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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6
623
:
深紅の協奏曲 ―ただ一人に送られた詠嘆曲 1―
:2016/11/03(木) 15:07:50 ID:NawRDUkI0
「……へぇ、やるじゃないか」
「……」
その目に映ったのは、姿勢はわずかに崩れながらも、抉れ陥没した地面の淵に立つディアボロ、崩れしゃがみ込み、埋まった手を抜く勇儀。
左手には強く殴打された痕が見られる。
「鬼の肌に傷をつけるとは。ただの念動力じゃあないね。……というか、そもそもの前提が違うのかな?」
「さて、どうだろうな」
声と共に立ち上がり、近い距離のまま。どちらも、構えらしき構えは取らず、勇儀は腰に手を当てたまま、ディアボロはただ立ち尽くし。
「さあ、次は何を見せてくれるのかな?」
「悪いが」
互いが少し手を伸ばせば届く間合い、勇儀は相手を見据えながらも、人間だからと見下げた視点は持たなかった。そのつもりであった。
それでいて、次の手合いには何をしでかしてくれるか楽しみにしていた。それは、鬼の持つささやかな慢心。
「これ以上はない」
ばしゃり、と水のかかる音がする。他所から聞こえる音ではない、周りはそれ以上の喧騒に包まれているから。
酒精の香りが鼻につく。誰かが興奮でこちらに酒をまき散らしたか。否、勝負中の、地位のある自分に対してそのような真似をする間抜けはいない。
目の前の男が、消えた。……がらん、と自分の足元に、星熊杯が落ちる。
「……あ?」
全員が認識に時間を要した。僅かな静寂はディアボロが地を踏みしめる音と共に、勇儀の口から発せられる呆けた言葉で分かたれる。
「……あいつ、一瞬で」
「誰か、見えたか? ……いや、それよりも」
「星熊様が、杯を落とした」
「……なんで、どうなっている」
「それよりも、あの男、背を向けたぞ」
「姐さんとの戦いを、背中を向けて……」
事態を認識するにつれて、中心の二人を囲むように声が上がり始める。
「戦いの最中に背を向けるのかッ!」
「恐れたかッ、臆したかぁ!!!」
「戦いを諦めたつもりかっ!!」
「こっちを向け!」
どれもが戦いを放棄したように見えるディアボロへの侮蔑。臆病者への非難。矮小者への罵詈。
だがそれはとある事実へ目を背けているだけのこと。それは鬼にとっての屈辱、他の者では何ものも感じないはずの感情。
勇儀の顔が赤く、赤くなっていく。酔うはずのない鬼の、しかしまるで酒に酔ったような朱色。
「おまえ」
「こいし、どこだ!!!」
声を張り上げる。後ろに広がる声と光景を無視して。
「鬼は下した」
地が響き、空気が揺れる。声にならぬ叫びが辺りを振動する。勇儀の物言わぬ屈辱感が辺りを支配する。誰も何も言えなかった、ディアボロ以外は。
鬼の怒りが大気を震わせる、彼女の震えるほど握りしめられた右手と共に。
「鬼よ。初めから試すようなことなどせずに真っ向に挑むんだったな。だから足元を掬われる……この場合、手元かな」
「……」
「いつから気づいたか、とでも聞きたそうだな。……よほどの愚鈍でなければ、最初から気づく。鬼は嘘を吐かない、と記述されていたが。どうやらそれは言わずとも心に定めていればその通りらしいな」
一度も振り返らず、目も合わせずに地底の奥へと足を運ぶ。
行為全てが勇儀を、周りを逆上させるに十分なプライドへの冒涜。だが、その手が彼に伸びることはない。もし回りが伸ばしてしまえばそれは他ならぬ勇儀への侮辱となるし、勇儀自身も自らの精神に反することになる。
「……なるほど、奇術使いか、はたまた詐欺師か。そういう可能性、頭から抜けていたよ。そんな奴でも、正面から叩き潰す。それが私というものだからな……」
「知らんな」
「ッ!! 、また会おうな、人間。次に闘りあう時はその首を抜いて舌を引きちぎって殺してやる、必ずだ!!!」
酒で濡れ怒りで震える指先で、その背中を指し示す。去りゆくディアボロには、もはや届いていなかった。
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