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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6
605
:
深紅の協奏曲 ―無意識に奏でられる即興曲 3―
:2016/09/30(金) 22:55:35 ID:IctBC4bI0
ディアボロの肩を押さえつけていた手の指のひとつが、ゆっくりとはがされ、逆関節へと折れていく。
「私は被害者であり、悪意を持って衝突したわけでもなければ不注意であったわけでもない」
「てめっ、ぎっ」
小気味のいい音共に、向きを変えた一本はぴったりと手の甲に張り付く。それが終わるとまた次の一本がゆっくりと折れていく。
痛みにゆがんだ顔のまま、意趣返しにディアボロの肩に力を入れ、肉を、骨をギシギシと潰していく。
だが、彼は怯まない。
「本来であれば謝罪はどうあれ、怪我に対して憐れむくらいはするが……そちらが来るのであるなら、こちらとしても対応せざるを得ない。何せ、『ただの』人間だからだ」
「な、なんだその力は……! てめぇ、俺の指をッ!」
「降りかかる火の粉は払わねばならない、さあどうするんだ」
二本目が折れ、力の抜けた、肩に付いた手を勢いよく取り払う。目の前の男は後ずさる、先ほどぶつかったディアボロのように。
「ペイジ、大丈夫か!?」
「なんてことあるかッ、やってくれるじゃねえか人間ッ!!」
着物の端をちぎると、そのまま折れた二本を力づくで戻し残りの指と巻き合わせ固定する。痛みに顔をゆがめる間もなく一瞬で。
折れぬ意志を行動と瞳から感じ取れ、それに呼応するためディアボロはスタンドを構えなおす。
「普通じゃないことは認めてやる! だが鬼に弓引いたこと、後悔するんじゃねえぞ!」
大声を上げ啖呵を切るその姿に、辺りの目もいい加減に集まってくる。そこには奇異と好奇が多く、不安がる様子はどこにもない。
まるで地底の住人たちの見世物になっているようで、いい気分ではない。
「私はこいしが見つかればそれでいいんだが……」
目線は外さず、それでも思わず漏れた言葉。なんてことのないつぶやきだった。
だが、確かにそれが引き金となる。
「……なに?」
「こいし、様?」
「今あいつ、こいし様の名前を出したのか?」
「……まさか……」
途端に辺りの空気がざわめき始める。小さな声を拾われ、それが辺りに拡散、広大に伝播していく。
目の前の男も、驚愕の表情を浮かべたまま、もう一度こちらを探るように口を開く。
「……おまえ、なぜこいし様の名を知っている? ……なぜ、地底に来た?」
「その質問にわざわざ答えなくてはいけないのか?」
返事を返すも、それは待っていた答えではないからか。彼と組んでいた残りの男たちは、がやがやと声を上げるとその場を急いで立ち去る。逃げたのではないのだろう。去り際に残した男に送った目線は信頼だった。
「……こいし様が連れてきたっていうなら確かに納得だ。なんで連れてこられたのかわからないっていうなら尚更だ。……俺たちを見て何も動じないってことは……外の人間とやらか、お前は?」
「……上では大体が一つ見ただけで気づいたものだが」
「こっちには人間が流れてこないからな。死体でない奴なんて初めて見る者もいると思うぜ」
……構えは変わらず、だがそれでも口は止まらない。
攻め入る姿勢のままだが、その心は受動に変わっている。去った男たちは、おそらく誰かを呼びに行ったか。それも、この事態を確実に解決できるレベルの。
一体何を恐れているのか? こいしの行動と自分に何が関係するのか? 気にはなる。ただ闇に身を浸すだけと考えていた地底旅行は存外面倒の塊のようだ。
今の自分に必要なのはあくまで自らの境遇を、戻った後を考えてのこと。引き返す暇があるのなら今のうちに引き返し、当初の通り、スカーレットに出向いたほうが。
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