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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD5

1154:2012/06/19(火) 21:18:21 ID:KPAxMsyg0
前スレが980を超えた時、私のスタンド能力は『完了』する……
これが私の『前スレが1000を迎える直前に次スレを立てる程度の能力』だ……

ついに5スレ目まで到達しましたね。
ところで、2ちゃんにある本スレが過去ログに落ちてるけど大丈夫なんでしょうか!?

845サイバー:2014/01/28(火) 16:46:17 ID:mtNWmUhs0
ちょこら〜たさん!まるくさん!色々教えて下さりありがとうございます!
でも、間をあけるとスペースがあり過ぎてなんだか少し違う感じがするというか・・・
アドバイス貰ったのに・・・すいませェん・・・あと少し聞くんですが
此処で登校されたのってSSまとめで公開されんですか?

846サイバー:2014/01/28(火) 17:00:26 ID:mtNWmUhs0
あ、あと結構僕はプロットは結構できてるんで投稿スピードは早いと思います

847サイバー:2014/01/28(火) 17:54:06 ID:mtNWmUhs0
吉良「幻想郷?」
プッチ「そういう所らしい、人から忘れられた幻想が行きつく場所と言われている。」
吉良「そんな所に二なんで私たちが来たのだろう・・・人に忘れられるようなことしていたか・・・?」
プッチ「そんなことはしていないだろう・・・ただ・・・」
吉良「ただ?」
プッチ「スタンドの可能性などもあり得るかもな・・・」
吉良「スタンドか・・・」

吉良とプッチは二人とも「スタンド」という物を持っており、それはそのスタンドを持つもの精神のビジョンであり
スタンドはその持ち主の心の形なのである。吉良の能力はこっちで言うと「触れたものを何であろうと爆弾に
変える程度の能力」である、そしてプッチは「記憶を物にして保存する程度の能力」という所である。
そして、色々言い合っているうちに、慧音が茶を沸かし、入ってきた。
慧音「二人とも、茶を沸かしておいたぞ。」
プッチ「ああ、ありがとう。」
吉良「感謝するよ・・・」

848サイバー:2014/01/28(火) 17:54:37 ID:mtNWmUhs0
慧音「そういえばまだ自己紹介していなかったな・・・私は「上白沢慧音」という。

慧音はお茶を二人の前に置きながら自己紹介をしていた。

吉良「私の名は「吉良吉影」、何処にでもいる普通のサラリーマンだ。」
慧音「(さらりーまん?、ああ、外で働いている人の事なのか・・・?)」
慧音「あ、そうだ他の外来人を探すなら紅魔館に言ったらいいんじゃないか?あそこならそこそこ広いし・・・」
吉良「そうだな・・・広いほど人が多い可能性は大きい・・・」
プッチ「じゃあ紅魔館都やら「には私が行こう。」
吉良「まて、私はどうしていかないんだ?」
プッチ「吉良は傷がひどいだろう・・・紅魔館までなら私のスタンドでもいけるだろう」
吉良「そうか・・・無事を祈っておこう・・・」

そのあと二人は、「紅魔館」をはじめとし、次に、「アリス邸」その次から「永遠亭」、「守矢神社」三途の
川を渡り「白玉桜」という感じで進めていっていた・・・

849サイバー:2014/01/28(火) 18:12:58 ID:mtNWmUhs0
一方その頃・・・

???「はぁー今日も賽銭箱の中身は空か〜」
???「そんなに悲しむことじゃないでしょう・・・何なら私の家の物を持って帰ってもいいのよ?」
???「いや、遠慮しとくわ・・・」
???「で、今日は何で来たの?」
???「いやねぇ・・・?何かが最近結界を破って入ってきたのよ・・・」
???「?、いつもの事じゃないの?」
???「いやね?なにか結界をすり抜けて入ってきたといってもいいかしらねぇ・・・」
???「すり抜け?」
???「うーん、まあ結界に別条はなかったから良いんだけどね・・・」
???「ふーん」

そういうと片方は空間に出来た隙間の中に入っていった。

850サイバー:2014/01/28(火) 18:14:30 ID:mtNWmUhs0
???「あ、ポケモン全クリしたから新しい奴持ってきてねー♪」
???「はいはい・・・今度はゼルダの伝説でも持ってきましょうかね・・・」

そういうと、隙間は閉じもう片方の少女はのんびりと、茶を飲むのであった・・・

???「外来人ねぇ・・・まあどうでもいっか、結界に害がないならね。」
そういうと、ズズズと、音をたて、少女はお茶を飲むのであった・・・

851どくたあ☆ちょこら〜た:2014/01/29(水) 09:13:19 ID:/kTZD9LQ0
投稿お疲れ様です。
誤字脱字が激減してグッと読みやすくなりました!

まとめwikiについてですが、あれは誰かが転載しない限り載ることはありません。私の場合は自分で転載する際、ついでに誤字脱字の修正を行っています。
wiki左上の『編集』メニューから行えるので、試してみて下さい。

852サイバー:2014/01/29(水) 16:55:12 ID:0Czde9fo0
ちょこら〜たさん!おしえてもらって申し訳ないんですが、
編集メニューからは、どうしたらいいんですか?
無能でスイマせェん・・・

853どくたあ☆ちょこら〜た:2014/01/29(水) 17:27:02 ID:/kTZD9LQ0
確かに、いきなりページ作成というのは難しいですね。私も最初は別の方にやっていただいていました。無茶言ってすみません(汗)

一度ページ作成した後なら、誤字脱字の編集を行うことは簡単なので、よろしければ私が作成致しますが、いかがでしょうか?

854サイバー:2014/01/29(水) 17:44:12 ID:0Czde9fo0
出来ればお願いします・・・また今度で良いんですが
もっと詳しく教えてくれたらとても嬉しいです・・・

855サイバー:2014/01/29(水) 18:44:01 ID:0Czde9fo0
あ、出来ればタイトル名は「東方荒木荘」でお願いしたいですねぇ・・・

856サイバー:2014/01/29(水) 18:50:42 ID:0Czde9fo0
                             第3話
                       「DISCマン、ホワイトスネイク」
プッチは道を歩いていた、慧音から教わった道を行きながら・・・

プッチ「やはり慧音の言っていたことは正しかったようだな・・・もう湖が見えてきたぞ・・・」

プッチは紅魔館少し前にある湖についてた。

プッチ「ここを渡れば紅魔館まであとすぐか・・・」
???「おい!そこのおまえー!」
プッチは振り返った、そこには水色の少女が空に浮いていたのである!プッチは最初には私の幻覚か・・・
??と思って気にとめずに、そのまま進んでいった・・・

???「おい!お前だと言っているだろ!無視すんなー!」

857サイバー:2014/01/29(水) 18:51:16 ID:0Czde9fo0

プッチはやはり幻覚なのではないと思い、後ろを振り向いた、そして後ろには、さっきと同じ、水色の服を着
ている少女の姿があった。

プッチ「すまないが私に言っているのかね?」
???「そうあんたよ!アンタ以外に誰かいるっての!?」
プッチ「確かに誰もいないな・・・・」
???「何勝手に納得してんのよォォォォォォ!!!」

水色の少女はかなり怒っていたようだ、無視されたのがかなり勘に触ったのだろうか。

プッチ「まあそう怒るんじゃない・・・素数でも数えて落ち着け・・・」
???「素数ってなに!?あんたあたしのことバカにしてんの!???」
プッチ「素数とは1と自分の数でしか割れない・・・孤独な数字だ・・・」
???「1と自分でも割れない・・・?算数なんて分かんないからいいや!」
???「あ!あんた!もしかしてこの湖渡りたい感じ?」
プッチ「そうなんだがこの湖を渡りたいんだが岸からまわってもいいんだがね・・・」

858サイバー:2014/01/29(水) 18:54:51 ID:0Czde9fo0
???「だったらあたしに勝てたらここを通っていいぞ!」

プッチは意味が分からなかった、私に勝てたらここを通っていい?ここを自分のだとでも思っているのだろうか・・・
この子供は・・・全く持って親の顔が見てみたい・・・

プッチ「暇つぶしなら他でやれ・・・私は急いでいるんだ・・・君の遊びに付き合っている暇は無いんだ・・・」
???「はあ!?あたしが暇そうにしてるとでも思ったの!??私はいっつも忙しいわよ!」
???「ああ~っ!!イライラするッ!もうあんたの事どうなっても知らないわよ!!」
???「凍符「パーフェクトフリーズ」ッ!!」

そういうと、チルノの周りには、色鮮やかな光の弾が大量に出てきた!

プッチ「何だこれは!!クッ!「ホワイトスネイク」!!!」

そういうとプッチの体からは吉良のとは違った大男が姿を表した!色は少し紫色の体に縞模様で

859サイバー:2014/01/29(水) 18:55:46 ID:0Czde9fo0
文字が書かれていて顔は黒い被り物を付けており、顔は見えない。

プッチ「くっ!!ホワイトスネイクは戦闘スタンドではないッ!このままではやられてしまう!!!」

プッチは、ドンドン出てくる光の弾を撃ち落としながら、弾をよけていた、すると、一斉に、弾は止まった!

プッチ「何だ・・・?攻撃はやめたのか?」

そんなことを思っていると、少女の方から違う光の弾が飛んできた!しかしプッチはそのの弾を綺麗によけると
胸からあるCDのようなDISCを取り出した!

プッチ「クッ・・・これを使おう!「シルバーチャリオッツ」!」

そういうと、プッチはそのDISCを頭にねじ込み、ホワイトスネイクを引っ込めた、その代わりに、中世時代の
騎士の様な姿のものが出てきた。

860どくたあ☆ちょこら〜た:2014/01/29(水) 21:22:28 ID:SPEQW4y.0
こちらも投下開始します

861〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:23:43 ID:9LFgiOfc0
【第二部】〜Saint Babel Run〜
第四話 『片鱗 中編』


トンガリ帽子が変化した黒い一角、頭部から背中にかけて輝く金の鱗、そして体表全体を覆う黒と腹部の白のコントラストなどに、魔理沙の特徴は受け継がれてはいる、が。
しかし、それを『面影が残ってる』などと無神経に表現しようものなら、世の婦女子から冷然たる視線を突き刺されることは想像に難くないほど、
その姿はかつての可憐な魔法少女の美貌からは掛け離れて醜く、おぞましいものであった。
「ギャアアアーーース!」
魔理沙が、否、先程まで魔理沙であったモンスターが、咆哮した。鋭い牙がズラリと並んだ大口を目一杯開いて。
「…………え……?ま………魔理…沙…!?」
茫然と、誰に問うでもなくチルノの口から呟きがこぼれる。
「【スタンド】だ…ッ!この『トカゲ共』は【スタンド能力】だッ!
俺の【皇帝(エンペラー)】を目視で避けやがったッ!
すまねえなチルノ……!おめーの言ってたことは間違ってなかった…まんまと嵌められちまったぜ…
【スタンド使い】だぜ、この魔理沙っツー魔女っ子はよォーッ!!」
額に汗を浮かべながら、ホル・ホースが叫び、彼が理解した事実をチルノに告げた。
「ッ!?」
同時に、彼は【マンハッタン・トランスファー】から伝わる『気流の乱れ』を察知。
瞬時に正面に向き直ると、『トカゲ共』が一瞬止めていた行軍を再開させ、我先にと迫ってきていた。
「チッ………!」
これ以上包囲を狭められてはひとたまりもない。ホル・ホースは自身の脳内で渦巻く、魔理沙の変貌に対する諸々の困惑を瞬時に塗り潰し、暗殺者の眼差しで銃口を『トカゲ共』に向ける。
だが、


ガンッ
ゴッ


「ギャアァッ!?」
「…あ?」
真っしぐらに向かって来た『トカゲ共』は、『パーフェクトフリーズ』の障壁を歯牙にも掛けないと言わんばかりに、何の捻りも無く直進し、
宙に浮く超低温の結晶に激突しては、体温の急激な低下によるショックでコロコロと死んでいく。
そりゃそうなるだろとツッコミを入れたくなるほど、面白いくらいに自滅していくのだ。
「なんなのコイツら!?自分から弾幕に飛び込んでくるなんて!
どんだけバカなのよ!」
「なにがしてぇのか分かんねぇが、『チャンス』だ!一気に片付けるッ!」


ドゴォォーーンッ!
ガァンッ!!


腰のホルスターからリボルバーを抜き、ホル・ホースは2丁拳銃で乱射した。運良く『パーフェクトフリーズ』を通過した『トカゲ』は、先程と同じく機敏なサイドステップで【皇帝】の弾丸を避ける。だが、明らかに『寒さ』によって運動能力が低下しているのが見て取れた。
そこに追い打ちをかけるように、【皇帝】と拳銃の弾丸が雨霰と迫る。
「グギャッ?!」
「ギィイッ!?」
弾丸に撃ち抜かれた『トカゲ共』が、金切り声を上げて肉片を飛び散らす。しぶとく避け続けていた者も、【マンハッタン・トランスファー】と『パーフェクトフリーズ』に反射された拳銃弾を背中に喰らい、呆気なく散っていった。
【マンハッタン・トランスファー】で『パーフェクトフリーズ』の氷の角度、表面の湿り気やザラつき、湾曲を精密に測定し、反射させた跳弾の精度は、コンピュータ制御のそれを上回る。百発百中の必中率で『トカゲ共』を薙ぎ倒し、瞬く間に群れの数は激減していった。
「っ!?えっ?!」
チルノが『トカゲ共』に向けている目を見開いた。撃破された『トカゲ』たちの死体が、痙攣しながら萎れるように縮んでいき、死んだ鼠に姿を変えたのだ。

「なんだコイツらァァァーッ?!只の【スタンド】じゃあないッ!『物体憑依型』にしても、数が多すぎる…!どういう『能力』なんだこりゃあ…ッ?!」

「トカゲを倒したら鼠になった!?なんだってんのよさっきからもぉーっ!」

ホル・ホースが歯軋りし、チルノは癇癪を起こして叫ぶ。

862〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:24:14 ID:9LFgiOfc0
「はっ!?」

再び『気流の変化』を察知し、ホル・ホースは振り向きざまに【皇帝】の銃口を向ける。

「ギャアアアァァーーーースッッ!!」

『大トカゲ』と化した魔理沙が、その巨体を振り乱し飛び掛かってきた!

「チルノォーー後ろだァァーーーッ!」

チルノに警告し、彼は【皇帝】で迎撃する。空中に身を躍らせる魔理沙目掛け、超高速の手捌きで七連発の『スタンド弾』を撃ち込んだ!




ヒュンッ




しかし、至近距離から放たれた七発の凶弾を、魔理沙は事も無げに躱し、

「な…ッ!?」




ブォンッ!




驚愕に目を見開くホル・ホースの鼻先に、彼女の長く強靭な尾が肉迫した。




バギィッ!




「ぶげあァッ!!」

フルスイングで放たれた一撃を叩き込まれ、ホル・ホースの身体は馬上から離れて宙を舞う。

「ホル・ホースっ!?」

自分の視界から消えたホル・ホースに向けてチルノが叫ぶが、すぐさま魔理沙は次の標的をチルノにロックオンし、彼女に襲いかかった。

「うわぁっ?!」

咄嗟に身を躱すが、魔理沙の鉤爪がチルノの頬を掠め、血が流れ出す。

「くっ……!このっ!!こっち来るなぁーーーっ!!」

ギリリと歯を噛み締め、『大トカゲ』を睨み付けると、両手から『パーフェクトフリーズ』を放射した。

「ッ!」




ヒュンッ




魔理沙は危険を覚えたのか、先程よりさらに俊敏な動きで後退し氷の弾幕から逃れると、




ブンッ!




背後から後頭部に迫っていた七発の『スタンド弾』を、頭の一振りで容易く回避した。

「お、おいおい………、すげえ『動体視力』だな………あんな奇襲攻撃なのによォ〜〜〜余裕こいてかわしやがったぜ…!」

「えっ!?」

声の聞こえた方を振り向き、チルノは驚嘆する。

「てめえの目的は…やはり次の【遺体】を探す事か?それとも単に…オレらを殺して奪うだけか?」

ホル・ホースが、先程魔理沙の尾の直撃を受け吹っ飛んだ筈のホル・ホースが、『車椅子』に腰掛けて佇んでいた。

「ホル・ホースっ!!」

『子分』の無事な姿を見て、チルノは安堵の声を上げる。




魔理沙に【皇帝】の弾丸を避けられた瞬間、ホル・ホースは持ち前の危機察知能力で折り畳み式の『車椅子』を盾のようにして構え、尾の一撃を凌いでいた。ぶっ飛ばされた直後、空中で『車椅子』をワンプッシュ展開し、見事強化炭素繊維製の車輪で着地したのだ。

863〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:26:09 ID:9LFgiOfc0
「いくつか可能性を考えたがよォ……これで決まりだな。」

視線は魔理沙に向けたまま、ホル・ホースは六発撃ち尽くした拳銃の排莢・装填を左手のみで器用にこなす。

その最中も『トカゲ共』が飛び掛かって来るが、右手の【皇帝】で見向きもせずまさしく片手間といった感じに、容易く撃ち抜いては肉片をぶち撒けていく。

「この『トカゲ共』は、『恐竜』だ…そんでその正体は【スタンド能力】で変身させられた動物で、『スタンド本体』は魔理沙、ここまではセオリー通りっつートコか。

あともう二つ、分かったことは……」

拳銃の再装填を終え、【皇帝】の引き金を二度引く。弾丸は『車椅子』の車軸にセットされ、【回転】のパワーを車輪に伝達させた。

「『動いている物』にはとんでもなく鋭い反射神経で反応するが、『止まってる物』は見えてねえ。だから発射直後の『パーフェクトフリーズ』は警戒するが、『固定』されちまうと馬鹿みてえに突っ込んで自滅するっつーワケだ。

ーーーーーそんでーーー……分かったことの最後の一つ……コイツが一番重要なヤツなんだがよォ…」




ギャルンッ!




【回転】によって得た爆発的な推進力で『車椅子』を急発進させ、馬とチルノの間にドリフト走行で走り込むと、

「チルノ!掴まれッ!」

「あっ?うん!」

左肩にチルノがしがみつき、ホル・ホースは馬の頭を一撫でして宥める。馬はブルルッと鼻を鳴らし、その場で立ち尽くした。

「一気に走り抜けるぜ!振り落とされんなよッ!」

そう呼び掛けると、再びフルスロットルで急発進し、なんと魔理沙目掛けて真正面から突撃していった!

当然、『恐竜化』した魔理沙は迎え撃とうと咆哮し、牙を剥いて襲い来る。

「チルノッやっちまえェェェーーーッ!!」

「分かってるってっ!あたいにまっかせなさいっ!」

ホル・ホースの首に右手を回して縋り付くチルノが、ニッと勝気に笑い、左手に強力な冷気を凝集させる!

「『パーフェクトォォォフリィィィィィィズ』ッッ!!!」

強烈な低温を伴った氷の弾幕が、眼前の魔理沙目掛け放たれた!

「ッ!?」

あと一秒で牙が届くほどの至近距離から弾幕を発射された魔理沙は、慌てて身を引き攻撃を躱す。その真横を『車椅子』に乗った二人が全速力ですり抜けた。

「やったぁ!ざまーみろっトカゲ!あはははっ!」

後ろを振り返り、チルノは小さな拳を振り上げて快活に笑う。魔理沙と『恐竜共』はすぐさま追撃を開始し、二人の後を猛然と追い掛け始めた。静止している馬には見向きもせず、横をすり抜けていく。

「分かったことの最後はーーーーーー!『寒さ』に弱いーーーーだ!!

大昔に絶滅した恐竜は、有力な説によると、巨大隕石の衝突が撒き散らした『塵』のせいで太陽光が地上から遮断され、一気に低下した気温に『適応』できず死滅したっツー話だ!

だからチルノ、オメーの最強の力、『冷気を操る程度の能力』が頼りだぜ!」

「ふふんっ!『子分』を守るのが『親分』のギムよ!」

自慢げに鼻を鳴らし、胸を張るチルノ。

『パーフェクトフリーズ』は『車椅子』を基点として『固定』してあり、常に二人の周囲を『冷気の防壁』で保護、『恐竜共』を牽制している。

「これで馬は大丈夫だ!『恐竜共』は俺たちが引きつけてる!暫くすりゃ馬が勝手に俺の匂いを追って合流してくる筈だ!

俺らはこのままひとまず森を抜けて、開けた場所に出る!迎え撃つか無視して逃げるかはその後に考えるっつーコトにするぜ!」

「分かったっ!見てなさいアイツら、ケチョンケチョンにしてやる〜っ!」

『森のトンネル』を全力疾走で駆け抜け、【魔法の森】の外へ向かおうとした、その時だった。

「っ!

ああっ!?」

唐突に、チルノの口から驚きの声が洩れた。

「ホル・ホース!大変だ!見て!あれ!あっちっ!」

興奮し上ずった声音で叫び、森の彼方の何事かをしきりに指差す。

「ん?なんだァチルノーーーー、ッ!?」

チルノの示す先に視線を向け、直後ホル・ホースも息を呑む。

森の密集した樹木を突き破りそびえる、あまりに不自然な『山』。その頂上には見覚えのある形状が刻まれ、さらにその異様さを際立たせている。

「……コイツは……運がイイのか悪ィのか…!ヒヒッ…!このタイミングで【悪魔の手のひら】のお出ましかよ…!」

テンガロンハットの鍔の下、ホル・ホースの口角がニヤリとつり上がる。

今朝方新聞で見たその姿、【悪魔の手のひら】そのものだった。

864〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:28:25 ID:9LFgiOfc0
「……よく見つけてくれたぜチルノ…今わかったッ!北斗七星ッ!形が一致するぜ。そして場所もだッ!『crūs(クルース)』の方は北極星!文字自体が星座を表す地図になっているんだッ!」

『ミニ恐竜』が五、六匹追い縋ってきているが、『パーフェクトフリーズ』に阻まれ手出しできず、付かず離れずの距離で併走してきた。

「北斗七星が地上に沈む位置!!それを示している!!星座を山と地上に合わせろ!!【遺体】のある場所はあの『丘』だ!

これから取りに行くぞッ!おまえさえその気なら!」

「あったりまえじゃない!今すぐゲットしに行くっ!魔理沙にも他の誰にも、絶対に渡すもんかっ!!」

闘志と期待を漲らせ、チルノが快諾の意を告げる。

「ヒヒッ、そう言ってくれると信じてたぜ…ッ!

しっかり掴まれよチルノッ!これからちょいとばかし運転が荒れっからなァッ!」

ギャンッとハンドルを切り、『丘』目指して森の中に突入していく。

並走していた『ミニ恐竜共』は慌てて道を譲り、『パーフェクトフリーズ』を回避した。

「ン?」

その時、ホル・ホースの視界の端に、妙な光景が映り込んだ。

いや、正確に言えば、先程から【マンハッタン・トランスファー】で神経を尖らせ後方を監視していた際、覚えた違和感の正体を、この方向転換の瞬間に再認識したのだ。




“魔理沙が、追撃の脚を止めていた”




『ミニ恐竜』ですら【回転】でブーストした『車椅子』に追いつけるのである、あの巨体を誇る魔理沙の脚力ならば、いとも簡単に二人を追い抜けた筈だ。にも関わらず、それをして来なかった。『異常が起こらないこと』が異常、それがホル・ホースの覚えた違和感の正体であった。

「(…なんだ……あれは…?)」

ホル・ホースが横目で捉えたもの。魔理沙が脚を止めた代わりに、鉤爪の付いた右手で構えている、八角形の物体。

チルノもそれに気付くや否や、焦燥した声色で叫んだ。

「ホル・ホース!危ないっ!避けてっ!すっごいのが来るーーーッッ!!」

「はッ!!?」

事故に遭った人間が見るという、走馬燈の情景ーーーホル・ホースは幾度となくそれを体感し、その度に生還してきたーーー彼はその刹那の意識の中、光の粒子が『八角形』に凝集していく様を見た。




ドオオォォォォーーーーーーッッッ!!




光の奔流が魔理沙の手から溢れ出し、閃光が【魔法の森】の陰影を駆逐した。

ホル・ホースの世界の全てを、黄泉の国から訪れる白い光が塗り潰した。

865〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:29:05 ID:9LFgiOfc0



「うおおおおオオォォォォーーーーーーッッ!!?」

車軸に伝達させる【回転】をアクセル全開でふかし、『車椅子』は跳ね上がって宙を舞う。

空中に固定された『パーフェクトフリーズ』の氷を、車輪で踏みにじり足場にし、二段階の跳躍を決めた瞬間、

一瞬前には『車椅子』の車輪が轍を刻んでいた地面を、激烈な光線が通過した。

「にゃ、にゃんじゃコリャアァァーーーッ!??」

辛くも光の一撃を逃れ、ホル・ホースが舌をもつれさせながら絶叫する。

「『マスタースパーク』!魔理沙の得意スペル!!いつもはもっとデッカイんだ!あの『丘』がすっぽり入るくらいにっ!」

チルノの叫びを耳元に聞き、ホル・ホースは自分たちの置かれた状況の深刻さを理解した。




ガサガサガサッ




「ゲッ!?」

空中に踊る『車椅子』の上で、ホル・ホースは苦々しく呻きを洩らした。魔理沙から指示を受けていたであろう『ミニ恐竜共』が、樹上で二人を待ち構えていたのだ。

咄嗟の『マスタースパーク』の回避に専念していたため、『パーフェクトフリーズ』の防壁は地上に置き去りだ。今この瞬間ならば、『恐竜』は冷気に阻まれることなく二人を襲撃できる。

「ウシャアアアアーーーーッ!!」

「ギャアアアーーース!」

剃刀のような牙が並ぶ口をカッと開き吼え、『ミニ恐竜共』は二人に飛び掛かった。

「うおッ!!」

「わっ!?」

二人は咄嗟に腕で急所を庇い、『ミニ恐竜』は二人の腕に喰らい付く。

「イッタぁぁ!?このっ!バカトカゲ!あたいから離れなさいっ!!」

痛みに涙を滲ませて、しかし瞳には熱い怒りを燃やし、チルノは体表面から冷気を放った。忽ち『ミニ恐竜共』は凍りつき、鼠やらの小動物に姿を変えて彼女の腕から剥がれ落ちていく。

「クソッ!」

右腕に喰らい付いた『ミニ恐竜』三匹に、拳銃を突きつけ撃鉄を起こす。

「くたばりやがれクソケダモン共がァァーーーッ!」

ゼロ距離から放たれた怒涛の超速三連射を、しかし身軽過ぎる動きで悉く躱し、『ミニ恐竜共』はホル・ホースの腕から肩へ飛び乗った。鋭利な牙を彼の首に突き立て、頸動脈を喰いちぎろうと一斉に襲いかかる!




バスビシャバシィッ!




「ギャッ!?」

三発の銃弾がホル・ホースの頬を掠め、三匹それぞれの頭部をブチ抜いた。




【マンハッタン・トランスファー】による、一度回避された弾丸の反射。宙を舞うホル・ホース自身の複雑な動きをも織り込み軌道計算した、芸術的とも言える狙撃。僅かでも精度が狂えば自分の脳天に風穴が開く、生死を賭した大博打である。しかし、この程度の賭けに臆すような男では、彼の鉄の信条を守り通すことなどできないのだ。




「(ン…?)」




バンッ!




身を翻し、車輪側から見事に着地する。流石は八意印の『車椅子』、この程度の衝撃ではビクともしない。着地後、再び【皇帝】の弾丸を車軸にセットし、すぐさま急発進、先程の隙に距離を縮めていた『ミニ恐竜』とのチェイスを再開する。

「ーーーーチルノよぉ、オメーさっき言ったよな、“『マスタースパーク』は普段はもっとデカイ”って……」
「うん、いつものが腕の太さだとしたら、さっきのは小指くらいよ!まあ、あたいは何度もその本気の魔理沙と戦ってるけどね!」
チルノが背後を振り返り魔理沙の動向を窺いつつ答える。
「…そうか……、そいつはかな〜りヤバいぜ…!」
チルノの言葉を聞き、ホル・ホースは苦い表情を浮かべる。『恐竜状態』では魔力が上手く扱えないのか、ホル・ホースの左腕にある【遺体】を傷付けないよう手加減したのか。おそらく後者だろう。
となると、真正面からの戦闘は絶望的になる。さっきは上手く躱せたが、そう何度も避けられるものではない。【マンハッタン・トランスファー】でもチルノの『パーフェクトフリーズ』でも防ぎようの無い、厄介な攻撃だ。
「(くそッ!アイツ、『強い』…!相当な強敵だ……!正直勝てる気がしねえ……ッ!!)」
厄介と言えば、もう一つ。着地の間際に気付いた、二人に起こりつつある『異変』が、この上なく戦況を切迫させていた。

866〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:29:56 ID:9LFgiOfc0
「ーーーーーーなあ……チルノ…今さっき気付いたんだがよ…」

額に冷や汗を浮かべ、ホル・ホースはその恐るべき事実をチルノに告げた。

「…魔理沙の目的が………他の動物を仲間にして…この俺の【左腕】を……奪う事…なら!おそらく魔理沙の足で傷つけられると『恐竜化』が感染する……それがたとえカスリ傷だろーと感染する…ッ!」
「え…っ?」

チルノは、自分の手に目を落とし、そして絶叫した。

「はっ!!うわああぁぁーーっ!あ…あたいも!」

彼女の柔らかく小さな手は、醜悪な鱗に覆われていた。

「傷をつけられた!!オメーも俺もだ!すでに感染に入っているッ!まもなく俺らは『恐竜化』するッ!」
「なっ…なによそれええぇぇ〜〜〜っ!?」

ホル・ホースも口の端が裂け、鋭い牙がそこから覗いている。着実に『恐竜化』が進行していた。

「この速さなら、もってあと三分……!俺らが3分以内にやる事は…あの丘の上の…【聖なる遺体】を手に入れる事だ!!

俺のキズの進行がなんか遅くなっている…左腕のウロコなんか消え失せてるぜ。」

見ると、確かに、チルノに比べてホル・ホースの『恐竜化』具合は軽症であった。

「『恐竜化』が進んでいるのはチルノ、オメーだけだ。きっと、俺はこの左腕の中に【遺体】を持っているからだ!【遺体】の『聖なる力』が感染をくい止めてんだよ!!

あの岩山の【次の遺体】を手に入れれればッ!オメーの方の『恐竜化』も無力化できるはずだ!!

それに、【遺体】を二人とも持ってりゃ、ヤツも無闇に『マスタースパーク』を撃ったりはできねぇだろうしなッ!」

「……分かった!急いで向かうわよっホル・ホース!」

『目的』を理解し、覚悟を決めた面持ちで、チルノはホル・ホースに檄を飛ばす。

「おう!だがよォチルノ、オメーにもさっきよりももっと頑張ってもらうぜッ!」

言うと、ホル・ホースは水筒を取り出した。背後に迫る『ミニ恐竜共』を確認し、後方に水筒を放る。弧を描いて飛ぶ水筒が、群れの最前列に到達した時、




メギャンッ!

ドゴオォォーーzーンンンッ!




【皇帝】を出現させ、水筒を撃ち抜いた!内部を満たす水に【回転】が伝播し、霧状に撒き散らす!

「喰らえッ『マイナスK』ーーーーッ!!」

『恐竜共』に向き直ったチルノが、両手から限界を超えた超絶対零度下の冷気を解き放つ!撒き散らされた水と【魔法の森】の湿気が、極低温の霧に変貌した!

「グギャッ!?」

突如視界を遮った霧の発生に、『ミニ恐竜共』は慌てて脚を止めバックステップで後退する。何匹かは霧の冷気に巻き込まれ、凍りついてくたばった。

「グルルル………ッ…?」

『森のトンネル』、やや離れた位置から戦況を俯瞰していた魔理沙は、喉を鳴らし首を傾げた。

立ち込める濃霧は煙幕となり、超越的な『恐竜』の視力を妨げる。

やがて、霧が晴れ、森の中が見渡せるようになった。

「?」

やはりと言うべきか、そこに二人の姿は無かった。だが、『ミニ恐竜共』の様子がおかしい。『攻撃』の命令は解除していないのだから、匂いや轍の痕を手掛かりに追跡を再開するはずなのだが、それをせずただただ右往左往している。完全に『目標(ターゲット)』をロストしているようだった。

「ッ!!」

二人が最後にいた場所を注視し、魔理沙はその異変に気付いた。車輪の轍と匂いが、二人がその場で蒸発したかのようにスッパリと途絶えているのだ。

だが、かつて一人の魔法使いモドキであった魔理沙は、すぐさま一つの『結論』に達した。二人はおそらく、空へと逃げたのだ。

しかし、勿論ホル・ホースや『車椅子』に飛行能力は無く、チルノも大人一人を抱えて飛べるほどの馬力は持ち合わせていない。ではどうやって、二人は車輪の痕跡を残さず消えたのであろうか。

魔理沙はグンと頭を上げ、爬虫類に似た瞳で、夜の空を睨み付けた。

867〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:31:06 ID:9LFgiOfc0



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「よしッ!上手く連中を撒けたみてえだ!俺らを見失って頭抱えてやがる!

もう一踏ん張りだ、頼むぜチルノッ!」

「へへん、こんのくらい、お茶の子さいさいだ……ッ!ホル・ホースこそ、間違って落ちないように気を付けなさいよ!」

眼下に【魔法の森】を見下ろし、二人は軽口を叩き合う。

ホル・ホースとチルノは、『ET』の有名なワンシーンのように、紛れもなく空を飛んでいた。だが、先程の魔理沙の懸念通り、彼らが飛ぶことなど不可能な筈。

そんな疑問は、彼らの空中逃避行の様子を間近で見たなら、自ずと氷解するだろう。

ホル・ホースが駆る『車椅子』の車輪は、空に『固定』された『氷のレール』の上を踏み締めていたのだ。

「『パーフェクトフリーズ』で『空の道』を造って、最短距離で【遺体】を目指す作戦ッ!今ントコすこぶる順調だぜッ!

このまま【悪魔の手のひら】に着地してやるぞ!」

「オッケー!まかせて…っ!」

相当な集中力を必要とするのか、チルノの額には汗が浮かび、眉間に険しく皺を寄せている。だが、もう【悪魔の手のひら】は目前だった。

「よしッもういいチルノッ!こっからならひとっ飛びだ!」

ホル・ホースは叫び、車軸の【回転】を一気に加速させる。車輪は勢い良く『氷のレール』を蹴り、『車椅子』は目的地目掛けて射出された。




ズザザザザーーーーzーーッ







【悪魔の手のひら】周辺の砂地に見事着地、砂煙を上げてブレーキを掛ける。

「やった!あたいたちが『先』だっ!」

チルノがガッツポーズで歓声を上げる。

「いや、まだだ……!【遺体】をヤツより先に取るまで、油断は禁物だぜ…」

チルノにそう告げると、ホル・ホースは辺りを見渡した。【悪魔の手のひら】の名の通り、指のような巨大な岩の塔が周囲を囲み、異様な気配が満ちている。

「ッ!チルノ見ろッ!あれだ!」

テンガロンハットの鍔を上げて、ホル・ホースは丘の上を指差す。

砂を被った石像のような人型が、丘の頂上に鎮座していた。

868〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:33:11 ID:9LFgiOfc0
「あたいにも見えたっ!あれは……砂?透明な何かが砂を被ってる!」
【スタンド】のようなソイツは、両手を握り締め、微動だにせず佇んでいる。
「(あれは………【眼】…?)」
石像の両手に一つずつ、【眼】のようなものが納まっているのを、ホル・ホースの目が捉えた。
「見つけたぜチルノッ!次の【遺体】は【両眼】だ!ヤツが手に持ってる!」
「よ…よかった……!ホル・ホース……取ってきて…できるだけ急いで………
もう…限界……っ!い…意識が…乗っ取られそう……!」
チルノは口が耳まで裂け、全身鱗に覆われて、目付きも虚ろになっている。殆ど『恐竜化』が完成しかかっていた。
「分かった、待ってろッ!今すぐ取ってきて治してやーーーーーーー」
ホル・ホースが丘を駆け登ろうとした、その瞬間だった。

ドオオオオオォォォーーーーーーーzーーーーッッッ!!!!

轟音と閃光が、彼の鼓膜と網膜を引き裂いた。
「ッ!!?な、なにィィーーーッ!?」
黒い影が、流星の如く光の尾を引きながら、二人の上空を飛び越えていった。
爆風にも似た大気のうねりが、ホル・ホースに襲い掛かる。
腕で砂塵から目を庇いながら、ホル・ホースは見た。
『恐竜化』した魔理沙が、器用にも曲芸師の如く箒の上に立って、空を飛んでいるのを。箒の尾にセットされた『ミニ八卦炉』から、『マスタースパーク』を後方へ放出しているのを。
『ブレイジングスター』、尾を箒に巻き付けバランスを取り、爆発的な推進力で飛翔して、二人の頭上を追い越したのだ。

ザンッーーーーー

魔理沙は石像の目の前に着地し、瞬時に両手から【両眼】をもぎ取った。
「なにィィィイイイイイイッ!!魔理沙に【眼球】を盗られたァァァッ!?」
【悪魔の手のひら】に、ホル・ホースの絶叫が木霊した。

869〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:34:20 ID:9LFgiOfc0


「あ…………あああぁ…………も………もう……限界ぃぃ…っ!あ………頭が………ああぁぁぁぁ〜〜〜………っ!!」
チルノの『恐竜化』は、完成を迎えていた。意識は混濁し、視界もグニャグニャと歪む。自分が何と戦っていたか、自分が何者であったか、そんな自我の一切合切が、纏めて原始の野生に塗り潰されていく。
彼女が意識を手放しかけた、その時だった。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーんーーーー………っ…?」
突然、息が楽になった。頭痛も嘘のように引き、肉体の自由が戻ってくる。
パチリと、微睡みから覚醒するように目を開け、顔を上げる。
「……よお、目ェ覚めたか?」
そこには、良く見知った顔があった。
「ーーーーーホル・ホース……?」
まだ霞のかかる頭で、チルノはぼんやりとその名を呼ぶ。
「…良かった、無事みてえだな……
…それじゃあよォチルノ、今から言うこと、よく聴いとけよ。」
ホル・ホースは安心からかニッと笑い、チルノに語りかける。だが、チルノは茫然としながらも、拭いきれない違和感を覚えていた。そう、何か違う。普段のホル・ホースの笑顔とは、何かが。
確か、彼はこんなに口の端が広がってなかった筈だ。歯もこんな風にトゲトゲしていなかったし、肌もこんなガサガサしていない、小麦色だったはず。チルノに向ける瞳も、蛇のようにギラついたものじゃあなく、もっと柔らかくて、暖かくてーーーーーー

「〜〜〜〜〜〜〜っっ!!?
ホル・ホースっっ?!」
ガバとチルノは飛び起き、驚愕の表情でホル・ホースを凝視する。
彼の身体は、『恐竜化』しかかっていた。
「ホル・ホースっ!なんでっ!?【遺体】があるから『変身』しないってーーーーーー、っ?!」
チルノは、理解した。彼の『左腕』に刻まれていたはずの、【遺体】の在処を示す『文字』。それが綺麗さっぱり消え失せていたのだ。
「ホル・ホース……なんで……なんでよ…!あたいは……っ!あたいは『最強』だから、大丈夫なのに……あたいが『親分』なんだから、『子分』を守らなくちゃダメなのに……!」
チルノの【左腕】には、気絶する前には無かった『文字』が刻まれていた。ホル・ホースが彼女に【遺体】を譲り渡したのだ。
「………チルノ、黙って俺の言うことを聴け。俺は今からこの丘を登って、魔理沙から【両眼】を奪ってくる。チルノ、オメーは後ろから援護射撃だ。
万が一、俺が駄目だったら……俺に構わず、この森を出ろ。オメーひとりじゃ、ヤツには勝てねえ……」
クルリ、『車椅子』を反転させ、ホル・ホースは魔理沙に向き直る。
魔理沙は丘の上で、石像と何やら会話していた。次の【遺体】の在処を教えているようだ。
「ちょ、ちょっと………!待ってホル・ホース!ダメだよ…!そんなの…ダメだぁ……!」
上ずったチルノの声を背中に聴き、しかし一度決めた覚悟は微動だにせず、彼は魔理沙を睨み付ける。
「その【両眼】は俺らが先に見つけたんだ…!横取りは許さねえ!行くぜ魔理沙ァッ!」

メギャンッ!

「っ!!」
チルノは、見た。虚空から顕れた『拳銃』が、ホル・ホースの右手に握られるのを。
「(これが…………ホル・ホースの【スタンド】…?!)」
陰陽を象る模様をあしらったその【スタンド】は、【幻想郷】の月の光を受け黄金色に輝いていた。

870〜Saint Babel Run〜:2014/01/29(水) 21:34:57 ID:9LFgiOfc0

ギャルギャルギャルギャル…………

弾倉の中で、弾丸が【回転】する。ホル・ホースは銃口を真下に向け、引き金を引いた。

ドゴオォンッ!

想像していたよりも重厚な爆音を轟かせ、【皇帝(エンペラー)】は銃弾を吐き出した。スタンドの弾丸は砂の地面に着弾、その【回転】のエネルギーを地面に伝達させ、砂粒一つ一つを【回転】させる。

ギュンッ!!

ホル・ホースが動いた。
車輪と砂の両方を【回転】させ、猛スピードで丘を駆け登って行く。
「【皇帝(エンペラー)】ッ!!」
魔理沙に銃口を突き付け、引き金を引く。
発射炎(マズルフラッシュ)の煌めきと共に【スタンド】の弾丸が発射され、自在に軌道を曲げて飛翔した。
スタンド弾が死角から魔理沙に迫る。
魔理沙は気付いていない。
「(ーーーー…………いっーーーー、いっけええぇぇェェェーーーーーーーっっ!!!)」
固唾を呑んで見守るチルノが、声無き声援を叫ぶ!

ドッ!

「ギャッ!?」
【皇帝】の弾丸が、無防備な魔理沙の背中に命中した!
「やったッ!このまま【回転】させればーーーーー!!」
チルノの見つめる先、ホル・ホースが『恐竜化』による意識支配に必死で抵抗しながら、【皇帝】の弾丸を制御しようとしている。もう『トドメ』に入るところだと、その表情を見て理解できた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーだが、魔理沙が膝を折ることは、なかった。
「(ッ!?
な………なん、だ………、…あぁぁ…ァァ…………?)」
あと一息で魔理沙に【回転】を伝わらせ、その身体の自由を奪い取ることができるという刹那、ホル・ホースの意識が急速に拡散していった。景色は万華鏡の如く色とりどりに移ろい、地面はグニャリグニャリと頼りなくうねる。
「(ーーーーーー『恐竜……化』…か?……いや……“違う”!この…、…この『歌』………はッ!)」
耳を塞ごうとするが、それも叶わず。
暗転する五感に抗う術もなく、ホル・ホースの意識は闇の中へと崩れ落ちた。

「ーーーーーーーーーな………なに……っ?!この『歌』はっ!?
ホル・ホースっ?!起きてよっ!ホル・ホースっ!!」
魔理沙をあと一歩というところまで追い詰めておきながら、『車椅子』から落ち、倒れ込んだホル・ホース。チルノの呼び声にも、全く反応を返さない。
魔理沙の背中に着弾した【皇帝】の弾も消滅し、魔理沙はピンピンしてこちらを見下ろしている。
「はっ……!?」
美しく澄み渡り、しかし妖しい魔力を振り撒く『歌』。
その『歌声』が後ろから聴こえてきていることに気付き、チルノは背後を振り向いた。
ーーーーーーー高らかに謳いながら、『歌姫』は姿を現わした。
背中の翼を広げ、美しい音色を響かせながら。
それは彼女の知っている相手だった。
「…あんたは……確か…………!」
月を背に宙に浮かぶその『歌姫』を、チルノは怒りを込めて睨みつけた。
「ミスティア!ミスティア・ローレライ、だっ!!…確か!」
足下に『恐竜』の大群を従え、独壇場とばかりに高らかに唄いながら、『ミスティア・ローレライ』はチルノを見下ろし、口角をつり上げた。

871どくたあ☆ちょこら〜た:2014/01/29(水) 21:41:48 ID:/kTZD9LQ0
投下終了です。
今回はスマホからパソコンに転送し、それをコピーして投下したのですが、また変なことになってますね。行間が無駄に開く開く。
見にくくなってしまってましたら申し訳ありません。

872ピュゼロ:2014/01/30(木) 05:55:41 ID:0wZVYGiw0
新しい作者さんが登場したっぽい?
ジョジョっぽくてよかったです。すんなり読ませる雰囲気とかって貴重な採用だと思いますよ
でも荒木荘ってなんだろ、ググればいいのかな

地を這う大群の恐竜ども、そしてその遥か頭上を舞う夜雀……ッ! グッド! 壮大です、絵になりそう、素敵!
「原作七部でナナメや枠のないコマ割が多いのはアメリカ大陸の壮大さを表している」とどっかで聞いたよーな気がします
やたら多い改行がなんか壮大さに一役買ってる気がしたけどそれはただの偶然だったぜ

873ピュゼロ:2014/01/30(木) 06:07:11 ID:0wZVYGiw0
>>貴重な採用だと
才能ですご主人様。サイノー。失礼致しました。投稿してからの誤字脱字ミスはこの通り非常にかっこ悪いのでよくよく確認するのをお勧めしますよ?
とにかくはじめまして! 最近あれですが私も細々書いてます、よろしくお願いします
二次小説を書くしか道のなくなった作品愛をどうか炸裂させちゃってください!

874サイバー:2014/01/30(木) 17:26:39 ID:cf8VuAgw0
荒木荘とはッ!ジョジョのボス8人がッ!6畳間の部屋で過ごす物語をッ!
AAとSSであらわしたまあまあ人気だった物語なのであるッ!
なんとなくかんなの描きたかった、あと再開

875サイバー:2014/01/30(木) 17:30:10 ID:cf8VuAgw0
プッチ「外にいた時・・・あの2次会の後にポル・・・ポルなんとかの奴から抜きとっていてよかったな・・・」

プッチはチャリオッツを使い、光の弾を斬り落としていた、ポルナレフのように、素早い剣さばきは
出来ていないが、力強く、光の弾を撃ち落としながら、少女の方に近づいて行っていた!

???「あれ!?弾幕が効かない!?」

少女は驚いた!あのハゲ野郎にこれでもかというほどの弾幕を打ち込んだはずなのに、あいつは何ともなく
こちらに近づいてきているではないか!少女の目の前にまで来ると、プッチはチャリオッツを引っ込め
ホワイトスネイクを出し少女の頭からチャリオッツの様なDISCを引っ張り出した。

???「あれ!?弾幕が出ない!?」
プッチ「君から能力を奪わせてもらったよ・・・」
???「かえしてよ!そうしなきゃあたいが戦えなくなるじゃんか!」
プッチ「相手に能力を与える者がどこにいる・・・」

876サイバー:2014/01/30(木) 17:31:11 ID:cf8VuAgw0
プッチ「さて、簡単な勉強をしようか・・・」
プッチ「君は今からこの能力の入ったDISCを取り返そうとする・・・やり方はどれかな?」

①、天才的なチルノちゃんはナイスな解決方法を思いつく。
②、またこいつと戦って、DISCを取り戻す!
③、泣いて謝罪する、現実は非常である。

プッチ「さあどれだ?」
チルノ「③以外に決まってるじゃない!舐めないでほしいわね!」

その時、ベゴォ、と顔の肉がへこむような音がした。

チルノ「ッッッ〜〜〜〜」

チルノの顔はホワイトスネイクにより、殴られ、へこんでしまっていた!

877サイバー:2014/01/30(木) 17:32:28 ID:cf8VuAgw0

プッチ「残念だが応えは③だ、現実はそう甘くないんだよ・・・・」
プッチ「さあ、早く泣いて謝罪しろよ・・・そうすればDISCは返してあげよう・・・」
チルノ「ううッ・・・ご・・・ごめんなさい・・・」
プッチ「え?なんだって?」
チルノ「ごめんなさい!あたいが悪かったから!能力返して!」
プッチ「そう・・・それでいいんだ・・・そうやって謝っていれば顔面をそんなに鼻血だらけにならなくて
済んだのだがな・・・」

そういうとプッチはチルノの頭にDISCを差し込んでこう言った。

プッチ「私にもう構うんじゃないぞ・・・」
チルノ「わかった・・・もうあんたには近寄らないよ・・・」
プッチ「それでいい」

そうすると、チルノはどっかへ消えていった・・・

878サイバー:2014/01/30(木) 17:32:59 ID:cf8VuAgw0
プッチ「さて、とんだ道草を喰ってしまったな・・・早く紅魔館に行かなければ・・・」

そうすると、プッチは紅魔館の方へ向かったのであった・・・

879まるく:2014/01/30(木) 22:31:42 ID:GltRVNeg0
続々書いてますねー。
書式は千差万別、心のどこかにそういうのもあるのか、と思ってもらえたらそれで構いません。

こちらも投稿します。
結局移動だけで終わってしまう。

880深紅の協奏曲 ―嘘と真の三重奏―:2014/01/30(木) 22:34:02 ID:GltRVNeg0
「先に言っておく。ここより先は今までと同じところと思うな」

 先を進む椛が後ろからドッピオがついてくることを確認しながら話しかける。
 顔を上げ、その先を待つ表情を確認すると再び前を向き、振り返らずにそのまま続ける。

「基本的に群れることの無い、自分一人で生きるのが妖怪だが、天狗はそれとは別。社会性を保つ集団だ。ここより先は外とは違うコミュニティとなる。
 そして人間など妖怪の餌食にすぎない。今回は姫海棠からの招待があったからこそ、私の監視の下の案内だからこそ入れるのだ。
 みだりに入ることは許されない。また、興味で私から離れ下がったり逸れようと思うなよ。たちどころに喰われることになる。
 私は貴公を案内することは任されたが、守ることは任されていない。『ドッピオは来なかった』と報告するだけでもいいのだからな」

 口調から十分に感じ取れる、人間への軽蔑と、招き入れている事実に対する不快感。

「わかった」

 今のドッピオが、その程度では止まらない、止められない。
 短くも強く肯定の返事を返す。
 求める物がその危険な山に存在しているのだから。

「……ふん」

 その返事を一瞥し、そのまま飛行する。
 覚悟を受け取った椛は妖怪の山へ彼を誘った。




 妖怪の山に入るといっても、結局は飛行しながらなのでいつも地を歩くドッピオにはそれと変わるものをあまり感じない。
 しかし、話に聞いた通りの、今までの幻想郷とは違う空気は嫌でも感じ取れる。
 どこかのどかで、気が抜けていて。それでいて危険が目の前にあるという……矛盾したような、そんな世界。
 だが山の中はそんな空気は感じられない。
 木の陰、草の影、岩の影。そのどこからも感じられる、粘りつくような視線。潜めた息遣い。
 興味や好奇心といったもの。不安や恐怖といったもの。殺意と侮蔑といったもの。
 かつて人間と妖怪の間で何かあったからか。それとも妖怪の本質がこういうものであり、幻想郷に色濃く残っている唯一の地なのか。それは今ドッピオにはわからない。
 確かなのは、ここに人間は存在しない奇異の者であり、良くも、悪くも思われているということ。

「…………」

 最初に聞いたから覚悟はあったものの、実際に浴びる視線は堪えがたいものがある。
 善意であれ悪意であれ、これほどの衆目を集めることはそうそうない。それこそ、組織の長でもない限り。

881深紅の協奏曲 ―嘘と真の三重奏―:2014/01/30(木) 22:35:39 ID:GltRVNeg0
「怖いか?」

 わざわざ木々の合間を縫い、山の地表、沢の流れる森の中を進む椛は意地の悪そうに、声をかける。

「幻想郷には各所に強大な勢力が存在している。その中で最も強い勢力がここ、妖怪の山だ。
 他の者は主を筆頭に置いただけ、その下は低級な妖怪と人間が占めるばかり。ただ我儘に指示を出すだけの上、そぞろに言うことを聞いてればいいだけと思っている下。
 いわば上の独断だけで動かしているようなものだ。
 だがここは違う。多数の妖怪を収容できる土地、そこに存在する多数の妖怪たちを統制しうる天狗たち。もちろん天狗たちもただ胡坐をかいているだけではない。
 徹底した上下の関係と、それを管理統制しうる統治体制。そして、それらを行うことを納得させる圧倒的力」

 ゆっくりと振り返り、何かを期待するような眼でドッピオを見つめる。
 椛が語っている間に周りの視線もそれに呼応する様に、同じ期待を秘めた視線へと変わる。

「少年よ。まだ年若い人間よ。貴公は踏み入れたことはあるか? 多数の害悪にまみれた沼に。自分を庇護する者の無い領域に。
 ここでは貴公の発言を聞き入れる者もいない。貴公の存在を認める者もいない。帰りを待つ者がいれば、それに届ける術もない。
 周りに誰も手を差し伸べる者はいない。喜んで剣を刺しだすものばかり。そんな空間に――」
「言いたいことはそれだけか?」

 脅し怯える心を楽しもうとする椛の発言を、バッサリと切り捨てる。
 そこには僅かな感情に揺れる少年の瞳は存在しなかった。

「暇つぶしなら他でやってくれ。時間の枷はなくなったけど僕は急ぎたいんだ。君の任務は案内だろう? 言われた事をできない事で二番目に困るのは君じゃないのか」
「……言うじゃないか、少年」

 その言葉を聞き、椛の目つきが険しくなる。周囲の視線も害意を望むようなものから、与えるものに変化する。

「ここまでしても退きもしないのはよほどの意思か呆けているか……我々の力をちょいとでも見せればその顔も変わるか?」
「……」

 武装を構え、明確に敵対の姿勢を取る。
 それに対しても、ドッピオは特に身構えもしない。
 これは、予知を見るまでもない過程だから。 

「どうやら後者か……自分が本当に殺されないと未だに高を括っているんじゃあないだろうね? その考え、断ち切って」
「おい、もうよせよ」

 下の沢から、ざんぶと何かが上がってくる。
 上がってきたそれは、ゆったりと浮上すると椛の横に並んだ。

882深紅の協奏曲 ―嘘と真の三重奏―:2014/01/30(木) 22:36:31 ID:GltRVNeg0
「確かに魔理沙とかとは違う、普通の人間だけど、こいつは怯えどころかひるみもしないじゃない。これ以上やっても変わんないよ、きっと」
「……ぬー」
「まあ私が出ちゃったからもう終わりなんだけどさ。これ以上やると椛本当に噛みついちゃうじゃん」

 水の中から現れた、青い服に緑のリュックサックを背負った少女―河城にとり―は、相手を戒めるように話す。

「なーんだー」「結構持ったなー」「つまんね」「若いのに根性あるー」「はたて、良いの釣ってるじゃないの」

 それと共に周りから感じていた視線が、複数聞こえる呟きと共に消えていく。
 まだいくらか値踏みするようなものが残っているが、先の居心地悪い感覚はだいぶ薄れた。

「ねね、人間。よく脅しに屈してなかったね。なんで? 怖くなかった?」
「にとりぃ……そう言う聞き方は無いだろう。地味に傷つくぞそれ」
「え、えーと。まず、仕込みだよね完全に」
「仕込みは半分だが、事実に変わりはないぞ。さっき貴公に話した通り妖怪の山は他者が容易に足を踏み入れることはできない。妖怪ばかりの住処」
「そこ、そこだよ」

 彼に興味を持ったのか、目を輝かせて話しかけるにとり。
 ドッピオはその話に乗り、椛を指摘する。

「あのはたてってやつがどういう立ち位置かはわからないけど奴はここに僕を招いた。そして、招かれた先に案内役の君がいた。
 ここの概要は詳しくは聞いてなかったけど、最初に君が教えてくれたから恐ろしいところだというのは理解した。
 君は、与えられた任務に忠実なタイプ、規律正しい性格だろう?」
「そうだが……だから、何故そう思った? そんなに話はしていないだろうに」
「第一に。最初から、僕に対する敬称が変わらなかった。本当に取って喰おうと思っているのなら君たちより下の人間に対して敬称なんか使わないはずだ。
 でも、最後に武器を突きつける時までそれが取れなかったからね。
 第二に、奴は遣いの者を置くと言っていた。つまり、君より立場が上だということも推測できる。君が脅しで使った言葉から察するに、部下は上司に逆らえない、立派な組織だ。……そうだろう?」

 椛もにとりも、少し驚いた顔をしていた。
 確かにその通りなのだ。自分の雄弁が、相手を委縮させるどころか逆に情報を与えて有利にしてしまっている。

「確かに、そうだが……」
「最後に。本当に相手が怯え屈服するのを見たくて脅したいのならこんなに回りくどいことをせずに」

 そこで一旦口を止めると顔を伏せ、少しの間を置いた後に伏せた顔を上げ。

「傷つけるか、拉致してしまえばいい。それを行わずに脅すには君には経験が少なすぎる」

 驚きで目が丸くなる。そのようなことを考え口に出す様な人間には見えなかったから。
 自分たちの数分の一しか生きていない人間に『経験が少ない』と言われ、それを納得できるかのような雰囲気。

「……よくも、言ったものだな貴公。さすがにその言葉は侮辱ととるぞ?」
「確かに僕が言うには、生きている経験で考えたら君には及ばないだろう。だけど事実だ。きっと、君は『兵士』であって『幹部』じゃない。そこまでの舞台まで連れて行く立場だけど、その舞台の上で何かする立場の人間ではないだろう?」
「ぬー……」
「人間じゃないよ、天狗だよ」

 にとりがどうでもいいフォローを入れるが、椛の表情はよくならない。
 彼女の中で、たかが人間にここまで澱まずに見抜かれたことによる思いがそのまま顔に表れている。

「ああ、うんそうだった。ごめん。……とりあえず、これが君たちの遊びなのか奴の指令なのかは知らないけれど、案内してもらえるなら早くしてもらえるかな? さっきも言ったけど僕急いでいるんだ」
「そうだな……悔しいが。命を遂行するには変わらない。先を急ごう」
「ねえねえ、私もついて行っていいかい? 途中まででもいいからさ。盟友の話、聞いてみたいんだ。一体外では何をやっていたんだい?」
「にとり、やめておけ。彼は客人なんだぞ、あんな扱いしたが」
「だからだろ? 別に今更いいじゃんか」
「いや、僕が困る。そんなに自分のことを人に話したい人間じゃない」

 ドッピオに興味を持ったか、喰いかかるように話しかけるにとり。それに対して、二人であしらう。

883深紅の協奏曲 ―嘘と真の三重奏―:2014/01/30(木) 22:37:54 ID:GltRVNeg0

 過去、組織に忠誠を従い命令であれば奉仕活動でも暗躍でも自分にできることなら何でも行った男がいた。
 普段は穏やかな物腰だが、知識や技術には光るものがありそれを生かす頭脳も持っている。
 表の顔は午前の仕事を終え、優雅とまではいかずとも、満足のいく昼食をとり午後は余暇に当てる。そんな、どこにでもいる初老の男。
 ひとたび事態に当たれば培ってきた経験と持ち前の感、自分から前に出ることは無くてもそれらによって得た信頼で収拾していく。
 本人は笑って否定したが、組織の一員の中には『パッショーネのボスとして立っていてもおかしくはない』とも評した。
 ヌンツィオ・ペリーコロ。
 パッショーネの中でも高い地位にあり、実力者とその実績を見抜き同じ地位である幹部の昇進を決定づける権利も持つ。
 自身にとって不利にしかならないスタンド能力についての知識も持ち、それでもこの地位に存在し続けられたことが彼の能力の高さの証明といえよう。
 ボスの命に忠実に働き、ボスの命に殉じた男。

 ボスからの指令を伝える伝令として、一度彼に会いに行ったことがある。
 その時の彼はまさしく今の椛と似たような状況、組織の恐怖を伝えている状態だった。
 若い男が3人。声だけは聞こえるが姿は見えず、そんな3つの小部屋に一人ずつ入れられ監禁、暴行されている状態。
 3人がカメラで捉えられて観ることのできる一室で、彼と話したことがある。

「すまないね、こんなところで」

 そう話しかけた彼は、カメラに映っている若者たちを嬲る元締めとは思えないほどだった。
 直前に、一室ごとに回ってぼそぼそと耳打ちをしていた。
 その言葉を聞くたびに、一人は怯え、一人は安堵し、一人は許しを請うように大きな声を上げていた。

「何を話していたか、気になるかね?」

 本当のことを言えばそれほど興味はなかった。3人の若者たちが組織の顔に泥を塗るようなこと―例えば、知らずにシマを荒らしたか女に手を出したか―をしたのだろう。
 けれども上に立つ者の言葉は興味ないの一言できることは許されない。

「一言、こう言ったんじゃよ。『2時間たったら解放してやる』とな」

 ただあったことをそのまま話している。それがドッピオの感想だった。
 けれど、あの状況でそれを聞くことがどんな状態になるのか。「あと2時間あるのか」「もう2時間でいいのか」そのどちらかから生まれる感情が身体を支配するだろう。
 ただ痛めつけたり強い言葉だけで脅すだけではない。精神的にも肉体的にも追い込み徹底的に反抗心を奪い、「逆らえない、逆らってはいけない」という認識を確立させる。

「ドッピオ、君は優秀な若者だ。他人の手を介すこともできないような指令を伝える者として君ほど信頼されている者はいないだろう。これからも期待しているよ」

 そう言ってドッピオの肩を叩いたペリーコロの手は、孫を思う祖父のように優しい手とも感じられた。その手は先まで闇に染められたものなのに。



「この滝を越えた先が邂逅場所だ。変わらず、着いてきてくれ」

 椛が指したその先は下から見上げれば首をどこまで傾けても上が見えないような大瀑布。
 ごうごうと大きな音を立てる滝壺の間近では彼女の声はほとんど聞こえない。
 携えていた巨大な刀を物指しに使っているから意図は理解できるが。

「まさかこんな形で日本の滝を上ることになるなんてね……」

 見慣れたものだろう彼女は気に留めることなく進んでいくが、自然の生み出した芸術を黙ってみていけるほど無感動な心ではない。
 生み出す腹の中を揺さぶるような音と育みも削り取りもする勇ましい始原の源。それが今、観光地の柵などに仕切られることなく手に触れようと思えば触れられる距離にある。
 もちろん触れれば自力で飛行できる身ではないので、真っ直ぐ滝壺に流されてしまうだろう。
 それほどの勢いにもかかわらず、傍らで妖精が滝の中から出たり入ったりを繰り返している。
 ……辛くないのだろうか。

884深紅の協奏曲 ―嘘と真の三重奏―:2014/01/30(木) 22:39:51 ID:GltRVNeg0

「見えてきたぞ、御山の頂点が」
「え、頂点なの?」

 そんな人目の付きそうな所に――
 そう言いかけた口が、開いたままになる。
 未開の山を抜けたその先にあったものは、その場にふさわしいとも思える荘厳な建物。
 その建物に向けた一つの石畳の道、その最奥に佇む鳥居。

「……ここは」
「山のお騒がせさん、守屋神社よ。この神社は本殿まで行けばいろいろうるさいのも多いけど、この辺りは空白地帯。天狗も神様も目に入らない」

 その先の建物から一筋黒い点が見えたかと思うと、それは一つの影となってドッピオの前に形どる。
 その姿を確認すると刀を背負い、椛は敬礼する。

「姫海棠、命により外来人ドッピオの護送終了した。これより通常任務に戻らせてもらう」
「はいはいどーも」
「……あれで護送だったの?」

 疑問を投げかけるが、それに答えるべき者はさっさと下がってしまった。

「いやはや、ホントによく来たね。来ないか逃げ帰ってるかと思ったのに」
「てことは、やっぱりあれはお前の指図だったのか」

 指摘すると、ドッピオの前に着地し、目を細めて笑みを浮かべる。

「やり方は自由に任せたけどね。激情だけの奴には絡む必要ないし。それどころか」

 少し窺うように、ドッピオを覗き込むように見つめる。
 どうにもはたてのこのような視線には慣れない。

「少ししか経ってないのに……なんか変わった感じがするね。寺では猫かぶりでもしてたの?」
「……何言ってるんだ? とにかく、話にしないかい?」
「んー、まあそうね。ほら、これが例の写真」

 そういうと、はたては先に見せた3つの写真をドッピオに手渡した。

885まるく:2014/01/30(木) 22:44:32 ID:GltRVNeg0
以上になります。
ここまできてタイトルにナンバリング入れるの忘れたことに気付きました。守矢編は3くらいまででしょうか。
ペリーコロさんはこんなだといいなと思います。ねつ造です。
終わりが近づいたのか、まだ続くのかというのは精神的にいろいろクルらしいです。寄り付きたくないですね。

椛は頭が固いといいな。

886セレナード:2014/01/30(木) 23:21:53 ID:Sdk1bUM20
皆様、投稿お疲れ様です。この流れに乗れぬのは残念ですが。

サイバーさんの小説のほうでは、プッチが紅魔館へとレッツゴー。
シルバーチャリオッツのDISCを持ってきていましたが…抜け目のない男ですねぇ、プッチは。
紅魔館にDIOがいたというパターンは他の方の作品でもある話でしたが、サイバーさんの綴る物語では果たしているのでしょうかね?

ちょこら〜たさんの小説では…わお、恐竜化しながらも(弱体化しているけど)なお魔法を使ってきますか。
それ程までに魔法に関する知識が『本能にまで染み込んでいる』ということなんでしょうね。
そして迫る恐竜化へのタイムリミット…!参戦したミスティアの狙いは遺体強奪か、ホル・ホースの殺害か。


まるくさんの小説では、ドッピオが守矢神社に到着。
如何なる脅しにも動じない精神と相手の発言を逆手にとる強かさ。
普段は年相応の心の持ち主ですが、今はディアボロが『すぐ後ろ』にいるせいか、鋼の精神の持ち主になっていますね。
そして、3つの写真がドッピオに渡った後、如何なる行動を彼かディアボロがとるのか。
その選択が、『彼ら』をどう導くのでしょうか。

887どくたあ☆ちょこら〜た:2014/01/31(金) 16:10:03 ID:zOGYAVzs0
>ピュゼロさん
感想ありがとうございます。何気にピュゼロさんからコメント戴いたのは初めてですね。
七部からは月刊誌に移行して毎回のページ数の余裕ができたこともあり、見開きを使った大ゴマが多用されるようになりましたね。大統領との決戦は、荒木先生本当に楽しんで描いているんだろうなと感じながら読んでいました。

>まるくさん
投稿お疲れ様です。
流石ドッピオ、伊達にボスの側近&参謀やってない。vsリゾット戦でも高い洞察力を光らせていましたし、ジョジョキャラ特有の頭のキレ具合はしっかり持ち合わせているんでしょう。
椛は私もまさにこんなキャラだというイメージがあるので、非常に入り込みやすかったです。あと、「…ぬー……」←これがどうにも可愛くて和みましたw

次回、漸く写真の秘密が明かされる時が来るのか。楽しみにお待ちしております。

>サイバーさん
投稿お疲れ様です。
文章がかなり読みやすくなってきました。この調子で頑張ってみてください。
プッチは既に悪役らしい暴力性を取り戻しているようですね。紅魔館にはDIOが居座っているのか、期待しております。

>セレナードさん
感想ありがとうございます。
ジャイロは恐竜化した状態でも鉄球の『技術』を失っていなかったので、魔理沙も問題無く魔法が使えたんだと思います。
vsミスティア戦終了までは原作をなぞる形になりますが、できるだけ楽しんでもらえるよう工夫するつもりです。

888サイバー:2014/01/31(金) 21:53:33 ID:BlIhYexs0
4話大体かけたから貼るゾエー!今回は紅魔館編だッ!
ネタバレ「吸血鬼がいる」

889サイバー:2014/01/31(金) 21:54:22 ID:BlIhYexs0
  4話「紅魔館へ行こう!」
プッチ「おお、あれが紅魔館か・・・」

プッチは見えてくる大きな館を見ながら色々なことを考えていた。

プッチ「(ああいう所にはDIOなんかが居てそうだな・・・)」

そんなこと考えているうちに、紅魔館にたどり着いた。

プッチ「さて・・・どうやって入るか・・・、普通に門から入るか・・・?そんなことしたら一発でばれて
しまう・・・、かといって塀を上がって行くこともできるが・・・そんなの完璧に不審者じゃないか・・・
仕方がない・・・門を開けて入っていくとするかな・・・」

そういうと、プッチは門の前に立った、まあどんな城?にも門番が居るものだ、門番はこの
紅魔館にもいた、が、全く持ってどういうことか?ぐっすり寝ていた。

プッチ「・・・」
門番「すーかーぴー・・・」
プッチ「・・・」
門番「・・・んがっ・・・」
プッチ「・・・」
門番「・・・zzz」
プッチ「おい・・・」
門番「・・・・・・」

890サイバー:2014/01/31(金) 21:55:06 ID:BlIhYexs0
ッチはこの門番は役に立たない番人だな・・・と思いながら門を開けようとしたが、その瞬間!その門番が
いきなり目を開けて蹴りを入れてきたのである!プッチは3〜4m程吹っ飛ばされそのまま地面にばったり倒
れこんでしまった!

プッチ「ふぐオゴォ!!」
門番「ん!なんですかあなた!」

プッチはヨロヨロと起き上がりここにいる訳を話した・・・

プッチ「私は・・・外から来た・・・外来人だ・・・」
門番「?」
プッチ「この辺りに外来人が来ていたら教えて欲しいんだが・・・」
門番「!」
プッチ「!・・・その顔は知っているようだな・・・?」
門番「外来人ならこの館の中で二人住んでいますよ?」

プッチはそのことを聞き、私はその外来人の仲間なんだがこっちに来るときに散り散りなってしまったといい、
この館に入れてもらうようにしてもらった。

891サイバー:2014/01/31(金) 21:56:02 ID:BlIhYexs0
門番「貴方があの黄色い人とあと一人の仲間さんなんですね!それならこの館にどう・・・ハッ!
(この人に私が寝てたことが知られたら私はまたあの咲夜さんの「殺人ドール」をまた喰らってしまう!・・・
もしこの人があの人たちの仲間じゃなくってここに盗みに来た人だったら・・・なおさら怒られる!)」
門番「やっぱり私を倒したら貴方を入れることにします!かかってきてください!」
プッチ「?!(なんでそうなってしまった!さっき入れるって言ったじゃないか!)」
美鈴「あ、私の名前は紅美鈴といいます!さあ!かかってきなさい!不審者!地の果てまで吹っ飛ばしてあげる!
プッチ「101,・・・103・・・ 107・・・ 109・・・ 113・・・ 127・・・素数を数えろ・・・素数は1と自分の数でしか割れな
い孤独な数字・・・私に勇気をくれる・・・」シュルシュル・・・
そういうと、プッチは頭からチャリオッツのDISCを抜出し、他のDISCを入れた!

美鈴「さあ!かかってきなさい!」

美鈴は、構え、プッチは、さっきのチャリオッツとは違うスタンドを出した!そのスタンドは、チャリオッツに似た
人形だが、サイズが小さく、130㎝程度の大きさだった!色は白と黄緑のまだら模様で、腰巻きの
様なものに「3」と書いている。

892サイバー:2014/01/31(金) 21:56:35 ID:BlIhYexs0

プッチ「行くぞ!「エコーズ」ACT3ッ!」

そういうと「エコーズ」は返事をし美鈴に近寄るのであった!

美鈴「ひえぇぇ〜!!2対1なんて卑怯ですよぉ〜!!」

プッチは問答無用に「エコーズ」と一緒に攻め続ける!

美鈴「ひえぇぇ〜!!この人結構強いッ!」

プッチと「エコーズ」は二人がかりで美鈴を攻め続け、プッチたちの方が押している!

プッチ「一気にカタをつけるッ!!「3 FREEZE」ッ!!」

プッチがそういうと、「エコーズ」は、ラッシュを繰り出し!美鈴はそれをまともに食らった!

美鈴「ふぇぇぇ!!!!右腕が〜っ!右腕が「重たい」ですぅ!」

そう、「エコーズ」ACT3の能力は「殴ったものを重くする程度の能力」である!

プッチ「さて・・・これで私の勝ちかな・・・?」
美鈴「ううう・・・分かりました・・・私の負けですぅ・・・」

そういうと、美鈴は門を開けると、プッチは礼を言い、紅魔館に入ろうとする・・・しかし・・・

893サイバー:2014/01/31(金) 21:58:07 ID:BlIhYexs0


            」」      」」       」」       」」
        __  |    __  |    __  |    __  |
              |          |          |          |   _|  _|  _|
        ___|    ___|    ___|    ___|

我々はこの雰囲気を知っている!いや、このドス黒い雰囲気を知っている!!
普通の人なら胃がケイレンしてゲロ吐く寸前になるほどの雰囲気である!
しかし!プッチはこの雰囲気に全く持って動じていなかった!
そしてプッチは紅魔館の扉を開けると無限に道が続いて奥の方からメイドが
超高速でやってくるとかは無い、絶対ない。

その頃・・・

ロリ「誰かが来たみたいね・・・」
黄色い奴「そのようだな・・・・・・プッチだな・・・」
ロリ「誰かわかるの?」
黄色い(y「あいつとは一緒に住んでいたからな・・・大体雰囲気でわかる・・・」
ロリ「ふーん」
ロリ「あ、咲夜、その人をこの部屋まで案内してくれる?」
メイド「分かりました、お嬢様。」
黄色「フフフ・・・どうした・・・?動揺しているぞ?」コトッ
???「クッ・・・貴様がここまでチェスが上手いとは聞いてないぞ・・・?」コトッ
黄色「なんせ100年前チェスで生活費を稼いでいたからな・・・フン!チェックメイトだッ!」コトッ
???「うおァ!カスがァ・・・これで12連敗じゃあないか・・・」
黄色「さて・・・プッチを待つとするか・・・」

894サイバー:2014/01/31(金) 21:59:27 ID:BlIhYexs0
いったんここで終了ゥ!4話は長くなりそうだ

895どくたあ☆ちょこら〜た:2014/02/01(土) 09:16:09 ID:91zlfm6Y0
投稿お疲れ様です。
『ジョジョのボス達は六畳一間の一室で暮らすようです』では、プッチはスタンドDISCを所持したり使用したりする描写は無かった気がしますが、これはこの東方荒木荘のみでのオリジナル設定なのでしょうか。

896サイバー:2014/02/01(土) 17:01:29 ID:9.Nf1leI0
基本的な荒木荘はボスたちの日常をえがいているのですが、
東方荒木荘は東方キャラとの闘い(日常?)をえがいているから、
プッチの能力を使った方が良いと思いましてね・・・
ただ、東方キャラの口調がおかしかったりすることがあって色々おかしいと思う
んですよ。まあだいたいどんなキャラかはわかってるんでほんとにキャラ崩壊は
しないと思いますがねェ・・・もしおかしかったら教えてください・・・

897どくたあ☆ちょこら〜た:2014/02/01(土) 19:41:54 ID:91zlfm6Y0
【エコーズ】を抜かれてる康一君は今仮死状態なんだろうかとか、何処で手に入れたんだろうかとか、そのあたりが少し気になったので…
子供の頃『刑事コロンボ』が好きだったせいか こまかいことが気になると夜もねむれねえ

898サイバー:2014/02/01(土) 22:18:56 ID:9.Nf1leI0
露伴先生に「空の景色を見てどんな感想だったか教えてよ!」
とか言われて困ってそうww

899まるく:2014/02/02(日) 12:50:54 ID:IoKpjHLA0
ちまちまお返事ありがとうございます。

>ちょこらーたさん
やっぱり最後にメッセージボックスでも確認した方がいいですね。以前は全角ダッシュで使用されてたところも長音符になってますし。自分もよく変な改行がでしゃばること多い…
原作と同じ雰囲気かつ、幻想郷の違う空気。追手が明らかに強力な上に追撃のみすちーで難易度はさらに加速したこの先のミスチルはどうなるやら。
元凶はみすちー?それともさらに別の誰か?

近年のわんこ椛とは違うのだよ…あれはあれでもいいものですが、やはり下っ端というのは強調したくてですね!
いらんところでかわいらしい言動とか入れるの好きです。漫画では絵で表現できる萌えしぐさとか好きです。
組織の体制としては参謀はドッピオ一人だと思いますけど、ドッピオ自身は参謀の部下。と思っている。と解釈してます。

>セレナードさん
あのやや破天荒と化した現人神さんの地元。
ドッピオも少しずつ変わってきてます。ディアボロの存在には気づいてませんが確実に後ろの何かに力づけられているというか。
写真どうなるでしょう。はたてちゃんの運命やいかに。

>サイバーさん
東方キャラの口調がおかしいことを心配していますが、それを言い始めてしまえば荒木荘設定は十分キャラ崩れが起きている(それによってギャグが成立している)と思います。
だからそこまで気にしなくてもいいのではないでしょうか?
自分で当てはめてみて「あれ、これ可愛くないな、かっこよくないな」と思わなければ大体合ってますよ!

プッチの能力で言うなら、他人のスタンドで戦うよりむしろよくわからん内容のDISCを他人や自分に突き刺して戦わせる方がそれっぽいと思います。
視力を抜き取る、熱湯を水に変える、10m飛んだら破裂する…割とチートな感じはしますし。想像もしやすいと思います。

900サイバー:2014/02/04(火) 17:46:31 ID:UvXjBoxQ0
やっと一段落書けた・・・

901サイバー:2014/02/04(火) 17:47:23 ID:UvXjBoxQ0

プッチは館に入るとそのすぐにはあるメイドが居た。何処にでも良そうな、館とかに居そうなメイド。

メイド「あなたがプッチさんですか?」
プッチ「あ・・ああ、そうだ、私がプッチだ・・・(こいつ・・・私が来るのを知っていたのか・・・?しかもこの感覚・・・
「彼」しかいないとしか考えられない・・・」
メイド「それではこちらに・・・」

メイドはそういうと、プッチをある部屋まで案内した。
メイド「ごゆっくり・・・」

メイドはそういうと、部屋のドアを開けて、プッチを部屋の中に入れた。そこには見慣れた二人が居た。
一人は、額、膝にハートマークがあって、いっつもチャック全開の奴である。もう一人は、金髪の巻き毛、
白いマントのような服を着た男であった。

902サイバー:2014/02/04(火) 17:47:53 ID:UvXjBoxQ0
メイドはそういうと、部屋のドアを開けて、プッチを部屋の中に入れた。そこには見慣れた二人が居た。
一人は、額、膝にハートマークがあって、いっつもチャック全開の奴である。もう一人は、金髪の巻き毛、
白いマントのような服を着た男であった。

プッチ「ああ、やはりDIOだったか、このドス黒い感じはDIOしかいないと思っていたよ・・・やっぱり半裸か・・・
何で半裸になってるんだ?※あの時も半裸じゃなかったか・・・?しかも・・・ヴァレンタインもいるじゃないか・・・
」※6部のダヴィンチの話の時
DIO「服を脱いでいると何故か・・・ある解放感を感じるんだよ・・・」
大統領「それって露出狂って奴なんじゃあないのか?」
DIO「下半身は履いているから大丈夫だろう?」
プッチ「上半身でもアウトだ」

903サイバー:2014/02/04(火) 17:48:27 ID:UvXjBoxQ0
そんな事話しているうちに他の少女が話しかけてきた。

ロリ「はいはい、感動の再開は置いといて何の様なの?プッチ・・・だっけ?」
プッチ「そうだったな・・・用というのはこの二人を人里に連れて帰りたいんだ・・・他の仲間も要るんだが、
全員連れ戻したいんでね・・・人里にはもう一人要るんだ・・・」
DIO「一人というのは誰だ?」
プッチ「吉良だ、あいつと出会ったときは何故かかなり怪我していたな・・・・」
大統領「そうなのか・・・」
ロリ「そうだったのね?この「幻想郷」に貴方たちのメンバーが散り散りになってて、それを全員集めたいと・・・」
プッチ「そうなんだ、もしかしたらこの近くに要るかもしれないからね・・・」
プッチ「どうか、この二人を人里に連れて帰っていいか?」
ロリ「ホントに2人だけなの?」
プッチ「ホントだ、約束しよう」

904サイバー:2014/02/04(火) 17:48:59 ID:UvXjBoxQ0
ロリ「でも断る」

プッチ「!?」
ロリ「DIOは私とフラン以外の吸血鬼だから手放すわけにはいかないわ!」
ロリ「フランだってかなりDIOの事好いていたからね♪」
DIO「私って好かれていたのか・・・」
ロリ「まあもし諦めれないなら私たちと「隠れ鬼」をしないかしら?」
D、大、プ「「隠れ鬼」だと?」
ロリ「そうよ、ルールは簡単、今は12時半、1時半になるまで見つから無かったら貴方たちの勝ち、
逆に見つかって捕まったら貴方たちの負け。Ok?」
DIO「鬼ごっこなど・・・外民がやる遊びをやるわけ・・・」
プッチ「私たちは遊んでいるんじゃないんだ・・・」
ロリ「じゃあ肉弾戦で戦う?貴方たち程度が勝てる訳が無いけどね。」
プッチ「なんだと?」

905サイバー:2014/02/04(火) 17:49:30 ID:UvXjBoxQ0
DIO「やめておけプッチ、こいつの実力は本物だ・・・君が外で戦っていたような奴らと格が違う、私と
ヴァレンタイン二人がかりで戦っても相打ち・・・いやあっちの方が勝っていたな・・・」
プッチ「なんだと・・・」
大統領「あいつとの肉弾戦はやめた方が良い・・・私が戦った時にはD4Cの能力を使う前に挟むも
のを壊されてしまって・・・となりに逃げようとしても挟むものが全て潰されたんだよ・・・」
プッチ「どうやらまともに戦って勝てる相手じゃないわけだな・・・」
プッチ「分かった、受けよう、その「隠れ鬼」とやらを。鬼はそちらだな?」
ロリ「そうよ、鬼は二人、そっちは3人で逃げていいわよ?」
プッチ「逃げるのなら得意だ・・・」
レミリア「あ、自己紹介がまだだったわね、私の名前は「レミリア・スカーレット」!、6歳!趣味は紅茶
を飲むことよ!」
DIO「ちょっと待てコラ、何年齢詐欺してんだ」
プッチ「何か問題はあるのか?こいつは完璧に6歳にしか見えんのだが・・・」
DIO「こいつは吸血鬼だ、本当の年齢は595とか言ってたな」
プッチ「吸血鬼!?・・・だからDIOの事を好いていたのか・・・」

906サイバー:2014/02/04(火) 17:50:16 ID:UvXjBoxQ0
レミリア「もう一人の鬼は私の妹「フランドール・スカーレット」って言うわ、咲夜、フラン呼んどいて、
「久しぶりの遊び相手よ、思う存分遊んであげなさい」。」
咲夜「かしこまりました・・・お嬢様・・・」
レミリア「じゃあ今から5分後から始めね♪」

そういうとDIO、大統領、プッチはすぐに逃げ出した!プッチは左、DIOと大統領は右の方へ走って行った・・・

DIO「(フフッ・・・見せてやるよ・・・貧民街時代の鬼ごっこの技巧をなァ!・・・)」
大統領「流石DIO、実に悪く良い顔をしている・・・」
プッチ「さて・・・どこから来ても逃げれる場所を確保しなくてはな・・・」

907どくたあ☆ちょこら〜た:2014/02/06(木) 17:12:58 ID:QeC6rD320
投下開始します。

908〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:14:03 ID:QeC6rD320
※今回からはショッキングかつ非道徳的な表現が多用されるようになります。一応ご注意下さい。

【第二部】〜Saint Babel Run〜
第五話 『片鱗 後編』

「あら、私のこと覚えてたの?思いのほかマシな記憶力してるじゃない♪」
鈴の転がるような透明な声で、ミスティアは歌うように答える。明らかに挑発の意を籠めて。
「あんたね…っ!ホル・ホースに『歌』を聴かせたり、魔理沙を『トカゲ』に変えたりしたのはっ!」
怒りを孕んだ視線で、チルノはミスティアを見上げる。
「フフン♪普通に状況判断できる程度の脳ミソも持ってるのね。
ええそうよ、その通り。私の『スタンド能力』は【スケアリー・モンスターズ】。
『ある御方』から授かったこの力で、貴方の持ってる【左腕】を回収するため、
まず魔理沙を『恐竜化』させて追跡、そして魔理沙が森の動物を感染させたのよ♪
貴方たちが次の【遺体】、この【眼球】を見つけてくれるとは思わなかったけどね。ラッキ〜 」
えらく上機嫌に、鼻歌交じりで自分の目的・所業を語る。
「こいつは………!!おまえが………!!『本体』だったのか……!!
この【能力】は魔理沙のじゃなくて………あんたの支配だったのか!!」
これで、ホル・ホースが抱いていた疑念にも納得がいった。
彼が魔理沙から『殺気』や『敵意』を感じられず、罠に嵌められてしまったのは、魔理沙が彼女本人でない者に操られて襲っていたからなのだ。
声を荒げるチルノを尻目に、ミスティアはゆったりと宙を舞い、【悪魔の手のひら】の頂上に降り立った。
主直々の来訪を受け、『恐竜化』した魔理沙は片膝を着いて傅き、ミスティアが彼女から【両眼】を受け取る。
「へえ………確かにスゴイ【遺体】ね。持つ手がおぞましさで震えるわ。とても二千年前の【遺体】とは思えないみずみずしさ…」
手に持つ【両眼部】を、ミスティアは間近で見つめたり、月に透かしてみたりしてしげしげと眺めている。
「…あんたの『目的』は?なんで【遺体】のこと知ってるんだ?」
【両眼部】を観察するミスティアに、チルノは疑問を投げ掛ける。
「…?何のため?
貴女たち、もしかして何も知らないで見つけようとしてたの?この【遺体】が『誰』なのか………
あっと!ちょっと余計なことを喋ったかもしれないわね…
けれど、まあ……どっちみち、貴女たちには死んでもらうことになるんだけれど 」
ミスティアは一瞬怪訝そうな表情で質問を返し、しかしすぐにまた勿体ぶった言葉遣いで語り始める。
「…そうね、私たちの目的は…ただ一つ、ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー『下剋上』、よ♪」
にっこりと微笑み、歌うような口ぶりで、そう告げた。

909〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:14:59 ID:QeC6rD320
「……『下剋上』……?何言ってるの?今、『私たち』……って言った?仲間がいるのか?どこの誰に言われて【遺体】を集めてるんだ?」
チルノはミスティアを鋭く睨みつけ、矢継ぎ早に疑問を口にする。が、彼女の勝気な性分からか、すぐにハンッと鼻を鳴らし、小馬鹿にしたような態度で二の句を継いだ。
「ま、その『仲間』ってのも、『子分』にこのあたいとホル・ホースの『最強』コンビと戦いに向かわせるくらいなんだから、どうせ『弱っちい』意気地なしの『親分』なんだろうけどね。」
その挑発を聴き、ミスティアは眉をしかめた。
「ちょっと待ちなさいチルノ、今………なんて言った?
さっき私が言ったこと、聞いてなかったの?」
『親分』を貶された怒りから、憤怒の面持ちで喝破する!ーーーーーーーーーーーかと思いきや、
「『下剋上』とは!!
『弱い』とか『強い』とかそんな無意味な評価基準をひっくり返す革命的大偉業なのよ!
世界はアンタのようなヤツばかり……!
でも、私は違う……私は、その『下克上』の流れを真っ先に察知したわ!
だから、他のボンクラたちを出し抜くために、早め早めに準備してっ♪新しい時代、これから到来する【新世界】へと移住するのよ〜っ 」
謳うように恍惚の表情で、彼女は『下克上』の素晴らしさを力説し始めたのだった。
「かつて『恐竜』がこの地上で繁栄したのに突如滅んだのはなぜだか分かる?
それはこいつらが!『適応』という概念を知らない石頭だからよ!
『変化』に『適応』しない!だから滅んだの!
……ちなみに、こいつらの中で『適応できた』者が、今の鳥類の祖先ってわけ♪
……私は道義的にもつながる話をしてるのよ。『適応』しなければその報いは貴女達自身ひとりひとりが受ける!!その深い因果関係をこいつらの脳ミソでは理解できないのよ!」
月の光をステージライト、配下の『恐竜共』をオーディエンスに、ミスティアはミュージカルでも演じているかの如く、時に身振りを加え、時に身体をクルリと回し、忙しく【悪魔の手のひら】を動き回っては、酩酊したかのように自説を歌い上げるのだ。
「何のためにあなたは【遺体】を探してるの?動機は何?
あの『外来人』の歩けない脚を治したいからという理由?それとも『不老不死』とか『無敵のパワー』を手に入れたいから?
そんなちっぽけでレベルの低い話をしてるんじゃあないわ………この【遺体】を完成させ、『あの御方』が手にした時!
『下剋上』の奔流が、この【幻想郷】の歪んだ支配構造をごっそり洗い流す!
全てのパワーバランスがひっくり返って、変化に『適応』できる選ばれし者だけが生き残ることができる!
ーーーーーーーーああ、『あの御方』こそ、次の時代の覇者……♪私は次の時代を切り開く先駆者として、『あの御方』をお支えする〜っ それが、この私の使命♪」
グンッとターンし、ミスティアは陶酔の演目を終了した。再び、両者の目が合い、沈黙が訪れる。
にんまりとほくそ笑むミスティア、それを睨むチルノ。険しい顔付きで口を閉ざしていたチルノが、沈黙を破った。

910〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:15:36 ID:QeC6rD320


「はあ〜?何言ってんの?
さっきからぜんっ〜〜ぜんっ意味わかんないっ!アンタさてはバカね!」
それは、あんまりにあんまりな、ここまでの流れを台無しにぶち壊す歯に衣着せぬ暴言だった。
片眉を吊り上げ、もう片方は顰めたその表情からは、“意味不明だし話長いしつまんない”という考えがダダ漏れになっている。
「ーーーーーーーーーああ、そうそう♪そうだったわ
バカな妖精にも分かるように、説明してあげなくっちゃダメだったのね〜♪」
“それを言っちゃあおしまいよ”という台詞を吐かれたにも拘らず、ミスティアはめげるどころか“理解されないことがステータス”というように微笑み、今度はチルノの目を見て語り掛け始める。
「…貴女………『仲間』がいるかって訊いてたわよね。
ええ、いるわ、いるのよ、『あの御方』が、私の組織のトップに。
『あの御方』は、長きにわたり歴史から姿を隠していらっしゃった。しかし、妖怪の矜恃と誇りを片時も損なうことなく耐え、『救済の技法』の探求を続けられていた。そして今長き放浪から帰還し、ついに自ら歴史を変えることを決意なさった。
その名も『鬼神』セイジャ、鬼の四天王すら従える、妖怪の頂点、酒呑童子その人よ!
『その時』は確実に近付いているわ、もう目と鼻の先に!【蝕】が訪れる時、私たち【レジスタンス】が次の時代の覇者になるのよ!」
興奮から、最後には結局説明の役割を放棄した支離滅裂な演説となった。美声と病じみた心酔の熱で織りなすミスティアの賛歌を、チルノは変わらず勝気な笑みで一笑に伏す。
「…ヘンっ、やっぱり何言ってるのかわかんないじゃない………!ホントにバカなのね…!
たとえそんなのがホントにいるとして…そんなスゴイヤツがアンタみたいなシタッパを、『子分』にするわけないじゃない。」
二度目のチルノの嘲笑を聞き、ついに『理解』してもらうことを諦めたらしい。ミスティアはやれやれと肩をすくめ、ため息とともに首を振る。
「“燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや”ーーーーーースケールが大きすぎて、ちっぽけな貴女じゃ理解できないのね。『恐竜』が滅び『鳥類』が生き残ったように、私の言葉は『歴史』が証明しているわ。
まあ、【蝕】が訪れた時には、どんなに頭の悪いヤツでも理解せざるを得ないでしょうけれど♪
そして、そんな頭の悪い『遅れたヤツら』を、『進んだ者』が管理しなくちゃいけないということも、『歴史』が物語ってるわ。
『進化』してきた私には、この『恐竜たち』のように『石頭たち』を支配する権利がある!そのためにこの【能力】を授かったのよ!
アンタも!私の『恐竜』として支配してあげるっ!」
「うっさい!あんただって鳥頭のクセにっ!!」
鳥頭と氷頭、埒が明かない両者の問答も終わりを迎え、チルノは臨戦態勢をとる。
「ーーーーーーーなに言ってるかぜんっ〜ぜん!ち〜っとも分からなかったし、つまんなかったけど!ひとつだけ分かって、“聞いてて良かった”ってことがある……
あんたを倒せば!全部一件落着ってことよっ!」
両手に冷気を漲らせ、ミスティア目掛け氷の弾幕を放った!無数の超低温の結晶が、ミスティア・ローレライと『恐竜共』を破壊せんと迫る!

バキャキキキィィインッ!

「っ!?」
黒い影が電光石火の速さでミスティアの前に踊り出て、氷の弾幕はミスティアや『恐竜共』に届く手前でガラスが砕けるように粉々に散り消滅した。

911〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:16:08 ID:QeC6rD320
「…ああっ…!?
そ…そんなぁ……っ!?」
チルノが目を見開き、絶句した。
「グルルルルル……!」
頭のテンガロンハット
腰掛ける『車椅子』
右手に握られチルノに銃口を向けるスタンド銃、【皇帝(エンペラー)】
『恐竜化』が完了したホル・ホースが、ミスティアを庇うように立ちはだかり、蛇のような瞳でチルノを睨みつけた。
「ホ、ホル・ホース……!
くっ…あたいの『子分』を盾に使うなんて、この卑怯者……!」
ギリっと歯軋りし、チルノはミスティアに怒りの視線をぶつける。
「フフフフッ……さあ、どうするの? この『外来人』を倒さないと、私は倒せないよ?
貴女が持ってる【左腕】を渡したら、二人とも助けてあげないこともないけど……」
余裕綽々とチルノの視線を受け止め、ニヤニヤと笑いながらミスティアは告げた。
「……【遺体】は……ホル・ホースのために、大妖精ちゃんのために、絶対に必要なんだ…! 誰がお前なんかに……!! 絶対に渡さない……」
ミスティアを真っ直ぐ見据え、自分の左腕を抱いて、中の【遺体】を離さないことを示すチルノ。そんな彼女の様子に、ミスティアは苛立った声で疑問を投げつける。
「………なんでこの男のためにそこまでしようとするの?
コイツは『外来人』よ! 私をあんな目に遭わせた、『吉良吉影たち』の同類よ!?
あんただって、あいつらに一度殺されたじゃない!
どうせ妖精風情、お菓子かなにかもらって調子づいて、騙されてるだけなんでしょ!?」
チルノの理由不明の妨害に、ミスティアは不快感を隠さない。
『外来人』への深い憎しみを露わにし、彼女は声を荒げる。
チルノは顔を伏せ、少しの間押し黙ると、ゆっくりと口を開き『応え』を返した。
「………ホル・ホースもなんだ………『吉良吉影』に、ひどい目に遭わされた……
あたいのせいで……! 自分の足で歩けなくなった……っ
だから誓ったんだ!
あたいがホル・ホースの足を治してやるんだって!
そのためなら、あたいは何でもやってやるって!!
【遺体】のおかげで、ホル・ホースは足が動いたって喜んでいた! だからあたいは!【遺体】を全部集めて、ホル・ホースにもっと笑ってもらうんだっ!
お前なんかに!【遺体】は渡さない!!」
顔を上げ、キッとミスティアを見上げる。その双眸にはすでに『覚悟』が陽炎の如く揺らめき、自身のすべきことを一点の曇りなく定め見据えていた。

オオオオオオオォォォォーーーーーーーーーーー

チルノの闘志に比例するように、膨大な冷気が放出され、彼女を包む大気が歪む。
今までに無い強力な冷気は【悪魔の手のひら】を覆い、頂上に居座るミスティアにまで寒気を感じさせた。
「(ここまで冷気が届くなんて……!まさか【遺体】の影響で……っ!?)」
予想外のチルノの出力。ミスティアの表情が僅かに険しくなる。
冷気は『恐竜共』の天敵だ。しかも今季節は冬、それも夜。気候条件で言えば確実にこちらが不利だ。
ミスティアを囲う『恐竜共』も、周囲に満ちる冷気に不安げな鳴き声を上げている。

912〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:16:52 ID:QeC6rD320
「(…まあ、でも、有利なのは圧倒的に私のままなんだけど……ね♪)」
ミスティアはほくそ笑む。何故ならば、三十頭もの『恐竜共』、魔理沙にホル・ホースを従え、さらには彼女には一瞬で決着をつけることができる『十八番』があるからだ。
「(私の『歌』を聴いて狂いなさいっ!)」
「うおおおおおおーーーーーッッ!!」
雄叫びをあげ、チルノは一直線に突撃する。本人は全力疾走であるが、所詮は妖精の速力。この距離でならまるで脅威ではない。
まるで無策に突っ込んでくるチルノを、『夜雀の歌』で迎え撃った!
「「「生水飲むと〜おなかを壊す〜♪
湖飲むと〜三途河〜♪」」」
なんとも間の抜けた歌詞であるが、その効力は本物。彼女の『能力』のパワーを最大限乗せた『歌声』が、当然ながら音速で拡がり、チルノの耳に侵入した。
「(これでおしまいよ!)」
ミスティアは勝利を確信した。チルノの小生意気な顔が歪んで、ぐるぐる目を回して涙と涎と鼻水と冷や汗を流し、倒れる瞬間を目に焼き付けようと、期待に胸踊らせて注視する。
「ーーーーーーーーーーえ?」
だが、ミスティアの期待が満たされることはなかった。
チルノは一切ぶれることなく、真っ直ぐミスティアの方向へ丘を駆け上ってきていた。
「(なんで!?私の『歌』は対象がひとりなら確実に正気を蝕むはず…!耳栓程度で防げるほどヤワな声量でもないのに……
………!
ま…まさか…?!この氷精……!)」
パンクグループ『鳥獣伎楽』のメンバーとして活躍していた彼女には、チルノの『叫び』からカラクリを読み取ることができた。
「(自分の『鼓膜』を…!凍らせたというの……っ?!)」
自分自身の声を聞きフィードバックすることで、人は言葉を発することを可能にしている。逆に、それができない場合全く音程が掴めず、メチャクチャな発音になってしまうという。
明らかに音程の異常な、非常に不安定に揺れるチルノの『シャウト』。彼女にはおそらく、自分の声が聞こえていないのだ。
「(なんてことするのよこのバカ妖精!?メチャクチャじゃないのやってることが!)」
『歌声』での迎撃が失敗し、かなり距離が詰められてしまった。もうミスティアに猶予は無い。
だが、ミスティアの表情に焦りは無かった。
「魔理沙!『マスタースパーク』よっ!【遺体】を燃やさない程度にやっちゃいなさい!!」
ミスティアの命令を受けて、後ろに控えていた魔理沙が前へ出る。右手に『ミニ八卦炉』を握り締め、チルノに照準を定めた。
障害物も何も無い斜面を上ってくるチルノは、まさに恰好の的である。『恐竜』の反射神経で瞬時にロックオンし、魔力を『ミニ八卦炉』に流し込む!

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ォォォォーーーーーーーッッッ!!

ホル・ホースを戦慄させた魔性の光線が、チルノの小さな全身を呑み込んだ!

カッーーーーーーーーーーッッッ

ズドドドドドドドドドドドドォォォォーーーーーッッ!!!

一瞬、チルノの身体が光に包まれ
その直後、砂の斜面に照射したレーザーが、轟音と共にもうもうと砂塵を巻き上げる
「ええっウソでしょっ!?」
「ギャッ!?」
ミスティアが、魔理沙が、驚愕の視線を向ける先
立ち込める砂煙を突き破り、全くスピードを緩めることなく接近を続けるチルノの姿があった!
「ウシャアアアアァァァーーーーーッ!!」
主より『撃ち方やめ』の命令を受けていない魔理沙は、威力を増大させ再び『マスタースパーク』をチルノに向けて射出し続ける。

カッ!!

チルノの眼前で無数の光が煌めき

ズドドドドドドドドォォォーーーーーッッ!!

軌道を逸らされた破壊光線が彼女の脇を通り越し、爆音を上げ砂埃を撒き散らす
「うらああああああああーーーーーッッ!!!」
顔の前で腕を交差させ、鋼鉄の怪物の如き頑強さで猛進し続けるチルノ。彼女の周囲には【遺体】のパワーの影響か、普段より遥かに純度と精巧さの高い『パーフェクトフリーズ』が展開されており、
無色透明の盾となって、魔理沙の十八番である極悪レーザーを反射・屈折、
分散し軌道を捻じ曲げられた光線は、さながら電子基盤の如く枝分かれしては、チルノの傍を掠め後方へ消えていく!
紅海を割って渡ったというモーセの如く『マスタースパーク』を切り裂き、光のシャワーに包まれながら、チルノは怯むことなく冷気全開で我武者羅に突進していった。

913〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:17:22 ID:QeC6rD320
「くっ…………!」
ミスティアの顔に焦りの色が浮かんだ。【左腕部】を回収できていない今、彼女に帰投は許されず、冷気と『パーフェクトフリーズ』に護られたチルノには恐竜は接近不能、彼女自身の弾幕も無効。上空へ逃れても随伴できるのは魔理沙一匹のみであり、戦況は悪化するだけだ。
チルノは既に目前まで迫っていた。

バキィィィィイインンッ!!

「っ!?」
チルノの眼前で、『パーフェクトフリーズ』の氷が砕け散った!
重々しい銃声が連続して轟き、その度に彼女を護る『パーフェクトフリーズ』の盾がひとつひとつ破壊されていく!
「(ーーーーーーーーーー!
ホ……ホル・ホース………っ!)」
ミスティアの前に立ちはだかり、ホル・ホースは、チルノに【皇帝(エンペラー)】の銃口を向けていた。

ドゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオォォォォーーーzーーッッ!!!

『恐竜化』による身体能力の飛躍的な向上、そこから生み出される連射速度は、銃声が繋がって一つに聞こえるほどの苛烈な弾丸の暴風雨!
氷のような『結晶』は分子間が強固に結合しているが、それ故に“捩る”ような力に対して極端に弱い!
【皇帝弾】が『パーフェクトフリーズ』に着弾、
【回転】が波紋の如く氷を伝わり、
バットでボールを打つ瞬間をスーパースローカメラで撮影した様子のように、頑強な筈の氷がグワングワンとうねり、しなり、へしゃげ、破砕されるのだ!
「あはははははっ♪そうよ!こっちにはホル・ホースがいたわ!
魔理沙は下がりなさい、ホル・ホースの【スタンド】なら【遺体】を傷付ける心配もない!」
魔理沙は身を引き、ホル・ホースに前線交代、チルノと彼が真正面から激突する。
「〜〜〜〜〜っっ!!!」
歯を食い縛り、チルノはホル・ホースの猛攻を堪え続ける。
両者鎬を削り火花散らす鍔迫り合い、だが、明らかにチルノの進撃速度は低下し、額には汗と青筋が浮かぶ。相当の集中力が消耗されていることが見て取れた。
その隙を、ミスティアが見逃す筈も無く、
「今ならやれるわ!魔理沙っ!撃てーーっ!」
再び前面に出た魔理沙が握る『ミニ八卦炉』から、魔力注入時の火花が散り、
追撃の『マスタースパーク』が三再度チルノを襲った。

ヒュンッーーーーーーーーーー

『マスタースパーク』が直撃する刹那、チルノの姿が消えた、
「(えーーーーー)」
ように、ミスティアの目には“見えた”ーーーーーいや、“見えなかった”が故に、彼女はそう錯覚したのだ。
「「ッ!?」」
『恐竜化』した魔理沙、ホル・ホースの両名には、チルノの『動き』と、その変化を捉えることができていた。
「ギャッ!」
ミスティアの前方で警戒網を敷いていた『恐竜共』が、悲鳴を上げてぶっ倒れた。
浮き足立ち、喚き吼え、何かに飛び掛かる『恐竜共』、その間隙を縫い電光石火の勢いで駆け抜ける青い閃光。
「っ!?」
ここにきて、漸くミスティアにも視認することが可能になった。
身を翻し『恐竜共』の群れを蹴散らす、チルノの姿。その皮膚は痛ましく鱗に覆われ、耳まで裂けた口から鋭利な牙が覗く。
「うりゃあああァァァーーーーーッ!!!」
彼女が右手に握り、振り回しているのはーーーーー見間違う筈がない、【遺体左腕部】であった。

914〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:17:54 ID:QeC6rD320
「こ、この娘なに考えてるのっ!?【遺体】を抜き取って自分から『恐竜化』してーーーーーその【遺体】で相手を殴りつけるなんて…っ!!」
あろうことか、彼女は【遺体】をブン回しては、片っ端から手当たり次第に『恐竜共』をブッ叩いているのだ。
度を超えた愚行、“無知=罪”ここに極まれり。
【遺体】の正体を知っているからこそ、ミスティアはチルノの馬鹿を通り越した無鉄砲さに戦慄と悪寒に襲われた。
「ギャアアアアァァァーーーースッ!!」
「ウシャアアァァァーーーーー!!」
思考が止まった主人を護ろうと、チルノの三倍以上の巨躯を誇る『恐竜共』は健気にも身を呈して彼女の前に立ちはだかる。が、その涙ぐましい特攻精神も、並外れた反射神経も、チルノの規格外の冷気を間近に浴びては忽ちのうちに凍てつき、
動きを止めたところを【左腕部】で殴られ、【遺体】のパワーを無理矢理叩き込まれた影響か『恐竜化』が解除、山犬やら熊やら本来の姿に戻りバタバタと倒されてゆく。
「(ま、まずーーーーーーーーっ!)
魔理沙っ!ホル・ホースっ!下がりなさいっーーーーー」
ホル・ホースと魔理沙が【遺体】で張っ倒され『恐竜化』を解除させられることを恐れて、思わず両者を下がらせた。だが、配下を率いて戦う経験が希薄であったミスティアのその選択は、悪手中の悪手。将棋初心者が大駒を庇うあまり王を危険に晒すことと同じである。
「きゃんっ!?」
『恐竜化』もしておらず、ホル・ホースのガードを失ったミスティアは、絶好の獲物であった。命令を下した隙を突き、チルノは俊敏な動きで彼女に襲い掛かる。
ミスティアの頬に拳を叩き込み、いとも簡単に彼女の手から【両眼部】をひったくった!
「(やった!【遺体】が手に入ったっ!
あとはこれをホル・ホースにーーーーー!)」
瞬時に踵を返し、ホル・ホースのもとへ向かおうとした、が、

ドォンーーーーッ!

「ーーーーー?!
がっ…………あ…っ!…?ーーーー」
鈍い打撃音と同時に、チルノが膝を折る。
彼女の背中には【皇帝】の弾丸がめり込み、【回転】を伝導させ肉体の支配権を奪っていた。
ダウンしたチルノの手から、【左腕部】が離れ落ちる。
「あ……あはははは…………!思ってとよりやるじゃない、妖精のくせして……!
でも、残念♪もう勝負は着いたわね!私の勝利でっ!」
冷や汗を拭ってホッと胸を撫で下ろし、ミスティアは口角をつり上げる。
「このまま少しの間待っていれば、アンタも『恐竜化』して私の支配下になるわけだけど……そんなことはしない、生きたまま『恐竜たち』の餌にしてやるわ!
その前に、【左腕部】を回収しないとね…… 」
チルノの横に落ちている【左腕部】に目を向け、
「ーーーーーーーーーー?」
そこで、ミスティアは気付いた。
「あれ?【両眼部】は?」
チルノが奪い取った筈の【両眼部】は、彼女の周りの地面には見当たらない。
「チルノ!アンタ【両眼】をどこにやったの?おとなしく出しなさい!」
倒れ伏すチルノに怒鳴ると、彼女は『恐竜化』に意識を乗っ取られかけながら、勝ち気な笑みでミスティアを見上げた。
「………あんたは………いや、『アンタたち』…は!絶対にあたい達には勝てっこないわ……!
あたいが『最強』だからとかじゃない……『親分』『子分』の信頼関係が違うのよ…っ!」
鼓膜が凍結し噛み合わないうえ音程のずれたチルノの言葉を戯言と無視し、ミスティアは声を荒げ再度問う。
「チルノっ!【両眼部】はどこなの!?出しなさいっ!」
「あたいたちは二人合わせて『最強のコンビ』だ!
ホル・ホースはこのあたいが『子分』にしてやってるほどの男なのよっ!嘗めないでよね!」
チルノの瞳に宿る、勝利の確信。この絶体絶命の状況下でも微塵も揺るがない諦めへの拒絶。
「はっ!?」
ミスティアは、チルノからホル・ホースへと視線を移す。
ホル・ホースは『車椅子』を降り、砂の地面に座り込んでいる。
顔を伏せ、テンガロンハットの鍔に隠れて表情が見えない。

915〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:18:30 ID:QeC6rD320
「ホル・ホース!おまえ、なんで『車椅子』を降りてるの!?顔を上げて【両眼】を探しなさい!」
まさか、そんなことがーーーーーミスティアは悪い予感に背筋を凍らせながら、それを否定しようとホル・ホースを怒鳴りつけた。
「聞こえないの!?顔を上げてこっちを見るのよっ!ホル・ホース!」
喚くミスティアの命令が届いたのか、ホル・ホースは、ゆっくりと顔を上げた。

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ーーーーーーーーーー

ニィッと口角をつり上げた、力強い笑み
その顔は、口は、目は、歯は、『恐竜化』の影響を払拭し人間のそれに戻っており
その頬には、眼下には、【遺体右眼部】がめり込んでいた。

ガギガギーーーーー
ガギギッーーーーーーー!

硬質的な音を上げて、【右眼】が皮膚の下に沈み込んでいく。グルンと回ったホル・ホース自身の右眼の瞳と、【遺体】の瞳とが重なり合った。
「うわああああアァァぁァああぁッ!」
ホル・ホースは両手で顔を覆い、苦悶の絶叫を上げる。
「【皇帝(エンペラー)】に撃たれた時、【回転】を【眼】に伝えてホル・ホースの方に投げたのよっ!あたいとホル・ホースのチームプレーの勝利ってトコねっ!」
チルノの勝ち誇った声を耳に、ミスティアは焦燥の色を滲ませてホル・ホースを注視する。
彼女の視線の先、ホル・ホースは絶叫をやめ、両手を下ろした。
彼の【右眼】の下に刻まれた、『十字架』の聖痕。『唯一神』の象徴。
【遺体】を手にしたホル・ホースは、眼光鋭くミスティアを見据え、
「はっーーーーー!?」

ドゴオォォーーーzーーンンッ!

至近距離から神速の早撃ちで撃ち出された【皇帝】の銃弾が、肉の盾となった『恐竜共』の身体を抉り貫いた!
「ギャアアァァァーーーーーッ!?」
近距離での奇襲こそ【皇帝(エンペラー)】の本領、矢鱈めったら連発しては、盾にされた恐竜を【回転】で操作し、他の恐竜と相討ちさせていく。
「まっ、まずーーーーー!
はっ!?」
大量に乱射された【皇帝(エンペラー)】の弾丸、その内の一つは砂地に転がる【左腕部】を撃ち、【回転】で以って跳ね上げた。
「ゲットォ〜っ!!」
弧を描き宙を舞う【左腕部】は吸い込まれるようにチルノの手にキャッチされ、彼女の左腕と同化した。
チルノ『恐竜化』解除、五体大満足、すぐさま飛び起き、ミスティアへの接近を再開する。
「(ま…マズイ…っ!【遺体】を取られた!『恐竜化』も解けた!接近もされてるっ!)」
パニックに陥りつつあるミスティアは、ここで起死回生の手を思い付く。
「(そうだっホル・ホースは鼓膜を凍らせてなんかいないっ!私の『歌』を聞かせればーーーーー!)」
再び『歌』でホル・ホースを操ろうと口を開く。
だがその瞬間!
「ううぅーーーーーっ!??」
ビシビシと音を立て、ミスティアの口が凍りついた!
「(さ、寒い…っ!こ、この冷気は……っ!)」
いよいよパニックに陥ったミスティア、
「ーーーーーーーーーー【ホワイト・アルバム】……………だ……」
彼女を見上げ、しかし圧倒的優勢から見下ろし、チルノはそう告げた。
「【ホワイト・アルバム】ーーーーー今名付けたっ!あたいの最強の『スタンド』っ!」
鼓膜を解凍し、高らかに、朗らかに、誇らしげに、チルノは宣言する。
彼女の体表から溢れ出る極寒の冷気に、ミスティアの配下の『恐竜共』は完全に戦意喪失し地面にへたり込んでいる。

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ーーーーーーーーーーーーーーー

『車椅子』に飛び乗ったホル・ホース、冷気を漲らせたチルノ、二人が尋常じゃない気迫を纏い、ミスティアへとにじり寄る。
「も、もふぐうぅ〜!(ま、待って待って!)
うえむも〜もぐうぅ〜えもぅもおぉんーーーーーーーーーーー(『スペルカードルール』で決着をつけ)ーーーーーーー」
腰を抜かし、涙目で両手を突き出して許しを乞うミスティアへ、
「最初っから最後までっ!何言ってるのかわかんないわよーーーーーっ!」

ピチューーーーーンッ!!

無情なチルノのセリフと共に、トドメの集中砲火が返された。

916〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:19:09 ID:QeC6rD320
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー

「ーーーーーと、まあ、こんくらいで良いだろ。これで暫くは目ェ覚まさねー筈だぜ。」
パンパンと手を払い、ホル・ホースが声を発した。彼の両目の先では、ミスティアが地面に倒れのびている。
チルノの【ホワイト・アルバム】がミスティアを襲う寸前、【皇帝】の弾が彼女に着弾し、【回転】で気絶させたのだ。
“女性を傷付けざるを得ない時は必要最低限”、ホル・ホースの信条に基づいた行動であったが、チルノは不服そうである。
「せっかく、あたいの【ホワイト・アルバム】でカチコチに凍らせてやれたのに〜……」
ぷく〜と頬を膨らませ不満な表情のチルノを、ホル・ホースはたしなめる。
「まぁまぁチルノよォ、【スタンド】なんてこの先いくらでも使う機会はあンだ、この鳥の嬢ちゃんより強い相手の方が、最初に凍らせてやる相手として上等っつーモンだろ?」
「……それもそうね!最強のあたいの新しい能力!『スタンド』!こんなシタッパに使うなんてもったいないわ!
それと、ホル・ホース…」
過ぎたことは気にしない性格のチルノは、すぐに“まあいっか!”という思考に行き着き、晴れ晴れとした顔でホル・ホースに向き直ると、
「あんたの『スタンド』、想像してたのよりなんか“しょぼい”わね!」
「ぐゥッ?!ま、まあな……ヒヒッ…」
ニシシッと笑って、グサリとホル・ホースの胸に言葉を突き刺した。ホル・ホースは割とけっこう傷付き、呻き声を洩らしたあと、取り繕うように苦笑する。
そんな彼の様子を見て、チルノはイタズラっぽい笑顔で台詞を続けた。
「それで良かったのよ!『親分』のスタンドがカッコよくて、『子分』のは“しょぼい”!そうでなくっちゃ!」
チルノの言葉を聞いて、ホル・ホースはなるほどと納得し、ニヤッと笑った。
「ヒヒッ、そうか、そうだった、そうだよなァ…俺たち『コンビ』はチルノよォ、おめーが『親分』で、俺が『No.2』、二人合わせて最強のコンビ…だ!
これからも頼りにしてるぜ、『親分』。」
「へへんっ!まっかせなさい『子分』っ!」
パンッ、『車椅子』のホル・ホースと宙に浮くチルノ、両者同じ目線の高さで、二人は互いの右手を打ち合った。
「……あれ………?」
ここで、チルノは訝しむように首を傾げた。ホル・ホースの目の下の『十字架』は、右眼の下にしか存在していなかったのだ。
「ホル・ホース…!」
「?」
チルノの様子に、ホル・ホースも疑問符を滲ませる。
「あんたのとこに転がって行った【眼球】は『2個』よね?あんたの目は『2個』と一体化した…!!あんたは『左右』手に入れたのよねっ!?」
「ッ!?」
バッと、二人はある一点を振り向く。
宙に身を躍らせる、黒い影。
黒いスカートに白いエプロン、黒の三角帽子をはためかせる『魔女』の姿。
「ああっーーーーー!」
チルノが、しまったと口を覆う。
霧雨魔理沙の左頬に、【遺体左眼】が一体化していたのだ。
さらに、驚くべきことが起こった。
【左眼】が彼女の目と融合した瞬間、顔や腕が鱗に覆われ、鋭利な牙が口の端から覗いたのだ。
『竜人』のような出で立ちの魔理沙は、ニッと快活な笑みを二人に見せつけると、箒を掴み身を翻して、夜の空へと消えて行った。

917〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:19:44 ID:QeC6rD320
「なに!?あれは!?どーいうこと!?魔理沙の『変身』が消えてないっ!
魔理沙は『ミスティア』の支配下だったのにっ!!追わないと魔理沙に片方の【目玉】を持ってかれるわっ!」
「やめろチルノ…今はもう終わりだ、落ち着け。
あの速さじゃあもう追えねぇだろ。」
焦るチルノを、ホル・ホースは冷静な声で制止する。
「最後に魔理沙にしてやられたって事だな…
…というより【目玉】を手にして、その『力』でいったん消えた魔理沙の『恐竜化』が『スタンド』として新たに引き出されたのかもしれねぇな…
『半分』が俺の【皇帝】へ…『半分』が魔理沙の【スタンド能力】へ…、つーことか。」
もうすでに小さくなった魔理沙の姿を眺め、ホル・ホースは呟いた。
「トカゲの能力…!魔理沙はさっきは操られて襲ってきただけだったけど……魔理沙は一個手に入れたら全部欲しがるよ!!
今あいつは【遺体】のことを知った……
あんなヤツに半分持ってかれるなんて……!!あいつは『マジックアイテム』だけじゃあないっ!『パワー』とか『知識』とかをスゴく欲しがるっ!」
悔しそうに地団駄を踏むチルノ。その時だった。
「ーーーーーあれれれ…、してやられちゃったな……コッチとしても…色々と……」
「「ッ!?」」
背後から聴こえた声。二人は咄嗟に振り返る。
「チルノに【スタンド】が発現するなんて……『あの御方』もきっと予想外だったんだろうな……可哀想に、【僕】のミスティア……」
黒いマント、緑の髪、頭から伸びる二本の触角。
月を背に宙に浮くその少女は、気を失ったミスティアを抱きかかえ、眠る彼女の顔を愛おしそうに見下ろしていた。
「あんたは……っ!…えーっと…リ…、リグル!うん、リグル・ナイトバグっ、だ!!…たしか!たぶん!」
睨み付け身構える二人を見下ろして、『蟲の王』リグル・ナイトバグは口を開いた。
「君たち……特にチルノ。君はその『外来人』の脚を治したい、…なんて理由で、『二千年前の聖人の遺体』を集めているのなら……【僕】たち『レジスタンス』は、『キジン セイジャ』様は、君を許さない。」
冷徹な憎悪を湛えた暗い双眸で、リグルはチルノに視線を落とす。
「ヘンッ、うっさいわね!あんたたちみたいな『ザコ』に、許してもらう必要なんかないわっ!!」
ビシィッとリグルに人差し指を突きつけ、歯を見せて笑い挑発する。
「ーーーーー君たちも、その時が来れば…【蝕】が来れば、いやでも分かる。
【僕】たちの『下克上』は、決して止めることなんかできないってね……」
そう告げると、リグルは右手を掲げた。
「「ッ!!」」
チルノとホル・ホースは臨戦態勢に入る、が、

カッーーーーー!

「きゃあっ!」
「ぐッ…!?」
瞬間、強烈な閃光が二人の目を眩まし、
視力が回復した時には、リグルとミスティアの姿は消えていた。
「リグル…!あいつもミスティアたちの仲間だったのか…!」
ギリッと歯軋りするチルノ。
「ホル・ホース!あいつら、なんて言ってたの?『レジスタンス』とか【ショク】とか、『云年前の聖人』とか、ワケわかんないことばっかり!」
「……いや、…俺にもわからねぇ……分からねぇ、が……」
テンガロンハットの鍔を人差し指で弾き、ホル・ホースは苦々しげに顔をしかめた。
「ーーーーーーーーーーどうやら俺たちゃあ、相当デッケエ陰謀とか組織にブチ当たったみてェだぜーーーーー」

918〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:20:19 ID:QeC6rD320

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー

ここは竹林近くの森、リグルとミスティアが普段根城にしている地域。
その鬱蒼と繁った木々と今宵の闇は、見られたくないもの、見られてはならないものを、他者の目から隠すにはこの上無く好都合であった。
たとえば、そうーーーーー『秘め事』のようなーーーーー

「ーーーーーーーーーーあ……ああっ……
だ……だめ……っ こんなこと……!
私たち、女の子よ…?
こんなのって……変よ……!」
木に背中を押し付けられ、逃げ場無く身をよじり弱々しい抵抗を続けるミスティア。
胸元がはだけた衣服から、柔肌と肩と鎖骨が覗き、外気に晒されている。
自分に覆い被さるリグルを、見つめる瞳には涙で潤み、扇情的に光が揺れる。
「そんなこと、関係無いさ…
【僕】は君が好きなんだ、ミスティア。 君もそうだろう?
……それとも…ミスティアは【僕】のこと、嫌いなの?
あんなヒドイこと、君にしちゃったから………」
紅潮した面持ちで、ミスティアの衣服に手を掛け剥ぎ取ろうとしているリグルは、しかし、ミスティアの拒絶からか双眸が暗く沈んでいく。
それを目の当たりにし、リグルを傷付けたくないと、ミスティアは慌てて取り繕おうとした。
「…う、ううん……違うの…!あなたを嫌ってなんかないわ…! だって、あなたも脅されてたんでしょう?あの『外来人』に…… リグルちゃんは悪くないよ、悪いのは全部『外来人』…
私もリグルちゃんのこと、好きだよ… …今日も、助けに来てくれたもの………
でも…私の『好き』は、その…『恋人として』とは違うって言うか……、
んぐぅっ!?」

ズキュウゥゥゥン!

ミスティアは、口を塞がれた。
リグルがミスティアを抱き寄せ、強引に彼女の唇を奪ったのだ。
「………ん…んん…っ!?」
「……ミスティア…君がほんとに好き……」
二人の唇が重なり、淫らな水音が零れる。
目を白黒させ、顔を真っ赤に染めて動転していたミスティアだったが、

ドズッ!

不穏な音が、ミスティアの口から洩れた。
「…ッ!?
んう〜っ!?ううぅ〜ッ!」
先ほどのおぼこい態度から一転、ミスティアは必死にリグルから唇を離そうと彼女の肩を押す。が、リグルはミスティアの背中に回した両腕でガッチリも彼女を拘束し続ける。
その姿はさながら、網にかかった蝶を貪る蜘蛛であった。
「だって、君の綺麗な【悲鳴】のおかげで、【僕】はあの苦しみに……あの『外来人』の責め苦に耐えられたんだから……」

ブヂッ…ブヂブヂィッ…

致命的な音色が、周囲に聞こえるほどの音量で響いた。ダラリダラリと鮮血が零れ、二人の衣服を紅く染めていく。
「〜〜〜っ!?
ん〜ッ!ンン〜っ!?」
白目を剥き、血泡を吹いてガクガクと痙攣するミスティアを、リグルは愛おしそうに、そして加虐心に爛々と瞳を輝かせて眺める。
「だから……君の声は、舌は、【僕】のものだ。
【僕】のためだけに、君は啼いてくれ、ミスティア……
――――――舌切り雀〜切り雀〜…♪小さな葛を下さいな〜………♪」

919〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:20:58 ID:QeC6rD320



こんなことを言うと、大袈裟だと嗤われるかもしれないけれど
少なくとも僕には、あの魔女に奴隷のように扱われて、精神的にも肉体的にも押し潰されていた、あの時の僕にとっては、吉良親子は間違いなく『希望』だったんだ

吉影さんは、完璧だ。僕の欲しいものを全部持っている。自分を思ってくれる父がいて、心に一本の芯を持っていて、自分に迷いが無くて、才覚に溢れ、自信に満ちていて………、なにより、自分の『幸福』を疑っていないんだ
『富』とか『名声』なんていう、皆が必死こいて追い掛けて、躓いて転げ落ちたり他人を押し退けたりしてまで求めているものが、
そんなものが何も無くとも、孤独でも、嫌われても、命を落としても、スリルが無くても
それでも独立して、たった一人で『平穏』を噛み締めて、有難がりながら、『幸せ』を感じ享受しているのだ

僕も、あの人のようになりたい
あの人のようになれたならきっと、その時には、やっと僕は『幸せ』になれるんだと
『産まれてきて良かった』と
そう心から思えるんだ。と、そう、感じさせてくれた

だから
あの人に近付くために
この僕の未熟な心を
12年前から全く成長できなかった、泣き虫な子供のままの僕を
削ぎ落とさないといけないんだ

「ーーーーーほおら、見えるか?ここに君のお友達がたくさん捕まっているのが分かるか?
今からこの子らを僕がどうするか、分かるよな?」
「ううう……ひっく……や……やめて………うううぅ………やめてよぉ……………」
暗く殺風景な部屋の中、泣きじゃくり嗚咽する子供を見下ろして、口角を吊り上げる。
リグル・ナイトバグというこの妖怪は、蟲の妖怪だ。今はその特性を利用して、こいつの心を嬲っているところだ。
右手のゴキブリホイホイを、コンクリ製の床に焚いてある焚き火にくべる。忽ち、火炎は紙を包み込み、中に囚われた様々な種の蟲共を炙り殺した。
「ほらほら!君のお仲間が燃えていくぞっ!助けないのか?助けてやりなよ『蟲の王様』ァァァァーーーーーハハハハハハハハハハーーーーーッ!!」
唇を噛み締め、ぽろぽろと大粒の涙を零しえづくリグルを眺めては、込み上げる愉快さを哄笑に変え吐き出した。

ただ趣味の悪いいじめをやっているように見えるだろうが、少し違う。これは、僕の『特訓』なのだ。幼い子供の姿をした妖怪たちを嬲ることで、自分自身の中に巣食う『罪の意識を感じる部分』を麻痺させていこうとしているのだ。
そして、今のところこの試みは上手くいっているように思える。僕の加える所業によって泣き叫ぶ少年少女を眺めていても、罪悪感は無い。寧ろ楽しくすらある。
そりゃあそうだ。誰がゴキブリホイホイを焼くことに罪の意識なんて覚える?それを見て本気で泣き叫ぶ子供を、笑わずに眺めていられるヤツなんてどれくらいいるというんだ?
分かっている、この程度は序の口だ。ここから少しずつ、責めの手を強めていくーーーーー最終的には、そう、命を奪うところまで。
この調子で徐々に心を、『痛み』に慣れさせていけば。
人を傷付けたくない、嫌われたくないと泣き喚く、僕の『弱い心』を、麻痺させ、抉り、削り取ってしまえば。
もう苦しまずに済む。
なんだってできる。
僕を嫌うヤツも、攻撃してくるヤツも、気に入らないヤツも、強くて正しいヤツも、殺してしまえばゴミと同じ。
僕の全てを台無しに傷付けたゴミクズ共とは違う。『あの人』のような、上品でスマートな男になってやる。
そんな未来が待っていると思うと、沈みやすい僕の心も、随分と明るくなってくれるのだ。

920〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:21:33 ID:QeC6rD320

リグルの『能力』は、身体が土くれでできている僕にはまるで効果が無い。雀蜂の針に何度刺されてもヘッチャラだ。
しかも、リグルは妖怪としては珍しく身体能力は見た目相応。だからこうして全身『ファイル』解除して、牢屋の中二人きりで遊んでやることができる。
「そんな風に泣くなよ………男の子だろ?ン?」
床にへたり込むリグルの前にしゃがんで、髪を掴み顔を覗き込む。ひっ、と洩れる悲鳴が心地良い。
と、ここで、リグルがビクビクとしゃくり上げながら、
「ーーーーーーーーーー……私………ひっく………『男』…じゃない…よぉ………えっ…………えぐ…っ…………『女の子』だよぉ…ぉ…………ぐすっ………うえぇぇ…………ぇぇ……」
リグルの嗚咽混じりの言葉を聞いて、眉をひそめた。こいつは、僕が『女』なら容赦するとでも思ってこんなデマカセを吐いているのか?
残念ながら、僕は男も嫌いだけれど、女の方が大嫌いだ。男にいじめられるのは、辛くて悲しいがまだ納得できた。僕があいつらより弱かったからだ。でも、女は違うじゃないか。たぶん僕でも腕っ節なら負けないのに、ヤツらは僕をいかにも汚いものを見る目で眺めては、罵詈雑言を楽しげに投げつけてきやがる。お前らは犬の糞の臭いをわざわざ嗅いで、臭い臭いと文句を垂れるのか?僕のことが気持ち悪いなら、無視すりゃあいいのに…
「ふーん、…そうか、そうか………
…だったら……………」
胸糞悪いことを思い出し、最悪の気分にさせられたので、腹いせに辱めてやろうという考えが頭をよぎった。
「確かめてやるよ」
リグルのズボンに手を伸ばし、【エニグマ】で紙に変え、一気に引き裂いた。
「〜〜〜〜〜〜っっ!!?」
突然の横暴に、リグルは言葉を失い頭が真っ白になった。
露わになる、未成熟な少女の証。
目に映り込んだ、穢れを知らず、穢される備えのなされていない、純潔の証明。
「やああぁぁっ!?」
一瞬遅れ、リグルは取り乱しながらも両手で覆い隠した。恥辱に顔を紅く染め、涙を溢れさせる。
「ーーーーーーーーーー?」
だが、その時、リグルは、彼女は、気付いた。輝之輔の異常に。
「ーーーーーーーーーーーーーーーう…………うううぅ…………!」
輝之輔の表情は凍り付き、冷や汗がダラダラと伝い落ちている。ガチガチと歯を鳴らし、カッと見開いた目は、この世でないものを見るように、恐怖に揺れていた。

921〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:22:05 ID:QeC6rD320


ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー

粗く、荒い息をつき、肩で息をしながら、肩を震わせる。
弛緩した右手から、ベッタリと血の付着した学生鞄が滑り落ちた。
『死ね』『キショイ』『カマ野郎』『ゴミ』ーーーーーその他諸々の罵詈雑言が殴り書き込まれた辞書と教科書類がタイル張りの床にぶつかり、重々しい音が、トイレの中に木霊する。
「ーーーーーはぁーーーーーハアーーーーッーハァーーーーーハアーーッーーーーーーーはっーーーーーーハァーーーーーーーーーー」
動悸はまだ治まらない。重たい鞄を力の限り振り回し続けたことも理由の一つだが、なにより、徹底的に相手を潰すつもりで武器を頭に叩きつけるという産まれて初めての行動が、胸を締め上げていた。
「うーーーーーーーウウッーーーーーーーウウうゥーーッーーーー……………
フーーーーーッーーーーーーフーーーーッ」
床に転がる、意識を手放した身体。血の滲む頭部に乗せられている、白いリボンの巻かれた黒い中折れ帽。
白いシャツと紺のロングスカートを纏った四肢が、無造作に不潔なタイルの上に投げ出されているのを、尋常ではない形相で見下ろした。
左手の親指を力いっぱい噛み締め、動揺を無理矢理押し込めると、

スッーーーーー

胸ポケットから、シャープペンシルを抜く。金属製の、力の強い人間が扱えば十分凶器となり得るような物だ。
「(ーーーーーーーーーーき………
…『傷』…を…………ッ!)」
右手にシャープペンシルを握り締め、倒れ込んだ女性へとにじり寄り、左手を女のスカートに伸ばす。
「(ーーーーー僕と……ッ!!『同じ傷』をッッ!!!)」
しゃがみ、スカートの裾を引っ掴むと、一気に捲り上げた。

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー



「ッ!?うげえェえぇぇエェェッ!!」
リグルに背を向けくずおれて、床に這い蹲ると、胃の内容物を盛大にブチまけた。
「うげエぇエェェえぇぇーーーーーッ!ガボぉッ!?ウおゴボオェええエぇェェェェーーーッ!!」
四つん這いになり、激しく嘔吐を続ける輝之輔の後ろ姿を、リグルは恐怖と焦燥の眼で凝視する。
何かのトラウマを刺激されたのか、しきりにえずき、吐瀉を繰り返す彼の姿は、先ほどの暴君とは別人のように小さく、衰弱して見えた。
ーーーーーゴクリ、リグルが喉を鳴らす。
やるなら今だ、今しかない。
彼女には高い身体能力は備わっていないが、脚力だけは並みの成人男性以上だと自負していた。
這い蹲り反吐を吐いているこの男の、隙だらけの背中に蹴りを入れてやれば。
おそらく、この牢屋から逃げ切るだけの時間は稼げる筈。
息を堪えて、リグルは彼の背後に忍び寄る。輝之輔は気付く様子は無い。ただ咳き込みながら、胃の中身を捻り出すばかりだ。
「(くらえっーーーーーっ!!)」
輝之輔の後頭部に狙いを定め、満身の力を籠めて、蹴りを放った。

922〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:22:46 ID:QeC6rD320

ギィィンーーーーーーーーーーーーーーー!

「〜〜〜〜ッッ!??」
振り返った輝之輔の眼光が、リグルの胸を射抜いた。
どうしようもなく深い憎悪に満ち、ギラギラと暗く輝く瞳。
その視線が網膜を捉えた時、リグルは理解した。
彼女は、彼の、決して触れてはいけない『地雷』を踏んだのだ。
途方もない恐怖にリグルの幼い精神は射竦められ、僅かに芽生えた闘志も砕け散り跡形も無く雲散霧消した。

ブゥンンーーーーーーーーーーッ!!

蒼白の涙伝うリグルの頬を掠めて、何かが唸りを上げ通過した。

ズバァッーーーーー!

彼女の背後の鉄筋コンクリートの壁に、輝之輔の拳が紙でも破るかの如く容易く突き刺さった。

ーーーーーハラリ……

輝之輔の手が掠ったリグルの頬は、『紙』に変化し風圧に靡く。

ーーーーードサッ……

リグルの膝が、床に崩れ落ちた。
「ーーーーーーーーーー」
彼女を見下ろす輝之輔の表情は、陰っており確認しようがなかった。幾ばくかの間を置いて、

スッーーーーー

輝之輔は懐から二枚の『紙』を取り出し、開いた。
「……………履け」
『紙』から取り出した下着とズボンを、リグルの手前の床に落とし、ただ一言そう言った。
「え…………?」
絶望のあまり放心していたリグルは、理解が追いつかず惚けた疑問を呟く、が、
「早く履けと言ってるんだよッ!汚いものを見せるなッ!!」
「は、はいぃっ!?」
輝之輔の怒声を聞いて現実に引き戻され、慌てて渡された衣服に身を通す。その間、輝之輔は彼女に背を向けてブツブツと何事か呟いていた。
「ーーーーーーー宇佐見ーーー蓮子ーーーーーーー自業自得だーーーーーー当然の報いーーーーーブツーーヤツのせいで……………僕は………ッ!!」
憎悪まみれの呪詛を聞き、リグルは急いで衣服を身に付けた。終わると、輝之輔は振り返りーーーーー
「……リグル…リグル・ナイトバグ、だったね?」
「は、はいぃっ!!」
身を竦め、背筋を強張らせ、リグルは返事する。
輝之輔は踵を返すと、部屋の出口の扉へと向かい、鍵を開けて振り返った。
「ーーーーーリグル、おいで。」
ドアを開け、輝之輔は笑顔でそう言った。
「…………え…?」
困惑し、疑問符を零すリグル。当然だ、監禁していた相手を、ついさっき自分の逆鱗を踏み躙った相手を、いきなり牢屋の外に連れ出すなど、どう考えても辻褄が合わない。
「この部屋から出してあげよう、と言ってるんだよ。付いておいで。」
だが、輝之輔は比較的優しさを感じさせる笑顔でそう続け、部屋から出て行ってしまった。
「あーーーーーは………はい……っ」
慌て、リグルは彼に続き部屋を出た。

923〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:23:16 ID:QeC6rD320
廊下に出ると、リグルが捕えられていたのと同じような部屋が向かいの壁と横に並んでいた。きっと、その各々に他の妖怪少女らが幽閉されているのだろう。
「こっちだ、付いておいで。」
輝之輔は、リグルの部屋から出て左へと廊下を歩いて行く。リグルも黙ってそれに従った。

短い廊下を抜け、左に曲がると、少し様子の違う部屋があった。ドアには『管理室』と札が掛かっている。
「入っておいで」
ドアを開け、輝之輔はリグルを招き入れる。
「お、お邪魔します…!」
失礼を働いて激昂させては堪らないと、思わず敬語で挨拶し、リグルは中に足を踏み入れる。
部屋の中に入ってまず目にとまったのは、中央に置かれた丸テーブルと椅子二脚、続いて簡素なベッドに、壁に並ぶ一面がガラス製の謎の箱。
どうやらここが、輝之輔の部屋らしかった。
「そんなかしこまらなくていいよ。掛けて、どうぞ。」
輝之輔はまた悪意の滲まない笑顔をリグルに向け、椅子を引いた。
「あ、ありがとうございますっ!!」
機嫌を損ねないよう、急いで着席すると、輝之輔は彼女の向かいの席に着いた。
これから何をされるのかと、不安に怯えるリグルの前で、輝之輔はまた懐から『紙』を抜き、開いた。
「ーーーーーわあっ……!」
思わず、リグルの口から歓声が零れた。
輝之輔が『紙』を開くと、そこに苺のショートケーキが現れたからだ。
蟲妖である彼女は、甘いものに目がない。そのうえ、洋菓子などというものは、【紅魔館】のパーティにでも呼ばれない限り口にできないご馳走であった。
ゴクリ、リグルが生唾を呑むのも無理はなかった。
さらに、輝之輔は複数の『紙』を取り出しては、ティーポットやティーカップが手の中に現れ、手品師のように鮮やかな手捌きでティータイムの用意を済ませた。
「さあ、召し上がれ。」
ミルクティーとフォーク、ショートケーキをリグルの前に並べ、輝之輔は微笑む。
「!………………」
目の前に用意されたご馳走を、じっと見下ろす。が、手はつけない。輝之輔の豹変ぶりが不気味過ぎて、毒か何かが盛られているんじゃないかという疑いが拭えなかったのだ。あるいは、これを口にした瞬間、無理難題をふっかけられるんじゃなかろうかという怯えが、身を竦ませたのだろう。
「………君が疑うのも仕方ないことだろうけど…今、僕は本心で君をもてなしたい気分なんだ。
信用できないなら、ほら、見ていて。」
輝之輔は自分用のフォークを取り出すと、ショートケーキの端を掬い、自分の口に運んだ。美味しそうに頬を緩め、ゆっくりと味わって咀嚼する。
その様子を、リグルは食い入るように見ていた。
やがて、口に含んだ分を食べ切ると、輝之輔はにっこりと笑いリグルに語り掛ける。
「ね?なんともないだろう?毒とか殺虫剤は入っていない。だから、安心して、召し上がれ」
輝之輔には毒が効かない。それゆえ、これだけではケーキに何か混入していないことの証明にはならない。
だが、リグルは限界だった。
「ーーーーーいっ……いただきます…っ!」
フォークを引っ掴み、柔らかなクリームと生地に突き立てる。大きな欠片を抉り、口に頬張った。
クリームの甘みが、生地の芳醇な香りが、舌の上でとろけ、鼻腔をくすぐる。駆け抜ける法悦。たまらず、リグルは二口、三口と口に運ぶ。あっという間に、皿の上は空になった。
この上なく満ち足りた気分で、幸福の溜息を吐くリグルを、これまた満足げな表情で眺める輝之輔。
と、彼は手の中に小さなボタンのたくさん並ぶ箱を取り出し、リグルに呼び掛けた。
「………リグル、ちょっと見てほしいものがあるんだ。」
言うと、輝之輔はその箱を壁に並ぶ箱に向け、ボタンを押した。
ピッ、と音が鳴り、箱のガラスが一斉に光を発した。
「ーーーーーーーーっ!?」
リグルは、息を呑んだ。ガラスに映り込んだのは、コンクリの壁に囲われた部屋で監禁されている少女たちであった。

924〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:23:54 ID:QeC6rD320
「これはモニターと言ってね、牢屋に仕掛けたカメラから、リアルタイムで映像を受け取って、ここに映す外の機械だ。
つまり、ここに映る映像は、ちょうど今のこの娘たちの様子なんだよ。」
自慢げに語る輝之輔。モニターには、鎖や縄や『ファイル』で拘束され身体の自由を奪われた妖怪の少女たちが、様々なアングルから映し出されている。いくつか誰もいない部屋を映しているものもあるが、それらはきっとリグルの部屋に仕掛けられたものなのだろう。
おぞましさに、背筋を震わせる。
そんなリグルの反応を楽しむように、輝之輔は一つ一つの画面を指差して、聞きたくもないような解説をした。
「この娘はルーミア、君も知り合いだったね。最初に僕の『コレクション』になった娘さ。吉影さんにこっぴどくやられちゃってトラウマになったらしくて、『ファイル』した吉影さんの声を聞かせたら、すぐに『サイン』を見せてくれたよ。リグル、君の情報を教えてくれたのも彼女なんだぜ。
こっちのオッドアイの娘は多々良小傘、凄く、本当に良い娘で、今じゃあ僕が部屋を訪れると進んで靴を舐めて掃除してくれるんだ。そのザマと言ったらもう傑作でね、思わず頭を踏んづけてあげたくなるほど可愛い。一番のお気に入りだね。
この犬みたいな耳の子は幽谷響子、山彦の妖怪で、テープレコーダーを見せびらかしてやったり山彦の原理を科学的に解説してやったら、必死に頭を振って聴きたくないって泣く娘だ。
ーーーーーそれで、こっちのこの娘………君はよ〜く知っているはずだね?」
ニヤニヤと笑いモニター一つ一つを指差していった輝之輔は最後に、ある画面を指差した。
リグルが、言葉を失う。
そこには、彼女がよく見知った顔が映っていたからだ。
他のアングルからも確認できる、特徴的な帽子、背中に生えた翼。
「ミスティア……ッ!」
ミスティア・ローレライが、牢屋に囚われていた。手足の関節は『ファイル』され、鎖とベルトでがんじがらめに壁に縛り付けられている。口には開口器が嵌められ、涎が顎を伝い落ちている。
「そ………そんな…っ!」
住処の近い二人は、かなり仲の良い友人だった。そんな友達の悲惨な姿を目の当たりにし、リグルは椅子から飛び上がる。
「おっ?その反応!どうやら相当仲の良いお友達のようだね。」
輝之輔はニヤリと口角を吊り上げて、ミスティアの映る画面へと歩み寄る。
「彼女の種族は、『夜雀』っていうんだってね。それで、ちょっと【外】の資料を調べてみたんだ。そしたらーーーーー!」
画面の横に来ると、クルリとリグルを振り返り、パンパンとモニターを叩く。
「なんと『夜雀』ってのは、鳥の他にも蛾や蝶の姿だという伝承があったんだ!つまり、ミスティア、彼女は『蟲妖』でもあるってわけさ。そこで、だーーーーー」
モニターに肘を付いてもたれかかり、輝之輔は歯を見せて笑う。
「リグル、君の『能力』で、彼女を『支配』してみないかい?」
「ーーーーーーーーーーはーーーーーは………、……え…っ?」
その言葉を聞き、リグルは当然之ごとく困惑した。
「ーーーーーた………試したことはないですけど、多分できないと思います………っ
私の『能力』は、その、けっこう制限があるので……」
ビクビクしながら、リグルは輝之輔に異議を申し立てる。
「あ〜、違う違う、そっちは期待してない。
そうじゃなくてさーーーーー」
モニターに肘を掛けた手を振り、輝之輔は言葉を続ける。
「君の『蟲を操る程度の能力』で、少し僕を手伝ってもらいたいんだ。」
「て……手伝い……っ?」
再び蘇ってきた恐怖に瞳を潤ませるリグルに、輝之輔は部屋の隅を指で示す。
「ここに通気口があるだろ?ここからダクトが各部屋の天井に繋がっている。もちろん、狭くて君には通り抜けられないけど……『蟲』と『紙』なら、自由にその中を移動できる。
君にやってもらいたいこと、それはーーーーー」
輝之輔はまたしても、『紙』ーーーーー『雀(生け捕り)』とマジックペンで書かれた『紙』を、懐から抜き出した。
「『蟲』を使ってこれをミスティアの部屋の通気口まで送り、彼女の目の前で、中の雀を喰い殺してもらいたい。」
戦慄が、リグルの全身を駆け抜けた。

925〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:24:25 ID:QeC6rD320
輝之輔もその強張りを察したのだろう、ひらひらと『紙』を振り、リグルに話し掛ける。
「なあ、簡単なお仕事だろ?もちろん、お礼だってちゃんとするさ。金輪際君を苛めたり、蟲たちを殺したりはしないし、お菓子だってもっと沢山、色んな種類のものを【外】から取って来て、君に振る舞うことを約束する。」
「で…………でも…っ!そんなことしたら、みすちーが……!」
「傷つくからイヤだ、って言いたいんだろ?大丈夫大丈夫、やってみたらそんなに辛いことじゃあないさ。むしろ楽しくなってくるもんだ。
どうしてもっていうなら、とりあえず、ミスティアの部屋まで『紙』を運んでみなよ。その後続けるかどうかは、それから考えてくれたらいい。」
「ううっ………!」
輝之輔に『紙』を渡され、震える両手で受け取る。
とにかく従う素振りを見せないと、何をされるか分からない。彼女は『能力』で蟲を集めると、『紙』をそいつらに預けた。
「……………頼んだよ…」
蟲たちは『紙』を皆で咥えて、通気口の中へと入っていった。
「おっ、思ったより早いな。」
暫くして、画面を覗き込んでいた輝之輔が関心の声を上げる。『紙』を持った蟲たちが、ミスティアの部屋の通気口から這い出て来るのが確認できた。
「…………っ!」
部屋の中、暗く沈んだ目で緊縛されていたミスティアもそれに気付き、はっと顔を上げる。
「おおっ!どうやら彼女も気付いたようだぞ!おおかた、“リグルちゃんが助けに来てくれたわ!”とか思ってるんだろうな…ククク、ぬか喜びとも知らずに…」
悪趣味に口の端を歪め、輝之輔は愉悦の笑みを零す。
「さあリグル、ここからが本番だ!今から僕が『ファイル』を部分解除する。頭だけ出てきた雀の頭を、この蟲たちに喰わせてやれ!」
爛々と下卑た期待に輝く双眸を、リグルに向けた。
しかし、リグルは唇を噛み、小刻みに震えるばかりで、首を縦に振ろうとはしない。大事な友達を自分の手で傷付けるなんて、恐ろしさでいっぱいだった。
「…………リグル、君は…別に、鳥を殺すことに『罪悪感』は無いわけだろう?ただ、それをミスティアの前で行うという部分が、君の決断を妨げているわけだ。
だったら、こういうのはどうだ?君は目を閉じる。何も目に入らない。そこで、あの蟲たちに、雀を殺すよう命令する。ミスティアなんて傍にいない、君はただ、雀を殺させただけ……………それなら、何の問題もないだろう?」
「で…………でも…っ!」
輝之輔の励ましを聞いても、リグルの背中を押す事はできなかった。そりゃそうだ、実際にはミスティアが見ているのだから。
なかなか行動に出ない彼女を見かねた輝之輔は、
「ーーーーーひとつ、良いことを教えてあげよう。」
パチン、と、指を鳴らす。
すると画面の中で、『紙』に変化があった。床に置かれた『紙』から、雀の頭が生えてきたのだ。
「この雀は、ずっと食事を与えていない。君の『命令』で『紙』の側にいる蟲たちのことが、たまらなく美味しそうなご馳走に見えていることだろうなぁ〜……」
「っ!?」
はっと顔を上げ、リグルは画面を凝視する。律儀にも彼女の命令を守り『紙』の側に待機していた蟲の一匹が、雀の嘴に捕らえられた。
「あ、ああぁ…っ!?」
目を見開き、口を押さえるリグルの前で、画面の中の雀は啄んだ蟲を飲み下す。
「あ〜あ、蟲が一匹死んだぞ……君の命令のせいで……」
ニタニタと笑顔を張り付けて、輝之輔はリグルの傍に歩み寄る。
「ほらほらほらほら、早く決めないと、次の蟲が犠牲になるぞ。早くしなよ。」
言ってる間にも、雀は次の蟲を嘴で啄ばんだ。
「ほらっ!また喰われたぞッ!君のせいだッ!君が早く決断しておけば、あの蟲は助かっただろうに!」
リグルの肩に手を回し、彼女の顔を覗き込む。
「ああ…………!…ああああぁぁ……………っ…!!」
大粒の涙が、澄んだ瞳から零れ落ちる。その眼には、自分の命令のために蹂躙される同胞の命が鮮明に映り込んでいた。
「早く決めろッ!君が!君が殺せと命令しない限り、蟲は死に続けるぞッ!
たかが雀一匹がなんだっていうんだ!?なあ!殺さなきゃ殺されるんだぞッ!早く殺れッ!」

926〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:25:11 ID:QeC6rD320
「うっ、うああああぁぁーーーーーっっ!!」
耳元で叩きつけられる、輝之輔の言葉。
ぎゅっと目を瞑り、リグルは蟲たちに命令した。
画面の中で、変化が起こる。喰われるのを待つばかりだった蟲共が一転、雀に殺到していく。
いかに天敵と言えど、頭以外は『紙』の中ではその戦力差は圧倒的、群がる蟲共になす術なく喰いつかれ、ピィピィと悲鳴を上げている。
「〜〜〜〜〜っ?!あ〜〜〜!ああああ〜〜〜〜〜ーーーーーっ!?」
助けに来てくれたと思っていた蟲共が雀を食い殺し始めたのを見て、ミスティアの表情が豹変する。開口器に邪魔されて自由に口が聞けないにも関わらず、目一杯の叫びをあげている。
「ハハハハハハハハッ!傑作だッ!見てみなよあの泣き顔をッ!」
バンバンと膝を叩き、画面を指差して哄笑する輝之輔、彼に肩を抱かれて、両手で耳を塞ぎ目を固く瞑るリグル。何も聞きたくない、何も見たくない、ただ早く時間が過ぎてくれるのを祈り続ける。
蟲が雀の眼球を引き摺り出し、頭の中へと侵入した。脳を貪り、掘り返し、暴れまわってズタズタにする。
やがて、雀の鳴き声は聞こえなくなり、『ファイル』を解除して全身を出しても、ピクリとも動かず床に斃れ臥した。部屋の内で、ミスティアの慟哭が反響する。
「よし、殺したなッ!やったねリグル、偉いぞ!よく手伝ってくれた!」
ガッツポーズし、リグルの頭を撫でる。
「え………えへへへ…いひひ………
こ………これで……約束は守っていただけますか………?」
啜り泣きながら、媚びた笑顔を懸命に浮かべるリグルに、輝之輔は首を横に振る。
「いや、まだだ。あともうひと踏ん張り、それだけしてくれたなら、約束通りにしてあげよう。
最後にーーーーーーーーーーあの雀の肉を、ミスティアの口に入れてやってくれ。」
輝之輔の口から告げられた言葉に、戦慄する。
「そっそれはっ…!それだけは……お願いします、どうかそれだけは……!!」
取り乱し、必死に懇願するリグルを、輝之輔は冷酷な瞳で見下ろした。
「ーーーーーリグル、君は…“まだ今なら、ミスティアに許してもらえる”……とか、甘えたこと思っているんじゃあないのか?」
「っ!?」
「君はもう、ミスティアを傷付けている。向こうだって、今のはリグル、君の仕業だってとっくに分かっているんだ。今更遅いんだよ、君に残された選択肢はーーーーー」
肩に手を置き、目を伏せて震えるリグルに顔を寄せ、
「できるだけ、僕の機嫌を損ねないってことさ。」
決定的な一言を、彼女に告げた。
「あ……ああああぁぁ………」
リグルの心境は、闇の底に突き落とされたようなものだった。もう私は元には戻れない、この男に付き従うしかないーーーーーそんな考えが、頭の中に反響していた。
「ーーーーーさあ、早く言われた通りにするんだ。僕が痺れを切らす前に…………」
輝之輔が冷たい声音で耳打ちする。
「ーーーーーーーーーーは……はい…」
小さく返事を返し、リグルは蟲に命令した。
蟲たちが雀の死体を喰い千切り、ミスティアのもとまで運んでいく。
「…………っ!??
あ〜〜〜〜〜!あアああぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」
啜り泣いていたミスティアも、この蟲たちが何をするつもりなのか察し、必死に拒絶の叫びをあげる。
だが、蟲たちは行進を止めず、口の中に雀の肉を運び込んだ。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!?やああア〜〜〜〜〜〜ッ!アアアアアぁぁ〜〜〜ッッ!!」
同胞の血肉の味、匂いが口内と鼻腔を満たし、ミスティアの悲鳴が一段と激しくなった。
「うおおおおッ!!イイぞッ!これはイイッ最高だァッ!!こりゃ永久保存版だな!何重にもロック掛けて、絶対に消去しないようにしなくちゃ!ダビングもしまくろう!」
歓声を上げてはしゃぐ輝之輔の横で、ついに堪えきれず、リグルはしゃがみ込む。
「うえっ……!うえええぇぇぇぇ………っ!!」
リグルは、吐いた。先ほど食べたばかりのショートケーキの甘さと、胃液の酸っぱさが混じり合い、床に溢れていく。

927〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:25:46 ID:QeC6rD320
その吐瀉物はコンクリの上を拡がり、輝之輔の靴を汚した。
「…………っ!
ご、ごめんなさいごめんなさいっ!!す、すぐに掃除しますからぁぁ…っ!」
慌てて、床に落ちた自分の反吐を啜ろうとするが、

ポンッ

床の汚液も、輝之輔の靴に付着した汚れも、一瞬で消え失せた。
「おいおい、自分で戻したものまで食べようとするなよ。」
見上げると、『紙』をヒラヒラと振っている輝之輔が、笑顔で彼女を見下ろしていた。
「そんなことしなくても、約束通りケーキはいくらでも食べさせてやるよ。君は僕を“手伝って”くれたんだからね。」
反吐を『ファイル』した紙をゴミ箱に放り、新しい『紙』を取り出し広げると、皿に乗ったチョコレートケーキが彼の手の上に現れる。
「ほ〜ら、ご褒美だ。さっきとは違う味だけど、お口に合うかな?」
「え………あ…………はい…ありがとうございま…す……」
立ち上がり、輝之輔から皿を受け取る。ショートケーキとは違う甘ったるさが鼻をくすぐり、またしても食欲に囚われた。フォークを掴み、掬って口に運ぶ。とろけそうなほどの甘さ、感激に酔い痴れる。
「……ほら…………見てごらん。」
ケーキを頬張るリグルの肩を抱き、輝之輔は画面を指差した。
「ミスティアは、君のお友達は、今耐え切れない程の絶望に襲われている。君の操作する蟲のせいでだ。」
蟲に雀の眼球を口内に押し込まれ、ミスティアは苦悶の慟哭を続けている。涙はとめどなく流れ、目をぐるぐると回し錯乱していた。
うっ、と、リグルの胸に再び吐き気が込み上げるが、口を押さえ堪えた。
「でも、君はなんにも悪くない。なぜなら、僕が君に無理矢理これをやらせたからだ。
蟲たちが雀を食い殺したのも、そうしなきゃ自分たちが殺されていたからやっただけだろう?。それと同じさ、全くもって悪いことじゃあない。」
『罪悪感』に押し潰されそうになっているリグルを、慈しみすら感じさせる優しい声で、輝之輔は慰める。
「これは、この世の摂理なんだ……いじめなきゃ、いじめられる。この世はそういう風にできてるんだ。逆に、君が誰かをいじめていれば、君は誰かにいじめられずに済むーーーーーそう、『幸せ』でいられるんだよ。」
その言葉は、チョコレートケーキのように甘美な音色で、リグルの鼓膜に染み込んでいった。
「(ーーーーー“いじめなきゃーーーーーーーーいじめられる”ーーーーーーーーーー)」
脳内で反芻し、味わうように噛み締める。
リグルは、ミスティアを見た。泣き叫び、千切と乱れ、悶絶する友達。自分が助かりたいがために、犠牲にした大切な友人。
「(ーーーー“いじめていればーーーーー『幸せ』になれる”ーーーーー)」
『罪の意識』は胸を締め上げ、彼女を責めたて続けている。
後悔の涙は、とめどなくリグルの頬を濡らしている。
だが、少し、ほんの少しだけ、輝之輔の言葉を聞く前よりは、楽になれた気がした。
輝之輔は画面を見たまま、横のリグルに語り掛ける。
「泣くなよ………、笑え、笑えーーーーー
僕らは二人でこれから、『幸せ』になるんだからーーーーーーーーーー」
リグルは、輝之輔の顔を見上げた。苦痛に歪むミスティアを、魅入られたように見つめている。
その様子を見て、リグルはーーーーーーーーーー『楽しそう』、と、そう思った。
「ーーーーーーーーーーあ………………あはははは…………は」
リグルの口から、渇いた笑いが零れた。
彼女は泣きながら、無理矢理に笑っていた。
涙を零し、瞳潤ませ、口の端を捻じ曲げて、泣きたいのを堪えて、懸命に笑っていた。
「あはははははは…………くくっ…………ふふふ…
…くひひ……………いひひひ……………ひひ………………ーーーーーーーーーーーーーーー」
リグルの歪な哄笑が、部屋の中に木霊していたーーーーーーーーーー

928〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:27:03 ID:QeC6rD320

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ーーーーーリグル………リグルぅぅ………!
好き…!だぁいすきィぃ……!」
「…うん、【僕】もさ…ミスティア……」
「えへへへ〜……♪うれしいよぉぉ〜〜…… 」
睦言を交わす、リグルとミスティア。
ミスティアは何も身に付けず、リグルにしがみついては、惚けた嬌声を上げていた。
「あ〜ららら…、みすちーったらガンギマリじゃない……
リグル、あんたちゃんと投与量守ったの?私の【マニック・デプレッション】は強力だから、量が多ければ致死量よ。」
「大丈夫だよメディスン、いざとなれば【僕】が蟲を寄生させて延命させるから。」
応えながらリグルはミスティアの首筋に舌を這わせ、ミスティアはひゃぁんっと嬌声を上げて身体を跳ね上げる。そんな二人の様子を見て、メディスンと呼ばれた人形の少女は、うんざりした表情で溜息を吐いた。
と、その時であった。
「…たくっ…まだ月も高いというのに盛(さか)りやがって……」
苛立った声を聞き、リグルとメディスンは振り返る。開いた襖から、一つの人影が部屋の中に入ってきた。
「ーーーーーこれは、失礼致しました。」
リグルは行為を中断し、その人物へと向き直る。ミスティアは畳へ投げ出され、快楽の余韻に浸り肌を紅く染め痙攣している。
メディスンもその人物を、恭しく敬礼して迎えた。
「ーーーーーまもなく、我ら虐げられし弱者の時代が到来する……そのための準備も、全て完了した。」
部屋に足を踏み入れたその人物は、特徴的な容姿をしていた。白と黒の交じる髪は先にいくにつれて逆立ち、額からは纏まった赤い髪が伸びている。
そして、彼女の頭には、小さいながらも二本の白い角が生えていた。
「『塩酒』の流布、情報操作、人間共の不安扇動、【命蓮寺】と【夢殿大祀廟】の対立………………必要なことは全て終えた。
あとは【蝕】の時を待つのみだ…………その時には…………」
その少女は、部屋にいる仲間たちを眺め回す。リグル、メディスン、その他の影にいる者たちの視線が、少女へと集まった。
「我らこそが…っ!新世界の覇者だッ!!」
【輝針城】天守閣にて、鬼人正邪は高らかに宣言したーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー

929どくたあ☆ちょこら〜た:2014/02/06(木) 17:35:07 ID:IfMqVAxA0
投下終了です。

輝之輔は、外づらは美少年だけど臆病で自信無げなキョドギョドした態度とねじくれた性格が“気持ち悪い”、と周りに思わせてしまうキャラだったらいいなと、【第一部】を書いていた頃から思っておりました。

930セレナード:2014/02/06(木) 20:57:23 ID:J764ua7w0
飴と鞭…ま、洗脳状態にして従属させるにはそれが一番ですね。
しなきゃされる。そして『されるのが怖い』からする。
確かどこかの一家も似た手口を使っていましたっけか。名前忘れちゃったけど……。

そして輝之助がリグルに見出したものは……恐らく『自らとの共通点』でしょうね。
リグルを最初に味方につけたのは、ある種の『同情心』だったのかも。
(自分も同じ経験をしている以上、味方につけやすかったからとの解釈もできそう)
そして尊敬する奴間違えている……というのは、彼にはもうわからないんでしょうね。

フェルディナンドのポシジョンがミスティア、Dioのポシジョンが魔理沙ですか。
……なんか、魔理沙が事態をかき乱す予感がしてきました。

レジスタンス、ということはやがて輝針城の物語と結びつける予定ですね。
私の方も、輝針城のあたりをクライマックスにしようかと考えています。
『打ち出の小槌』…ちょこら〜たさんの物語ではどう使われるのか、楽しみにしています。

931サイバー:2014/02/06(木) 23:03:31 ID:8O5tBsNg0
吐瀉物のあと口も洗わずに次の物食べるとか
俺潔癖症だからムリダナ・・・

932サイバー:2014/02/06(木) 23:04:25 ID:8O5tBsNg0
iD変わってやがる

933まるく:2014/02/07(金) 09:01:29 ID:/i7k2fNU0
リグルは女の子。いいね?(憤怒)
過去の傷跡を色濃く残した幻想郷、それを払拭するかのごとくの足取りのホルチルコンビ。
リグル達も正邪のさらに後ろに居そうな人たちに気付いていないんだろうなぁとも思える。
…と思ったんだけど、予告のあれが本当ならばという前提。そもそも敵対組織は一つだけ?
Dioは野望・渇望からの行動でしたが、魔理沙にはそういった感情ではなく、基本的に好奇心からの人間としての高みへ至る行動と取っているのでどう動くかもわかりません。
事件の始まりを表す、まさしく「片鱗」にあうお話でした。

輝之助君はジョジョの中でもかなり上位の鬱屈タイプだと思います。あんなスタンドの才能だしね。弱者をいたぶるために特化したような能力とか闇が深いです。
遠からずマックイィーンのような大人になると思っておりました。
でもリグルは女の子。いいね()

>セレナードさん
彼の尊敬相手も、「劣っていた自分を見てくれる『かもしれない』『男』」っていう点も大きかったんでしょうねー。
原作では基本矢を刺して覚醒したら見てるだけだった吉廣でしたけど、鉄塔の時は会話してますし、仗助の母親と康一くんを最初に狙うということはおそらく通じ合って情報得てますしね。
そこからすでにこういうのを思っていたのかもしれませんし。
こういうの楽しいですね。わくわくします。輝之助君消滅したっぽいけど。

でもリグルは女の子。初見で見抜けないようじゃだめだよ。いいね

934どくたあ☆ちょこら〜た:2014/02/07(金) 16:31:35 ID:/QI4U2B.0
皆様、感想ありがとうございます。
言い忘れていましたが、【第一部】第二十一話 『不幸せ者のフィロソフィ―』の編集を行った際、輝之輔と宇佐見蓮子の関係を示す過去設定を追加致しました。よろしければ御一読下さい。

≫セレナードさん
互いの憎悪を煽り立て同士討ちを誘発する、自らは直接手を下さない。なんとも鬼畜的で合理的な犯行ですよね。この物語内では常套手段と化していきますが…人妖対立とか、仲間割れとか。

深く読み込んで戴き嬉しい限りです。輝之輔はセレナードさんの仰る通り、リグルに『同じ匂い』を感じたからこそ、このような行動に出たんでしょうね。
サイコパスはしばしば『魅力的な人物』として目に映りますから、輝之輔も吉良吉影の魔力にあてられたのでしょう。吉影は自分の『怪物性』の克服のために戦っていたということにも気付かずに…哀れ。

セレナードさんは【輝針城】で作品を締めくくるご予定ですか。新作が発表されたなら、延長の目もありますかね?終わってしまうのは寂しいので…
『打ち出の小槌』は当然出します。強化+凶暴化なんて、うってつけじゃあありませんか。【サバイバー】の上位互換。
セレナードさんの作品内ではどのように扱われるのか、楽しみにしております。

≫まるくさん
>リグルは女の子。いいね?(憤怒)
>でもリグルは女の子。いいね()
>でもリグルは女の子。初見で見抜けないようじゃだめだよ。いいね

そうだよ(便乗)
それでもチルホルなら、チルホルならなんとかしてくれる…
このコンビがこの物語の数少ない良心です。
今のところ「『展開』はこの予告通りだッ!!依然変わりなくッ!」、です。
敵対組織はいくつか存在し、互いに憎み合い潰しあっていますが、大本は一つ。皆、釈迦の手のひらで飛び回る孫悟空です。
魔理沙の感性は比較的『一般人』のそれに近いイメージ。そして頑張り屋。ジョニィの語った“気高く飢える”人間。泥棒ですが。

輝之輔はやっぱりこういうキャラが似合う。というより、こうあるべき。【第二部】は『ホラー』を意識して作っているので、“弱い人間がその弱さを攻撃に向けた時が一番怖い”、“ホラーとは人間の悲しみ”という荒木先生の言葉を常に念頭に置きながら書いております。

輝之輔は吉良親子に『二度』救われたことになりますね。両方彼がドン底の時に差し伸べられた蜘蛛の糸だったので、二人が希望の光に見えてしまったのも無理のないこと。
輝之輔の影は今後も幻想郷に悪影響を及ぼし続ける予定です。

≫サイバーさん
口内の吐瀉物も含めて『ファイル』した、と書いたつもりだったのですが、抜け落ちていますね。wikiに転載する際に修正しておきます。

やはり紅魔館に居たもう一人は大統領だったか。
再生&霧化能力を持つレミリアには、DIOや大統領では分が悪いですね。プッチですら【DISC】を刺せるかどうか怪しい。…やはり吉影が最強(ry
大統領は隠れんぼでは無敵かと思いわれ。

次回も楽しみにしております。

935サイバー:2014/02/08(土) 19:33:43 ID:a/TechQ.0
紅魔館編、隠れ鬼編再開します!今回は少しだけはバトルシーンは
長くなったと思います!

936東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:34:37 ID:a/TechQ.0

レミリア「さてと・・・そろそろね・・・」
咲夜「そうですね、行ってらっしゃいませ・・・お嬢様・・・」
レミリア「フフフ・・・絶対に・・・フランのためにも・・・私のためにもDIOはここにいさせなくちゃならないの・・・」
レミリア「じゃあ行ってくるわ・・・」

レミリアはそういうと扉を開け、廊下を小走りで走って行ったのである・・・

咲夜「・・・何でお嬢様は私に頼まなかったのかしら・・・」

そういいながら咲夜は紅茶を片付けるのであった・・・

      |開始から10分経過・・・|

レミリア「中々居ないわね・・・」トコトコ・・・

      |開始から15分経過・・・|

レミリア「・・・」トコトコ・・・

      |開始から30分経過・・・|
レミリア「・・・」ピタッ・・・
レミリア「うーッ!!」
レミリア「なんでこんなに探したのに居ないのよ!」
レミリア「あいつら外にでも逃げたのかしら!」
レミリア「でも・・・」

937東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:35:09 ID:a/TechQ.0
          ・・・回想・・・
咲夜「ルールはこの屋内だけですからね。」
DIO「分かった、この屋敷だけだな」
プッチ「外に通じる扉は閉じておくぞ」
大統領「フフ、私たちはこの館内でも余裕だがな・・・」
レミリア「言ってくれるじゃない・・・」

          ・・・・・・・・・
レミリア「って言ってたけどねえ・・・」
プッチ「・・・」
レミリア「!?」
レミリア「今・・・えっとプッチってやつの気配が後ろからした気がする・・・」
レミリア「気のせいかな・・・」

        一方その頃DIO達は・・・

938東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:35:41 ID:a/TechQ.0
        一方その頃DIO達は・・・

DIO「ウグゥ!!グハァ!!」ドシュドシュ!
???「アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!そんなのじゃ私には勝てないよ!!」

  ドガァーン!
              バッコーン!         ボギャァーン!
     メキャァ!                      
                     バッコン!     
          ドッコォ!             メギョメギョッ!

DIO「ゲホッ・・・ゲホッ・・・」
???「あれ〜?もう終わりなの?DIOもこの程度だったんだ〜もっと強いと思っていたのに〜」
DIO「(こいつ・・・レミリアより格段に強い・・・ッ!ヴァレンタインは逃げていて相手にならないし・・・)」
大統領「(頑張れ・・・DIO・・・)」

               時は遡り10分くらい前・・・
「紅魔館 地下」

DIO「ここなら安全そうだな・・・こういう地形なら俺でもやりやすいな・・・」
大統領「こういう暗いとこなら逃げやすいかもな・・・(私は隣りに逃げるが)」
DIO「!」
大統領「どうした!?」
DIO「前方に・・・女が一人居る・・・レミリアの様な小娘だ・・・」
大統領「しかし・・・レミリアは上にいたぞ・・・」
DIO「・・・マズい、早く上に逃げるぞ!!」ダラダラ
大統領「どうしたDIO!汗の量が半端ではないぞ!」
DIO「良いから早くッ!早く逃げるんだッ!」

939東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:36:11 ID:a/TechQ.0
しかし既に遅し、その子どもは既にDIO達の後ろに回っていたのであった!

DIO「!!」
大統領「こいつはッ!」
大、D「フランッ!」

そう!フランとはッ!あのレミリアの妹である「フランドール・スカーレットなのである!」
フランの能力は「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」である、この能力は
レミリアも危険だと思い、この地下室に閉じ込めていたのであった!
そしてDIO達はその地下室に隠れていったのである!

DIO「しまった!フランを見せられた時は上に連れてこさせていたから分からなかったがここがフランを閉じ込めていたところなのかッ!」
フラン「DIO〜♪」
DIO「マズいッ!」バッ
フラン「あれ〜?何で逃げるの?DIOは私と遊んでくれるんじゃないの?」
DIO「すまないが今は「隠れ鬼」をしているんだ・・・・普通なら逃げるのが当然だろう?」
フラン「「隠れ鬼」・・・私は鬼なの?」
DIO「そうだ、だから私たちは逃げるんだ。」
フラン「「隠れ鬼」なんてつまんない!私がしたい遊びをDIOとヴァレンタインはするの!」
大統領「我儘だな・・・」
フラン「わたしは「弾幕」ごっこがしたいの!だからDIOも付き合って!」
フラン「そうだよ・・・DIOも「スタンド」・・・だっけ・・・それで私と弾幕ごっこしてよ・・・DIOはそんなに簡単に
「壊れたり」しないから・・・」
DIO「マズいッ!(このフランは駄目だッ距離を置かなくてはッ!)」

940東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:36:47 ID:a/TechQ.0

        BGM「U.N.オーエンは彼女なのか?」

フラン「ねえ・・・DIO・・・逃げないでよ・・・私はまだ遊んでないよ・・・・?」
DIO「・・・・」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
  
フラン「禁忌「レーヴァテイン」ッ!」
    ザ・ワールド
DIO「 「世界ッ」 !!!!」

「世界」、DIOのスタンドである、ガッチリとした肉体、黄色いボディ、まさに世界を支配するのにふさわしい
スタンドである!

フラン「ハァッ!!」ブオオン!
DIO「ザ・ワールドッ!」ガシッ!
フラン「ちょっとっ!離してよ!」ブオオン
DIO「ヌウウン!」バッ
フラン「これでどうかしら!」ブオオンブオオン!
DIO「ヌアァァ!!」バシッバシッ!
DIO「グァァッ!!」

DIOとフランとの闘いはかなりの激戦だった!フランはレーヴァテインでDIOをメタメタに斬りまくり、
DIOはザ・ワールドでフランの攻撃を受け流していたが少々食らっていた!

941東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:38:08 ID:a/TechQ.0
DIO「(ヴァレンタインはどこに行ったんだ!あいつならすぐに片付けられるだろうにッ!)」
DIO「(ン?あれは・・・アメリカ国旗?まさか・・・)」
大統領「・・・」国旗ヒラヒラ
DIO「あの野郎ォォォォォォォォ!!」プッツーン
DIO「(なんで俺が戦ってる時に逃げているんだッ!)」

そんなこと考えてるうちにフランがDIOの事をつかんだ!普通ならこんなこをよけることは簡単だろうが
ヴァレンタインへの怒りで周りが見えていなかったのである。

フラン「つかまえた♪」ガシッ
DIO「ハッ!しまった!」
フラン「きゅっとして・・・」
フラン「どかーん!」

瞬間ッ!その空間に爆発が起こった!その爆風にDIOは吹っ飛ばされ!
壁にめり込んでしまった!
フラン「あれ?もう終わりなの?DIO!私をもっと楽しませてよ!そうしないと・・・本当に「壊しちゃう」かも
しれないから・・・」
DIO「ハァーハァー・・・ウッ!ゴホッ!ゴホッ・・・」血反吐ベチャベチャ

942東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:39:45 ID:a/TechQ.0
DIOは立ち上がるとまたザ・ワールドを構え、戦闘態勢に入った・・・

フラン「そう♪DIOはそうじゃなくっちゃ!」

そういうとフランはDIOめがけて超高速で移動しDIOを切り裂きまくるのであった!

DIO「ウグゥ!!グハァ!!」ドシュドシュ!
???「アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!そんなのじゃ私には勝てないよ!!」

  ドガァーン!
              バッコーン!         ボギャァーン!
     メキャァ!                      
                     バッコン!     
          ドッコォ!             メギョメギョッ!

DIO「ゲホッ・・・ゲホッ・・・」
???「あれ〜?もう終わりなの?DIOもこの程度だったんだ〜もっと強いと思っていたのに〜」
DIO「(こいつ・・・レミリアより格段に強い・・・ッ!ヴァレンタインは逃げていて相手にならないし・・・)」
大統領「(頑張れ・・・DIO・・・)」
DIO「(こうなったらあれを使うしか・・・)」
フラン「これでトドメぇ!!」ドグシャァァ!!

943東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:41:14 ID:a/TechQ.0
DIO「「世界」!!時よ止まれッ!」

            ドッギャァーーーーーーーーz____ン!!

DIO「・・・これが・・・「世界」だ・・・フラン・・・最もお前には見えもせず感じもしないだろうがな・・・」残り9秒
DIO「今までの分を返してもらうぞォ!!」残り8秒
DIO「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYッッ!!!」残り7秒

944東方荒木荘 紅魔館へ行こう!:2014/02/08(土) 19:44:35 ID:a/TechQ.0
DIO「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄ァァァ!!!!」残り3秒
DIO「とどめェ!!!!」ドグシャァァ!!! 残り2秒
DIO「そして時は・・・」残り1秒


                         「動き出す」




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