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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

463深紅の協奏曲 ―深紅の協奏曲 1―:2015/12/29(火) 15:10:26 ID:/s6KMLdY0







「何をしたッ!? 妹に何をした、答えろッ!!」

 馬鹿なことをしている、とレミリアは頭の中でつぶやく。当然だ。手の中にあるまだぬくもりを残した死体に何ができる? 場の状況をかき乱すことも、それを抑えることも……出来はしない。
 だけど、先ほどにフランにやられ、その妹に置き土産を残していったのは間違いなくコイツなのだ。コイツのはず、なのだ。

「ぁぅ、ぁぅううぁぁあぁぁ……」

 苦悶の呻きが止まらない。頭を押さえつけ、ガチガチと歯を鳴らし、丸い大きな瞳からは耐えず涙が流れ出る。身体の振るえは治まらず、いつその場に倒れ伏してもおかしくない。
 何が彼女を犯しているのか、彼女に何が引き起こされたのか。レミリアは逡巡する。突然の慟哭、来訪者の変化、それから落ちた、鏃。

「これか、これのせいなのか!?」

 少年の肉体から手を放し、転がる鏃を拾い上げる。鉄のような石のような、冷たく硬いその感触。鋭利に研ぎ澄まされているがそれは傷つける武器として使うにはあまりにも小さすぎる。
 友ほどに魔導精機に詳しくはないレミリアだが、それでも何か特別な力を持っているとは実際に手にしてみても感じない。本当にこれが原因なのだろうか? 自問は尽きない。

「ッ、くぁっ!!」

 それでも、妹を救うのは姉の義務だ。勢いよく握り込んだそれは、吸血鬼の握力にはあまりにも脆弱だった。音も立てず、砂のように崩れていく。
 崩れたそれを投げ捨て、妹に駆け寄る。

「ひっ……っ、ごめんなさい……ごめん……ゆるして、ください……」

 すすり泣く姿は変わらない。床に落ちた視線はあらぬ何かを見ているかのように一点に集中している。漏れ出た言葉の通り、縋り許しを乞うようにさめざめと、さめざめと。

「フラン、フランッ! しっかりして、何が」

 レミリアの言葉が言い澱む。それは涙が溢れ続けるフランドールの眼が彼女を向いたから、500年以上ついぞ見たことの無い、本当の助けを求める顔だったから、……ゆっくりと、細く小さなその腕が、フランドールが自分自身の首を絞め始めていたから。

「……ぎゅぇ……ぇぅ、……ぁ……!!」
「やめろッ!!」

 なぜ彼女が凶行に至ったのかはわからない。けれど、こちらに助けを求めるその顔と、嫌々と少しでも逃れようと首を振る抵抗。明らかに何かに操られているか誘導されているか、不本意な自傷なのは見て取れる。
 急ぎその両の腕を掴みあげようし、その考えは確かなものとなる。
 何かに強引に押さえつけられているような力の入り具合、フランドールが自身で拒否しているにもかかわらず、目に見えない何かが腕を首に、首にかかった手をさらに押し付け……へし折るかのごとく締め付けている。締め付けられた箇所は圧で薄い肌色をさらに醜く歪めている。

「ふっ、ぬっ、ああああああああああああああ!!!!!!」

 妹の両手首を握りしめ、ありったけの力を込めて彼女を締め付ける恐怖から解放しようと試みる。それに気付いたように首にかけられる力も強くなり、同時に自身の持つ箇所からもヒビが入る音が手に響く。

「ぎぃっ、ぃ、……ぁぁっ……!!」
「フランッ、耐えろ、究極には、斬りおとすよ、覚悟してて」
「……ぁぅ」

 片や空気と血の欠乏で青い顔、片や激しいいきみで紅潮した赤い顔。紅い姉妹は協同は続き、それを阻害する何かは変わらずに。


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