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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

570深紅の協奏曲 ―無意識に奏でられる即興曲 1―:2016/06/10(金) 22:12:22 ID:D6fW.1yM0
 この幻想郷は闇だ。
 人里の人間たちは小さいコミュニティながらも楽しく生きている。妖怪に襲われる可能性があっても、自分から過度に逸脱せねばそれをどうにかしてくれる退治屋がいる。巫女がいる。
 それは現代の社会の小さなモデルケースだ。人間たちは生きる。法に守られ、それを遵守する者に守られ。だが、それの及ばぬところではどうなろうと関与できず。
 人里で、妖怪の山で、冥界で。目的は他所にあり、本気でこちらを害さないからこそ僅かずつに薄れていた。だから、馴染むにつれて考えの隅に追いやられていった。
 地底は違うのだろう。
 嫌われ者の妖怪たち。縁起に追記のように書かれていた情報では、かつての地獄、鬼と怨霊の住まい。冥界から降りた時に会った少女、こいしからお燐と呼ばれているであろうあの猫の妖怪。彼女のもたらすスラム街のようなその地の印象。
 照らされた闇の中、その中にできる影。妖怪と人間の本当の関係。
『そういう解釈で大体間違ってないぜ』
 道具屋の魔法使いの言葉を思い出す。人間の恐怖の対象、権化。彼女のような者たちに庇護されているから、ある程度に自分で立ち向かえる能力を持っていたから。……それは、相手も同じなのだ。少し、気を向けなかっただけ。


「どう、来てくれる? ついてきてくれるよね」

 ほんの少しの思案をかき消すようにディアボロの手を取り今までと反対の方向、人里を越え博麗神社の方向へと駆けだそうとするこいし。彼女の中では、ついてきてくれることは決定しているのだろう。
 ディアボロの脚は重く動かない。心の奥底、誰もが無意識に持つ恐怖を改めて感じたのも理由の一つ、自らを試すための行軍であったことも一つ。

「こいし。悪いがきっと彼は動かないよ。私だけでなく彼に迷惑をかける前に……」

 こいしの身勝手をナズーリンは止める。

「いや……行こう、その地底とやらに」
「えぇっ!?」

 だがそれに反し、引かれるままに歩を進める。小さな興味もあるが、それだけではない。
 自分の性は結局は闇だ。どれほどの理解をしようと、その本質は変わらない。それをもう一度、思い出すべきと感じた。
 今までのあり方を省みて、そして『奴』の精神を省みて。……そして、今一度自分のこれからを思い出すために。もし生きるのであれば、再び晒そう。自分は、死ににいくのではないのだから。
 全ては幻想の先の為に。
 自分の手にある体温は、どこか惹かれるようなぬくもりを感じ、その持ち主はついてきてくれることを当然と思い、再び笑顔を浮かべる。


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