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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

634ピュゼロ:2016/11/26(土) 21:00:32 ID:WuAK45Gg0
 鈴仙の耳はしわしわになった。
 純狐はそれにまったく気づいた様子もなかった。覚えてくれていて嬉しいです。そういって、両の腕を広げて伸ばし、彼女を掻き抱こうと待ち構えた。
 その光景が見えていない鈴仙は、ぎこちなく笑おうとして失敗し、指の先になんだかぴりぴりとしたものが走り、その耳は見る間にしわしわになった。
「お見舞いって……どうしてまた、そんな」
「いけませんか?」
「あの……いえ、お気持ちは素直に嬉しいのですが……」
 ずっとずっと、大きく腕を広げて待ち構えているのに、鈴仙が飛び込んでこないため、純狐は不思議そうな顔をして腕をおろした。
「はて――その顔。どうしたのです? けがをしたのは違うところだと聞きましたが。幻想郷(ここ)では病人にそのような事をするのですか?」
「ああ、これは……てゐが。いえ、同居人なんですが……悪戯で。……えーと、とにかく」
 鈴仙は言葉につっかえた。詳しい説明が(とくに相手が純狐であるので余計に)億劫になった。
 それに、目隠しをされたまま人と話すのも、なんだか変な感じがしていたのだ。
 だから鈴仙は言ってしまった。
 野に生きる兎は、ずる賢さでは狐に及ばず、牙も爪の鋭さもなく、駆ける脚でも到底勝てない。だから彼女らにできるのは、わずかでも早く先に相手を察して、「追いかけるのは面倒だな」と相手が思うのを祈りながら、逃げる事だというのに……鈴仙はそれを忘れていた。
 それを彼女はすぐさま思い知る事になった。
「あの、良かったらですけど……この、目の布を取ってもらえたら嬉しいんですが……」
 そういう事を言ってしまったのだ。

「いいのですね?」

 ぴったりと。
 鈴仙と純狐の、頬と頬がくっついた。


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