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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

332深紅の協奏曲 ―真実へ向かうための行進曲 3―:2015/01/29(木) 00:14:34 ID:dpoNFIaY0

 そう言いながら、傍らにある褪せた本を一つ取り出す。幻想郷縁記と書かれたそれは、シリーズ物らしく同じタイトルの古いものがいくつか並んでいた。
 それと共にスタンドによる拘束のうち、口の拘束を解除する。だが肩にはまだ手をかけており、少女の小さな体には見合わない重圧が強く彼女を締め付ける。

「おや、あんちゃん。ナズーリンさんの知り合いで?」
「ああ。以前は命蓮寺に行ったことがあってな。良かったよ、知り合いに会えて。……なぁ?」
「えぇっ、ぁ、ああ」

 ほとんど恐怖からの嗚咽に近かったが、その表情は店主が配膳してくれた軽食をディアボロが敢えて直接手に取りながら話したため、見られていない。

「ははははっ! あんちゃんにそんなに頼りになる伝手があるなら拾ったこっちも一安心だ! それはあんちゃんの快復祝いだ、食べてくれよ!」

 そう言いながら店の中で、他の客に話し始める。どうやら、先ほどナズーリンから受け取ったその紙の詳細を、他の客にも伝えているようだ。

「……何を、した?」

 絞り出すように、視線は机の下に送ったままにディアボロに尋ねる。
 表紙を開く。……周りにある文字をさらに崩した古い言語のようで、とてもじゃないが読める物ではなかった。印刷等はしっかりしており古いものという印象はなかったが。

「お前は私を知っている。話の限りでは探している少年とはドッピオだろう」
「……! そう、いや、そうじゃなく。何をした、って聞いているんだ、私は」

 それはどこまでいっても虚勢だった。だが、そこに食らいつこうとするあたり、これも先に言っていた位の高さから来る矜持がそうさせるのだろうか。
 次は最新であろう、号数が大きいものに手を伸ばす。先ほどの物と同じく印刷等はしっかりしている。……あくまでここの文化レベルに相応して、だが。

「私はそういう能力を持っている。ただそれだけだ。それに、騒がれるのは性には合わない」

 キングクリムゾンの能力は時間を吹っ飛ばすこと。それ自体も長所だが、弱点としてその間は自分は干渉できないという欠点が存在する。
 それにより飛ばしている最中に攻撃などはできないのだが、それを補う方法はいくつかある。
 その一つとして『自分もその飛ばす対象に入れること』。それを行うことにより、吹っ飛ばしている間の事柄に干渉ができる。
 もちろん、その間に何が起きているのか、過程は全部飛ばされ理解はできない。だが、それにより自分の行動を相手に悟らせないまま完了させることもできる。
 あの瞬間、ナズーリンをひっつかみ、席に座らせるところまでを自分で行うと『予定』してから、ふっ飛ばした。周りに妨害をする因子が無ければ、定まった結果は変わらない。

「放っておけばあの場で声を出し、詰問を始めていただろう。そんなものは御免蒙る」

 淡々とありのままを話し、出された茶を飲む。
 そういえば、このように出された物をそのまま食べることも随分久しぶりだと思いだした。ドッピオの姿ではよくやっていたが、この姿の時にはいつも密閉された物から、異物が混入されていないか確かめてから食べていたものである。

「……お前は、一体……」
「お前の主人からもそれを聞いた、お前から聞くのは二回目だな」

 特に気にすることなく、幻想郷縁記の九巻目の表紙を開く。やはり文字は見慣れないものだが、すらすらと意味は入ってくる。
 不思議なものだと思いながら、その文章を読み始める。内容から察するに、それはまさしくディアボロの求めていた幻想郷について、その歴史と有名人についての知識のようだ。

「私は一介の外来人でそれ以上でもそれ以下でもない。この世界で何かを行うわけでも、何かを脅かすつもりもない」

 その言葉に、ナズーリンは怒りと疑惑の眼を向ける。それは、明らかに相手に信用を置かずに攻め入ろうとする意志。
 だが悲しいかな、それを行うには絶対的に力も度胸も足りていない。それがあるからこその眼だった。声を出していないのが、知性の高さの証だろう。


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