したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

644深紅の協奏曲 ―ただ一人に送られた詠嘆曲 2―:2016/12/06(火) 00:50:43 ID:OgIDPnI60
「……口に合わないようですね。日本茶はあまりうちでは飲まないので。あなたもどうですか? ……毒なんて、入ってませんから」
「……構わん。それよりも」
「こいしの事ですか。そうですか、それは残念。……さて、何から話したものでしょうか」

 そう言いつつ、さとりはディアボロへ視線を投げかける。陰湿な、穿つような目線は快活だがどこか虚ろなこいしとはまた違う不気味さがある。

「なぜこいしがあなたを狙うか、こいしがあなたに何をするか……ですか。そうですね、その前に軽くですが、こいしがなぜ覚の異端となったか説明しましょうか」
「読みたくない心を読まないよう、閉ざしている、閉ざしてしまった……と私は聞いているけれど」

 口をつけた紅茶に砂糖壺から3杯ほど入れ、ミルクをかき混ぜながらにナズーリンが後に続く。その言葉をうなずいて肯定し、

「その通り、あの子は見たくないものを見ないために、覚としての全てを捨てた。それは妖怪としての自己否定、覚の中の面汚し。もっといろいろやり方もあったでしょうけど、あの子は最も簡単で最も染めてはいけない方法を取ってしまった。……心を読めない覚なぞ、何のために存在しているのやら」

 淡々と、起きた事実だけを書類を読むように話す。だが、それは聞いてて耳に良い話ではない。一番近くの、しかめた顔を浮かべた相手に、

「まあ、そう怒らないでください。あなただって、例えば主である虎の方、突然全ての信仰を投げ捨て、野生としての誇りも忘れ、飼いならされた猫のようになってしまったら。それも一番身近な私、いえあなたに何も言う事もなく。……そう、怒りが湧いてくると思います。不信でもいい。そこからさまざまな事象を思い浮かべる」

 さとりには言葉にも、表情にも熱がこもっていない。おそらく、その裏切りはディアボロが生を受ける以前の、人間の尺度でいえばしばらくに以前の、それこそ感慨に至る程度に過去の事なのだろう。
 目の前でころころと、一点を中心に変わる表情と違い、椅子に座ることもなく憮然とした表情のままに聞いていた。

「そうして、こいしは心を閉ざし、私は今はあの子を憂い心配している。だけど、その心配はこいしに届かない。……伝わらない恋心のように。おしまいです。……いかがですか」
「それで?」

 此方の反応を伺うように話を途切らせ、実際に見つめてくる。だが、話の要点には全く触れても、至ってもいない。
 そして、返事に対していかにも合点のいくように、うれしそうな笑みをさとりは浮かべる。

「ふふ。こいしは閉じた心で、しかしそれでもどこかに縋る心を持っている。きっと私が一番迷惑を被ったとどこか記憶に残しているのでしょう。姉に頼りきりだった自分が、他に依る人を見つけたと話したいんでしょう。……以前にもありました。基準はわかりませんが……どこか、何か。引き寄せるものを持つ者に惹かれます。そして、私に話そうとする。……まるで、つがいを紹介するかのようにね」
「つがっ、えぇ……」

 心底驚き、そして信じられないものを見るような眼でナズーリンが振り返る。

「そんな顔しないであげてください。基準はあの子の基準ですから、私もよくはわかってませんし、私もあの子の言葉を思って推測しているだけですから。まあ、ナズーリンさんがあなたを快く思っていないのはよくわかりますがね」
「私がそいつにどう思われているかなんかどうでもいい。……ここに至るまでに、そのような節は思い当たる。それで、奴は何をする? 外の者が恐れていた、あの鬼の長も言及していた。ただそれだけならば、何も起こらないだろう」

 本当の理由。ただ付きまとうだけならば、それほどの恐怖は抱かれない。

「えぇ。もっとも、あの子からすれば何かしているわけではないのですが……」
「……」
「早くしろ、ですか。すいませんね、悪い癖です。過去の事例からの想像ですが」
「想像……? どういうことだい」
「……先ほど言った通り過去の出来事、こいしは以前も同じことをしでかしました。しかし、その時の記憶は私にはないのです。私だけでなく、他の者にも」

 表情と心に疑問が浮かぶことを待っているかのように、一拍置いて二人の表情を見比べながら、さとりは続ける。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板