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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6
711
:
深紅の協奏曲 ―独奏、王へと届くこと願い 3―
:2018/02/10(土) 22:33:39 ID:t3B0wPOI0
「やあやあ、そいつはちょーっと、ちょこーっとだけまずいかなあお兄さん」
入口から声が聞こえる。足音は聞こえない、いやかなりの小さな音。その声は、少ないが聞いた覚えのある高さ。自分に権力が無くとも、自分の仕える者が高みにいることを十全に理解している、笠に着た賢しい者がだす猫なで声。
「ここで話すことはないのはいいんだけどねえ。それだけならいいんだけどねぇ……いやぁ、相も変わらず酷い臭い!」
現れる前では常に傍らにあった押し車はさすがに持ってこれなかったのだろう。空いた手は立ち込める悪臭を抑えるための布を持つのに使われている。
蔑みを込めた声と共に、さとりのペットの一人が顔を出す。
「……おまえ」
「あはは、皆さんお勤めご苦労様でっす。お兄さんも奇遇だねぇ、こんなところで会うなんて。……こんな、場末のところで、さ」
含みを持たせるようにもったいぶり、顔の半分は隠れていてもにやついているのがわかる。偶然を装って、しかしそれは吹けば飛ぶような演技で。……あの飼い主に似るように。
「……お前た、ちが、押し込んだくせに……」
ゴミ袋のように縮こまっていた一人がぽつりとつぶやく。突然の喧騒に消え入りそうだが、それは確かに聞き取られたのだろう。燐の頭についている二つの耳がどちらもピクリと動く。
そのまま、しっぽをゆらゆらと揺り動かしながら、そちらには特に気にかけない様子で、
「赤河童さんも大変だろうにねぇ。売り子だけじゃなくてここにも顔を出さなきゃいけないなんて。あたいは何も言わないけどさ。もちろんさあ!」
「……けー」
より面倒になった、と赤河童と呼ばれた少女は顔をしかめ目線をそらす。燐は変わらず笑みを浮かべ続けたままだ。
彼女の登場で、新たに調べることもできた。また、入手も難しくなっただろう。……もちろん、それが彼女の狙いなのだろうが。
どちらにしろ、今ここで足を止めている必要はなくなった。入口からこちらに向かって歩いてくる彼女の横を通りこの空間から抜けようとする。
「おっとっとお兄さん、あー、河城さんやいつもの2本もらっていくよ。待ってってばー」
「あ、おまえ!」
ディアボロを追うように、赤い少女からひったくる様に何かを受け取ると、そのまま後を追ってくる。
結果、二人があの空間から出ることになった。……ディアボロはまだ何も得ることはできないままに。
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