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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

297深紅の協奏曲 ―真実へ向かうための行進曲 1―:2014/12/01(月) 14:00:41 ID:mNSIplWs0



 能力は、気づかれなければそれでいい。知られれば、時間をかけるほどに対策されるから。
 能力が枝葉のように多岐に分かれるのであるならば、わずかなら知られてもいいかもしれない。そう思うのは素人だ。
 僅かな情報だけでも、得られることが多い。まして、戦闘であるならばなおの事。
 なるべくなら使いたくはなかった。一撃で仕留められなければ、情報を持たれてしまう。
 そう思っていたが、

「ぐうっ……!」
「ははは、はぁ。そっちに逃げるか。15%くらいだったな」

 肩口から血が噴き出す。藍自らが塗りたくった血ではなく真新しい、自分の身体の傷。
 恐るべき身体能力を以て、直に飛び込んできた彼女から逃げるために、0.7秒『吹っ飛ばした』。飛ばさざるを得なかった。
 が、それでも直前にはすでに彼女の爪は肉をえぐりこんでいて、完全な回避には至らなかった。

「知っているぞ。お前の能力は。どこで生まれて何処で育ち、どんな時を過ごしたのかを知っているように。些細なことでも私はなぁんでも、お前の事は知っている。
 飛ばしたな? 何秒だ? 正確には感知できなかったが……1秒にも満たない時間だよな?」

 そして、すでに知っている。なるほど、確かにここに来てからは天狗の時と山の神の時、2回だがキングクリムゾンの能力は使っている。
 先ほど確かにこいつは自分の事を『視ている』と言っていた。二人は空白地帯で誰も見ていないと言っていたが、その予想を超える実力。
 相手は傷つけたその指を、自分の血を舐め、興奮した様子で、

「あは、はははぁ! 舐め取れないよなぁ! あんなヒキガエルのなまっちょろいやり方じゃあ!! 私にはできるぞ、最も冴えたやり方で!
 ……所詮私は主の手足だ。意にそぐわぬ行動を取ればその力は半分も出すことはできない。それでも、どうだ。追いつけたか? 見切れたか? ……くくっ」

 上機嫌に、魅せつけるように語りかける。赤く濡れた指を愛おしい物を愛でる様に。興奮からか同じように赤みの強くなった唇に寄せ。
 狂ったようで、それでもどこか芸術品を思わせる様な蠱惑的な瞳。その瞳が、ディアボロを見つめる。
 その姿を見ただけで、世界の中心が彼女であるかのように。そこに惹きつけられてしまうような。そんな魅力さえも感じられる。

「……色狂い共め……揃いも揃って……」

 経験がないわけではない。それでも、その一線を優に超えた表現には辟易する。なぜこうも、寄ってくるものはこんな者共ばかりなのか。
 知らなくてもいい事を知ろうとし、あまつさえ自らをも手中に収めようとしてくる。
 かつての自らの貪欲さを、そのまま味わわされているかのようにも思えるほどに。だからといって、それに流されるつもりは毛頭ない。
 相手が調子づいているその間に、自分も整える。闘いは、ここからだ。


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