したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

464深紅の協奏曲 ―深紅の協奏曲 1―:2015/12/29(火) 15:11:00 ID:/s6KMLdY0
「……探していた道は、もう既に、通り過ぎていた……」
「ぁあ!?」

 既に二人しかいないはずの世界に、聞き慣れぬ人の声。咲夜に人払いはさせていたはずなのに、当の本人を下がらせたからか。いや、いくら美鈴も下がらせているとはいえこの館に侵入者が。
 ……いる、一人。先ほどはあそこまでの負傷、死んだものと思っていた。思っていたから、フランドールの異常も相まって正確に調べていなかった。本当に、奴が死んでいるのかどうか。
 背筋が震える。凡そあの負傷で生きていられる人間はいない。腕が吹っ飛ばされ出血は絶えない、壁面に叩きつけられ骨は砕けている、何より、吸血鬼の一撃をまともに喰らって、正常でいられるはずが――――

「本当の近道は、遠回りだった……冷静に考えれば、おかしいことだらけだったんだ……」

 その発想は愚かしいとすぐに捨て去る。あの男の戦いは、最初から幻想郷との戦いとも、通常の戦いとも何にも違っていた。運命を垣間見、操る。虚仮とは違う真なる能力。
 あの男を取り巻く見えぬ人型。死んだはずのあの男の元に居た子供。
 あり得ない話ではない。自分たちと似たような人非ず。妖怪の中にも身体は取り巻き、その精神こそが本体というものもいる。
 人間だから。その先入観、可能性の一つを捨て去っていた。もしそれが合っているのだとすれば、私は!!

「……ぇて、にげ、……ぇうっ」
「ッ、だからどうした! このレミリアが、家族を捨てて背を晒すとでも思ったかああぁ!!」

 裂帛、共に発せられるは紅い炎。フランドールと共に包まれるその紅気は十字架を様し立ち上る。自らの二つ名を名づけたスペルは彼女の確固たる意志による解放され、見えぬ、けど傍らで妹を害する者を焼き尽くすために。
 見えぬ者よ、知れ。我の力を、あまねく災禍の炎を!
 ……それもつかの間、襲い来る脱力感が、噴出した力の終わりを告げる。それはあまりにもあっけなく、あまりにも短い。気付いたら、電源を切り忘れていて電池の切れたおもちゃのように。
 手元にある妹を抱きしめる。尽くされた手の中に残る、それでも守れるものを包むように。

「ボス……ずっと、そばにいてくれていたんですね。……そして、今は『そいつ』のそばに」

 結果は、レミリアの、フランドールの。スカーレット姉妹の勝利であっただろう。だが、その足掻きは克明に刻まれる。
 少女の顔が血に濡れる。近くにある、いつも近くにいた、近くて遠かった姉の血で。
 少女の顔が血に濡れる。丸い小さな顔は、いたずらに針を刺されて割られる風船のように、右の眼から空気が出てしぼんでいくように、噴出していく。

「ぐあああああぁぁぁっっ!!!」
「あ、あぁ、…………ぁぁああああ!!」

 叫び声をあげても、フランドールは動けなかった。目の前で苦しむ姉を前に、頭を何かで小突かれそのまま押されているかのよう。少しの力で振り払えるだろうそれを、今一歩手を出す勇気を彼女は持ち合わせていなかった。
 だくだくと溢れる血の勢いは、二度三度と床を、彼女を、自分を汚す。

「……あ、あぁ、……やめて、やめてよぅ……もう、こんな……」

 目の前で倒れ伏す姉。守ろうとしてくれたのに、それをできなかった惨めな姿。それを引き起こしたのは自分。
 頭の中がざわめく。震えが止まらない。何かが動くたびに、自身の心がズタズタに引き千切られ引き摺り回され荒らされていく。
 自分が出しゃばらなければ。羨ましがって、かまわれたくって、姉のやることに足を踏み入れなければ。頭を冷やして、素直に地下に篭もっていれば。
 ぐるぐると頭の中をかきまわし、自らを崩していく。溶けて形の保てなくなったそれは、再び首に手をかけていく。
 500年前から続いている狂気、自分は何も変わらない。自分が関わればすべてが壊れていく。全てが……自分さえ、いなければ。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板