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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

536深紅の協奏曲 ―深紅の協奏曲 4―:2016/04/20(水) 22:01:29 ID:y37Qs2Pw0
「……ん? 俺っちの顔に何かついてるか? あ、冷えてるだろ、俺っちの上着かけろや」

 上着を差し出す彼の顔は、確かにあのとき、レクイエムの攻撃を喰らった後、かろうじて這い上がった先に自分を刺したごろつきの顔。レクイエムを認識させた、全ての始まり。
 何故その男がここに、中毒症状はどこへ? 何故こんな活動をしている? 他の男たちは?

「……ここは、何処だ? 今、いつだ?」
「へ? ティベレ川脇の排水溝だよ。いつって……頭でも打ったか?今は2012年の5月だよ。……食えるか?」

 差し出された携行食を受け取り、ゆっくりと噛み締める。共に、伝えられた状況も。確か、月日は山の上の神社で聞いた通り。まさかここで嘘を言われることはないだろう。

「……お前たちは、何故ここに……? 助けてもらって言うのも何だが、こんなところに……おかしいだろう」
「おかしくなんかねえよ、俺っちみたいなやつらはまだこれくらいしか仕事割り振られねぇからなぁ、へへへ」

 みたいな、やつら。歳を重ねても下水漁り程度の仕事しかできず、けれどそれを不満に思わず遂行している。

「……更生、か? 薬物中毒の、社会復帰」

 本来なら後ろめたい事。それを指摘しても、全くそんなことを感じさせず、変わらず浮ついた笑みを浮かべたまま男は話す。

「あぁ、そうだよそうだよ。俺っちも以前は使ってたんだけどよぉ、今のパッショーネ、ボスがジョジョってわかってから正反対にそういうの抱えなくなってさ……へへへ、最初は反発もしたけど今じゃあ元ヤク中達が集まって綺麗に奉仕活動よ。へへ、俺っち達も真面目に戻れたもんだなぁ」

 悪意の無い、紹介。自分に与えられた施し。それらを受けられた要因は、かつて自分を粛清した者。
 確かに、疑似麻薬による快感は純度の高いそれと変わらず高い昂揚感をもたらし、脳の汚染も変わらない。だが、奴の能力を持ってすれば。失ったものを作り出せるジョルノのスタンドならそれを取り払うこともできるだろう。
 10年以上も経っている。もはや自分の築いたルートも、麻薬を生み出していたマッシモも存在しないだろう。仮に生きていたとしても、再起不能かジョルノ側に移っているだろう。そのどちらかの可能性があるのなら、中毒者の再起も十分に考えられる。
 自分が、自分の為に汚したこの街を、この国を、奴は再起させている。

「……ふ、ふ」

 なんということだろうか。それほどの男に、再び立ち向かおうとしている事。彼によって生かされたようなものなのに、それでも向かおう考えていたこと。
 普通に考えれば、なんて馬鹿なことを考えているのだと思ってしまう。支配者を争っていた時代は、すでに終わっているようだ。裏社会を浄化し、表社会に復帰させようと考えている。そんな相手に、一人過去に負けた男が再び立ち向かえるか。

「お? 、お、おい!」

 そんなもの、関係ない。失ったものを取り戻すことに、理由はない。落とし穴に落ちた。マイナスになった。落とし穴から上がる。ゼロに戻る。それだけ。誰しもが求めることだ。
 被せられた上着を、拭ったタオルを投げ返す。一歩、また一歩と踏みしめる。
 自分の傍に立つ者、キングクリムゾンは変わらずに立ち続ける。
 ……だが、あそこと違い、足りないものがある。
 最後にユカリは言っていた。幻想で紡げるものは幻想の中でだけ。始まりの時、意識を取り戻し再び恐怖に落ちたその際に再び生み出したドッピオは、こちらには来れなかったのだろう。あそこで得られたものはあっても、持ち帰れるものは何もないということか。

 どうでもいい。それでも、ドッピオは見ているだろう。私という存在が消え、幻想でも消え去っていたとしても。自分の思いが消えておらず、ならばそこに彼は存在する。
 鎮魂歌は未だ耳に響いている。ならば、それを上書きしよう。我が子と奏でる、最初で最後の協奏曲。



















「帝王はディアボロだ……依然、変わらずに」


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