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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

688深紅の協奏曲 ―独奏、王へと届くこと願い 1―:2017/07/28(金) 20:33:25 ID:JHQpBNUw0
 足を引きずりながら、橋から都へとディアボロは戻っていく。
 悲鳴の一つもなく、まるで環境音のようにただただ家屋の破壊音が響いていた道程は人々の喧騒が少しずつ戻ってきている。

「担架組めー! ケガ人は一まとめに集めろ!」
「どこだ、ボーンナム! 生きているなら返事しやがれ!!」
「火を消すついでに周りのもんまでぶっ飛ばすんじゃねーぞ!!」
「さあさあ活気出して活気! 食べれるのたくさん作ってきたよ! こんな時だからお腹に入れておきな! ちょっとの悪用で元気になれるさ!」
「え、いや私は地上に戻らないとそろそろやばいし……あーもうわかったわかった! やるから服引っ張んないで!」

 大惨事の直後だというのに、すぐに復興へ向かっている。来てすぐに鬼の首魁とのやり取りで、先程の惨事が起こると大々的に知られている。そのための準備をしていたのか。
 だが、少ないとは言い切れないほどの被害もあったはずだ。それらを容易に受け入れられる土壌があるのか、それとも忘れようと、見つめないようにしているのか。関わり合いになろうとしないディアボロにはわからない。
 身を隠すように、物陰に隠れながら一歩、一歩。自分に全く非がないと主張はできるが、感情はそれを容易く理解させない。何の因縁をつけられるかわかったものじゃない現状、誰にも見つからないように進もうと考えていた。幸いにも遮蔽は多い。……皮肉なことだ。
 地霊殿へ向けてゆっくりと、ゆっくりと身体を引きずっていく。ただ、首謀の姉に問うために。災禍の中心、そのよく似た姿に問うために。
 しかし、意志に反して身体は徐々に動きを鈍くし、次第に立ち上がること、維持し続けることすら困難となる。
 恐怖に捕らわれ、限界を忘れて酷使した身体。負傷はなくとも脚も腕も体幹も、平時なら早急に休息を必要とする状態。
 そして、折れかかった心。
 幾度も、何もできなかった無力な自分、恐怖という渦に溺れてただ流されただけだった自分。その事実がじくじくと胸を蝕む。
 一方的、調子の良い下らぬ期待だったが、それは確かに自分に向けられていた。やり方には難を示すが、それでも住人たちは早期の解決のために名も知らぬ自分に期待を寄せていた。ただの贄として終わるのではなく、解決し、そしてお前も生きろと。
 それがどうだ。ただ逃げまどい、たどり着いた先。結局あの橋姫と呼ばれていた女が一人で解決した。あっさりと。全てわかっていたように。全く解法を得られなかった自分を嗤う様に、ただ自然に身を任せるように。何てことの無いように。
 外部とのコミュニケートを遮断していたように見えるあの女が実際に言いふらすことはないだろう。自身が生きていたことを知れば、あの男は生き延びて終わらせたと認識されるかもしれない。それでも、事実は違う。立役者は結局あの女だ。……何もできなかった。
 その二つがディアボロの足を鈍らせ、ついには膝折り、崩れさせる。

「……はぁ、……はぁ」

 長い溜息が思わず漏れる。早く行かなければ、という焦燥感が頭を支配するが、休息に浸かってしまった身体を動かす為の信号が、首から下へ届かない。
 横たわりそうになるのを抑え、何とか崩れた家屋にもたれかかる。そのまま溶けて眠りそうになることを何とか耐える。……こんなところで眠ってしまえば、そのまま目覚めないかもしれない。
 休んでいる暇はない。休まなければ持たない。その二つがせめぎ合い、それでも現実は動くことすらできなかった。

「はぁ……、…………」

 なぜ自分はここにいるのだろう。
 地に堕ちた自分が垂れた糸につかまり、這い上がり、再起を望むために立ち上がり……しかし、その先を見据えようとしたがために、今躓いている。
 こんな様では、もし当初の通りに進んでも立ち上がることもままならず、きっと吸血鬼にも相対することができないだろう。……命を拾えたともいえる。
 そう思い、ディアボロは首を振る。こんなことを考えてしまうほど落ちているのか、自分が嫌になる。とてもではないが、帝王と再起するために立ち上がった男の思考ではない。目の前の僅かな生に心を奪われている程度では。
 自分の手のひらを見つめる。……必死の中に拾った命を喜ぶように震えている、その手は見慣れていたはずなのにとてもとても小さく見える。ディアボロには、不甲斐ない自分を見つめているようでたまらなく悔しかった。

 そうして目を落としてはじめて気づく。……自分の様子を窺っている存在に。


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