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一時投下スレ

1 ◆x0A8sCOhf.:2008/05/19(月) 02:05:57
主な使用例は
「展開に問題がある可能性があるSS」
「或いはSSが完成したものの自信が無くて心配」
「本スレで指摘された所の修正部分」
そんな時はここに投下してください。

835ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/05(日) 18:22:19
電車はゆくよどこまでも。線路はF-8で土に潜りガタンゴトン。
大きく曲がって西にガタン。穴の中を進んでゴトン。

「つ、つ、つ、次の駅で降りるですってー!?」

オーバーなアクションにディアボロは身体を浮かせる。
ジョセフは一瞬気を取られるも、すぐに車内にある路線図に視線を戻した。
2人はこの地下鉄が、音石明にとって命の次に大事な電気のたまり場であることを知らない。

「いいか仗助君。この列車はF-8で地下に入り、I-4で地上に出るタイプ。この案内表からもわかる。
 では……さっき通ったあのホームはなんじゃ。アナウンスは『G-6・食屍鬼街(オウガーストリート)駅』だったかのう?」

ジョセフは窓際にある路線図をバシィィーッと叩いた。

「次に降りるのは『H-5・ポンペイ遺跡駅』と書かれている。ワシらはここを調べる。
 ワシは昔イタリアに行ったこともあるからの。ポンペイ遺跡のほうが親しみやすい」
「――前の駅を無視したのはそのためか? 最初にあったサンジョルジョ教会……その存在に」

言葉を遮るかのように手を挙げながら、ディアボロが広げた地図を出す。
ジョセフは地図に記されたサンジョルジョ・マジョーレ教会を指差した。

「ワシらが最初に会ったサンジョルジョは、確かイタリアの名所じゃあないかのう。
 ツギハギに名所が書かれている地図の意味を知る上では、同じくイタリア名所のポンペイ遺跡がいい」
「そ、それくらいの調査だったら承太郎……さんも実行してるんじゃないッスか?」
「君は列車に乗らない限り、H-5に地下の駅があるとは考えんなかったじゃろう?
 ワシらは最初の駅のホームでこの事実を知った。この列車に乗ったのはワシらが最初ではないか?」

落ち着いて答える大人の対応に、音石の足がすくむ。
せっかく手に入った電車を手放すわけにはいかなかった。
しかし一人になる恐怖もあった。ジョセフ・ジョースターの探知をかいくぐった謎の攻撃。
直接攻撃を受けたジョセフが電車を降りようと考えるのは至極あたりまえのこと。
そして東方仗助と偽っている身ならば、同伴して降りるのが筋。

「H-3のサンタ・ルチア駅から先にも地下の駅はある。どうかな。地下の駅は……地上に繋がっているとは考えられんか」
「わざわざ調査してどうする?駅に誰かが待ち伏せしている危険性が大きいだろう」
「ポンペイ遺跡に地下鉄の入り口を探そうとする奴はいまいて。仮に見つけたとしても普通ならば!
 疑うじゃろう? スタンド攻撃の可能性を。有り得ない場所に有り得ない物があるゆえに。
 それに危険に晒されるのは駅で待つ側も一緒じゃろう。真っ暗闇の線路以外に逃げ場がない。
 自分に相当の自信をタップリ持つ奴か、身のほど知らずの阿呆でなければ近づかん。
 『食屍鬼街(オウガーストリート)駅』か『ポンペイ遺跡駅』の入り口を見つけても、用心深いやつは入ってこないじゃろう」
「……それを地下鉄の入り口と考えていたならな」
「ディアボロ君、ビビッてもしょうがない。電車にこのまま乗っていても、トラブルは起こるぞ。ワシの傷のように」

流れるように作戦会議を立てる2人に、音石の頭がパーンとはじけそうになる。
ジョセフのスタンドは想像していたほど脅威ではなかったが、探知能力はやはり魅力的だ(一抹の不安はあるが)。
生存を最優先するのであれば、彼らと別行動をとるのも気が乗らなかった。

『――まもなく〜ポンペイ遺跡〜ポンペイ遺跡〜。お降りの際は足元に注意してください……』

時計の針がいよいよ朝の6時を指そうとした時、列車が駅に到着する。
列車内から見える駅のホームはやや明るいが、電気が充分に通っているのかどうか判断しづらい。

「そういえばもうすぐ第一回目の放送じゃな。放送か?流れるのか? こんな地下にも、という意味じゃが」

ジョセフの何気ない一言は、列車の騒音に溶け込んでいた。
いや――……溶け込んでいなかったとしても、耳に入っていただろうか。
自分の事で頭が一杯になっていた音石明と、『彼』を見ていたディアボロには。

836ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/05(日) 18:22:52
* * *

『スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』

ジョセフ・ジョースター達が乗っている電車はATC、いわゆる自動運転になっている。
数分間の停車、出発は完璧にコントロールされており、停車位置のブレも制御されている。
遮蔽物に衝突しても、本体が破壊されない限り進み続けるだろう。

『ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』

そんな列車の側面に刃を走らせる。レコードの上を滑らかに走る蓄音機の針のように。
例えば、街で沢山の女を囲う、ジゴロが乗っているピカピカのスポーツカーの扉に、十円玉を走らせるように。
着かない。傷が。一本のなだらかな直線が走ることはない。普通は。丈夫だから。

『ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』

傷がつくとしたら、刃を変えてみてはどうだろうか。持ち手を強靭にしてみてはどうか。
チェーンソーのように一秒間で何千回と回転し、その速さゆえに光輝いてみえるような刃。
ロードローラーくらいなら片手で軽く持ち上げてしまう化け物。
この組み合わせならおそらく可能だろう。事実、可能だったのだ。

『〜〜……ッッパァァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』

柱の男・カーズは、己の腕に生える巨大な刃で電車を横一文字にかっサバいたのだ。
輝彩滑刀(きさいかっとう)――光り輝くカーズの刀。
駅のホームの端に立っていたカーズは、ひょこっと刃を出して待っていた。
列車が勝手に彼の刃に構わず猛進するので、カーズはそこから一歩も動いていない。

「線路を歩いていたらこの休憩所にたどり着いた。そこへ大型トロッコが来ただけのこと。
 強度はいただけないが、形は崩れずこのまま状態を保っている。耐久力はあるようだな」

トロッコよりは遥かに進化した地下鉄に、カーズの好奇心はくすぐられたようだ。
車両の壁に耳を当てて、ゆっくり物音を拾う。彼の耳は家の中にいる人の数もわかるほど精妙なのだ。

「『隠者の紫』AND 『波紋』ッ!! 」

ゆえにカーズは列車から素早く離れようとした。聞こえる波長は、彼が最も憎むものだったからだ。
だがカーズの左腕は、車内から伸びる紫色のイバラに絡め取られ、そのまま車内に引っ張られてしまった。
そしてイバラから流される電流のような痺れ。忘れもしない太陽のエネルギー。

「MU……MUOOOOOOOOO!! なんのこれしきィ! これしきィ!! 」

迷わず左腕を右手で切り落とし、カーズは受身をとって横転する。
ちぎれた左腕はブクブクと沸騰しながら骨を残して蒸発してしまった。

「助かったよディアボロ君。君がいなかったら、ワシらはうめき声を立てる間もなく死んでおったわ。
 壁と一緒に首をスッパリ切られておった。反対の座席にいた大人2人をどうやって助けたのかは、あえて聞くまい」
「俺はお前達を助けた。お前は俺にカリが1つできた。それだけだ。……そしてもう1つ。お前はカリを作る」
「ワシは今のままでも充分感謝しておるがッ! ……そこで腰を抜かしておるワシのドラ息子を頼む」

カーズは3人組の男たちの顔を知らなかった。
しかし彼らは――少なくとも1人はこちらに喧嘩を吹っかけてきた。
電車の恨み……ではない。カーズの左腕を溶かせる術はこの世でただ1つ。忌まわしきライバルの技術。
カーズ一派と古代から戦い続ける戦闘民族の必殺技、波紋。筋骨隆々な老人は波紋使いである。それは敵である。

「ジョセフ、コイツはお前の言う『自分に相当の自信タップリな奴』なのか? 」
「ああ。そして『用心深い』……最悪のケースじゃ」

837ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/05(日) 18:23:30
* * *

電車が停車して何分たったのか、ディアボロは時間を計るのを忘れていたことに気がついた。

(襲ってくるのならば容赦はしない……と気張り過ぎたな。このディアボロとしたことが)

電車の先頭付近の床に気絶している音石明を寝せ、ディアボロは運転席を覗く。
電車から駅へと逃げようとはしなかった。
大の男を担いで駅の構内を走り回るのは馬鹿馬鹿しいと思っていた。
どこにあるかわからない出口を探すよりは、ルートのわかっている地下鉄にいたほうがよいと考えていた。

(俺はあくまで列車内にいる謎を優先する。ジョセフに怪我を負わせた謎の解明)

しかしディアボロ、本音は恐怖していた。
恐怖。いつどこから死がやってくるのかわからない恐怖。
その恐怖が襲ってくる可能性を、彼は列車内という最小限の範囲に留めたのだ。
どうせ襲ってくるのならば、全貌のわからぬ食屍鬼街(オウガーストリート)駅よりは、狭い車両。
野原にいるネズミよりも袋のネズミのほうが、猫を噛み易いと理解していた。

(あのネアポリス駅とこの駅の停車時間は……同じ15分前後なのか? この駅の時刻表が知りたいな。
 まあ規則正しく運行する電車など世界でもJAPANぐらいだが、いきなり動き出されるのも面倒だ)

チラリと駅の構内で戦っているジョセフを見やる。
抜き差しならない状況――まるで西部のガンマンの決闘のように。
少し小競り合いをしたかと思うと、しっかりと距離を取って互いを探り合っている。
ディアボロにわかるのは、彼らがお互いの手の内をわかっているということ。
少なくともジョセフはあの男を知っており、あの男も迷うことなく最初の標的をジョセフにした。

(……『聞』こえなかったのか。 ジョセフ・ジョースターは、放送を。それとも『聴』こうとしなかったのか)

ディアボロは支給されていた名簿にペンを走らせる。
キュ、と擦れた音を立てながらインクは名前を塗りつぶす。
現在時刻、朝の6時過ぎ。第一回放送は既に終了していた。
ディアボロは、黙々と戦うジョセフ・ジョースターに少し同情した。

「東方仗助、なぜ貴様が生きている。始末されたはずだ……この世界の誰かに」

音石明は、首根っこをキング・クリムゾンに掴まれている。
血のめぐりが悪くなったせいで、顔面は蒼白になっていた。

「我がキング・クリムゾンに抵抗は無駄だ。逆らえばあの包帯男にお前を差し出す」
「ジョセフを、攻撃したのは、俺じゃ、な、い」
「それはさっき聞いた。俺が聞きたいのは――」

838ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/05(日) 18:24:13
*  *  *

「波紋使いッ! 俺のことを知っているなッ! 」

ジョセフ・ジョースターは妻を愛していた。
朝は傘でたたき起こされ、昼はキスの代わりにビンタを受け、夜はTボーンステーキを焦がされる。
お抱えのSP、運転手、娘に笑われながら過ごす平凡な日常を彼は30年以上続けた。
年を取らない波紋の呼吸も、妻のために止めた。妻は波紋を使えなかったから。
娘がトラブルに巻き込まれたら、海外だろうと飛んでいった。大事な一人娘だったから。

「そして時間稼ぎをしているな……フフ、図星だろう。あの乗り物が走り出すまでの時間をな。
 仲間を逃がすために、このカーズの足止め役を貴様は引き受けたのだ」
 
ジョセフ・ジョースターは家族を愛していた。
厳しい祖母、毅然とした母親に尊敬の念を払うことを忘れていなかった。
彼女たちの血を受け継いでいることをジョセフは本気で誇りに思っていたし、喜んでいた。
だから若い頃にやっていた悪事、いわゆる黒歴史は今でもするべきじゃなかったと後悔していた。
彼女たちのような気高さをあのときの自分は履き違えていたからだ。

「……と、私が思っているとでも、思っているのか? ハハハ老いぼれめ。このカーズも舐められたものだ」

ジョセフ・ジョースターは仲間を愛していた。
年も国も境遇もまるで違う相手と、信頼という絆で共闘した。
付き合う時間の長短を越えて繋がった仲間たちのことを考えると、奮えが止まらない。

「貴様の後ろにある乗り物……金属で出来ている。その箱のようなフォルムに波紋を流したら……。
 油溜まりに広がる火のように、一瞬で全体に行き渡るだろう。そんな物にッ!
 このカーズがうっかり触れてしまったらッ! ど・う・な・る・か・なあ〜〜!? 」

大きく声を張り上げて列車に接近するカーズ。

「老いぼれジジイ……貴様は待っているのだよ。このカーズがムキになって、乗り物に乗ろうとするのをな。
 あの乗り物に閉じ込められてしまったら、私は波紋が流れる袋に入れられたネズミだ」

カーズの懐から支給品のエニグマの紙が宙を舞って開く。

「そこで1つ思いついたぞッ! 私はこの容器をこの場で破壊してみようッ!
 老いぼれ、お前はどこまで持ちこたえる事が出来るかなッ!? 」

カーズの両手にずらりと並んだ小瓶がドクロのマークを見せ付ける。
遠投選手のように身を捻らせて、放り投げられたそれ――『ディ・ス・コの劇薬×5』がジョセフの足下で爆ぜる。

「……隠者の紫ッ!」

強烈な突沸と異臭を放つ気体の化学反応。
ジョセフはその煽りを受けまいと、隠者の紫をロープ代わりにし、列車の上に登る。
カーズは知っていた。自分は波紋に弱いが、人間にも弱いものはあると。
柱の男にはなんでもないような薬品が、人間には中毒を起こすことがあるということを。
換気の悪い地下ならばひとたまりもない。

「フフフ……乗ったな。さぁ尻尾を巻いて逃げるがいい。私はあ・え・て・貴様らを逃がすのだ。
 今殺す必要はないッ! 夜になれば堂々と殺せるのだからなああああああああああああッ!!」

しかしこのとき、カーズに電流が流れる。

839ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/05(日) 18:24:57
しかしこのとき、カーズに電流が流れる。

「HAHAHAHAHAHA……はっ!? 」

そして――身体を大きく痙攣させた。

「UKAKAAKAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

数ある送電線の一本が切断され、カーズがぶちまけた薬品の溜まりに飛び込んで電流を流していた。
カーズは地下鉄の仕組みを知らなかった。
地下鉄は電力を地下道の天井にある送電線から受け取っていることを。地下鉄の車輪はゴムタイヤであることを。
ジョセフは地下鉄を知っていた。自分の経験と音石明を加味した知識を利用したのだ。

(そうじゃ。追いつかれようが追いつかれまいが、ワシらはここから脱出すればいいだけじゃよ。
 どうせこの列車はいずれ地上に出る。カーズ、貴様は地上に出れん……最初からこちらが優位だったのじゃ)

ひょこっと列車の上から顔を出したジョセフが悠々とホームに飛び移る。
そして列車の中から車両全体に波紋を流し、外にいるカーズの悪あがきを予防する。
盛大な漏電とともにカーズの叫び声が構内に響き渡る。直接死には至らないとしても、足止めにはなっただろう。
事実カーズはホームの上で転げ回り、ジョセフの座席から見える場所で地面を舐めた。

「……だが薬品は少しキツい。目と鼻が痺れてたまらんわい。洗うための水が欲しいのお」
「お、の、れぇ……何故、私が負傷せねばならんのだァ……この程度の電気で……」

ジョセフの勝利を祝福するかのように、発車のベルが鳴り響く。

「お前は“貴様のような老いぼれに、このカーズが ”という」
「貴様のような老いぼれにこのカーズが……ハッ!」
「そしてこのやり取りから、“まさか貴様はジョセフ・ジョースターなのかッ!?”と思いつく」
「まさか貴様はジョセフ・ジョースターなのかッ!?……GUOOOOOOOOOOOOOOOO!」


ジョセフたちを乗せた車両は、ポンペイ遺跡の駅を後にした。
取り残された柱の男は、信じられない邂逅に、衝撃を受けていた。


【H-5  地下鉄・ポンペイ遺跡駅構内/1日目 日中】
【カーズ】
[時間軸]:リサリサとJOJOにワムウと自分との一騎打ちを望まれた直後
[能力]:柱の男、『輝彩滑刀の流法』
[状態]:全身に裂傷、左ヒジから左手にかけて損失、全身にダメージ(中)、疲労と頭痛と吐き気(中)、痺れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、輸血パック(残量0ml)、首輪、 不明支給品0〜2(未確認)、
[思考・状況]基本行動方針:荒木を殺して力を奪う、スーパーエイジャを手に入れる
1.ジョセフ・ジョースターの姿に疑問。いずれ復讐をする。
2.首輪解析のためにたくさんのサンプルを集める。特に首の配線があるであろう、吸血鬼が一匹欲しい。
3.地下通路や首輪について考察し、荒木の目的を突き止める。
4.エイジャの赤石を手に入れる。
5.月が真上に上がった時(真夜中・第四回放送時)にジョースター邸に赴く
6.荒木について情報を集める。
7.エシディシ、サンタナと合流する。
[備考]
※血を吸った際の回復力に制限がかけられています。
※ワムウと情報交換しました。
※カーズとワムウがマンホールに入った地点はH-7です。
※心臓にもなにか埋め込まれてるのではないかと考えています。
※地下鉄はある程度周りの下水道や空気供給官なとと繋がっているようです。(イギーVSペットショップのような感じ)

『ディ・ス・コの劇薬×5』
SBRのディ・ス・コがジャイロ戦で使った薬品。危険物。
全て消費されました。J・ガイルのラス1の支給品でした。

840ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/05(日) 18:25:28
* * *

ガタンゴトンと列車は進む。大きくうねった地下線路。
列車はもうすぐサンタ・ルチアに到着する。

「ムッ!?」
「俺だ。ディアボロだ」

カーズを振り払ったジョセフをディアボロを尋ねたのは、大分たってからだった。
ジョセフは列車内で受けた謎の攻撃を警戒し、隠者の紫で周囲を警戒していた。
しかし目と鼻が薬品の炎症で正常に働かないので、彼はディアボロにも警戒してしまったのだ。

「すまんのうディアボロ君。目と鼻が利かないものでな。もうすぐ地上じゃ。
 次のサンタ・ルチア駅についたら、顔を洗う時間をくれんかのう」
「……放送は、聞いたのか」

ディアボロは躊躇なく、ジョセフが放送をちゃんと聞いているかどうか事実確認をする。
ジョセフは返事をしなかった。つまり、放送を彼はしっかりと聞いていたのだ。

「ハッハッハ! すまんな。ワシとしたことが、してやられたわい!! 」
「まんまとな」
「ちょいとばかし、あの東方仗助にお灸を据えてやらんとな! あの若者は何者なんじゃ?」
「お前に話すことは何もない」

ディアボロの予想だにしない返答に、ジョセフの顔が曇る。

「言っただろう? お前は借りを作ったと。これがその“返し”だ。あの男は最低のゲスだが使い道はある。
 ……お前はあの男を追い払ったことで随分とご満悦のようだがな、ボケているぞ。
 送電線をショートさせて地下鉄が走るとでも思っているのか? 安全装置が働くだろ常識的に考えて。
 なんとか復旧したから良かったものの、正気じゃないぞ。それとも列車を捨てても勝算があったのか? 」

ディアボロは珍しく饒舌になっていたが、彼は彼なりに行動していた。
ジョセフに『最悪のケース』と言わしめる敵が現れたのだから、逃げるに越したことはないのだ。
だから彼は音石明がおそらく日本人(東方仗助と名乗るくらいなのだから)と推測し、地下鉄の操作を聞いたのだ。
首根っこを掴まれた音石は、恐怖に縛られながらも、列車のATCを解除しようと必死だった。
そんな時起きた、一時的な停電。ジョセフがカーズを電線に衝突させてショートさせたからだ。

「勝算があったのなら、今すぐ列車を降りてしまえ……お前がやっているのはそういうことだ」

音石はパニックになりレッド・ホット・チリ・ペッパーを発動。
強制的に列車の電気回路やコントロールシステムに無理やり電気を流し、列車を発車させたのだ。
切断された電線はチリ・ペッパーが再び結びなおしたことで、機能を正常に戻していた。
もちろんディアボロはこの事実をジョセフに話すつもりはない。
ディアボロは危険を嫌う。
いくら頼りになるとしても無茶をするジョセフより、恐怖に縛られれば忠実に動く音石のほうがマシであった。

「列車は……無事なのかのう? 」
「強がりはやめろと言ってるんだ。年寄りの冷や水だぞ。身内の生死がお前を弱くしている」

いつものワシじゃない――ジョセフの心は、やはり疲弊していた。
スージー、リサリサ、ストレイツォ、アヴドゥル、東方仗助。
さぁ泣けと言われて泣くやつはいない。放送で伝えられる無機質な知らせに、実感は少ない。
ひょっとしたら嘘ではないか、と思いたくなるのが普通だ。直接見ていないのだから。

841ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/05(日) 18:26:02
「ワシは強いままじゃよ」

ジョセフは力なく項垂れた。

「ただ……後悔はやってくる。この世界で敵と戦ったり、誰かと会話したり」

そこには歴戦の戦士の姿はなく、ただの老いぼれ爺だけが座り込んでいた。

「荒木を倒して元の世界に帰った後も同じじゃ。妻のコップを洗ったり、古い写真を見たり。
 日記を見直したり……そんな時にふと、ワシは泣いてると思う。ワシは死ぬまでそれを続けるんじゃ」

ディアボロには、ジョセフが急に何歳も年を取ったようにみえた。
あっという間に色々な物を失った人間。ギャングの世界では飽きるほど見てきた姿。
ディアボロには身内を思う感情が理解できなかった。
恋はすれど、最終的に大事なのは自分自身だ。彼の失望感は人というよりは“栄光”や“利益”の損失からくる。

「娘がいると言っていたな。お前はどうしていた? この世界に娘も来ていたら……もし死んでいたら」

だからディアボロは実の娘、トリッシュ・ウナがこの世界で死んだことに、何の憂いもなかった。
直接この手で始末したかったという悔いはあるものの、それ以上の思いはなかった。
同じ娘を持つ身として、ディアボロはジョセフに質問していた。彼を試すために。

(親しい者の死に直面して、今後どうするのか。それによっては……ジョセフ、お前を――)

ジョセフが返事をしないまま、列車はサンタ・ルチア駅に向かう。



【H-4 電車内/1日目 朝〜日中】
【チキン三羽〜子持ちのおっさんコンビと音楽家〜】
【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:健康。だけど目が死んでる。強い恐怖
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく生き残り平穏な生活を送る。
1.ジョルノには絶対殺されたくない。普通に死ねるならそれでもいいや。苦しまないように殺して欲しい。
2.自分の顔と過去の二つを知っている人物は始末する。ボロは絶対に出さない。
3.とりあえずはジョセフに協力。でもジョセフのへたれ具合によって対応を変える。捨て駒も視野に。
4.チョコラータ、電車内の謎の攻撃、謎の男(カーズ)怖いよ、キモイよ……
5.ジョルノや暗殺チーム、チョコラータとジョセフ達を上手く敵対させたい。ぼろが出そうだから怖いけど……

[備考]
※音石明の本名とスタンドを知りましたが、ジョセフに話すつもりはありません。それを取引に協力させたようです。


【ジョセフ・ジョースター】
[時間軸]:DIO討伐後、日本に帰る飛行機の中。
[状態]:健康。胸に浅い傷(止血済) 目と鼻につらい炎症(失明はしない程度)。深い悲しみ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:必ず生きて脱出する。打倒アラキ!
0.深い悲しみ。立ち直れそうで立ち直れない。
1.承太郎、花京院辺りと合流して自分の推測について話し合いたい。
2.ジョージ、ジョナサン、ツェペリ、エリナ、スピードワゴン、徐倫は見つけ次第保護する。
3.殺し合いに乗っていない参加者達も護る。或いは協力。機械に詳しい人間がいたら首輪の内部構造を依頼。
4.ディオや柱の男達は見逃せない。偽者の東方仗助を警戒?(攻撃したのは彼?ディアボロ君に任せるか)。
5.ディアボロにちょっと戸惑い。自殺をしそうで怖い。

[備考]
※参加者達は時代を超えて集められたのでは?と推測しています(ディアボロにはまだ話していません)
※首輪を『隠者の紫』で調べましたが機械には疎く詳しい事がわかりません。分かった事といえば隙間がまったく無い事くらい。
※1で挙げた面子はジョセフが聡明と判断した面子なだけで別にポルナレフが信用できないというわけではありません。
※波紋の呼吸を絶えず行っています。その影響である程度の運動なら息ひとつ乱れません。
 ディ・ス・コの薬品の負傷はいずれ治るようです。いつごろかはわかりません。

842ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/05(日) 18:26:35
* * *


ディアボロたちから少し離れて。運転席に座る男が一人。
この男、幸運なのか不運なのか。


「た、たのむよ……そろそろ首根っこを外してくれ。馬鹿な真似しないからさ……。
 これじゃ……最初と全く変わらないじゃねーか……うううう……」



【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(充電中。徐々に回復して色は緑色に。そろそろ黄色になる?)
[状態]:健康  キング・クリムゾンに首をつかまれている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品 ×1
[思考・状況]基本行動方針:優勝狙い
1.ひぎぃっ! 弱みを握られちゃった……悔しい
2. とりあえず仲間(ディアボロ)ができたのは良かった。でも状況変わってない……。
3.充電ができてほっとしているが、電車から降りたらどうするかは未定
4.サンタナ怖いよサンタナ
5.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー!
[備考]
※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。
しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。 スタンド

が電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです)
※ミセス・ロビンスンをスタンド使いだと思っています

※電車は一両編成で、運転手はおらずに自動で走っています。
 一度、音石の無茶な操作で発車しましたが、現在、運行状況に支障はないようです。
 しかしカーズとの騒動のせいで、サンタ・ルチア駅に時刻どおり着くかどうかはわかりません。
※電車はカーズの輝彩滑刀によりダメージを受けました。
電車の右側の壁が横の真一文字に傷がついています。傷は電車を貫通しています。

※正面からみると↓な感じです。(傷の開き具合は誇張気味です)。
┌─┐
│  
└─┘
※横からみると↓な感じです。(傷の開き具合は誇張気味です)。
┌──┐

└──┘


『地下鉄の駅』

地下に駅があるようです。駅は地上と繋がっているのかもしれません。
他にも駅があるのかどうかはわかりません。

※確定しているのルート(ジョセフ達は早朝にネアポリスに乗って朝〜日中にサンタ・ルチアに着きます)
『E-7・ネアポリス駅』→『G-6・食屍鬼街(オウガーストリート)駅』→『H-5・ポンペイ遺跡駅』→『H-3・サンタ・ルチア駅』

843ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/07(火) 21:17:29
とまってるようなんで代理打ちます

844ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/07(火) 23:34:59
代理投下、感謝いたします。

845 ◆yxYaCUyrzc:2009/04/09(木) 22:21:54
一時投下開始します

846蛇足 ◆yxYaCUyrzc:2009/04/09(木) 22:23:21
「トリッシュが……」
「くッそ……」
放送を聞き終え頭を抱える二人の男。ブローノ・ブチャラティとグイード・ミスタである。

「任務とか言ってる状況じゃねぇけどよ、そういうの抜きに俺は彼女を護衛していたかったぜ。トリッシュはただの女の子だったんだ……」
任務。それはトリッシュを護衛すること。だが彼女はこのゲームの中で命を落とした。
つまりブチャラティのチームは任務に失敗したという事になる。その場に居なかったなど理由にはならない。
―――もっとも、彼らはその後の彼女と自分たちの運命を知らないのだが。
「あぁ」
ミスタの言葉に短く答えるブチャラティは名簿と地図に丹念にメモを綴る。
そして……一瞬、ほんの一瞬だけ躊躇いながらもトリッシュ・ウナの名を消す。
それを見たミスタは思いきりブチャラティの胸倉を掴み叫び出した。
「おいブチャラティ!何トリッシュの名前消してんだッ!」
「トリッシュが死んだからだ」
あまりにも簡単で、そしてあまりにも重い言葉にミスタは襟首を掴んでいる拳をぐいぐいと前後に揺さぶる。
「てめぇ!トリッシュが死んだってのを信じるってのかッ!彼女の死に何も感じてねぇのかッ!?」
その言葉を聞いたブチャラティはミスタの手を振りほどくと、そのまま思いきり彼の頬を殴る。まるで数時間前のお返しだと言わんばかりに。
思いきり吹っ飛ばされたミスタは何かを言いかけながらブチャラティを睨みつけ……そして力なく項垂れる。
目の前の男はギリギリと歯を食いしばり、その唇からは血を滴らせていた。

「俺がトリッシュの死を信じただと……何も感じていないだと……

 言っただろう。後悔するだろうと。自分自身を責めるだろうと……

 だが……これはお前が言ったんじゃあないか。彼女の意思はなんだと。
 きっと……トリッシュだってスージーのように……

 俺たちが受け継いだものを先に進めることを願っているッ!」

847蛇足 ◆yxYaCUyrzc:2009/04/09(木) 22:24:46
ブチャラティの頬には涙は流れない。
だがその顔からは涙の代わりに溢れんばかりの後悔、自責、そして決意が滲み出ている。
「そうだな……悪かった」
「気にする事はない。俺の方こそ思いきり殴ってしまったな」
「いや、いいんだ。それより……そこまでの覚悟があるって事は今後の計画も立ててあるって事かい?」
ミスタの質問にブチャラティが答える。
「あぁ。では聞いてくれ。俺は先に“ここに行こう”と言ったが……」
と……手をかざしながら。
ミスタはブチャラティの視線と手の動きを目で追い、コクリと頷く。
「先に“ここ”に向かおうと思う」
と……その先を指し示す。
その先を見つめたミスタはハッとしたようにブチャラティに視線を送る。
視線を送られたブチャラティも目で頷き返す。
「ここは……禁止エリアじゃあねえか!?」

「そう禁止エリアだ。幸か不幸か俺たちのすぐ傍に。
 当初の目的地からは少々方向がズレてしまうが見に行って損はないだろう。勿論侵入する訳にはいかないが。
 その後当初の目的としていたところに向かい、その後は地図の北に沿って東の海に出よう。
 かなりの距離だが問題はないな?」
「オーケーだぜ、ブチャラティ。銃がないのは少々不安だけどな。それも問題なしさ。
 あの荒木のヤローの事だ。“禁止エリアにボーナスアイテムを置いといたよー”とか言いかねないしな」
荒木の声真似をして笑うミスタ。それを見たブチャラティも少し笑う。
「よし、決定だ」


* * * * *

848蛇足 ◆yxYaCUyrzc:2009/04/09(木) 22:25:26
物事を考えるという事はとても素晴らしい事である。
そして“覚える”と言う事はなお素晴らしい。考えるために必要なスキルであるからだ。

だが……そう言った素晴らしさを体験出来ないものも少なからず存在する。

昆虫である。

彼らは遺伝子だとか本能だとか、そう言ったものはあれど、考える脳を持たないと言われている。

しかし。そこにも例外はあるのだ。現実離れしすぎて俄かには信じられない例外が。

スタンド。

この“ジョジョの奇妙な冒険”に欠かすことの出来ぬ未知の才能。超能力。
その力が不可能を可能にする。

虫は飛ぶ。

翼竜へとその姿を変えて。

彼らの会話をしっかりと記憶して。

主のもとへ―――


* * * * *

849蛇足 ◆yxYaCUyrzc:2009/04/09(木) 22:28:04
「……どう思った?」
ブチャラティが問う。
「どうって……ありゃナントカザウルスだろ」
ミスタが答える。
「そうじゃあない」
「じゃあナントカノドンだろ」
突っ込みに対しさらにミスタが答える。
「そうじゃあない」
「そう言えばニホンのコミックで、大昔に岩塩漬けになった男が現代に蘇って格闘するってのがあったな」
その突っ込みに対しさらにミスタが……答える。
「そうじゃあない」
歩を進める二人の何気なくも重要な会話は続く。
彼らは着実に禁止エリアへ向かっていた。

「……あぁ、分かってるよ。明らかなスタンド能力だ。恐竜を操るなんて厄介だよな」
すっかり呆れた表情のブチャラティに対しミスタがふう、と息をついて正解を答える。
「ああ。まともに戦っては到底勝ち目はないだろうな」
「でもこっちが気付いてる事までは分からなかったろうな。会話に突然ハンドシグナルを入れてきた時はどうしたかと思ったよ」
「だがよく分かってくれた。会話と矛盾のないように送るのには手こずったからな」
そう。彼らは虫の……翼竜の存在に気づいていた。
参加者以外に生物が存在しない世界での小さな疑問。ギャングと言う特殊な環境で培った洞察力。それがこの二人に翼竜の存在を気付かせたのだ。
そして……行き先を指し示す動作の中にハンドシグナルを織り交ぜながら会話を行ったのである。

「で、そのスタンド使いを騙すつもりかい?それともあの会話は本当かい?」
ミスタの質問にブチャラティが答える。
「後者だな。あの会話は逆に“宣言した”とでも言おうか。
 向こうがこちらを警戒して逃げるようならそれで良し。
 向かってくるなら“強力なスタンドなのに本体が愚者”だろう。勝機はいくらでもある。
 現に俺たちはC−1に向かっているんだからな。今更進路を変えるだけ時間の無駄だ」
「だな」
「まぁ何にしてもこちらが気付いてる事を向こうは把握していないのだ。それだけで十分だろう」
ブチャラティが会話をしめる。

が……数秒後にミスタがその話題を掘り返した。


「……しっかし。そういう時ってハンドシグナルはホント便利だよな。
 俺なんか昔はこれしか知らなかったってのによ」

「…………パンツーまる見え」

「YEAAAH!」

850蛇足 ◆yxYaCUyrzc:2009/04/09(木) 22:28:52
【B-2/1日目 早朝】
【チーム・ブチャラティ】

【ブローノ・ブチャラティ】
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]:肩に切傷(血は止まっている)、左頬の腫れは引いたがアザあり、トリッシュの死に後悔と自責
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、荒縄、シャーロットちゃん、スージーの指輪、スージーの首輪
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
1.禁止エリアC−1に向かう。その道中にミスタに仮説を聞いてもらおうと思っている。
2.C−1確認後北・西の地図の端を見に行く。その後は北端に沿って東を見に行く。
3.絶対にジョセフと会い、指輪を渡す。彼にはどう詫びればいいのか…
4.チームの仲間に合流する。極力多くの人物と接触して、情報を集めたい。
5.“ジョースター”“ツェペリ”“空条”の一族に出会ったら荒木について聞く。特にジョセフ・ジョースター、エリザベス・ジョースター、シーザー・アントニオ・ツェペリには信頼を置いている。
[備考]
※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。
※ブチャラティの投げた手榴弾の音は、周囲一マスに響きわたりました。
※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。

①荒木飛呂彦について
ナランチャのエアロスミスの射程距離内いる可能性あり

②首輪について
繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。

③参加者について
知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから



【グイード・ミスタ】
[時間軸]:54巻、トラックの運転手を殴った直後(ベイビィフェイス戦直前)
[状態]:健康、左頬が腫れている
[装備]:ナランチャのナイフ、手榴弾4個
[道具]:不明支給品残り0〜1(あるとしたら武器ではないようです)
[思考・状況]
基本行動方針:ブチャラティと共に行動する。ブチャラティの命令なら何だってきく。
1.YEAAAH!
2.エリナの誤解を解きたい
3.アレッシーうざい
4.あれこれ考えずシンプルに行動するつもり。ゲームには乗らない
[備考]
二人がした情報交換について
※ブチャラティのこれまでの経緯(スージーとの出会い〜ワンチェン撃破まで)
※ミスタのこれまでの経緯(アレッシー、エリナとの出会い〜ブチャラティと合流まで)


【翼竜について】
フェルディナンド博士の生み出した恐竜のうち一匹が
「ブチャラティとミスタと言う男がC−1に向かい、その後北西の端、北端沿いに東へ向かう」と言う事を覚えました。
ですが「二人が自分(恐竜)の存在に気付いている」と言う事は知りません。
これから博士のもとに帰還します。その際他の参加者の情報を得てくるかはわかりません。

851 ◆yxYaCUyrzc:2009/04/09(木) 22:29:50
以上で投下終了です。
蛇足=パンツーまる見え、ですねw
意見をいただきたい点としては以下の通りです。
・ミスタの時間軸をハッキリさせた事について
・翼竜が博士−ブチャ間の他の参加者を無視している(タルカスとか)
・二人の行動方針の若干の変更
・ハンドシグナルの描写が分かりにくくないか
・キャラの口調は問題ないか
・その他状態表などの矛盾、誤字脱字が無いか

ジョジョでちょくちょく出てくるハンドシグナルをやってみたかったので書いてみました。
ご意見、感想をお待ちしています。

852ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/09(木) 22:58:21
投下乙です
ミスタの時間軸は、これまでフーゴ脱退の話題などが出ていなかったので
適当なのではないかと思います
キャラの口調についても、特に違和感は感じませんでした
翼竜に関しては…リンゴォ・タルカス組次第ですが、特に問題はないのではないかと…
私が気になったのは二人(というかブチャラティ)の行動方針です
確かに禁止エリア周辺は今後の探索が不可能になるため最優先すべきですが、
すぐ近くにあるジョースター邸ガン無視というのは違和感が残ります
とくにブチャラティはジョースターの姓を気にしているし、
ジョセフ・ジョースターと一刻も早く合流したいはずなので、
ジョースター邸組に絡ませない手はないと思うのですが…

853ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/09(木) 23:39:31
投下乙!
とりあえずアバッキオ死亡前ならいつでも大丈夫だと思ってたんで時間軸には問題ないかと
翼竜は……偶然他の参加者たちがいた位置とルートが違ったとかでOKだと思われ

ジョースター邸に関してですが『猶予があるとはいえ禁止エリアには時間制限があるから』などの説明文を前に噛ませれば問題ないと思われます

854ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/10(金) 00:02:45
投下乙です。
二人とも・・・翼竜をジョルノが生み出した生物とは思わないのか・・・
翼竜、時間軸、方針に関してはほぼ同じです。ただ、上のジョルノについてと、博士の射程が長すぎる(少なく見ても地図で横三マス)ような気もしますが。
ブチャラティの思考で、エリザベス・ジョースターは死亡したため除外してもよいかと。
あと、なんでもありなスレで出ていた、ワンチェンの支給品について一言ほしかったりします。(不明なら「所在は不明です」でもいいので。)

855 ◆yxYaCUyrzc:2009/04/10(金) 06:50:12
皆さんご意見ありがとうございます。

ミスタの時間軸、口調は問題なし、と言う事でOKとします。
翼竜は、ジョルノの生物ではないだろうという推測の会話を追加する事と、
射程に関してはSPW研究所(ttp://spw.at.infoseek.co.jp/spwtop.htm)で能力射程数キロ以上とあったもんで…(本編の感じからも山一つは楽に越えてそうだし)
その辺をうまく文章化できればと思っております。
ジョースター邸、ワンチェンの支給品に関しては、向かわせると言う事で考えていこうと思います。

指摘ありがとうございます。引き続きご意見をお待ちしております。

856ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/11(土) 12:04:29
修正、お疲れ様です。
博士の射程距離はこれからも話し合う機会が出てくるかもしれませんね。

本投下をお待ちしております!

857キングクリムゾン:キングクリムゾン
キングクリムゾン

858キングクリムゾン:キングクリムゾン
キングクリムゾン

859人間辞めても ◆bAvEh6dTC.:2009/04/17(金) 10:46:54
【ヴァニラ・アイス、川尻早人】投下します。

午前6時、サンタルチア駅。

歴史を蓄積した古めかしい外見だが、駅の内部は意外に綺麗である。
真新しいというよりは、誰一人としてこの駅を利用した事がないような不自然な綺麗さだ。
今は四方に取り付けられたスピーカーから、ザリザリという音をまじえながら一回目の放送をながしている
駅のホームには放送に聞き入る二人の人間がいた、もっともヴァニラ・アイスは現在進行で人間をやめている真っ最中だが。
もう一人の名前は川尻早人。別の意味で人間をやめている最中である。
死に向かって、という意味でだ。

すでに早人の足元にはかなりの大きさの血だまりができていた。
傷口をタオルを巻かれただけなのだから当然だろう。
ヴァニラ・アイスは冷ややかな目で早人を眺めた
人質になると考え、ブラックモアの提案した話を飲んだがこの状態では人質としてもつかどうかも怪しい。
視線に気づいたのか早人がこちらに話しかけてきた。

「僕を・・・・殺すの・・・・・・?」

もはや普通にしゃべることすらも苦しいのだろう、早人の目は虚ろだった。
呼吸を一つするごとに、小さな体から命が吐き出されてゆくようだ。
そんな早人の様子を眺めながらヴァニラ・アイスは淡々と言葉を紡ぐ。

「何度も言わせるなよ小僧、あやつらと取り決めたように24時になるまでお前を殺すことはしない」

この状態ならほうっておいても死にそうな感じだが。
そうなれば願ったり叶ったりだ、足手まといは一つでも消えた方がいい。
ヴァニラ・アイスがそののままじっとを見ていると、早人はよろよろと体を起こしはじめた。
何か言いたい事があるらしい。

「何だ?命乞いか?」

命乞いした所でいずれ殺す事に変わりは無いが。薄く笑ってヴァニラ・アイスは早人をねめつけた。

「違う・・・そうじゃない・・・」

ゲホッ!と咳きこんで早人は血の塊を吐きだした。
蹴り飛ばされた時に折れた骨が肺を傷つけていたのだろう、吐き出された血は黒かった。

「ゴホッ・・・・・・・殺してほしい奴がいるんだ」

860人間辞めても:2009/04/17(金) 10:47:55
「貴様が心配せずとも良い、この駅に来る者以外の参加者はすべてDIO様が駆逐されるだろう」

先ほどこの駅を出発したマーダー達もいる。
早人の訴えに対してヴァニラ・アイスの答えはそっけなかった。

しかし早人には考えがあった
吉良吉影、なぜ倒したはずのあいつが生きているのかはわからないが
もしが脱出し杜王町に舞い戻るような事態になれば・・・母さんが危ない。
それだけは、なんとしてでも回避しなくてはならない。

ライターを使ってヴァニラ・アイスを殺すことも考えたが、この怪我では万が一倒せたとしても駅を出ることすら難しいだろう
しかも自分の怪我を治せる仗助さんはもうこの世にいないのだ。
いや、もう人に頼っているわけにはいかない。
承太郎さんや億泰さんが負けるような人間ではないことは知っているが、すでに二人死んでいるのだ。万が一ということもある。

それならば今の自分に出来るのは自分の命をかけてでも、一人でも多くのマーダーを吉良吉影に差し向けることだ
見ればヴァニラ・アイスという男はDIOという奴に絶対の忠誠を誓っているようである。
そこを突けば話に乗ってくるかもしれない
早人は胸に決意を秘め、無理矢理顔に笑顔を浮かべて言う

「どうかな・・・その人でも倒せるかどうかわからないよ・・・」

「なんだと」

案の定ヴァニラ・アイスは聞き捨てならないとばかりに詰め寄ってきた。
ガッと首を掴まれ持ち上げられる。

「もう一度言ってみろ小僧・・・」

ぎりぎりと首を締めあげられながらも早人は懸命に言葉を紡ぐ
意識が飛びそうになるのを堪えるのに必死だ。
ここで頑張らなければ母さんが危ない。

「あ・・あいつの・・能力・・・は・・時間を・・ 巻き戻・・す」

ヴァニラ・アイスはおもわず早人の首から手を離していた。支えを失った早人は床に倒れ伏す。

「時間を巻き戻す能力」だと!?
ヴァニラ・アイスの頭を驚愕が支配した。
時間を支配するということは世界を支配するに等しい。
その権限を持つにふさわしいのは、この世でDIO様だけだ。
神聖な領域を土足で踏み込まれたかのような不快感にヴァニラ・アイスは眉をしかめた
ヴァニラ・アイスはかがみこむと、再び早人の襟首を掴み上げた。

861人間辞めても:2009/04/17(金) 10:48:28
「おい小僧ッ!その男の事くわしく聞かせろ!」

返答が、無い。
怒りにまかせて二三度早人の頬を張ったが起きる気配はなく、ぐったりとしている。
とうとう痛みに耐えかねて気絶したようだ。

ヴァニラ・アイスは舌打ちをするとつかんだままの早人の頭を床に放り投げようとし・・・・・
その時ある思いつきがヴァニラ・アイスの頭をかすめた。
リスクはあるが、このままにしておくよりははるかにマシだろう。
ヴァニラ・アイスはニヤリと笑うと、早人の首筋におもいきり牙を突き立て

そして。

  *      *      *

「うぅ・・・」

早人は体に床の冷たさを感じて目を覚ました。
意識を失ってしばらくたっていたらしい、床には朝日に照らされた窓枠の影がくっきりと浮かび上がっている。

「今、何時なんだろう・・・ってゆうか僕、生きてる?」

まわりを見回すとヴァニラ・アイスの姿は見えなかった。
この怪我なら遠くへ逃げることもないと判断して放置されたのだろうか?
ともかく、喉が焼けるようにひりつく以外には変わった所はないようだ。
早人は頭痛をふりはらうように頭を振ると、何気なく足元に目をやって自身の異変に気がついた。

右足が、ある。

ヴァニラ・アイスの『クリーム』によって消し飛んだはずの自分の足が。

「なっ・・・何でッ!?」

足首から先は綺麗に消失していたはずである。
その証拠に止血のため使っていたタオルは、血を吸ったまま自分の足元に転がっている。
幻覚でも見ているのだろうか。ためしに右足に触ってみる、感覚は、ある。
だめ押しで頬をつねってみたが、痛いということは夢ではないという事だ。
まさかヴァニラ・アイスが直してくれたのだろうか?いや、そこまでサービス精神があるようには見えなかったが。
自分が気絶してる間に生えたのか?雨後のタケノコでもあるまいし、そんなバカな事があるわけないだろう。

考えても答えは出ない、早人は頭を振ると喉に手をやった。なぜか目が覚めた時から異様に喉が渇いているのだ
早人はバッグからペットボトルを取り出すと中身を一気に飲み干す。
しかし、喉の渇きが収まる気配は無かった。失血で失われた水分を体が求めているのだろうか。
ともかくこの程度の水では満足できない。早人は空になったペットボトルを捨てようと立ち上がり

鼻に甘い香りを感じて振り返った。

862人間辞めても:2009/04/17(金) 10:49:18
何だろう、どこからか良い匂いがただよってくる。自分が今までに嗅いだ事のある料理の匂いとはまた違う
ひどく食欲をそそられる香りだった。
早人は壁に手をつくと匂いのする方向へ歩き出した、匂いは一歩ずつ進むごとに強くなってきている。

何の料理なのだろう、エビフライ?オムライス?それともカレー?
早人は母の作ってくれるカレーが大好きだった、しのぶが「今日はカレーよ」というたびに
早人はいそいで学校から帰らねばならなかった。あつあつのご飯に母特製のルーをかけてほうばると
心地よい辛さが口いっぱいに広がるのだ、素直に「おいしい」と早人が答えると
いつもは怒ってばかりのしのぶも、この時ばかりは嬉しそうに笑ってくれる。

早人は母の笑顔を思い出して目を細めた。鼻の奥がツンとしてくる。

「ん・・・」

この奥から匂いはさらに強くなってくるようだ。
早人はおもわず走り出した。
生えたばかりの右足が悲鳴を上げたがこの香りの前では気にもならない。
長さのある廊下を幾度も抜け・・・
ついに広がった光景に早人はおもわず感嘆の声をあげた。


 床には ごちそう が散らばっていた。


朝日に照らされてキラキラと光り輝いている、まるで宝石のようだと早人は思った
おそるおそる手をのばすと一つつまみ、少しだけかじってみる。
口の中に入れた瞬間、圧倒的な旨味が舌根を突き抜けて脳に幸福感をもたらしてゆく
あれだけ水をのんでも治まらなかった喉の渇きも、すぐに癒えてゆく
さんざん砂漠を彷徨った後に飲む水はこんな味がするのかもしれない。
早人は床に散らばったそれを、今度は両手に溢れるほどかき集めおもいきり口にほうばった。
ぷちぷちとした心地よい食感が舌の上を転がってゆく。後味は爽快だ。

その後はもう体が勝手に動いていた、拾い集め、口に含み、咀嚼し、嚥下する。
もはやその行動は機械的ですらある。
どんどん早人の顔はよだれと汁とでベタベタになっていった。

早人が夢中になって食べていると
ガリッという音とともに奥歯に違和感を感じたので、一旦食べるのを中止することにした。
口から奥歯に挟まった物を吐きだしてみる、薄い桜色をした魚のウロコのような物だ。
ウロコにしては少し大きい気がするが・・・。

何故かこれと同じものをどこかで見た気がする。

いや、僕はコレを知っている!
この物体を知っている!!

863人間辞めても:2009/04/17(金) 10:49:50
「ぃ・・・・ひぃ・・・・ぁ・・・」

声にならない声が喉の奥から漏れ出してきている。
どうして気付かなかったのか、コレは魚のウロコなんかじゃない
自分の指に生えているも物とまったく同じ物だ。

今まで手に持っていた手首がゴトンと音をたてて床に落ちた。
その音にはじかれたように頭を上げ、床に転がった生首と目が合った瞬間
早人は今まで自分が食べていた物がなんだったのかを理解した。

理解してしまった。

*        *         *

少年の悲鳴が聞こえたような気がして、ヴァニラ・アイスは頭をあげた。
体はすでにすっぽりと『クリーム』に覆われているので体ごと上を見上げた形になる。
あの少年に自分の血を注いでしばらくたつ、もうそろそろ変化がでてきても良いころだった。
自分のように吸血鬼化したか、それとも屍生人になったか。
どっちにせよこの時間帯の日差しでは駅の外に出ることは出来ないだろう。
時間を巻き戻す男の話は、邪魔者を消した後でゆっくりと聞き出せばよい。

ちなみに、ヴァニラ・アイスが今いる場所はサンタルチア駅の地下鉄だ。なぜここにいるかというと
先ほどまで血を注いだ後、早人の回復を待ってる間にいきなり駅の照明が落ちたのである。
新手のスタンド使いかッ!?とホームを探索した結果、この地下鉄に潜る入口を発見したというわけだ。

地下鉄に潜ってみれば、送電線がバチバチと火花を上げている、停電はコレが原因らしい。
これはもしかしたらと思ってしばらく待ってみたのは正解だったようだ。

「早人という名前だったか・・・?あいつには感謝しなければならないようだな」

早人にかまかけず駅を飛び出していたらこの地下鉄の存在にすら気付かなかっただろう。
聞き出した後は、感謝の意味をこめ痛みを与えずに殺してやろうとヴァニラ・アイスは思った。

男はフンと鼻を鳴らすと線路の先を見つめた、列車の振動が近づいてくる。

【H-3サンタ・ルチア駅/1日目 朝】

864人間辞めても:2009/04/17(金) 10:50:40
【川尻早人】
[時間軸]:吉良吉影撃破後
[状態]:吸血鬼化中、精神疲労(大)身体疲労(随時吸血鬼の能力で回復中) 腹部と背中にダメージ大(随時吸血鬼の能力で回復中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 ジャイロの鉄球、鳩のレターセット、メサイアのDISC、ポルポのライター
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を倒したい。殺し合いにはのらないけど、乗ってる参加者は仕方ない。
0.うわあああああああーーーーッ!!
1.なんとかして鳩を取り戻し、承太郎に手紙を送る。
2.ライターを使ってヴァニラを倒す…?
3.荒木の能力を解明したい
4.死んだ人達にはどう接すればいいんだろうか?
5.他の知り合いにも会いたい…。
[備考]

※吉良吉影を最大限警戒、またエンポリオの情報によりディオ、プッチ神父も警戒しています。
※食べていたのはドノヴァンの死体です。

【ヴァニラ・アイス】
[時間軸]:回転しながらポルナレフに接近する途中
[状態]:鼻骨、左胸骨、左肩甲骨 骨折 全身に打撲(随時吸血鬼の能力で回復中)、吸血鬼化 、ウェザーに対して静かな怒り
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2(本人は確認済み)ゾンビ馬(怪我ひとつを縫える程度)
[思考・状況]
基本行動方針:ディオ(DIO)様以外の全員を殺害し、優勝させる
0.準備万端!ばっちこーい。
1.朝日を避けるためサンタ・ルチア駅を拠点にする。
2.駅に来る参加者を皆殺しにする。
3.夜になり次第、DIOの館に向かう
4. 早人から「時間を巻き戻す」能力を持つ男の話を聞く。
5.頃合を見て早人を殺害する (保留)
6.先ほど自分を倒したウェザー・リポートを必ず殺す (保留)
7.夜になり、自分で行動できるようになったら同盟を破棄。皆殺し。
[備考]
※完全に『吸血鬼化』 しています。
※同盟を守る気はさらさらありません。昼間の間だけは、間引きが期待できる5人については生かしてもいいと思ってます。


※サンタルチア駅は停電しています。

865 ◆bAvEh6dTC.:2009/04/17(金) 10:53:36
以上です。
タイトルは倉橋ヨエコの「人間辞めても」からです

・話の流れが不自然ではないか?
・早人吸血鬼化について

ご指摘をいただきたいと思っています。よろしくおねがいします。

866ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/17(金) 14:46:32
投下乙です
私の気になった点は早人の回想シーンですね。
時間軸が吉良撃破後どれくらいかという点にもよりますが、
少なくとも四部の時点では夕食のメニューについて母と楽しく団らんするほど
親子仲はよくなかったと思われます。(吉良死亡後はわかりませんが・・・)
吸血鬼化については・・・どうなんでしょうね?私には判断できません。
ただ、死にそうな参加者に血を分けて蘇生、を繰り返していたら
いつまでたっても終わらないような気がするのも確かです。
気が付いたら参加者のほとんどが吸血鬼化、という事態にもなりかねないのでは?

867ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/17(金) 19:05:54
投下乙です

まず、早人の吸血鬼化ですが、ルールに

>『参加者に能力を付与してしまう可能性』のあるアイテム、
>つまり石仮面・弓と矢・聖人の遺体などは不可

と記されています。
能力制限には吸血鬼化禁止とは書かれていませんが、参加者の能力付加は原則禁止なのでは?

他に、
・なぜ早人の足が元通りになったのか分からない(吸血鬼であっても、再生する描写はなかったはず)
・ヴァニラは「あやつら」って言うのか?
の二点が気になりました。

868ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/17(金) 22:51:25
ヴァニラアイスの支給品にゾンビ馬があるんだから、リスクを冒さずに止血できるんじゃないか?

869 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:14:50
投下乙です。
個人的にはおもしろいと思うんですが…メタ的に言うと早人が太陽の元に出てきそうで…
そうなると太陽が危ないと気づかせる必要があるんですが…それが難しそうですよねぇ
早々に決めるべきでなく皆さんの意見を聞いたほうが良いかと

>>868
ヴァニラが早人につかうのは勿体無いって判断したんでないでしょうか?

少し遅くなりましたが投下します。

870 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:15:47
〈side A:レオーネ・アバッキオ〉

「―――……ぇ、ねぇ!聞えてるかしら、アバッキオ!」
ああ、聴こえてるさ。それこそお前の声が壊れたテープレコーダを繰り返し再生してるみたいにな。
まったく嫌になってくるってもんだ。
冷め切ったであろう目で目の前の少女を見つめる。相も変わらず同じことの繰り返しだ。俺はこの光景を後何度再生しなきゃいけねーんだ?

「―――……なのよ!ちゃんと私の言ってたこと聞いてた?…―――……んていうのは冗談きついわよ」

何度こいつに言い聞かせたことか。何度話したことか。
意図せずとも俺の口から溜息が漏れる。ああ、落ち着いてるさ。嫌というほど俺は落ち着いてる。
クールになろうぜ、レオーネ・アバッキオ…。

「いいか、ジョリーン…その団子頭に何が詰まってるか知らねぇが何度も同じことを言わせんじゃねえ。
俺は同行を許すって行ってるんだ。付いて行くも何も俺はダメだ、なんて一言も言ってねェぞ」

そうだ、事の発端は俺の提案から。
『現場』に向かうと宣言した俺に対してジョリーンは同行を申し出た。しかしながら正直な話、スタンドを見られることは俺にとっての最大のタブーだ。
隠せるべき場面で己の武器をほいほいと自慢げに披露するのは馬鹿がやることだ。そして俺は幸いなことに馬鹿じゃない。
覚悟が座ったジョリーンなら、スタンド像はともかく再生したときの様子を教えてやるぐらいならしてやってもいいかと思ったんだが…。

「それならどういうことよ?お前はここで残って家を守れって暗に言ってるの?あたし、家庭を守るっていう専業主婦にだけにはならないつもりなんだけど」
できることなら俺のスタンドを見せたくない。そして知られたくない。
ジョリーンがスタンド使いじゃなく再生を見られることがないなんていう楽観的考えは相当のマンモーニ(ママっ子)だ。
見張りの目が増えて悪いことはないし警戒する人数が多すぎるなんてこともないことは確かだ。

「この犬っころが番犬の役割をしっかり果たすように見えるのか、お前には?
支給品にクソなんか引っ掛けられた日には俺はこいつを蹴っ飛ばすぜ…ッ!」

顎でそいつを指し示す。相変わらず生意気な顔だ…。
とにかく、だ。
自分の身も守れないようなガキンチョを抱えて現場に赴くなんて俺はゴメンだね。
そもそも放送15分後に動く理由はその時間が一番「参加者に会わないだろう時間」だからだ。

…矛盾してるかって?ああ、クソッタレ、わかってるさ。
矛盾してるさ。
そう、俺は自分で同行を許しながらも必死こいてジョリーンと犬っころを残そうとしてる…。
自分で決めたことを捻じ曲げてでもな。

「イギーはそんな間抜けじゃないわ。それにこの子をそんな風に呼ばないで」
ああ、そうだ。決してそんなことはない。
俺がジョリーンとイギーをココに残したいのはこいつらが心配だからなんかじゃない。断じてそうじゃねぇ。
ただ再生を見られるのと、再生中に敵に襲われたときこいつらが足を引っ張るからだ…ッ!

871 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:16:23
イギーをあやす様に撫でるジョリーンがトリッシュと重なって見えるなんてことはない。
共通点なんていえば、同じぐらいの年頃で、ただ二人とも女の子であるってことだけだ。
「それでもイギーをここに一匹置いていくってのも酷な話だ。まぁ、俺としては犬一匹ぐらいって思うんだが懐かれてるお前の場合は違うだろ?
ああ、イギーも一緒に連れて行くってのも説得力のねぇー話だ。支給品はどうする?」
追い討ちをかけるように付け加えてやる。
ぐっと黙り込んだジョリーンを見るのはあまり気分がいいものじゃねーが、これも俺自身のためだ。
おとなしくパパの帰りでも待ってるんだな……。

「とにかく、だ。そろそろ時間だ。俺は…」
時計を見つめる俺の視線が止まる。せわしなく動いてた秒針が9を過ぎ、そして―

「―べート―ヴェン交響曲第九番の第四楽章『歓喜の歌』
う〜ん、じつに素晴らしいね。心が震える、そんな曲だ。
格好つけたような言い方すると、人間賛歌、ってとこかな? 」

俺の神経を逆なでするような声。妙に鼻に付く男の演説が始まった。




    ◆


正直トリッシュのこともあったし、ジョリーンとの遭遇もあって『こいつ』について考える暇がなかったな。
もちろん、俺たちをこんな狂ったブラッド・パーティーに招いた奴だ、招待状もなしでなんて礼儀知らずににはお灸を吸えてやらねといけねえ。
でもよ…、ここまでの奴だったとはな!

手の中に握られてるペンが俺の握力でミシリと音を立てる。慌てて離し、インクが漏れるなんて事を防ぐ。
やれやれ、冷静さを欠くような真似をするなんて…。感情を抑えろ、この世界じゃそれが常識だ…。
それに…ここで俺が弱みを見せたらどうする…?

放心したように、一点を見続けるジョリーン。大方さっき言ってた友人を亡くしたことが原因なんだろうな…。
人の死に慣れすぎた俺にはかける言葉が見つからなかった。
情けないことに俺はこの場にいて唯一ジョリーンを励ますことが出来たのに、どうすればいいかわからなかった。

「………ッ」

ペンを握ったままのジョリーンの手に俺自身のを重ねる。
こじ開けるように手を開くとピントの合わない目が俺の瞳で揺れる。
その動揺が俺に伝わる前に、無理矢理口を開く。

「調査は俺一人でやってくる…。お前は………少し頭を冷やせ……。」

一睨み効かすつもりはなかった。それでも俺自身少し目つきを厳しくしてしまったのはそうして欲しいと俺が願ったからだろうか。
ジョリーンは黙ったまま頷くと、イギーを抱きかかえ椅子に深く腰掛けた。
喫煙者の気持ちがわかった気がする。きっとこういうときに一煙吹かすんだろうな。
玄関の開いたドアから暁の風が吹き込んできた。生暖かいが風が俺を包み込む。

872 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:16:56
「アバッキオ…!」
呼び止められてドアを片手に振り返る。何事だろうか。付いて行く、とでも言うんじゃないだろうな…。
神経を張ったまま俺は振り返る。頭にに浮かんだ多くの説得の言葉。
決心を固めた女が如何に説得しづらいかは短い人生の中でも体験済みだ。

「…いってらっしゃい」
だけど俺を待っていたのは拍子抜けするような激励の言葉。おかげで一瞬だけ間抜けのような顔をジョリーンに晒す羽目になっちまった。
硬くなっていたジョリーンの顔がそれでか、笑顔になった。まったく、これだから女ってのは…。
むず痒いような気分になり、俺は努めて表情を鉄仮面に戻すと言葉を返すことなく扉の外に出てった。
そして…

「…行ってくる」
とてもじゃねーが面と向かってなんて言えねえ。こういう役はミスタの役だってのに…クソ!
柄にもねぇことやっちまったな…。
冷静になろうぜ、レオーネ・アバッキオ……。
深呼吸をしたときに香った草の匂いがどこか故郷を思い出させ、俺はゆっくりと現場に向かった。




    ◆


『そりゃあ…爺さんが負けたら……俺も死ぬからじゃねぇか』

まずこいつと面を会わすようなことがあったらその土手っ腹に蹴りをぶち込んでやる…ッ!
誰の手でもねぇ。もちろん足でもねぇ。そして俺自身のスタンドでもない。
この俺、直々に…その身に嫌というほど染み込ませてやるぜ………!

『あぁ…おクハッ、俺の息子が荒木に……利用さ…されててな……
 絶対に…助けに…行かなきゃならねぇんだよ……』

だから今は笑ってるがいいさ…。ふんぞり返って待ってるが良いさ。
その腐りきった性根、再起不能にしてやる……ッ!
そうでもしねーと俺の腹の虫の居所が収まりそうにねぇからな…。待ってろよ、荒木飛呂彦!

『なぁ…爺さんよ……息子を………アンドレをた……』

…再生の声をBGMに考え事、か。最高じゃねえか。この舞台に相応しい、死と侮辱の匂いがぷんぷんしやがる。
ほんとなら放送が始まる前には再生を終えてる予定だったんだがな、少し警戒しすぎたか…。

現在位置は把握してる。幸い禁止エリアに指定されなかったことだしじっくり調査を進めるとするか…。
そう思ってるのに俺は驚くほど集中できてない。
気づけばあの放送の男、荒木飛呂彦のクソ生意気な態度ばかり思い出す。
忘れようと調査を勧めるが虫が湧き出るように俺の頭に侵食しては思考を乱す。
……少し気張りすぎか。

873 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:17:30
そうして気を抜いた俺の頭に浮かんだのは二人の女。
泣き崩れるアイツ、誇り高いまま死を迎えた彼女。麻薬中毒者が幻覚を見るように、俺の目の前で二人がちらつく。

「………クソッタレ!」

ジョリーンは…きっとここには来れないだろうな。
母親を亡くし、親友を亡くし、慕われてた少年も失った。あの年頃の女の子には堪えるだろう。
………俺だって堪えてるんだ、あいつが動揺しないはずがない。
認めるほかない、俺は今動揺…ではなく、そうだな、驚愕してる。
何に、かって?
それは、そうだな…。
トリッシュの死をわかっていたのに自分でもその名前を聞いたときに自分が衝撃を感じちまったこと。
26名という死亡者の多さに俺が甘さを感じちまったこと。

「………」
隣で再生を終えた自分の分身を見る。既にターゲットは物言わぬ死体となり、俺はそれに一時停止の命を告げていた。
手ががりは今すぐにでも見つかるだろう。それでも俺はすぐに動き出すことは出来なかった。
空を仰ぐように顔を上げる。ぼんやりとした頭を総動員しないとこの選択は選べそうになかった。

ギャングの俺がベビーシッター気取りか?ハッ、俺も焼きが回ったもんだ。
それでもこの機会は逃せねえ。今が一番がチャンスなんだ。
周りに人の気配は…どうだろうかね。一応気は張ってるがこの俺の警戒網を越えるぐらいのやつがいないとも限らねえ。
さて、どうすべきか…?


【レオーネ・アバッキオの場合】

1.再生を続ける
2.再生を中止、空条徐倫の元に戻る
3.再生を中止、周りにいるかもしれない参加者を探す。



                ◇  ◆  ◇


〈side B:空条徐倫〉



「ねぇ………、ねぇ!聞えてるかしら、アバッキオ!」
イライラ…してるんでしょうね。妙に口調を荒げる自分が珍しく思えた。
なんでイライラしてるかって?そうね、色々原因はあるわ。ただ一番の原因は彼ね。
この目の前にいる、やけに白けた目で私を見つめる男。レオーネ・アバッキオ、その人のせいね…。

「心配なのよ!ちゃんと私の言ってたこと聞いてた?…同行を許す、なんていったくせに今更『なし』なんていうのは冗談きついわよ」

やけにゆっくりとした動作で私の目も見るアバッキオ。半眼にあけられたそれは明らかに『面倒だ』との気持ちがありありと浮かんでる。
…こういう目は嫌と言うほど体験してるわ。そしてこういう目をしてる男って言うのは…。
やれやれ、厄介この上ないわ。

874 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:18:04
「いいか、ジョリーン…その団子頭に何が詰まってるか知らねぇが何度も同じことを言わせんじゃねえ。
俺は同行を許すって行ってるんだ。付いて行くも何も俺はダメだ、なんて一言も言ってねェぞ」

天井を仰ぐように見上げる。これだから大人って言うのは嫌いなのよ。
自分の都合ばかり通して平気で約束破り。大人の権力振りかざして子供を黙殺。
まったく、溜息つきたいのはこっちのほうよ。

「それならどういうことよ?お前はここで残って家を守れって暗に言ってるの?さっきから貴方と話してるとどうも私を現場に向かわせたくないように見えるわよ…。
それにあたし、家庭を守るっていう専業主婦にだけにはならないつもりなんだけど」

「この犬っころが番犬の役割をしっかり果たすように見えるのか、お前には?
支給品にクソなんか引っ掛けられた日には俺はこいつを蹴っ飛ばすぜ…ッ!」

皮肉にまじめに返すことを望んでたわけじゃないわ…。もちろんわかっててそうしてるんでしょうけど。
はぐらかされる様に話は進む。あたしは床に眠そうに伸びをするイギーを抱え挙げる。
少し嫌そうにしたけどそんなことかまいやしない。その柔らかな毛皮に顔をうずめると太陽のにおいがした。

「イギーはそんな間抜けじゃないわ。それにこの子をそんな風に呼ばないで」
「それでもイギーをここに一匹置いていくってのも酷な話だ。まぁ、俺としては犬一匹ぐらいって思うんだが懐かれてるお前の場合は違うだろ?
ああ、イギーも一緒に連れて行くってのも説得力のねぇー話だ。支給品はどうする?」

…もういいわ。
最初から行かせる気なんてなかったんでしょ、どうせ。
そうは思ってもやっぱり納得いかない。
あたしをか弱い女の子かなんかと誤解してるみたいだけどそんなことあるわけないじゃない…ッ!
自分の身ぐらい自分で守れる。そうやって過ごしてきたし、これからもそう。
だって、あたしは―――

「とにかく、だ。そろそろ時間だ。俺は…」

「―べート―ヴェン交響曲第九番の第四楽章『歓喜の歌』
う〜ん、じつに素晴らしいね。心が震える、そんな曲だ。
格好つけたような言い方すると、人間賛歌、ってとこかな? 」

口を開きかけたあたしを黙らせるには充分だった。
アバッキオの言葉も遮った男の声を六時間ぶりに聞きながら私は知らず知らずのうちに強くイギーを抱きしめていた。




    ◆

875 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:19:09
放送が木霊のようにリビングに響く。やけに耳に残るそれを感じながらふと目を手元に下ろす。
動揺もせずに名簿には脱落した参加者の欄に線が引かれていた。
禁止エリアもご丁寧に時間まできっちりと書き込まれている。
…それを見てあたしは喜べばいいのか悲しめばいいのかわからなかった。

エルメェスとエンポリオの名前が呼ばれたのに冷静に受け入れれたこと。
悲しいはずなのにそれをどうすればいいかわからないこと。

………そうよ、放送で名前を呼ばれたってことは死んだってこと。二度とあの二人に会えないってことだわ。
そう理解したとき、そう思ったとき、ビデオ再生のようにママの最後が思い出される。



鳥肌が全身を襲ったのと手に震えが走ったのは同時だった。

嫌だ。もう二人に会えないなんて嫌だ。
まだエルメェスには話してないことがある、やってないことがある。
返してない借りた百ドルのツケ。いかした顔した男子看守のホットニュース。FFと仕掛ける予定だったドッキリ。

エンポリオだってそうだ。
あたしを姉みたいに慕ってたあの可愛い少年はもういないの?もう会えないの?
幽霊の部屋にまた招待してよ。気まぐれにピアノをかき鳴らそうよ。またあたしを「おねえちゃん」って呼んでよ。

嫌よ、そんなの。嫌、二人に会えないなんてそんなの、そんなの―――ッ!!

「調査は俺一人でやってくる…。お前は………少し頭を冷やせ……。」
突然手を握られる。霞む視界に大きな手が映り、少しずつ視野が広がる。
ぼんやりと靄がかかっているような頭は以前働かないものの、目の前にいるのがレオーネ・アバッキオであることはわかった。
温かさを膝に感じるとアバッキオと同様にイギ−がその身を丸めこちらを見上げてる。

震えはまだ収まらなかった。それでも手を握り返し、イギーを抱きしめた。
それが今のあたしがすべきことだと思ったから。

大きな男の背中が遠ざかっていく。玄関の扉に近づきその手を扉にかける。
急激にこみ上げるなにかが命じるままにあたしは声を振り絞った。
そうでもしないとこの背中を見るのが最後になるんじゃないかって漠然とした不安に押しつぶされそうだったから。

「アバッキオ…!」
だから振り向いた彼を見てもあたしは何も言葉を用意してなかった。
少し目つきを仕事人のもにした男に対してあたしは宙ぶらりんな状態を維持するしかなかった。
結局無理矢理ひねり出した言葉は当たり障りのないただの挨拶だった。

876 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:19:40
「…いってらっしゃい」

間抜け面を晒したアバッキオを見て、少しだけ笑った。そうやって笑える自分がいることにほっとしてまた笑った。
イラッとしたような顔を一瞬だけするとそれでもアバッキオはもう一度表情を戻した。
そうしてまたその広い背中を見せると…

「…行ってくる」

扉が閉まるその直前に、最後にその背中があの日のあいつに重なって、またあたしは笑顔をなくした。




    ◆



寒かった。
頼れるものもなくして、寄りかかるものもなくして、あたしは一人だった。
窓に視線を向けるとちょうどお日様が顔出す頃であたしはそれからも顔を背けた。
イギーは相も変わらず私の腕の中で大人しく抱かれてくれてる。そうして欲しい、って私が思ってるのがわかってるのかしら。

どうすればいいのかしら、これから先………。
あのエルメェスが死んでしまった。まだ認められないし、認めたくない。
それでも微かに残った冷静な自分が騒ぎ立てる。熱く燃え滾る自分が叫ぶ。
……そうね。その通りよ。
アナスイだって、FFだって、ウェザーだって。
あたしは守られるだけの女の子じゃない。
ストーン・フリー。何者にも縛られない私自身の誓い。

立ち上がらないと…!これ以上失いたくないって言うなら失わせちゃいけない。
だったら自分の腕で掴み取れ。あたしにはそのための腕があるんだから。

それからあたしが家を飛び出なかったことが結果的に良いかどうかは判断できない。
ただあたしは今一度考えをしっかりと練り直さないといけなかった。
一番の論点は「アバッキオが信頼できるかどうか」

アナスイ、ウェザー、FF…そして『あいつ』。もう失いたくない。それが素直な気持ち。
現場に向かった彼は大丈夫かしら…?それにもしかしたらあの拡声器の声につられてあたしの仲間が来るって可能性も…。
すれ違いになったらどうしよう…。それが最大の懸念だわ…。

とにかく急がないと。決断はサクッと。COOLにいきましょうね、空条ジョリーン…



【空条徐倫の場合】

1.仲間を探しに出る
2.アバッキオの元に向かう
3.アバッキオの帰りを待つ




                ◇  ◆  ◇

877 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:20:12
〈side C:イギー〉


………んだよ。せったく人が心地良く寝てたってのに。マナーがなってねぇぞ、マナーが。
お袋にそこらの躾はされてねえのか、まったく…
それにしても何処の誰だ?

なんだ、ジョリーンのやつか…。まあいいだろ、いちいち抵抗するのも面倒だ。
それに大抵人間は犬の都合なんて無視だからな。ここは俺が大人になってやるか…。
最もあの男だったら今頃顔に強力な一発をふっかけてるだろうけどな。

それにしてもよく喋るもんだぜ。こうもキャンキャン騒がれるとこっちが騒ぐ気をなくすぜ…。
ま、いいか。もう一眠りと行くか…。

「―べート―ヴェン交響曲第九番の第四楽章『歓喜の歌』
う〜ん、じつに素晴らしいね。心が震える、そんな曲だ。
格好つけたような言い方すると、人間賛歌、ってとこかな? 」

今度は何だよ…。いいかげんにしねーと温和な俺様もプッツン来るぜ…ッ!?



    ◆


これだから人間ってのは嫌いなんだよ。
自分たちがこの世で一番賢いだ?やれやれ、その賢い人間様はそれじゃどうして26人も犠牲者を出してるんだ?
そもそもこれを開催したのも人間様じゃねーか。…いや、もしかしたらあの荒木って奴は人間じゃねぇかもしれんがね。
どうも奴からは匂いがしない。薄っぺらい無機質の匂い。
へっ、NYの酒場のゴミ箱の中のほうが何倍も嗅ぎ応えがあるってもんだぜ。

それにしても、アヴドゥルの奴もくたばったのか…。
俺をNYから引っ張り出したのが仇になったか。ただあいつほどのスタンド使いがこうもあっさりやられるとはちょっぴりだが、びっくりだぜ。
俺はあいつの強さだけは認めてたんだがな…。
まぁ、荒木、あのニセモノ野郎をぶっ飛ばすついでだ。てめぇの仇も気が向いたら取ってやるよ。
だから化けて出てくるんじゃねぇぞ?お前みたいなブ男が夢に出てくるなんてことは勘弁だぜ…。
そういうわけだ。いい夢見て眠りやがれよ、アヴドゥル。

さてと。そんなことより、この現状だ。
思ったとおりだがジョリーンのやつは動揺が酷い。心音も早くなってるし、額に浮かぶ脂汗も尋常じゃねえ。
野郎のほうもそれに対処できてねえ。全く使えねえ奴だ。
男であるもの、女一人エスコートできないようじゃこの先苦労するぜ?
今日だけ特別サービスだ。俺の毛皮で思う存分泣きな、ジョリーン…。





    ◆

878 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:20:47
野郎の奴がジョリーンをそのままにして家を出てからだいぶ経った。
ジョリーンの奴は相変わらず震えっぱなしだ。俺の体に伝わるほどの震えを感じる。
随分と危険な匂いだ…。
焦り、恐怖、義務感、決意。徐々に固まりだした匂いはジョリーンの体を蝕んでいく。

なに?決意が固まったことはいいことだって?
馬鹿言え、今のこいつは最高に視野が狭い状態だ。やれやれ…これだから人間は。
もっと俺みたいにドライに感じれないものかね。
いつだって俺の人生は気を抜いたら死、ボスの座から転落の日々だったからな。
まぁ、俺が特別すぎるってことか?

六時間一緒に過ごしたよしみだ。
ジョリーン、協力してやるよ…。だからといってそれがお前の望むことになるかどうかは俺の知ったこっちゃねぇ。
犬好きのお前にとって何が一番良いか、賢い人間様より聡明なこのイギー様が判断してやるよ!


【イギーの場合】

1.徐倫を引き留める
2.徐倫と一緒に家を出る
3.なるようになる

                ◇  ◆  ◇



〈side D:チョコラータ〉



死亡者が呼ばれるたびに震えが走る。三半規管に心地良くその声が轟く。
この死亡者はなにを見た?聞いたところ女性名だ。どうやって死んだ?

辱めを受けた後、ボロ雑巾のように捨てられたか?自らの体を売り、逆に裏をかかれたか?
僅かな勇気を振り絞り、自らを奮い立たせ死地に飛び込んでいったか?
惨めに泣き崩れ、恐怖に震えるところに現実を突きつけられたか?

これだ…ッ!この感覚………ッ!!
俺自身が望んでいたもの!どこまでも純粋な恐怖、絶望!
それのひとつひとつの結晶がこの結果…!
26人!最高のショーだッ!どこまでも充実した6時間、いまからでもそのテープが待ち遠しい…!

幸い自分がいるところは禁止エリアに指定されなかった。
死亡者?誰が忘れるようなことがあるか。空にいえる。メモを取るまでもないことだ…ッ。

あの駅から西に向かう途中に流れたこの放送は俺を最高に興奮させた。
こんなにワクワクしたのはいつ以来だろうか?
看取った老人の顔が絶望に染まったの見た時だろうか。初めて患者を殺したときだろうか。
今、俺は柄にもなく年を忘れて遠足を楽しみにする子供のようにスキップで移動中だ。

その俺の足も止まった。こうして壁に背を当てじっと気配を殺す。
いくらテンションを限界まで飛ばしたからといって自分を見失うようなことはしない。
霞む朝日の下、なにやら動く人影を見ればこんな状況だ。冷静さを取り戻すなんてわけない。

…落ち着きを取り戻した俺は冷静に脳を回転させる。
観察する相手の様子を伺う。
幸いなことにこっちには気づいていないようだ。気を配ってるのは伝わるが…集中力を欠いてるのか。
それがさっきの放送が原因だとしたら…おもしろい。

そして気づく。
知らず知らずのうちに自分は笑みを浮かべていただろう。
あれは…俺の目と脳が正常ならブチャラティの一味のレオーネ・アバッキオじゃないか……ッ!

879 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:22:26
そうわかったからこそなお一層冷静になれ、と呼びかける。
ここでの選択肢は外すことが出来ない。自分が一番わかってる。

そろそろ恐怖を生で見たい…!脅え、叫び、逃げ惑う参加者…!
突き落とされる絶望に…震え、命乞いをする弱者…!

「いやしんぼめ………ッ!」
いつもの口癖を呟く。セッコにいつも言い聞かせていた言葉は何より貪欲な自分に言っていたのかもしれないな…。
判断材料は三つだ。
ひとつはアバッキオの隣にしゃがむ人影。未知数のあれ、死体か?手を組んでる相手か?はたまた支給品か?
不確定要素に対してこの俺はどう動くべきか。
ふたつは奴の精神状態。スタンドは己の精神力。トリッシュが死んだ今、及ぼす影響はどの程度だろうか?
人によっても及ぼす影響は違うからな…。激昂する奴、我を忘れる奴、呆然とする奴…。
さてさて、奴の場合はどうかな?
みっつめは転がるデイバッグ。支給品、あの荒木のことだ。
自分だって意味のない物は入れない。奴の思考回路は俺と似てるからな…。
そう考えると最高のエンターテーメントを演出する何かが入ってもおかしくはない。

さぁ、どうしようか?とてもこの昂ぶりは収まりそうにないが…。
そうして俺は笑みを広げ思考を続けた。


【チョコラータの場合】

1.不意討ちでアバッキオを襲う
2.素性を隠して手を組む
3.このまま西に向かう





                ◇  ◆  ◇




〈side E:ホルマジオ〉

さぁて、 困ったことになっちまった…。
支給品を安全に確認しようと民家に向かったはいいが…どうしてこんなことになったんだが・・・。
溜息を吐きながら借り上げた坊主頭をぼりぼりと掻く。
そうしながらさっき流れた放送の内容をもう一度呼び起こす。

幸い禁止エリアと死亡者はチェック済みだ。放送を聞き逃すなんて間抜け以外の何者でもないぜ・・・。
と、言ってもしおんなことをしそうな奴が俺たちチームにいるんだけどな。悲しい現実だぜ、やれやれ。
最もそいつの名が呼ばれなかったってことは喜ばしいことだ。他の奴らも無事生き残ってるようだしな…。

目つきの悪い男達を脳裏に浮かべながら俺は知らず知らずのうちに苦笑いを浮かべる。全く頼りになる奴らだよ…。
それでも、全員が全員無事、ってわけにはいかなかったがな。
線が引かれてる名前をなぞる。さっきとは違う種類の溜息。

まったく喧嘩する相手を考えろ…。お前の性格だとここじゃ危ないとは思ってたけどよォ…。
しょうがねぇな、じゃ済まされないんだぜ。リーダーの身になってみろってんだ、あの馬鹿野郎…ッ!

880 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:23:15
そうして怒りに我を忘れた俺は一瞬だけ自分の状況を忘れちまった。
危うく窓から転落死しかけた俺は慌ててスタンドでサッシをつかみ体を元の状態に戻す。危ねえ、危ねえ…
うん?今の状況?
それがまた厄介の種でよォ、支給品を確認できない理由なんだよ。

おっと、玄関の扉の音だ。どうやらアイツは出て行ったか。
さてこっからは仕事人、ホルマジオでいかねぇとな。
頬を軽く叩いて気合を込める。うし、行くか。

ギャングになった以上、俺は外道だろうと人外だろうとなんだろうと汚名を被る覚悟は出来てる。
どれだけ非難されようと、卑怯だといわれようと、俺は…俺たちはそれでもやらなければならないことがある!
女子供、無関係な奴らを踏み台にしようともな!

ターゲットは女一人。傍に犬一匹か。
状況が状況だ、スタンド使いの可能性も高いな。
そうなると選択肢は三つだな。このまま指をくわえて待ってるなんてことは有りえねェ。
当然二人+一匹より、一人+一匹のほうが遥かに楽だからな。それに俺のスタンドは奇襲向けだ。
・・・だが無理に襲撃するメリットもないんだがな。話し合い・・・ですむって考えるのは甘ちゃんか…?

さて、時間制限つきだ。さっさっと決めて行動しちまうか。
なんたって俺たちは『行動したと思ったときには行動し終えてる』んだからな。
…ほんと、しょうかねぇ〜〜〜なぁ〜〜〜〜………!!



【ホルマジオの場合】

1.体を元に戻し、接触 情報を入手する
2.自らのデイバッグに身を縮ませ、拾ってもらう
3.問答無用で襲い掛かり、拷問する



                ◇  ◆  ◇




人生はいつだって重要な選択の連続だ。それも制限時間付きだから厄介この上ない。

しかし、だからこそ人生は おもしろい。

881 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:23:46












【E−6 北の現場(戦闘があった場所)/1日目 朝】
【レオーネ・アバッキオ】
【時間軸】:トリッシュ護衛任務を受けた後、ナランチャがホルマジオの襲撃を受ける前。
【状態】:健康、苛立ち
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:トリッシュの仇を討つ。それ以外のことは仲間と合流してから考える。
1:決断する
2:現場から支給品、リプレイともに出来るだけの情報を集めたい。
3:1,2の行動をする予定だがとりあえず休息。
4:エシディシ、カーズにも警戒。ただし、近距離パワー型スタンドのラッシュは効きそうにないので、上の4名に対する対抗策を模索する。
5:チームの仲間、あるいは、組織のメンバーの誰かと合流して協力を要請する。
6:サルディニア島で自分が死んだ? ボス=ディアボロを倒した? ボスに警戒?!何のことだ?! (とりあえず置いておく)
[備考]
※名簿に目を通しました。
※サンタナの名前と容姿、『露骨な肋骨』『憎き肉片』の2つの技の概要を知っています。
※参戦時期の関係上、まだディアボロを敵と認識していません。
※トリッシュの遺言を聞き若干混乱しています。
※近くにサンタナの首輪、ブンブーンのデイバッグ(不明支給品が0〜2個入り)、拡声器、が落ちてます。


【チョコラータ】
[時間軸]:本編登場直前
[状態]:最高にハイ
[装備]:ミスタの拳銃、
[道具]:顔写真付き参加者名簿、チョコラータのビデオカメラとテープ、支給品一式×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しみ、優勝して荒木にロワの記録をもらう
1:決断する
2:中央(繁華街)を通り西を目指す
3:ディアボロを拷問してボスの情報をはかせる
4:参加者に出会ったらどうするかはその場で考えるが、最終的には殺す
[備考]
※グリーンディの制限はまだ不明
※参加者が荒木に監視されていると推測しています
※思考3については、「できれば」程度に思っています

882 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:24:17
【E−6南東の民家/1日目 黎明】
【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:健康。アバッキオに殴られた腹が少し痛い(戦闘、生活には支障皆無)。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:打倒荒木! これ以上自分のような境遇の人を決して出さない。
1:決断する
2:アバッキオとともに“現場”に行き情報収集はする?
3:あいつ(空条承太郎)、他の協力者を捜す。
[備考]
※名簿に目を通しました。

【イギー】
【時間軸】:エジプト到着後、ペット・ショップ戦前
【状態】:健康。アバッキオに蹴られた所と落下の衝撃で少々痛い(戦闘、生活には支障皆無)。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:とりあえずこいつらに付き合うとするか
1:決断する
2:二人についていく。ただしアバッキオは警戒
3:承太郎たちも参加してるのか……
[備考]
※空条承太郎と空条徐倫の関係はほとんど気にしていません。気付いてないかも?
※名簿に目を通しました。
※二人の近くには【食糧の入ったデイパック】【地図など情報交換用のもの及び共通支給品が入ったデイパック】【上記の不明支給品の入ったデイパック】 が転がってます。

【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:健康。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3(本来はジョセフの物。ホルマジオ、ジョセフ共に未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
1:決断する
2:ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
3:ティッツァーノ、チョコラータの二名からもボスの情報を引き出したい。
4:もしも仲間を攻撃するやつがいれば容赦はしない。
5:仲間達と合流。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。
※現在、ジョリーンのいる民家の窓に張り付いてます。
※体は小さくなってます

883Show must go on ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/18(土) 00:28:06
投下完了しました。
誤字・脱字、矛盾点・修正すべき点、他気になる点などありましたら指摘お願いします。

・状態表の書き忘れ
・チョコラータのキャラクター性
・ジョリーンとアバッキオ視点の矛盾

その他、色々あると思いますのでじっくり読んでください。
指摘してくださると喜びで悶えます。同時に予約期限を過ぎてしまったことをお詫び申し上げます。
すみませんでした orz

それではよろしくお願いします。

884ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/18(土) 11:20:31
両者投下乙!!

「人間やめても」
まず吸血鬼化についてですが、面白いですし自分はありだと思います。
ヴァニラのキャラじゃゾンビ馬は使わないだろうし
子供が右足欠損という大怪我で2時間以上持つとは考えられないので。
後、右足がいきなり生えた描写だけは修正しておくべきです

「Showmustgoon」
・チョコラータのキャラクター性
・ジョリーンとアバッキオ視点の矛盾ですが
 問題ないかと思います。
 少し気になったのはキャラごとの時系列のわかりにくさですかね
 もう少し整理して書くと読みやすいかと思います。

お二人とも本投下をお待ちしております。

885ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/18(土) 13:20:47
能力付与に引っかかるよ

886ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/18(土) 17:41:01
両者とも投下乙です感想は本投下の際に
「人間やめても」
正直、早人の吸血鬼化には賛成しかねます
能力付加が禁止というのもありますが、
メタ的な発言をすればこれ以上吸血鬼系を増やして欲しくないというのが本音です
現状でも、タルカス、ブラフォード、エシディシ、カーズ、ヴァニラと昼間動けないキャラが五名います
そして、はっきり言わせて貰えばそれらのキャラは昼間の動かし方に困るというのが本音です
日が暮れる第三放送までの間、朝、午前、昼、日中、午後、夕方の6回は引きこもりが確定するわけですからね
だから一書き手としての意見を言わせて貰えば吸血鬼キャラは増やして欲しくないです
色々口の悪い事を言ってしまいましたが話は面白かったです!
これからも貴方のSSには期待していますね

887ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/18(土) 18:36:10
能力付与とも言えるけど、「原作中での描写がない」と言うのが俺的な意見。
ヴァニラの吸血鬼化はあくまで「本編で吸血鬼化してる途中から参戦した」から出来る業だし。
さらに言うなら「ヴァニラは吸血鬼の殖やし方を知ってたのだろうか?」と言う点も挙げられる。
と言う訳で俺も上の方々同様賛成はできません。文章の構成や表現力は文句ないので修正を頑張ってください!

888ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/19(日) 00:05:30
吸血鬼議論については私も反対派です。
そもそもヴァニラが吸血鬼を作れるかどうかも怪しいところです。
原作では石仮面をかぶって吸血鬼になったディオからは多くの吸血鬼、ゾンビが生まれましたが、
吸血鬼によって新たに生み出された吸血鬼にまで、他の吸血鬼を作る力があるかはわかっていません。
私の説では、石仮面を被って生まれた吸血鬼でないと新たな吸血鬼を生むことはできないのではないかと思っています。

アバ組の方は特に気になる点はありませんでした。
イギーの渋さに惚れたw

889ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/19(日) 11:26:02
荒木の忘れんぼのせいで吸血鬼と呼ばれちゃってるけど
ヌケサクとヴァニラは屍生鬼なんだよな。そして屍生鬼には別にしもべを作る能力はない。
ってことで吸血鬼化は反対派

890ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/19(日) 12:15:47
早人の怪我がひどいことが問題なのかな?
ゾンビ馬で傷口を閉じれば、体力がもつ限り大丈夫なのでは
吸血鬼化させるよりはゾンビ馬で応急処置の方がしっくりくると思われます
その場合、ヴァニラの心境を表すのが難しそうですが…

891ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/19(日) 13:02:00
だから屍生人じゃないんだって。荒木もちゃんと分けてる。
荒木の忘れんぼとかねーよwww
両者ともちゃんと再生もしてるし、エキスか血を分けるかの違いなんだって。

892ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/19(日) 13:08:55
>>890
ヴァニラ自身は自分の吸血鬼化に気がついているし、愛しのDIO様がやられるとは思ってなくて、
その他大勢は結構どうでもいいっぽい。
心境じゃないけど「治療道具は持ってても無駄」と考える理由としてはこんな感じでいいのかな?

>◆Y0KPA0n3C.
投下乙です。特に気になる点はありませんでした。本投下お待ちしております

893 ◆bAvEh6dTC.:2009/04/19(日) 20:43:28
たくさんの批評ありがとうございます。

皆様の意見を聞いて結構悩みましたがこのSSはボツにすることにしました。
吸血鬼化は禁則事項に書いてなかったのでいいんだと思ってましたorz

頑張って別のプロット立ててきます・・・。

894ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/19(日) 22:05:04
没にするには惜しいけど、吸血鬼化を却下すると話そのものが変わっちゃうんもんな。
まぁ何にしても乙でした。今後の作品に期待します。

895 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/19(日) 22:11:52
>>893
次のSS、待ってます、ボス………
残念でしたがまたの投下お待ちしております!

皆様ご指摘ありがとうございました。
本スレには火曜日ごろには投下できると思います。
投下までまた期間が開いてしまいますが今しばらくお待ちください…。

896ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/20(月) 11:52:04
>>893
折角のプロットが勿体ないよ
俺はボツにする程じゃあないと思うがね

吸血鬼化が禁止かどうかは知らないが、
ヴァニラが「早人を吸血鬼化させて助ける」という意思を持つこと自体は何も不自然はないだろ?
(そもそも意思や思考にまで制限かけられないだろう)
もし吸血鬼化が禁止だとしても、他のスタンドが受けている制限と同じように、
「ヴァニラが早人を吸血鬼化させようとしたが、なぜかできなかった」
に変更するだけでいいと思う

>>886
仮に吸血鬼化したとしても、早人の現在地には雨が降っているので日光は届いていないのでは?

897ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/20(月) 17:09:32
>>896
>「ヴァニラが早人を吸血鬼化させようとしたが、なぜかできなかった」
に変更したら話の内容大きく変わってくるだろ? 少なくともドノヴァンの死体食べるシーンは削んなきゃいけなくなる。
普通の人間が死体食べたがるってことはあるまいし

>早人の現在地には雨が降っているので日光は届いていない
確かにそうかもしれんが、雨雲はウェザーが北上させているとあるし、後のことを考えるとやっぱり早人の行動は制限されてしまうんだろう

898ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/20(月) 20:41:06
俺も没にするほどの事じゃないと思うよ
能力付加どーたらって言うんだったら1stのミキタカとかどうなるんだって話だし
メタ的な理由で没にするのはリレー小説の面白味がなくなると思う

今回下水道とか地下鉄とかあるし吸血鬼増えても問題なくね?
早人なら他の参加者は襲わんだろうし、これ以上吸血鬼が増えることもない

ヴァニラが吸血鬼化する方法知ってるか?→DIOから聞いてると思った

899ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/20(月) 21:13:31
>1stのミキタカ
たぶんヘブンズドアーのことだろうが、あれは終盤だったし、制限の謎を解き明かすのに必要だった。

今回の吸血鬼化は、必要性はともかく、まだ第一回放送終わって間もないから時期的に早すぎやしないかと思う
(この時ならいいとかいうのがあるわけじゃないけど)

第一、ロワはリレー小説。書き手さんが書くのに苦労するようなら、配慮するべき。
面白いからこんな展開やってみた→その後繋ぐ書き手さんがなかなか出てこない
という事態になったら大変だろう。
あ、別に超展開とかの冒険しちゃいけないってわけじゃあないぞ。SSとしては面白かったし。

900 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:40:00
お話の途中すみません… 猿さんこんにちわ…orz

エンポリオだってそうだ。
あたしを姉みたいに慕ってたあの可愛い少年はもういないの?もう会えないの?
幽霊の部屋にまた招待してよ。気まぐれにピアノをかき鳴らそうよ。またあたしを「おねえちゃん」って呼んでよ。

嫌よ、そんなの。嫌、二人に会えないなんてそんなの、そんなの―――ッ!!

「調査は俺一人でやってくる…。お前は………少し頭を冷やせ……。」
突然手を握られる。霞む視界に大きな手が映り、少しずつ視野が広がる。
ぼんやりと靄がかかっているような頭は以前働かないものの、目の前にいるのがレオーネ・アバッキオであることはわかった。
温かさを膝に感じるとアバッキオと同様にイギ−がその身を丸めこちらを見上げてる。

震えはまだ収まらなかった。それでも手を握り返し、イギーを抱きしめた。
それが今のあたしがすべきことだと思ったから。

大きな男の背中が遠ざかっていく。玄関の扉に近づきその手を扉にかける。
急激にこみ上げるなにかが命じるままにあたしは声を振り絞った。
そうでもしないとこの背中を見るのが最後になるんじゃないかって漠然とした不安に押しつぶされそうだったから。

「アバッキオ…!」
だから振り向いた彼を見てもあたしは何も言葉を用意してなかった。
少し目つきを仕事人のもにした男に対してあたしは宙ぶらりんな状態を維持するしかなかった。
結局無理矢理ひねり出した言葉は当たり障りのないただの挨拶だった。

「…いってらっしゃい」

間抜け面を晒したアバッキオを見て、少しだけ笑った。そうやって笑える自分がいることにほっとしてまた笑った。
イラッとしたような顔を一瞬だけするとそれでもアバッキオはもう一度表情を戻した。
そうしてまたその広い背中を見せると…

「…行ってくる」

扉が閉まるその直前に、最後にその背中があの日のあいつに重なって、またあたしは笑顔をなくした。




    ◆



寒かった。
頼れるものもなくして、寄りかかるものもなくして、あたしは一人だった。
窓に視線を向けるとちょうどお日様が顔出す頃であたしはそれからも顔を背けた。
イギーは相も変わらず私の腕の中で大人しく抱かれてくれてる。そうして欲しい、って私が思ってるのがわかってるのかしら。

901 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:40:30
どうすればいいのかしら、これから先………。
あのエルメェスが死んでしまった。まだ認められないし、認めたくない。
それでも微かに残った冷静な自分が騒ぎ立てる。熱く燃え滾る自分が叫ぶ。
……そうね。その通りよ。
アナスイだって、FFだって、ウェザーだって。
あたしは守られるだけの女の子じゃない。
ストーン・フリー。何者にも縛られない私自身の誓い。

立ち上がらないと…!これ以上失いたくないって言うなら失わせちゃいけない。
だったら自分の腕で掴み取れ。あたしにはそのための腕があるんだから。

それからあたしが家を飛び出なかったことが結果的に良いかどうかは判断できない。
ただあたしは今一度考えをしっかりと練り直さないといけなかった。
一番の論点は「アバッキオが信頼できるかどうか」

アナスイ、ウェザー、FF…そして『あいつ』。もう失いたくない。それが素直な気持ち。
現場に向かった彼は大丈夫かしら…?それにもしかしたらあの拡声器の声につられてあたしの仲間が来るって可能性も…。
すれ違いになったらどうしよう…。それが最大の懸念だわ…。

とにかく急がないと。決断はサクッと。クールにいきましょうね、空条徐倫…!



【空条徐倫の場合】

1.仲間を探しに出る
2.アバッキオの元に向かう
3.アバッキオの帰りを待つ




                ◇  ◆  ◇

902 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:41:05
〈side C:イギー〉


「この犬っころが番犬の役割をしっかり果たすように見えるのか、お前には?
支給品にクソなんか引っ掛けられた日には俺はこいつを蹴っ飛ばすぜ…ッ!」

………んだよ。せったく人が心地良く寝てたってのに。マナーがなってねぇぞ、マナーが。
ぎゃーぎゃー喚く人間どもの声を聞きながら俺は眠りから覚醒する。
眠気覚ましに欠伸を一発かまし今の自分の状況を把握する。

なんだよ、まだ随分暗いじゃねーか。お天道様と同時に起床、ブラックコーヒーを片手にってのが俺のいつものモーニング。
それと比べたらそれは、まぁ、対したもんだぜ…
安っぽくて廃れたホテルでももっと心地良い目覚めになるだろうってのに…やれやれ。
それにしてもこの俺の眠りを妨げたのは何処のどいつだ?………なんだ、ジョリーンのやつか…。

「イギーはそんな間抜けじゃないわ。それにこの子をそんな風に呼ばないで」
「それでもイギーをここに一匹置いていくってのも酷な話だ。まぁ、俺としては犬一匹ぐらいって思うんだが懐かれてるお前の場合は違うだろ?
ああ、イギーも一緒に連れて行くってのも説得力のねぇー話だ。支給品はどうする?」

まあいいだろ、いちいち抵抗するのも面倒だ。
それに大抵人間は犬の都合なんて無視だからな。ここは俺が大人になってやるか…。
最もあの男だったら今頃顔に強力な一発をふっかけてるだろうけどな。

「とにかく、だ。そろそろ時間だ。俺は…」

それにしてもよく喋るもんだぜ。こうもキャンキャン騒がれるとこっちが騒ぐ気をなくすぜ…。
ま、いい。もう一眠りと行くか…。

「―べート―ヴェン交響曲第九番の第四楽章『歓喜の歌』
う〜ん、じつに素晴らしいね。心が震える、そんな曲だ。
格好つけたような言い方すると、人間賛歌、ってとこかな? 」

目を瞑り夢の世界へ旅立とうとする俺を望んでもない目覚ましが遮る。
今度は何だよ…。いいかげんにしねーと温和な俺様もプッツン来るぜ…ッ!?



    ◆

903 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:42:00
「調査は俺一人でやってくる…。お前は………少し頭を冷やせ……。」

これだから人間ってのは嫌いなんだよ。
自分たちがこの世で一番賢いだ?やれやれ、その賢い人間様はそれじゃどうして26人も犠牲者を出してるんだ?
そもそもこれを開催したのも人間様じゃねーか。…いや、もしかしたらあの荒木って奴は人間じゃねぇかもしれんがね。
どうも奴からは匂いがしない。薄っぺらい無機質の匂い。
へっ、NYの酒場のゴミ箱の中のほうが何倍も嗅ぎ応えがあるってもんだぜ。

「アバッキオ…!」
「…いってらっしゃい」

それにしても、アヴドゥルの奴もくたばったのか…。
俺をNYから引っ張り出したのが仇になったか。ただあいつほどのスタンド使いがこうもあっさりやられるとはちょっぴりだが、びっくりだぜ。
俺はあいつの強さだけは認めてたんだがな…。
まぁ、荒木、あのニセモノ野郎をぶっ飛ばすついでだ。てめぇの仇も気が向いたら取ってやるよ。
だから化けて出てくるんじゃねぇぞ?お前みたいなブ男が夢に出てくるなんてことは勘弁だぜ…。
そういうわけだ。いい夢見て眠りやがれよ、アヴドゥル。

「…行ってくる」

さてと。そんなことより、この現状だ。
軋み閉まる扉を見て俺は下からジョリーンの奴を見上げる。
思ったとおりだがジョリーンのやつは動揺が酷い。心音も早くなってるし、額に浮かぶ脂汗も尋常じゃねえ。
野郎のほうもそれに対処できてねえ。それどころかこいつ一人置いてどっかに行きやがった。
一人にしとくのがいいんだって?やれやれ、これだから青臭い童貞(ガキ)どもは困る。

男であるもの、女一人エスコートできないようじゃこの先苦労するぜ?全く使えねえ奴だ。
こんなときは女のために思いっきり泣かせる胸のひとつやふたつ用意しとくもんだぜ?
そういうわけで今日だけ特別サービスだ。今だけは、俺の毛皮で思う存分泣きな、ジョリーン…。





    ◆

904 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:42:31
野郎の奴がジョリーンをそのままにして家を出てからだいぶ経った。
ジョリーンの奴は相変わらず震えっぱなしだ。俺の体に伝わるほどの震えを感じる。
随分と危険な匂いだ…。
その震えが止まったことから俺は更に鼻をひくつかせ、体から溢れるばかりの感情の臭いを嗅ぎ取る。
焦り、恐怖、義務感、決意。徐々に固まりだした匂いはジョリーンの体を蝕んでいく。

なに?決意が固まったことはいいことだって?
馬鹿言え、今のこいつは最高に視野が狭い状態だ。やれやれ…これだから人間は。

冷淡に生きること、死者を重んじること、ドライに生きること。
死が特別なものである人間にはそこらをやたら分別したがる。
弱肉強食。油断したら死を招くその世界にいる俺からしたらどれも大して変わらねぇ。
ただ死んだものに自分の中でどうけじめをつけるか。それが葬式であったり追悼であったりするわけだが。

死を無駄にしない、なんて二枚目くさいことは言わねぇぞ?
ただ俺はどんな死者にだって敬意を表すべきであって、そこに私情を含むかどうかは別物ってやつだ。
…まぁ、俺が特別すぎるってことか?

とにかく、こいつは死者の影追うばかりで肝心の自分の命が見えてねぇ。
目標ばかり目に行って足元がお留守。傍から見たらどうも危なっかしい。
…はぁ、めんどくさいことに首突っ込んじまったなぁ。仕方ねえ、これも犬好きのガキンチョどものためだ。

六時間一緒に過ごしたよしみあるしな、ジョリーン、協力してやるよ…。
だからといってそれがお前の望むことになるかどうかは俺の知ったこっちゃねぇ。
犬好きのお前にとって何が一番良いか、賢い人間様より聡明なこのイギー様が判断してやるよ!


【イギーの場合】

1.徐倫を引き留める
2.徐倫と一緒に家を出る
3.なるようになる

                ◇  ◆  ◇

905 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:43:01
〈side D:チョコラータ〉

死亡者が呼ばれるたびに震えが走る。三半規管に心地良くその声が轟く。
この死亡者はなにを見た?聞いたところ女性名だ。どうやって死んだ?

辱めを受けた後、ボロ雑巾のように捨てられたか?自らの体を売り、逆に裏をかかれたか?
僅かな勇気を振り絞り、自らを奮い立たせ死地に飛び込んでいったか?
惨めに泣き崩れ、恐怖に震えるところに現実を突きつけられたか?

これだ…ッ!この感覚………ッ!!
俺自身が望んでいたもの!どこまでも純粋な恐怖、絶望!
それのひとつひとつの結晶がこの結果…!
26人!最高のショーだッ!どこまでも充実した6時間、いまからでもそのテープが待ち遠しい…!

明るくなりかけた空の下、響く歓喜の放送は止まらない。
そして俺自身の興奮も留まることを知らない。
幸い自分がいるところは禁止エリアに指定されなかった。
死亡者?誰が忘れるようなことがあるか。空にいえる。メモを取るまでもないことだ…ッ。

あの駅から西に向かう途中に流れたこの放送は俺を最高に興奮させた。
こんなにワクワクしたのはいつ以来だろうか?
看取った老人の顔が絶望に染まったの見た時だろうか。初めて患者を殺したときだろうか。
今、俺は柄にもなく年を忘れて遠足を楽しみにする子供のようにスキップで移動中だ。

その俺の足も止まった。こうして壁に背を当てじっと気配を殺す。
いくらテンションを限界まで飛ばしたからといって自分を見失うようなことはしない。
霞む朝日の下、なにやら動く人影を見ればこんな状況だ。冷静さを取り戻すなんてわけない。

…落ち着きを取り戻した俺は冷静に脳を回転させる。
観察する相手の様子を伺う。
幸いなことにこっちには気づいていないよう。気を配ってるのは伝わるが…集中力を欠いてるのか。
今の俺の集中力ではそれがおもしろいほど手にとってわかる。
それがさっきの放送が原因だとしたら…おもしろい。

そして気づく。
知らず知らずのうちに自分は笑みを浮かべていただろう。
あれは…俺の目と脳が正常なら、ブチャラティの一味のレオーネ・アバッキオじゃないか……ッ!

906 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:43:34
そうわかったからこそなお一層冷静になれ、と呼びかける。
ここでの選択肢は外すことが出来ない。自分が一番わかってる。

そろそろ恐怖を生で見たい…!脅え、叫び、逃げ惑う参加者…!
突き落とされる絶望に…震え、命乞いをする弱者…!

「いやしんぼめ………ッ!」
いつもの口癖を呟く。セッコにいつも言い聞かせていた言葉は何より貪欲な自分に言っていたのかもしれないな…。
判断材料は三つだ。

ひとつはアバッキオの隣にしゃがむ人影。未知数のあれ、死体か?手を組んでる相手か?はたまた支給品か?
不確定要素に対してこの俺はどう動くべきか。

ふたつは奴の精神状態。スタンドは己の精神力。トリッシュが死んだ今、及ぼす影響はどの程度だろうか?
人によっても及ぼす影響は違うからな…。激昂する奴、我を忘れる奴、呆然とする奴…。
さてさて、奴の場合はどうかな?

みっつめは転がるデイバッグ。支給品、あの荒木のことだ。
自分だって意味のない物は入れない。奴の思考回路は俺と似てるからな…。
そう考えると最高のエンターテーメントを演出する何かが入ってもおかしくはない。

さぁ、どうしようか?とてもこの昂ぶりは収まりそうにないが…。
そうして俺は笑みを広げ思考を続けた。


【チョコラータの場合】

1.不意討ちでアバッキオを襲う
2.素性を隠して手を組む
3.このまま西に向かう





                ◇  ◆  ◇




〈side E:ホルマジオ〉

さぁて、 困ったことになっちまった…。
支給品を安全に確認しようと民家に向かったはいいが…どうしてこんなことになったんだが・・・。
溜息を吐きながら刈り上げた坊主頭をぼりぼりと掻く。
そうしながらさっき流れた放送の内容をもう一度呼び起こす。

907 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:44:08
幸い禁止エリアと死亡者はチェック済みだ。放送を聞き逃すなんて間抜け以外の何者でもないぜ。
と、言ってもそんなことをしそうな奴が俺たちチームにいるんだけどな。悲しい現実だぜ、やれやれ。
最もそいつの名が呼ばれなかったってことは喜ばしいことだ。他の奴らも無事生き残ってるようだしな…。

目つきの悪い男達を脳裏に浮かべながら俺は知らず知らずのうちに苦笑いを浮かべる。全く頼りになる奴らだよ…。
それでも、全員が全員無事、ってわけにはいかなかったがな。
線が引かれてる名前をなぞる。さっきとは違う種類の溜息。

まったく喧嘩する相手を考えろ…。お前の性格だとここじゃ危ないとは思ってたけどよォ…。
しょうがねぇな、じゃ済まされないんだぜ。リーダーの身になってみろってんだ、あの馬鹿野郎…ッ!

そうして怒りに我を忘れた俺は一瞬だけ自分の状況を忘れちまった。
危うく窓から転落死しかけた俺は慌ててスタンドでサッシをつかみ体を元の状態に戻す。危ねえ、危ねえ…
うん?今の状況?
それがまた厄介の種でよォ、支給品を確認できない理由なんだよ。

西急いだ俺は支給品の確認、それに加えて放送もあることもあり、身を潜める民家を探していた。
所が偶然聞える人の声。押さえ気味とはいえ、こんな状況、軽い口論であるその声は俺の耳にもばっちり届いていた。
そうして、俺はそいつらの情報を手に入れるためにも体を小さくして窓のサッシで聞き耳を立ててる、ってわけよ!

おっと、玄関の扉の音だ。どうやらアイツは出て行ったか。
さてこっからは仕事人、ホルマジオでいかねぇとな。
頬を軽く叩いて気合を込める。うし、行くか。

ギャングになった以上、俺は外道だろうと人外だろうとなんだろうと汚名を被る覚悟は出来てる。
どれだけ非難されようと、卑怯だといわれようと、俺は…俺たちはそれでもやらなければならないことがある!
女子供、無関係な奴らを踏み台にしようともな!

ターゲットは女一人。傍に犬一匹か。
状況が状況だ、スタンド使いの可能性も高いな。
そうなると選択肢は三つだな。このまま指をくわえて待ってるなんてことは有りえねェ。
当然二人+一匹より、一人+一匹のほうが遥かに楽だからな。それに俺のスタンドは奇襲向けだ。
…だが無理に襲撃するメリットもないんだがな。話し合い・・・ですむって考えるのは甘ちゃんか…?

さて、時間制限つきだ。さっさっと決めて行動しちまうか。
なんたって俺たちは『行動したと思ったときには行動し終えてる』んだからな。
…ほんと、しょうがねぇ〜〜〜なぁ〜〜〜〜………!!



【ホルマジオの場合】

1.体を元に戻し、接触 情報を入手する
2.自らのデイバッグに身を縮ませ、拾ってもらう
3.問答無用で襲い掛かり、拷問する



                ◇  ◆  ◇

908 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:44:38
人生はいつだって重要な選択の連続だ。それも制限時間付きだから厄介この上ない。

しかし、だからこそ人生は おもしろい。










【E−6 北の現場(戦闘があった場所)/1日目 朝】
【レオーネ・アバッキオ】
【時間軸】:トリッシュ護衛任務を受けた後、ナランチャがホルマジオの襲撃を受ける前。
【状態】:健康、苛立ち
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:トリッシュの仇を討つ。それ以外のことは仲間と合流してから考える。
1:決断する
2:現場から支給品、リプレイともに出来るだけの情報を集めたい。
3:近距離パワー型スタンドのラッシュは柱の男達に効きそうにないので、対抗策を模索する。
4:チームの仲間、あるいは、組織のメンバーの誰かと合流して協力を要請する。
5:サルディニア島で自分が死んだ? ボス=ディアボロを倒した? ボスに警戒?!何のことだ?! (とりあえず置いておく)
[備考]
※名簿に目を通しました。
※サンタナの名前と容姿、『露骨な肋骨』『憎き肉片』の2つの技の概要を知っています。
※参戦時期の関係上、まだディアボロを敵と認識していません。
※トリッシュの遺言を聞き若干混乱しています。
※近くにサンタナの首輪、ブンブーンのデイバッグ(不明支給品が0〜2個入り)、拡声器、が落ちてます。


【チョコラータ】
[時間軸]:本編登場直前
[状態]:最高にハイ
[装備]:ミスタの拳銃、
[道具]:顔写真付き参加者名簿、チョコラータのビデオカメラとテープ、支給品一式×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しみ、優勝して荒木にロワの記録をもらう
1:決断する
2:中央(繁華街)を通り西を目指す
3:ディアボロを拷問してボスの情報をはかせる
4:参加者に出会ったらどうするかはその場で考えるが、最終的には殺す
[備考]
※グリーンディの制限はまだ不明
※参加者が荒木に監視されていると推測しています
※思考3については、「できれば」程度に思っています

909 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:45:11
【E−6南東の民家/1日目 黎明】
【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:健康。アバッキオに殴られた腹が少し痛い(戦闘、生活には支障皆無)大きな焦り、強い心配。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:打倒荒木! これ以上自分のような境遇の人を決して出さない。
1:決断する
2:アバッキオとともに“現場”に行き情報収集する?
3:あいつ(空条承太郎)、他の協力者を捜す。
[備考]
※名簿に目を通しました。

【イギー】
【時間軸】:エジプト到着後、ペット・ショップ戦前
【状態】:健康。アバッキオに蹴られた所と落下の衝撃で少々痛い(戦闘、生活には支障皆無)。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:とりあえずこいつらに付き合うとするか
1:決断する
2:二人についていく。ただしアバッキオは警戒
3:承太郎たちも参加してるのか……
[備考]
※空条承太郎と空条徐倫の関係はほとんど気にしていません。気付いてないかも?
※名簿に目を通しました。
※二人の近くには【食糧の入ったデイパック】【地図など情報交換用のもの及び共通支給品が入ったデイパック】【上記の不明支給品の入ったデイパック】 が転がってます。
 詳しくは59話「わらしべ長者」参照。

【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:健康。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
1:決断する
2:ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
3:ティッツァーノ、チョコラータの二名からもボスの情報を引き出したい。
4:もしも仲間を攻撃するやつがいれば容赦はしない。
5:仲間達と合流。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。
※現在、ジョリーンのいる民家の窓に体を小さくして張り付いてます。
※不明支給品は本来ジョセフのものです。いまだ未確認です。

910 ◆Y0KPA0n3C.:2009/04/20(月) 21:46:44
投下完了しました。
誤字・脱字、矛盾点・修正すべき点、他気になる点などありましたら指摘お願いします。
一時投下スレにて指摘を下さった方々、及び支援を下さった方、ありがとうございました。

代理投下の方、よろしくお願いします。そして…ありがとうございます orz

911ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/20(月) 22:18:31
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『おれは前スレが容量オーバーしてたから新スレを立ててテンプレを投下していたと
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったらいつのまにか俺までさるさん規制を喰らって書き込めなくなってしまった』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    催眠術だとか超スピードだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


申し訳ないorz
◆Y0KPA0n3C. のさるさんもリセットされてるので自分でお願いします
重ね重ね申し訳ないっす……

912ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/28(火) 20:31:20 ID:m0UIjmqc
地図氏、毎度毎度更新お疲れ様! あんたのおかげでモチベが維持されるうう!!

そして絵板SGEEEEEEEEEEEEEE
エリナとダービーがセットで飾るなんて誰が考えたか!



エリナの「こ、ど、く、うぇ」が「こwwwどwwwwくwwwうぇwwwwww」に見えたのは俺だけだな

913ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/04/28(火) 23:25:26 ID:???
>>912
なんでもありなスレに書き込んだほうがよかったかと

914ぼくの故郷はアメリカだった ◆em4fuDEyHM:2009/05/07(木) 20:21:03 ID:WxER/Dw6
マイク・Oは生まれて間もない頃から『枷』を与えられた人生だった。
彼は子供のころから朝一番から外へ出て活発に遊び、ヘトヘトになりながら家に帰るのが日課だった。
家に帰れば母親がつくったスープを飲み干し、父親に今日の出来事を話す。
どこにでもあるような子供時代を送る、1人の少年だった。

「おいみんな、どうしたんだよ! 遊ぼうぜ?」

彼が最初に枷の洗礼を受けたのは、いつもと変わらない日曜日だった。
いつも遊んでいたはずの仲間たちが露骨にマイクから離れ、無視を決め込んだ。
マイクは『あいつの家のおやつを勝手に食ったのがバレたのか?』と唾を吐きながら家に帰った。
次の日、マイクはお小遣いを全額はたいて買った飴を友人に渡した。
マイクは仲直りの証のつもりだったのだが、友人は口を聞こうとしなかった。
口を聞こうとしなかったのは友人だけではなかった。
学校の先生も、近所のオヤジも、ボケ気味の婆も、マイクと口を聞こうとしなかった。

「ねぇパパ! どうしたらみんなと仲直りできると思う?」

マイクは晩御飯中に父親に相談するが、父は首を横に振るだけであった。
事情はわからなかったが、涙を流しながら抱きついてきた母をみてマイクは思った。

(ぼくはみんなと一生仲直りできないのかもしれない。ぼくがこの世界をそんな風にしてしまったんだ)

それからマイクは誰とも会話することもなく、青春時代をすごした。
両親とは毎日楽しく会話しているので寂しくはなかった。
周囲が冷徹な視線を送るのも、自分が招いた罰の結果と考えていた。
友人のおやつを勝手に食べなければ、もっとみんなと仲良くできたから。

(この世界にも大分慣れてきたな。絶えられない世界ではなかったんだ)

両親を愛し自然を愛し育ったマイクが、成人になったある日のことだった。
村で一番偉い長老に一家全員呼びだされたのだ。

「お前さんたちには悪いと思ってる。だがもう限界じゃ」

長老は自分たちに村を出て行く要求をしてきたのだ。
マイクには何がなんだかわからなかった。
わからなくて当然だった。
彼の故郷はとても閉鎖的で、情報が中々入ってきづらい場所だった。
“肌の色を問題視する”風潮が完全に広まってはいなかった。
だからこそ誰もが得体の知れない恐怖にかられて、マイク一家と距離をとっていた。

「若い衆が町まで行って調べてくれたんじゃ。お前さんたち一家はワシらを不幸にする」

謂れのない非難や風評が“事実”としてはびこる時代に、マイクは生まれていた。
どうして村を出て行かなければならないのか、マイクは納得できなかった。
この村の全てを愛しているというのに。この村の全ての敵意に耐えて生きていく世界を選んだというのに。
マイクの思いとは裏腹に、両親はあっさりと頭を垂れ、長老の指示に従った。

(今度は、故郷が無くなった世界に、耐えて生きなければならない世界なのか)

旅支度をすませ、村を後にしようとした時、1人の少女に話しかけられた。

915ぼくの故郷はアメリカだった ◆em4fuDEyHM:2009/05/07(木) 20:21:46 ID:???
「おにいちゃんは***なの?」

その少女はマイクのよく知る友人の娘だった。
聞いたこともない言葉を受けたマイクには、笑って答えるしかなかった。
少女は、金きり声を上げて走ってきた母親に連れられて、家の中に入っていった。

「マイク・Oです。なんでもやります」

それからのマイクの人生は、己の枷で実に苦しめられる人生だった。
就職はロクな働き口がなく、職についても真っ当と呼べる仕事は無かった。
昼は話したくもない中年女の罵声を浴び、夜は不当な理由で男からリンチを受ける。
全身を布で覆い隠しながら裏道を歩き、酒場のごみ箱を漁る毎日。
優しかった両親はすでに事故でこの世を去っていた。

(どこまで耐えればいいのかわからない世界だ。どうしていったいこうなった!? )

町に捨てられた新聞紙や、初老が営む古本屋で書を盗み、知識を蓄えた。
自分がなぜこんな境遇になってしまったのか。それを理解するには、全てが遅すぎた。
子供時代とはかけ離れた惨状に、マイクの怒りは勢いを増していた。
来る日も来る日も書物を漁り、ときにはページを破り食事の代わりにするほど、彼は没頭した。
すべては、この国に復讐するために。奴らのルールを知り尽くして優位に立つために。

(法とやらを仕切り、支配者気取りの世界にすむ政治家。今の俺は奴らを始末する世界にいるッ! )

極限にやせほそった身体と持ち前の知識を活動させて、マイクはとある政府関係舎に忍び込んだ。
マイクの目に最初に止まった高官らしき男の首に、ナイフを突きたてようと飛び掛った。

「見事だ。目前に接近するまで、まったく気配を感じ取らせないその動き。恐怖のかけらも感じられない」

しかし――暗殺は失敗した。確かに彼の両手はナイフを刺したはずだったのに。
マイクは捉えられ、逆に首筋にナイフを立てられてしまった。

「く……やはり栄養失調でまともに動けない世界だったのか」
「む? 随分と流暢な英語じゃあないか。***」
「その名で俺を呼ぶなッ! 貴様らがそんな風に呼ぶから俺はこんな生活を――」
「嘘をつけ。この屋敷は最新鋭の防犯措置をとっている。どうやって進入した? どこぞのスパイか?
よほどの教養がなければこの建物は突破できない。力だけの粗暴な奴らには無理だ」
「教養は大学に行かなければ身につかない世界か? 違う。本人の努力で身につく世界に教養はある」
「……名前を教えろ。私はファニー・ヴァレンタイン。議員の端くれだよ。少しお前に興味が湧いた」

ナイフは首筋を切ることは無かった。
代わりに、興味という名のナイフがマイクの心臓に刺さっていた。
この夜のマイクは久しぶりに暖かい暖炉の前で寝た。ゆらゆらと燃える火はマイクの心を溶かしていった。

(こんな夜もある……世界なのか)

数年後、マイクはアメリカ大統領専属SP部隊の長、および大統領夫人の護衛を一任されることとなる。

916ぼくの故郷はアメリカだった ◆em4fuDEyHM:2009/05/07(木) 20:23:33 ID:???


(あの方は周囲の目にも気にせず、私を重宝してくださった)

F-4から西へ。マイク・Oは身体に鞭を打たせる。
目指す当ては無い。あるのは忠義の思いだけ。
見た目で優劣を選ばない――まさに我が祖国の根底に流れる精神。
差別と偏見が渦巻いた世間に長い間、置かれていた青年は、このとき思い出したのだ。

そういえば自分が生まれた国は、自由の名の下に生まれた世界だった。

それを貫くのに、どれほどの理解と、どれほどの時間と、どれほどの心血を周りに注いだか。
ヴァレンタインは世の中をチェンジできる力とカリスマを持っていた。

(悪魔の手のひらへ探索を命じられたあの日のことは、忘れもしない)

とはいえ失脚を狙う過激な反対勢力の視線を感じ取れば、すぐに表舞台から舞台裏を回す配慮もあった。
ファニー・ヴァレンタインはマイク・Oにスタンド能力を授けることで、秘書から護衛官として代わる道を与えた。
チューブラー・ベルズによる大統領護衛の功績は反対勢力も黙らざるをえなかった。
持ち前の知能と言語能力も相まってか、理解者も増えていった。

“マイク・O、お前はあの夜このファニー・ヴァレンタイン大統領を殺したのだよ。重罪人だ。
 だからお前が望むのなら、いつでも俺の元を去っていい。できるのならな、フフフフ”

叩かれる憎まれ口がいつも嬉しかった。
家族のように話し合っていた晩のような楽しさがマイク・Oに戻っていた。
己が大統領に尽くすのは忠義なのか、それとも親愛からなのか。

「――あ、マイク・Oじゃな〜い! おッはー、 ごきげんよう♪」

それは、今の彼にはどうでもいいことだった。
地から登る朝日とは逆に地に沈む大粒の涙。

「お、お、お……」
「ちょ、ちょっとマイク・O!? 」
「お会いしとうございました、大統領夫人(ファーストレディ)……ごきげん、麗わしゅう」


マイク・O――彼の出身はアメリカ合衆国だ。






【市街地(F-3北西部とF‐2北東部の境目)/1日目/早朝】
【マイク・O】
[時間軸]:SBR13巻、大統領の寝室に向かう途中
[状態]:左足に銃撃による傷が複数。全身に打撲。右肘に擦り傷。疲労
[装備]:金属片(方位磁針の外殻)
[道具]:支給品一式(方位磁針を除く)
[思考・状況]
基本行動方針:大統領夫人(スカーレット・ヴァレンタイン)を護る。
1.!!!
2.大統領夫人を命を賭けてでも護る。 無用な戦いは避けたい
3.自分の身は護るが自分から襲ったりはしない(下手な逆恨みで大統領夫人を危険に晒さない為)
4.襲ってきた相手には容赦なく反撃する。
5.大統領夫人を襲ったりしないのなら別に誰かに協力するのもやむを得ない。
6.できるだけ大統領夫人と共に脱出したいが無理そうなら大統領夫人を優勝させる為最後の二人になったら自決する覚悟。
7.マウンテン・ティムとナルシソ・アナスイの二人を警戒。
8.マウンテン・ティムをはじめ、どういうわけか死人ばかりだが気にしない。大統領夫人を襲うつもりなら元同僚でも容赦しない。

[備考]
※名簿はチェック済みです。一通り目を通しました。
※マウンテン・ティムが「裏切り者」(ルーシー・スティール)をかくまった謀反人であることは知っているようです。
※ナルシソ・アナスイのスタンド能力『ダイバー・ダウン』の一部(罠の作成)を知りました。
※マイク・Oが進んでいる方向は次の書き手さんにお任せします。


【スカーレット・ヴァレンタイン】
[スタンド]:なし
[時間軸]:ルーシーに眠らされた後
[状態]:健康、多少の動揺、仮眠中
[装備]:スーパーエイジャ(首飾りとして)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1(本人は確認済み、武器ではない)
[思考・状況]
1:マイク・O、見つけた! 少し疲れた……
2:政府公邸に行けば、誰か助けてくれるかも? もしくは鉄塔に行く?
[備考]
※ジェイル・ハウス・ロックは制限されていました。ミューミューが仮眠をとったので能力が解除されたようです。

917ぼくの故郷はアメリカだった ◆em4fuDEyHM:2009/05/07(木) 20:31:49 ID:???
投下終了です。

これで終わりではありません。

918 ◆em4fuDEyHM:2009/05/07(木) 20:48:01 ID:???
2、3日後にまた投下します。

919ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/07(木) 21:44:24 ID:???
投下乙です。
まず気になった点をいくつか
・マイクの過去話。
本編でもキャラが完成する前に死んだのでどうとも言えないけど一応オリ設定なので他の人の意見次第かと。俺的には問題なし。
・ファーストレディの状態表
まだ仮眠してるw
今後の投下でどうなるか分かりませんがスカーレットの描写も詳しく読みたいところ。

そして感想。
数少ない?“目的を果たした参加者”マイク・Oに乾杯!最初はぷかぷかだったのにw
キャラ追加後のSSに期待せざるを得ない展開でした。乙!

920ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/07(木) 21:53:21 ID:???
投下乙です
すごく引き込まれました
オリジナル設定ですが矛盾も違和感もなかったです

ミューミューの制限がちょっと厳しすぎる気がします
本体が眠るだけで解除というのは流石にキツいのでは…
一定の敷地内のみの効果、ミューミューから離れると解除などでは
ダメでしょうか?

921ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/07(木) 22:08:38 ID:zaBIyhsk
投下乙って世界だな
過去話には俺も問題ないと思います
むしろ、今後マイクの過去はこの話で脳内補完されるでしょうw
再会を果たしたふたりですが、ロワ一のゲスと名高いハンサム顔も登場予定とのことで、一層楽しみです

922 ◆em4fuDEyHM:2009/05/07(木) 22:54:19 ID:???
>>920
ミューミューの制限は前回の話ですでに決められていましたので、こればっかりはどうにも。
あとジェイルハウスロックは人数を問わず発動させることが可能です。
むしろこうでもしないと永久にハメが成立してしまいます……。
ミューミュー引き篭もりで荒木顔面蒼白ロワイアルwww

923ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/07(木) 23:36:59 ID:???
気絶すると解除されるスタンドは結構あるな。

アレッシーやケニーG、ディスコ、ストレングス、オエコモバも(顔面ヒットした鉄球が爆発しなかった)。
スタンドディスクは本体が気絶すると飛び出す。
本体が眠ってもスタンドが発動するのは自動追尾型くらいじゃね?

924ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/07(木) 23:49:05 ID:???
ミューミューが徐倫をハメたときは数日は効果があったと思われる
その間ミューミューが眠らずにいたとは思えないんだよな
かなり強力な能力だから制限は仕方ないね

925ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/08(金) 17:41:31 ID:???
ヴァレンタインって遺体見つけてからトントン拍子でプレジテントになったんじゃなかったっけ?

926ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/08(金) 19:17:00 ID:???
>>925
マイク・Oと知り合った時期が、悪魔のてのひらを見つける前なんじゃね?
スカーレットが女学生としてヴァレンタインと知り合うのが15年前だから、トントン拍子ではない。
成人してすぐ出馬しても、ヴァレンタインは30代まで出世してない計算になるぞ。

927ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/08(金) 21:14:11 ID:???
最初確か軍人とかだったような

928ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/05/08(金) 22:23:29 ID:???
軍に所属していた頃に心臓発見→その後政界でのし上がる→今大統領
悪魔のてのひらの発見がいつ頃なのかはっきりしてないね

929Whatever she brings we... ◆em4fuDEyHM:2009/05/12(火) 09:52:59 ID:???
深い深い螺旋階段の底に、すやすやと眠るお姫様。
さりとて職業は、姫を茨の壁に閉じ込める魔女。
女看守長ミューミュー(ミュッチャー・ミューラー)は、無防備をさらけだしていた。

「……ん、う〜〜〜〜〜〜〜〜ん」

右手は重たい瞼をこすり、左手は筋肉を緊張させながら天高く伸ばす。
3時間ほどの睡眠も、激務の彼女にとっては貴重なカンフル剤だ。
しかし彼女は知らなかった。
手のかかるお転婆ファーストレディ、スカーレットがいなくなっていることに。
スカーレットが『ジェイル・ハウス・ロック』の呪縛から逃れたことに。

「――ん? ハッ!」

ミューミューのスタンド『ジェイル・ハウス・ロック』は相手の記憶能力を3つまでに束縛する。
痴呆と化した人間は、3つの思考を堂々巡りにして生き続けるのだ。
その能力は永遠に気づかれない絶対の非戦闘系最強スタンドの一角……のはずだった。

「あたし何で眠……あの女? ――まさかっまさかこの私にッ!? 」

バトルロワイアル主催者、荒木飛呂彦は彼女の知らないところで待ったを掛けた。
チートな力……このロワイアルに水を差す能力を、健全な状態で修羅場に巻き込ませるのは好ましくない、と。
今のジェイル・ハウス・ロックは欠陥品。ある条件下で自動的に解除されてしまうのだ。

例えば――本人が眠ってしまった場合。

「一服盛りやがったのかァァァァァァァ!!! 」

吼えるミューミューの膝元には、丁寧に置かれたウェッジウッドのティーポットセットがある。
彼女の支給品であり、美味しい紅茶が何杯かいただける優雅な食器家具だ。
わがままを言うスカーレットを宥めるために、何度も煎れてあげたというのに。
当のスカーレットは外出を静止していたミューミューを見限っていたのだ。

「あたしが隕石を見に行ってる隙に……クソッ、完全に油断してたッ!! 」

ちなみにミューミューが飲んだ睡眠薬は2分間で目が覚める程度の代物なのだが……。
スカーレットに付き合わされた精神的ストレスと紅茶の温かさが彼女の睡眠欲を増やしたことを、知る由も無い。
……だがミューミューは己に置かれている恐ろしい状況を理解し始める。
自分の意思でしか解除されない『ジェイル・ハウス・ロック』、その謎の不調。
そして第一回目の放送を聞き逃すという致命的なミスに。

930Whatever she brings we... ◆em4fuDEyHM:2009/05/12(火) 09:56:49 ID:???
■ ■ ■ 

川尻早人の頑固さに呆れ、説得を断念してから、はや数十分。
進路はH-3サンタ・ルチア駅から真っ直ぐ北に。
途中リゾット・ネエロとペッシの戦闘を遠目に確認し、現在地はF-3。

(仗助が死んで、重ちーが死んで、早人が生きてて……)

馬の胴にもたれて名簿にト書きをする男、ラバーソール。
彼の足元から首元に纏わり着くスライムのスタンド『黄の節制』は、縦横無尽に形を変化させている。
他人に成りすませるラバーソールにとって、他者の生死のチェックの比重は誰よりも重い。
うっかり死者に変装するようでは、この状況で生き残れはしない。

(次の変装に相応しい相手、よく考えねぇとな)

ラバーソール本人→空条承太郎に割れている→却下
ヴァニラ・アイス→外を歩けない→論外
片桐安十郎→どこかで殺人を犯しているはず→危険人物に化ける→却下
J・ガイル→片桐と同じ(特定の相手には使えるかもしれないが)→却下
川尻早人→本物が負傷して動けないのでアシがつきにくい(オイシイ!)→1人で馬に乗る小学生→微妙

(仗助のときは上手くいったが、アイツは俺の能力を知らなかったからな)

承太郎たちが俺の能力を誰かに話しているかもしれない→ジョースター一行に化けるのは危険
もし接触した相手が化けた奴の知り合いで、“スタンドを出してくれ”と言われたら→ウェザー・リポートも危険
近くでウロウロしている参加者(ペッシ)に化ける→あいつスタンド使いなのか?

(となると、こいつしかねぇよなぁ、『今』は)

『黄の節制』は大振りのマントに形を変え、悩ましげな顔を象り、長い一束の前髪に曲がる。
その姿はサンタ・ルチア駅で出会った策士ブラックモア。
雨が無ければスタンドが使えないと語っていた彼ならば、誤魔化しはききそうだ。

(ブラックモアの知り合いは、会いたくねぇな……)

ブラックモアがアメリカ大統領の護衛官の1人であること。17世紀生まれの人間であること。
彼の素性のほとんどをラバーソールは知らない。他人の身辺調査は変装を趣味とする人間の宿命なのに。
もっとも、彼の知る『他人』のほとんどが、素性の知れない者たちなのだが。

931Whatever she brings we... ◆em4fuDEyHM:2009/05/12(火) 09:59:07 ID:???
「――ひぃっ! 」

大きく開けそうになった口を慌てて抑えるも、防ぎきれず。
そんな印象を与える叫び声だった。
ラバーソールは有無も言わず、馬に飛び乗って手綱を揺らした。
馬の頭を声の主に合わせて、力いっぱい腹を蹴る。
自分のスタンドがぐねぐねと変身する姿を見られたと、ラバーソールは考えていた。

「ま、待って! そんな、ブラックモアなの? どうしてあなたが……死んだはずじゃ」

微かに聞こえた一言は、ラバーソールの手を強く動かした。
手綱を引かれた馬が、4本足を必死に踏ん張って勢いを止める。

(放送は、聞き間違えちゃいねぇ)

ラバーソールには天地がひっくり返っても気づかぬことだが、この言葉は真実である。
そして彼と邂逅した女性――スカーレット・ヴァレンタインの言葉も真実である。
彼女はブラックモアが死んだ後の世界からバトル・ロワイアルに召還されたのだから。
このブラックモアが本物であろうとなかろうと、スカーレットは同じ質問をしただろう。

「……すみませぇん」

ラバーソールは――真実には辿りつかぬが――彼の口癖をつぶやいた。
ブラックモアが早朝まで生きていたのは、彼の目が見た紛れもない真実。名簿にも認められている存在。
サンタ・ルチア駅から遠く離れたこの地にいた女に、何がわかるというのか。奴の死を語るとは。
この女が一杯喰わそうとしているのか、ブラックモアが己に何らかの形で一杯喰わしていたのか。

「心中お察ししますがぁ、私はこの通り健在でございます。申し訳ありませぇん」

ごくごく当たり前の気持ちを、ラバーソールは吐露した。
演技であろうと無かろうと、向こうが己をブラックモアとして扱うのならば、こちらもその様に振舞う。

932Whatever she brings we... ◆em4fuDEyHM:2009/05/12(火) 10:01:01 ID:???
「――お気持ちはわかりますが、ファンタジーやメルヘンのような物、ではない世界です」

例え、女の付き添いの男(マイク・O)が怪しげな風船を金属から作り始めても。
例え、女の付き添いの男(マイク・O)が怪しげな風船を鳥に型を取り始めても。
例え、女の付き添いの男(マイク・O)が怪しげな風船を犬に型を取り始めても。

「大統領夫人(ファーストレディ)に挨拶も無しとは大統領補佐関係者失格の世界だ。
 我が風船はお前が何者なのか調査し、かつ偽者ならば危険人物として処刑する世界を兼ねたッッ!! 」

ラバーソールは……7人同盟を結んだ時の行動を少し後悔し始めていた。
物騒な雰囲気から人様に話せない職業を持つ連中の集まりと先入観を持っていたことに。
まさか全身をコートに包んだ卑屈な男が、政府関係者と誰が考えるだろうか。

「お気持ちはわかります。礼を怠った事実は誠に申し訳ありませぇん。責は後ほど受けましょう。
 しかし……私にも解せない世界です。名簿をご覧になられましたか。私は確かに存在(い)ますよ? 」

いつものラバーソールならば、即座にこの2人を始末していただろう。
彼がわざわざ問いただしたのは、『ブラックモアが死んでいる』を疑わない人間の存在。
何を持ってこの2人は確証を得ているのか。
断っておくが、ラバーソールはこの謎が荒木の仕業である――例えば並行世界の統括――とは考えていない。
『他者の生死確認が彼の能力にもっとも重要である』ゆえに、ブラックモアの謎をはっきりしておきたかっただけ。

「ちょっとマイク・O! 名簿ってこれのこと!? どうして話してくれなかったのよ! 」
「既にあなたが読了している世界かと。名簿は不可解な世界です。確かにブラックモアの名が載っています」
「死人なのに……この世界に、どうしてあなたはいるの? あなたはいったい誰なの? 」

彼らの言う『ブラックモア死亡』は、この世界で起こった事実ではない。この世界に招かれる前の出来事。
ラバーソールは……この事実を(推測の域を出ないが)理解した時点で考えるのを止めた。
ブラックモアに関しては謎が残るが、早い話が『ブラックモア変装はリスクが高い』だけ。
ラバーソールの思考回路にある最優先事項決定は、まったく別の方向へとシフトし始めていた。

「私は何者であろうと大統領に使える身。必要とあらば大統領夫人(ファーストレディ)にお供しまぁす。
 怪しいと感じるのならば、今すぐ立ち去ります。我がスタンドは……雨が無ければ何もできませぇんので」
「そうだな……所詮、貴様は雨がなければ何も出来ない世界だ」

パカラパカラと踵を返し、北へ進むラバーソールの馬。
いぶかしむ2人に完全に背中を曝け出している。隙だらけだ。
マイク・Oの野次に振り向くことなく、ラバーソールは背中を見せ続ける。
捨てられる者の悲哀を背中で語ろうというのか。

「つまり雨が降る南に向かわない貴様は、偽者の世界ッッ! 」

933Whatever she brings we... ◆em4fuDEyHM:2009/05/12(火) 10:02:08 ID:???
しかし対応者はその背中に容赦なく鞭を奮う。
マイク・Oの『バルブ犬』と『バルブ鳥』の群れは一斉に巨大な得物へ襲い掛かった。
一度得物に触れれば、体内に入り込み、中で破裂を起こす。
風船は相手の体内を突き破り、まるで水風船が破裂するように、血を撒き散らす。
盛大に破裂する風船たちの断末魔に耳を傾ける、それがマイク・Oの日課。

「いいぞ!我がスタンド『チューブラー・ベル――」

今日も、日課は守られる。

「ううっぷぷ!? 」

聞きなれた破裂音のせいで、マイク・Oは判断が一瞬遅れていた。
風船は確かに割れた。ブラックモアに化けたラバーソールのスタンド『黄の節制』に食い込んで割れた。
ところが割れた場所は本体であるラバーソールの体内ではない。

「エメラルド・スプラッシュならぬ、イエロー・スプラッシュかね。警戒を解かなかったのは見事だ。
 さすがSP……気にすんな、背中からスライムの散弾が飛んでくるなんて普通わからねぇよ」

マイク・Oは自分の風船たちが『黄の節制』の飛沫にくっ付いて割れたことを理解した。
ラバーソールの匂いがついていれば『バルブ』たちは本体以外も追尾して割れてしまう。
たとえ金属による開放があれど、『黄の節制』には痛みも何もない。
顔に纏わりつくスライムを必死に取り除こうとするが、もがけばもがくほど深みに嵌ってしまう。

「やめろよ……お前はそのまま楽に気が遠のいて『逝く』だけ――だっ!? 」

そのとき、着々と集まり得物を絡め取っていた『黄の節制』が突然爆発と共に吹き飛び、周囲に飛散した。
爆発は一度だけに収まらず、何度も何度も地面や壁を破壊していく。破壊はラバーソール本体付近にもかすった。

「あんたウチの護衛官に何してんのよォォォーーーーーッッ!! 」
 
■ ■ ■ 

「このすけこましがァァーーーッポ○コチン削りとってやるッ! 」

まさかの反撃にマイク・Oは驚きを隠すことが出来ない。彼の想像を雄に越えていた。
その正体はスカーレット・ヴァレンタインの持つエイジャの赤石。
赤石が通した太陽光は威力を増幅させ、船のエンジンを破壊するほどの怪光線になる。
スカーレットは無我夢中で赤石の秘密を使い、手当たり次第に光線を撒き散らしていた。

「おかげで顔にくっ付いていたスライムがほとんど取れた世界だ」

マイク・Oの顔に覆われていた『黄の節制』は本体ラバーソールの援助のために撤退したのだ。
じゅるりと地を這う姿がなんとも情けなく、マイク・Oはいつの間にか笑い始めていた。
これではどちらが守られているのかわからない。護衛官としては名折れである。
とはいえ、スカーレットのお転婆ぶりを見て、マイク・Oはそれでもいいと思い始めていた。

934Whatever she brings we... ◆em4fuDEyHM:2009/05/12(火) 10:04:58 ID:???

「あれこそが、我らが大統領夫人(マイ・ファースト・レディ)」

スカーレットと早朝に合流したとき、彼女はマイク・Oの怪我を心配していた。
そっと傷口に触れる手は震えていたのを覚えている。彼女は恐怖してたのだ。
己の身に起こる事実が、夢ではなく現実だと受け止めねばならないことに。
今、目の前の敵を追い払っているが、内心はこの上なく怯え、逃げ出したいはずなのだ。

「野放しの暴力に屈せぬ毅然とした誇り、たれ。流石はあの方が見初めた女性ッ!! 」

スカーレットに、そして彼女の下で働いてる自分に誇りを馳せるマイク・O。
懐にあった金属の束を五指に挟み、口一杯に空気を吸いこむ。
ぷううーーっと膨らむ風船が、彼のやる気を比喩するかの如くムンムン拡大していく。

「ひっひィイイイイああああああああああああ……!! 」

スカーレットに追いかけられているブラックモアは、間抜けにもマイク・Oの射程距離に飛び込んだ。
飛び散るスライムに触れないよう、絶妙な距離をとってバルーンアートを象るマイク・O。
その形はアメリカに、アメリカの主たる女に捧げる特注の薔薇。

「拷問の世界は無い! 今ただちにッ! 処刑するうぅぅぅぅーーーーッ!! 」

薔薇は『黄の節制』を全て覆うほどの特大サイズだった。もはや逃げ場はない。
必死に逃げようともがくも、獲物は薔薇に押しつぶされて動くことができない。
これでは流石の『黄の節制』も中にいる本体ごとまとめて始末してしますだろう。
息切れを起こすスカーレットを抱えて、マイク・Oは風船から離れる。


バンッ


張り裂けた後の残ったのは
緋色に染まる地面とスライムだけだった。

「お疲れ様、マイク・O」
「お疲れ様でした、大統領夫人」

仰々しく改まるとマイク・Oは静かに立膝をつく。
家臣の礼に答えるかのように、スカーレットはしゃがみ、マイク・Oと目線を合わせた。


ゴキッ


そして優しくマイク・Oの首を折った。
天高く伸びる向日葵の茎をねじるように、大きく歪曲させて。
曲がった顔でマイク・Oが見たものは、先ほど自分が生けた薔薇の金属風船による残骸。
その中にある、スライムの塊から見える、長い黒髪の女。

「ガハッ……『彼女』は、ぞごのぞの『死体』は……何だど?……まざが…まざが……」

マイク・Oは知らない。
ラバーソールの『黄の節制』は単なるスライムではなく、変身能力も持ち合わせていることを。
ブラックモアが大きなマントを被っただけの服装なので、彼は気づけなかったのだ。
ブラックモアの全てがスライムから作られているということに。

「ぎざま夫人に何をじだぁぁぁぁぁーーーーー! 」
「とっくに入れ代わってたんだよ。お前が顔のスライム取ろうと必死になってる間にな。
 何のためにお前の顔を覆ったと思う? 一瞬でも目と耳の情報を奪うためだろーが」

スカーレットの反撃は完全にすり替わっていた。
エイジャの赤石の光線も、エイジャ自身が『黄の節制』に包まれてしまえば、太陽光を取り入ることができない。
赤石をスライムで包んだ後、スカーレットの身体全体を覆ってしまえば、呻く人形となる。
ラバーソールはスカーレットに成りすまし、赤石で追い詰めれば、スライムから逃げ惑う餌がマイク・Oに接近する。
マイク・Oに『ブラックモアらしき者』が近づいてきたのは至極真っ当な行為だったのだ。

「てめーでてめーの主人サマ殺しちまったら……世話ないよなぁ!? ヒヒヒヒヒヒヒヒ! 」
「う゛お゛お゛お゛お゛ーーーーーーーーっ」
「ゆっくり寝てな」

スカーレットは部下に助けを求めていた。懸命の抵抗していた。
それなのに家臣は主人を――。


ゴキャリ


「……かはー……」

任務はこれにて終了。護衛官はうめき声を上げて地に伏した。反転させた首が虚ろに宙を仰ぐ。




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