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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

625深紅の協奏曲 ―ただ一人に送られた詠嘆曲 1―:2016/11/03(木) 15:09:42 ID:NawRDUkI0
 こちらからは遠くてしっかりは見えていないが、身を乗り出す姿と見覚えのある手押し車。

「おやおやぁ! 空から落ちてきたお兄さんじゃあないか。昨日はあんなこと言ってたのに来るだなんて、いやぁ好きものだねお兄さんも」

 がらがらと音を立て、目を細めて笑顔を浮かべている。火車の少女――火焔猫燐――はのんきな顔のままこちらへ近づく。

「それにおいしそうなお仲間もいたもので……隅に置けないねお兄さんも」
「べ、別に、そういう関係じゃないぞ! それにおいしそうってなんだおいしそうって、私のことをなんだと思っているんだ」
「ネズミでしょ」
「いやまあ、そうだけど」

 ニコニコと調子の良い上辺を繕いながら近づいてくる。その様子は腕にまとわりつくこいしとほとんど変わらない。

「まあネズミさんはいいのさ。地底までの道案内ありがとう、かな?」
「……私は、こいしとやらからここまで誘われたのだが」
「えっ」

 そのものの名前を出すと、先程までの笑みは消え、引きつり青ざめた顔を浮かべる。

「こいし、さまに」
「お前も、何かを知っているようだな」

 隠すことも忘れているのか、それとも先程の者たちのようにそこまで予想外であったのか。

「やっほー、お燐」
「へにゃ! こいし様もそちらにいらしたんで!? いやあ、いつものことだけどあたしゃ気づきませんで」

 あはは、と隠すように笑みを張り付けその感情を隠す。だが、動物の習性が隠せないか、しっぽをだらりと垂らし足元に巻き付けている。確か、恐怖と怯えの印。

「みんなが好きになってくれるおにーさんが来てくれたの! お姉ちゃんもきっと好きになってくれると思うの。お燐もそう思うよね」
「えぇ、えぇ。あたいもそう思いますよ。さとり様にも紹介しましょ」
「でしょ! 私、先にお姉ちゃんに言ってくるね」

 自身の感情を覆い隠し、ただただ主の意見に賛成している様はかつて見たことある光景。答えに機嫌の良くなったこいしは入口へ向かって先に駆け出す。
 その場に残された三人。燐は大きくため息をついて、

「こいし様に目をつけられていただなんて……そんなつもりじゃあなかったんだけど……」
「何か、知っているようだな」
「ひぇ! あたいが呼び水になったわけじゃあないと思う、けど……こいし様だから、わかんない。……申し訳ないけど」

 仮面が外れ、ディアボロに対する恐怖とこいしに対する畏怖が浮かぶ。

「お兄さんの事助けてあげたいけど……あたいはペットだから。さとり様と、こいし様のペットだから。言う事は、聞かないといけない。ただ……」

 服の裾をいじりながら、いっぱいに言葉を選んでいるのだろう。自分の心を裏切らないように。

「なにか、追い詰められそうになったら橋姫に頼るといい。あたいもよく知らないけど……さとり様が地底で唯一関係を持っている相手だ、きっと何か関係しているから」
「…………そう、か。わかったよ」

 地霊殿に足を向けながらディアボロは話す。

「お前たちがどれほど、自分勝手で他人を顧みないかを。……自分の身は、自分で守る」
「え、ちょっと、お兄さん、そんなつもりじゃ!」
「……いや、今の話し方じゃあ誰だってそう思うよ、火車の猫」
「なんでさ!」

 抗議の声を上げながら地霊殿に至る門をくぐる。蝶番も錆び、長く動かされた形跡が見当たらない。
 扉を開いて中に誘われる。動物の匂いが鼻につき、逆に人間の生活間の匂いが感じられない。

「さとり様ー! お燐がただいま戻りましたよー!」

 大声を出して帰りの挨拶。周りにわらわらと先ほどの存在を示した動物たちが寄ってくる。犬、猫、鳥、爬虫類……
 そんな中、エントランスの奥からぺたぺたと、人間らしい足音。

「お帰りなさい、お燐。……客人、かしら」

 外見はよく似ている。短いながらも癖のある毛、胸を中心に全身に伸びるコードと赤く開かれた瞳。こいしと全体的に対照的な色合いが目立つ。
 地霊殿の主――古明地さとり――が姿を現す。寝ぼけたような瞳を向けながら、しかし胸に付いた瞳はこちらを凝視して、じっとこちらを見つめていた。


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