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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD5

927〜Saint Babel Run〜:2014/02/06(木) 17:25:46 ID:QeC6rD320
その吐瀉物はコンクリの上を拡がり、輝之輔の靴を汚した。
「…………っ!
ご、ごめんなさいごめんなさいっ!!す、すぐに掃除しますからぁぁ…っ!」
慌てて、床に落ちた自分の反吐を啜ろうとするが、

ポンッ

床の汚液も、輝之輔の靴に付着した汚れも、一瞬で消え失せた。
「おいおい、自分で戻したものまで食べようとするなよ。」
見上げると、『紙』をヒラヒラと振っている輝之輔が、笑顔で彼女を見下ろしていた。
「そんなことしなくても、約束通りケーキはいくらでも食べさせてやるよ。君は僕を“手伝って”くれたんだからね。」
反吐を『ファイル』した紙をゴミ箱に放り、新しい『紙』を取り出し広げると、皿に乗ったチョコレートケーキが彼の手の上に現れる。
「ほ〜ら、ご褒美だ。さっきとは違う味だけど、お口に合うかな?」
「え………あ…………はい…ありがとうございま…す……」
立ち上がり、輝之輔から皿を受け取る。ショートケーキとは違う甘ったるさが鼻をくすぐり、またしても食欲に囚われた。フォークを掴み、掬って口に運ぶ。とろけそうなほどの甘さ、感激に酔い痴れる。
「……ほら…………見てごらん。」
ケーキを頬張るリグルの肩を抱き、輝之輔は画面を指差した。
「ミスティアは、君のお友達は、今耐え切れない程の絶望に襲われている。君の操作する蟲のせいでだ。」
蟲に雀の眼球を口内に押し込まれ、ミスティアは苦悶の慟哭を続けている。涙はとめどなく流れ、目をぐるぐると回し錯乱していた。
うっ、と、リグルの胸に再び吐き気が込み上げるが、口を押さえ堪えた。
「でも、君はなんにも悪くない。なぜなら、僕が君に無理矢理これをやらせたからだ。
蟲たちが雀を食い殺したのも、そうしなきゃ自分たちが殺されていたからやっただけだろう?。それと同じさ、全くもって悪いことじゃあない。」
『罪悪感』に押し潰されそうになっているリグルを、慈しみすら感じさせる優しい声で、輝之輔は慰める。
「これは、この世の摂理なんだ……いじめなきゃ、いじめられる。この世はそういう風にできてるんだ。逆に、君が誰かをいじめていれば、君は誰かにいじめられずに済むーーーーーそう、『幸せ』でいられるんだよ。」
その言葉は、チョコレートケーキのように甘美な音色で、リグルの鼓膜に染み込んでいった。
「(ーーーーー“いじめなきゃーーーーーーーーいじめられる”ーーーーーーーーーー)」
脳内で反芻し、味わうように噛み締める。
リグルは、ミスティアを見た。泣き叫び、千切と乱れ、悶絶する友達。自分が助かりたいがために、犠牲にした大切な友人。
「(ーーーー“いじめていればーーーーー『幸せ』になれる”ーーーーー)」
『罪の意識』は胸を締め上げ、彼女を責めたて続けている。
後悔の涙は、とめどなくリグルの頬を濡らしている。
だが、少し、ほんの少しだけ、輝之輔の言葉を聞く前よりは、楽になれた気がした。
輝之輔は画面を見たまま、横のリグルに語り掛ける。
「泣くなよ………、笑え、笑えーーーーー
僕らは二人でこれから、『幸せ』になるんだからーーーーーーーーーー」
リグルは、輝之輔の顔を見上げた。苦痛に歪むミスティアを、魅入られたように見つめている。
その様子を見て、リグルはーーーーーーーーーー『楽しそう』、と、そう思った。
「ーーーーーーーーーーあ………………あはははは…………は」
リグルの口から、渇いた笑いが零れた。
彼女は泣きながら、無理矢理に笑っていた。
涙を零し、瞳潤ませ、口の端を捻じ曲げて、泣きたいのを堪えて、懸命に笑っていた。
「あはははははは…………くくっ…………ふふふ…
…くひひ……………いひひひ……………ひひ………………ーーーーーーーーーーーーーーー」
リグルの歪な哄笑が、部屋の中に木霊していたーーーーーーーーーー




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