したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

71深紅の協奏曲 ―嘘と真の三重奏 3―:2014/03/24(月) 16:13:51 ID:V1cqd/cI0
 口調は柔らかいし、本当にそれをやるかどうかといえば、やれないだろう。見た目や発せられる声色は完全に幼女レベルのそれである。
 だがその自信に満ちた堂々とした物言いは確かにただの子供のそれではない……が、にわかにはやはり信じられない。
 そんな空気を感じ取ったのか、あわてて取り繕うようにはたては弁舌をふるう。

「いやいや、大したことじゃないんですよ、本当に。私たちが熱くなりすぎただけで。
 こいつ、ドッピオって言うんですけどね。外来人だけどよくわからないところがあって。それで早苗に聞いてみればわかるかなーって。
 ほら、私ら幻想郷出身の者は外の世界の年号とかあまりに興味湧かないんでほとんど知らない、けれど彼がそれと今を照らし合わせたくって。だからー、早苗さんをねー」
「……あぁ、なるほど。それで。……ふーん」

 はたての口が動くたび、諏訪子の表情が曇り、目の色が暗くなる。それは明らかに不快の印。
 その顔がふ、とドッピオの方に向けられ、すぐさまはたての方に変わる。
 ひゅ、と息を飲む声が確かにドッピオの耳に聞こえた。

「……怒られて、マス?」
「怒って、ます。以前言ったよね、早苗そのこと思い出すの辛いから触れないで欲しいって。神奈子はともかく、早苗にそんな思いをさせる奴を不快に思うって。
 わざわざ思い出したくない物を掘り出そうとする、気の触れた盗掘師の様な事、してほしくないって。言ったよね、天狗」
「えぇ、えぇ。言われましたとも。でもですね……」
「まだその口を回すのかい? 不敬とまで取ってあげようかね。それとも鼻から下を取ってあげようか」

 冷めた目で見つめられているのははたてだが、それでもその刺すような空気に巻かれるのがドッピオにも感じる。
 確かに小さな成りをしていても、なるほど神と言われれば納得できるような場数を踏んでいるだろう。
 だからといって自分の前に転がる真実を見逃すわけにいくだろうか。
 そう抗議しようと一歩を踏み出そうとするドッピオの前を、はたての手が遮る。

「不敬と取られても結構です。早苗の過去を尋ねるのも、それを嫌う者がいることも承知の上。承知の上で外来人であり出自に悩む彼を連れてきたのはこの姫海棠はたて。
 もちろん他の方法もあるでしょうが、一番彼の望む答えを待つ道はこの道のみ。早苗はまだこのことを理解せずとも道を指そうとしてくれています。それを邪魔するのであれば洩矢神であろうと」

 そこから先は言わない。まだそこまでならポーズで済むから。
 そして、そのポーズは一代の賭けとも思うほどに。
 思わずドッピオははたての表情を見やる。とても、こんなことをする者ではないはずだと思っていたから。
 諏訪子を見据えるはたての顔は、どこまでも真剣で、どこまでも強情で、そして、ドッピオにだけは優しさを感じる顔だった。

「…………」
「…………」

 数秒のにらみ合い。
 二人ともその点では固かった。
 共に譲る気の無い一点。

「諏訪子様、起きられていたのですか」

 その合間に割り入る早苗。胸に、少し擦り切れ、色褪せた本を抱いていた。

「早苗。今聞いたが、いいのかい? 私はいつだって反対だ。自分で辛いと思うのならやめればいい。前へ進むことではなく、後ろに振り返ることならば。
 もし嫌ならば、私が早苗の代わりに断ろう。早苗は嫌だと言えないタイプだ、同情とかそういう気持ちであるのなら――」
「大丈夫です」

 早苗は無表情に答える。その姿は強がり、にしか見えない。

「早苗……!」
「待たせてしまってすいません。……お話ししましょうか。さっきの事はもう聞きました?」
「あー、いや、まだだ。……それに少し時間をもらっていいかい」
「わかりました」

 二人の間に飛んでいた火花は早苗が入ったことで鎮まる。
 はたては改めてドッピオに振り向き、自分より頭一つ下にある彼の顔に高さを合わせた。

「というわけで、まずは話しておこう。既に起きた事実、幻想郷だけでなく、この宇宙を巻き込んだという事変を。
 真相は一部の大妖しかわかっていない。私もなぜ起きたか、その結果幻想郷の外はどうなっているか。それを全てはわかっていない。だから、事実だけを話そう」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板