したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

698深紅の協奏曲 ―独奏、王へと届くこと願い 2―:2017/10/19(木) 15:47:17 ID:4Bs0obxg0
「……あん? ……なんで逃げる?」

 姿を見せていないにも関わらず、その声は猜疑の念を含む。
 物音は僅かだが立ってしまうだろう。しかしそれは喧噪に巻き込まれ消えていくはず、かつまだ実際に離れたと称することのできるほどに動いてたわけでもない。小さな足摺りを、それから離れようとする心を読み取っている。
 浮かぶのは、僅かな笑みを浮かべた醜悪の体現。先刻出会った屋敷の主の顔。しかし、あれに類する力を持つ者がそれほど頻繁にいるとは考えにくい。
 予知に目を通す。……そこには動かず、佇んでいる自分の姿。

「体格、足音、重量……人間かい? もしかして、勇儀たちとやりあった」

 それが示すのは対話。互いに顔を合わせる訳でもなく、しかし情報のやり取りは行う。確かに相手はこちらに気づき、その詳細に手を伸ばそうとしている。
 だが、そこまで行き着いたことは認めるが、そこまでなら誰でも行きつける。決して相手だけが特別なものではない。
 僅かな期待が湧いてくる。脚を止め息を殺し、動かないことで相手の二の次を待つ。

「……動かないね。図星かな? まあちょうどいい。さとりから殺すな、逃がすな、とお達しが来てる。あんた一人でそこらをうろつくよりは私の所に来たほうがいいんじゃあないかい」

 待ちに徹した結果は、想定の一つではあるが面倒な側面を持つ内容。自身との対話を求めていたさとりだが、縛り付ける楔は緩やかだが確実にディアボロの周りを取り囲んでいた。
 生け捕りとまで行かないところに疑問が浮かぶ。従属を望まず、あくまでの対等を望んでいるつもりなのだろうか。
 そして、殺すなというのに、身を案じる言葉。相手も何を考えているか伺い知れない。

「…………」
「返事がないねぇ。まあいいや、私は今からそっちに行く、会うのが嫌ならそのままどこかへ消えな。でもさっきの話を詳しく聞きたいのならそのまま止まりな。酒でも飲みながら軽くお話ししようよ」

 こちらの心境とは裏腹に明るい声色でのこのこと近づいてくる音がする。相手が何者かの仮定を自分の中で決定し、疑うこともせず。
 近づく相手の様子を伺い見る。黒い下衣から茶色い上衣を身に着けた薄闇の中では溶け込みそうな姿と裏腹に蓄えられた明るい金の髪が特徴的だ。それは、闇から迫り害なす虫や獣、相手を狙う無感情の瞳を想像させる。

「止まれ」
「おぉ? 意外と恥ずかしがり屋さんかな?」

 静止の声かけに、相手は素直に応じた。その場で腰を下ろすと懐から何かを取り出そうとする。

「……待て、何を取り出そうとしている?」
「えぇ? 何って、一服やろうとしていたんだけど」
「やめろ、不用意なことはするな」
「……それは脅しのつもりかい? まぁ、やらかしてるんだからあんたが慎重になる気持ちはわからなくもないがねぇ。……けどさ、あんたは妖怪を見くびってないか」

 懐を探る手は動いたまま、休めるつもりもない。直接に視認はしないが、その様子はこちらを歯牙にもかけていない、という自信の表れだ。
 気には食わない。拳から足裏まで、ゆっくりと力が走る。だが、それでも頭までは熱を通さず、そのままディアボロは語り続ける。

「いいや。恐ろしさは身に染みている。自らの領分を超えぬ、踏み入られぬようにするのは当然だろう」
「そこが甘い、って言ってるんだ。姿が見えようが見えまいが、あんたが私を認識できる範囲にいるならあんたを害することなんて造作もないって言ってんの。あんただけの領分で考えている程度じゃあ、それを容易に踏み越えてくる奴なんてここには大量にいるってんだ。……たく、教えを請おうっていう態度じゃないね」

 手のひらに収まるほどの小さな箱から、一本の煙草と打ち金を取り出し、かつかつと打合せ音を立てる。咥えたまま顔を落とし、僅かな目線だけがこちらを窺っている。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板