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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6
276
:
深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 4―
:2014/10/29(水) 17:18:53 ID:tIpZCboU0
「……引力、か」
再び出会うことが当然というのであれば。それが当然の帰着というのであれば。
思い出す。過去にディアボロとして生まれたこと。ドッピオとして生まれたこと。
多重人格とは、心の傷の埋め合わせ。行ってしまえば、過剰な防衛本能。
今までは死ぬ直前まで心は裂け続け、死んでしまえばその状態は全て治り再び死ぬ。
実際に裂けきった二度目は、ごく最近。あの閻魔が『裁いた』のち、再び死ぬと錯覚したあの時。
「感謝、か。そうだな……ありがとう。それしか言う言葉が思い出せない」
この感情こそも、いつ以来だろうか。相手を尊重すること、無条件の謝の気持ち。
口から出すことはあっても、本意で言ったことなどあっただろうか。相手からのその気持ちを、受けたと感じたことがあっただろうか。
それは、彼にとって初めてだったのかもしれない。
「それで終わりか? そんな、三文芝居は」
突如、部屋に声が響く。
素早く辺りを見回すが、誰も……いる。部屋の片隅に置かれた行燈が、その影を照らしている。
揺らめく影は人の姿をしているが、その元にいるはずだろう影の主は姿が見えない。ただ、影だけが見えている。
「私はそんなお前を見たことがない。そんなお前を見ていたわけではない。お前は悪辣だ、お前は害悪だ、お前は吐き気を催す邪悪だ」
その影は形を変えてディアボロに近づく。人の形から、一つ、二つと何かが増えて影の形を変えていく。
何者、だろうか。侵入者がいればあの従者が、あの半霊が察知するだろう。悪霊? の類であるならば、亡霊姫が対処できるだろう。
それらに何もかからない、侵入者。口ぶりからは、対象は自分自身。
「何者だ」
そんな安っぽい言葉を求めているのではないだろう。『それ』からすれば、自分は被食者、相手が捕食者だ。
もちろん、それで終わるつもりはない。立ち上がり、その影に向けてスタンドを差し向けながらも一歩を踏み出す。
「そんなことを答える必要もないんだよ。あんなことを考える必要もないんだよ。お前は相変わらず、手の平に転がされ続ければいい。主に、私に」
にじり寄る様に、ゆっくりと歩み寄る。部屋はそれほど広くもないため、ディアボロが一歩を踏み出せば、そのまま影に足を踏み込める、はずだった。
突然、背後から自分の両腕を巻き込んで抱きつかれる感触。突然の触感に、心臓の鼓動が高く響く感覚と頭頂部まで一気に血流が昇っていく感覚。
背後のそれから感じるのは、圧倒的な肉食獣の気配。相手の身に着けている衣服に阻まれてもわかる、肉感的な柔らかな感触とそれに伴う早い鼓動。耳元に被せられる妖艶さを感じる吐息。
「なあぁぁあ、ディアボロ?」
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