したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

397深紅の協奏曲 ―スカーレットクイーンの迷宮 2―:2015/05/01(金) 21:47:50 ID:ySrGHjTA0



 ばたん。



「…………」
「…………」

 沈黙のみがそこにあった。
 扉の先の光景も声もやりとりも、閉めきられれば何も見えない。
 それを見せた彼女は、表情を引きつらせ冷や汗をかきながら硬直している。

「……おい」
「はい、なんでしょう」

 声だけは普通だ。気丈を装う精神はあるのだろう。
 もっとも、表情はずっと変わらず『やってしまった』という感情のままだが。

「私の情報が確かならばあれが」

 ディアボロが口を開いたあたりで、扉がひとりでに開く。
 その先には、召使いの衣装に身を包んだ少女が一人。
 開いた先の相手を確認すると恭しく頭をさげる。

「ようこそいらっしゃいました、名も知らぬお客様。ここより先、館内の案内はこの私、十六夜咲夜が務めさせていただきます」

 現れたそのメイドは先ほどの光景では確かにその周りにはいなかったし、あの一瞬でどこか影から現れるということも難しいだろう。
 それをやりおおせるその力、縁起に載っていた時間を操る能力の一部であろうか。

「お嬢様がお呼びです。どうぞ、私の後へ。……館には何が落ちているかはわかりません。道を外れないようにお願いいたします」

 紹介もそこそこに案内を始める。門番とは違い不愉快な感じを与えないようにはしているが、ただ淡々と業務をこなすその姿。
 冷徹な、機械の様な印象のある。咲夜というメイドは、そんな女に見えた。吸血鬼の傍らに居ても何らおかしくないような。

「……」
「……」

 美鈴とは違い、余計な言葉は挟まない。着いてきているかどうかの確認も、後に響く足音で理解しているように見える。
 刺すような無言が、それは敵地に居るという思いを刺激するようだった。
 屋敷は外から見えた箇所もその内装も、目がおかしくなるような紅一色であり、窓から射し込む明かりが一色の濃淡を操作している。
 時折頭を下げる妖精のメイドたちは外で見た妖精たちとは違う、好機で動く子供たちの様な印象はみえない。今は余計なことを言えば仕置きが待ち、それを恐れて頭を下げている、様に見える。
 外でも何を恐れてか妖精たちは自分たちの前に出てこなかったが、それと似ている。恐れる方向が今は違うだけで。

「…………」
「…………」

 屋敷を歩いている内に嫌でも気づく違和感。外観から判断できる以上の広さ。階段を上る距離はそれに合っているが、通らずにいる通路の先は見えないことの方が多い。
 時間を操り空間を弄るとのことだが、眉唾に見えるその力も直面すれば恐ろしい。ディアボロの能力とは違うその汎用さ。
 自分以外の限定的使用を行える目の前の女、それを従える吸血鬼。普通に考えれば、スタンドの存在を知っていてもなお常識外の力を持つ者の巣窟だ。
 ……自然と、歩みにも、拳にも、強張りが入る。
 直接的にではないが、窓から射し込む夕日が日没を示し始める。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板