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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

535深紅の協奏曲 ―深紅の協奏曲 4―:2016/04/20(水) 22:00:39 ID:y37Qs2Pw0

「  がぼっ、が、ごぼぶっ」

 思考の波が、急に現実の身体へと引き戻される。酷く苦しくもがく要因は、周りに不快にまとわりつき頭の先まで満たす水。温かくもなく冷たくもない適当な水温は、関係なく自分の身体を苛んでいた。
 どこか掴まるところは、とにかく呼吸を、上へ、上へ。胃も肺も水で満ちそうな中、ひたすらにもがき続ける。
 めちゃくちゃに動きまわしていた腕に肌を斬る衝撃、それを頼りにひたすらそれを上る。

「がぼぼ、ごほっ、はぁ、はぁっ」

 突然の水中と動転に相当の体力の消耗を感じつつも、何とか水面へ上がる。足りない酸素が、まだ水に浸かる身体を重く引きずる。
 それを持ち上げようとするも、全く動こうとしない。両腕に力を込めても、燃料の切れた車をいくら叩いても動かないのと同じ、浮力という車があったから進めた道も、もう進めそうにない。

「……おいっ! 大丈夫か!? 誰か、手を貸してくれ!」

 崩れ落ちそうな自分の身体を、不意に誰かが掴みあげる。

「しっかりしろよ! 俺っち一人じゃ上げらんねぇけどすぐに他の手が来る! ……おーい、こっちだこっち! 行くぞっ!」
「「「せーのっ!!」」」

 誰だかわからない、なのに男たちは無償で手を差し伸べた。自分を救おうと必死になっている。
 ……何だっていい。残りの力を振り絞って自分も上がろうとする。いくら何でも、こんなところで死にたくはない。

「……がっ、はっ! げほっ、ごふぉっ!!」
「大丈夫か? 水吐け、水、おーい、拭く物! 後、ゆすぐ水となんか簡単に食えそうなもん持って来い! 息は大丈夫そうだ!」

 介抱され、徐々に周りを見る余裕が生まれてくる。言っていることはわかる、ということはここは祖国だろう。まさかここにまで言語の壁を取り払う計らいをしているとは思えない。
 周りの様式も、幻想郷とはかけ離れている。よく見た、石造りの整備された下水脇。集まってたむろうとも表だって集まれない者達がここに集う、そんな場所。
 介抱した男たちが来ている者はみすぼらしい、というよりは汚れても問題ない古びた作業着のようだ。自分の身体を拭いたタオルも身体を拭くための大きい物ではなく、作業中にかいた汗など拭くための小さなもの。自分に暖を与えた上着も先ほどのそれだろう。
 集まっている者達は男性、という点以外に共通点はない。作業着も制服というわけではない、誰も彼も適当に着こなしている。

「……なッ」

 そこまでして、ドキリとした。自分を介抱した男の顔。いくらか年嵩は増えているものの間違いはない。


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