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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

578深紅の協奏曲 ―無意識に奏でられる即興曲 2―:2016/07/16(土) 16:56:23 ID:4pN8s2To0

 くすくすと笑うナズーリンの声を聴きながら、その先の匂いの元へ。……知らずに足を踏み出すが、止める声もないということは間違いではないのだろう。
 やや速足で進むとその先を導くようにこいしが飛び、急かすように前を指す。
 そこには確かに、地から煙を吐く大穴が開いていた。

「……まるで火口付近だな」

 火山性のガスの匂いが辺りに充満しており、これがもっと強ければ、近くなれば昏倒を起こすことも考えられるだろう。
 まさか目の前の大穴そのものに突っ込むわけではないだろう。……そんなことになればさすがに死ぬのでご免被る。
 問いただそうとしたときには、そこから少し離れた横穴の付近に二人は向っていた。

「こっちこっち」
「さすがにそこからは、私たちでもいけないよ。聖ならいけるかもしれないが」

 少しの装飾と丁寧な舗装のされた入り口は、ある程度の行き来を感じさせる利便性があり、多用されているのは間違いないだろう。案内が少ないのが不満ではあるが、そもそも知ったものしか通らず興味本位で迎え入れるほどではないのかもしれない。
 そこに立ち寄って中をのぞいてみれば。

「……意外と近代的だな」

 長い長い縦穴と底から吹きあげる風が身体を触る。壁に沿うように螺旋に階段が設置されており、足元には動力は不明だが照らすに十分な明かりがついている。

「違う違う、こっちこっち」
「そっちはまた別の施設へつながっている。一応こいしのいう地底に繋がっていないわけじゃあないが……旧都に向かうのであれば、その隣から、だよ」

 見ると、そちらにはまた別に何も手付かずな縦穴が存在している。覗き込んでみるが、先ほどのものとは違い階段も明かりも存在しない。

「……がっかりしたかな?」
「…………だいぶ、な」

 一瞬でもやはりこいしに背負われるような真似がなくなるかと思ったが、どうしてそういうことはなかった。スタンドを繰り返して降りきれそうかといえば、先の見えているものならともかくいつ終わるともわからぬ暗闇の中では無理だろう。
 思わずため息が漏れる。

「……観念するよ。それに、ここからなら私を知る者の目もないだろう」
「よしよし、聞き分けいい子は好きよ」
「やめろ」

 わざとらしく撫でようとするこいしの手を払い、彼女の肩に首にと手をかける。
 傍らではナズーリンが首からかけているペンデュラムを外し、文言とともにそれを掲げる。するとそれは見る間に光り輝き、あたりの土くれの続きを照らし出す。

「くくく、よく似合ってるよ。さ、行くなら行くといい。こいしにしっかりと掴まっているんだよ……私は後ろから着いていくから」
「…………」
「ぎゅっとしててね、おにいさん」
「 、ぐおッ!?」

 心構えた矢先、こいしは『飛び込んだ』。そのまま頭を下に、自由落下するように。下向きに飛んでいるのではなく、まさしくそのまま落下していく。
 昨晩に冥界から飛び降りたのとはわけが違う。あの空の上では前後の環境もあったためか、どこか人を高揚とさせる効果を持ちながらに飛び込めたがここの暗闇の穴は、自分が気付くより早く死を与えてくるような、そのような後ろ暗い焦燥感を覚える。
 死の世界から生の世界へ移るからか、そして今度は生の世界から死の世界へと。あの時ほどに、安易には考えられなかった。自分という根幹を、今は別の者に委ねているからも大きいだろう。
 鼻歌交じりに、朝の散歩と変わらぬ気兼ねさで飛んでいる少女の細い肩と首に依っていなければそのまま離れ光のない闇の中へ消えてしまいそうだ。……思わず、その量の腕に力がこもる。


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