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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6
314
:
深紅の協奏曲 ―真実へ向かうための行進曲 2―
:2014/12/26(金) 23:16:29 ID:NaoiPVXc0
(……!! まただ!)
「……ッ! アン、感じた? 今のははっきりとわかった。見て、幽々子様の食事が減ってる」
(……あ、あぁ)
先ほどの騒動から落ち着き、宴は終わりを迎えている。
多量に並べられた食事はほとんど空き、それらを配膳を担当している幽霊たちが片付けている。無論妖夢もその一人。
散らばしてしまった食器類も綺麗に片づけられ、最後に幽々子が食べている甘味が終われば今宵は終わりとなるだろう。
「……ですからね、小町。あなたはサボりをしないでちゃんと働いてくれればできる子なんですから。査定も高くしてあげられるのに。休みもちゃんと取らせてあげられるのに。
あなたが真面目に働けばその見返りを用意してあげられるのに何でやらないんでしょうか。ねえ小町。聞いていますかー」
「むぎゅ〜……」
騒ぎの主は小町に膝枕をしながら、手に持った棒で彼女の腹や胸を叩きつつ呟いている。
当の本人は聞きなれた内容だからか、はたまたその顔の示す打撃痕によるものからか。顔面に酒によるものではない紅潮を浮かべながら眠っている。
彼女の身体に悔悟の棒が振り下ろされるたびにぺこたんぽこたんと間抜けな音が辺りに沁みいる。
「幽々子様は食事を続けていて、箸が口に入ったままだというのに皿の中身が減っている。確かに少し見てないだけで全部食べちゃったりすることはあるけど注意してみればさすがにそれは私でも気づける」
(そうか)
「新しいおちょくり方か何かかと思ったけど……この感覚の隙間。明らかにおかしい。私だけじゃあないっていうのが一番の疑問点」
(主も気づき、自分も気づけた。漫然と過ごしていれば気づかないだろう。脳で考える者ならこういった感覚の隙間はあるものだ)
アンは遠い昔を思い出しながらも、『生きていた』頃の共通認識を語る。ほんの一瞬、1秒にも満たないような『自分が何をしていたのかわからない時間』。
大抵であれば直前に続けていた行動を再び続ければ誰も疑問は持たないし、もしそれが起きた時、毎日行うことの最中であったとしたら無意識に手が進められた、程度にしか感じないだろう。
それを同時期に、別の人間が感じ取れたことが奇妙なのだ。
「アン、あの子を連れてきて」
(……わかった。主は?)
「幽々子様を視ながら、賊を探す。いつまでも帰ってこない彼も心配だけど、私はここを離れられないわ。頼んだよ」
(御意)
「幽々子様の事だから、気づいてはいるのかもしれないけれど……私は」
(力量を理解していること、手を伸ばせる範囲を知っている事は悪し事ではない)
「……ありがと」
同じ姿に話しかけるその姿、はたから見ればそばの前後不覚の少女と同じように虚空に呟いているのみにしか見えない。
短い間に培われた、主従の絆。まだ謝罪の言葉が出てくるようでは完全ではないだろうか。
右手の刃を煌めかせ、アンは部屋を出る。向かうは彼の居た部屋。
アン自身は、賊ではなく彼の男。ドッピオではなくディアボロの力と、そう考えている。先ほどの会話から、干渉すべきではないとも考えていた。
だが主の命に反すればそれは道理に反する。もし何事もなければそこで彼に事情を説明し戻ってくればいい。
しかし、何もないのにこのような能力を使う必要があるだろうか? それはつまり何かのサインに他ならない。それでも個人的には干渉する気はさらさらなかったが。
「……あら、どうしたの妖夢? 何かあったの?」
その様に、幽々子は当然の疑問をぶつける。手には花の蜜を混ぜた氷菓を携えながら。
「幽々子様、お気づきになりませんでしたか? なんか妙です」
「みょん?」
「ええ、妙です。今アンにドッピオさんを連れてきてもらってます。注意してください」
真剣な面持ちで話す妖夢に対し、幽々子は変わらず表情を崩したままで。
「そうねー。私には釣り合わないもの。一緒にいるならあなたみたいのがちょうどいいわ」
「…………え?」
と、茶を啜りながら話していた。
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