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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

368深紅の協奏曲 ―スカーレットクィーンの迷宮 1―:2015/03/29(日) 00:22:49 ID:OR4e8Bxk0




 5月にもなるというのに、霧の湖と呼ばれるこの地域一帯には確かに肌寒さを感じる。
 天狗から見せてもらった写真にはあの場から這い上がろうとする自分が写っていた。そして湖に浮かぶ氷の姿。
 水面に手を浸してみようと近づけたところで、それをしなくてもわかるほどには冷えた水だというのはわかる。だが、氷ができるほどの冷たさではないようだ。
 ……縁起に載っていたあの氷の妖精とやらの仕業だったというのであろうか。

「……抜けるのなら早い所行った方がいいよ。陸路でチルノに絡まれても楽しくないだろう」

 ナズーリンからも注意を促す言葉が漏れる。好戦的な妖精であれば、確かに地の自分に空から攻め立てる構図になるのも想像に難くない。
 周回するのに1時間ほどだという、大きくもない湖。早めに向かった方がいいだろう。
 それに、時間も頃合いとなってきている。
 現在の視界は光源が乏しいという理由を覗けば良好だ。昼に発生すると言われる霧はなく、自分たちを照らすのは落ちかかった太陽の出す夕焼けの色。
 時刻が過ぎるにつれて視覚外からの舐める様な目線が強くなってくる。それは天狗の山で感じたような値踏みをする目線。

「随分血の気のある者がこの辺りには居るようだな」
「そうだよ。人里から離れたこの紅魔館近辺、人がいなくなってもおかしくはないからね。妖怪の原則は人を襲うこと。特に外来人は『何処からも必要とされていない人間』という印象が強い。だから攫う以上の事を行う輩もこの辺りから増えてくる」

 この目線は、追剥や恐喝を生業とし、最後には殺すことも辞さないような人間たちの飛ばす目線とよく似ている。
 相手を同じ人間とみていない。自分とよく似た獲物だという認識。それと、よく似ている。

「……本質はどこも変わらないということか」
「……そうかな。多様性があるのが人間の本質だと私は思うけど」

 呟いた内容に、ナズーリンは反応する。

「私だってこの妖怪たちの様な、いやもっと自分の利だけに固執した浅ましい人間を見たこともある。それとは逆に清廉潔白な人間も同じほど見た。妖怪にだってそのように善から生まれた者だっている。……あまり一部分だけで決めつけないでほしいね」

 その態度は、昼間の茶屋でみた怒りとはまた違う、理解を求める様な感情だった。
 仏教に関連する者だからこその矜持があり、それを伝えたがるような、そんな感情。
 彼女の言いたいこともわからないでもない。最も、それを取って喰らっていたという過去の事実もある。

「わかってはいる。ただ、自分がそちら側にいる以上闇の方が濃く見える。それだけのことだ」

 歩み続けるその先には、紅い光を漏らす館がおぼろげに見えている。
 落ちる陽の中、明かりに寄ろうとする虫の様にその歩みは速度を増していく。
 自分でも気づいている。このどこかに興奮しているその自身に。


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