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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

438まるく:2015/09/09(水) 00:20:03 ID:SNX6KJOc0

「そしてオレにこれ以上近づくな。フランドール・スカーレット」


 この場にいない少女の名前。
 それを聞くにレミリアの顔は苦々しく曇る。その者が現れることを好ましく思わない表情。

「……へぇ、お兄さんどこかおかしいの? それとも、感がいいだけなのかな?」

 全てを受け入れる門が開く。その先に居たのは、姉と同じ吸血鬼。レミリアの髪を月と称すなら、彼女は太陽を称するほどの明るい金。
 だが、背後に連なる7つの色を模した結晶羽は何物に類する物がなく、否応が無く悪魔を連想させる。

「なーんて。聞こえていたわ。お姉様のくだらない名付けも、その前の解析も。……面白そうね、人間」
「なんだと」

 同じ距離を保つように、自分を挟んで対極にいる姉妹。双方どちらも夜の王にふさわしい、その覇気を感じ取れる。

「……ところで、何で私は遠ざけられるのかしら?」

 純粋な少女の疑問。何も他意はなく、唯ある物を聞いただけの様な疑問文。
 だが、その言葉はそれだけの意味では終わらない。彼女の眼が、発する気が、全身から漏れ出る波が、ディアボロの精神をくすぐる。
 燻る先に見える火のような紅い眼は、狂気を日常として受け入れたような、そんな瞳をしている。
 ディアボロには見覚えがあった。もはや中毒と化し、ソレが切れていることが非日常となった麻薬患者。

「お姉様とは遊びに付き合ってあげて、私とは付き合わない理由は? 同じ吸血鬼、同じスカーレットよ、お兄さん」

 よく似た姉妹だ。浮かべる蠱惑の表情は幼さを残しながらも生きた長さを物語る血の貴さを感じさせる。しかし、姉と比べるとややも上に立つ者としての威厳が足りていない。

「オレがこの館で求めるものはこの世界の先への足掛かり。先へ行くための力を得るため。レミリアはそれに釣りあう相手だがお前にはそれはない。
 下がれ、フランドール・スカーレット。お前はオレにとって試練の前に転がる小石ともならない」

 明らかな挑発。姉には付き合うが妹には付き合わない。理由は単純、劣っているから。
 フランドールの事は当然先に読んだ縁起にて理解している。狂気を持つこと、幽閉されていたこと、今は少し、表に出ている事。

「……………………」
「……へえぇ?」

 もちろん、レミリア相手でも苦戦を避けられない自分が、本当にフランドール相手に余裕を出せるとも思っていない。
 だが一番の悪手は二人を相手取ること。そうなってしまえば、抵抗することなく、何回ともわからないあの瞬間に戻されるだろう。

「……面白いことを言うのね、今まで巫女にも、魔理沙にもそんなこと言われなかったのに。私が弱い? お姉様より? 脆弱な、人間風情が」

 紅い瞳が揺らぐ。周りに溶け込むかのように、彼女の周りに紅い霧が纏う。
 それは力の表れ。自分を知っていてなお、姉と比べて劣る妹と、何も知らないはずの男に評されたこと、その事実に対する怒り。

「フラン」
「止めないでよね、お姉様。子供っぽいこと言うけれど、初対面の人間にああ言われて黙ってられる程私、気が長くなれないわ」


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