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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

514深紅の協奏曲 ―深紅の協奏曲 3―:2016/03/08(火) 21:09:46 ID:9wl90O9U0


「昔私のケーキのイチゴ勝手に取って食べたじゃない」
「あれは美味しくないから代わりに食べてあげただけよ」
「……ありがとう、すまない」
「そいつを治したいんだったらあんまり騒がしくしない方がいいんだけど。義理はないけど、矜持として失敗させたくないから」
「えー、パチェそんなん言うんだったらあの鐘? 鳴らせばいいんじゃないの、あれ」
「私の血が足りてない」


『謝らないでください、ただ躓いただけ。ただそれだけ。たとえ笑う者が居ても、それを乗り越えてきたのがあなたです』


「それなら私の血を使う?」
「無理ね。あれは血の調整があるからこそ活用される。吸血鬼の血なんて穢れすぎて熱くて使えやしない」
「なんだとー!」
「お嬢様、妹様、そろそろお時間です。こちらを」
「ああ、悪いね咲夜……ちょっと、独り言にすまないけど」

 ついつい、とレミリアが頬をつつき、その先を外へと指し示す。気付けば遮光の変わりか、傘を携えた咲夜が佇んでいる。

「人間が月を望むことを想うように、私たちもたまにはあれを望む。直射はあんまり好きじゃないけどね。あれを見ると、人間が門出という気持ちもわかる気がするよ」

 遠くの山間から上る、大きい光の塊。温かい命の恵み。ここには似つかわしくない、太陽の光。


『僕にとっては、いつもあなたは太陽です。いつでも、僕を照らしてくれた。たとえ、あなたの臨む先が陽の射さぬ暗闇でも、それでも僕は貴方と共に、歩み続けたいのです』


「感謝するつもりが、逆に言われるとはな……」

 上る朝焼けにはしゃぐ妖精たち、共に回る美鈴。そっと主たちの傍に佇み、控えめながらも確かに彼女たちを守る咲夜。眩しそうにも、それを細い眼で見入るパチュリーとその従者。そして、

「夜明けだ。これからはお前たちの時間だろう?」
「……ありがとう。あんなこと言っちゃったけど、楽しかったわ」

 自分の力量を知らしめた、二人の幼き月と太陽。
 ほんの少しの逢瀬を楽しんだ後、一瞬にして一帯に影が満ちる。どうやら、瀟洒な従者による幕引きのようだ。妖精たちと美鈴は急いで明かりをつけて回る作業へと移る。
 気付けば、自分の身体も先ほどまでの苦痛の呪縛はなくなっている。ためしに手を動かしてみるが、何も問題ない。

「さすがパチェ! あれほどの怪我を一晩掛からず治してみせるッ!」
「当たり前」
「ノリ悪っ」

 ゆっくり、身体を動かしてみるが問題はない。立ち上がることも、先ほどまでただ眠っていただけのように、重症の後遺もなく行える。

「もう問題ないみたいね。それじゃあ、準備もできてるみたいだし、初めよっか」
「……何を、だ? もう私は」
「朝更かしの始まりだよ、咲夜、準備!」
「できております」

 一瞬。丁寧に用意されていたテーブルの上にはいつの間にか豪勢な食事が並んでいる。さすがに瓦礫の全てを片付けられたわけではないが、大きいもの以外は撤去されており、少々品はないが宴を催す進行には問題ない。

「申し訳ありませんが、全ての除去はできませんのでご了承くださいませ。後ほど美鈴の手を借りて行います」
「力仕事は任せてくださいね! ……てて、大声出すと頭に響く」
「ばか」
「パチュリー様のばか好き、セックスしてる時に言わせたい」
「フランも久しぶりに食べていきなさい。紅魔の宴はどっかの神社とは違うのよ! みんな、グラスを持ちなさい」


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