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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

663控えめに言ってこいしちゃんがいじめられててかわいそう:2017/04/30(日) 02:32:25 ID:mRK9UJvU0

 不思議な空間だ。
 足元の転がっている猫には、その近くによろよろと歩き始める同じ姿のささくれた猫。
 傍らには、被っている帽子をいじくりながら、少し顔を伏せて自信づけるためか床面に話し続ける少女。
 ……そして、それを警戒している自分自身。
 もはや姿を隠すには背を向けて逃げるか袋小路の部屋の中へ逃げるのみ。

「自分の心に負けてはダメ。アイを伝えるには相手に伝わるまで押して押して押してあげなきゃ」

 よしっ、と最後に締めくくりながら、こいしは改めて顔を上げディアボロと目を合わせようとする。
 踏み出すのは、彼女が顔を上げきる前。

「お、うぶぅっ」

 眼前に広がった顔は確かに淡い恋心を抱き、秘めた思いを相手に伝えようとする、小さな少女の顔だった。意志がありありと感じ取れ、見る者ならば頬を緩めてしまいそうな花があった。
 だがそんなものはディアボロにとっては関係なく、むしろ好機ですらあり、ゆえにその一撃は確かなものになった。
 キングクリムゾンの一撃はその花を一瞬で散らし、一瞬開いた小さな唇からは詰められていた空気が唾液と共に飛び散る。勢いは彼女を応援してくれる……らしい帽子と整えた衣装を崩し汚す。

「あっ……くぁ、げ……」

 腹部に加えられた衝撃は体をくの字に折り曲げそのままみじめに倒れ伏させる。とさ、とゆっくりと降下した帽子が床とこすれて小さな音を立てた。
 目の前に転がる小さな頭。ディアボロはそれを踏みつける。道の真ん中に転がる小石をどかすように、何も感情が込められていない。

「やめろ」

 腹部を抑え蹲るこいしに対して、刃物を突き付けるように言葉をかける。

「お前は私に特別な感情を抱いているようだが……私はお前ごときに何も抱かない。恋愛対象とも、庇護対象とも。噂を聞き、きっかけがあったからここに来たが、それはお前のちっぽけな欲を満たすためではない」

 言葉の一つ一つを発するごとに、強く踏みにじる。足元からは骨のきしむ音と力を入れるたびに隙間から漏れる呻くようなつぶやき。

「諦めるんだな。実らぬものに手を伸ばし続けることなど無駄なことだ」

 最後の一言と共に、その幼い小石を力強く蹴り捨てる。尋常であれば首の骨が折れてもおかしくない程度には力を込めたが、妖怪である彼女には問題はないだろう、とディアボロは考えていた。彼にとっては、死んでくれてもかまわなかった。
 廊下を転がるその軌跡には点々と血が飛び、踏みつけていた箇所には漏れ出る、には多すぎる血の跡がついている。
 そんな、壁に転がりついたこいしの襟首を掴み上げ、無理矢理に立ち上がらせる。同じ高さに揃えられた頭部は、先程まで告白を思っていた少女の顔ではない。
 小さな鼻はひしゃげ何本か折れた口の中、蹴り入れられた左頬は青く醜く崩れている。開いてるか開いてないのかわからない瞼の奥は、まだ混乱が見えた。
 どうしてこんなことするの。どうしてこんなことするの。わたしはなにもしていない。わたしはあなたをおもっていたのに。
 そんな声が聞こえるようだった。

「……力を解除しろ。面倒をかけさせるな」

 鉄の匂いが鼻を衝く。人に似せた姿は血の匂いまで似るものなのか、ディアボロからすれば幻想郷の妖怪と人間の差が分からない。わかっているのは人間での致命傷に至る負傷でも、十分に生きていること。以前の戦いがそれを記憶している。今のこいしの状態も、人間であれば意識混濁しているだろうが妖怪ならそうではないだろう。
 だから問うた。十分に注意はしていた。そのつもりだった。


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