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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

329深紅の協奏曲 ―真実へ向かうための行進曲 3―:2015/01/29(木) 00:11:35 ID:dpoNFIaY0




 人里はその周辺を囲う様に、塀が存在している。そのどこかにある入口に村の若者が駐在しており、有事の際に皆を知らせる役を務める。
 だが、もちろん妖怪に対してはほとんど効果はない。そもそも飛べるので塀など意味を持たないし、悪意を持って襲ってくる妖怪はほとんどいないからだ。
 それでも、敢えて形式を違えて人を襲う妖怪も少なくはないし、そういった考えを持たない野生の動物が村に襲ってこないわけではない。
 可能性としては0ではないのだが……限りなく少ない可能性に依る者は多いわけではなく。

「すー……すー……」

 そこにいた若者は無防備にも門にもたれかかったまま寝こけていた。
 まだ寒い時分でもない、そのまま身体に支障をきたすことはないだろう。

「……気楽なものだな」

 穏やかそうに眠っている彼をわざわざ起こす理由もない。いろいろ聞かれても面倒ではある。聞きたいこともあるのだが。
 それよりはまだ活動的である里の中、あの喧噪に紛れた方がいいだろう。

「……でさ、俺は気になって気になってしょうがなかったんだよ。だからさ、聞いてみたんだ」
「ほんとか? 本当に聞いちゃったのか?」
「ああ。意を決して聞いてみたんだ。慧音先生、何で今日はいつもの帽子じゃなくて赤い洗面器を頭に載せているんですかって」

 店先では初老の客が卓を挟んで話に盛り上がっている。
 店内をざっと見渡したが、妖怪らしき姿はなく、老若男女区別なく、夜が更けてもその手を止めずに歓談に盛り上がっているようだ。
 もっとも、妖怪と言われても見た目が変わらない者が多いからディアボロに区別がつくわけではない。

「いらっしゃい、お客さん初めてかな? というか見ない顔だね。どうしたい、こんな夜更けに」

 禿げ上がった店主がカウンター内からディアボロに声をかける。そんな彼を妖怪と判断する術を持っていない。
 とはいえ、依然ドッピオの姿で里を歩いた時、日中であったが妖怪と人間が平和に暮らしていた。夜半でもそれは変わるまい。

「あぁ、その、…………」

 言葉を紡ごうとしたところで、不意に意識が薄れ始める。頭が何かを思考する前に脱力感に襲われる。

「おい、兄ちゃん!?」
「どうした、わ、こりゃひでぇ」
「水、水もってこい!!」

 騒ぎの声が聞こえるが、彼の耳にはうっすらとしか届かない。それより大きなまどろみが、彼を包んでいた。


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