したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

681深紅の協奏曲 ―21世紀の精神異常者 1―:2017/06/16(金) 23:52:36 ID:KK2/dTk.0
「くそっ、やっぱりこうなっちゃうかねぇ!」

 悪態を吐きながら、迫りくる暴力、大の男に匹敵する巨大なだんびらを振りかざした鬼の身体に、それを上回る力で返す。
 何も表情を浮かべないその男の顔は苦しさを感じているかもわからない。
 正面から来るそれをいなせば、また背後から大物を持った男が襲ってくる。
 一瞥、力強く後ろ周りに蹴り飛ばせば、また苦しさを吹き出しもせずそのまま砲弾のように吹き飛び、辺りを巻き添えにする。
 闘いの音に、炎に飛び込む蛾のように、能面のような顔の者たちが集まってくる。

「私ら鬼ならこれくらいで構わないんだけど……」

 今の状態、基本的に地底の妖怪の大部分を占めている鬼たちにとってはあまり変わらない。勇儀の支配下の者たちなら特に。
 彼らは足るを知っており、一番の欲求である人と関わることが今はもうできないことも知っている。だからこそ、地底に居を移しそこで楽園を築いている。
 皆、本能的な享楽と自らに成し得る強さへの求道に心を置いている。
 故に、今の無意識に支配された地底の空間、首領たる勇儀に力比べを挑まんとする者が後を絶たない。
 それ自体には、勇儀も嬉しく思っている。彼女とて常に共に歩む者を求めている。自らに並ぶ者を待っている。いつもは尻込みしているような奴が立ち向かってくるその姿に、ケツを叩かなければ立ち上がってこなかったその姿にこみ上げてくるものがないわけではない。
 だが、地底に潜む者はそれだけではない。

「!!、やめ……ときなぁっ!!」

 また一人、向かう者を引きずり倒し、『それ』に向けてぶん投げる。倒れ伏した同胞に群がる矮小な者たちは、それらを避けようとせずそのまま巻き込まれて消えていく。
 強者である鬼たちを疎み、しかし群れても立ち向かう事すらできないことを知っており、だから身を寄せ合い傷を舐め合い続ける弱者もいる。
 彼らは皆必ず口を揃えるのだ。『あいつらがいなければ俺たちの思うがままなのに』。
 そんな彼らを迎え入れようとしても、低姿勢におべっかを使いながら、それでも心の中では舌を出して近づこうともしない。鬼の目には彼らは皆共感に値しない屑どもだ。
 しかし、今は別。鬼たちがそんな屑どもを排除しなかったのは、本当に集まり立ち上がれば自分たちに匹敵することを知っているから。弱い者達でも集まり、知恵を集め、立ち向かえば自分たちを下せることを知っているから。
 ……奴らがまた、死体漁りに襲ってくる。今ならできると。疎んでいる奴らを消してやりたいと思ったその時、すでに行動は終わっている。抑えられていた無意識に、身体を動かされている。
 だからと言ってむざむざ喰われる訳にも食わせる訳にもいかない。手に届く範囲でなら、それらを蹴散らそうとは努力する。
 むなしいかな、広い広い地底では、いくら勇儀の大きな身体でも、小さすぎた。

「あっ、お前……こんのおおおぉぉぉ!!!」

 乱暴ながらも同胞を守ろうとする勇儀を嘲笑うように、また一人と鬼が喰われていく。周りはそれを止めようとしない。周りの目には、自分の無意識の果てしか見えていないからだ。きっと、己が喰われても思いの先を優先するだろう。
 地底を浸す無意識の水を、持ち前の矜持と精神で勇儀は抗っていた。だが、それでも完全ではない。組み合い、競い合い、高め合いたい。同じ歩幅を求めるが故の力比べは、籠めようとしない力の限りをその両腕に注ぎ込まれていく。
 だからこそ手加減ができない、抑えられない。向かう者向かう者すべてに全力で迎撃する。頭でわかっていても、自分に負ける者が喰われていく様をみても、どこか心で思ってしまう。無意識の内、弱者は喰われて当然だと。
 意識して抑えようとしても、止めどなくあふれ出てくる。歪な容器に蓋をしても、漏れ出る意識が抑えきれない。そして、半端に理解できるこの現状、勇儀は勇儀自身に腹が立つ。
 崩れた家屋の材木をそのままに振るわれ、それを片手で受け止める。間髪入れずに他方面からも巨大な丸太のような腕が振るわれ、それも空いた手で受け止める。闘いは、最初から星熊杯を携えていなかった。

「あーもうっ!! 一体いつになったら終わるんだっ!!!」

 全く無遠慮に打ち込まれた双撃をそれをも上回る、瞬間的に腕が膨れ上がるほどの怪力が、相対者へ振るわれる。互いに違う回転を籠められ、その間に存在する全てをも巻き込んでいく。
 前回起きた時も、勇儀には結局待つことしかできなかった。こいしが自身のほうに向くことはなく、また靡いた相手もおそらくはなすがままにされたのだろう。
 今回もそうなってしまうのだろうか。もしそれより長かろうと短かろうと、興奮に滾る脳が流れを曖昧にする。終わるまでは長く感じ、終われば短く感じられる。きっとそうなるだろう。
 諦観すらも持ちながら、ただただ目の前の対処に勤しんでいたその時、


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板