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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

569深紅の協奏曲 ―無意識に奏でられる即興曲 1―:2016/06/10(金) 22:11:43 ID:D6fW.1yM0
「えへへ、ごめんなさーい」

 衝動的に手を出され、頭を抑えながらも笑みを絶やさず謝罪の言葉を漏らす。ゆるく癖のついた髪が頭の動きと共に揺れる。

「……まあ、君の行動に対して何を言っても無駄だろうけど。おなかでも空いているのかい、こいし」
「そういうわけじゃないんだけど、どんな味なのかなーと思って。りありてぃの追及よ」

 見た目に反省した様子はなく、もし機会があればまた手を出しそうな無邪気さを感じられる。まったく気配を感じないことには驚いたが、そういった種類の妖怪なのだろう。認識してしまえばその存在は明らかだ。
 先に見た縁起には見かけなかったが、あれはあくまで紹介程度で全ての妖怪が載っているわけではない、目の前の少女―古明地こいし―も載せるほどの無い妖怪の一種なのだろう。そう決めつけ、再び歩を進めようとしたとき。

「……あ! おにいさん、ちょっと待って!」

 どん、という衝撃が自分の背後から響く。

「貴方でしょ? お燐の言ってた空から落ちてきた男の人って。探してたの、こんなに早く会えると思わなかった!」

 恐怖を感じた。先ほど知り、気配を消す程度で害する者ではないと決め、それでも最低限の注意は払おうと思った矢先。視界から外れた、それだけで少女の行動が読めなかった。
 ナズーリンの近くにいたからある程度距離はある。妖怪だから当然空も飛べるのかもしれないが、いずれにしろ動きに対する音を聞き取れなかった。
 ただ意味なく、彼女からすれば当たり前のコミュニケーション方法かもしれない。

「ッ!!」

 だがそれはディアボロを動かすに十分に足りた。大きく土を蹴って距離を離し、キングクリムゾンを出して自身も構える。抱きしめようとした腕は強引に振り払い、結果こいしはべたんとその場にしりもちをつく。バラのコサージュがあしらわれた帽子がその傍らに落ちた。
 確かに一度死んだ。あの抱き着きのどこか一つに殺意が込められていたら、今頃自分は血を流し再び捕らわれてしまっただろう。これから成すことのための確認の前に。

「ちょっと、どうしたんだい?」
「…………いや……」

 汗が横顔を濡らす。
 不思議そうに見つめるナズーリンに対して、こいしは振り払われ、地に腰付けていてもそのままにこにこと笑っている。その反応を待っていたかのように。
 服に着いた土汚れを払うと、落ちた帽子も同じようにはたく。それを被りなおすと、

「お燐から話を聞いて、会ってみたいと思ったの。お姉ちゃんもきっとそう言うわ。地底の誰もがあなたみたいな人間をもてなしてくれる、面白い人なら尚更ね」

 まるで焦点のあっていないような眼でこちらを見つめながら話す。ちゃんとこちらを見ているだろう。ディアボロと目を合わせているつもりだろう。だが、彼には目の前の少女がどこか、自分の先に居る何かを見ながら話しているようにしか見えない。
 こいしをみて、ディアボロは改めて感じる。


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