由をこの身をもって知ることになった。
両手が少し閉じられるようになっていたのはその理由か。指に引っかけられた二つの爆弾が宙を舞った。
僕が最後に視認できたのは少年の口角が皮肉げにつり上がったことだった。
轟音と閃光。
「ぐぅ………ッ!!」
手榴弾でなかったのは彼が持ってなかったからか、或いは自分のダメージを考えてか。
スタンドを経由して本体の僕も視覚と聴覚を失い、頭を抱える。
法皇の緑を自衛のため呼び戻した僕に僅かだが扉を開く音と人間が走るような音が耳に入る。
「――――………い、花京……――!廊下から…――」
グェスさんの言葉が耳に入るが事態はそう暢気にしてられない。
聴覚に直結している三半規管もやられバランスがとれない僕はふらつきながらも廊下側の扉に静態した。隣にいるグェスさんを引き寄せて襲撃に備える。
扉が吹き飛んだ。狂暴なスタンドを携え銃を片手に少年が乗り込んで来た。
扉前に張った、法皇の緑の結界その中に。
「食らえ、このエメラルドスプラッシュをッ!」
範囲を広げることなく集中させた緑の弾幕が360度より飛来する。その密度の高さは僕の最高の攻撃ッ…!
相手のスタンドのスペックは恐るべきものだ。パワー、スピード、精密機動性。承太郎のスタープラチナには及ばないが、それでもその水準の高さでも僕の攻撃は捌ききれない…ッ!
弾かれた光弾は無数。それでも襲いかかる弾数は数知れない。致命傷は与えることができないのも計算の内。僕はふらつく視界のなかで法皇の緑が床を這うように少年に向かっていくのを見て勝利を確信した。
カラン、と乾いた音を立てて拳銃が転がる。
弾幕が消え失せた時、そこにいたのは僕のスタンドが右手に巻き付き、拳銃を叩き落とされた少年がいるだけだった。
幾つか直撃を避けたものの僕の結界は少年に確実にダメージを与えていた。唇を切って血を流している少年に僕は語りかけた。
「…さぁ、大人しくしてもらおうか。肩にかけてるデイバックをお「チェスの駒……」
言葉を遮られたことに眉を潜める。幾らか拘束を強められながらも少年は息を乱し言葉を続ける。
「ポーンって哀れな駒だと思わないかい…?大抵のポーンはオープニングゲーム、中盤の中央の支配権争いで散ってく。
生き残ったと安心した終盤にはそれでも足を動かすことを強制されてしまいには終着点にたどり着いても、今度は更なる働きを要求される…。
哀れな駒だよ、ポーンって奴は」
「何が言いたい…?」
「勝負には何が必要かって話さ…。結局最後に勝負を決めるのは感情じゃないし、覚悟でもない…。」
「勝負を決めるのは犠牲にするものが何かってことさ」
-
少年の左手が持ち上がる。僕の視線はそれを追い、凍りつく。
法皇の緑は全身に巻き付いているとは言え、彼自身、そしてスタンドの無力化を主にして配置を割いている。
つまり僕は彼の攻撃手段の拳銃とスタンドを完全に押さえ込んでいた。
少年の左手には二丁目の拳銃が握られていた。
法皇の緑の力じゃ彼の身体を絞め殺すことや、骨を粉砕させることは不可能。
加えて彼は指の引き金を引くだけでよくて、僕は意思を伝えスタンドを操らなければならない。
間に合わない。
さらに狙いは僕じゃない。
グェスさんだ。
スローモーションのように少年が拳銃で狙いを定めるのを脳が処理する。
揺れる視界の中身体をなんとかグェスさんの前に入れようとする。
射軸上に遮蔽物である僕を入れて彼女を助けようとする。
くそ、間に合わない…ッ!
そう思った時だった。
肩を引っ張られる。横っ飛びで足りなかったベクトルは補われ、僕の身体はちょうどグェスさんの前に着地した。
引っ張られたんだ。グェスさんに僕の体が。
信じられない思いで顔を真後ろに回す。不思議なことに銃弾が飛んでこないのはなんでだろう。
振り返った僕は後悔した。
そこにいたグェスさんは醜かった。誇り高き僕の友人は堕ちたゲス野郎の顔をしていた。
己の誇りより醜い生に執着する人物がいた。
瞳孔が収束し揺れた。
罪悪感があるのか…僕を盾にしたことに背徳感があるのか…。
心底残念だ。
僕は友人を庇い死なず駒のように使い捨てられ死ぬことになった。
甲高い銃声が政府公邸に尾を引いた。
◆
カランと無機質な音が響いた。
まったくの無というほどの静寂が部屋にこだまして沈黙が降り立つ。
飛び散った薬莢から煙が一筋漂う。
動いたのあたしじゃなかった。
崩れ落ちたのは花京院じゃなかった。
少年は左手に持っていた拳銃を取り落とすと、呆然とした表情のまま膝から崩れ落ちた。
顔は地を向き見えないが、その後から微かに聞こえる啜り泣く少年の声が悠然と彼の状態を物語っていた。
花京院がなにかをしたわけじゃない。無論あたしがなにかをしたわけでもない。
銃弾は花京院の足元に撃ち込まれていた。何が少年をそうさせたのか。何が銃撃を外す要因となったのだろう。ただ最後の瞬間に彼が意図的に外したのは確かだろう。
真っ先にあたしが思ったことは安堵だった。そしてそう思った自分が恐ろしかった。
恐る恐る顔を挙げる。大きな背中はなく学生服のボタンが並んでいることで花京院があたしと向かい合ってることがわかった。
あたしの視線を捉えた花京院の瞳は靴底に張り付いた汚物を見るようだった。
「ッ!!」
ドンと突き飛ばす。傷口がある肩の辺りに触れたが、花京院は二、三歩よろけただけで表情を変えずに冷めた目付きのままだ。
自分がわざと傷口を狙ったという行為に狼狽しつつも、どこかでそれでも表情一つ変えず冷めた目付きの花京院が憎かった。
なんだよ…その顔は……なんだって言うんだよ………?
あたしは良くやったと思う。今の今まで命を賭けた戦いなんてしたことなかったのに自分の役割を果たせたと思う。
そもそも花京院が死なずに済んだのもあたしのおかげじゃねーか…。あたしがソファーの後ろに引っ張ったってことがあったからこそお前は生きてられるんだぞ?感謝はされても非難はされる覚えはない………。
言い聞かせても歯軋りは止まらない。悔しいのか、憎いのか。
ただごちゃ混ぜになったどす黒い感情が込み上げる。
くそッ…なんだって言うんだよ…。
その眼を止めろッ……!そんな目で…あたしを見んなッ!
あたしを……………哀れむんじゃねえッ!!
-
可哀想な物を見る目付きになった花京院をその場に残してあたしは飛びようにその場を去る。
廊下側じゃない扉を潜り、バスルームを脇目も触れず駆け抜けると勢いのままにベッドに身を沈めた。
くそッ、くそッ、くそォ………!
悪いのはあたしなのかよ?この臆病者のあたし?
なんでだよ、誰だって死にたくないだろうが…。助かる可能性があるならそれにすがり付くことは悪なのか?
ぼふっ、と枕が音をたてる。あたしが感情から、怒りに任せて拳を叩きつけたからだ。
罪悪感はある。
自分を友達と言ってくれた花京院の気持ちを裏切ってしまったとも思ってる。
そうだ、悪いのはあたしじゃない。花京院でもない。
あの襲撃者の少年だ。あいつがここにいたから何もかも台無しになっちまった…。
そうだ、あいつが………。
そこまで考えてあたしは考えるのを止めた。言い訳を考えるのも疲れたし、なによりあたしが行動したことは変えられない。
あたしは花京院の気持ちを裏切った。自分の命惜しさに咄嗟にあいつを盾にした。
銃弾が外れた時、自分に害がなかったことに最も安堵した。
…なんだよ、そういうことかよ。
ちくしょう、最初から答えは出てたんじゃねーか…。
「あたしが一番悪いんじゃねーか………」
言い訳してるのもあたし。
裏切ったのもあたし。
殺す覚悟も殺される覚悟もないのもあたし。
ないない尽くし、ははは、情けねぇ……。
でも。
それでも…それでもあたしは、あたしは………
「死にたくない………」
ごろりと体の向きを上にした。天井は無表情のままあたしを見返し、なにもかも忘れようとあたしは右腕で顔を覆った。
◆
恥も外聞も捨てて僕は号泣を続けた。
子供の様に泣きじゃくり、口からは嗚咽が、鼻からはみっともなく鼻水を撒き散らしてる。
女性は何処に行ったのだろうか。というかいつの間にいなくなったのか。
潤んだ視界で周りがぼやけ、この場を去ったことにもきづかなかった。
そんな僕を目の前にして青年は冷酷な眼をしていた。しかし、戸惑いを感じているようでもあった。
それもそうだろうな。襲い掛かってきた狂暴な殺戮者は突然殺意を失い、惨めな姿を晒している。
親を亡くした子供のように泣きじゃくり、拠り所をなくしたかのようだ。
…どうしてこんなことになったんだろう。
僕の記憶は遡る。政府公邸に入る直前、男と交わした会話を思い起こした。
『いや、なに取り引きなんて言ったけどねぇ…うん、実際にはお願いって言った方がわかりやすいかな?』
『いやいや、具体的なことじゃないんだ。あーーでも……うん、そうなるとお願いじゃないなぁ……』
『何、そんなに怯える必要はないさ。プレゼント、どうだい?そう聞いたら幾分受け取り方も変わるだろう?』
『そうだなァ…………。ひ・み・つッ!そう言ったほうがおもしろいでしょ?…じゃ、アリー・ヴェデルチ…!』
-
僕は渡された物と渡された者としてヤツの狙いを考えた。
そして僕はこれがヤツからのテコ入れと受け取った。
未だ自分の道を決めていない僕に業を煮やしたのだろう。あんな大胆な行動の裏には僕に選択の余地がないと言うことを伝えたいのだと思った。
だけどそれもどうやら違ったようだ。
全てはアイツの想定どおり。思い通りの計画通り。
僕が殺し合いに乗ることも。政府公邸で参加者を待ち伏せすることも。
参加者二人と遭遇することも。躊躇いながらも二人を殺そうとしたことも。
そして…僕が荒木に反抗しないこともヤツの計算のうちなんだろう。
思い出すさっきの戦闘。
二人を追い詰めた瞬間、僕の中にはきっと漆黒の殺意が宿っていたと思う。
引き金は引くつもりだったし、そしたらもう振り返らないつもりだった。
けどそんなことはなかった。荒木飛呂彦、あいつにとって見れば僕は最高に滑稽で哀れなピエロだ。
女性に狙いを定めた瞬間、視界に映った荒木飛呂彦。わざとらしい仕草で抜き足指し足で彼女たちのデイバックに近づき中から何かを取り出した。
そして僕に向かって飛びっきりのウィンクをした。
わかっていたんだ、ヤツは。
僕が拳銃の狙いをずらしてヤツを狙撃しないということを。
襲撃者である有利な立場を投げ捨ててでも主催者殺しという大チャンスにチャレンジしないことを。
僕は所詮半端者で燃えるような正義感もなく、美しいまでの勇気もない。
青年に言ったポーンの件。ははは…なんてこったい。一番の歩兵は僕じゃないか。
荒木に言いように扱われ、中盤戦でポイッと捨てられた惨めなポーン。
あんな大口叩いて、僕はなんもわかっちゃいないんだ…。
情けない。
不甲斐ない。
そして何より…僕はまた選べなかった。
荒木という絶大なる強者。
パッショーネという巨大な権力を持つ支配者。
そう、何時だってそうなんだ。僕は眠った奴隷なんだ。
いつまでも正義に目覚めることなく、自分に不利なことには関わらない。そんなとんだチキン野郎さ…。
利益だけ考えて行動する。
上手く立ち回ってなんとか位置を確保する。
無理してだって保身と安全を最優先。
そうだ、僕は嘘と偽りで固められたパンナコッタ・フーゴっていう情けない男。
でも。
それでも…それでも僕は、僕は………
「死にたくない………」
しゃっくり混じりのしゃがれた声が出る。返してくれる相手がいるわけもなく、涙が頬を伝っていく冷たさがやけに生々しかった。
◆
-
溜息を吐きながらも自分のスタンドを使う必要がないことを確認する。
少年のスタンドは本人の精神力がやられたのか、すっかり飼いならされた犬のように大人しくなり、終いには姿を消してしまった。
床に落ちてある拳銃も二丁、しっかりと回収済みだ。
けれでも僕の悩みは尽きない。
この少年は何があったのだろう。どうして急に襲撃をやめたんだ?
説得は可能なんだろうか。そもそも本当に殺し合いに乗ってるのか?
そして…もう一人のほうも同様だ。
彼女は…悪い人ではない。
スタンドも最近知った彼女からしたらこの舞台は些か刺激が強すぎた。
精神を消耗した彼女が保身に走ることは仕方ないだろう。
フゥ、とため息が口をついた。
…素直になれよ、花京院典明。
本音は違うということは誰より自分が一番わかっていた。
彼女なら…スタンド使いになれたほどの彼女なら乗り越えてくれると信じてた。
それとも僕の友達が、仲間が気高すぎるのだろうか。
甘すぎた自分自身。でも僕の仲間もこうしたと思う。グェスさんを信じて、そして同じように彼女の危機には身を挺してまでも助けるだろう。
そうだ、それがいいと思ってた。それでいいと思ってたんだ…。
でも駄目だ。僕にはその甘さを貫き通す程の強さがなかった。
だからもう止めだ。
甘いことが悪いことではないと思う。
僕達はそうやって捨てきれなかったからここまで来れた。
でも仲間がそれで困っているっていうなら僕は甘さを捨てる。
それで承太郎が、ポルナレフが、ジョースターさんが、イギーが助かるっていうなら喜んで泥を被ろう。
彼らを盾にするやつ、騙して利用しようとするやつ、問答無用で襲いかかってくるやつ。
容赦はしない。害を成すというなら僕は漆黒の殺意を持って迎え撃つ…ッ!
そう思ったけど僕の心をチクリと刺すものがあった。
名簿にあるモハメド・アヴドゥルの文字が何も言わず僕をじっと見ている気がした。
-
意識を移すと僕はほかのことを考え始めた。
まず終わったこと、目の前の結果だけを処理しようか。
グェスさんは…もう信用できない。少なくとも命を預けるようなことは出来ない。
彼女は僕を捨てゴマにした。
変えることのできないこの事実は慎重に判断を下さないと…。
彼女自身が何を想っているか、それも後で話し合わないといけない。
ここは地図の端で参加者も好んでここにやって来るとは思えない。場合によっては、彼女が身の安全を最優先するというなら彼女の意思を最大限尊重したい。
そしてこの少年。
今はまだ大人しい。涙や抵抗を一切見せないことからきっと殺意はもうないだろう。
けれど彼が明確に僕達を殺しにきたのは確かだ。拳銃を向け、スタンドの拳を振るという判断を下したのは彼が自身だ。
思うに修羅場も多く潜ってきたんじゃないだろうか?そうなると勝ち残る自信や覚悟もあるっていうのか…?
ならばこの涙はなんだ?何が彼をそうさせた?
…焦ることはないか。情報を聞き出し理由も聞こう。
そして……場合によっては…始末するしかない。
「死にたくない、か」
少年がぽつりと吐いた言葉が耳をうつ。
きっと本心からの言葉なんだろう、そう思わせるほど少年の声は憐れみを含んでた。
僕は駄目だと思っていながらも同情心が沸き上がってくるのを抑えれなかった。
それを打ち消すため懐に手を入れる。ずっしりと感じた黒光りする武器が僕に現実を思い起こさせた。
ふと僕はどうなんだろうと思った。目まぐるしく、事が起きすぎた僕は改めて考えてみる。
けれどそれを考えると先の誓いが揺らぎそうだった。
少年やグェスさんを切り捨てることができなくなりそうで、僕は自分の呟きを打ち消すようにそっと息を吐く。
早く仲間に会いたい。信頼できる彼らと合流したい。
疲れに眼を擦りながら、とりあえず止血のため僕は辺りを見回した。
-
【C−8 政府公邸 /1日目 午前】
【グェス】
【時間軸】:脱獄に失敗し徐倫にボコられた後
【状態】:精神消耗(大)、花京院に屈折した思い(嫌われたくない/認めて欲しい)、罪悪感、現実逃避
【装備】:なし
【道具】:支給品一式(地図・名簿が濡れている 水全消費)
【思考・状況】基本行動方針:?????
1.死にたくない
【備考】
※グェスは、エルメェスや他の刑務所関係者は顔見知り程度だと思っています。
※空条承太郎が空条徐倫の父親であると知りました
※花京院と情報交換をしました。
※花京院に自分ははめられて刑務所に入れられた、と嘘をついています。
【パンナコッタ・フーゴ】
[時間軸]:ブチャラティチームとの離別後(56巻)
[状態]:苦悩と不安、重度の鬱状態、傷心、人間不信、精神消耗(極大)
[装備]:ミスタの拳銃【レボルバー式】(4/6)、ミスタがパくった銃【カートリッジ式】(5/6)
[道具]:ディアボロのデスマスク、吉良吉廣の写真、支給品一式、閃光弾、予備弾薬40発 不明支給品?
[思考・状況]
基本行動方針:「近付くと攻撃する」と警告をし、無視した者とのみ戦闘する?
0.死にたくない
1.?????
[備考]
※結局フーゴはチョコラータの名前を聞いていません
※荒木の能力は「空間を操る(作る)」、もしくは「物体コピー」ではないかと考えました(決定打がないので、あくまで憶測)
※地図を確認しました
※空条承太郎、東方仗助、虹村億泰、山岸由花子、岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、ジョセフ・ジョースターの能力と容姿に関する大まかな説明を聞きました
※吉良吉影の能力(爆弾化のみ)を把握しました。しかし、一つしか爆弾化できないことや接触弾、点火弾に関しては聞いていません。
また、容姿についても髑髏のネクタイ以外には聞いていません
※吉良吉廣のことを鋼田一吉廣だと思い込んでいます
※荒木がほかになにか支給品をフーゴに与えたかは次の書き手さんにお任せします。
【花京院典明】
【時間軸】:ゲブ神に目を切られる直前
【状態】:とても喉が渇いている、中度の人間不信、甘さを捨てる覚悟、グエスに落胆、フーゴに戸惑い、右肩に銃撃(出血中)
【装備】:なし
【道具】:ジョナサンのハンカチ、ジョジョロワトランプ、支給品一式。
【思考・状況】 基本行動方針:打倒荒木!
0.二人に対処。場合によっては…
1.自分の得た情報を信頼できる人物に話す。(承太郎、ジョセフが望ましい)
2.仲間と合流しなければ…
3.巻き込まれた参加者の保護
4.安心して飲める水が欲しい。
5.荒木の能力を推測する
【備考】
※水のスタンド(=ゲブ神)の本体がンドゥールだとは知りません(顔も知りません)
※ハンカチに書いてあるジョナサンの名前に気づきました。
※水や食料、肌に直接触れるものを警戒しています。
※4部のキャラ全員(トニオさん含む)を承太郎の知り合いではないかと推測しました。
※1で挙げている人物は花京院が100%信頼できて尚かつ聡明だと判断した人物です。
決してポルナレフやイギーが信頼出来ないという訳ではありません。
※荒木から直接情報を得ました
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
◆
-
そっと両手を開く。宝石を扱うかのように丁重な送迎のもと入り口から一匹が出発していく。
何事もなく飛び出ていったそれをじっと男は見つめる。
朝日を背に受け飛び立つ一匹に、背景である自然が妙にマッチしてるよう思え、男は思わず涙ぐむ。
ノスタルジアを思い起こさせたその光景に感銘を受けしばらく飛び去ったその方向から目が離せなかった。
自然の雄大さと生物の力強さに改めて感じた人間のちっぽけさに男は一人頷きを繰り返した。
そのままどのぐらいか、その光景を目に焼きつけようと男はじっとそのままでいた。
そして満足気に笑みを浮かべると腕時計を覗き込む。
もう朝食の時間じゃないか、そう言うと男は慌て始める。
手元に開いた手帳のようなものに走り書きをする。トン、と句点を打つような音を合図にパタンと日記を閉じる音が小気味良く響いた。
そして後にはなにも残らなかった。
木から落ちた木の葉がひらりと舞うと唐突な風に運ばれ、男が見続けていた方角、西にはこばれていった。
【備考】
※日記は取り戻しました。
※フェルディナンドの恐竜がこの後主の元に戻るのか、南に向かうかは次の書き手さんにお任せします。
※恐竜がどの程度政府公邸での出来事を見たのかは次の書き手さんにお任せします。
-
投下完了しました。
誤字・脱字、矛盾点・修正すべき点、他気になる点などありましたら指摘お願いします。
・グェスのキャラクター性及び精神移動
・戦闘に矛盾がないか
・荒木の積極介入(フーゴ贔屓・フェルディナンドへの情報操作)
以上三点について意見をお願いします。
ではよろしくお願いします。
-
投下乙です
鏡の世界否定派VS体験派か…おもしろいカードですねw
荒木介入はむしろロワの醍醐味でしょう。これくらいは大丈夫かと…
少し気になったので、フーゴが所持している2丁の拳銃についてのウンチクを少し…
まず、ミスタが普段使っているリボルバー式の拳銃は、
S&W(スミス&ウエッスン) M49、別名"ボディーガード"と呼ばれる拳銃です。
装弾数が六発、弾詰まりなどの不具合も少ない為、
セックス・ピストルズと非常に相性がいいと言えると思います。
もう一丁の、ミスタが警官から奪ったオートマチック式の拳銃は、
ベレッタM92F、通称"M9"というイタリアやアメリカなどの警官に採用されている拳銃です。
装填がバレルなためセックス・ピストルズには不向きな拳銃のようです。
ベレッタは装弾数が15発なので、(5/6)にはならないので修正をお願いします。
またM49とM9とでは使用する弾薬の種類が全く違うので、予備弾薬40発というのが
どういう内訳なのかも明記が必要でしょう。
-
花京院が前の話でおもいっきり黄金の精神にめざめてんのに
すぐ漆黒の意思になりかけるのはおかしくね?
グェスに対しては落胆だけでいいと思う
ともかく投下乙って世界だ
|
|
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板