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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

274深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 4―:2014/10/29(水) 17:17:49 ID:tIpZCboU0
「奴があの力に目覚める前の、失敗例。それにより近くの者全ての、生き物すべての人格が、精神が入れ替わった。人も犬も鳥も関係なく。
 その時、無闇に引っ張られることに危険を感じた私はあえて娘の肉体に精神を滑り込ませた。一番近しい者であるなら、気取られることはないと考えて。
 その時は精神と魂は同一の物であると考えていたが」
「そもそも、あなたは自らの精神、魂を自在に表に出したり、裏に潜めたりすることができる。それが、他者の肉体であろうと。
 さすがに相手の肉体そのものを支配できるわけではないようですが……それすらもできるようのであるならば、すでにそれは人間の枠を超えているでしょう」
「ドッピオにはできないが、私にはできる。自分の身体は自分で思い通りに動かすことはできるが、他者の身体ではできない。それは確かだ」
「本題に戻ります。ディアボロ。あなたがもし自分の精神を他者に渡したまま自分の肉体が死んだ場合、あなたはディアボロなのでしょうか? もしそうであるならば、あなたは『人間』なのでしょうか?」

 長い解説を話して、改めて映姫に問われる。
 彼女がどういう答えを期待しているかはわからないし、結局振り返ってみても答えはわからない。正解がそもそもないようにも思える。
 他にその答えを考える者がいるならば、それが十人居れば答えは十通り出てくるだろう。

「私は『帝王(ディアボロ)』だ、それ以外の何者でもない。生まれ落ちた時からの逸脱の身、今更そのことで悩むつもりはさらさら無い」

 映姫に突き付けた一つの答え。それが、これからの自分を示す決意の言葉でもある。
 ここに来た理由、その過程。それを知ったからこその、ここに来たるべき理由を自分に刻むために。
 それを聞いた映姫は肩と溜めた息を下ろし、

「この問いに答えを見つけなさい。それが今のあなたに求められる最後の善行よ」

 その言葉には、理解されなかったようなややも呆れたような感情が篭もっていた。




 日は落ちた。部屋に射し込む日光は既になく、外に僅かながらに点在する灯篭からの漏れる灯りと、柔らかな月の光が部屋を照らしていた。
 その光を遮る障子がか細い光をさらに細め、急にこの部屋に入った者ならどこに何があるのかわからなくなるだろう。
 中にいた3人には、ずっと部屋の中にいてその光に慣れているのもあってそのようなことは起きないのだが。
 ぽ、と幽々子が手を掲げるとその周りに光を纏った蝶の輪郭が現れる。
 その蝶は意志を持つように部屋の隅に置かれている行燈に向かう。その中に入り込むと、同じような色の明りが行燈に点く。

「お話は終わったかしら」

 日常の夜として使うには暗すぎる光源が、ここが、彼女が、亡霊の園とその主だということを思い知らされる。
 吹けば飛びそうな幽かな明かりが彼女の顔を照らし、妖しさと儚さを表していた。

「夜も更けて、お腹も空いてきたでしょう? 妖夢たちが作った美味しいごはんにしましょう。そうしましょう」
「……あなた、それを待っていただけでは?」
「さあ、聞こえませ〜ん」

 うきうきと、先ほどの印象を払拭するような声を出し二人を促す。

「二つ隣の部屋に、今頃皆が用意した晩餐の準備ができているでしょう。さあ、お立ちください。ご案内しますわ」

 先に立ちあがり、外への境を開いて二人を誘うように手招きをしながら、幽々子は先を行く。外は、部屋の中よりも明るく庭を照らしていて夕暮れとは違う印象を植え付ける。
 映姫もそれに続いて外に行こうとする。が、その後続はなかった。

「……どうしました?」

 映姫が、動こうとしないディアボロに問いかける。その表情は、途中にも見せた何かを考え込むような顔。

「先ほどの事を考えているのですか? それはまだまだ早いこと。至らぬ事に時間を費やすより、目の前の事に集中してはどうでしょうか?
 こういうのもなんですが、あなたは十分に理知聡い。その事をわからないとは思っていません。相手の誘いは受けるのも善ですよ」
「…………いや、それはわかっている。だが、一人の時間が欲しいのだ」


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