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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

710深紅の協奏曲 ―独奏、王へと届くこと願い 3―:2018/02/10(土) 22:33:06 ID:t3B0wPOI0
 幼い声が辺りに響くのと共に目の前の男の動きが止まる。男の身体で塞がれていた視界の陰には、小さな照明を持ち、中に射線の入った赤い丸のついた得物を携えている少女がこちらを向いている。視線と共に得物を向けて。
 おそらく、先ほどの声も彼女だろう。自分の身の丈ほどの得物をこちらに向けているまま、手に持った照明を床に置く。僅かな光でしか灯されていなかった部屋に十分な量の光がもたらされ、辺りの状態を詳しく教えてくれた。
 いくつかのごみ溜め、そこに寄り添うように横たわる者。膝を抱え座り込みながら厄介事を避けるようにこちらを見つめるもの。我関せず、眼前の器具から焚かれる煙を吸い続ける者。直接体内に取り入れるための機器と共に倒れ伏している者。
 一様にして貧者と形容するにふさわしいまともな状態のものはなく、もはやそれらが生物なのかどうかほども怪しいところだ。……だから猶更健常なディアボロも浮いて見え、また奥から現れた赤の少女も彼らに馴染まない、目立った汚れのない姿だった。

「ここでは厄介事は禁止だろう、何のために私がいると思ってるんだ。傷の舐め合いはいいけど糞のぶつけ合いはやらないんだろう?」

 襤褸を着た男の背中をとんとんと突くと、胡乱げな顔のままゆっくりと手を下ろし、威圧するかのように床にずだ袋を叩きつける。辺り一帯に埃と粉塵が舞い上がり、否応にも二人の呼吸器を汚そうとする。
 最も、それはディアボロだけであった。少女は顔全体を布で覆い保護している。むせこむディアボロに対して空いた手で下がるように手を払う。

「お前さんも帰りな。偶然でこんなところまで来るなんてありえない、誰かの紹介だろうが……人間に流す物は無い。お帰りはあちら」

 少女の素振りは交渉の余地はない、と雄弁に語る。自らの意思とは裏腹に強制されているような感覚をも覚える。
 だが、それでおいそれと引き下がるわけにはいかない。それほどことは単純ではないのだ。

「吸煙のものだけかと思ったが……それは一般に出回っているものだけか? そいつらが使っているものは原料は? ……精製が甘いのは、それは知識がないだけか?」
「……何言ってんだお前」

 顔は半分見えないが、それでも言葉尻と目に浮かぶ表情は疑問。だが、周りの空気は一瞬どよめく。

「察しの通りただの人間だ。妖怪だか何だか知らないがそれらに溺れている姿を見てしまえばお前たちも人間と大差ないように見えるがね」
「だから何が言いたいのさ」

 相変わらずわかったような顔をしていない少女だが、周りは聞き耳を立てているのがわかる。
 求める理由は様々だろうが、結局のところ更なる快楽を求めているのだ。それは生きる者の全ての欲求の根源。

「……何も。言われた通りここから去ろう。正規は別だということが分かった。お前には何の権限もない、ならば話す必要はない」

 だからこそ一度去る。敢えて内側を見せ、周りの反応を窺う。変わらず赤の少女は大きな反応はない。厄介事が去ろうと清々している様子すら感じられる。
 周りの者は別だ。より深く、じぃっと粘つくような視線を飛ばしてきている。先程の襤褸を着た男も敵意の中に別の意を乗せている。
 あとは掛かるのを待つだけ。そう考えたところだった。


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