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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

443深紅の協奏曲 ―スカーレットクイーンの迷宮 5―:2015/10/08(木) 09:21:23 ID:2./TCeyA0

「言った手前に逃げ出すのも戦況判断、経験の故だろう。そこは認める」
「私は認めないけどね。つまんないし」
「静かにしな、喋ってんのは私だよ」
「……ぶー」
「ふん。……しかし、逃げてどうするつもりだ? お前のその力を用いたとして、私の庭から逃れられるとでも? それともまだ何か隠した手があるのか、フランが現れ、背を向けたその状態で?」

 その問いかけに答えるつもりはないが、確かに先ほどと比べて状態は悪くなった。逃げが有効と考えたが、逆効果。最も、あの力を前にして目前に立つのみというのも無謀である。
 今はまだその時ではない。浮き沈みは、誰にでもある。

「…………ぎゅー」

 フランドールの、ほんのわずかに拾える程度の声。それと共に映る未来は、残忍な結末。
 何もない一瞬の後、自分の身体が爆散し崩れ去ったままの画面。誤解の生じるものでもない、そのままの結論、フランドールの能力。
 三度の世界の暗転。ただ保身を考えたのみの能力の使用。進まぬ展開の苛立ちよりも、危機への焦燥が心をより強く支配する。

「……、くっ」

 だが、簡単には好転しない。死への秒針は止まらない。
 吹き飛ばしている最中にも、自分の身体が崩れていく感覚。外傷も、衝撃も、痛みも何も感じはしないが、唯攻撃は続いているという感覚だけは理解できる。
 能力による破壊は、瞬間ではないのだろう。『破壊されている』という結果が時を飛ばしきるその時まで続いていれば、自分は死から逃れられない。『破壊された』という結果まで、逃げ切らなければならない。
 吹き飛ばすのも永遠ではない。人間が自発的にいつまでも呼吸を止められないのと同様、この能力も限界がある。
 全ての音が消え、自分の鼓動のみが世界の形を作り出す。自然と、胸を握るように手が動く。二秒、一秒。

「 っ。……ふふ」
「またか……しかし、今回は随分長かったみたいだな」

 限界を迎えたその先は、何とか自分の身体は無事を保っていた。レーヴァテインを出された時とは違う、冷えた汗が全身を覆っている。

「ねぇ、どうするお兄さん? さすがに鈍感な私でもわかっちゃうよ。ねぇ? お姉さま」
「お前が鈍感だなんて聞いたことないが」

 二人の少女の何気ない会話。表情が易々と目に浮かんでくる。秘密事を共有する姉妹の、誰にも告げない共通点を手に入れた時の甘い顔。
 だが、それはディアボロにとっては絶望でしかない。既に、生殺の自由を握られたことと同意だから。

「私は十分と思って勝手に放しちゃったけど、きっとずーっとぐりぐりぐずぐずにしていたら、どれほど世界を歪めてもお兄さんは逃げきれない。お兄さんのその力は限界がある。咲夜と違ってほんの数秒」

 自分の周囲の壁が、再び赤熱し吹き飛ぶ。こちらの位置がわかっているように、自分の隠れ場所を燻りだすかのように。無理に動けば、その餌食になるだろう。

「あなたの命は私の手のひらの上。右手にはもう、お兄さんの『目』がコロコロ転がっているの。一度触って壊れなかったのは初めてだけど……もし他と一緒にやったら、どっちを取るの?」

 放たれた青い光弾が、壁に床に反射し、所せましと飛び回る。
 長く尾を引くその弾は、ディアボロの最期の場所を追い立てようと近づいてくる。

「……ちっ」

 もはや一刻の猶予もなかった。現れた自分を狙うこと。共に、その『目』を砕き、ディアボロを破壊すること。
 同時に行われれば、回避する術はない。全てが無為になる。……それならば。


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