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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

712深紅の協奏曲 ―独奏、王へと届くこと願い 3―:2018/02/10(土) 22:34:14 ID:t3B0wPOI0
「待ってってってばー」

 白々しく笑顔を浮かべて燐が追いかけてきた。少し先の家屋の陰に滑り込み、ディアボロは彼女の出方を伺う。接触が可能であるなら、僅かに離れ、人に見られぬところが良い。
 程なくすれば、いつもの押し車を傍らに燐が顔を出す。

「お兄さんったら、まったく面白いところに顔を出すもんだねぇ。さとり様に誘われた直後だってのに、こんなところにまで来るなんて、ねぇ。……くふふ」
「……頭の中に引っかかることがあってな。一応は解放された身だ、自由を得たのなら拭い切れぬ違和感は確認しておくに越したことはない。……あのネズミがいればもっと楽に事は進んだのだが」
「あぁ、あのネズミねぇ。なんで先に帰っちゃったんだろうねぇ」

 何も他意がなければ、絶やさぬ笑みは彼女の魅力と捉えることができるだろう。青ざめた意思を持った時も、その表面は笑顔を繕っていた。最初の邂逅でも、心配を過ぎれば同じ笑顔を取れるようにと常に声をかけていた。共に過ごす時間をより良いものであろうとするその努力はそれは良いものだ。
 ……だが、今はそれだけでは済ませない、終われない。

「いやー、しかしお兄さん、こういうの興味あるんだねぇ。まあ都でも使うのはちょこちょこいるんだけどさ、いきなりこっちまで来ると思わなかったよ。土蜘蛛さんとかから仕入れればよかったのに」
「……上では使われているのを見なかったからな。陰では使われていた、のかもしれないがそれでもここほど大っぴらじゃあなかった。……それに、ここは籠りすぎている」
「こもり?」

 キョトンと、大きめの目をさらに見開いて愛嬌のある顔をこちらに向ける。

「始めに橋姫とやらが使っていた。そこで気づいてからはもはやこの街にはその匂いで染まっていることに。随分と簡略的になっている、だからこそ誰も彼もと使われているんだろう? お前も、その一人ではないのか?」

 その猫の瞳に向けて問い詰める。
 開いた眼をきつく細めると口の端を少し歪ませ、小袋を車から取り出す。中からは小さな筒状のものが二つ。

「違う違う、あたいはこういうのあんまり好きじゃあないんだよね。たまに使う分にはいいけどさ?」

 くるくると手で弄びながら、笑みを作りながら言葉を続ける。その笑みは愛想を振りまく笑顔ではなく、上下を理解させるために見下ろす笑顔、愉悦に浸るための笑みに代わっていた。

「ずっと使うほど病みつきになってはないんだよ。それだったらお酒かマタタビのほうがまだいいなぁ。猫っていうのはそーいうもんでね。まー、テキトーな時には使うよ、これは、悪いものじゃあないからね。……で、お兄さん」

 燐の雰囲気が変わる。変わった笑みに基づく暗い空気。返答次第で対応が今後大きく変わるぞ、という意思表示。

「随分容易にこういうところまでたどり着いたよね……『知っている』みたいにさ」
「当然だ。馴染みの深いものなのだから。追い詰められた者たちを容易に底辺に張り付け、またそこから利益を吸い上げることができる。雑巾の絞りかすどもは苦しくも恨んでも地べたを這い続け、それでも吸い上げられることしかできない……流通させる一つの面は『ソレ』だ」
「……ほーう?」

 それを受けて、敢えて饒舌に。臆することなく、押されることなく。かつての経歴をほんの少しさらけ出す。

「奴に相対している以上内面が読まれていることはわかっている。その部下のお前がどういう理由で俺の前に立っているかもおおよそ。こちらを探ってみて、最初から思っていたが、お前の登場で確実となったよ。そういったものの流通が、治める者にとってどれだけの事案であるかはよくわかっているからな」
「うーん、うーん……」


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