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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

603深紅の協奏曲 ―無意識に奏でられる即興曲 3―:2016/09/30(金) 22:53:53 ID:IctBC4bI0
 ……どうしてこうなったのだろうか。
 目の前には鬼と称される、日本にて強大な種族と語り継がれる者、その最たる中で『力』を司るともいわれている、四天王の一角。
 比較的大柄な自分よりも一回り大きなその女傑は、盃をくいと傾け中を呷りながら、今か今かとこちらを待ち続けている。
 どうにかならないものか、と天を仰ぐも、そこには光も何もなくただただ土くれと岩で作られた屋根がその身を主張している。

「どうした、来ないのかい?」

 鬼――星熊勇儀――は挑発するように声を上げる。周りの者たちもそれに合わせて野次を上げる。彼女の部下、慕う若者、ただの飲み客、肴にする見物客。
 勝ちを期待しているのか、戦いを期待しているのか、わからない。少なくとも、自分についているのは後ろで縮こまっているネズミだけ。厄介な夢遊病患者はいずこかへ消えている。
 ……どうしてこうなったのだろうか。








 こいしに手を引かれるままに地底の都へ向かうディアボロ。閉ざされ太陽も月もない、宇宙の光源がない中でも自然の灯りが十分な光を視界に提供している。
 地底の都は人間の都と建築様式はほとんど変わらないように見えるが、限られたスペースを活用するためか、目に余るほどの積み上げるような増築が目立つ。

「地獄へよぉこそ!」

 改めて振り返り、手をいっぱいに広げて歓迎の意を表すこいし。声の先には人里の夜と変わらない風景が広がっている。時刻はおそらく、宴の頂点。地上であるなら夜の歓待に盛り上がることだろう。それはここでもあまり変わらないのか、はたまたより活発なのか。通りにはそれなりの人数が往来している。
 姿こそは人間のような者が多いが、それこそ妖怪の類なのだろう。人間に角や翼など装飾をつけたような者、獣の様相を隠さないもの、完全な異形……申し訳程度に人間を残した姿が、そこら中に広がっている。
 闇に輝く都の灯りは、地上のどことも知れぬ闇に溶けることなく、限りある世界を照らしだす。

「……なるほど、眠らない街、か」
「さ、いこ! おにいさん」

 自分の手を離さない少女は、勢いに任せるままにぐいぐいと引っ張り続ける。衰えることなく、街門のないその中へと誘うように。
 感じ取れる空気は洞窟の中の冷たく、気だるい空気から生き物の熱を乗せた動きのある空気へと変わっていく。嫌が応にも光に安寧を求める者たちの空気、そしてどこかそれに刃向かうような矛盾を持ち合わせた感情たち。

「いかがかな? 禁制の蛇を漬け込んだ上等なものだよ。飲めば並みならあっという間にコロリさ。けど、あなたなら問題ないだろう?」
「……人間? 外の空気を感じる……」
「掘っても掘っても終わりない、だからやめられねえんだよなぁ、なあそう思うだろ?」
「いい臭いだねお客さん。何を求めて? ……血、青ざめた血だって?」
「今日はどうする? またあの赤河童の所にでも……」

 そこかしこから聞こえる喧噪、そしてこちらを舐めるように見つめている数多の目線。人間が珍しいのか、餌が歩いてきたことへの興味か。会話、手を止めてこちらを見る者もいれば、眼だけで追う者もいる。もちろん、気にしない者もいる。
 妖怪の山で感じた、ただただ不快な感覚。

「みんな、おにいさんのこと見てるね」

 僅かに振り返り、こいしは小さな目から視線だけを送って話しかける。


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