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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

664名無しさん:2017/04/30(日) 02:33:32 ID:mRK9UJvU0

「……おにいさん、私の能力を知っているの?」

 顔の色が入れ替わった。先程までの不安と苦悶の顔ではなく、好奇を得た顔に。紅に塗れたそれは変わらず、それでも笑みを浮かべている。

「うれしいなあ、私のことを知っててくれて。うれしいなあ。……でも、どこで知ったの?」

 顔周りと違い傷のついてない手が一つ二つと首元の、ディアボロの手と重なる。固く骨ばった自分の手と違い、先まで整えられた華奢さと未成熟な肉感。

「私のことを知っている人はいないの。誰も私のことを知らない。……ううん、違う。一人知っている。なんで、おにいさんが知ってるの」

 それらが根付いている元の袖から一つ、二つ、三つ四つと青色の管が伸び、主の手と同じく彼の手を包み込もうとする。それは、違いなく彼女の閉じた瞳と同じ色に染まっている。

「またお姉ちゃんね、またお姉ちゃんが余計なことをしてくれたのね、また、私の事なんて何もわかって




 穏やかさをも湛えた笑みを浮かべていた瞳は徐々に暗く淀み、何かを呪詛のようにぶつぶつと口走り、縋るように組み付いていた手と管は握りしめるように力を籠め始める。いや、籠め始めていた。
 その拘束が完全となる前に、地霊殿は崩れだす。それは、ディアボロだけの感じうる感覚。時間を飛ばしている間、自分だけの世界。その中では、あらゆるものが自分を縛らない。
 掴んでいた手を放し、纏っている管から手を引き抜く。縛られた枷を失ったこいし当人は緩やかに未来への軌道を描いて落ちていく。数秒もすれば再び床に転がり、対峙している相手がどういうものなのかを理解するだろう。
 理解は一瞬でいい。今まで曖昧にしていた彼女の未来を、ディアボロは先ほどの行為で決定させた。
 血の繋がりとは本来尊いものであり、それを害するものは私刑を持ち出してでも償わせられるほど重いものだ。……その感情を、ディアボロは理解はしても持っていなかったが。
 故に、さとりが『殺してもいい』と言ってはいたがすぐには実行していなかった。実際の亡骸を見て意志を変えるものなど、腐るほどに見てきた。
 だが、こいしは彼の領域にやすやすと踏み込んできた。

 だから、殺す。

 ゆっくりとこいしの後ろに回り込みながら、キングクリムゾンの拳を握りこむ。刻み始めた時、頭蓋を砕いたらさすがに妖怪でも死ぬだろう。脳をすり潰せば思考の元は絶たれるはずだ。

「…………何ッ!?」

 相手の頭を注視していなかったら気づかなかったかもしれない。ただの思い込みからの錯覚かもしれない。
 しかし、それはディアボロにとっても初めての現象であり、この極限で見過ごすわけにはいかない事実。もし、同じく時間に干渉する能力者がいれば立ち会えたかもしれない。
 自分だけの絶対の空間。その常識が崩れ去る。偶然に向いただけ、などと曖昧な答えに縋りつけるほど愚物ではない。
 僅かに、しかし確かに引き下がる。相対していればなんてことないと思っていた相手に、半歩、引き下がらせられる。その姿も、確かに追っている。




 一瞬の瞬きも許さないまま、崩れた世界は元の形に戻る。べちゃり、と支えを失ったこいしの身体は床に落ちる。その体は、此方と視線を合わせようと不自然に捻じれている。
 確かに、目が動いていた。自分だけの世界の中、認識の外にあるはずの眼が自分を追い、刻み始めたその時、首が、身体が自身を追っていた。


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