[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【屋外】さあ征くぞ、ここからが反撃の時!【コテ可】
100
:
去来更紗/魔導戦士学科
:2010/08/05(木) 23:26:11 ID:9VbNAJeo
>>98
はいっ!
あまり下に行くと危険らしいですけど…。
でも、下に行けば行く程”素晴らしい”モノがあるそうです。
…噂、ですけど。
(そう言い、苦笑する)
もっと確証のない噂には、「異次元に繋がる場所がある」なんてのもありましたけど…
>>99
…あくまでも、戦闘が好きなんですね
変わってる…なぁ。
一歩間違えば生殺与奪、…。ソレの手段は変わらないと言うのに。
(それはどこか、刺のある言葉である)
101
:
アリア/魔導武具科
:2010/08/05(木) 23:26:16 ID:EdhLwegg
あら、いつぞやのquaril…と…
はじめまして、の人がふたり、かしら?
こんなところで何してるの?
まさか今から潜る、なんてことはないわよね?
(蒼い髪の女が森の方角から歩いてくる)
(森で何かやって帰る途中なのだろうか、やや土や植物の汁などで汚れている)
102
:
月見里 啓
:2010/08/05(木) 23:28:02 ID:zRV7H1tw
>>99
悪魔の問いに、獣の笑みで答える。
「ハッ、細かいこと考えんの苦手なんだよ。ただ、俺はテメェと戦いたい……そう思ってるのは確かだ」
それはまるで愛の告白のようで――、ただ違う点は向けられるのが好意でも敵意でもなく戦意である点だ。
少年に取っての最も大きい壁が現在目の前にある、どうしてそれを乗り越えることを選ばないで要られようか。
否、選ばずにいられるわけがない。
膨れ上がる少年の戦意はビリビリと空気を震わせ、今にも風船が破裂するかのような緊張感を漂わせる。
>>100
「へぇ……面白そうです、今度行ってみましょうか」
「一応コレでも腕に自信は有りますしね」
>>101
ちらり、と青い髪の女を見やる。
103
:
ルビカンテ/戦士学部戦士科一年
◆VpF6jS.o.s
:2010/08/05(木) 23:47:52 ID:E2139alw
>>100
ハッ。
俺様は、生命の「可能性」を気に入ってるだけだぜ。
言い換えるなら、その探求の手段は別に戦闘に拘らなくていいってこった。
(ただの戦闘好き、という訳ではないようだ)
(戦闘は、あくまで生命の可能性を探求する手段の一つ、ということらしい)
その「可能性」は、易々と奪われていいもんじゃねえんだよ。
そして、奪うことを許して良いもんでもねえ。
もしそれを奪うってんなら、…”俺”は神であろうが、牙を剥いてやるぜ。
(人類の敵対者たる悪魔が、人類の守護者を名乗る)
(天使や他の悪魔から見れば滑稽か、まさしく喜劇そのものだ)
(だが)
(悪魔の、その燃え盛る両の怒れる瞳が、嘲笑を永遠に黙らせるだろう)
>>101
アァン?
相変わらず聞き慣れねえ単語を使いやがる。
この俺様の知り及ばねえ言語なんざ、まだあったってのは驚きだぜぇ。
(驚き、というよりは、呆れるような声色)
(幾星霜を生きて尚、まだ未知の満ちる世界の広さに呆れているのかもしれない)
そう言うテメェは?
森ン中で修行でもしてたのか? ックク、風でも射落とせたかァ?
(なかなかに詩的な表現だが)
>>102
…クク。
夜戦、ってのも面白ェが、……また日を改めて、の方が良さそうだ。
(好戦な悪魔には珍しく、自重の態度)
(…しかしそれは、しぶしぶ、といった感じで、望んでのことではないようだ)
(それを、苦虫を噛んだような表情が物語っている)
好事魔多し。頓に夜は然り。
余計な存在に邪魔されちゃあ、興醒めも良いところだからよ。
(それは)
(夜には余計な存在が活動している、と暗にそう伝えていた)
(あえて迂回して分かりにくく伝えるのは、悪魔なりの慎重さだろうか)
邪気大ってのは、異形亜種おいでませの多種族地帯。
…まあ、てめえと共闘張るってのも悪かねえかもしれねえけどな。
(そしたら楽しそうだ、と悪魔は嗤う)
(「戦い」なら、シングルではなくタッグでもグループでも楽しめるらしい)
104
:
去来更紗/魔導戦士学科
:2010/08/05(木) 23:52:29 ID:9VbNAJeo
>>101
あ、えっと…今晩は
(ペコッと頭を下げる)
僕は地下迷宮から出てきたところなので、また戻りはしませんけど…
(あはは、と少々疲れの見える笑顔を見せる)
>>102
はい、是非とも一度!
…噂の真相とかも、解ったら教えて下さいねっ!
(何故か楽しそうに啓を見上げ、ニッコリと笑う。)
(まるで、犬のようである)
>>103
そうですね…僕も…
奪ってしまうのは良くないかなって「理解」はしていますよ
(ニコリと)
でも、生きるためには必要な事もある―――
…こうして……
…お腹が、空いて、たまらないとき、とか……
(ふらふらふら、と
そのままその場に、力無く座り込む)
(どうやら空腹だったようだ。…果てしなく)
105
:
アリア/魔導武具科
:2010/08/05(木) 23:56:13 ID:EdhLwegg
>>102
んー、相当殺気立ってるみたいだけど…
あんまり殺気を外に出すのは得策じゃないと思うよ?
(少し訝しげな感じで視線を返す)
>>103
あぁ、そういえば言ってなかったっけ?
quaril(クァーリル)ってのは私の出身の部族の言葉で悪魔って意味の単語よ
修行…まぁそう言っても問題ないかしらね
風は無理だったけど、鳥ならだいぶ、ね
まぁ、射落とした責任もあるし、みんな今は私のお腹の中で血肉になるのを待ってるけど
(逆にこちらは酷く現実的である)
>>104
出てきたとこ?
だったら…収穫はどうだった?
…って、そんなになるまでなんで補給しないのよ!?
ほら、これあげるからとりあえずお腹に入れなさい!
(そう言って何か赤い木の実と水の入ったペットボトルを渡す)
106
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 00:00:17 ID:qo2sC4yY
>>103
当たりの気配を探り、その言葉の理由を知る。
「ああ、どうやらそのようだな」
「テメェとは又いつかゆっくりやり合うことにすっか……」
残念そうな顔で、答える。
「ハッ、テメェと共闘、か。そうなったら存分にテメェの技術盗ませてもらうぞ」
啓の強さの根源は向上心だ。
どこまでも貪欲に上を目指し続けるそれは人間特有のものなのだろう。
啓はそれが特に強い。
>>104
「いい魔道書も有るかなぁ……。噂も気になるし、今度しっかり準備していってみよ」
ただ、自殺的な方向音痴のこの少年がダンジョンに入ってもどってこれるかは定かではない。
>>105
「……ああ、すいませんね」
一瞬で猫を被り穏やかな笑みを浮かべる。
「獣か何かかと思って警戒してしまいました」
107
:
ルビカンテ/戦士学部戦士科一年
◆VpF6jS.o.s
:2010/08/06(金) 00:18:54 ID:J2V0uPTQ
>>104
クク、然り。
清貧ならば飢えて死ね。尚生を欲すならば乞うか、さもなくば奪え。
そういうこったな。惨いがこれも世の摂理って訳だ。
(詠うように、簡単に言ってのける悪魔)
(こういう所が、やはり人間とは懸け離れた存在であることを示している)
まあ、摂理はイデアじゃねえんだ。
ある種の事実、あるいは真理。この世界じゃそれ止まりだろうぜ。
殺さなければ殺される世界がある。
奪わなければ奪われる世界がある。
そんな世界で生きるを望めば、殺し奪うしか術はねえ。
そして幸いにも、ここは殺さず奪わずとも良い世界。
俺様の優しさで飢えを満たしてみるか?
(懐より取り出したのは、笹の葉に包まれたナニカ)
(開けてみると、そこには焦げ茶色をした三角形の物体が)
焼きおにぎり、というらしい。
遙か極東の、とある国で食われてる郷土の料理だとよ。美味いらしいぜぇ?
>>105
部族かよ……。
さすがの俺様も、部族単位で言語は習得してねえな……。
(部族内のみで使われている言語となると、教本には期待できない)
(現地へ赴き、直接生活して習得するしかないだろう)
(悪魔がいずれやってみたいことでもある)
カカッ、苦にもしてねえ態度だな。
良いぜ良いぜ、腕は鈍ってねえようで何よりだ。ククク…!
(鳥を射る)
(弓手にはよく聴く話だが、そう易々と成せる業ではない)
(強風の吹く高空、一瞬で彼方へ飛び去る鳥を、風に煽られやすい弓矢で射る)
(弓や矢の種類にもよるが、その難易度は果てしなく高い)
(ゆえに重火器が浸透してから、弓術はあまり見られなくなったのだが……)
てめえとも、また再戦してえもんだぜ。
今度は容赦なく近づくぜ。…反撃の手段はちゃんと準備しておけよ?
>>106
(夜には、活発になるモンスターが多い)
(朝昼は一見平和な邪気大だが、その点から言えば夜になると危険になる)
(「戦い」がまさかのモンスター退治となっては、悪魔も興が醒めるというものだろう)
ックク。
いいぜ、盗め。むしろ俺様がそれを望むぜ。
そしていつか俺様を越えてくれりゃ、もう何も言うこたぁねえな。
(いや、越えるだろう)
(悪魔には、その確信があった)
…ン、そろそろ時間だな。
俺様はそろそろ帰る。家に寂しがり屋な天使を置いて来てんだ。
それじゃあ、また遭おうぜ。ッククク…!
108
:
去来更紗/魔導戦士学科
:2010/08/06(金) 00:27:50 ID:EV67e7Lc
>>105
収穫は全然…
討伐価値は無いモンスターにしか遭遇しなかったし、特にお金になるようなモノも…
タイミングが悪かったのかなぁ?
え、い、良いんですか!?
ありがとうございますっ!!
(空腹で半分魂が抜けたような目をしていたのが嘘のように蘇り、
赤い実とペットボトルを受け取り、そのまま赤い実の方は彼の口の中に消えた。即ち―――食った…)
(相当空腹だったようだ)
>>106
…これも風の噂の一つですけど、
この大学の図書館でも閲覧禁止に指定されているような魔導書…即ち、「禁書」も迷宮の中には存在する…
なんて、本当だったら今頃大変な事になってそうですよね
(へらり、と笑う)
ただ、下層に到達したような話は滅多に聞かないですし、嘘とも本当とも解らないんですよね
…本当なら、売れば一生遊んで暮らせますし、魔導書として使えば…
…どうなるかは解りませんね
>>107
…殺さなければ、殺される世界…
奪ったモノが、生きるモノ…
…そんな世界は、確かに存在します…。
確かに、幸い此処はそんなことないですけど…
…ヤキ…オニギ、リ?
(不思議な包装だ。)
(細長いこの奇妙な葉っぱも、今まで故郷では見たことが無い。
そしてなにより―――この香ばしい、焦げた醤油の温かな匂いは)
(ただでさえ食欲旺盛な彼の欲求を吹っ飛ばすには充分だった)
い、いただきますーっ!!!
(がむしゃらに、がっつく)
(…できるだけじっくり味わいたいのだが)
(理性とは本能に勝てないのである)
109
:
アリア/魔導武具科
:2010/08/06(金) 00:32:26 ID:4uXpsAmw
>>106
…正しいかどうかは別として、あんまり女に対してそういうこと言うのは関心しないわね
(なんとなーく…さっきよりも雰囲気が尖った気がする)
>>107
ま、限りなくちっこい少数部族だから気にしなくても大丈夫よ
それでも知りたいなら私がある程度なら教えるけど
(大体の場合において、自分達の使う言語を体系的に勉強することはほとんどない)
(それでも教えられるということは簡単なのだろうか)
そっちこそ、そんな態度取ってるけど相変わらず強いんでしょうね
今度はあんたを満足させられる手合いができればいいんだけど
(前回、最後があまりにもあっけなかったことをやはり悔いているようだ)
ん、じゃあまたね
La yodasou stiaana.
>>108
ここは実りがあるときとないときの差が激しいからねぇ
ま、次もあるから、そのときまでに体力蓄えておきなよ?
あー、そんなにがっついて…お腹空いてるのは分かるけど、急ぐと詰まらせるよ?
(そんなふうに小言を言いながら見守る姿は保護者のように見えなくもない)
(尤も、本人にそんな自覚は全くないのだが)
110
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 00:34:24 ID:qo2sC4yY
>>107
「ハッ、上等。テメェを超えるなんてよ、俺には造作もねぇさ。
覚悟しとけよ、ルビカンテ」
強い、獣の笑みで答える。
「さっさと帰りな、又いつか」
帰っていくルビカンテに声をかけ、見送る。
>>108
その話を聞き、ニヤリとした本来の笑いを浮かべ呟く。
「へぇ……、ククッ。そりゃあ本気で興味深い。
いい話効かせてもらったな。ありがとよ」
>>109
「すいません、どうにもデリカシーが足りない性分でして……」
はは、と苦笑する。
111
:
去来更紗/魔導戦士学科
:2010/08/06(金) 00:43:41 ID:EV67e7Lc
>>109
僕の力は…どうも燃費が頗る悪くて……
あまり、使わないようにはしたいんですけどね
維持しているだけでも、なんかエネルギー使ってるみたいで、
…すぐ空腹になっちゃうんです
(恥ずかしそうに笑う)
地下迷宮の中では手持ちの食料で何とか凌いでいたのですが…
本当に助かりました!ありがとうございますっ!!
(深々と頭を下げる)
>>110
いえいえ!お役に立てたのなら!!
…でも、あちらこちらにある転移魔法陣には気をつけて下さいね。
魔物の巣窟に飛ばされる時もありますから…
そこまでして何かを守っている、とも考えられますが…謎は深まるばかりです。
それでは、寮まで持ちそうなので(腹具合が)
僕もお先に失礼しますねー!
(ペコッと頭を下げ、寮へと走っていった)
112
:
アリア/魔導武具科
:2010/08/06(金) 00:50:06 ID:4uXpsAmw
>>110
まぁなんというかその…わかってるならなんとかしなさいよ…
そんなんじゃモテないわよ?
(なんだかやりづらそうにしている)
(どうやらペースを持っていかれているのが気に食わないらしい)
>>111
じゃあなおさら、食料は多めに用意しないとね
こういうとこに潜る時は、食料は2日は余裕を持っておきたいけど…
それに、自分の寝床に帰るまでが冒険なんだからね、無理せずに帰らなきゃダメよ?
…最悪、現地調達って手もあるにはあるけど…この中じゃねぇ…
(そう言って地下迷宮の入り口を恨めしそうに見る)
ん、おやすみなさい
La yodasou stiaana.
113
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 00:51:58 ID:qo2sC4yY
>>111
「方向音痴には……つらいなぁ……」
結構切実な感じで呟いている。
「はい、またいつか」
走っていくのを見送る。
>>112
「モテる、ですか……、あまり女性と縁が無いものでしてね……」
ふふ、と穏やかに笑う。
「さてと、僕も寮に帰りますか」
そう言うとアリアに一礼して歩いていった。
114
:
アリア/魔導武具科
:2010/08/06(金) 00:59:19 ID:4uXpsAmw
>>113
ん…じゃ、おやすみ
La yodasou stiaana.
…なぁんか話しづらい子だったなぁ
…裏があるように感じたけど気のせいかなぁ
(そんなことを呟きながら、自分の寝床に向かって歩き去っていった)
115
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/06(金) 14:20:40 ID:V81UgAGM
ガスン、と
重い何かをぶつけた音が響く、それは中庭のとある一角でした音だった
「ふぃー、ベンチが無かったら今ごろ死んでたな、こりゃ」
ようやく男は一息つく
傍らの剣が突き刺さったベンチを見やり、仕事が増えた名も知らぬ事務員に内心で詫びる
剣は男が突き刺したのではない、"自ら突き刺さった"のだ。
「さすがの妖刀も地面は斬れないか、よかったよかった」
ベンチを貫き、地面を突き刺した妖刀は進むも戻るも出来ずにカチャカチャと鍔を鳴らしている。
116
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 16:39:26 ID:qo2sC4yY
>>115
中庭。
一人の白い髪の男が木陰で本を読んでいる。
本のタイトルは「クトゥルフ神話全集」だ。
そしてその本を読む人間の表情は今迷惑そうな表情をしている。
「……うるせぇ」
そのつぶやきは刀を持つ男に聞こえたかも知れない。
117
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/06(金) 20:04:46 ID:V81UgAGM
>>116
//亀レスで失礼します
「抜けねーぞ、この。しゃあねぇ、替わりを探してくるか……」
ブツブツと呟き、男はそこから立ち去った
なにか鞘になるようなものを探しにいったらしい
――カチャカチャカチャ
ベンチを貫いて地面にまで到達した剣だけを残して
118
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 20:30:51 ID:qo2sC4yY
>>117
男が去っていったのを見て、ベンチに突き刺さった剣に近づく。
「……、剣士か?」
ベンチの剣を見つめている。
「……よっ」
しばらくするとおもむろに引っ張ってみたりしている。
119
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 20:34:51 ID:J2V0uPTQ
>>119
お? それ妖刀じゃ?
(そこに現れたのは、出張帰りの会長)
(ラフ好きな青年には珍しく、よれよれの礼装を着込んでいる)
(ネクタイを面倒そうに外し、適当にポケットへ突っ込む)
よ、啓。
珍しいモン持ってる、っていうか、何だ?
地面に刺さってるのを抜こうとしてる、ように見えるんだが。
(事実その通りである)
120
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 20:36:34 ID:qo2sC4yY
>>119
「よう……会長か」
剣をぎゅーっ、と体重をかけてひっぱっている。
「いや、さっきの奴が置いてってな、暇だったから引っ張ってた」
そのまんまな説明だった。
「つか、珍しくきっちりしてんなァおい」
121
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 20:44:20 ID:J2V0uPTQ
>>120
国主催のパーティに行ってきたんだよ。
流石に無地シャツジーパンじゃ出席できないだろうし。
(正確には、)
(「以前やってみたが、入場する前に門前払いにされた」)
(と、言うのが正しい)
やっぱ俺には、きっちりした服はガラじゃないや。
まあそれはともかく、なるほど…。
取りあえず、妖刀なら多分それ抜けないんじゃないか。
(曰く付きの刀剣は、大概そういうものだ)
(物によっては神の力でさえはね除けるというから凄まじい)
ふーむ…。
しっかし見てるだけで冷や汗ものだな、すごい刀だ。
いつ突然抜けて血祭りにされるか、分かったもんじゃないぜ。
122
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 20:46:10 ID:qo2sC4yY
>>121
「あー、なるほど」
納得した風だ。
「いや、大丈夫だろうよ」
【俺に出来ねぇことは存在しねぇし】
声が不自然に響く。
能力を使ったのだ。
「ハッ、ちょうどいい。能力の新しい使い方の参考にならァ」
大口を叩きながらグイグイ引っ張っている。
123
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 20:54:29 ID:J2V0uPTQ
>>122
妖刀×大地の力、ってところだな。
果たしてそれを能力がキャパで上回れるかが問題だ。
(ほぼ無理だな、とぼやきつつ)
(会長も会長で、しゃがんで刀身をまじまじと観察しだした)
(ベンチを突き抜けて地面に深々と食らいついていた)
業物か贋物かは一目瞭然。
けど何で地面なんかに突き刺さってんだ…?
男が持ってた、ってことは、持ち運べたってことだろ?
…一応言っとくけど、無理に抜かない方がいいぞ。
持ち運んでたのに地面に突き刺さってるってことは、もしかすると…。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『地面に刺さってなきゃ危ない』、ってことなんじゃないか?
124
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 20:57:36 ID:qo2sC4yY
>>123
「チッ……全く抜けねぇ……!」
諦めたのか手を離して、妖刀が刺さるベンチに座り込む。
そして会長の言葉にしばらく沈黙。
「……、いや、別にビビッてねぇからな。
抜けたらまずかったなぁ……とか全く思ってねぇからな!」
125
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 21:01:58 ID:J2V0uPTQ
>>124
…………。
いや、正直抜けたら俺もどうしようかと思ってた。
(来るべき主を待てる剣を、無理に引き抜くとどうなるか)
(それは、諸処の文献や伝承に語られている)
(細かく見ればキリがないが、要約すればどれも『災いが降る』のだ)
地割れして邪気大まるまる呑み込まれ、かな。
状況的に。
…抜けなくて良かったな。俺でもどうしようもないかもしれない。
(天の怒りを無理に鎮めても、また新たなる厄が起きる)
(手がつけられない、とはまさにこのこと)
126
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 21:04:41 ID:qo2sC4yY
>>125
「……、暇だなぁ」
剣を抜くのを止めたため暇になってしまった。
木陰に歩いて行き、リュックを持ってくる。
リュックから取り出したのは先程読んでいた「クトゥルフ神話全集」だ。
「むしろ、その光景見て、幻覚で再現できりゃ強くね?俺の能力的に」
127
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 21:09:05 ID:J2V0uPTQ
>>126
良いことさ。
暇とは平和な証だしな。
俺としては、駆り立てられることがなくて助かってるぜ。
(面倒があると、大抵白羽の矢は会長に立つ)
(それでいて介入すると生徒に睨まれるのでお手上げだ)
まあ生き残れれば話だな……。
自然の猛威は凄いぞ、あれは『死ぬ』というより『食われる』だ。
でも、そうだな。
そんなに暇だってなら、俺と戦ってみるか?
実にはならないとしても、丁度良い暇つぶしにはなると思うぜ。
128
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 21:13:21 ID:qo2sC4yY
>>127
「平和とかそんなに好きじゃねぇ、もうちょい波乱が欲しいところだな」
ククッ、と笑う。
「食われる、か。人では辿り着けない領域だしな、自然てのは」
しみじみと語り、会長の話を聞いていたが会長の提案を聞き、口元に裂けるような笑みを浮かべる。
それは獣のそれだった。
「おう、いいぜ。実際よぉ……。
最初にあった時からテメェの力量は気になってたところだ」
両手にグローブを嵌め、昂揚する戦意が次第に周囲に充満していく。
129
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 21:17:58 ID:J2V0uPTQ
>>128
波乱か。
確かに良い刺激にはなるけど、程ほどがいいな。
あまり規模が大きくなると、収拾をつけるのも比例して大変になるし。
(それに損害額も比較にならないほど跳ね上がる)
(修繕費の大半を負担している邪気会には、大損害とも言える打撃だ)
だから、『災害』なんだな。
災禍は人の手に剰るもの、ってわけか。
力量、か。
俺って、言うほどそこまで強くないんだぜ。
よく誤解されるんだよ。「会長って言うからには強いんでしょ!」ってさ。
(軽口を叩く会長)
(しかし何だかんだで、周囲を黄金の粒子が旋回し始める)
ま、でも弱いなりに戦い方はあるってことさ。
一応周囲に被害が出ないよう、防御陣展開。いつでも来ていいぜ。
130
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 21:20:54 ID:qo2sC4yY
>>129
「はっ、程々なんざつまらねぇがな」
笑い、軽口を叩く。
「まぁ、テメェが強いかどうかは、戦闘で確かめさせてもらう」
(まずは小手調べに……)
バチンッ、と指を鳴らした次の瞬間、衝撃波が会長に向けて打ち出される。
小手調べとは言え、当たれば骨折は必死であろう。
131
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 21:26:06 ID:J2V0uPTQ
>>130
程ほどにな。
あんまり会長さんいじめないでくれると助かる……っはぶぅ!?
(言い終わらない内、きりもみながら吹っ飛ぶ会長)
(…どうやら、啓が指を鳴らすのに気づいていなかったらしい)
(数m跳ねたところで、どさりと地面に落ちた)
…俺まだ喋り終わってないのに……。
いや、これも非情な戦いだもんな、何でもありだもんな……。
(突っ伏しながらぐちぐち漏らす会長)
(しかし当たり所が良かったのか、骨折している様子はない)
(…その合間に、啓の周りが段々と薄暗くなり始める)
それなら……俺も、そうするさ。
(ゴッ、と、衝撃)
(それは頭上。見上げれば、降ってきたのは巨大な黄金の刀身)
(…拍子抜けと騙し討ち、隙を伺って奇襲をかけてきた!)
悪く思うなよ。
これが弱者の戦い方だ。
132
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 21:31:52 ID:qo2sC4yY
>>131
吹っ飛んでいく会長を見て、溜息をつく。
「……、あれ?いや、罠……か」
油断は禁物、とあたりを警戒していると当たりが薄暗くなる。
(さぁ、何が来る……!)
次の瞬間、黄金の刀身が振って来る。
「ハッ、奇襲かぁッ!」
降る刀身に衝撃波を当て、機動をそらすと同時、口を開く。
【我が幻想は、嘘であり、真実だ】
呟いた言葉は、普段の嘘とは違う気配……『魔力』をはらんでいる。
そう――、詠唱だ。
「上等ッ!弱者だろうと悪魔だろうと神様だろうと関係ネェ……ッ!
とことんテメェを騙しつくしてやらァ!」
そして刀身が地面に衝突、砂埃が舞い上がるが、舞い上がる砂埃は普通ではありえない程に舞い上がり
当たりを覆い隠し見えなくする。
(さて、どこまで騙し尽くせるか……)
133
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 21:40:27 ID:J2V0uPTQ
>>132
ん、衝撃波で刀身を逸らした?
なんつー器用なマネを……そんな芸当よく出来るな。
(刀身は回転しながら地面に激突し、舞い上がる砂埃)
(しかし、尋常ではない)
(あっという間に視界が覆われ、何も見えなくなってしまった)
なるほど、情報の遮断か。
人を騙すのに、これほど良いステージもなかなかないな。
…さて、どこまで通用するかな……『防御陣』。
(会長の足下に魔法陣が回転し、個人単位でバリアを張る)
(その上で、会長は何かを放り投げた)
風は、なし。
防御陣を周囲に張ってあるから、当然だけどな。
さて……空気中には微細な土の粒子が充満、か。良い土壌だ。
(放り投げられたものは、光を放っていた)
(不安定な揺れる光だ)
(それは、日々でよく目にする、)
これぐらいは知ってるよな?
ほら、よくアニメや映画でも取り上げられる……。
(その放り投げられたもの、すなわち『点火されたマッチ』は)
あれだ、あれ。そう、粉塵爆発?
(ド、と)
(誘爆するように急激に広がる火の手と爆風)
(逃げ場を覆い尽くすように規模を大きくしながら、啓を呑み込もうと迫る!)
134
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/06(金) 21:45:05 ID:yrDt0wTg
「また、珍しいことがおきてるな……」
ふらふらとよろけながらその場に現れた一人の少年。
それはまるで何かに導かれたように、中庭に歩いてやってきた。
135
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 21:52:08 ID:qo2sC4yY
>>133
砂埃の中で息を潜め、幻覚魔法のイメージを作る啓。
(……何にする、ドラゴン……、いや。突拍子もなさすぎる、まだ信じられるのは……)
(……この大学に存在する強きもの……ッ!)
幻覚を、暗示を、幻想を、頭の中で形作り術式を構成していく。
その集中の中、視界の端に光が見えた。
「ッ――!Illusion――ッ!」
イメージを術式に流し込んだ直後、爆風が啓を襲う。
「ッグアアアアアアアアアアアアアア!」
爆風に飲み込まれ、叫び声を上げる啓。
だが、爆風は衝撃波で散らされる。
爆風が消え去った次の瞬間、そこにいたのは――。
服が焦げ、ところどころ火傷した啓と、無数のモンスターだ。
「グルルウルアアアアアア!!」
モンスターの雄叫びは空間を震わせる。
が当然これは暗示によって雄叫びの振動を感じているだけ。
だが、そこにはまるで「本当」にモンスターがいるかのようだ。
136
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 21:57:34 ID:qo2sC4yY
>>134
戦闘に集中する啓は、狩魔に気づかなかった。
137
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 22:06:17 ID:J2V0uPTQ
>>134
珍しいといえば、珍しいのかな。
最近バトルとかめっきりご無沙汰だったからなー。
(目を灼くような爆発は、しかし聖斗に届くことはない)
(あらかじめ会長の張っておいた防御陣が、それを防いでいるからだ)
どうか負けても笑わないでくれ。
最初から負ける覚悟だから。
>>135
! 遅かったか…!
やっぱり、そう易々とは行ってくれないよな…!
(あわよくば、粉塵爆発で片がつくと期待していたのだが)
(邪気大に、一筋縄でいく生徒はいないようだ)
(爆炎を切り裂いて、軽傷を負った啓と、…咆吼する無数のモンスターが現れる)
嘘、幻、ただの幻想。
分かっている。分かっているが、……これは……!
(曰く、視覚が伴えば50%は騙すのに成功)
(そこに触覚が加わると、70%はほぼ騙されてしまう)
(しかし、この圧倒的な存在感。間合いを揺さぶる異形の雄叫び)
ここまで知覚させられたら、もうリアルと変わらない!
錯覚、暗示、それだけでまさかここまでとは…!
(いちいちモンスターを相手にしていては、キリがない)
(なら、狙う標的は初めから絞った方が良い…!)
…ふう…!
落ち着け、これ以上騙される余地を与えるな!
あいにく、幻術には慣れてるんだ…!
(精神に安定を。狼狽は隙を見せるだけ)
(会長は両手を広げる。トランプをテーブルに並べるようなその仕草)
(…それだけで、会長の前面には、数え切れないほどの黄金色のナイフが並んでいた)
まずは盤、それから点だッ!!
(直線、あるいは曲線、もしくは予測不能のランダム軌道)
(ナイフの群れはあらゆる軌道を描きながら、モンスター達に飛来する)
(…しかし、それは目くらまし)
(無数の黄金の煌めきはその目映さで、会長の本命を覆い隠す)
(つまり、啓目がけて「頭上」から飛来する黒色の魔導弾! …それも、3弾!)
(光、方角、弾数)
(三重のフェイクを織り交ぜた会長の「一撃」が、啓へ襲いかかる!)
138
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/06(金) 22:09:32 ID:yrDt0wTg
>>135
「フン……おもしれぇことやってんじゃねぇか」
やわらかそうな草が生い茂った場所に座りこむ少年。
すでに、立てるほどの力など残っていないような、そんな投げ出しかた。
>>137
「俺のことは別に気にするなよ……どうせ、もう寝る……」
そう言って少年は顔をうつむかせた。すでに意識を保つことは難しいということを。
それだけで察することが用意だった。少年の周囲にはすでに強固な結界が張られていた。
139
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 22:15:37 ID:qo2sC4yY
>>137
「ゴオオオオオオオオオオッ!!」
創りだされたモンスターの幻影のうち、最も大きいゴーレムが駆ける。
「ッ、……ぁあああああああ!!」
そして相手の放つナイフの群れをモンスターで受け止めようとし、
更にはモンスターの存在する場所に衝撃波を打ち込むことによりまるでモンスターが攻撃を受け止めているような錯覚を生み出させる。
(足りない、足りない、もっとだ、もっと、もっと、もっともっともっと)
思考を加速させより強き幻想を、幻覚を創り上げようとする。
「Illusion――」
言葉を紡ぎ、幻想を創りだす。
生み出されたは、啓が認める『強敵』、『ルビカンテ』だ。
かつて見た攻撃、アウィス・イグネアの光線、それを会長に放ったと同時、漆黒の魔弾が啓に当たり意識を刈り取ろうとする。
「がッ……ぁあああああああ!」
意識を保とうと必死にし、そして光線は会長に伸びていく。
140
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 22:21:43 ID:qo2sC4yY
>>138
一瞬、狩魔に気づいたのかチラリと見るが会長との戦闘に必死だった。
141
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 22:31:17 ID:J2V0uPTQ
>>138
ね、寝ながらあれだけ強固な結界を……。
やっぱ邪気大の生徒って凄いんだな、今更だけど……。
(事も無げな聖斗を、信じられない顔で見る会長だった)
>>139
な、……!
(ゴーレムが矢面に駆けだしたかと思うと)
(その巨躯でもって、無数に飛来するナイフを受け止める)
(…ここまでリアルに見せられれば、もう幻影などとは言っていられない。)7
実際は衝撃波とかでやってんだろうけど!
くそ、とんでもないリアルさだ!
これじゃ、迂闊に気を抜いたら信じちまうじゃねえか……!
(信じる信じない、の次元にはもはや語れない)
(信じざるを得ない。啓は、その状況を確実に作り上げようとしている)
(もし信じてしまえば、あの無数のモンスターは顕現。…突進されればあっという間に終わる!)
(会長が昂ぶる精神を必死に落ち着けていると、)
「Illusion――」
(…啓が、見知らぬ光を灯らせた)
(いや、それは会長にとっては見知っていた)
(あれは確か、忌むべきあの悪魔の旱魃日照――――)
ルビカンテなら、あの超体力で避けてみせるんだろうが……。
あいにく、そんな芸当は無理だ……!!
(あんな大味な攻撃、魔法陣のバリアなどでは簡単に打ち砕かれてしまう)
(眩き白い熱線が真っ直ぐに会長へ伸びる)
(最大火力でまともに直撃すれば、どんなことになるか分かったものではない…!)
(やむをえない)
(――会長の全身に、紅色の無数の分岐線が走る)
間に合え――――ッ!!
(豪壮な音を立てて、光線の軌道上に黄金の壁がそびえ立つ)
(…しかし、熱線は黄金を溶かして尚も会長へ直進。)
(会長は次々と黄金壁を精製し、光線を食い止めようと壁を作り出す)
(それでも、止まらない)
(凄まじい衝撃に会長は背後の防御壁まで吹っ飛ばされる……)
142
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 22:37:37 ID:qo2sC4yY
>>141
魔弾が意識を刈り取ろうとし、体が傾ぐ。
「ッ……オオオオオオオオオオオッ!!!」
雄叫びと共にゴーレムの歩みが加速する。
そしてそのままゴーレムを貫き、ルビカンテの光線が、会長の壁に命中する。
いけ、いけ、イケェッ!!!俺の信じる、ヤツならッ、倒せねぇ筈はねぇんだあああああああああああああッ!」
空気を震わせる絶叫と共に、意識を失い地面に倒れ込む。
そして、呼び出した幻影も、徐々に消え去っていった。
143
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/06(金) 22:44:13 ID:yrDt0wTg
>>139
>>141
衝撃が少年の周りに張られた結界にも及ぶ。ぴりぴりと振動する。
まともに直撃すればおそらく軽い怪我ではすまないだろうその攻撃。
今はなんとか保っているが、術者の意識がない今、長くは持つまい。
144
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 22:50:03 ID:qo2sC4yY
>>143
啓の意識が消えたため、高威力の攻撃は消滅。
結界の安全は守られただろう。
145
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 22:51:57 ID:J2V0uPTQ
>>142
(――――。)
(…ゆらり、と、立ち上がる人影)
(ぐ、と力を込めるように、防御壁に手をかけて、ゆらりと立ち上がる)
…『イリアトコン』。
……黄金の壁一枚で、事足りるはずだったんだがな。
(突き抜けるとは予想していなかった)
(その上、何枚も上乗せしたにも関わらず止めることはできなかった)
(…従来の『イリアトコン』に、そこまでの貫通力はない)
…信じる力か。
【嘘】なんて物騒な能力のくせに、一番純粋な力だな。
…心の強さを威力にダイレクトに上乗せできたら、これほどの脅威はないだろう。
(実際に戦ってみて、分かった)
(…啓の能力は、いまだ未知数。応用、派生の限りが知れない)
(また、この『月見里 啓』という人間の、限界も)
(幻影が、消えていく)
(生み出した張本人の啓が、意識を失ってしまったのだろう)
(そしてまた、会長の防御壁も解除する)
……強くなるな、啓は。
願わくは、その成長の果てにあるものを、俺に見せてくれ。
(啓を肩に背負い、ベンチに座らせる)
(脱いだスーツの上着をかぶせると、会長は妖刀を挟んで啓の傍らに座り、一息吐いた
146
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 22:54:46 ID:qo2sC4yY
>>145
しばらく啓は意識を失っていた。
「……ッ、う」
ゆっくりと目を開けるとベンチの上に座っていた。
ぼそり、と呟く。
「チッ、負けた、か……」
147
:
???/???
:2010/08/06(金) 22:55:20 ID:yrDt0wTg
>>145
「みててたのしかったよ」
会長のすぐ隣に、すぐそばに。
いつのまにか少年がいた。さっきまで結界内で寝ていたはずの。
「つよいねーきみも、啓も、ほんとたのしいねー!」
148
:
???/???
:2010/08/06(金) 23:02:00 ID:yrDt0wTg
>>146
「あー目がさめたー。たのしかったねすごく」
いつかあった少年が、そこにいた。
149
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 23:02:10 ID:J2V0uPTQ
>>146
あ、目が覚めたか。
いやあ、あれを啓の負けとするには惜しいんじゃないかな。
俺としては、引き分けに留めておきたいな。…俺の名誉的にも。
(そ、と頬に冷たい缶コーヒーを当てる)
(…別に男同士でやっても誰も得しないが、やってみたかっただけだ)
しっかし、恐ろしい能力だな。
こんなに派生の利く異能力って、俺は類を見ないと思うぞ。
>>147
――!
(思わず身構えてしまう会長)
(異様な気配だった。そしてそれは、前に何度か感じたような…・)
…お前。
……違うな、狩魔じゃない。誰だ…?
(構える必要はないのかもしれない)
(しかし、分からない。この幼い口調で語りかける少年の素性が、掴めない)
(よく知った人間であるはずなのにも関わらず)
150
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 23:06:02 ID:qo2sC4yY
>>148
「……ッ、テメェ……!」
立ち上がろうとするが先程まで昏倒していたため立ち上がることが出来ない。
「狩魔は、どうした」
それは、目の前の少年に対する敵意よりも、友人の安否を気遣う響きがあった。
>>149
「……テメェがそうしたいなら勝手にしろ」
憎まれ口を叩く。
「次は、完膚無きまでたたきつぶしてやらァ……!」
闘気が当たりを一瞬震わせる。
「自力で応用開拓してるしな……」
そう、最初の頃は相手を言葉で騙すのみ、しばらくして自己暗示という新たな活用法を見つけ
そして今回の、幻術。
啓の強みはその能力だけではなく、その向上心にあるのだろう。
151
:
???/???
:2010/08/06(金) 23:09:12 ID:yrDt0wTg
>>149
「……ボクが誰かって?嫌だなぁ見てわかるよね?……あ、これ前にも啓に言ったっけ。あははは」
乾いた笑みが、少年の顔にまとわりつく。正直、嫌悪感を覚えるほどの。
少年に似合わないはずのその笑顔は、なぜか少年にとって一番しっくりくるような気がした。
>>150
「やだなぁそんなに敵意を剥き出しにしないでよ。ボクすっごく感じちゃうよ?」
けらけらけら。いやみったらしいその笑い。
「さーね。最近は一日五分くらいでギブアップかな」
淡々と、どうでもいいと思っているかのように。
152
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 23:13:35 ID:J2V0uPTQ
>>150
ああ、俺も待ってるぜ。
そうすれば、俺はもう何も言うことはない。
(まるで余裕そうな口ぶりでそう言った)
(それは、あくまで自分が負けるはずがないと信じているのか)
(それとも、自身の敗北をずっと待っているのだろうか)
【嘘】も信じれば真実となる。
…それってつまり、心の力、と言い換えることもできる。
お前の信じる力が強ければ強いほど、……これは厄介な能力だな。
(何せ、強さの底が計り知れないのだ)
(言ってしまえば、方程式の中にある変数xと同じようなもの)
(安定しない戦力ほど、不確定で恐ろしいものはない)
(そしてそれが爆発的に増幅する可能性があるものならば、なおさらだ)
>>151
…………。
(分からない)
(別人格、という風でもない)
(しかし、巣くっている憑依体、と言うにもしっくり来ない)
(じゃあこの目の前で嗤っているこの存在は、一体何なんだ…?)
…見て、分かる?
お前もまた、狩魔だ、とか。そう言い出すんじゃないだろうな。
153
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 23:16:19 ID:qo2sC4yY
>>151
「テメェは嫌いなんだ、敵意以外出すもんなんかねぇな」
ベンチの背に倚りかかりつつも睨みつける。
「チッ……怪我してなけりゃ……いや、言い訳か」
「今からでも、テメェをたたき潰してもいいんだぜ」
殺気が充満する。
>>152
「ハッ、だが……テメェを倒す前に、まず……アイツを倒さねぇと……」
心のなかで思い描くは、強敵。
あの男を乗り越えるのは啓の目標の一つであった。
「何で又、兄弟の中で俺だけこんな能力持ってんのかねぇ……」
ポツリと呟くは自分の家族のことだった。
154
:
???/???
:2010/08/06(金) 23:20:37 ID:yrDt0wTg
>>152
「あんなのといっしょにしないでくれない?」
意思。恐怖を与えるための。ただそれだけの意思が会長に注がれる。
「まー君の考えてるのは当らずとも遠からずってとこだね」
>>153
「おお、怖い怖い。まぁやめとくよ。そういうの好きじゃないし」
啓に対して恐怖を抱いているのか、それともてこずる相手と思っているのか。
「あとあんまりそういう念はやらないほうがいいと思うよ」
啓が充満させた殺気と同等のそれが、鋭く啓の意識を抉ろうとする。
155
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 23:28:32 ID:J2V0uPTQ
>>153
…闘志か。
良い戦意だな、アイツが好みそうな純粋な戦意だ。
私怨や大義ではなく、乗り越えたいと欲する心の強さ。…アイツに目をつけられたな。
(はあ、とため息をつく)
(あの戦闘狂は、生徒を誑かしては望む戦へと引きずり込む)
(タチの悪い悪魔であった)
異質中の更に異質、か。
しかし、発現したからには必ず意味があるはずだぜ。
それを見つけるのも、修行の一つ、か。
>>154
(強烈な意識が、叩き付けられる)
(まるで、恐怖という感情感覚そのものを脳髄に注ぎ込まれているような)
(耐性がない人なら、半狂乱になってもおかしくはなかった)
(湖面のようだった)
(いくら石を投じても波紋が広がるだけで、いずれまた静謐に戻る)
…遊び半分で、俺の意識レベルに干渉はかけるなよ。
意識とは深淵だ。…深淵を覗き見る者は、同じく覗き見られている。
(一瞬)
(ほんの一瞬)
(会長と「彼」の間合いでだけ、空気が、ごぼりと濁る)
(ほんの一瞬だけ、深淵から怪物が覗き見たのだ)
…「同類」、か? いや、違うか?
俺とは似ているようで、何処か違う気がするな。
156
:
月見里 啓
:2010/08/06(金) 23:31:29 ID:qo2sC4yY
>>154
「チッ、テメェは俺よりも信用ならねぇ」
『嘘吐き』が信用ならないと認める存在など稀であろう。
そして相手の放つ気が戦闘で憔悴した啓の意識を削る。
「ッ……」
>>155
「ああ、アイツを倒すのが、今の俺の『目標』だ。
まぁ、そこで終わるつもりはさらさら無いけどな」
獣の笑みを浮かべる。
「ま、姉貴も大概だったり済んだがよ……」
言い終わると、よっ、と勢いをつけ立ち上がりリュックを背負う。
「今日は楽しかった。また今度――やろうゼ」
ニヤリと笑うと中庭を後にして行った。
//明日用事があるので来れで落ちますすいませんッ!
157
:
???/???
:2010/08/06(金) 23:33:40 ID:yrDt0wTg
>>155
「そうだね。遊びではやらないことにするよ」
ほんの少しだけ、その笑みが凍った。
存在を認知したその瞬間、彼にもそれは感じられたのだろう。
「思念。あとは何も言わないよ。言うことがないからね」
彼の言葉が少しだけ、引き締まった。
>>156
「啓とは、まだまだ遊んでたいから……ね?」
それはまるで物をねだる子供のような、そんな無邪気な笑顔。
しかしいまさらそんな笑顔を見せてどうしようというのだろうか。
158
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 23:37:27 ID:J2V0uPTQ
>>156
…あの悪魔を倒す、か。
気の長い話になるような……アイツの思うつぼなような。
まあ、善戦を祈ってるぜ、啓。
(後にした啓を見送った)
//お疲れ様ー!ノシ
>>157
(気づけば、普段の雰囲気とは違っていた)
(ちゃらけた空気は微塵もなく、また別種の異様の気配)
(それでも、掴めない。…何者か分からない、というのは同じだった)
…どんどん気配が薄くなっている。
このまま進行すれば、狩魔は一体どうなる?
159
:
???/???
:2010/08/06(金) 23:39:38 ID:yrDt0wTg
>>156
//あ、忘れてた… とにかくお疲れ様でした!
>>158
「まー
消えるんじゃない?」
ごくごく当然である。
そういう言い方で放たれた言葉の冷たさ。
どうでもいい、そんな風にも取れる言葉。
160
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/06(金) 23:40:12 ID:V81UgAGM
「……お。よかった、まだ抜けてない。暴れん坊も大人しくなるもんだなー」
白い木製の鞘を担いでベンチ前
妖刀を置いてきぼりにした男が戻ってきた
「……って、誰かいるのか」
早速、鞘に剣を納めようと柄に掛けた手を戻す
誰かが居るのでは危険すぎてまだ抜けない
161
:
邪気会長
:2010/08/06(金) 23:46:05 ID:J2V0uPTQ
>>159
……そうか。
(なら、避けられないだろう)
(親友である啓は、狩魔が消滅する未来を座して待ちはしない)
(…戦いの火蓋は、いずれ切って落とされる)
予算確保だけはしておくか。
…お前も、このまますんなり行くとは思ってないだろ?
>>160
なんか啓さんが無理に抜こうとしてましたよ!
(最悪の告げ口である)
って、誰かと思ったらフレストじゃんか。
こんな上物の業物持ってたなんて、知らなかったぞ俺ぁ……。
一体どんな成り行きで手に入れたんだ?
(そう言う会長は、妖刀の突き刺さっているベンチに座っていた)
(死をも恐れぬ行為ッ!)
162
:
???/???
:2010/08/06(金) 23:50:02 ID:yrDt0wTg
>>160
「こんにちは?こんばんは?まぁなんでもいいよね、確か、フレスト君かな」
ベンチの横にいた少年が話し掛けてきた。名前を知っているということは知り合いなのだろう。
以前屋上で話した少年と似ているが、フレストが忘れている場合もありえる。
>>161
「さーね。ただ」
何かを気にしているのか。この人は違う存在ですら。
「何か変なんだよね。ボクでもないしあれでもない何か。んー」
言葉がきちんと組み立てられていないためわかりにくいが。
第三を匂わせるような、そんな言葉。
163
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/07(土) 00:03:31 ID:XlHGkQCA
>>161
「抜こうとした命知らずがいたとは。だったら、もういっそのこと抜いて手懐けてくれればよかったのに……」
深くため息をついて項垂れる男は、隣にいる声の主に振り向く
「――って会長!? あんた……真っ二つになりたいってなら止めはしないぜ、さぁどうぞ」
もちろん、抜けるかどうかも怪しいし、かなり危ない。
「あぁ、邪気を祓えだのどーだの言われて譲り受けたんだ。勿体無いって思わね?」
じんわりと滲み出る邪気は歪んだ羨望と憎悪に満ち満ちている
少し触れるだけで、才のある者を斬りたい斬りたいと喚く声まで聞こえてきそうな妖刀を前に
この男、祓う気なんて微塵も無い。
>>162
「んあ? えーっと……俺の名前を知ってるってこたぁ、どっかで会ったんだよな……」
「いや、すまない。何かと忘れっぽい性分でさ……つまり、どちらさん?」
やはり忘れている。
いや、正確に言えば、ぼんやりとした記憶と合致しないために他人と認識している
164
:
邪気会長
:2010/08/07(土) 00:10:30 ID:2MOZv7PM
>>162
…おいおい、まだいるのかよ。
一体その身体の中はどんだけキャパがあるんだ。
(人間1人のキャパシティには限界がある)
(大抵その人間の意識だけで手一杯なので、余地はない)
(しかしそこに強引に割り込めば、いずれかの意識は自然と淘汰される)
2人分だけでも凄いってのに、まだあるのか…。
深層レベルで沈んでるのか…?
>>163
いや、なんか最初は冷や汗とか凄かったんだけどな。
なんか、段々慣れた…。
(人間の適応能力はとても高いというウワサ)
(だからと言って、この男が人間なのかどうかは別問題だが)
いや勿体無いって思わね、じゃなくて…。
このレベルの邪気、っていうか妖気って廃村の祟り神レベルなんじゃ……。
ある程度封じるならともかく、このまんまってヤバイだろ……。
165
:
???/???
:2010/08/07(土) 00:15:22 ID:IgMi31eU
>>163
「まぁそれは知ってることだしいいけどねー」
特にそんなことは気にしないというような態度。
「この体の名前は狩魔聖斗(カルマ マサト)だよ。また忘れそうだけどね」
酷い言い方である。
>>164
「体は普通よりいいんじゃない?むかつく血だよほんとに」
彼にとって何か重要なものを占めている。キーワード。
「まー今はほとんど沈んでるねあいつは。ボクは深くても覗けるから」
少年の体内にはほぼ同質の存在が重なって存在している。
ひとつ気になるのは、ひとつとひとつが混ざったようにできた一つの存在。
166
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/07(土) 00:30:20 ID:XlHGkQCA
>>164
「俺がこいつの怨み言と暴れっぷりに慣れるまで、どんだけかかったと思ってんだか……」
飄々とした会長に呆れというか、勝てないという諦めかを見せ、白木の鞘を立て掛ける
「事実、崇拝者多数"だった"とこの御本尊だ。
……かといって、呪われることは無いから安心していいぞ、斬り殺されるだけだ」
きっちり崇拝しないと、ある日気がつけば首と胴体が泣き別れ、そんな御本尊
>>165
「あー、そんじゃ。今のあんたはそいつじゃないわけだ……乗っ取りは順調かい?」
まるで、世間話をするふうに
だからどうってこともなく。
男は話しかける、誰かに
167
:
邪気会長
:2010/08/07(土) 00:36:24 ID:2MOZv7PM
>>165
…血。
(遺伝的な体質、と言うことだろうか)
(血とは血脈。つまりそれは家系、一族の系譜を意味するなら)
(…そう言えば、確か狩魔の家は……)
……。
出来が良すぎた、ってことか…?
>>166
ははは…。苦労したんだな。
まあ俺はほら、出張先で色んなモンにお目に掛かるから……。
(OSOREZANという地に出向いたことがある)
(供養不能の強力な恨み辛みが集う、まさに怨霊の本拠地)
(その時の惨状に比べれば、まあまだまだ大丈夫と言ったところか)
……。
え、マズくね?
(不信心者には天誅を)
(…性質悪すぎである。信仰を恐怖によって集め、神格を上げていく)
しかもご本尊かよ!
それを供養なしとかうわあああバカかお前はああああ
(慣れておきながら今更ビビりだす会長)
168
:
???/???
:2010/08/07(土) 00:40:58 ID:IgMi31eU
>>166
「うーん順調のはず、なんだけどねーなんかおかしいんだよねー」
どうやら、何か把握できない問題が起こっているようだ。
それは乗っ取りとは違うところでおきているようだが。
>>167
「……」
笑顔の奥で、ぎりッという歯軋りの音がした。
感じられるのは、憎しみ。
169
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/07(土) 00:55:31 ID:XlHGkQCA
>>167
「あぁ、仕事柄ってやつか。そりゃ……なんというか……日々の御勤めご苦労様?」
何かをなんとなく理解しただけ
そんな雰囲気が包み隠す気もなく広がっている労いの言葉だった
「っ!? ――アハハッ! 確かに俺はバカかもなぁ!」
またもや、カタカタいい始めた妖刀を見て、壊れたように笑いはじめ。
「まぁ、そんなバカでも邪気の封印ってか吸収の術は用意してんのよ。ただ、ちょっと目算誤っただけで」
立て掛けてある白木の鞘を顎で差しながら、妖刀の柄を掴む。
>>168
――が、一気に抜こうとはしない。
「……おぉ、怖い怖い。あんたが歯軋りした途端にこれだよ
あんた、そいつ――狩魔聖斗が羨ましいってか憎いってか……くそっ……!」
尋常じゃない程に暴れだした妖刀を押さえつけるので精一杯のようだ
玉のような汗を額に浮かべ、肩で息をしている。
170
:
邪気会長
:2010/08/07(土) 01:08:33 ID:2MOZv7PM
>>168
…今のは分かりやすかったぜ。
(会長は、簡単な読心なら習得している)
(今まで目の前の存在は、深遠そのもので全く分からなかった)
(…が、今の憎悪は、今までで最も明らかに姿を見せた、れっきとした感情)
(しかし、それだけに会長の背筋には寒気が走った)
(ここまで分かりやすく明らかで、強烈な憎悪は久々だったからだ)
『家』が絡んでると、ちょっと複雑だな…。
どんちきバトルて易々と解決できそうには、なさそうだ。
>>169
ちょっと目算誤っただけでキルゼムオールじゃね!?
俺巻き込まれただけなんですううう!!
朝起きたら首と身体が別居なんてイヤだあああ!
(カタカタ言い始めた妖刀にビクビクする会長)
(刀が突き刺さってるベンチに悠々座ってた時点でアウトな気もする)
このままじゃヤバい!
フレスト、俺も手伝う! 一気に引き抜いて鞘に押し込めば!
(とはいえ、東洋の怨霊は門外漢)
(西洋の魔術や錬金術で、果たして何処まで通用するか…!)
(――――いや待て!)
(
>>168
)
おい!
確か狩魔の家って、『こういうこと』は十八番だったよな!
力を貸してくれないか…!
(魔法陣を展開し、妖刀の邪気吸収を試みる)
(…が、吸収効率が悪い。やはり本質的に種類が違うからだろうか)
(それどころか、ますます強くなっていっているような…)
このままじゃ抑え切れない、最悪ここの連中全部皆殺しだ!
余計な犠牲は出したくない、頼む!!
171
:
???/???
:2010/08/07(土) 01:13:17 ID:IgMi31eU
>>169
「大変そうだね。手伝わないけど」
残酷である。同情という言葉を知らないのか。
「あと、ボクは別にあいつはどうだっていいんだ。どうでもよくないのは、狩魔の方さ……」
吐露。何かしらの辛さ。そんなものが感じられた。
>>170
「簡単にいうなら復讐だね。こいつらにとっては憎まれる存在。それがボク」
それだけだよ。
そうつぶやく彼は、ただの化け物と呼ぶには何か違うような。そんな苦しみを感じた。
172
:
???/???
:2010/08/07(土) 01:14:04 ID:IgMi31eU
//やべ途中送信しちゃった。ちょいとお待ちを。
173
:
???/???
:2010/08/07(土) 01:17:58 ID:IgMi31eU
>>170
「簡単にいうなら復讐だね。こいつらにとっては憎まれる存在。それがボク」
それだけだよ。
そうつぶやく彼は、ただの化け物と呼ぶには何か違うような。そんな苦しみを感じた。
「手伝わなくてもいいけど……今回は楽しいもの見せてくれたからいいよ」
そういうとその手にはお札が握られていた。
そのまま妖刀に近づくと、札ごと、そのまま、握った。
「…っ」
少し顔をゆがませる。流石に強烈だったのか。
周囲に漏れ出ていたそれがすばやく吸収されていく。
数分もすると、あたりの邪気は吸い尽くされていた。
174
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/07(土) 01:39:48 ID:XlHGkQCA
>>170
「くっ……手伝ってくれんなら心強い、が……!」
暴れる妖刀を引き抜いたあとにそれを制御できる自信がない。
邪気吸収の呪を施術した白木の鞘に納める前に、自分か会長の首が飛びかねない。
(悪くすれば二人とも、いや三人、それ以上もあり得る……)
会長の魔法陣に吸収されていく妖刀の邪気を見ながら
増大する妖気に乱されていく思考と手元をなんとか正していく。
気が抜ければ一巻の終わり、策を練る余裕なんてない……
>>171
「そういう、ことか……!」
言葉に反応し、納得した。
たったそれだけ、一瞬気を反らしてしまった故に――
妖刀は、妖刀自身によって引き抜かれ、そしてそのまま……狩魔に向かい降り下ろされ……!
(
>>173
)
その同時、彼の一枚の札によって静止する。
その一瞬、妖刀は抗うことを忘れた。
――その一瞬で充分過ぎた。
息をするよりも早く、邪神とも謂われた妖刀は悉く妖気を喪い、力果てた。
「………な、なんとかなった?」
一瞬で何が起こったか分かってない男は、降り下ろしかかった体勢のまま
苦笑いを溢した。
175
:
邪気会長
:2010/08/07(土) 01:43:35 ID:2MOZv7PM
>>178
…す、凄い……。
(あれだけ凶悪な邪気が、瞬く間に減少していく)
(今まで色々目にしてきた会長も、これには目を疑ってしまった)
(祟り神の邪気を、ここまで迅速に吸収してしまうとは)
イヴィルハンター
『狩魔』。魔を狩る者。
…極東の家名は真の名を表すというが、こいつは凄すぎるぞ。
(文献曰く極東には、未だ知られざる秘術が多く存在するという)
(神秘の国。その二つ名は、間違っていなさそうだ)
…ありがとうな、本当。
気まぐれだったとしても、その気まぐれで多くの命が助かった。
本当にありがとう。
(頭を下げる)
(…さっきまで空気を濁らせていた怪物とは思えない、真摯な態度)
>>179
…何とか、セーフだな……。
(最も、セーフだったのはどっちの方だったのか)
(彼の方だったか。…もしかすると、フレストの方だったかもしれない)
(ともかく、上手く行ったようだった)
……っぶねえ……。
おいフレスト! 今回はマジでヤバかっただろうが!
人の命は損害賠償じゃ済まねえんだからな分かってるかバカ−!!
(襟首を掴んでゆっさゆっさ揺さぶる)
(ちょっと半泣きなのは相当ビビったからだろうか)
鞘! 鞘に早く!
なんか上等そうな白い木の鞘になう!!
176
:
???/???
:2010/08/07(土) 01:50:34 ID:IgMi31eU
>>174
「……この感じは、前にも感じたことがあるなぁ。慣れたけどね」
妖刀を握ったまま、動こうとしない少年。
というより、少しの間動けなかったわけだが。
「ん〜、体の知識から考えて……もう少し封印を施さないと駄目だね。簡単なのは入れ物」
つまり、まだ危険は少し残っているわけで。
>>175
「勘違いしないでね。この体は少ししか役に立ってないよ……」
流石に一度にこれだけの邪気は厳しかったのか少しふらついている。
「ボクは彼と"同種"……いや少しだけ違うかな。まぁ似ているとこもあるけど。
そのおかげでボクは、彼のそれと同化、吸収できたんだよ」
ひとしきりの説明の後、感謝の言葉をもらい
「気に食わないけど、この体が一瞬言うこと聞かなかった。
まぁ、そういうことだよね。むかつくけど。ボクは逃げてもよかったけど、むかつくなぁ」
やはり、思考は化け物よりのようだ。
177
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/07(土) 02:06:23 ID:XlHGkQCA
>>175
「セ、セーフか……あがががっ!? 痛っ!? わかっ、わかったからァ!」
がくがく、と揺する手を押さえて、離れると凄まじい速度で白木の鞘を引っ手繰り。
――カチンッ。
「よ、よし。これでオーケー、ば、ばば万事オーケー」
無事納刀したが、それを持つ手が小刻みに震えている。
会長と同じく、もしくはそれ以上に怖かったようだ。
>>176
「あ、ありがとう! マジでありがとう!」
もはや相手がどんな存在か忘れているようだ、今はもう命の恩人。
「はいっ、厳重に。厳重に、封印しときますっ!」
その忠告は正しく
この後に、もう一つの封印を加えたが、一夜も経つと蓄えた妖気が染み出てくるというのは未来の事。
だが、確実に妖刀は力の一部を失った。
このような事は、今後一切起こらないであろう。誰かが何かをしない限りは。
178
:
邪気会長
:2010/08/07(土) 02:12:57 ID:2MOZv7PM
>>176
(フ、と笑う)
…なるほど。
もしかしたら、戦いになることはないかもしれないな。
(それよりずっと良い方法で解決するかもしれない)
(どうせ修繕費がかかるなら予算を確保しておく必要がある)
(邪気会は、生徒のより良い生活をサポートするのが仕事なのだから)
同一には限りなく近づけても、同一そのものにはなれない。
個が個として存在する以上、それは宿命か。
>>177
あー……。
今回ばかりは死ぬかと思った……死なないけど。
(不老で不死でも怖いものは怖いらしい)
(出張帰りなのに今日はてんやわんやの一日である)
それ、札とか符とか張っておけよな……。
万が一、何かの拍子に暴れ出しました、じゃシャレにならないぜ……。
(祟り神でもやはり神)
(神は伊達ではなかった)
っと、そろそろいい時間だな。
俺はぐっすり休ませてもらうぜ、それじゃまたな!
179
:
???/???
:2010/08/07(土) 02:16:22 ID:IgMi31eU
>>177
「別にお礼なんていいよ」
慣れていないのか、ぷいっとよそを向いている。
「まーがんばってね」
ほんとにどうでもいいみたいなそんな表情。
>>178
「……聞かなかったことにしてあげる」
少し気にかかったのだろうか、しかし今はそれどころではない。
「流石に、同質化するのに時間がかかるみたいでね。しばらくもぐるよ。
どっかで寝てると思うけどこの体見かけたらよろしく」
「あーあ。どこで寝ようかな。廊下でも別にいいかー」
そんなことをつぶやきながら中庭から去った。
//全員お疲れです!おやすみなさい!
180
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/08/07(土) 02:27:53 ID:XlHGkQCA
>>178
「同じく死にそうだった……って、死なないのかよ、ズルい!?」
ズルいとかそういう問題ではない気がする
第一、この男も何度か死んでは戻ってきているし、大して変わりない。
「うーい、なんか貼っとくわー。いい夢見て、ぐっすり寝とけー!」
なんだが、悪夢を見る可能性が高い気がする。
>>179
「ふむ……ま、頑張っとくわ」
そっぽを向くその様子を見て、にやりと笑ったような気がしないでもない。
「んじゃ、早速。貼る符でも探してくるかなー……今日は徹夜だな、こりゃ」
そんなことをボヤくと何処ともなく、音もなくその場から消え去った。
だが結局の所、自業自得。
181
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 19:03:50 ID:YPg0JT2c
(屋外プール)
(お盆も過ぎ、さらにこの時間帯、さすがに人影もまばらになったプールのすみっこでじゃぶじゃぶと水浴びする少女がいる)
(時折潜ってみたり、反対側まで往復してみたりもしているが、別段大きくアクションを取っているわけではない)
ふー、昼間は人がまだ多いからなぁ…ま、夜風に吹かれながら水浴びってのも悪くないなー
(泳ぐのが目的ではなく、本格的に水浴びのために来ているようだ)
182
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 19:04:34 ID:YPg0JT2c
//上げ忘れた…
183
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 19:08:23 ID:ksIqh8Io
屋外プール。
そのプールサイドで倒れている少年がいた。
しかし学ランを着てはいるので泳ぎに来て倒れたわけではないらしい
184
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 19:15:59 ID:YPg0JT2c
>>183
…あれ?もしかして…
(それに気付いてプールから上がり、駆け寄ってみる)
おーい、大丈夫ですかー?生きてますかー?
185
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 19:19:57 ID:ksIqh8Io
>>184
「う…ううん…」
横向きに倒れている少年はどうやら生きているらしい。
「かざ……まつ……」
そして何事かをつぶやいた。
186
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 19:31:06 ID:YPg0JT2c
>>185
よかった、生きてる…
(返事があったことに安堵しつつ)
…え?
な、なんで…?
(その断片から言いたかった言葉を悟ってしまい、なぜ目の前の少年がそれを口走ったか、)
(そもそも彼は誰なのかを必死で思い出そうとする)
187
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 19:34:36 ID:ksIqh8Io
>>186
「う、うう…あ、あれここは…」
少年が目を開けた。そしてふらつきながらなんとか起き上がろうとする。
そうする少年の顔を見ると、以前出会った狩魔という少年を思い出すかもしれない。
188
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 19:39:58 ID:YPg0JT2c
>>187
あ、えーと確か……狩魔さん…でしたっけ?大丈夫ですか?
(何とか思い出して名前を尋ねながら腕を持って起きるのを助ける)
ここは屋外プールですけど…なんでまたそんな服装でこんなところに?
189
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 19:42:52 ID:ksIqh8Io
>>188
「あ、ありがとうございます…」
腕を持ってもらったことにお礼をしながらなんとか起き上がった。
「あの、あなた僕のこと知ってるんですか…?」
顔は似ているのだが、顔つきが違っていて別人かと疑いたくなる。
そしてこの態度。以前出会ったときはこんな少年だっただろうか。
190
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 19:48:41 ID:YPg0JT2c
>>189
あれ?えーっと…
(忘れているだけならまだしも、さすがにこの変わりようはおかしいと思って困惑する)
狩魔さんで合ってますね?
私は風祭唯、前に会ってませんか?
(とりあえず、確認をしてみる)
191
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 19:52:52 ID:ksIqh8Io
>>190
「狩魔……っ!?」
その単語を聞くととたんに頭を抱えて苦しみ始めた。
しかしそれも少しの間のことですぐに収まった。
「ご、ごめんなさいわかりません……僕記憶喪失しちゃったらしくて……」
本人は覚えていないみたいだ。
192
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 19:57:15 ID:YPg0JT2c
>>191
あ、だ、大丈夫ですか…!?
(苦しんでいる様子を見て慌てて声をかける)
(すぐ収まったのでよかったが…)
そうですか…
記憶喪失だとしたらこのままだとなんですし、医務室行きます?
193
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 20:00:54 ID:ksIqh8Io
>>192
「ええと、以前医務室にも連れて行かれたんですけど特に異常は見られないって……」
つまり、打つ手立て無し。ひとまずは経過を見るという判断が下りたらしい。
194
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 20:04:11 ID:YPg0JT2c
>>193
なるほど…
…それで、なんでまたここに?泳ぎに来た感じではないですよね…?
(確かに、着替えもせずに学ランでプールサイドにいる理由は分からない)
(尤も、それが新手の水着だというのならば別だが)
195
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 20:06:51 ID:ksIqh8Io
>>194
「なんでここにいるのかって…僕が聞きたいくらいですよ…」
そういってひざを抱えて露骨に落ち込み始めた。気にしているらしい。
指で下をいじり始めた。
196
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 20:12:17 ID:YPg0JT2c
>>195
あ、あぁぁ…ごめんなさい…
(慌てて手をぶんぶん振った)
と、とにかく、こんなところにいたら水かかったりするかもしれませんからあのベンチにでも座りませんか?
(少し先の、屋根がついたベンチを指差す)
197
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 20:15:14 ID:ksIqh8Io
>>196
「いえいいんです記憶がないことは仕方がないことですし…大丈夫です…」
どう見ても落ち込んでいた。
「あ、はいわかりました」
ひざを抱えていても仕方がないので示されたベンチへ向かおうとする
198
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 20:18:28 ID:YPg0JT2c
>>197
(件のベンチに腰かけて)
うーん、とりあえず、どの辺までなら覚えてます?
(とりあえず、ダメ元で聞いてみた)
199
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 20:20:57 ID:ksIqh8Io
>>198
「よっこいしょ」
なんともまぁかわいらしい掛け声で。
「ぜんぜん覚えてないんです。まるで、この学校で生まれたみたいに、何も」
200
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 20:26:09 ID:YPg0JT2c
>>199
うーん、何も覚えてない、か
何か、思い出すきっかけみたいなものだけでも分かればいいんだけど…
(何も覚えていないタイプの記憶喪失に対してはどだい無理な相談である)
201
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 20:30:34 ID:ksIqh8Io
>>200
「ただ手がかりは一応あるといえばある…のかな…」
少年は学ランの中を手で探り始めた。そして。
「あった。ええとこの切れ端なんですけど…」
出された紙。それは材質的に何かの書類だったようだが今は角の部分しかない。
その表面には"東洋魔術総合科"という文字が書かれていた
202
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 20:34:34 ID:YPg0JT2c
>>201
書類のきれっぱしね
どれどれ…『東洋魔術総合科』?
狩魔さんの学科…かな…?
(本人から学科のことを聞いたことはないので推測だが)
東洋魔術ってことは結界術や陰陽術を研究してるのかしら?
203
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 20:37:51 ID:ksIqh8Io
>>202
「僕の服に入ってたってことはそうなのかなぁ」
断定はできないが、信頼できる情報のはずである。
「結界……」
何か思うようなことがあったのだろうか。ぼーっとしている。
204
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 20:40:44 ID:YPg0JT2c
>>203
一度学務で確認取った方がいいかもしれませんね…
さすがに自分が何者か分からない状態では生活も難しいでしょうし…
…?
どうかしましたか?
(刺激しないように注意しながら聞いてみる)
205
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 20:46:13 ID:ksIqh8Io
>>204
「ううんでもこうも情報がないともしかしたら追い出されるかも……」
不安からかネガティブである。
「……あ、大丈夫です。なんか引っかかっただけです」
特に何が起こったわけではないらしい。
ところで大体のものには表と裏というものがある。
それはこの少年がもっている紙にもいえることであって。
206
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 20:52:28 ID:YPg0JT2c
>>205
まぁ…大丈夫だとは思いますけどね?
(さすがにそこまではないだろう、と励ますように)
それならいいんですが…っと、いけない……ん?
(ふとした拍子にその紙片を落としてしまった)
(ひらひらと舞い落ちて、地面に落ちたその紙片は裏返っていて…)
207
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 20:55:36 ID:ksIqh8Io
>>206
「ならいいんですが…あ、僕が拾います」
そして少年が拾い上げる。その裏面を当然見ることになる。
「……何か書いてある……」
何で今まで気が付かなかったのだろうという。そんな気持ちがこめられた一言だった。
208
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 20:58:53 ID:YPg0JT2c
>>207
どうか…したんですか?
(その裏面を見て明らかに様子がおかしくなった彼を気にかける)
(内心、何か嫌な予感がしているかもしれない)
209
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 21:01:55 ID:ksIqh8Io
>>208
「狩魔……」
端っこのほうに小さく書かれていた。文字が。
狩魔という文字ははっきりとわかるがその先は破れていて読むことが難しかった。
210
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 21:05:59 ID:YPg0JT2c
>>209
それたぶん、私の記憶が間違ってないなら、あなたの名前です
その先はちょっと…微妙ですが…
(破れた部分に目を走らせてみるが、やはり読むのは難しいようだ)
211
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 21:11:32 ID:ksIqh8Io
>>210
「で、でも苗字だけだしもしかしたら僕とその人は兄弟か何かなのかもしれませんよ?」
受け入れがたいのかもしれない。少年にとっていきなり真実を突きつけられるのは。
状況的に考えて同じ学校に同じ科を受け同じ苗字の人間など、そうはいない。
だが確かに少年の言うように兄弟かもしれない。その確固たる証拠は今だ見つからない。
212
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 21:17:57 ID:YPg0JT2c
>>211
うーん…
(そう言われると返答に詰まってしまう)
(彼からもらったものや預かったものもなかった…気がするし、いかんともしがたいようだ)
213
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 21:22:41 ID:ksIqh8Io
>>212
「……ごめんなさい。一人で、考えさせてください」
そういってベンチから立ち上がったが、まだ去ろうとはしない。
「僕に協力してくれてありがとうございました。それじゃ……」
そうしてその場から去っていった。
//落ちますーお疲れ様でしたー
214
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 21:31:00 ID:YPg0JT2c
>>213
あ、はい…お大事に…
(それ以外にかけるのに適当な言葉が見つからず、それだけ返して見送った)
//お疲れでっすー
どうにか糸口が見つかればいいんだけど…
(そう言って今度はプールに飛び込む)
(人もだいぶ減ってはいるが、やはりまだ熱帯夜、まばらながらにも人の姿が見える)
//まだいますよー
215
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 22:29:02 ID:YpnTnW4M
「人の気配がすると思えば……プール、か」
小さな独り言に次いで、ぼんやりと現れる人影
……その手には黒光る双眼鏡
216
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 22:38:03 ID:YPg0JT2c
…ん…?
なんだか…かすかにどこかから見られてる予感…
(なんとなくそれを感じるが、特定には至らないようで)
217
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 22:57:56 ID:YpnTnW4M
>>216
「ほーう、実動部隊はまだ活動中なんだなぁ……ふむふむ」
姿はきっちり消しているが
双眼鏡片手にメモを取る様子はばっちり見えている
声からして男
218
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 23:04:44 ID:YPg0JT2c
>>217
…あ、あれか…?
双眼鏡でプール覗くなんて趣味悪いなぁ…
(散々なことを言っている気がしないでもないが)
えぇい、そこにいるの、誰よっ!?
(プールから飛び上がって上着を1枚羽織り、男のところに飛んでいく)
219
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 23:19:01 ID:YpnTnW4M
「うーむ、そういえば実働部隊の他に治安維持グループが居た気がしたんだが……」
双眼鏡を手放してメモ帳を閉じる
>>218
「ぬおっ!? なぜバレたッ。私の隠遁技術と変装は完璧なハズ……!」
オロオロと慌てる中身の無い白衣がそこに居た
しかも男の声がだんだんと女の声に変わっていく
220
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 23:24:23 ID:YPg0JT2c
>>219
えーと…変装のほうは完璧なんですけど…
その隠遁技術、『透明人間』のノリだったりするんですか…?
(声が変わっていくことは驚きつつ、いろいろと筒抜けな隠遁技術に呆れたりしつつ…)
221
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 23:37:57 ID:YpnTnW4M
>>220
「こいつ、見破ったうえに術式の解析まで……こうなっては仕方ない。オレの能力でこの窮地を……って、声まで戻ってる!?」
白衣を着た透明人間、もとい隠遁術者は愕然とした。
ただし、ただでは諦めないと考えを巡らせること暫く
「……降参です」
ただで諦めた。
じわじわと透明じゃなくなっていく少女は、その場に正座してうつむく
222
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 23:40:40 ID:YPg0JT2c
>>221
…いやだってまぁ…気付いてないかもしれないので教えておきますが…
身体「だけ」透明になってるってことは服装や持ち物は丸見えなわけで…
(冷静に、事実を告げる)
(たぶん…悪いことじゃないはず)
で、あなたは一体?
(正座して落ち着いたところで訊ねてみる)
223
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/19(木) 23:47:46 ID:YpnTnW4M
>>222
「我輩は猫である名前はまだない」
少女は問いかけに平然とそう答える
224
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/19(木) 23:51:01 ID:YPg0JT2c
>>223
猫…ですか…
それで、名前は?
(平然と、動じる様子もなく再び質問する)
225
:
アキ
:2010/08/20(金) 00:03:05 ID:.D.yM9aM
>>224
「……アキ。ついでに言うと猫じゃない」
小さく答える
226
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/20(金) 00:09:41 ID:pMSXvXw.
>>225
アキさん、ね
さっきの様子だと学内の人ですか?
(確証は持たないが、何も聞かずには話が進みそうにないので聞いてみる)
227
:
アキ
:2010/08/20(金) 00:20:10 ID:.D.yM9aM
>>226
「え?あぁ……そう!うん、私、学内の人ー。とりあえずさっきのはただの趣味というか日課というか……」
ううむ、と考えて
「うん、とりあえずそういうやつ」
しかしまとまらない答えを返す
228
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/20(金) 00:25:24 ID:pMSXvXw.
>>227
えーっと…はい、わかりました、学外の人で、さっきのは趣味でも日課でもなく何らかの偵察だったわけですね?
(とりあえず、天邪鬼に返答する)
。0(なんだろう、すっごく人を騙してる気がして心が痛む…気がする…)
できれば、どのような経緯かそちらから話していただけるとすっごくスマートに話が進むんですが…どうですか?
229
:
アキ
:2010/08/20(金) 00:38:33 ID:.D.yM9aM
>>228
「ふぇっ!? い、いやだなぁ偵察なんて人聞きの悪い……ホントにただの日課なんですよぉ?」
少女は頬を膨らませてユイを睨め上げる
ぶっちゃけ迫力ない
「どのような経緯って……ユイさんあなた絶対怪しんでますでしょ。絶対何処かの組織やらカルト教団やらからのうんぬんとか思ってますでしょ」
矢継ぎ早に言うと少女は膨れっ面を更に膨れさせた
彼女もかなりの天邪鬼だ
230
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/20(金) 00:44:16 ID:pMSXvXw.
>>229
うーん…なんというか…どこかの組織かカルト教団の人なんですか…?
(マシンガンのように投げられる言葉を微妙な表情で聞いて)
…そもそも、なんで私の名前知ってるんですか?
私、自分のことは一言もあなたには教えてないんですが…
(結構重要なポイントである)
(連射中にさらっと混ぜられていた違和感のある単語は拾い出していたようで)
231
:
アキ
:2010/08/20(金) 01:03:38 ID:.D.yM9aM
>>230
「……おっと、しまった、これはうっかり。でも、意図的、つまりは確信犯なんだけど、そんなことはどうでもいいよね」
少女は座ったまま。
落ち着き払ったまま、のんびりと口を開く
「察しの通り私はとある教団に所属する組織人。でも、ここに来たのは紛れもなく日課のためなんだけど、なにか感想とかある?」
232
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/20(金) 01:10:14 ID:pMSXvXw.
>>231
えーっと…
(かえってそこまで開き直られると、かける言葉が思いつかなかったらしい)
…と、とりあえず、んー、あなたは日常的にここを覗いてる…ってことですよね?
なぜそんなことを?
(あくまで落ち着いているふうに聞き返す)
233
:
アキ
:2010/08/20(金) 01:21:49 ID:.D.yM9aM
>>232
「そりゃ組織人としての任務だから? 任務という名の実益を兼ねた趣味だから日課なのよ。あ、でもプールだけじゃなくて邪気眼大学《ここ》全域だよ?」
「あぁ、でも勘違いしてほしくないのは。ここに来るのも、あなたの名前を知ったのも規則に則った手続きの結果っていうこと」
234
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/20(金) 01:26:42 ID:pMSXvXw.
>>233
んー、漠然としすぎててよくわかりません…
結局、ここを監視してて、その監視対象の内部に対してある程度の知識は与えられている、ということ?
(少々混乱しながら)
もうすっぱりと聞いてしまいますが…
(少し溜めを作って)
あなたはここに対してどういう立場なんですか?
235
:
アキ
:2010/08/20(金) 01:46:41 ID:.D.yM9aM
>>234
「ま、そんなところね」
「私の立場は中立かな、あくまで私は。だって、サモノス様がここをどういうふうに見てるかなんて畏れ多くて聞けないもの」
「さて……そろそろ帰りたいんだけどいいかな? 時間外労働はしない主義なの」
236
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/20(金) 01:52:43 ID:pMSXvXw.
>>235
サモノス…様…?
うーん…
(相変わらず具体的な内容が見えてこず、眉間に皺を寄せて考え込んだ)
あ、え、えぇ
引止めてしまってすみませんでした
237
:
アキ
:2010/08/20(金) 02:07:41 ID:.D.yM9aM
>>236
「サモノス様は私の所属する教団の神様……」
ぼそり、と呟いた
「あー、えと、なんていうか。これ日課だから、また会ったらその時は……よろしく」
そう言って、少女は歩き去っていく
238
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/20(金) 02:12:44 ID:pMSXvXw.
>>237
神様……
(どことなく、感慨深げに)
は、はい、またお会いしたら…
(軽く会釈して見送る)
…さて、だいぶ遅くなっちゃったな…私も帰ろう
(そう言って更衣室に荷物を取りに行くのであった)
239
:
スィーズィー/魔霊調律科2年
◆uWXrrHvo/w
:2010/08/21(土) 15:15:44 ID:17ogMNAw
【学内の林間にて、アイスキャンディを舐めながら歩く。
やがて何か、天啓を受けたような表情をし、
右手に自前の刀、左手にアイスを構え。】
……二刀流。
【ニヤリ。】
240
:
スィーズィー/魔霊調律科2年
◆uWXrrHvo/w
:2010/08/21(土) 16:34:55 ID:17ogMNAw
【けろけろと辺りを見回し】
……どーやら見つからずに済んだようですね。
いやしくもウォルカーニャ一刀流の免許皆伝持ちが、
二刀に心奪われていたとバレたら大変だ!
【アイスを食い尽し】
かーわーぞこにみをひそっめ〜♪
【スキップで立ち去った】
241
:
邪気会長
:2010/08/26(木) 20:32:09 ID:Kq4No/ow
【行事用掲示板】
(校舎近くに設置された掲示板の前で、たたずむ青年)
(そこには、恒例行事である『邪気大夏祭り2010』のチラシが)
(どうやら先日からすでに催されているらしい)
……ああ〜。
どうりで最近、外がうるさいなと思ったわけだ……。
(彼は今の今まで祭りに気づかなかった奇跡の男であった!)
242
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/26(木) 20:40:42 ID:qIvYLsk6
>>241
夏祭りの実行委員からの書類は私が全部処理しちゃってましたから知らなくても無理はないですけど…
(いつの間にか後ろに立っていた)
(相変わらず、登場の気配を感じさせない)
…とはいえ、お久しぶりです
最近はお忙しいようで…?
(少し会釈して挨拶する)
243
:
邪気会長
:2010/08/26(木) 20:51:41 ID:Kq4No/ow
>>242
うわっ!?
――――って、この流れも段々日常化してきて慣れてきたな。
仕事を回しっぱなしになっちまってたのか、すまない。
(実質、邪気会が機能しているのは彼女のおかげだ)
(会長1人の手ではとても全業務に手が行き届かなかっただろう)
ああ、ちょっと北の方へ”調査”にな。
ちょくちょく帰ってきてはいたんだけど、すれ違ってたみたいだな。
(現在彼は、あるクーデタ事件の調査を預かっている)
(その関係で、最近邪気会室にいないことがたびたびあるのだった)
それで、夏祭り?
もうそんな時期なんだなあ。どんちゃんうるさい訳だよ。
244
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/26(木) 20:59:25 ID:qIvYLsk6
>>243
だいじょーぶ、ですよ
会長が外回りで忙しいのは分かっててこっちの仕事やってるんですからね
(逆に、外回りの仕事は会長にしかできないだろう)
(彼女自身、ずいぶんマシになってきたとはいえ世間知らずな部分は残っているのだから)
北っていうと…前に言ってた?
…ぁうー、タイミング悪かったみたいですね…
(心底残念そうに)
まぁ、いつものことですけどね
うるさいのも、たまにはいいんじゃないですか?
それにほら、普段仕事で窮屈な感じでしょうから、こういうときぐらい、羽伸ばしたらいいと思いますよ?
245
:
邪気会長
:2010/08/26(木) 21:07:47 ID:Kq4No/ow
>>244
本当に悪いな。
もし良い人材がいたら、すぐにでもスカウトしたい所なんだが……。
そろそろ邪気会を維持するには、この人数だと少しキツくなってきたところだ。
(元々手広くやっていただけに、人員の減少は痛打)
(すぐにでも補充をしたいところだが、それも片っ端からという訳にはいかない)
(それとも運営形態を変えるか、ここは悩み所だ)
ああ、イセリアだ。
いやはや、どんな手を使ってでも真実を曝こうって輩がいるらしい。
野暮というか粗暴というか、時にそれは興醒めだ。
(真実は絶対ではない)
(あまりに残酷な真実は、優しい幻想によって覆い隠されることもある)
まあ、そうだな。
こんな日に机にかじり付いてるのは、俺の性には合わないんだ。
……それじゃあ、楽しむとするかね。
246
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/26(木) 21:25:35 ID:qIvYLsk6
>>245
無理はしないでくださいよ?
それに、これはオフレコなんですが…
ほんとに量が多くてピンチな時はノイにも来てもらって手伝ってもらってるので、とりあえずのところは大丈夫ですよ
(彼女の人格をコピーして作られた人造人間、ノイ)
(ノイもまた、ユイと同様の能力を持っている…ということは、単純に作業効率はほぼ倍で計算できる)
人が必要なら公募すれば誰かしら来てくれる…とも思いますけどね
いずれにせよ、私はそのあたりに口出ししないでおきます
真実を…ねぇ…
その好奇心はいいと思いますけど…「好奇心は猫を殺す」って言葉もあるとおり、状況次第では危険なんですがね
(とあるファンタジー小説に出てくる女獣人の話をふと思い出す)
(彼女は、乗っていた飛翔艦の乗組員の裏切りを察知して呼び止めるが、その後殺されてしまうのだ)
えぇ、まずは焼きそばにしますか?それとも射的?金魚すくい?
(待ってましたとばかりに目を輝かせる)
247
:
邪気会長
:2010/08/26(木) 21:35:01 ID:Kq4No/ow
>>246
《ノイ》……。
話には聴いていたが、しかし人造人間とはな。
にわかには信じがたい。……まあ、俺が言えたことではないんだが。
(人造人間は、魔術、科学の両方からアプローチできる)
(その場合、前者は《ホムンクルス》、後者は《アンドロイド》と呼ばれることが多い)
(しかもその制作過程は全く異なるものだ)
まあ、な。
その真実が曝かれることで得をする人間がいる、ってことだろう。
俺とて、このまま操り人形では終わらないさ。
(真実を探求するには探求する)
(しかし、それを依頼主にそのまま渡すかと言えば話は別だ)
どんだけ楽しみにしてたんだ……。
こういう行事にはユカタが付きものって聴くが、いいのか?
248
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/26(木) 21:48:28 ID:qIvYLsk6
>>247
まぁ、『裏』の産物ですし、本人もそれを気にしてる節はあるんですがね…
(『裏』…『裏生徒会』のことである)
(最近はなりを潜めているものの、破壊工作などを行うテロリストのような集団だ)
気をつけてくださいよ?
いくら大きなことをしてもそこで捕まってまずいことになったらいけませんし…
(会長が死なないことは知っているのでその手の心配はしなくてもいいことはわかる)
(だが、それでもその他の危険は依然として残っている)
いやぁ、浴衣を着たいのはやまやまなんですけど…
恥ずかしながら、浴衣というものを持っておりませんで…
(少し照れくさそうに頭をかく)
(今日もシャツとスカートだが…会長は知っている)
(普段空を飛んで移動することが多いユイにとっては、スカートをはいているということが既に大きなおしゃれなのだ)
249
:
邪気会長
:2010/08/26(木) 22:01:05 ID:Kq4No/ow
>>248
『裏』、か。
そういえば姿を現さないな。今ごろ、一体何をしてるんだろうかね。
(しかし実は、会長は知っている)
(『裏』の、つまりいわゆる暗部の連中の抑止として暗躍している存在のことを)
(どうやら上手く機能しているようだ、と会長は安堵の息をつく)
なぁに。
そこそこ、手加減はするさ。
(自分が巻き込まれる、という考えは全く無いらしかった)
(どうやら、こういう調査系の仕事は得意らしい)
ふうん。
しかし、ユカタでないといまいち気分が盛り上がらないな。
(黄金の粒子を出すまでもない)
(会長がおもむろに両手を後ろに回したかと思うと、次の瞬間)
(ユイに差し出したその手には、風車をあしらった刺繍の涼やかな浴衣が握られていた)
250
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/26(木) 22:15:24 ID:qIvYLsk6
>>249
まぁ、動かないなら動かないで、それにこしたことはないんですがね…
動くたびに何かと騒ぎにもなりますから…
(動かず、出てこないものは「ない」のとそう大差ない)
(害をなす組織はないものとして扱えるならばそのほうがいいに決まっているのだ)
会長のことだから大丈夫だとは思いますけどね
ブービートラップなんかに引っかからないでくださいよ?
(会長とて何かしらのミスをすることはあるかもしれない)
(悪いタイミングがぶつかれば、悪い方向に物事が進むこともありえなくはない)
え?…あ、あれ? マ ジ ッ ク
(いつものことながら、会長の『魔法とも手品ともつかないもの』には驚いてしまう)
それ、もしかして…
251
:
邪気会長
:2010/08/26(木) 22:26:54 ID:Kq4No/ow
>>250
ああ、そうだな。
出てこないでくれた方がありがたい。余計な邪魔が入らずに済むし。
何より、被害の修繕費で予算が飛ぶこともないしな。
(恒例行事のように開催されるクエスト)
(その裏事情を話せば、涙なくして語れぬほどの苦労苦労の連続だ)
(戦士だけでは世界は回らない…)
ブービートラップ、ね。
物理的な罠には強いと自負してるが、政治的な意味を持つ罠はちょっと疎いかな。
それなりに気をつけておくよ。
(傷害や殺害の意味を持つトラップは、そもそも会長には効かない)
(しかし、後々になって社会に波紋をもたらす罠、というのはなかなか通じていないのだ)
もしかしなくても、浴衣だ。
…魔法衣の素材だから、サイズは勝手に合う。ま、労い程度に受け取ってくれ。
それじゃ、俺は先に会場とやらに行ってるぜ。
別に逃げやしないから、ゆっくり着替えてから来るといい。じゃ、後で。
(祭り囃子が聞こえる方へと、会長は歩いて行く)
(どうやら今日は本当に羽根を伸ばす気らしかった…)
252
:
ユイ/戦闘魔術科/実働部隊”九”
:2010/08/26(木) 22:41:31 ID:qIvYLsk6
>>251
ですよね…一時期はほんとに修繕費の請求書だけでとんでもないことになってましたし…
(どちらかといえば彼女は表で戦うのがメイン…ではあったのだが、その影で徹夜居残りをして書類整理をしていた)
(今の書類整理のスピードはその当時培われたといっても過言ではない)
政治的、社会的なトラップを仕掛ける敵もいるというのはたまに聞きますからね…
物理的に殺すことはできなくても、「殺す」手段なんてのはそれこそごまんとありますから…
(例えば、集団から追放される、これだけでも十分本人からすれば社会的に抹殺されたことになりうる)
(そんなものを組織的に行われては…想像もしたくない)
こんな立派なものを…ありがとうございます…
じゃ、じゃあ着替えてきますね!
(それとは逆の方向、更衣室があるほうに駆けていく)
(浴衣を胸にしっかりと抱き、顔を少し赤らめながら)
253
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/28(土) 00:07:44 ID:vBSOIpiE
「お祭り、ねぇ……悪い思い出はないが、面倒くさいな」
そういう少年は掲示板前でその詳細を眺めていた。
しかし面倒、とはいいながらもその服装はしっかりと浴衣を着用しているのはどうなのだろう
254
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/28(土) 02:00:04 ID:vBSOIpiE
「フン…その辺でも回ってくるか…流石に九尾や猫又は出ないよな…?」
過去にそんな思い出があるのか。
ぶつくさいいながら少年はどこかへと去ろうと歩み始めた
255
:
スィーズィー/魔霊調律科2年
◆uWXrrHvo/w
:2010/08/28(土) 19:29:21 ID:Fwd55pFw
【屋外ベンチにて。ハンチング帽、ジャケット、パンツ、何れも白いレザー用品で身を固め】
ふぬぅ……。
【ハンディタイプの小さい扇風機を手に、自らを涼風に晒しつつ】
ふむぉぉぉおおお……!
【某警察ドラマのノベライズ本を読む】
後味悪くてイライラするゥウッ!!
【ストレスによる自己発電能力で扇風機を回しているようだ。
勝手にイライラ。勝手に涼を楽しむ。BAKAである。】
256
:
スィーズィー/魔霊調律科2年
◆uWXrrHvo/w
:2010/08/28(土) 21:04:41 ID:Fwd55pFw
【再び天恵を受けたような表情をし】
DVDだ……視聴覚刺激を受けて、もっとイライラしなければッ!
【ビデオ屋さんに向かって走り去った】
257
:
邪気会長
:2010/08/29(日) 21:14:50 ID:bv0JkwX2
【野外プール】
…………。
シャコシャコ
(夏も終盤)
(例年なら、プールはもう来年の夏まで営業休止になるはずだった)
(しかし、魔法気象庁によって異常気象が観測された)
(秋にまでもつれこむ30℃超の猛暑)
(生徒達の願書もあり、9月いっぱいまでのプール開きが約束される運びになった…)
……暑い。
死ぬ。
(という訳で、プール掃除をしている訳であった)
バイト募集ゥウゥウウー――――――ッ!!!!
258
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/29(日) 21:18:42 ID:XS9F/ajk
>>257
「おいうるさいぞ会長」
気づけば少年がそこにいた。
なぜか浴衣を着ているが
259
:
邪気会長
:2010/08/29(日) 21:41:36 ID:bv0JkwX2
>>258
え、あ、ハイすいません。
……って、狩魔か。どうしたんだ、浴衣なんて召しちゃって。
(プールの底をモップでガシガシ削りながら)
(狩魔の浴衣姿は、客観的には似合っているのだが)
(普段の言動を知っている会長からすれば、微妙に違和感がある)
260
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/29(日) 21:45:20 ID:XS9F/ajk
>>259
「……別に、祭り事のときはこの格好っていうのが家の常識だからだよ」
おそらく相手は違和感を感じているのだろうなと思いつつ
習慣だから仕方ないというニュアンスを含ませながら答えた
261
:
邪気会長
:2010/08/29(日) 21:53:48 ID:bv0JkwX2
>>260
祭り事?
……ああ、今やってる夏祭りのことか!
(一応、邪気外の恒例行事である)
(ただ文化祭体育祭に比べると、いくらか開催規模は小さい)
(ゆえに行事の中では少々空気ぎみなのだ)
確かに、祭事って東西問わず重要だもんなぁ。
狩魔の家は、そういうのは敏感ってことか。
えーと、気? みたいな感じのがどうこう、みたいな?
(明らかに勉強不足であった)
262
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/29(日) 22:04:06 ID:XS9F/ajk
>>261
「一応、その土地で力を持った人間だから出席しなければならないんだよ。
俺はともかく、親父はな」
そういう少年の顔はそんなことは別にどうでもいいと言いたげだったが。
「だけども祭りっていうのはその土地の気の巡りを安定させるため行われる。
どうしても気っていうのはいつかは乱れちまうもんだからな
それならいっそこちらから人為的に、かつ安全に、というのが祭りの始まりだ」
さらに続けて説明を加える
「俺の家での祭りというのはまず会場一帯を結界で囲み気の荒い奴らを入れないようにする。
その後内部で祭りを行う。この間は妖怪どもも外でお祭り騒ぎだ。
これだけなら俺らの役目はなさそうだが実際は紛れ込んでる場合があるからな
それの監視と警備でいる。不安を起こさないためにこの浴衣姿というわけだ」
少年にしてはだいぶ長くしゃべった気がする。
そして、ため息と、疲れた、面倒くさい、の一言。
263
:
邪気会長
:2010/08/29(日) 22:19:45 ID:bv0JkwX2
>>262
な、なるほど……。
どんちぎらんちき騒ぎにも、ちゃんとした意味があったんだな。
(うんうん、と神妙に頷く)
気の荒いのを入れないのは、かえって気が乱れるおそれがあるからか?
単に祭事を邪魔されるのもあると思うが……。
気の巡り、か。
それって、その、いわゆる龍脈とかそんな感じのヤツか?
前になんかの文献で読んだことあるぜ。
264
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/29(日) 22:25:28 ID:XS9F/ajk
>>263
「何事も意味がある。出なければやらないだろう?」
そういってどっかり座り込んだ。あー浴衣がー。
「妖怪はたいてい荒れるからな……それに混乱の元だ。
気に関しては別にそういう認識でもかまわない。要はその土地のエネルギーだからな
こいつが乱れちまうとおとなしい妖怪も暴れちまうこともあるからな」
265
:
邪気会長
:2010/08/29(日) 23:22:47 ID:bv0JkwX2
>>264
それはそうだな。
そこらへんは西洋の術式でも同じか。
(一見無意味だが、実は重要なファクターであることは結構多い)
(その大抵が重要だと悟らせないための隠蔽であるが)
(つまり術式だか魔法陣というのは、それほど本来的に精緻な構造なのだ)
ふんふん……。
いやぁ、やっぱ全然違う考え方ってのは難しいな。
俺もお遊びで符を書いたことがあるけど、もうダメダメだったしな。
(影踏みの式で空に虹が架かるとかそれどんなメルヘン)
266
:
名も無き邪気眼使い
:2010/08/29(日) 23:25:29 ID:bv0JkwX2
//かなり遅くなってしまってすいません!;
267
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/29(日) 23:27:50 ID:XS9F/ajk
>>265
「お遊びで描けるものなら高尚な教育など必要ない。
お遊びで描けるのならどれほど楽なのだろうな」
別に勉強したかったわけではないものを厳しく教えられてきたためか
そういうのは面倒に感じるようだ。
「それにしても最近はなぜか眠気が薄まったから適当に歩き回っているが……
時々廊下で眠っていたり屋上で眠っていたりグラウンドで寝ていたりと。
自分でも知らないうちに眠っているのはなぜなんだろうな」
まぁその原因を会長は知っているが、例の人格のためである
しかし本人はまったく気づいていないらしい。有能なのか間抜けなのか。
268
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/29(日) 23:28:44 ID:XS9F/ajk
//なに気にすることはないのです。遅くまで付き合えるので大丈夫です
269
:
邪気会長
:2010/08/29(日) 23:36:02 ID:bv0JkwX2
>>267
術式の勉強って大変らしいから……。
大魔導師とか、よくもあんなの数千数万と覚えられるもんだよな。
俺にはとてもじゃないができっこない。あれは。
(中には、自分で術式や魔法陣を即席で作り上げてしまう者もいる)
(そこらへんになると、もう天上の人という感じか)
その内、知らない大陸にでもいそうだな……。
なんというか、早めの対策みたいなのが必要なんじゃないか。
(事情は知っている)
(が、それを話していいものかは未だ判断がつかない)
(軽率に話してしまえば、良からぬことが起きてしまうこともありうるのだ)
//ありがとうございます;
270
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/29(日) 23:39:27 ID:XS9F/ajk
>>269
「俺にもできそうにない、が、あの親父がなぁ……」
やはり跡取は大変らしい
「否定できないのが痛いな。しかし対策と言っても保健室では異常がないと言われたしな
現状どうすりゃいいのか……まぁ授業サボれるのはありがたいが」
言っていることは軽いが本人の中で問題であることは自覚しているらしい
だがどうすればいいのかそれは彼にはわからない
271
:
邪気会長
:2010/08/29(日) 23:44:34 ID:bv0JkwX2
>>270
…………。
(思案顔になる会長)
(どうにか手助けしたいと、あれこれ巡らしているらしい)
符、か。
ちょっと俺も勉強してみようかなあ……。
もしかしたら、西洋魔術との融合で何か生まれるかもしれないし。
……ふう、む。
しかし、眠ってる間に別の場所にいるってことは。
狩魔が眠りに落ちている時、身体は活動して移動しているってことだろ?
それって、なんと言うか。
お前が眠ってる時、別のヤツがお前の身体になってるみたいだよな。
(悩んだ末、遠回しに示唆してみることにする)
(もう1つの存在が、狩魔の理解を意図的に阻んでいる可能性もあったが)
(いわば、それの確認にも繋がることだった)
272
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/29(日) 23:49:30 ID:XS9F/ajk
>>271
「面倒くさいから奨励はしないぞ」
経験済みであった
「というか眠った記憶がないときもあるが……確かにそうなるな」
体は勝手に動いている。普通なら夢遊病者だと言われそうだが、ここはそうではない。
「この学校にいるから警戒はしていなかったんだが、向こうの妖怪の憑依か?
しかしメリットがわからないな。第一殺したいならもうやってそうなんだがな……」
ある程度の認識は許されるようだ。今のところ異常はない。
「別に普段と体の調子もそんなに変わってるわけじゃない。なんなんだ一体」
273
:
邪気会長
:2010/08/29(日) 23:58:40 ID:bv0JkwX2
>>272
死なないってのはつまり、永遠に暇ってことなんだ。
(チ、チ、チ、と指振り)
多少面倒くさくても、結果的に暇潰しになってくれるなら大歓迎さ。
つまり、実になってもならなくても構わない、ってコト。
(口ではそう言うが、見聞と知識を広める為でもある)
(会長は、生徒の学問を助けるチューターとかコンサルタントのようなこともしている)
(東方の術式のことも知っておいた方が得かな、とか考えたのだ)
(それに、極東への出張が下った時に、相手先と話題のタネになるかもしれない)
(そうなれば、結構大きな強みにもなる)
そういうお前には、なんか心当たりないのかよ。
面倒事に巻き込まれるような出来事が過去にあったり、とかさ。
原因もなく結果は訪れないんだし、何かあるはずだぜ。
(解答への誘導だ)
(直接的でなく、だが確実に真実へ近づくような誘導の仕方)
274
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/30(月) 00:02:45 ID:JJES1i1Y
>>273
「フン、暇人め」
人のことを言えないほど自身も暇人のはずなのだが。
「いや、本当にわからない。俺が記憶してるうちでそんなことはないはずだ。
だが、どうなんだ?……いや、だがなぁ……ありえることはありえるのか?」
何かの心当たりはあるようだ。だが、関係は薄いと思っているようだが。
275
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 00:13:51 ID:2w2FKZFw
>>274
お前こそ。
どうせ暇ってんなら、有意義に過ごした方が得だぜ。
それで天才の域にまで達したヤツを、俺は1人知ってるからな。
(六道を極めた天才)
(彼は今、どうしているのだろうか…)
全く思い当たらない、ってよりマシだろ?
少しの手がかりが、芋づる式に真実をさらけ出しちまうこともある。
暇なら、当たってみるのも悪くないんじゃないか。
276
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/30(月) 00:22:37 ID:JJES1i1Y
>>275
「だから暇人つぶしにぶらついてるんだが……面倒でねどうも。
まぁ極められるのなら極めてみても面白そうだがな」
面倒くさがりなのは相変わらずであった
「なら、とりあえずお前にも話しておこうか。意見というのは大事だろう」
そして、彼の雰囲気が硬いものとなった
「俺は"狩魔"の一族の跡取だ。それはお前に話したと思う。
だから俺は大事にされてきたよ、母は死んまったんだからそれはそうだろうな。
でだ、親父は俺にあるものを施した。それが、"印"だ」
普段の彼とは明らかに違ってみえる真剣な表情。
説明は続く。
「"印"は術式だ。魔方陣といっても差し支えはない。それほど綿密に組まれた式なんだ。
それが俺の背中に刻まれている」
ここでいったん会話を切った。
「ところで、見るか? "印"を」
突然の提案であった
277
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 00:27:58 ID:2w2FKZFw
>>276
暇人つぶしとは物騒な。
極めるってのは根気の要る作業だから、キツいかもだけどな。
ただ時間があるってだけじゃ駄目だぜ。
(極めるとは何より当人の資質が問題となる)
(相性が良いなら早々に習得できるし、悪ければ何十年もかかる)
(会長は、瞬刻の内に思考する)
(恐らくこの機会を逃せば、もう二度とは訪れるかどうかも怪しい)
(どう考えても、ここで拒むことはない)
…ああ、見させてもらおうか。
その、印とやらを。
(後手後手だったが、ついに踏み込める時が来た)
278
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/30(月) 00:37:55 ID:JJES1i1Y
>>277
「暇人に付き合ってくれるのは暇人だけだろう?だから暇人つぶしなんだよ」
そう言って再び真剣な表情に戻る
「んじゃま、そう面白いものじゃないが」
そういって、少年は立ち上がる。
自身の背中を会長へと向け、腰の帯に手を回し緩ませる。
しゅる、という布特有の音が周囲に響かせながら、徐々に少年の肌が露出し始める。
これが女のものなら興奮ものであるが残念ながら相手は男である。その趣味なら別だが。
ともかくあまり日に出ないからか、白め肌はさらされていき、とうとう背中を見せた。
そこには大きく、そして複雑に術式が施されていた。
何かのマークなのか、狩魔の紋章なのか、そのようなものが中心に置かれ、
その周囲を細かい模様、何らかの文字であると思われるそれが刻まれていた。
多くを知らぬものでもおそらくはこう思えるだろう。
ただの術式ではなく、何か大きな効果を得られるものだろうと。
「もういいか?流石に夜中に外で露出する趣味はないんでな」
279
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/30(月) 00:44:25 ID:JJES1i1Y
//なんか夜中って書いちゃったけど気にしないでください
280
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 00:51:15 ID:2w2FKZFw
>>278
……。
(会長も、魔法陣ならば百を優に超える数を見ているが)
(少なくともこれは、初めて眼にするタイプだ)
(精緻な構造が複雑に絡み合い、周りを埋め尽くす何らかの文字)
この印が関係ある、かもしれないな。
…ああ、もういい。ありがとう。
281
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/30(月) 00:59:06 ID:JJES1i1Y
>>280
「こいつはどうやら俺を妖怪からある程度防御し、力の補助になると親父は言っていた。
というか俺自身欲は確認していないんだがな。背中にあってよくわからんし」
ある程度術式に長けているものならなんとなくわかるだろう。
少年の話の違和感。
あの複雑な式がたかだか防御と補助だけの役割しか果たさないのかと。
確かにある程度の防御などの力は見受けられるが、どう考えても全体の力のそれではない。
ならば、それならばなぜ少年の父親はそれを言わないのか。
「俺としてはこれの式が薄まったかもしくは何らかの妨害にあってると。
そう思うんだが会長はどう思う」
真実は、言うべきか、言わざるべきか。
282
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 01:08:29 ID:2w2FKZFw
>>281
…あ、ああ。
(凄まじい勢いで、展開が進んでいく)
(まるで今まで堰き止められていた水が、奔流となるように)
(謎を呑み込んで、真実が圧倒的な速度で迫っていくのを感じる)
(まず、落ち着こう)
(そして、よく考えろ。今ここで、踏み込んでしまっていいのか…?)
(……、いや)
(躊躇っていては、いつまで経っても進まない)
(やるだけ、やってみよう。…明らかに危険な様子なら、やめればいい)
…待て。
気のことはよく分からないが、エネルギー総量ならぱっと見で分かる。
…確かに、補助的な役割もしているが……。
この陣、明らかに補助を目的に描かれたものじゃないぞ。
(根本的に違う、異なる)
(だが、陣の効果までは門外漢な会長には分からない)
(…やはりここは本職に確認してもらうべきだろう。すなわち、狩魔本人に)
…なあ、もう一回見せてくれないか。あの陣。
それを写し取ってみるから、これが一体何の陣なのか確認してみてくれ。
283
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/30(月) 01:12:17 ID:JJES1i1Y
>>282
「……バカな。今まで親父はそんなこと一度だって……」
だが、ここで間違ったようなことは言う男ではないことを少年は感じていた。
少年らしくない、うろたえた様子。
しばらく渋っていたがそれに答えた。
「……分かった」
そうして再び会長に向けて"印"がさらされた。
284
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 01:18:35 ID:2w2FKZFw
>>283
(ふう、と息を吐く)
(焦るな。慎重にコトを見極めろ。…さもなくば、大惨事になるおそれもある)
(晒された印の上から、会長は精製した魔力を重ねていく)
(撮影や写し書きを禁ずる呪が掛けられている可能性を考慮した結果だ)
(明確な形状として残すと、トラップが発動するかもしれない)
(なので不定形の魔力で再現することにした)
(これならば、そもそも系統も異なるエネルギーなので最悪反発で済むだろう)
(青紫色に光る魔力は、呪の形状を正確に象る...)
…出来た。もういいぞ、ありがとう。
………これだ。
(会長は狩魔に、蒼い魔力で象った図形を見せる)
(背に描かれていた陣の形、そのままを象ったそれを)
285
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/30(月) 01:26:01 ID:JJES1i1Y
>>284
「……よし」
特に写されても何も起こることはなかった図形。
とにかく、意を決して、それを見た。
「……バカな、うそだ、こんな、こんなに複雑だとは一言だって……」
うろたえ始める少年はその印にのみ視点を向け、それしか見えなくなる
足元がおぼつかない。震える。震え上がる。
少年は、確かに一見大人びて見えるが、年齢は十六。
本来大学に入る年齢でもない、飛び級に近いもの。
その幼さが、垣間見えた。
「うそだ……うそだ……うそだウソダァアアアアッ!!」
頭を抱えて苦しみだす。
そのとき、少年の体の周りを妖力があふれ始める。
暴走だ。このままでは危険な状態に陥ってしまうかもしれない。
286
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 01:38:29 ID:2w2FKZFw
>>285
まずいッ!!
(得体の知れない力が溢れ出る)
(感情の制御不能による暴走。…よく聴く話だ)
(運が悪ければ死亡事故にまで発展する。強大であればあるほど、暴走のリスクは高い)
(以前似たようなことが起きた)
(その時は為す術もなく助けを求めたが、今回は違う)
今回は!
ちゃんと準備してきましたッての!!
(懐から取り出したのは、いくつかの符)
(前回の失敗を活かし、今度は相性の合うものを事前に用意していた)
(符の質は良いが、妖気の膨張が意外に早い。もしかしたら危ないかもしれない)
…まあその時は、身を以て助けてやるって。
ほら、行けェッ!!
(バラバラバラ、と、狩魔とその妖気を取り囲むようにして宙に静止する符)
(直後、凄まじい吸い上げで妖気を吸収していく)
(前回の魔法陣の時とは比べものにならない吸収率だ)
287
:
狩魔聖斗/東洋魔術総合科
:2010/08/30(月) 01:43:21 ID:JJES1i1Y
>>286
膨れ上がった妖気は符によって吸収されていく。
しかし何かがおかしいのは、吸収の率があまりにもよいこと。
普通なら妖気と言っても少年から漏れたものなのだから少しくらい誤差があるはず。
しばらくすると少年から漏れる妖気は取り除かれた。
少年は立ち尽くしていて、今だ反応が見られない。気絶したのか。
288
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 01:47:09 ID:2w2FKZFw
>>287
な、何とかなった……。
(一枚ウン万もした符を全て使い切って、何とか抑えきったようだ)
(ふう、と息を吐くが、狩魔の様子がおかしい)
狩魔。
おい、狩魔。大丈夫か、狩魔!
(近寄って、ぺちぺちと頬を叩いてみる)
289
:
???/???
:2010/08/30(月) 01:50:57 ID:JJES1i1Y
>>288
「いたい、いたいって!ちょっとやめてってばー」
また、異質な雰囲気が漂う。
すでに見知っている、あれだ。
再びあれが前面に現れたのだ。
「というわけで、やあ、元気、そうだね?うん」
290
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 01:55:02 ID:2w2FKZFw
>>289
!
…そうか。
狩魔が意識を失うってことは、お前が出てくるってことだもんな。
(何も驚くことではない)
(まず息を吐き、そして応対を再開する)
お前の方こそ、元気だな。
狩魔は、大丈夫なのか?
291
:
???/???
:2010/08/30(月) 01:58:45 ID:JJES1i1Y
>>290
「あいつは寝てるよ。ちょっと痛い情報あげちゃったなー」
「まぁ、予定通り、ちょっと会長を利用させえてもらったよー?あははは」
利用とは、何のことなのか。
292
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 02:01:40 ID:2w2FKZFw
>>291
…どういうことだ。
狩魔に、お家への不信感でも持たせようってのか。
(予定通り、利用させてもらった…)
(つまり一連の出来事は、この存在の思惑に沿っているのだろうか)
(そう考えると、何とも言えない悔しさがこみ上げる)
293
:
???/???
:2010/08/30(月) 02:07:29 ID:JJES1i1Y
>>292
「そんな深く考えないでよー。前に吸収したでしょ、あれだよあれ。
あれを同一にするのは流石に苦労でね?しばらく出てこれなかったよー」
話がだんだんと読めてくる。つまり。
「だーかーらーちょーっと会長の力を借りて吸収してもらったのね?
別にしなくてもよかったけどこれが手っ取り早かったんだよねー」
294
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 02:10:01 ID:2w2FKZFw
>>293
…なるほど。
だから、妖気があふれ出したって訳か。
(あの妖気は、前に吸い込んだ妖刀のものだった)
(どうやらそのせいで、しばらく表に出てこれなかったらしい)
…それで。
少しは進展した、と考えてもいいのかな。今日は。
295
:
???/???
:2010/08/30(月) 02:12:33 ID:JJES1i1Y
>>294
「一歩間違うとバランスが危なかったから、まぁその点は御礼をいうよ、ありがとねー」
にっこりと貼り付けられた笑顔。
少年が真に笑うときは訪れるのか。
「まー進んだんじゃない?お互いにさ」
意味深な発言。不敵な笑みは予測ができない。
296
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 02:16:52 ID:2w2FKZFw
>>295
…相変わらずのつれない表情だな。
前に見せてくれた、憎悪と敵意に溢れたあの顔は良かったのに。
(合わせるかのように、…会長から、あらゆるものが無くなる)
(いや、見えなくなったのだ)
(底深き深淵。…まるで底なしのような虚無と深奥が、存在感として現れる)
進んだなら何より。
願わくは、お互いにとって幸福な結末となるよう。
敵でないことを祈って、な。
297
:
???/???
:2010/08/30(月) 02:22:17 ID:JJES1i1Y
>>296
「あんまり掘り返さないでくれない?まーいいけどさー?」
底知れぬことはすでにわかっている。だがそんなことは気にすることではない。
気にしても仕方のないことだからだ。
「全員が、全員、幸福?笑わせないでほしいね」
一瞬だけ、冷たく、憎しみのようなものを感じ取れた。
「それじゃーそろそろボクかえるねー」
そういってプールから去ろうと足を進めようとする、が、とまる
そして
「あーそうだ。 "おとうと" に会うかもねー?あははははははッ!!」
子供のような笑いを響かせながら、少年はその場を去っていった。
//お疲れ様ですー長々とありがとうございました!
298
:
邪気会長
:2010/08/30(月) 02:26:25 ID:2w2FKZFw
>>297
…………。
(遠ざかる背中を、得体の知れない視線で見送りながら)
(会長は笑み、しかし実際は笑みかも分からない、を浮かべて)
良いじゃないか、全員幸福。
常識が通用しないのが邪気眼使いなら、それも一興だ。
どうせなら足掻いて藻掻いてみるさ、どうせなら……。
//お疲れ様でしたー!
299
:
ダレカ/戦士科1年/”異世界人”
:2010/09/24(金) 21:46:00 ID:qKKHL5zA
【屋外/闘技場】
ふっ、―――はっ。
(通常、戦闘を要する学部生の実戦訓練はKUNRENで行われる)
(不慮の事故による死傷者を出さない為の措置だ)
(KUNRENの本来の用途はそれであり、その他のものは副産物に過ぎない)
(しかし、戦士学科は例外)
(『戦士』という職業の特性上、負傷はとても重要な要素だ)
(傷の具合で撤退するかどうか決定し、また治りの速さも確かめねばならない)
(よって、戦士学科はKUNRENの他に、この闘技場で訓練を行ったりする)
(その闘技場に、一つの人影――――。)
せっ、よっ、……ほ、っと。
(どうやら、重心の動かし方を練習しているらしい)
(しかしその動きは、戦士科の生徒のものにしては何処かぎこちないのも確か)
(その動きは、とても実践的とは思えない)
(跳んで払って薙いで受けて、まるでゲームのキャラのような戦い方の動き)
(それでも流れるように移り変わるそれは、とても美しいものだった)
300
:
名も無き邪気眼使い
:2010/09/24(金) 21:55:58 ID:bJ9jYwSM
>>299
(―――ふわり)
(闘技場の天空、開け放たれたそこからは夜の宵闇、降り注ぐ青白い月光)
(その空から、白い羽がふわりと落ちて来る)
301
:
邪気会長
:2010/09/24(金) 22:03:56 ID:qKKHL5zA
>>300
(――――スッ。)
(それは、まさに一瞬の出来事。)
(鍛錬に励む青年の頭上から、ふわりと舞い降りてきた白い羽)
(眼前に目を据えていた青年の視界には当然映るはずもない、その高角度から)
(また、青年の動きで生じた風で、羽は大きく揺らいでいた)
(羽というのはとても軽く、また形状からして空気の抵抗を受けやすいものだ)
(僅かな手の一振りでさえ、羽は吹き飛ばされてしまうほどに)
(それを、青年は)
(振り返ることも見上げることもなく、片手をかざすと優しく受け止めた。)
……、羽?
(青年に、自分の行為への自覚はない)
(実際、意識して行った訳ではない。勝手に腕が動いて、勝手に掴んだイメージ)
(戦士学科に、こんな繊細な動きを練習するメニューは存在しない) ステージ
(異世界人で戦いを全く知らないはずの青年は、まさに独力で、ここまでの段階に至ってみせた。)
302
:
ダレカ/戦士科1年/”異世界人”
:2010/09/24(金) 22:06:48 ID:qKKHL5zA
//しまった!
//名前欄は邪気会長→ダレカで脳内変換お願いします!
303
:
名も無き邪気眼使い
:2010/09/24(金) 22:09:57 ID:bJ9jYwSM
>>301
(ふわりとした柔らかい感触は無く、触れると同時に羽は光の粒子となり―――消えた)
(その様はまるで、星をその掌の内に生み出したかのように美しく幻想的であった)
(粒子は風に乗り、空へと舞い上がる)
304
:
ダレカ/戦士科1年/”異世界人”
:2010/09/24(金) 22:19:32 ID:qKKHL5zA
>>303
(手のひらに触れた羽は、光の粒となって脆く崩れ去る)
(握り締めようとするも間に合わず、指と指の隙間から空へと舞い上がる。)
(まるで、雪が空へと帰っていくよう)
(青白い月明かりの照らす夜の彼方へと、光は散らばって消えていく)
(その光景が、青年に見せたもの――――。)
(それは、記憶。)
(過去の忌々しい災厄。友を喪い、親を喪い、彼の周りの人を全て喪った記憶。)
(それは、決意。)
(新たな現在と、目指すべき未来。新たに得た大切な人を、どんなものからも守り抜く決意。)
……俺は、もう迷わない。
全ての仇為す敵と、戦おう。そして彼女と共に、最後まで生きてみよう。
もう未来を、諦めたりはしない。
(無慈悲に終わるはずだった、青年の世界は、)
(この瞬間。)
(軽やかな羽と、数多の光の粒子を引き連れ、今ここに顕現した。)
俺の名は、ダレカ。 イ マ
過去を背負い、未来を目指し、――――最果ての現在を生きる。
305
:
名も無き邪気眼使い
:2010/09/24(金) 22:29:01 ID:bJ9jYwSM
>>304
(夜空から吹き込む風は涼やかに)
(決意を固めた彼を祝福するかのように、彼の身体を包みこむ)
(粒子の舞い上がる先には白い翼を持った人影)
(……)
(彼の成長を密かに見守る結果となったのは、恐らく想定の範囲外であろうが…)
306
:
ダレカ/戦士科1年/”異世界人”
:2010/09/24(金) 22:39:21 ID:qKKHL5zA
>>305
(『第二段階(セカンドステージ)』)
(困難の壁を乗り越えたことによる、戦闘力、精神力の飛躍的成長を喩えた言葉)
(多くの生徒が辿り着くまで苦しむその境地に、青年が到達した瞬間だった)
(人によっては、到達前と後では劇的な差が現れるという)
(青年にとってのその差とは、恐らく精神的な面に多く出てくるのだろう)
(挫けぬ、強さ。)
(屈さぬ、逞しさ。)
(撓まぬ、しなやかさ。)
(どれも得難いものであるが故に、青年の成長は祝福すべきものであった)
(今日に至るまで腐らず、こつこつと鍛錬を重ねてきた結果だった――。)
……見ているか。
見てくれているか、シャム。
俺は――――。
(と、そこで青年の言葉が止まる。)
(そして夜空を見上げた。その遙か遙か上にいる、白翼を持った人影を)
307
:
名も無き邪気眼使い
:2010/09/24(金) 22:47:56 ID:bJ9jYwSM
>>306
………
(ふわりと一度白い翼が動き)
(白いワンピースが風に揺らぐ)
(恥ずかしいから声は掛けない、しかし)
(見ていると言わんばかりに今一度白い羽が彼の元に舞落ち、そして―――)
(七色の光へと変わった)
308
:
ダレカ/戦士科1年/”異世界人”
:2010/09/24(金) 22:56:14 ID:qKKHL5zA
>>307
(返事の代わりに青年へと返されたのは、一枚の白い羽)
(ふわりふわりと舞い落ちるそれを、今度は逃がすまいと両手で包む)
(無論、失敗などしない。)
(しばらく手の揺りかごで揺れていた羽は、やがてオーロラのように輝き始める)
(また散ってしまうのかと手を閉じようとした、その刹那)
(羽は、七色の光となって青年の手から飛び出す。)
(散るのではなく、まるで弾けるように。)
(静かにたゆたう水面に綺麗な波紋を描く、水の滴のように。)
(そう。)
(アイツは素直じゃないヤツなのだ。)
(はいと言うところでいいえとそっぽを向き、いいえと言うところでははいと頷く。)
(そして、そんなところが、俺は――――。)
……腹、減ったな。
今日は奮発して、街の方へ食べに行ってみようぜ!
(夜空でたゆたう天使にそう声をかけると、いつものように闘技場を後にする)
(今日という日に、『第二段階』へと成長した青年。)
(それでも青年は青年のまま、いつもの笑顔を彼女に見せたのだった。)
309
:
名も無き邪気眼使い
:2010/09/24(金) 23:05:24 ID:bJ9jYwSM
>>308
(一歩遅れ、あまり音を立てずに彼を追いかける)
(偶然を装い合流するにはどうすれば上手く行くか、そんな事も考えながら。)
(端から見て滑稽な姿かもしれない。それは精一杯の照れ隠しなのだ)
(仕方ないからたまには素直に褒めてやろう、
恥ずかしくて言えないような言葉を言うために街で葡萄酒を買わせるのも良いかもしれない。
そんな事も考えながら、天使は青年の後を追い掛けた)
310
:
名も無き邪気眼使い
:2010/10/23(土) 21:46:18 ID:eroqOME.
屋上。
すでにその空間は彼にとって当たり前のようなものと化していた。
名も無い、いや名は確かにあるが、それを認めることが自身を崩壊させるようなそんな気がして。
うつろな瞳で空を見上げる少年は肯定と否定を繰り返しながら。
ただそこにいるだけだった。
311
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/10/23(土) 22:03:21 ID:Xv6hMqNw
「夜涼みにはもってこいな肌寒さだよねぇ。頭がよぉーく冷える、そう思うだろ、うん」
夜の闇に紛れられずに白く浮かんだ白い男が、なにか語る。
その言葉も、どこか浮かんでいる。
312
:
名も無き邪気眼使い
:2010/10/23(土) 22:07:11 ID:eroqOME.
>>311
言葉が聞こえ、反射的にそちらを向く。
しかしその瞳はどこか幻想を見ているような、そんな感じで。
フレストはこの少年の体、器を見たことはあるが、彼のことだ忘れている可能性もある。
少年はか細い声を出す。
「……そう、ですね……」
313
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/10/23(土) 22:17:54 ID:Xv6hMqNw
>>312
――虚ろ。
フレストが少年に感じた印象は、そういったものだった。
ただ、少年に見覚えがあるか、ないかは、
「そうですよー。うむ、えーっと……。ダレだっけ?」
――やっぱり、分からない。
314
:
名も無き邪気眼使い
:2010/10/23(土) 22:21:41 ID:eroqOME.
>>313
「あなたも、僕を知っているんですか……?」
ゆらりと顔を揺らせながら話し始める。正直不気味だ。
「僕自身もわからないんですよ。まぁ少し前に僕は狩魔という名前だと聞かされましたが……」
少しためらいがちに、そう言った。
315
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/10/23(土) 22:37:11 ID:Xv6hMqNw
>>314
「狩魔……ね。うん」
少年の持つ危うげな雰囲気に、知らず眉をひそめる。
その危うさが、割れもののようで、下手に弄るのはためらわれた。
「そう言われたなら、そうなんじゃないんかねぇ。って、俺は思うんだけど……」
316
:
名も無き邪気眼使い
:2010/10/23(土) 22:48:07 ID:eroqOME.
>>315
ワレモノという言葉は実にこの少年を表しているだろう。
今はとにかく、過敏であるから。
「狩魔聖斗、というのが僕の名だと。確かにそう言われましたよ……」
そういいながら少年は震えだす。
そして両腕で自分の体を抱きしめる。
「けれど!それを認めてしまったら僕が僕でいられないような気がしてっ!それでっ!それで……」
そして少年はだらんと腕をぶら下げ、顔を下に向けた。
317
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/10/23(土) 22:58:04 ID:Xv6hMqNw
>>316
「………。」
困った。
ちょっと触っただけだと思ったが、突いちゃいけない場所だったらしい。
「そう、なのか……。うむ……」
これは困った。
318
:
名も無き邪気眼使い
:2010/10/23(土) 23:01:52 ID:eroqOME.
>>317
存在に関することならば、おそらく勝手に想像を膨らませ始めるだろうきっと。
であるからしてこの少年を扱うことは普通難しいことであろう。
悲哀の声で、少年は男に問いかける。
「僕は……どうすればいいんでしょうね……そうだ、いっそこの世から消えてしまえば……」
いろいろと、危ない方向に話を広げ始めたようだ。
319
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/10/23(土) 23:20:01 ID:Xv6hMqNw
>>318
「……うぉーい。それはそれで、素敵に愉快な意思表示だけども、とりあえずそういったフラグは一端封鎖して別ルート探そうぜ」
ほんの少し、場の空気を和ませよう
そういった考えに至ったのに出てくるセリフは……どこか浮いている。
320
:
名も無き邪気眼使い
:2010/10/23(土) 23:21:55 ID:eroqOME.
>>319
「別ルート、ですか。あるのならそれを歩みたいのは確かですね……」
とりあえず、校舎から飛び降り、なんていうことにはならずにすんだようだ。
321
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/10/23(土) 23:41:48 ID:Xv6hMqNw
>>320
「うん、そのほうが良い」
良かった。と一息吐く。
しかし、このままにしておけば即座に逆戻り……なんてことになりかねない。
「んじゃー、最初に……自分の名前でも決めたらどうだい?」
とりあえず、そんな事しか浮かばなかった。
322
:
名も無き邪気眼使い
:2010/10/23(土) 23:49:18 ID:eroqOME.
>>321
「……え?」
男から聞かされた言葉に、思わず聞き返してしまった。
だってそれは、意外にも少年の中では盲点だったのだから。
「そうか、そうだったんだ!名前がいやなら違う名前を"僕自身"が決めればよかったんだっ!」
にこりと急に笑顔になって。
こらえきれずにあふれ出る笑い声をとめようにもとめられなくて。
「ぷ、あはっ!あははは!こんな、こんな簡単なことだったなんて!ははっはは!!」
今までの自分が何だったのか。ただ悩むだけで何一つ見出せない愚か者で。
そんな自分を嘲る様にも、ただただ嬉しくて笑ってる様にも聞こえた。
「……ありがとう、ございます。なんか簡単に解決しちゃいました……」
ようやく収まると、そのまま微笑みながらお礼を告げた。
323
:
フレスト
◆wwSIP/sOq6
:2010/10/24(日) 00:07:30 ID:eclqn9tA
>>322
「……ッ!?」
驚いた。
いきなり、少年が笑いだしたことに驚いた。
「……お、おぉ。そりゃ、良かったな」
さっきまでの様子と打って変わった少年に、戸惑いつつも言葉を返す。
少年の振る舞いに、陰りが晴れた清々しさを見て、満足した。
そして、たぶん。
今、この場に自分は必要無いだろう。そう、白い男は思った。
少年の名前は、少年自身が決めなければ意味がないのだから。
「んじゃ、良い名前決めろよな」
去り際にそう言い残して――瞬きの間に消えていた。
空間転移術式の類いだろう。
しかし、すでにその跡形もない。
324
:
狩魔 聖
:2010/10/24(日) 00:17:44 ID:LCtREK6s
>>323
「……ありがとうございました、本当に感謝します」
そうして男はその場から消え去ってしまった。
「名前か……といってもこういうのよくわからないし……」
少し考え込んでいた少年であったが。
何か考え付いたのか、思い切り顔を輝かせながら。
「よし!僕はそう!聖斗じゃない!僕は、僕は聖(ひじり)だッ!!」
「僕の名前は狩魔 聖 だあああああああああああああ!!」
少年は学校の屋上から、自らの、自分で決めた"名前"を思いっきり心から叫んだ。
名も無き一人の少年は、自分の足で、その最初の一歩を踏みしめたのを実感したのだった。
……他人が聞いたらおそらく元の名前とあまり違わないといいそうだが……
というより、正直はた迷惑であった。
//お疲れ様でした!またよろしくおねがいしますね!それではー
325
:
名も無き邪気眼使い
:2010/11/28(日) 20:47:30 ID:tkADN5wc
光のあまり届かぬ薄闇の中。
一人の少年がふらふらとどこを行くわけでもなくうろついている。
その辺の木を眺めたかと思えば突然しゃがみこんでみたりと結構忙しない。
326
:
名も無き邪気眼使い
:2010/11/28(日) 22:20:18 ID:tkADN5wc
「……アイツが力を持ち始めた」
「といっても、本当、僅かばかりの力だけどね」
ぼーっと突っ立っている少年は呟く。
「あのまま、消えちゃうと思ってたんだけどナー?」
「マァ、イイヨネ? どうせボクの行動を阻む事なんてデキヤシナイ」
「問題はやっぱり、ココの人たちカナー?」
何のことでもない、ただ面白みのないことを語るように。
音を発する。
「でも、アイツは、使える、かもね、イロイロ。 けど」
「アノ……カルマだけは、絶対に、その血を、縁を、スベテ……ホロボサナイトネ」
憎悪。
その感情を一瞬ばかり吐き出した少年は、そのままその場から去っていった。
327
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
328
:
魅火/読心学科1年
:2010/12/29(水) 22:04:59 ID:eg3hghuQ
「はぁ…前回ここに来たのが去年の9月か〜」
黒いツインテールを揺らす背の低い少女。つり目は気の強さを表しているようだ
「あんま変わってない…
みんなも、まだ居るのかな…?」
そんな事を考えながらキョロキョロしている
329
:
魅火/読心学科1年
:2010/12/29(水) 22:26:44 ID:eg3hghuQ
「うぅ…誰も来ない。べ、別に寂しくなんかないもん…
寒いから帰ろ」
と、呟いて寮に帰る
330
:
刻嗤の狗
:2010/12/31(金) 22:56:15 ID:eIGRfAEI
……ばうっ。
(今宵も一声、狗が鳴く)
331
:
狩魔 聖
:2011/01/18(火) 20:30:39 ID:C4XeKJCE
ここは屋上。
そこに一人の学ランを着た少年が俯せに倒れていた。
時折体が動いていることから死んでいるわけではないようだ。
332
:
狩魔 聖
:2011/01/18(火) 21:49:00 ID:C4XeKJCE
「う、うぅ……」
唐突に少年がうめき声を上げると、ゆっくりと起き上がる
そしてきょろきょろと周囲を見回し
「はぁ…今度は屋上なのか…」
そういって、深いため息をついた
333
:
狗
◆ZwSFISyT06
:2011/01/25(火) 22:52:58 ID:S2oJffQM
(邪気眼大学掲示板)
(色々な掲示物が貼り付けられて混沌とするがこの時期になると……)
……体験、入学……。
ククク、そうか……来たか、とうとう来てしまったかッ!?
アガ アガ
昂 ッてきた、昂 ッてきたァアアッ!!
フハハッ、クッハハハハハハハ!!!
(……そして、こんな雰囲気が伝播していくので、ある?)
334
:
ダレカ/戦士科1年
:2011/01/26(水) 21:37:02 ID:LZGGJ1Z6
【掲示板】
『体験入学シーズン、到来』…?
何と言うべきか、異世界でもやることってのはさして大差ねえんだな。
(邪気眼大学掲示板)
(派手なレトリックが目を惹く、新入学生向けの宣伝ポスター)
しっかし、もうすぐ新年度か。
この世界に来て色々あったけど、遂に俺にも後輩が出来ると思うと……胸が熱くなるな。
一体どんな奴が入学して来るのか、楽しみだぜ!
…その前にまず、後期試験を無事に突破しなきゃ何も始まらねえんだけどな。
ちくしょうッ、【地下迷宮第Ⅰ層踏破】って何だよォォ!!
335
:
名も無き邪気眼使い
:2011/03/20(日) 22:43:06 ID:W0OqqVIw
大学正門前。
昼にしろ夜にしろ、人通りの絶えぬ場所。
「……へぇ」
その人物は外から来た。
敷地と外界とを区切るライン、その淵に立ち―中央なので邪魔なことこの上ない―ざっと中を見回して、
「”邪気眼大学”。
いきなり貴方は合格しましたーとか手紙が来るからどないなトコかと思えば」
強い風に揺れるミニのプリーツスカートを押さえ。
被ったニット帽を軽く直して、
「何やもう、大変そうな場所やな」
踏み入れた一歩は軽い音がした。
336
:
名も無き邪気眼使い
:2011/06/03(金) 22:12:48 ID:VsXcbGag
夜の校庭で白線を用い、儀式のような行動をする小柄な少女が一人
「破壊神を破壊せしモノよ、我が前に現れその力を振るわん」
『ゆうて いみや おうきむ
こうほ りいゆ うじとり
やまあ きらぺ ぺぺぺぺ
ぺぺぺ …
"ふっかつのじゅもん"は、夜の闇に低く響く
337
:
名も無き邪気眼使い
:2011/06/07(火) 21:59:48 ID:T5aIjrDs
何だこれは―――!
大昔の口承に伝わる反魂の呪文、蘇生魔法の術式パターンだと!?
だが使い手は古に滅びたはず……。
クッ、腕が疼く!
338
:
名も無き邪気眼使い
:2011/12/06(火) 17:34:32 ID:ves9PX3E
禁術の気配か
良いぜ、俺たちの出番ってことだろう?
339
:
虚無科の学生
:2011/12/16(金) 20:54:33 ID:6FcQXuZE
外灯が照らす道に落ちた落ち葉を箒で掃いている男がいる。
「ふー、寒くなってきましたね。
今年もそろそろ終わりかなー。」
闇夜に箒のすれる音が響き渡る。
夜は更けていく。
340
:
虚無科の学生
:2012/07/12(木) 00:22:27 ID:OwIh.ZNY
学内に設置してある、すでに使われなくなって久しい公衆電話ボックスの中に、1人の男。
すでに機能していないはずの電話に向かって会話をしている。
「そういえば金環日食があったようですが、そちらは何かありましたか?え?はあ、大変でしたね。…こちらは当日曇りで見えませんでした。」
「大学は平和なものですよ。ええ、観測者がいなければ事件はあって無いようなものです。まあ、実際に戦ってる私達からすれば相変わらずですけどね。」
「それでは、またの機会にお会いしましょう。
え?もう会うことも無いだろうって?またまたご冗談を。」
男が入っていた電話ボックスが、地面から生えてきたのか、はたまた空から降ってきたのか、零コンマ数秒のうちに巨大な杭状の物体に貫かれて砕け散った。
風が雨粒を受けて間もない青葉を揺らした。
「夏ですねぇ…。」
何処からか聞こえてきた男の呟きを残して。
341
:
名も無き邪気眼使い
:2012/11/07(水) 22:36:24 ID:8O/3XllQ
深夜。
正しく闇の中と読んで間違いはない時間帯に、動く影があった。
「うぅ……」
うめくように声を上げて、小柄な影は進む。
ただしその歩みは不規則だ。真っ直ぐ進んでいたかと思えば急に元の道を行き、分岐では右へ少し行って戻って左へと。
立ち止まるのは数秒で、しかし直ぐに歩みを戻す。
まるで本格的に止まってしまったらいけないかのような、そんな気配すら纏っていた。
「……うぅ」
寒いなあ。
そんな事を思いながら、人影は暗い敷地内をうろついていた。
342
:
名も無き邪気眼使い
:2012/11/07(水) 22:52:56 ID:bSuGK7eY
何かが光った。
構内に広がる、否、広がり続ける重苦しい暗闇に、キラリと輝く。
空気中に光の粒が漂っている。
疎らに闇の中で瞬いて、しかし眼を凝らさねば分からないほど微か。
そして一度それに気付いたなら、光の粒子が漆黒の奥へ、更に奥へと続いているのが、ぼんやりと見えて来るはずだ。
誘うように、手招くように。
枯れ果てたように、待ち焦がれたように。
光はゆらりと闇に揺らめき、低回癖のようにうろつき回るその人影に行き先を示すだろう。
”この場所”に詳しい人間なら、光の導く場所に気付けるかも知れない。――――光を辿れば、いずれ地下遺跡に辿り着く。
343
:
名も無き邪気眼使い
:2012/11/07(水) 23:16:13 ID:8O/3XllQ
>>342
正直に表現するならば。
人影は純粋な「迷子」であった。
「……う?」
生来の物故か、はたまた不慣れ故か、影はもうかれこれ数時間迷子だった。
そこに文字通りの一筋――いや、一粒の光が舞う。
闇に慣れた目には、その淡雪は十分すぎるほどの目印だった。
「……」
どうしよう。
突然のこれは頼っていいのかな。
”あの”邪気大だしな。
逡巡は一瞬。
判断は刹那。
でも、道わかんないしなー……
人影の行動を決めた原因を語るならば、その一点に尽きた。
よし、と気合を入れ直し、道標を追う。
344
:
名も無き邪気眼使い
:2012/11/11(日) 22:47:15 ID:y63Zsmbo
「……う?」
あれ、と疑問を思う。
光の標を追ってきたはずなのに、周囲がまた見慣れぬ光景になっている。
「…………」
そもそも光を追えば門まで戻れる、などそんな保証はどこにもなかったのに。
道が分からないからという理由で追っていたのに。
途中から、これについていけば帰れる!などと――どこで混ざったのだろうか。脳内か。そうか。
「……広大な敷地の馬鹿……!!!」
不安と疑問とその他諸々で呻いていた声が、現状にツッコミを入れた瞬間だった。
345
:
名も無き邪気眼使い
:2013/05/05(日) 23:47:58 ID:MNMkTcC.
だが!
わたしは!
あえて!
こんなところにいられるか!
「―つまりはどういう事だってばよ、なんだこの声」
お目覚めの時間だ、十分惰眠は貪ったろう?
「…何の事だ?いや、そもそも何なんだお前」
さぁて、ね
目覚めを告げる天の声さ
「勝手言いやがって、姿も現さねーで」
すがたがなくたっていいじゃない、てんのこえだもの
「…うっせ」
346
:
谷津崎スサノ
:2013/05/06(月) 00:42:17 ID:1ijrcke.
じゃら。
「――――よっくわっかんないけど、何?誰か、いんの?」
唐突に。
それまで何も、何の音もしなかった闇の中から、鎖の擦れ合う音が鳴った。
同時にするのは少女の声。
状況を楽しむかのような、それでいてひどく退屈そうな。
そんな、感情の読めない声音だった。
347
:
名も無き邪気眼使い
:2013/05/06(月) 00:53:48 ID:oklH7MZc
「いるこたァ…いるぜ、誰かさんがな」
唐突に現れた声に驚く様子もなく、そして声の方を振り向くでもなく答える男
背格好から見ておそらく二十歳前後だろうか
夜空を見上げ、屋外に佇む男はただひとり
彼に聞こえていた「天の声」はもういない・・・
348
:
谷津崎スサノ
:2013/05/06(月) 01:02:18 ID:1ijrcke.
「あ、そ。誰かさんなら、アタシも名乗らなくていいね?」
名乗るのは面倒なんだ、と声は言う。
次いで闇の、影の中からその姿が”引き抜かれた”。
声こそ少女だが、男性の平均身長に届こうかという背丈。
この寒暖の差が激しい時期に上は作務衣に下はスパッツで、季節感ガン無視の様相。
何より、
「で、アンタこの大学の人?
アタシ、ちょっと色々提出にいかねーといけないんだ」
すらりとしなやかに伸びる手足。
そこには、何重にも巻きついた鎖と、物々しい枷が嵌められていた。
「もしそーなら、サクッと事務室とか。エライ人がいるとこ、教えてくれるとうれしいなぁ」
何処からともなく取り出した封筒を持ち。
ベリーショートの髪を揺らして、彼女は笑う。
349
:
名も無き邪気眼使い
:2013/05/06(月) 01:24:15 ID:oklH7MZc
「そーおそ、誰かさんなんていくらでもいるしなッと」
青年はようやく振り向き、声の主と手にした封筒に目をやる
「あーー、事務室ってどこだっけ…あそこも結構フラフラしてんだよなー」
軽く頭を掻きながら少し困った表情を青年は浮かべる
「とりあえず最近静かだったから、入り口付近には無いハズだから探すしかナイ
あとおエライさんがいる所は俺も知らん。つまり誰かさんは何の役にも立たんという事だ」
結局青年は苦笑を浮かべて、肩をすくめただけだった
350
:
谷津崎スサノ
:2013/05/06(月) 01:38:08 ID:1ijrcke.
手を下ろして、また、じゃら、と鳴る
重そうだが、彼女は一切気にしていない。
「……あのさ、事務室ってさ、うろつくもんだっけ……?」
アタシの常識がおかしいんだろうか――と、笑顔がひきつった。
だがここは邪気眼大学、世の一切の常識が通じないと考えて問題はない場所だ。
だからこそ、気合を入れ直す。
「そっかー、残念だなあ。そんじゃーまあ、気楽に探すとするよ。
役に立たない?わかんないってことが分かっただけ役に立ったじゃないか」
懐に封筒を謎収納して、一息。
「――で、アンタ、こんなとこで何してんの?」
351
:
名も無き邪気眼使い
:2013/05/06(月) 01:48:13 ID:oklH7MZc
「別にウロつくモンじゃーないさ、タダ浮かんだり沈んだりは…するな。
用がある奴の前には現れるし、仕事が無けりゃあ姿を消す。そういうところだ、アレは」
実際、用がある時に迷ったコトねーし、と事も無げに付け足し、青年は笑う
「んで俺?俺は―なんだろうな。起こされた、としか言いようが無いねェ
特に何もしてねーとこにアンタが声かけてきただけさな」
352
:
谷津崎スサノ
:2013/05/06(月) 02:01:09 ID:1ijrcke.
「……アタシ、用があるんだけどなー」
なんだかむっとして、ちょいちょい鎖を弄る。
目の前のこの男にぶつけても何の意味もないのは分かっているので、そこら辺は我慢だ。
「起こされた?
アンタ、この大学の守護者とか、そんななの?
もしそうなら、アタシを今ぶっとばすのは勘弁しといてよね。こう見えて編入生なんだから」
一応、彼女は編入生だ。
もっとも入学試験に間に合わなかったから、どうにかならないか掛け合ったらそうなっただけで、実際には新入生と同じなのだが。
ただ、もしかしたらレアなシステムかもしれないので、ゴーレムだとかその辺にはわからないのかもしれない。
そう思って、彼女は、とりあえず。構えではないが、半歩だけ右足を引いた。
353
:
名も無き邪気眼使い
:2013/05/06(月) 02:14:46 ID:oklH7MZc
「くはは、まぁ俺に声かけちまったのが運の尽きかもな
とりあえず自力でじゃないと多分みつかんねーからさ、もう諦めずに行くしかねーわ」
ムッとしている彼女に軽く笑みを向ける男
「ってぶっ飛ばすって物騒でいやがりますね。
おっさんタダの学生よ?守護者なんてめっそーもないw
ただなんか、変な声に起こされたのさ『今がその時だ』ってね。
幻聴じゃなければだけど、頭おかしい人だよなーコレじゃあ…」
男は彼女の警戒のような動きを特に気にする様子も無く、ひとつ息をついて自嘲気味に呟いた
354
:
谷津崎スサノ
:2013/05/06(月) 02:27:59 ID:1ijrcke.
「……あ、そ。
全く、この大学は本当に規格外だよねえ。世界中のどこにもこんな場所ないよ」
笑みを向けられて、つられたか彼女も笑う。
「学生……?」
学生なら先輩だ。
先輩ならぶっとばすわけにはいかない。家とは違うのだ。
だから、引いた足を戻した。
「なんだ、先輩なら早く言ってよねえ。警戒して損した。
アタシにはそんな声聞こえなかったけど、聞いたんなら聞いたんじゃないの?
それでいいじゃないの。アンタが何をするかどんな人かなんて、アタシにはわからないしねっ」
にっ、と歯を見せる笑みを浮かべる。
自嘲気味な呟きも、彼女にとってはあまり気にするところではない。
なんせ、神の声が聞こえるだなんて、トチ狂った知り合いもいるのだ。今更変な声が起こしてきたなど、彼女にとってはなにするものか、である。
それよりも、今重要なのは。
「じゃあ、アタシ、事務室探しに行くことにするよ。
とっとと書類出さないと、気持ち悪くて仕方ないわ」
それじゃあね、名も知らぬ先輩さん。
そう呟いた彼女は、無造作に数歩を歩んで、
じゃら。
鎖の音が大きく鳴ったときには。
屋上に、彼女の姿はもうなかった。
355
:
名も無き邪気眼使い
:2013/05/06(月) 02:56:09 ID:oklH7MZc
「おーう、がんばれよー。まぁすぐ見つかるさー」
再び笑みを作り、男は手を振り彼女を見送る
「さて、よくわからんが寝起きは上々…ってトコロかぁ?
出会いもあって、悪くない。さてさて…」
ひとりごちて、男もその場を後にする
彼の背中は、再び見られる事があるのだろうか、それはきっと天の声のみ知るものである
356
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
357
:
名も無き邪気眼使い
:2013/05/17(金) 20:13:29 ID:CDrCq.kM
(ぐずり)
(ぐずりぐずり)
(強い水気と粘性を思わせる音)
(キャンパス中央で幾棟も屹立する学舎群から、放射状に伸びた舗装路の一つ)
(――そこに、暗紫色の腐泥が這い回っていた)
(魔物のような異形)
(しかしやがて柱のように直立し)
(人間の輪郭を象った次の瞬間、泥が解け落ち――中から、10代と思しき少女が現れた)
(ドロワーズが特徴的な、黒いシックのゴスロリ服を纏った)
(燃えるような紅髪の娘)
ふぃー。再構成、無事成功……、と。
(ふう、と安堵の溜息をつく顔は、透き通る白い肌)
(白皙というよりも)
(むしろその肌質は、死人の蒼白じみて)
まったくもおー!
校門がガチガチに錆びついちゃって開かない、なんて聞いてなかったわよう!
これも入学試験の一つなわけ!?
信じらンない!
ブロークンウィンドウ効果って知らないの!?
環境整備の不徹底は治安の悪化を招く、ってお師匠が言ってたわよ!
(可愛らしい怒気を滲ませ)
(ツインテールに纏めた紅髪を揺らしながら)
(底の高いブーツで舗装路を苛々と叩き、真ん前に見える一際大きな学舎棟に向かって怒鳴り散らしている)
(要するに―――騒がしい新入生が現れた。例年恒例のことである)
358
:
名も無き邪気眼使い
:2013/05/18(土) 10:56:06 ID:6y31DqN6
ageておこう
359
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
360
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
361
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
362
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
363
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
364
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
365
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
366
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
367
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
368
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
369
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
370
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
371
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
372
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
373
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
374
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
375
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
376
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
377
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
378
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
379
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
380
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
381
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
382
:
<管理者により削除>
:<管理者により削除>
<管理者により削除>
383
:
黒髪の女性
:2013/09/04(水) 23:14:26 ID:kAIYxITg
屋上に黒髪短髪の女性がいる
じっと星をながめている
『船長、私、この大学で上手くやっていけるでしょうか?』
そう、ひと言つぶやいてフェンスにもたれる
384
:
黒髪の女性
:2013/09/04(水) 23:48:11 ID:kAIYxITg
うーん、と伸びをする。
『そろそろ寝ましょう。』
そう言って、女性は屋上から立ち去った
385
:
黒髪の女性
:2013/09/05(木) 22:26:36 ID:.nQ.SQ4s
『ふう』
大きな紙袋を持っている女性が近くのベンチに腰をかけた。
紙袋の中身は、教材のようだ。
おそらく転入したてなのだろう。
『私としたことが迷ってしまうなんて。』
迷子のようだ
386
:
男
:2013/09/05(木) 23:00:48 ID:t7n0YZz6
「ここが大学か、ようやく到着だな」
編入はしていたが今までこの場所が分からず訪れるのは初めてである
「しっかしでかい建物だ…夜だと言い様も無く不気味だな」
外観からから漂う異質な雰囲気に若干飲まれる
こんな場所に通うと考えると気がまいってくる
「まぁ…今は夜だし昼間に見れば素敵な場所かも、うんうん」
「今日はもう遅いし帰って寝るか、場所も分かった事だし」
振り返り着た道を戻る
まだこの雰囲気に慣れず本能的に離れたくなったのだ
387
:
白衣の女性
:2013/09/05(木) 23:02:50 ID:1PwbaXRs
>>385
「あらあら、迷子?聞こえちゃったわよー?」
研究者のような白衣を身に纏った若い女性が声をかけてきた
楕円のメガネの奥にはやさしそうな笑みをたたえて
388
:
黒髪の女性
:2013/09/05(木) 23:02:57 ID:.nQ.SQ4s
>>386
『あら?どなたかいらしゃるんですか?』
黒髪短髪の女性がベンチに座っている。
389
:
黒髪の女性
:2013/09/05(木) 23:04:57 ID:.nQ.SQ4s
>>387
『はい!私、この度占術科に入ったルーランというものなのですが、買い物をしていたら、迷ってしまって』
ベンチから立ち、お辞儀をする。
390
:
男
:2013/09/05(木) 23:14:38 ID:RUX6ELIk
>>388
「はい?」
その場から離れようと歩きだしたと同時に声をかけられたような気がし振り向くと
>>388
と
>>389
が話している様子が目に入る
「あ、俺じゃなかったんだ…何反応してんだ俺、恥ずかしいー」
と小声で呟きながら恥かしそうにまた歩き出す、逃げ出すように
すいません、もう遅いので今日はもう寝ます有難うございました
391
:
白衣の女性
:2013/09/05(木) 23:16:07 ID:1PwbaXRs
>>389
「あら、ご丁寧に…センジュツ科?占いの方の?」
お辞儀を返したあと、アゴに指を当てて首を傾げる赤毛の女性
392
:
黒髪の女性
:2013/09/05(木) 23:22:05 ID:.nQ.SQ4s
>>390
『あ、なんだか悪いことしちゃったかしら?』
//おやすみなさいー。気にせずまた、ゆっくりしていってね!
>>391
『はい。占いの方です。』
片手には、地図を持っているようだ。
393
:
白衣の女性
:2013/09/05(木) 23:28:24 ID:1PwbaXRs
>>392
「ならウチの学科じゃない?私は占術科准教授のイゼッタ・ヨハーゲンよ
貴女は…ルーランさんね。どこに行きたいのかしら」
394
:
ルーラン
:2013/09/05(木) 23:31:39 ID:.nQ.SQ4s
>>393
『まあ!偶然ですね!よろしくお願いします!』
またお辞儀をし
『この時間ですし、危ないので部屋に戻りたいのですが、この大学広くって。
部屋は、ここです。』
イゼッタに自分の部屋の描かれた地図を見せる。
395
:
イゼッタ・ヨハーゲン/占術科准教授
:2013/09/05(木) 23:47:57 ID:1PwbaXRs
>>394
「うん、よろしくねー。
…まぁ、そうねぇ、ホンッとこの大学異様に広いし、遭難話にも事欠かないし…」
んー、と目を細めて考える素振りをしながら答え
「あぁ、寮かしら。大体案内してあげられるけど、すぐ行く?」
396
:
ルーラン
:2013/09/05(木) 23:51:39 ID:.nQ.SQ4s
>>395
『遭難・・・しそうですね』
普通の大学ではないと、改めて思う。
『はい、寮です。そうですね、荷物もありますし、すぐ寮に行きたいです』
もうすぐ、日も変わってしまう
397
:
イゼッタ・ヨハーゲン/占術科准教授
:2013/09/06(金) 00:00:07 ID:flY2Bj7s
>>396
「迷わないように気をつけないと本当に危ないからねー。
そう、じゃあ行きましょ、ついてきて頂戴。」
手招きして少し歩き、離れた位置で振り返り微笑んだ
398
:
ルーラン
:2013/09/06(金) 00:08:18 ID:K.4UBdfo
>>397
『ありがとうございます。』
イゼッタの後ろをついていくように歩く。
『うーん、イゼッタ先生、以前どこかでお会いしたことありませんか?
いえ、人違いかもしれませんが。昔、船長がお世話になった人と似ていまして』
きっと人違いである
399
:
イゼッタ・ヨハーゲン/占術科准教授
:2013/09/06(金) 00:23:23 ID:flY2Bj7s
>>398
「船長?一時期お船に乗ってた事はあるけど…
知り合いと言えばリボくんくらいかしら」
てくてくと歩きながら
400
:
ルーラン
:2013/09/06(金) 00:29:37 ID:K.4UBdfo
>>399
『そうそう、船長の名前はリボルトって言って・・・』
そこでハッと気づく
『やっぱり!私、リボルト船長の船に乗っていた船員なんです。
船長が、この大学にお世話になった方が居るからと、勧められて入ったのですよ』
うきうきしている。そろそろ寮が見えてくる
401
:
イゼッタ・ヨハーゲン/占術科准教授
:2013/09/06(金) 00:37:36 ID:flY2Bj7s
>>400
「え、あ、へーー、そうなんだ。
懐かしいなー…って何?つまりその方は私になるわけ?」
歓心し、過去に思いを馳せ、そして意外そうな表情へと、その動きはめまぐるしく変わる
「うーん、詳しいこと聞きたいけど、今度の方が良さそうね、ちょうど着いたし」
話している間に、指定の寮までついたようだ
402
:
ルーラン
:2013/09/06(金) 00:42:06 ID:K.4UBdfo
>>401
『ええ、船長があったらよろしく伝えてほしいなと、言っておりました』
そして、寮の前
『そうですね、夜遅いですし。また、今度お話ししましょう。
助かりました。ありがとうございます。おやすみなさい。』
深々とお辞儀をしてから、寮へ入っていった。
403
:
イゼッタ・ヨハーゲン/占術科准教授
:2013/09/06(金) 00:47:08 ID:flY2Bj7s
>>402
「はーいおやすみー」
寮へと引っ込むルーランを見送るとイゼッタも踵を返す
「ふむ…リボ君とこの子かぁ…面白くなりそうかも〜」
上機嫌で自分の部屋へと帰っていった
404
:
山本
:2013/09/08(日) 20:58:46 ID:fkCo/1Zc
男が裏庭に設置されているベンチに座っている
「今日は校舎内を色々と見て回ろうと思ったんだけど…」
大学に目を向ける
視界に収まりきらない程の巨大な建物何処まで先が有るのか見た限りでは検討もつかない
本日は色々な学科や教室を見学するために訪れたが
「デカすぎんぜ、入る気も無くすわ…」
男はベンチに腰掛けた状態で足を伸ばしバタバタと振りながら吐き捨てる
まさに時間の無駄遣い
405
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/20(金) 14:00:42 ID:zgwpk81Y
(学生自治会<Students' Union>)
(異能学園都市―――邪気眼大学で採用されている、治安維持システムの一つである)
(端的に言えば、”学生の大学運営への参画を可能とする”)
(学習環境の改善、学内施設の拡充など、学生固有の権利に基づいた要求の実現活動が許されているのだ)
(具体的には、定期的に催される運営陣との直接交渉の機会などがそれに当たる)
(一般には、”邪気大公式生徒自治会”という肩書きを担う自治会・『邪気会』が、代理交渉者として学生に窓口を設けていた)
(――が。)
(現在、『邪気会』は無期限活動停止)
(邪気会直下実働部隊「十」が担っていた構内トラブルの鎮圧は、そのまま学内組織『風紀委員』に引き継がれる形となった)
(しかしもっとも重要な問題は、公式生徒自治会という窓口が失われてしまった一点)
(すると、どうなるか)
(無秩序に、学生自治会が膨大な増殖を遂げるのである。)
(邪気会が存続していた頃もその傾向はあったが、抑止力という箍が外れたことで歯止めが利かなくなったのだ)
(しかも、彼らが標榜する主張は、全てが学生として正当な内容ばかりではない)
(中には風紀を脅かす自治会も存在する)
(実際の破壊活動があれば、『風紀委員』が実働をもって鎮圧し、場合によっては活動停止に追い込むことも不可能ではない)
(一番厄介なのは、アジテーター)
(つまりは煽動活動である。生徒に大学の現状に猜疑の念を持たせ、使命感を植え付けて暴力的な行為へと駆り立てる)
(そういったグループに対して、『風紀委員』は性質上、基本的に為す術がない)
(今までは暗部組織『十一』が各勢力の調整に従事していたが、これも邪気会直下のグループであった為、現在では活動は公的に許されていない。)
(また、過去に起きたクーデター案件で暗部組織に対する疑問の声が各方面から上がっているのも痛打となった)
(ならば、どうするか。――――『悪意の第三者』が、手を汚すしかないのである。)
406
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/20(金) 14:27:56 ID:zgwpk81Y
(『悪意の第三者』――)
(校内機関が出動に足る理由が存在しない故に、一般には裁けない悪性因子の排除を行う個人、及び集団)
(誰から名乗るでも、名づけられるでもなく、そういう呼び名が一部で定着していた)
(ダークヒーロー、とでもルビを振れば、聞こえは良い。)
(やっていることは実質、善行かも知れない。)
(しかし、外聞からすれば『一般学生への傷害行為』という”悪意”に他ならず、処分が言い渡されても弁明はできない。)
(切り捨ての利く仕置人――。)
(リスキーな上に不遇という救いがたいポジションである。)
(馬鹿なお人好しなのだ、要するに。そんな決して報われない役目を買って出るような奴は。)
……ッたく。本当、救いがてェな。
(風貌は悪魔。)
(半身を炎のように揺らめき立つ影で覆った、赫髪の男。)
(薙いだ腕から紅蓮の業火が、ボォウ、とドス黒い煙を噴き上げながら爆発し、得物を手に襲い来る学生を一瞬で吹き飛ばす。)
(訓練された動きを見るに、戦士科の学生。悪魔は苦い顔をする。自身が在籍しているのも同じ学科だからだ。)
(顔なんて詳細に覚えてられないが、確か大規模な合同訓練で顔を合わせた気もする。)
(肉体再構成後の仕事が、まさかこのような後味の悪いものになるとは。)
(悪魔は溜息を吐き、視線を鋭くする。)
(彼らを『煽動』した、今現在、校内の何処かで蠢く勢力を睨み付けるように。)
(気絶する学生達の首元。濁った青紫に光るその紋章を、悪魔は仇敵の名を告げるように憎悪を込めて読む。)
『REBEL-C』……。
(邪気大内で不穏な動きをする「C」。)
(悪魔の知り合いなら、誰もが同じ連中を即座に思い浮かべるはずだ。)
(Canossa―――カノッサ機関の名を。)
本当に……本ッ当によォ。
百度はブチ殺されねェと気が済まねェらしィなァ……カノッサァァ……ッッ!!
(容赦はしない。)
(容赦をする理由がない。)
(悪魔は闇の中こそ領分なれば、潜む連中を根刮ぎ喰らい尽くしてやるは道理。)
(燃え盛る決意を新たに、悪魔は暗部の底へと進撃を開始する。)
407
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/20(金) 14:30:27 ID:zgwpk81Y
(暗がりの中、密やかに。異能者の宿敵・カノッサ機関との対決は、既に戦端を開いていた――――。)
408
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/21(土) 22:49:30 ID:5chhoc56
講堂裏。
昼などは弁当を手にした生徒達で賑わう、このちょっとした広場も、日が落ちればすっかり人気が失せる。
しかし、この時間になると月がよく見えると知っていた虎眼といえば、それ幸いと月光浴スポットとして活用している。
「今日も今日とて、くたくたにござる…」
近頃、妙に絡まれる。
元・邪気会副会長を倒し、名を上げたいという輩が後を断たないのだ。
以前にもそうした事はあったにせよ、復学してからは明らかに頻度が上がっている。
とはいえ虎眼も然る者、元・邪気会副会長の名は伊達ではない。
虎眼の風体に惑わされ、安易に戦力差を計り違えるような輩など、ものの数ではない。
刀を抜くまでもない遊びの範疇だが、そこは病弱を絵に描いたようなもやしっ娘、虎眼である。
こうも連日続くとなると、ちと辛い。
故にこうして吸血鬼の因子を活用し、月光を浴びて少しでも体力の回復に努めているのだ。
ここまでは良い。
しかし、そこは邪気大きってのアホの子、虎眼である。
「おぅふ…とはいえ、少し寒うござる」
風邪をひいて本末転倒コース一直線だった。
409
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/22(日) 16:42:02 ID:U7EhOniU
「邪魔立てを――!」
「俺達が、俺達なら、この大学をより良い方向へ導ける!」
「あまり失望させるな。邪気大に迫る危機を前に、見て見ぬ振りできる奴じゃなかった。お前は!」
「私たちはね? 私たちの通う邪気大を、もっと素敵な場所にしたいだけなの。今やらなきゃいけないことから目を背けるのは、いけないことだと思うわ」
「お前だって邪気大生だろ。なら、俺達の気持ちを何で汲み取ってくれねえんだ?」
「運営陣――腐敗の温床であった奴らと繋がっていた邪気会が潰れた今が絶好の機会なのだ! これを逃せば、革命の時は永劫訪れない!」
「あの黄金の化け物がおっ死んだのは、とっくに分かってんだよ!」
「恥を知れ、法人の犬が!」
「お前は敵だ!! 俺達、邪気大生の敵だ!!」
「暴力で何でも解決するのか? なるほどな、それがお前らのやり方かよ!」
「相手はたった一人だ! 俺達なら、邪気大生の俺達ならやれる! どんな敵が相手でも!!」
「潰せ!」
「「「 潰 せ ! ! 」」」
「「「「「「「「「「「「「「 潰 せ ! ! ! 」」」」」」」」」」」」」」」
う・る・せ・ェ。
薄ッぺらい借り物の御託をぶんぶんぶんぶん、響かねェんだよ羽虫共ォ。
(衝撃が地を揺らす。)
(悪魔が片足を煉瓦路に叩き付ける。)
(その動作の直後、ドゴオ、と紅蓮に燃える烈怒が一帯纏めて襲来した。)
カカカッ、カッハァッ、クカカカカカカッ!!!!
(商業区画の小道――夜天に悪魔の嘲笑が響く。)
(整然と路面に敷かれた煉瓦を乱雑に毟り取り、等間隔で並ぶ魔力灯を次々に赤熱して融解させる―――吹き荒ぶ熱風地獄の解放。)
(人間が軽く重力から引き剥がされ、宙に四肢を放り出す。)
(暴威の中、悪魔は赫髪を靡かせて君臨する。)
(半身を揺らめく漆黒の影で覆った不完全な受肉の姿であって尚、圧倒的火力は未だ健在。)
(そうして、多重に囲んで私刑を決行しようとしていた学生の群れを吹き飛ばし、悪魔はやっと心底からの溜息を吐いた。)
(さすがに疲れた。体力的にも、精神的にも。)
(現在弱体化しているとはいえ、意識のみを飛ばすよう手加減できたかどうか自信がない。まあ、あのノーコストで死者蘇生させる常駐保険医がいれば、大事になっても何とかなるだろうが。)
壊滅させた支部は十四……。
丸一日かけてこのペースじゃァ、ちと後手だな。根本的に方法論を見直さなくッちゃァならねェ。
―――それに。
(鼬ごっこだろう、と悪魔は結論する。)
(『悪意の第三者』として活動しているのは悪魔だけではない。)
(が、所謂不穏因子を排除しきったとして、それで事態が解決するかと言えば、首を傾げざるをえない。)
(怨念が怨念を買い、復讐が復讐を呼ぶ。)
(そういうルートも黒幕は当初から勘定に入れているだろうから、つまりは、その大元である黒幕を叩かない限り、この騒乱が決着することはありえない。)
(単純な「勝敗」だけでは最早どうにもならない、複雑化したマクロな問題だということ。)
(面倒くせェ、と悪魔は独りごちた。)
(だが、やるしかない。)
410
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/22(日) 16:48:37 ID:U7EhOniU
(それにしても――。
何故、あのクソ野郎の死が漏れてやがる?
不要な混乱を招くッてんで、お上の間で第一級機密事項として内々に処理。公表の時期をずらすッてことで落ち着いたはずだ……。
チッ。『元々神出鬼没な奴だから』、ッてンで、すぐには分からねェんじゃなかッたのかよ。
ッつーことは……リークか?
上層部の誰かがカノッサと繋がっていて、情報を持ち出しやがったンだ。
それを息の掛かった奴を通じて学生共に伝播させ、このクーデターを益々助長させてやがるって寸法だろう。腐敗してる、ッてのは完全に間違いじゃァねェな。)
クカカカ、なァるほどねェ――――ナメくさりやがッてクソがァッ!!
(抑えきれず激情に任せて振るわれた拳が、赤熱した中心で折れ曲がった一つの街灯を完全にねじ切り、切断する。)
(ひゅるん、と回転しながら夜空に消えていった。)
(それには目も暮れず、俯く悪魔の険しい形相が苦い感情に滲む。)
(面白くない。)
(このカオスは、ちっとも興が乗らない。)
(こんな下らない三文芝居のために、わざわざ手間かけて肉体を再構成したのでは、断じて、ない。)
……俺様の見通しが甘かったのか。
考慮するべきだった。
それとも、俺様が奴らをナめていたッてことなのか。
カノッサにも能ぐらいあらァな……『外から崩せねェ集団を崩すには、どうするか』。阿呆かよ、餓鬼でも解ける設問じゃァねェか……!
(反間計、連環計、隔岸観火、混水摸魚。)
(三十六計、基本中の基本。)
(『内通者を設置し、内側から崩す』――。)
(手を拱いている間に、カノッサに付けいる隙を与えてしまったということだろう。)
(内通者が誰かさえ分からない。完全に後手に回っていた。)
(思えば、あからさまな外部からの襲撃が絶えなかったのは、そちらに目を釘付けにさせておくための布石だったのかも知れなかった。)
(こっちが勝利に一喜一憂している間に、影から魔手を内側へ忍ばせていたのだとしたら。)
(情けない。)
(あれだけ多くの書から知識を得ておいて――涙が出て来る。己の不明を強く悔いずにはいられない。)
(それでも、その間にも事態は刻一刻と進行する。)
(今から分析しても詮無い話だ。)
…………立ち止まってる暇はねェ。
(やれることを、一つずつ、確実に積み重ねていく。)
(畢竟、それしかないのだ。)
(涙も拭わず、気を取り直す。思考の切り替えは悪魔の得意技だ。)
(手始めに悪魔は、たった今自らの手で吹き飛ばした街灯の上半身を回収しに行くことにした。)
(重量や切断面を考慮すると危険な落下物には違いないし、それで万一にも余計な怪我人が出てしまっては更に面白くない。)
(何とか中空を回っている内にキャッチできればいいが……少し無理があるか。)
(まあ、落下地点に人がいないことを祈ろう。)
(悪魔は背中に鋼鉄の双翼を展開――爆燃気によってジェット気流を生み出し、極熱で真っ赤に光る翼で夜空に緋の輝線を真っ直ぐに描く。)
(方角は―――講堂裏。)
411
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/22(日) 23:02:33 ID:vq1mkM3E
「宮本虎眼だな?」
鼻を垂らす虎眼を取り囲むのは、ざっと30人ほどはいるであろう生徒達。
その剣呑な雰囲気から察するに、雑談にやって来たわけでない事は火を見るより明らかだった。
「いかにも。して、あなた方は?」
刺激せぬよう、あくまで穏やかな声色で問う虎眼。
余程の魔人か間抜けでなければ、この状況下で取れる態度ではない。
「空白の三年間」で虎眼が身につけた必殺技、その名も「おとぼけ虎眼」である。
「元・副会長がいるとな、色々面倒なんだ。俺らの側につくか、でなけりゃ邪気大のために討たれてくれ」
リーダー格と思しき男の言に、虎眼は内心むむむ、と唸る。
アホだアホだと言われる虎眼も、名を上げようと挑んで来る連中の中に、きな臭い輩が混じっている事は察している。
これまでのは情報収集のための当て馬、今がまさに本番という事だろう。
どうしたものか、と虎眼は頭を捻る。
彼らの側につくというのは論外だ。
その選択肢は虎眼にとって、他ならぬ会長への裏切りに他ならない。
かと言って、討たれるというのも御免こうむりたい。
半吸血鬼と言えど討たれりゃ痛いのだ。
まして虎眼の場合、復活までにやたらと時間がかかる。
そんな事になれば、また鵺やスピット・ファイアに何を言われるかわかったものではない。
(となれば、二つに一つ)
哀れみを誘う声で許しを乞うか、まとめて全員ぶっ飛ばすかだ。
内なる虎眼、即ちナイス虎眼とファッキン虎眼が討論を繰り広げる。
『無闇に刀を抜く事はない。学び舎を同じくする生徒ではないか、ここは穏便に云々』
『何を戯けた事を。何もわかっていない連中だ、格の違いを教えてやろう云々』
虎眼がそうしている間に痺れを切らしたのか、集団の一人が瞬間的に距離を詰め、虎眼の車椅子を蹴落とす。
転げ落ちた虎眼は余裕綽々で受け身を取るが、見るからに病弱な娘が地面を這いつくばる姿は、なんだかとってもイケナイ感じだ。
(!これは…かなり惨め!)
瞬間、虎眼の脳内会議はハト派が圧勝した。
カラカラと空転する車椅子、地に伏せる自分、それを取り囲む悪そうな集団、悲壮感溢れまくりではないか。
「ひっ…ど、どうかお許しを…平に、平に…」
どこに出しても恥ずかしい、完璧な負け犬ぶりである。
その姿に、集団の中から「どうする…?」「私、帰って宿題やんなきゃ…」という声が、ちらほらと上がり始める。
虎眼な内心、虚しい勝利を確信したその時だった。
『いや、こいつ今日、3mはある大男ぶっ飛ばしてたじゃん』
『そういえば…』
『私達、騙されたっていうの!?』
『き、汚いえ…俺らの純真を弄んだってのかよ…!?』
あ、駄目だこれ。
虎眼は傍に転がる刀を拾い上げると、ジェノサイドの覚悟を決めた。
412
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/25(水) 03:17:21 ID:vmx0cXaQ
(――講堂裏。)
(車椅子から蹴倒され、よよよと軟弱な芝居を打つ剣鬼・虎眼。)
(その気になれば一瞬でグラム単位100円の格安食肉ミンチよりグロい姿にされることも知らず、不穏な空気を醸した学生の集団は彼女を取り囲んで騒々しく叫き立てる。)
(下手に割り込めば即爆発して暴動になりかねない。多分、第一級取扱危険物レベルの一触即発。)
(そんな講堂裏を、上空から見下ろす影があった。)
(燃える紅蓮色の髪を夜天に靡かせ、キャッチに成功した街灯の上半身を肩に担いでじっと地上の光景を見下ろしている褐色の男――)
(言わずもがな、赫怒の悪魔である。)
(彼は好奇とも取れる光を宿した瞳で、今まさにジェノサイドを決行せんと刀に手を添える虎眼に視線を意識して向ける。)
(他ならぬ彼女なら、悪魔に気付くだろう。)
(ひとまずアイコンタクト的なアレを送って、そのまま大人しくしているように要請を出す。)
(――はハァン。
なァるほど、テメェのとこにも来ていたか。
だがテメェが出る幕じゃァねェよ。剣気を収めな、ここは俺様がクレバーに場を収めてやるぜ。)
(そう目線で見栄を切って、任せろと胸を拳で叩くジェスチャー。)
(次に悪魔がしたことと言えば、腰を捩り、右手に掴んだ街灯の上半分を水平に持ち上げ、引き絞るかのように腕を後ろへ引くというモーション。)
(ベコォ、と街灯の支柱が握力で凹む。)
(どう贔屓目に見たってクレバーなことをしそうにない。)
(槍投げの要領で、ねじ切れた街灯の切っ先を向ける相手は、今まさに彼女を大勢で取り囲んでいる集団。)
(絶対クレバーじゃない。)
(悪魔は凶悪に口角を吊り上げて、)
(危ねェから伏せていな―――――ッッッとォッ!!!)
(ズドオッッ!!!)
(対艦砲でも発射されたのかという轟音を伴って、悪魔が腕を振り下ろす。)
(悪魔謹製の凶悪な慣性で加速する元・街灯の現・槍が、さきほど虎眼に降伏を迫っていたリーダー格の男のすぐ傍へ突き刺さる。)
(勢いよく。そりゃあもう勢いよく。)
(直後、集団が反応するより早く、ぼこおと地面が膨張した。)
(狙い澄ましたように、彼らの足下だけ。)
(つまり虎眼がへたりこんでいる地面を覗いてドーナツ状に膨らんでいる。誰が見たっておかしい。)
(まるでシチューの表面に張った牛乳の膜を気泡が破ろうとするように、巨大な力が今地盤を壊して這い出ようとしているかのように、地面は不気味に膨張を増す。)
(これはアカン。誰もがそう思った。)
(そして逃走にフェイズを移行するより早く、それは産声を上げた。)
(噴き上げた岩漿が、集団を吹き飛ばした。)
413
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/25(水) 03:17:58 ID:vmx0cXaQ
(無茶苦茶である。)
(鼓膜を突き破りかねない爆発音。)
(地下で熱された蒸気が爆発するように大気に満ちる。)
(真っ直ぐに夜空へと突き立った、ぎとぎととした粘性のマグマは都合七柱。)
(ささやかな光源たる月明かりを塗り潰し、禍々しい紅蓮の輝きで一気に講堂周辺の明度を押しあげた。)
(凄まじい極熱に全方位囲まれたら茹で蛸では済まなそうだが、虎眼の全身で水分が沸騰しそうな徴候は全く見られない。)
(普通熱や形状を自在に変形できる悪魔の権能――『地獄の業火』。)
(このマグマはその応用だ。)
(業火で岩石を融かして生成した岩漿の熱量を、間接的に操作している。)
(出来上がるのは、従来に比べて低温にも関わらず固形化しない奇妙な物体、という寸法だ。)
(とはいえ、ぶすぶすと何かが燃える怖ろしい音を立てて噴き上がるマグマの火柱に囲まれた日には、生きた心地はしないだろうが。)
(数十秒ほど経ち、怒濤が静かに収まっていく。)
(岩漿の柱はずぶずぶと、空けた穴にゆっくり引っ込んでいった。)
(持ち上げられていた地面もジグソーを埋めるようにすっぽり嵌って、ヒビや亀裂、撒き散らされた土石や粉塵以外には、虎眼が月明かりを浴びていた時の情景が戻っていた。)
(頃合いを見て、悪魔はすっくと虎眼の目の前に着地する。)
(その顔からは、まるで嫌なことがあったストレスを解消してすっきりしたような爽快感が満面から滲み出ていた。)
よォ。
本当の意味で「久しぶり」ッてな。宮本虎眼。身体の調子は如何ほどだァ?
(前回は蒼白い霊体での再会だった。)
(まだ半身ほど揺らめく影という不完全な状態だが、こうして受肉を果たしてようやくの邂逅ということになる。)
(不要とは思うが、悪魔は紳士的に虎眼へ手を差し伸べた。)
(悪魔なりのジョークのつもり。)
(相も変わらず戦意を刺激する不敵な顔で、再び旧友に出逢えた幸運を祝福した。)
414
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/25(水) 10:55:50 ID:A5ZNlFFU
(所詮は烏合の衆。腕の一本や二本も落とせば、たまらず逃げ出すでしょう)
何も命まで奪う気は無いが、手加減は得意ではない。
非常に心苦しいところだが、何人かにはかたわになってもらう他あるまい。
そう覚悟を決め、鯉口を切ろうとした瞬間。
気配が一人分増えた事に気が付いた。
(やや、あれはルビカンテ殿)
虎眼の頭上に疑問符が浮かぶ。
何故街灯なんか持っているのだ?
続いてルビカンテが任せろと胸を叩くと、疑問符は更にもう一つ増える。
一体いつからラッパーになった?
今は“KIZUNA”とか関係無いではないか。
何が言いたいのかサッパリ分からぬ。
あ、振りかぶった、なんか悪い顔してる。
え?“KIZUNA”じゃないの??
「ひゃわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
爆音、熱気、そして暴風。
調軽量級の虎眼は、吹き飛ばされぬよう必死で地面にしがみつく。
何が“KIZUNA”だ、あの悪魔!
車椅子が逝ったらどうする!?
なんの自慢にもならぬが、私にここから歩いて学生寮まで帰る体力は無いぞ!
「…体調なら、今まさに悪くなったところに御座います」
こんがり焼き上がった集団の臭いに顔を顰めつつ、悪魔を非難する虎眼。
それと同時に戦慄する。
たかだか一個の存在が、まるで自然災害そのもの。
その気になれば、自分諸共この広場を吹き飛ばす事など造作もあるまい。
「しかし、だいぶ輪郭がハッキリしてきましたな。その方が素敵に御座いますよ、ルビカンテ殿」
差し出された手を取り、よいしょと立ち上がる虎眼。
軽く周囲を見渡すと、ふむ、と一考する。
「して、いかが致しましょう?とりあえず救急車?」
415
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/27(金) 20:45:31 ID:oQWX2B.w
クッハハ、何だそりゃ。酔狂か?
こんな大味の一撃はむしろ斬ってくれと言わんばかりだぜ。テメェ相手にゃあ尚更な。
(体調が悪くなった、との言を戯れと切り捨てる悪魔。)
(よほど虎眼の力を戦士として信用に足るものだと確信しているらしかった。戦友としても、好敵手としても。恐らく――虎眼本人よりも。)
(戦いたい。刃を交えたい。)
(紅蓮に爛々と輝く両の瞳が、口を開かずともそう雄弁に語っていた。)
(こんな雑魚では食前酒にすら不足だと。)
(そう――悪魔が今回の一件において何より不満だったのは、兵の戦力が総じて脆弱であるという一点に尽きる。)
(戦闘の充足感がない。)
(それはつまり、血湧き肉躍る死戦を心から奉ずる悪魔にとっては無価値に等しい。)
(ただ不気味なのは、どれだけの支部を壊滅に追い込んでも、まるで蜥蜴の尻尾を延々と切り落としているような錯覚に陥るということだった。)
(黒幕はもっと深くに、事態の大深度に潜んでいるはずだ。)
(素敵との評に気分を良くした悪魔は、若干弾んだ声で、)
いィや、必要ねェ。
別にこいつらを野晒しにしてもいいッて話じゃァないぜ。……集中して辺りを確認してみな。
(悪魔は黙って指を差す。)
(その指し示す先は、講堂裏の屋根上。)
(生物の気配はしない。が、些細な異物感をそこに感じ取ることができるだろう。)
(そこには、電子工学部謹製の超小型高性能カメラが設置されている。正確には学園敷地内の許可された区域全体に。)
緊急治安対策。
コミュニティセキュリティカメラシステム、ッてヤツだ。
まだ試験運用段階らしいがな。
これまで治安維持に大きな貢献を果たしてた邪気会に代わる施策、ッてことで、上層部の一派が提案したもののようだぜ。
(その時、若い男女の二人組が虚空から現れ到着する。)
(風紀委員を示す腕章。)
(悪魔と虎眼にご苦労様です、と片手を翳して敬礼し、そこらで伸びている学生達の回収に向かった。)
(次々と虚空の穴に放り込んでいる。アポート系の能力者なのだろう。)
映像は中央管理室にライブで送られていて、有事の際には風紀委員に即通達。
このように迅速な出動が可能ッて寸法だ。
(賛否両論あるがね、と悪魔は小声が肩を竦める。)
(反対論、慎重論も数多くあるようで、現在経過を見ながら議論が進められている最中だという。)
あの馬鹿野郎が逝って、邪気会は無期活動停止。
同時に、今まで治安維持に大きく貢献していた実働部隊も停止。こいつが大問題になッた。
実際、外部勢力の侵攻とかの大規模なトラブルはともかく、揉め事や盗難被害とか、そういう雑事においては「十」がこそこそ頑張ッたみてェだからな。
ブロークンウィンドウ効果――小せェことを野放しにすりゃァ、必然的に治安はじわじわ悪くなる。
それを考えると、「十」の存在は大きかッた。
勿論、有事の際の戦闘力もな。
そこで上層部によって、
「十」頼みだった自治システムの大幅な改善と効率化が推し進められようとしてる訳だ。
一部の学生自治会から、何故自分達に任せてくれない、ッつー不満の声も上がってるとか何とか……ま、面倒くせェのさ、色々と。
(ハッ、と嘲笑みを浮かべる。)
(現状の滑稽さに対してか、それとも何か別のモノに対してか。)
(そういった背景が、クーデター騒動の混乱に一役買っていることも、まあ否定はできないだろう。)
(それが果たして正しいことかどうかは、いざ知らず。)
416
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/27(金) 22:58:13 ID:f5s1XKms
「そちらこそ。なんとかするくせに」
仮に虎眼とルビカンテが立ち会い、彼が先の技を放ったとしよう。
それに合わせて剣を抜いたところで、すんなり斬らせてくれるとは、虎眼には到底思えなかった。
無論、虎眼とて簡単に一本を取らせるつもりは無い。
驕っては元も子もないが、自身の実力を正しく認識するのは、戦士にとって必要不可欠な項目である。
適切な間合いで剣を抜いたなら、いかなる状況であろうと必ず自分の刃が先に届くだろう。
そのような確固たる自負心を持ちながら、それでもこの悪魔は一筋縄ではいかない。
虎眼には確信とも言える予感があった。
「こみゅ…よく解りませぬが、ともかく、この場は問題無いようですな」
最初の横文字を聞いて、理解する事を早々に諦めた虎眼は、おほんと咳払いを一つ。
誤魔化すようにキメ顔を作り、とりあえず現状の確認に頭を捻る。
「かつての“十”の活躍は私も承知して御座います。一応は元・副会長でしたので。して、この治安しすてむ?これならば成る程、あらゆる事態に対処出来るでしょう」
「しかし…」
現行の自治システムは、あくまで事後処置に過ぎない。
ましてこうしたシステムは、万事が恙なく機能して初めて意味を成すものだ。
このまま被害と混乱が広がれば、システムそのものが機能不全を起こす事も考えられる。
「…まぁ、何の権限も持たぬ今の私では栓なき事。貴方のように足を使う事も出来ぬ身なれば、こうして待ち構える他ないか…」
鵺に協力を要請しようにも、今の彼は責任ある立場だ。
無償でというわけには行かないし、そのための費用などあるはずもない。
もし未だ虎眼に権限があったなら、鵺の会社に捜査を依頼する事も提案出来たかもしれないが、一生徒に過ぎない今の虎眼ではそれも難しい。
「やはり、“十”が欲しいところですな。今のままでは手が足りませぬ」
417
:
1/3
:2013/09/30(月) 04:49:40 ID:nKdg1YrM
(悪魔は応えず、ただ笑った。)
(『弩級の破壊を際限なくもたらす超火力偏重型』)
(このように彼を評する者がいるが、それだけでは片面を捉えただけに過ぎない。)
(その真価とは多様なアプローチ――変幻たるフェイントを織り交ぜ、時には肉体の強度に任せて強引に罷り通る。)
(また、渾身で放つ致命の必殺をなお囮として本命の蹴撃を打ち込むなど、およそ常人の考え至らない、もっと言えば狂気の沙汰を思わせる戦闘法にある。)
(上の評価は、悪魔の中のもっとも目立つ一面に過ぎない。)
(更に言えば――外見、発言、挙動。これらの”記号”からそう相手に印象づけるように、悪魔が普段振る舞っているとさえ言える。)
(そうやって勘違いをしてくれれば、戦闘の際、相手の虚を突くのがやりやすい。)
(……だが。)
(どうにもここのガッコウの奴ら相手には、上手く行かねェわな。)
(例えば、甲のような、真っ向勝負で苦戦を強いられるほどの膂力の持ち主であったり。)
(例えば、鵺のような、悪魔よりも一手先を行く神謀鬼策を張り巡らせるトリックスターであったり。)
(この邪気大の生徒は一筋縄に通じた試しがない。)
(特にその中で、彼が最上級に警戒し、かつ最上級の期待を寄せている生徒の一人が――剛よくいなす柔なる剣の担い手、宮本虎眼。)
(こと戦闘において悪魔の審美眼は光る。)
(「なんとかするくせに」――――宮本虎眼はすでに、彼が仕掛けた”記号”のトラップを見通し、突破していた。)
(あァ、たまらねェ。)
(常在戦場。戦いは開戦より以前に始まっている。悪魔は心の片隅にいつも、轟と理性を灼き尽くす獰猛な戦意を潜ませる。)
(どうやら、隠し切れてはいないようだが。)
(連行は恙なく終了したようで、数分と経たずに風紀委員と学生達の姿は講堂裏から跡形もなく消えていた。)
(随分と効率的になった、と悪魔は鼻を鳴らす。)
(それは「秩序ある混沌」を仰ぐ彼にとって、つまらない、と言っているのと同義だが。)
(虎眼の瞳に走った懸念と危惧の感情に頷くように、悪魔は言葉を続けた。)
浄化政策と一緒さ。
この邪気眼大学を丸ごと整然とした”都会”にしようとしてやがる。
如何にもお上の考えそうなことだが……寄りによッてその方策が、この状況の悪化に拍車を掛けてる側面も否定できねェ。
要するに。
学生と大学の間に、摩擦が生じてンだよ。
その原因はカノッサの内部工作もあるが、一番大きいファクターじゃねェ。
『大学サイドと学生サイドの調整』を創設以来ずッと担ッてきた、邪気会の無期停止――――このことで生じた波紋が、でかすぎるンだ。
418
:
2/3
:2013/09/30(月) 04:50:55 ID:nKdg1YrM
不老にして不死、法と律を司る黄金の王……あのクソ野郎に、今思えば、責任と職務が集中しすぎていたンだ。
そして学生共は、『邪気会長』の存在をあまりに”信じすぎて”いた。
アイツがいるから最後には何とかなるだろう、ッてな。
それが現状の危機を招いた。
邪気会長は結果的に死亡。
邪気眼大学のシステムは十全に機能を果たさなくなり、カノッサの工作が一気に芽吹いたッてところか。
『無根拠な信頼(なんとかなる)』が存亡を揺るがせる――ッてのは確か、テメェの国の誰かさンが昔、同じようなことを言ッてたような気がするぜ。
(悪魔は皮肉げな嗤いの中に少しの悔いを滲ませる。)
(会長を殺したのは悪魔だ。)
(そこには勿論相応の経緯があり、何より死を望んだのは他ならぬ会長本人だった。)
(会長は邪気眼大学という巨大なシステムと一体になる、などと嘯いて、最期は全身を黄金の粒子にして砂のように崩れ去った。)
(だが、蓋を開けてみれば御覧の有様だ。)
(悪魔は常々思う――邪気眼大学は戦闘特化型の異能教育機関。情報戦は、得手とする領分じゃない。)
テメェの言う通りだぜ。
必要なのは、「十」――ひいては邪気会そのものだ。
これまで学生達の側に寄り添い、トラブルの解決に担ってきた奴らは、『戦力』と同時に学生達にとっては『求心力』そのものでもある。
今、学生の心を纏め上げて、以前の管理運営側との均衡を取り戻すには、それしかねェ。
カノッサが裏で暗躍している以上、こんな状態じゃァ内部崩壊を待つだけだ。
問題は方策と人材だな……方策については一つ、俺様たちには心当たりがあるがァ……。
(邪気会長の遺した言葉。)
(――――『何かあったら、地下迷宮最深部の祭壇を訪れろ』。)
(彼は恐らく、自分がいなくなることで引き起こされる事態を、何となく予測していたのかも知れなかった。)
(生前、山海よりも膨大な演算処理で超人的な活動を幾度となく見せてきた彼ならば、万や億に及ぶあらゆる推移パターンを計算に入れていてもおかしくない。)
(それが有効な効き目を示すかは別問題だが。)
(だが、人材は?)
(あの邪気会長に匹敵するマンパワーを有する人材が、果たしているのか?)
(紅蓮の髪を掻き上げる。)
(夜風に靡くそれが黒天に緋色の輝線を揺らめかす。)
(悪魔の瞳も同じように揺らいでいた――自信に溢れた彼にはそぐわない、不安に揺れる瞳。)
あァ、ダメだな。全然ダメだ……。俺様じゃァ、話にならねェンだ。
419
:
3/3
:2013/09/30(月) 04:51:45 ID:nKdg1YrM
(責任を果たせない。)
(会長の替わりに自らが会長職に就くことも考えた。)
(だが、どう考えても、悪魔が毎日机上に山を築く書類群を適切に処理できるとは思えない。)
(何より組織を力として纏め上げる能力はないだろう。会長にはカリスマ性がなくとも、組織をちゃんと体系だったものとして運用した実績がある。)
(会長を殺したのは――この事態を招いた一因は、自分にも関わらず。)
(ギリ、と歯を強く噛み締める。)
(勝負事では無類の膂力を発揮する彼が、邪気大の瀕する危機を前にして何もできずにいた。)
(精々が、REBEL-Cなどと名乗る反乱軍の支部をちまちまと潰していくことが精一杯。それでさえ、どれ程の成果を上げられているか。)
(悪魔を蝕んでいるのは、他ならぬ、無力感であった。)
クソ野郎が常々言ッていた。
暴力ッてのは過信に足るほど万能じゃねェ、と。
この邪気大の学生は、そういッた物理的な強さよりも、もッと大切な強さを持ッているンだ、と。
(それは―――)
(本来人間を大きく上回る戦闘力を持つ悪魔を、幾度となく苦戦させたもの。)
(文明、叡智、そして強靱な心胆。)
(そう。悪魔は忘れそうになっていたが、学校というのは学業以上に、精神を養成するものなのだから。)
(だからこそ会長は、『俺は邪気大で最弱だ』と言っていた。大陸に風穴を空ける錬金の王は、だからこそ、一番大事な『心』の強さを得ることが終ぞ出来なかった。)
(だったら。)
もし。
この状況を救う一縷の望みがあるとすれば。
それは―――。
(悪魔の目線が虎眼に注がれる。)
(示してやる必要がある。)
(邪気会を通じて……邪気大生としての矜持、信念、在り方を。)
(それを生き様として根ざしている人間は限られる――その中の一人に向けて、悪魔は眼差しを向けていた。)
420
:
名も無き邪気眼使い
:2013/09/30(月) 12:25:41 ID:kRl/CBGk
「それは、つまるところ…」
管理しようという事か。
虎眼は出かかった言葉を、すんでのところで飲み込んだ。
今にして思えば、“十”はかなり自由な行動が認められていた。
各々が個人の裁量で動き、治安維持および問題の収束に当たる。
そうした権限も、かつての邪気会長・シュロムによって齎されたものだが、なるほど、お上からすれば、その状況は面白くなかったに違いない。
会長亡き今、上層部がそうした方策を打ち出したのは必然と言える。
「会長の遺産が何であれ、会長に代わる新たな長を当てる必要が御座いますね。今いる者からとなると…やはり、知に長け無双の戦闘力を誇る貴方か、生徒からの信頼も厚く、行動力にも秀でた甲殿が適任かと思いますが、如何か」
虎眼には、自分がその席に収まろうという野心は、まるでなかった。
卑屈なまでのコンプレックスを抱えて生きてきた彼女にすれば、むしろ拒否感を覚える方が自然だとすら言える。
それは虎眼の中で、会長職の理想像がシュロムであるためだろう。
虎眼からすれば、シュロムと己を比較するなど畏れ多い、むしろシュロムを穢す行為だとすら感じられた。
ふと、ルビカンテの視線に気付く。
「…?あの…そのように見つめられると、なんと言いますか…照れるのですが…」
421
:
名も無き邪気眼使い
:2013/10/06(日) 15:05:01 ID:uMkhOJhM
(鈍い。)
(悪魔は天を仰いで嘆息する。)
(この女、己のことにはとんと疎い。疎すぎる。)
(それでいて戦場では、死線を快刀にて寸断する神懸りの冴えを見せるのだから、人間とはどうして解らない。)
(ゆえに、だからこそ。)
(邪気眼大学を、数千数万という後輩を導けるのは、――――学生の矜持を知る”人間”だけだ。)
(悪魔はそう確信し、)
(また、そうであるように心から願ってやまない。)
(少なくとも人命の重みも解さぬ畜生や、己が便益のみを求む外道など、悪魔は仰ごうとは決して思わないし、どんな手を使ってでも必ず失脚させると誓う。)
(それが悪魔の、悪魔たる所以。)
(信愛では、友誼では、守りきれないものもある。)
(守りたい者たちの安寧の為、その彼らから不興や憎悪を買うことも厭わない。)
(露悪を謳う者。敵対者。悪魔の代弁者。)
(悪魔はそんな立場上の故もあって、自身が邪気会長の座を継ぐに相応しくないと判断するに至ったのである。)
(そのことを内心改めて確認し、悪魔は意識を虎眼に向き直す。)
甲は確かに。
人望も篤いし、適役と思うがな。
だが、俺様の所感だと、アイツが快諾するたァ思えねェ。
「あー、パス。俺の柄じゃねえや」――、とか何とかつッてな。アイツらしい科白で断りを入れてくるンじゃねェか?
まァ、打診するだけしておくつもりだぜ。
するだけならタダだしな。
(妙に特徴を捉えた声真似で、悪魔は甲の反応を笑い混じりに予測する。)
(確証はない。)
(が、そんな予感めいた何かがあった。)
(元々、甲は風来坊の気質だ。)
(組織の上座に収まって術数で渡り合うような腹芸を、あの熱血サイボーグができるだろうか。)
(サイボーグといったら普通、冷血無比の効率脳というイメージだろうに。)
(悪魔はくつくつと嗤う。)
(そして無論、語るまでもなく悪魔も同様に似付かわしくない。)
(ならば次の選択肢――このニブチン女剣客には遠回しで攻めても徒労に終わること必至なので、真正面から切り出すことにする。)
おい虎眼。
テメェ、あのクソ野郎のことを引きずッてやがるな?
(予想外の球筋で。)
(引きずっている――死に限った話ではない。)
(”邪気会長”シュロムという存在が今でも、彼女の価値観に巨大な容量を占めているのではないか。)
(良い意味でも、悪い意味でも。)
(先ほどのことだ。)
(虎眼が次代会長の候補を挙げる際、敢えて彼女自身について触れなかった。)
(副会長という重大なポストを務めていたにも関わらず。)
(悪魔はそれを日本女性特有の奥ゆかしさかと思ったが、その瞬間、虎眼の瞳に走った感情の色はそうであると語ってはいなかった。)
(劣等感のような、卑屈めいた暗い色。)
(かつて冥府で不遇に甘んじていた己を彷彿とさせる情動だからこそ、悪魔は目敏く察知することができた。)
俺様はよ。
テメェが会長職を継ぐというのは、別段おかしいことはねェと思ッてるがね。
むしろ前職を考えりゃァ順当な流れだ。
頭は悪くねェし、剣の腕前も上等だ。文武揃って高い水準にいるテメェなら、候補として説得力はあらァ。
無論、この場で決定されるべきことじゃねェが。
『もしも邪気会が何やかんやあッて活動再開することになッたら』ッつー仮定の上での、まあ取りに足らねェ世間話程度にでも考えてくれや。
まァ、そンな訳で―――。
テメェは、テメェ自身では、どう思ッてやがる?
(当たっていなくてもいい。)
(悪魔の得意技、要するにカマかけだ。)
(研ぎ澄まされた悪魔の観察眼が、虎眼の表情をつぶさに射貫く。)
(講堂の屋根上。CSCSと刻印された小型カメラが、月夜に密談する二人の姿をレンズに捉えている。)
(その配線をジャックし、様子を盗み見る男。)
(口元を歪んだ弦月の形に吊りあげるカゾック姿の新任神父が、彼の牙城たる教会で、静かな嘲笑を湛えてライブ映像を見守っていた。)
422
:
名も無き邪気眼使い
:2013/10/10(木) 13:14:37 ID:3hZk5/ko
「確かに、甲殿は嫌がりそうですな」
ルビカンテのモノマネにくすりと微笑みつつ、その発言を肯定。
ではやはり、最有力候補はルビカンテか、と考えたところで、心臓が止まった。
ーーーテメェ、あのクソ野郎のことを引きずッてやがるな?
言葉が詰まる。
何故今その話を?
困惑を表に出さぬように、注意しながら、当たり障りのない台詞を探す。
「…そう簡単に割り切れるものでもないでしょう」
なんとか搾り出した声は小さく、掠れていた。
喉がカラカラに乾く。
さしもの虎眼も、もう気付いていた。
ルビカンテが何を言いたいのか。
「私には無理です」
被せるようにして、短く、ハッキリと言い切る。
自分が会長だと?
馬鹿馬鹿しい、狂気の沙汰だ。
事実、虎眼には今後の方策などちっとも思いつかないし、邪気大どころか自分の事で手一杯だ。
確かに、無能が上に立つのは必ずしも間違いというわけではない。
例えば、魅力的な人間が上に立ったなら、周囲は彼のために人事を尽くすだろう。
本人の能力ではなく周囲の力で事を成す、所謂カリスマとでも言うべき人種だ。
虎眼の知るところでは、鵺がそれに近い。
しかし、鵺は本人の実力も申し分ないし、部下を上手に使うのは彼のプロデュース能力あってのものだ。
虎眼にはとても真似出来ないし、人材不足の今、それすらも人に頼る余裕はない。
(いや、違う。正論を振りかざすまでもなく、もっと根本的な事だ)
「どうやら、ルビカンテ殿は耄碌されたようですな。そのような世迷言を…」
(私は……)
「もうじき寮の消灯時間に御座います。私はこれにて」
車椅子を漕ぎ、夜の闇に消えていく虎眼。
その背中には、ルビカンテが感じた卑屈がべったりとこびりついていた。
(私は権力の下、ただ剣を振りたいだけだ)
423
:
名も無き邪気眼使い
:2013/10/12(土) 14:05:19 ID:igX96wVo
…………ッたく。そうそう青写真通りにゃァいかねェな。
(紅蓮の髪を掻き上げ、溜息。)
(きぃ、きぃと鳴る車輪の音を残響に、虎眼の背中が闇へと遠離る。)
(小さい背なに憑くのは暗色の卑情――少し逸りすぎたか、と悪魔は心が急くのを自戒する。)
(会長職は、重い。)
(邪気眼大学に在籍する総ての学生の権利や意思を彼らに代わって大学運営側へ具申・交渉し、またその調整のために内外を飛び回る。)
(職務を説明するなら、この一文で済む。)
(だが、その実、伴う仕事量と責任は、個人が背負うにはあまりに過大だ。)
(会長存命時、机上に山と積み上げられた書類を目にしていた者なら、まず誰だって首を縦には振りたがるまい。)
(その上、生命を脅かされる危険もある。在任中に邪気会と反目する過激派グループによる暗殺は幾度となく行われている。不死の彼だから事なきを得たのだ。)
(しかし給金は出ないとあれば、どう考えても割に合わない。)
(そう。学生の時には気付かなかった。)
(冷静に思い返してみれば、あれを『普通』の範疇で涼しげに処理していたあの男は、人智の次元を幾つか飛び越えた『異常者』に違いなかった。)
(そんな『異常者』の後継を探すなど、最初から無理がある発想だったのだろうか。)
(―――他人のことは言えない。)
(悪魔もまた、あの男の幻影をいまだ色濃く引きずっている一人だったから。)
(だッたら……どうする。どういう角度からアプローチすりゃァいい?)
(悪魔は改めて思う。)
(『邪気会長』――このシステムには、無理がある。)
(唯一の適性者が逝去した現在、人材捜しが無為に終わるなら、今本当に必要なこととは何か?)
(これまで悪魔は『次代会長の抜擢』から邪気会の復権という全体図を描いてきた。だから、その拘りを一旦拭い去り、始点に立ち返って再出発する。)
(―――見えて来るのは、可能性の一端。)
(そもそも、全ての問題の根本は、大学創設と同時に設置されたという、『邪気会長』という重責超過な役職に他ならない。)
(悪魔の思考が辿り着いたのは、ごく当たり前で、しかし思い至らなかった発想。)
(”あの男が死んだ現在”だから浮かぶ考え。)
(もしかすると。) ・ ・ ・
(もはや邪気大に、『邪気会長』などという存在は、”い、ら、な、――――)
―――― あ ァ ア 参 ロ う ャ ァ な 参 rお ゥ や ア n あ ァ 〜 〜 〜
ぱら い そ ノ ぉ 寺 n i ぞォ 参 ろ ゥ ャ ア な ァ a ァァ 〜〜 〜
424
:
名も無き邪気眼使い
:2013/10/12(土) 14:09:17 ID:igX96wVo
―――― あ ァ ア 参 ロ う ャ ァ な 参 rお ゥ や ア n あ ァ 〜 〜 〜
……、…………チッ。また来やがッた。
(悪魔の周囲。――数十mの距離を置いて人垣を作る気配。)
(魔力灯に照らされる姿は人間だ。首、額、胸元、腿。ありとあらゆる箇所に刻印された反乱軍のラベル。)
(REBEL-C。)
(青紫に発光するそのロゴを見て、悪魔は何十度目かの刺客だと察知する。)
(しかし、只ならぬ異常を感じる。)
(まず人数が多い。恐らく本来は、先程立ち去った虎眼と二人を袋にして叩くための動員されたのだろうが、それを加味しても尚、多い。多すぎるのだ。)
(無論、有象無象の集合ならば、悪魔は欠伸しながら蹴散らせる。)
(だが、この気配は。)
(凶兆の到来を告げる不気味な歌声を合唱しながら、死人のように首をぶら下げ、蠢く眼球は視線がまったく定まっていない。)
(悪魔の眉間が、最大級の警戒をして剣呑に寄る。)
(背中に吊した鞘からすら、と抜くのは、旱の怪鳥を錬鉄した魔剣、その銘をアウィス・イグネア。)
(半身は影。完全な復活とは言い難い。)
(が、そう易々敗北を喫するつもりもありはしない。悪魔は誇り高い勝利者にのみ敗北を譲る。こんな借り物の言葉しか喋れない紙っぺらに、崇高な勝利を許しなどしない。)
(人垣の半径が狭まる。急速に間合いが詰められる。)
(夜風を千切って迫るぎょろぎょろした眼光たちに向けて、剣を上段に、粗野な野武士の如く構えて啖呵を切る。)
(長い夜になる。)
(弟子の莫迦娘が腹を空かせているだろう。)
(早々に決着を付けると決意して、悪魔らしく――ど派手に、凄絶なまでに嘲笑を浮かべて、不敵に威勢良く口上を垂れた。)
来いよ、羽虫共―――焼べてやるから集ッて来いッ!! ギャア―――ハッハハハハハ!!!
(巨大な震動が邪気眼大学の大地を揺らす。)
(星々の輝きを塗り潰さんと展開し回転する、毒々しいまでの輝きに満ちた、十字と磔刑の救世主を象った神聖魔法陣。)
(莫大な熱量を巻き上げてそれを串刺しにする、紅蓮の炎柱。)
(ここに、講堂を半壊させる死戦死闘が、人知れず、恭しく、その幕を開く。)
(或いは―――。)
(その光景を遠くから、近くから眺めて、何かを察知する者もいるだろう。)
(十字の記号、磔の記号、救世主の記号。)
(突き刺す紅蓮の業火。)
(その構図から、何かを察知する者もいるだろう。『彼』と邂逅した人間ならば尚更かも知れない。)
(都市にも匹敵する邪気眼大学の広大な敷地。その一隅にぽつねんと建つ古教会。不正にカメラ映像を傍受して狂笑を静かに上げる、漆黒のカゾックを纏った新任神父。)
(彼の名はエルガ。)
(またの名を、カノッサ機関守護天使、【曜】。七天七曜のジオジャエルガ。)
(邪気眼大学を内部崩壊させ無力化せんと送り込まれた、邪気眼使いの宿敵、カノッサ機関に所属する精鋭戦士、”守護天使”の一人であった――――。)
425
:
甲
:2013/10/17(木) 23:22:15 ID:2MIByfKQ
所変わって、邪気眼大学時計塔広場
屋内の騒動から逃走してきた甲は誰も居ないベンチにドカッと腰を下ろす
「は〜はっはっは!!見たかよあの顔!!激おこアイドルと何かわかんねえ無表情!!
おいおいおいトンでもねえな!!最大勢力に完全にターゲッティングされたぜ!!
はははははは!!…………………はぁ、完全に住みづらくなったなこりゃ……………」
アホの様に笑い尽くしたあと、頭を抱えた
どうしてこうなったと自問してみても日頃の行いのせいと結論が出てしまうし
何か間違ったかと聞かれるときっと色々と間違ってたのだと思う
俺の脳内選択肢が、穏やかなキャンパスライフを全力で邪魔している
「……やれやれ」
ふー…と大きく息を吐いて顔を上げる
「歪んでんなぁ」
生徒同士が威嚇し合い、抑制し合い、従ったり従わせたり
歪に絡む人間模様がひどく不愉快に感じる
かといって
あれがひとつの完結したコミュニティーならば、実害が無い以上認めざるを得ないのが現状であった
「(……邪気会ねぇ)」
穹凛は言っていた、俺が邪気会の復権を狙っていると
「復権、とか言われてもピンとこねーっつの」
復権、権力や権利を戻す事――そこに疑問を感じた
そもそもあの頃の自分らに権力や利権が有ったとは露とも思っていなかった
”邪気会”とは云わば大学の何でも屋で
何というか、『邪気眼大学学生お助けサークル』みたいなノリで在籍していた様な気がする
そこに栄誉が有ったとは到底思えないし
今になって「”邪気会””邪気会”」と後ろ指を指されるような事をして来たとも思えない
「はぁああああああ……」
深くため息をつくと
「メンドクセ」
とベンチに横になるのだった
そしてやがて甲は――考えるのを止めた
426
:
名も無き邪気眼使い
:2013/10/18(金) 19:43:51 ID:sHeoyNjc
ツカ、ツカ、ツカ。
時計塔広場の煉瓦敷きを規則的に叩く音が秋空に響く。
余裕の表れのようにゆっくりと急がず、されど一切の隙や緩みを見せぬブーツの歩調。
そうだ――以前、『彼』と出遭ったのも、こんな寒風の沁みる時季だった。懐旧の念と共に湧く期待に口元が自然と弦月の形を描く。
嗚呼、隠しようもなく期待していた。
機会を窺っていたのだ。再びの接触の機会を。
長らく潜伏を強いられて中々自由に動けなかった分、期待は容積を膨らませる一方だったから。
(これではまるで、ハーレクインロマンスのヒロインではないか。)
否定はしない。
ある意味で恋い焦がれていた。
仮想空間KUNRENで、拳を撃ち交えた、あの瞬間から、ずっと。
羞恥に染まった紅葉が舞い、閑散とした広場を秋色に彩る。構わず靴底で踏みつけながら、躍る心音に背を押されるように足取りが速まりそうになる。
だが、抑える。
鍛え抜かれた精神力は、平常心を見失わない。
そして等間隔を刻み続けるパルスに合わせて進めた歩みが、ベンチの傍で止まる。『彼』が半機半人の身体を横たえるベンチの傍で。
数瞬の間の後、ついに待望の時が訪れる。
・ ・
「――――おやおや。そんなところで寝ていると、風邪を引くのではないのかね? 甲君」
漆黒の神父服。
首元には金拵えのロザリオ。
瞳は美しく、されど冷たい黒曜の色。
人懐こい柔和な表情を顔面に張り付けた若い男。
冷徹と熱情が渦を巻いて総身に纏ったこの人物の名前を、果たして何と言ったか―――『彼』は、憶えてくれているだろうか。
427
:
甲
:2013/10/18(金) 21:05:02 ID:JnhQx.Y2
>>426
「……生憎、こちとら数年来風邪さんとは縁遠い生活を―――って」
”甲君”と名前を呼ばれた
むくりと起き上がりその顔を確認する
「アンタは…」
ぼんやりとした記憶
頭で思い出すより先に、身体が――燃やし尽くされた身体が思い出す
とある春の日に拳を交わした『灼熱の思い出』
その身を、心を、芯まで焦がしたあの時を覚えている
そう、輝く太陽の如き能力を行使した、かの神父の名は――
「エル――」
「(――シャダイ?違う)」
神父の名は――
「(エル――レガーデン…いや、これも違う)」
名は――
「(エル――エル――エルゥウウウウウウ!!!!)」
曖昧な間
「あ、エル……ガ?神父さん」
若干以上に自信なさ気に名を告げた
428
:
名も無き邪気眼使い
:2013/10/18(金) 23:15:12 ID:sHeoyNjc
「…………うん、そうだよ。そうなんだけど。君、思い出したろう。今」
がく、と肩を落とす。
神父の笑顔が僅かばかり引き攣っていた。
予想外の登場で機先を制したつもりだったのだが、想定外のカウンターで逆に制されてしまった格好となる。
片時も名を忘れなかった相手からこの反応は、大人でも胸にクる。
成程、子女の恋煩いとは辛い筈だ。
妙な得心をし、即座にんん、と喉を鳴らして調子を取り戻す。
秋色の風に波だった黒髪を両手で均し、いつもの余裕を滲ませた笑みで甲に切り込んだ。
「最近はどうだね?
何やら憂いが顔に出ているようだが。
ふふ。やおらだったな、すまない。職務上、よく懺悔の聞き役をするからね。そういう感情には敏いし、放っておけない性質なのだよ。
この季節特有のノスタルジックな心の引き潮に攫われたか――。
様子を見る限り、そうでもなさそうだ。」
低く重く、さりとて優しく。
神父のバリトン・ボイスは隣人を等しく愛で包む。
今、大学内で何かと話題のスーパー地獄耳アイドル・穹凛のカリスマとはまた異なる、通底音のように落ち着いた魅力性。
傷を愛撫して――奥底の声を誘ってやる。
”色々と”役に立つ技術だ。例えば、『世論の流れ』を作ってやったりするのに。
「隣、失礼してよろしいかな?」
私でよければ話を聞くよ――。
何、気にすることはない。それが神父の勤めだからね――。
邪気大の新任神父となった彼の日から、学生達に幾度も幾度も繰り返した心理的アプローチを、甲にも行う。
神父。
なんと都合がいい立場なのだろう。
心に直で触れることができ、尚かつおいそれと怪しまれることがないとは。
その自信が、甲への接触に繋がった。風紀委員にすら通じた欺きが、元邪気会・実働部隊の『中庸』たる数字を背負っていた男にも通じるだろうかと。
露見しても構わない。
むしろ、それを密かに期待する、破滅的な願望。
食いでが無いのだ。迫ってみせてくれ。この私の正体に。裏で糸を手繰る存在の片鱗に……。
これより繰り広げられるのは、単なる平坦な日常会話だが、そこから何を得、何を推理するかは、このサイボーグ次第ということになる。
要するに、牙城で籠もるのに飽いた男の、ほんのささいなゲームだ。
429
:
甲
:2013/10/19(土) 01:08:03 ID:rAncjB16
>>428
「いや、えーと、ほら、あの、基本あの時も”神父さん”とか呼んでたし、えー…すんません」
あたふたと慌てるが、相手の落ち着き様からこちらも徐々に落ち着いていき
「あー、ご無沙汰してます。憂い?……憂いっつーかなんつーか」
「どうぞ」と座りを直して隣を譲る
神父の問い掛け、話を聞くよ――といった柔らかな誘いに
「俺の事はいーんすよ、別に」
先ず自分は大丈夫であることを宣言する
短く、軽やかに告げられた言葉は決してそれが”強がり”の類では無いことを表して
「それよりも」
聞きたい事があった
恐らく、あの頃から――初めて出会った頃からきっと、この神父エルガはこの大学に居たはずだから
故に問う
「今の、邪気眼大学をどう見ますかね?」
この有り様が、神父の眼を通してどう映るのかを
430
:
名も無き邪気眼使い
:2013/10/19(土) 21:24:25 ID:4ElfsppY
(――――? 何だと?)
強烈な違和感。
俺の事は良い――そう断言する甲の口調に、ブレがない。
つまり虚勢や背伸びではないということだ。偽りなく本心から、憔悴や悄然といった精神の揺れは全くないと言っている。
何故、動じていない?
思わず胸中に生じた怪訝が表情として浮かぶ前に、柔らかい笑顔の仮面で覆い隠す。
己が矜持に懸けて、つまらないミスは犯さない。
(いったい、どういうことだ。
母校がこんな有様だというのに、この男。
痛痒すら感じていないのか? それとも巧妙に隠している……否、この男はそんな器用なタイプではあるまい。
心身共に強靱とでもいうのか。
螺旋とは、揺るがない直進の象徴――砲身に刻んだ螺旋状の溝が弾丸の軌道を安定させるように。
一戦士としては理想的ともいえるメンタリティ。なるほど、優秀だ。
アイ
故に、嗚呼――――その愚直さは、憎らしい。)
破壊衝動。
神聖は汚泥で染めたくなる。
清純は汚濁で穢したくなる。
神父としてこの邪気大に赴任してから学生たちと今まで接してきて思ったのは、純粋な心を持つ者をやたらに目にできたことであった。
例え一見歪んだ人格も、一皮剥くと繊細すぎる純心の形。
半生かけて散々積み重ねた罪科を、纏めて浄化されてしまいそうになる心地を何度も味わった。
だからこそ。
その心の芯鉄に手を加え、使命的な暴力性を煽る今回の任務は、神父にとって他ならず愉快極まる仕事であった。
甲から問われる。”今の邪気眼大学をどう見るか”。
神父はふむ、と顎に指を宛がえ、甲が空けたベンチのスペースに腰を下ろして考える。
考えるフリをする。
答えは既に決まっていたからだ。
・ ・ ・ ・ ・
「歪んでいる。
君の言葉を借りたが――まさしく、これは言い得て妙だ。
だが、その一方で私は、これが本来あるべき自然な形なのではないか、とも考えているよ。
元々この邪気眼大学は、超常的な異能をその身に宿した所謂、”異能者”が学びに訪れる『最後の楽園』だろう?
強烈至極な我の持ち主が一堂に会する場所な訳だ。
尋常に考えて……。
そんな特殊な彼らを纏め上げて風紀を築く、という発想がそもそもおかしい。」
淡々と。懇々と。滔々と。
神父は至って余裕の構えで自説を垂れる。
/次レスに続く(山田キートン)
431
:
名も無き邪気眼使い
:2013/10/19(土) 21:26:09 ID:4ElfsppY
「図書館塔で大学史を調べたよ。
創設して間もない頃、治安は最悪だった。傷害事件は後を絶たず、とても教育機関の体裁を保てない醜態を呈した。
当時の邪気会は上層部と協力し、環境や法の整備、仕組み作りに奔走。
数年をかけて、現在の安定した治安が完成した。
…と、文献にあった。
この史実は、生徒側と大学側の連携によって、今までの治安は維持されてきた事実を裏付けする。
並大抵のことではないと感じるよ。
種族の対立。宗派の対立。思想の対立。歴史の対立。
”来る者は拒まず、去る者は追わず”は、様々なしがらみを超緻密な利害調整によって乗り越えて実現された理想の『楽園』だった。
言うまでもなく、それに大きく貢献したのは邪気会……君たちだ。
心からの賞賛を送りたい。」
だが、と神父な言葉を置く。
「果たして、それは自然な形だったのだろうか?
あらゆる存在が融和し、団結する姿は美しく心を打つ光景だが、私の目には極めて不自然な格好に映る。
何故なら歴史が明らかにする通り、
創世以来、全生命は陣取りの本能を遺伝子に刻み込まれているからだ。
並び立てぬ両者は必ず一方を駆逐する。勝利者によって世界は回る。残酷なようだが、一般的にはこれが真理なのだし、それは過去を生きた先人が証明している。
『楽園』の訳語はユートピア。
ギリシャ語でou(無い)とtopos(場所)を組み合わせて作られた、イギリスの思想家トマス・モアの造語だ。
無何有の郷とも訳される通り――その真意は、”何処にも無い”。
――――なあ、甲くん。」
神父の瞳が。
糜爛する熱と絶死の冷が同居する黒曜の瞳が。
甲の、螺旋する力の輝きを宿した眼を射貫く。心臓を鷲掴みにして、揺さぶりをかけようとするように。
「果たして歪んでいるのは、今なのだろうか。
もしかしたら……今までの邪気眼大学こそが、歪んでいたのではなかろうか?
私は、そう考えてやまない。」
432
:
甲
:2013/10/19(土) 23:18:03 ID:rAncjB16
>>430
>>431
「……」
あ、やべぇこの人説明好きだ
一を聞いたら十返すタイプだ
朗々と語られる返答に先ずそんな感想をひとつ思う
それでも、同じく解説好きな”あの悪魔”と違って何とも柔和な聞き入り易い説明口調だなとも感じた。
「(アイツはこっちが理解してなくても、突っ走った説明するからなー…)」
何とか頑張って神父の言葉をくまなく聞く
曰く、これが「邪気眼大学のあるべき形」ではないか
――といった解答であろうか
「うーん」
神父の解にしばしの間思案する
「いやね、確かに俺も全員が全員仲良しこよし、争いなんてなーんも無し
……なんつーのは気持ち悪ぃなって思いますよ、こと邪気大(ここ)に置いては特に」
空を見上げる
目を細めて思い出すのは、未だ熱を持ったままの、あの頃の記憶
「昔だってね、譲れねぇモンとか勝ち取りたい物がありゃぶつかり合ったりしましたよそりゃ
今回も、それが邪気会が退いた事で生じた権力――あぁ、いや邪気会にね、そんな誇れる権力なんてものがあったのかっつーのは甚だ疑問なんですがね?
……ともあれ、そーいうポストを狙ってるっつーだけの話なら、まぁ良いかなって思ってたんですわ
矛先がたまに元・邪気会の俺に向いたりすんのも、まぁご愛嬌かなって
のらりくらりとかわして行きゃあ良いかなって、そう思ってたんです
ついさっきもあのアイドル……なんつったか、そう”穹 凛”の一派に絡まれたりはしたんですが
ああいう派閥活動…っていうのかな?そういうのも俺は基本的に邪魔するつもりはねーんですよ」
がしがし、と頭を掻く
まとまらない考えをまとめようと深く考えて
「ただね、どうにもそういったあれやこれやが不安定なような気がするんすよ
不安定?うーん…不安定は違うような…あー…やー、まあ
浮足立ってる、っつーんすかね?
落とし所が見当たらずに、このままだと洒落じゃすまねー段階まで行っちまうんじゃねーかな…って」
自分の発言に首を捻りつつ
「今の邪気大は、俺にはどうにも危うく見えて仕方ねーんですよ」
そう、言葉を締めた
433
:
甲
:2013/10/19(土) 23:31:00 ID:rAncjB16
言葉を締めた後に
「……まぁ、それがカノッサ機関の工作だっつーんなら
話はまるで変わってくるんですけどね」
そう、ぽつりと付け足した
434
:
圓五十鈴
:2013/10/20(日) 00:39:59 ID:YwSvduC.
「あら、むさ苦しい面々でこと」
現れたのは、長い黒髪が印象的なお嬢喋りの女性。
白のドレスシャツにチェックのミニスカートという出で立ちには見覚えがある。
それもそのはず、この服は凛の部屋からパクったものだ。
それを証明するかのように、シャツの胸部はパツンパツンだった。
「“四神快楽天”が一人、“百合玄武”圓五十鈴(まわり いすず)。凛の脱ぎたておパンツのため、この世の悪を成敗しに参りましたわ」
この空気の読めなさ、まさに上流階級。
だってパンツ欲しいもんと言わんばかりの傲岸不遜。
あれほど警戒しろと言われたのに、ノコノコ一人でご登場である。
435
:
1/3
:2013/10/20(日) 11:49:53 ID:Kdjwnk1Y
「つまり―――。一連の狂騒は単に、”熱に浮かされている”、と。そう言いたいのかな?」
『熱に浮かされている』。
そう。
今、この邪気眼大学では、性質の悪い『熱病』が狂奔している。
思想を歪ませ狂わせる熱病だ。
その熱を吹き込まれ病に罹患した者は、ただ昂揚する自意識のままに革命を謳い上げ、反旗を気高く翻す。
『愛する母校を救う為、守る為に立ち上がれ』。
勢いよく獅子吼する彼らはその実、己自身が虚ろであるということには気が付いていない。
何故なら彼ら自身に明確な問題意識が存在しない。
動機も、お題目も、全てが借り物。
それでいて足取りを揃えて行進するのは一丁前というのだから、さながら世にも滑稽なパレードと呼んでも差し支えないだろう。
今まで我らカノッサに何度も敗北という屈辱を味わわせた、反吐が出るほど青臭い正義感と使命感。
他ならぬその真っ直ぐな精神が、彼らの愛校を瀕死に追いやる。
想像しただけで――嗤えるシナリオだ。
「成程、確かに。
拝聴した甲君の意見は、とても肯けるものだった。
だが――もし今までが歪んでいたのだとしたら、現在の状態は極めて自然な成り行きだと私は考えている。」
その愉快で素敵なシナリオを最後まで完遂する為に――――ここで一手、策を講じておこう。
神父として。中立な相談者として。
甲。
螺旋を描いて直進するこの男の精神軸を。
ここで、歪めておく。
余裕然とした姿勢を崩さず、神父を偽る男は微笑さえ浮かべて詭弁を語る。
「皆、心の何処かで理解している。
『世の理から解放された”異能者”が揃いも揃って学校で教育を受ける』。
このことのおかしさに、滑稽さに、気が付いている。
だって、そうだろう?
学校教育など、世の理の最たるものと言って良いくらいの常識だ。
君たち異能者は折角、その楔から解き放たれた存在であるにも関わらず、それに堕しているという矛盾した問題が存在している。
むしろ、今までよく存続できたと感心するよ。
私も赴任して未だ間もない校舎が無くなるのは物寂しいが、一方で、こう思っているのも確かなのだ。」
恋人を愛撫するように。
二叉の舌をちらつかせる毒蛇のように。
神父のよく響く低いバリトンが、まるで大地に染み込む雨水のような浸透力を携えて。
「君タチハ、ソロソロ、邪気眼大学ノ呪縛カラ解キ放タレテモイイ頃合イダ。
・ ・ ・ ・
邪気眼大学ナンテ場所、君タチニハ、モウ――イラナイ。」
破滅へ狂奔する熱病をもたらす猛毒の言葉が、甲の鼓膜へ突き立てられ
436
:
2/3
:2013/10/20(日) 11:51:22 ID:Kdjwnk1Y
「……まぁ、それがカノッサ機関の工作だっつーんなら
話はまるで変わってくるんですけどね」
ぞ、と。神父が総毛立つ。
(……………………………は? この、餓鬼、何、を)
心拍数が怖ろしいほど加速する。
拍動が肋骨を砕きそうなまでに強まる。
動揺が、滲み出す。
表情にではない。神父の纏う余裕然とした雰囲気が、崩れようとしている。笑顔の仮面でも隠し切れぬほど致命的に。
待て、落ち着け、気をしっかり保て。
怒濤のごとく脳内に押し寄せる疑問符と激怒と動揺を、理性の堰で急拵えだが押し留める。
決壊寸前で持ちこたえ、その間に理論武装という防波堤を築く。
築かねば、敗ける。
(―――これは、ハッタリだ。
この男は、何気ないやり取りの最中にそういった罠を滑り込ませるのが得意だった。
そうだ、前回と同じ手ではないか!
何を動揺することがある。私はかつでそれを十全に対処した。
ならば今回に限っていなせない道理はない。故に問題はなし。私は【曜】の守護天使だ……舐めるなよ。格が違うのだ、凡百とは!)
寸前で、
堪え、
た。
安堵すら見せてはいけない。
取り戻した冷静さがじわりと脳髄に沁みていくのを実感しながら、神父は襟と佇まいを正す。
宜しい―――何やら燃えてきたぞ、青二才。
前回と同じ気炎を胸に昂ぶらせながら、神父は更なる一手を畳みかけy
「あら、むさ苦しい面々でこと」
場違いな声が聞こえた。
予想外な乱入に転進の出鼻を挫かれ、神父は主の方を見やる。
無垢な純白のドレスシャツに、チェック柄をしたミニスカートのコントラストが鮮やかに映える、若者の風合いが強いファッション。
しかし、寸法がスタイルにマッチしていない。
胸部が窮屈そうに押し込められているが当の本人は涼しげな顔で、堂々と名乗りを上げる。
「“四神快楽天”が一人、“百合玄武”圓五十鈴(まわり いすず)。凛の脱ぎたておパンツのため、この世の悪を成敗しに参りましたわ」
あっ・・(察し)。
神父は察した。コイツはアカン。
が、同時にさして大したことはない手合いだとも感じた。
よくいる変態である。確か、穹凛とかいう女学生の取り巻きの一人であったと記憶しているが、定かではない。
穹凛―――。
現在、邪気大で最大勢力を召し抱える女帝。
見方を変えればそれは、神父の描くシナリオを積極的に牽引してくれているとも言える。
元々、彼女自身は特に頂点を獲るなどといった野心とは無縁であったらしいが、今となっては引くに引けぬまま自治会騒乱の筆頭だ。
(カリスマ性とは時に悲劇だな。
望みもしない狂騒に奉り揚げられ、望みもしない野心を手に入れてしまう。)
笑顔の背面で憐れみと嘲りを送って、神父はそつなく対応する。
いつもの薄ら寒い余裕面で。
437
:
3/3
:2013/10/20(日) 11:55:28 ID:Kdjwnk1Y
「ふむ、”この世の悪”かい?
それはまたスケールの大きな敵を成敗しに来たものだ。
もしかして甲君が言うところの、大学で工作活動をしているというカノッサ機関の手先を指しているなら、君も話に混じると宜しい。
たった今、謎に包まれたその彼について、甲君と問答を交わしていたところだからね。」
――――――。
或いは、それが神父の分岐点であった。
甲のハッタリで動揺した直後に乱入者という想定にない事態を危惧して、この場をひとまず退いていたのなら。
そう判断できるだけの慎重さを、神父が取り戻せていたのなら。
こんな、完璧を自負する神父らしくないミスなど、犯すはずもなかった。
だがもう遅い。遅すぎる。
放たれた矢を戻すことなど出来ないように。
失言はもう駆けてしまった。駆けて二人の耳に届いてしまった。ならば後は、天命に身を委ねる他ない。
惜しむらくは――。
己が犯してしまったその致命的なミスに、神父自身が気付いていないことか。
だから、その後に返される二人の反応が命運を決する。ともすれば、破滅へ一直線に回転を続ける地獄の歯車を、ここで、止められるかも知れない。
438
:
圓五十鈴
:2013/10/20(日) 13:12:17 ID:DmU0.5Kw
>>436-437
「カノッサ?何を言っていますの」
五十鈴は神父の言葉を鼻で笑うと、高らかに謡上げる。
「可愛いは正義。ならばこの世の悪とは、それすわなち大正義凛が気に食わないもの全て」
その双眸に浮かぶは狂気、つーか性欲。
その言葉の通り、彼女は凛のためならば、世界を敵に回す事さえ躊躇わないだろう。
それほどまでに欲しいのだ、凛の脱ぎたておパンツが。
「あなた、なんだか胡散臭いですわね。邪魔するというなら、ついでにお相手して差し上げてよ?」
そう言って抜き放つは、美しい細工が成されたレイピア。
細身の刃が太陽を受けてキラリと光る。
「さあ、ピンクパンティ越しの冒険が幕を開けますわ」
439
:
甲
:2013/10/20(日) 19:45:56 ID:cSaSL5mc
>>434
「そうか、俺は甲。
この世の悪の成敗とは関心だな、頑張ってくれ!」
この世の悪にカテゴライズされては敵わんので爽やかな笑顔ですっとぼける
ただ、まぁ、伝わる
「(あーあー…敵意向いてるわー…これ、俺狙いだわー…)」
>>435
>>436
>>437
「いらない?あぁ、そりゃ無いっしょ、要るってここ、うん、いるいる」
猛毒を塗り込まれた熱を持つ言葉を
しかし一笑と共に否定する
「俺らみてーなのはね、もっと世間を知るべきなんすよ
その入り口っつーのかなぁ、取っ掛かりとしちゃ最適っしょ学校って
俺らみてーな”外れた”連中にはさ、結構居るんすよ、あー…例えば
”自分だけが不幸だ”とか”自分こそがこの世で最も優れている”みたいな感じの奴
そーいう奴らって、ほら、放っておくと危ねーし
何よりその”自分”って奴に縛られて囚われて苦しがってるんじゃねーかな、と思うんす」
うん、とこれまで出会って来た人達の顔を脳裏に浮かべながら
「だから、要るんですよ、邪気眼大学
孤独な奴には仲間を
外れた力に振り回されてる奴には解き放てる場所とその使い道を
己を高めたい奴には絶好のライバルを
――ってね
いずれは、確かに要らなくなると思いますよ”卒業”って形でね
そうやって巣立てる時まで、手を振って別れる時まで
邪気眼大学って場所は、確かに要るんだと、そう俺は思いますがね」
(ピンク色の敵意を受けながらも)そう言い切った
「……」
隣の神父は何やら内心ざわついているようだが、勿論甲はその事には気付かない
確かに最後のつぶやきはハッタリである
ただし、この問い掛け、何も神父に当たりを付けて行っていたのではなく
『カノッサ機関』というワードを、出会う人全てとの会話に意図的に織り込んでいたのである
何ということは無い
そのメッセージワードへの反応を見れば、何か分かるのではないか、といった
未だにその尻尾すら見せていない相手に対する苦肉の策の一環であった
巧妙に感情を隠した神父に
「(この人も関係ねーかな…)」と、半ば諦めかけたその時
「……?」
五十鈴とエルガ神父との会話に些細な違和感を覚える
「――なぁ、神父さん?アンタ今”彼”って――」
>>438
ところがここでピンクパンティ越しの冒険譚が幕を開けた
ヤバイ、このままではその変態的な物語の登場人物にされかねない
邪気眼大学に戻ってきてからこっち、一番の危機感を覚えたのは言うまでもなく
思考を推理パートから逃走パートへ瞬く間にシフトする
2つの思考を同時に行える程、器用な思考回路は持ち合わせていないのであった
「(……幸いここは広場、時計塔を背負っているとは言え、逃走経路は無数にある
どうする……西の森にダッシュで飛び込むか、はたまたあそこの廊下、開いてる窓から校舎に入るか…)」
対応の早すぎる穹からの刺客に改めて、自分のあの時の行動を「(あぁ、やっちまったなぁ…)」と後悔するのであった
じり、と座りを直ぐに行動を起こせるように僅かに動かした
440
:
圓五十鈴
:2013/10/20(日) 20:13:49 ID:KMINXDwU
>>439
とりあえずは黙って甲の言葉を聞いていた五十鈴。
両腕でおっぱいを支える例のポーズ(俺これすげー好き)で待機していた。
「甲さん、あなた…」
甲の言葉を聞き終えた五十鈴は、改めて口を開く。
その声は、微かに震えているように聞こえなくもなく…
「なみだが、どまりまぜんわぁ〜」
否、バッチリ震えていた。
見事なまでの号泣、女泣きである。
そう、この“百合玄武”こと圓五十鈴。
お嬢様キャラの御多分に洩れず、頭がパーなのである。
「あなたの事、誤解してたみたいですわ。どうやら凛がまたヒスを起こしただけみたいですわね」
パンツは欲しいが、こればかりは仕方ない。
このような紳士(変な意味にあらず)を討つのは良心が咎める。
凛の脱ぎたておパンツは、また改めてパクれば良い。
そう結論を出した五十鈴は、レイピアを腰の鞘に納めて臨戦態勢を解く。
「凛には私から上手い事言っておきますわ。ここはひとつ、好みの女性について語らおうではありませんの!ちなみに私は、髪が短くて背が低くて胸が小さくて生意気かつ若干情けなくて早い話が凛がどストライクですわ!」
441
:
神父エルガ
:2013/10/21(月) 15:53:43 ID:3JljLLpE
「さあ、ピンクパンティ越しの冒険が幕を開けますわ」
この変態、処置無し。
識別救急(トリアージ)でいうブラックタグ。
一回死んで煉獄墜ちて罪魂浄化して生まれ変わった方が彼女の子孫のためになると神父は思った。切に。
否、レズビアンだから子を産めないか。
しかし確か最近、卵子同士を掛け合わせて子供を作る二母性マウス実験が成功したと、姉妹校・邪科学大学が季刊している紀要で目にした憶えがある。
喋り方からして良い家筋の出のようだし、マジカルマネーパワーで何とかしそう。怖い。
だが、まあ。
(やはり、取るに足らぬか。
一国を傾城させる剛健な変態強度ならば、我がカノッサの専門部隊に迎え入れても良いと期待したが。
世界で通用する国際水準には未だ程遠い発展途上か。
まあ、素養は認めるがね。
せいぜい精進することだな……ゲヘナの硫黄火でも尚救われぬ業に至るがいい。モラルハザードの狂嵐を巻き起こせるまでに。)
世界には、想像を絶する変態がいる。
パンツ中毒のビアンすら可愛い童子と慈しめるほどの、いや人間としてそこまでいったらダメだろといった所感を誰もが抱く、堕ちるところまで堕ちた畜生たち。
文明を脱ぎ捨て本能を主人と仰ぐ奴隷(イヌ)と化した、社会性から秒速光年単位で遠離るケダモノ。
カノッサ機関では彼ら――HENTAIの有能性に早くから目を付けた。
彼らを上手に運用してやれば、世界的なモラルハザードを勃発させて極大規模の社会混乱を引き起こすことができると、機関所有人工衛星搭載の超高性能演算器によるシミュレーションで証明されている。
そこでカノッサは野望に近付く階梯を築く一段として、隊員がHENTAIのみという特別編成部隊が秘密裏に組織しているのだ。
神父から言わせれば、まさしくアホの所業。
それでも創造主の意向には逆らえないのが組織構成員の悲しい性なのであった。ホントかよ。
まあひとまず変態談義は脇に置いて、
「いらない?あぁ、そりゃ無いっしょ、要るってここ、うん、いるいる」
ヘビ
神父の猛毒をあっさりと、何でもないと一笑に付すが如く気軽に叩き伏せた甲の相好に、笑顔の奥から烈寒の観察眼を刺し貫く。
(……効かんか。
並大抵の心胆ではない。
まったく参ったな、呆れ返るほど大したものだ。 ガジェットオブライオンハート
多少の動揺も人間味だろうに、そのブレのなさには薄ら寒さすら憶える。”機械仕掛けの英雄”とでも呼ぼうか、まさか情動を電子制御されている訳でもあるまい。)
まるで”理想の勇者”を総身で体現するかのような、強靱極まりない精神性。
成程、『楽園』の守護者には適任だ。
神父は結論する―――この男は、邪気眼大学における”最後の希望”となりうる第一級危険因子であると。
例え邪気大を、機構が崩壊寸前になるまで追い詰めても。
生徒間の結束も、絆も、何もかもが解れ綻び失われようとしても。
この男のような種類の人間が生きている限り、呼吸を続ける限り、彼を軸にして再び敵勢に拮抗しうる一大勢力が再構築されてしまうおそれがあるのだ。
事実カノッサは、何度も痛撃を受けた。
勝利目前、敗北不能の絶対的優勢にも関わらず、理不尽と罵りたくなる逆転劇で幾度苦渋を味わわされてきたか。
殺害が急務。
このような英雄的資質を宿す人間は、真っ先にその命を刈り取らねばならない。
442
:
神父エルガ
:2013/10/21(月) 15:55:31 ID:3JljLLpE
(第一級危険因子の排除には、本来動かすのに膨大な手続きが必要になる”【死】の守護天使”の即時出動が允可されている。
実力差を考えれば、私一人でも十分に対処は可能だろうが……失敗すると面倒だ。
万一を考え慎重を期すに越したことはない。)
【死】そのものを操る彼女なら、如何に英雄といえど容易くその命を散華させるだろう。
何故なら、万象逃れ得ぬ滅び故に。
乞食も王者も、勇者も娼婦も、死すべき者(タナトイ)も不死なる神(アタナトイ)も、等しくその生の歩みは死という終焉にすべからく向かっているから。
行動は迅速に。
邪気眼大学の全てを完膚無きまでに破滅へ誘うために。
機関本部へ所要の手続き申請を行うべく、神父は適当な理由をつけてその場を離れようとした。
が、もう遅い。遅すぎた。
分岐点はとうに過ぎ、命運は決定されている。
「――なぁ、神父さん?アンタ今”■”って――」
「――――――。」
何を言っているのか分からない。
甲の唐突な問いかけに驚いたのか、一瞬思考が停止する。
否、違う。神父はそこまで愚鈍ではない。ならば何故か。簡単だ。認めたくない。脳が勝手に受け入れを拒絶している。
どうして。
どうして、どうしてどうして。
甲への受け答えは完璧だったはずだ。
ハッタリも不自然なくいなしたし、疑念を持たれかねない材料は何一つ与えなかった。
なのに、何故目の前の男は、この私に怪訝な視線を差し向けているのだ? 問題だった箇所が皆目見つからない。一体、何が、起こったという―――。
『“四神快楽天”が一人、“百合玄武”圓五十鈴(まわり いすず)。凛の脱ぎたておパンツのため、この世の悪を成敗しに参りましたわ』
『ふむ、”この世の悪”かい?
それはまたスケールの大きな敵を成敗しに来たものだ。
もしかして甲君が言うところの、大学で工作活動をしているというカノッサ機関の手先を指しているなら、君も話に混じると宜しい。
たった今、謎に包まれたその■について、甲君と問答を交わしていたところだからね。』
記憶のフィルムが逆回しされ。
神父は合点が行く。想定外の闖入者、圓五十鈴。
開口していの一番に変態発言をしでかした彼女に対して、神父は余裕癖が祟って侮り――構えを解いてしまった。
この場には、目下の警戒対象であった甲も同席していたというのに。なら誰がやって来ようとそれを加味した応対をしなければならなかったはずだったのに。
もし。
もしこの場で相対するのが甲だけだったら。
神父は十全に凌げる自信があった。あらゆる切り込みをすれすれで躱し、余裕然として鍔迫り合いができた。
些細な想定外の事態で全てが覆された。人払いの術式を設置しておくべきだった。己に有利な状況を事前に確固たるものにさせておいてから、甲と接触するべきだったのだ。
だが、IFに根ざす想像は、現実の問題解決の一助にはならない。決して。
443
:
紛うことなき逆ギレ
:2013/10/21(月) 15:57:48 ID:3JljLLpE
――これはゲーム。勝敗は共に等価。
――敗北もまた愉悦という破滅的願望。
当初はそのつもりだった神父の胸中に、強い粘性を持ったドス黒い、ヘドロのような想念が泡を立てて湧出を始める。
神父が犯したミスは致命ではなかった。
昨今のミステリで探偵がこんな論拠を叩き付けてたところで、犯人はいくらでもふてぶてしく開き直れる。
例えば、これまで邪気眼大学に侵入したカノッサ構成員の殆どが男性であったことから、統計的な先入観で性別を決めつけるような発言をしてしまったのだ、とか。
所詮、その程度のミス。
計画の支障を来すどころか、進行の妨げにもならない些細な蹉跌。
ならば何故?
何故、闇という闇を煮詰めてジャムにしたような想念が湧いてくる?
分析するまでもなく簡単だ――甲との純粋な対決による敗北ではなかったからだ。ゲームを台無しにされたからだ。二人で遊戯に興じる盤上を引っ繰り返されたようなものだ。
とすれば必然。
その漆黒の感情の矛先は。
「――――――――――――――――――――」
余裕然とした空気は失せていた。
焼失していた。
ぐつぐつと煮え滾る悪感情が平常を灼いて融かして、触れれば熱傷を負いそうな慄然たる殺気の渦。
神父の瞳の中で、不吉な黒曜色に光る太極図が正気を外した速度で回転している。まるで箍が弾き飛ばされたように。まるで戒めの楔から解き放たれたように。
真に致命的だったのはミスではなかった。
神父の仮面的な人間性。
ほんのちょっとしたきっかけで暴走する危険な二面性。
以前、神父が甲に話した”能力の制御が侭為らない”というのは、この幼稚ともいえるつたないメンタリティに因る現象であった。
支柱がぐらぐらした稚児の心で、太陽という強大な力を制御しうるはずもない。
柔和な笑顔を物語るのは今や表情筋のみ。
やおら、すっくと立ち上がった神父は、変態談義を甲に仕掛ける圓五十鈴の元へと歩みを進める。
空が翳っていく。
流れる雲が空を覆ったのではない。
白く眩い日差しを地上に降り注ぐ頭上の太陽が、黒曜の影に蝕まれていく。
やがて勾玉状に半分を隠すと、太陽は巨大な太極図と化した。重く低い震動音を響かせながら光量が下がり、薄暗がりを広場一帯に形成していく。
「あァ〜あ、参ろうやァな、参ろうやァなァあ。ぱらいその寺にィぞ、参ろうやァなァあ。」
歪んだ声音のバリトンが不気味なオラショを唄う。
その細い首へと。
手を、ゆっくりと伸ばす。
今や影を落とされた地上では目を眩ませるほどに輝いているその右手を。
かつて甲の体内を極熱で灼き尽くした、太陽の力の一片を封じ込める魔業―――【太陽の手(ヘリオグロシア)】が、子女の咽喉を爛らせ呼吸機能を殺そうと緩慢に迫る。
444
:
圓五十鈴
:2013/10/21(月) 19:45:18 ID:HaONsvEE
>>441-443
「あら、どうされましたの?気分が優れないようですわね。よかったらこれをお使いになって」
そう言ってスカートのポケットから取り出したるは、可愛らしい水色と白のボーダー。
ハンカチではない、パンツである。
元の持ち主が誰であるかは今更言うまでもない。
「困った時はお互い様ですわ」
そしてシメにお嬢スマイル。
神父のあからさまな豹変にも気付かぬ危機管理意識の低さ、まさに箱入り。
神父の唄は念仏のキリスト教verかなんかだと思ってるし、天候の変化も「また生徒がなんかやってるよ」くらいの認識である。
ここまでパーだと、当然こうなるわけで。
「あら、何かついてまして?」
はい、首に手ぇかかりました。
そのままファイア、炎に包まれた五十鈴は何が起きたかも分からぬまま、ゆっくりと地に膝をついた。
「ああぁ…凛の香りが染み付いたお洋服が…」
What?
「ッどうしてくれますの!?これ、あと6着しかありませんのよ!?これじゃ一週間ローテ出来ないじゃありませんの!!」
どっせいッ!
お嬢らしからぬ気合一閃、その身を包む炎が掻き消される。
現れたのは、都合よくヤバイ部分だけが燃え残った、ある意味エロい格好の激おこ五十鈴丸。
なるほど、たいした巨乳である。
その身には火傷の一つも見当たらない。
五十鈴はグズグズになったパンツを噛み、「キィー!」と唸りを上げる。
女性初のスーパーサイヤ人が誕生するのではというレベルのキレっぷりだ。
「久々に…プッツン来ましたわ…!」
彼女は“百合玄武”、何人も傷付ける事能わぬ無双の盾。
“鎧姫”、圓五十鈴。
445
:
圓五十鈴
:2013/10/21(月) 20:59:44 ID:kUFUOSs.
>>441-443
遡る事2000年ほど前、今で言う島根あたりに、とある将軍様がお見えになったそうですの。
彼はスサだとかスサの男だとか呼ばれていて、まぁ意訳すると「すごく強くて恐い男」みたいな意味ですわね。
スサはそこで驚くべきものを見たそうですわ。
8本の河がことごとく赤く染まっていたんですって、まぁ怖い。
伝令を走らせたところ、なんでも百済らへんから来た冶金師達が砂鉄をとりまくっていたそうですの。
酸化した鉄で河が赤くなっていたという事ですわね。
それを聞いたスサはブチ切れましたわ。
当時の政権は自然信仰を元に成り立っていて、山も河も神として扱われていましたの。
要するに冶金師達は当時の政権に喧嘩を売っていたわけなんですけれど、大陸から来た彼らにはそれがわからない。
鉄という当時の超最先端マテリアルを大量に造っているというのも、またマズさに拍車をかけたみたいですわ。
ーーー政権(カミ)に牙剥く邪龍は斃さねばならない。
スサは冶金師の8人の族長を酒の席に招くと、酔った隙に全員の首をはねましたわ。
あとは当時激レアだった鉄の剣をお土産に、スサはお家に帰ってめでたし×2なんですけれど、残された女達はそうもいきませんでしたの。
彼女達は子を孕んでいた。
言わずもがな、スサの子供ですわね。
彼女達は冶金師の誇りを守るため、砂鉄をガブ飲みして自害しましたわ。
でもそのうちの一人がどうしても死ねず、結局子供を産んでから死んだそうですの。
その一族の女は、毎夜一杯の砂鉄を飲むのがならわしとなりましたの。
2000年もの間砂鉄を飲み続けた一族は、いつしか異能を得るようになりましたわ。
もうおわかりになって?
その一族の姓は“圓”、私のご先祖様ですわ。
「私の一族は、火を退け刃を砕く鉄の肌を持ちますの。この程度の炎、日焼けサロンみたいなもんですわ」
ちょっと喋り過ぎちゃいましたわね。
ほう、と一息ついた五十鈴は、しかしそのお陰で、熱くなった頭が冴えていくのを感じた。
いきなり殺しに来るとか、やべーぞこいつ。
自分じゃなきゃ首落ちてたろコレ。
こういうキ印は関わらないのが一番良い。
だが、それ以上に許せない事があった。
凛の衣服一式+パンツを焼きやがった事だ。
もう決心は決まっていた。
「あなた、生きて帰れると思わない事ね」
こいつはブチ殺す。
446
:
甲
:2013/10/21(月) 21:18:43 ID:S5hhoY9Q
(´ω`) …
(´ω`) (あーこれもうわかんねぇな)
(;´ω`) …
ブチ切れモードの二人に挟まれる形になった甲
イマイチテンションに乗り遅れた
やべぇよ…やべぇよ…
(;´ω`) 「く、KUNRENとかで闘ればどうかなっ」
(;´ω`) …
447
:
神父エルガ
:2013/10/21(月) 23:23:17 ID:3JljLLpE
笑顔を浮かべる少女の細い頸を、輝く太陽の手が握り―――瞬間、光熱が爆轟を上げた。
網膜を灼く強烈な閃き。鼓膜を強かに衝く衝撃音。
放射状に拡散する熱波は酷熱。
断首と呼ぶにはあまりに過剰な苦痛をもって骨肉を焼き切る、死の握撃。
悲鳴を上げる間もなく、その肢体は業火に包まれた。
尋常ではなく燃え盛る炎熱の中にあるため状態を確認することは叶わないが、勢いが収まる頃には、首の断面を晒して炭化した子女の死体が一つ転がっていることだろう。
相手が普通の子女ならば、だが。
まるで破り捨てるように、乙女の柔肌を黒ずませんと燃え盛る炎が、裂帛の一声と共に吹き散らされた。
「久々に…プッツン来ましたわ…!」
隠し切れぬ憤怒を乗せ語られたのは、圓一族のルーツ。
耐火退刃の特異体質。
成る程、道理だ。どれだけの強度かを推し測るには材料が足りないが、今ので手傷を負わせられぬということは理解した。
ただの変態だと思っていたが、撤回せねば。
―――などと、平時の慎重に重きを置く神父の思考ならそう得心し、立ち回りを考え直したはずだ。
だが、今は違う。
理性の糸など灼き切った神父は、もはや悪鬼の形相を隠そうともしない。
黒色の僧衣服(カゾック)を激しくはためかせ、総身から吹き荒ばすは極熱を孕む太陽風。暴悪な熱嵐に紅葉たちが中空で嬲られ、やがて発火し燃えさしと化す。
地面に敷かれた煉瓦が熱で変色していく。
ベンチは表面温度を急激に著しく上昇させ、手すりなどは肘でもつこうものなら熱傷はまず免れない。
時計塔広場が、炎熱の地獄に塗り替えられようとしていた。
「あ〜ァあ、参ろォやァな、参ろォやァなァあ〜。先はァーな助かる道でェあるぞォーやァなァあ〜。」
歪んだバリトンがオラショを唄う。
楽園を破壊しようと暗躍する男が、楽園浄土の夢を謳い上げている。
かつて苛烈な弾圧を受けながら信仰を捨てなかった、とある極東島嶼国の基督教教徒がかつて互いを励ました祝福の聖句。
それを唄っているのが、寄りにもよってこの男とは。
怨嗟と呪怨で輪郭が蕩けた思考が波打つ。
この女は先刻、何と言ったか。そうだ、自分は火に耐えられる体質だとか何とか。
まずはその防御性能を試そう。
幸い、箍を弾き飛ばした今、出力はある程度勝手が利く。『神性解放』には本部への申請が必要だ。現場の判断で外しても構わないが、後で始末書を書くのが面倒だから要不要の判断は後々に回す。
とにもかくにも、やるべきことは決まっていた。
だから―――状況に取り残され惚けているこのサイボーグにも、舞台に上がってもらわなくてはならない。
448
:
神父エルガ
:2013/10/21(月) 23:24:35 ID:3JljLLpE
どうしよう。
どうすれば一緒に踊ってくれる?
そうだ、一瞬で激昂させられるような一手が望ましいだろう。
こういう手合いの男は、仲間や後輩との絆を大事にする。それを擽ってやればいい。あとは確か前回の襲撃時、お誂えの品を回収したので、駄目押しに使ってみよう。
神父は片手を上げる。黒曜に蝕まれ太極図と化した太陽が低く低く唸りを上げた直後、天地が烈怒したが如く鳴動。
―――― あ ァ ア 参 ロ う ャ ァ な 参 rお ゥ や ア n あ ァ 〜 〜 〜
ぱら い そ ノ ぉ 寺 n i ぞォ 参 ろ ゥ ャ ア な ァ a ァァ 〜〜 〜
直後。
合唱が、聞こえた。
その歌は神父が先程から紡ぐ呪わしい調べと寸分違わず。
ただ異なっている点を上げるとするなら―――広場を取り囲む繁み、その全周囲から何十と、気味が悪いほど重なって聞こえるという一点。
枝木や草花を踏みながら、人垣の半径を狭めるように姿を見せたのは男女の若者たち。
いずれも邪気眼大学の今期生徒に相違ない。
が―――様子が異常だった。眼球は芋虫のようにのたくり、だらしなく頭を垂れ下げている。さながら幽鬼か屍鬼か、この神父によって何かしら悪しき”加工”を施されたことは明白であった。
『第十三聖十字軍(ザ・サーティーンバタリオン・イスカリオテ)』。”裏切りの使徒”の名を冠した神父麾下の軍勢。
「彼らは――悔悛の勧めに応じなかった生徒だよ。」
神父が細い弦月に歪めた口で囁く。
悪意と敵意を綯い交ぜに、汝は無力であると嘲笑うかのように。
「甲君。君のように純な。
或いは、歪みながらも真っ直ぐにあろうとする、とても強靱な心を持った優秀な若者たち。だった。
あまりにも聞く耳を持たないので、随分と無茶な加工を施術してしまった。脳機能に後遺症が残らねばいいが、医学は門外漢なんだ。明るくなくてね………君はどう思う?」
その時、カランと、硬質な音が響く。
金属塊だった。
何日も食物を口にしていないような覚束無い足取りの『第十三聖十字軍』の一人が、甲の足下へ滑らしたのだ。
鋼鉄のような材質。損壊が激しいが、どうやら剣のようだ。
甲になら分かる。
何故なら、柄部分に拵えられた、怪鳥を象るエンブレムは、彼にとっては見飽きたほどに目にしたデザインで―――つい先日会話した相手の、背の鞘に収まっていた得物だったから。
449
:
邪気大史上五指に入るクズ
:2013/10/21(月) 23:27:47 ID:3JljLLpE
「甲君。甲君。甲君。」
愛する恋人に甘い言葉を囁くように。
無垢な子供を騙す蛇の甘言のように。
神父は、吐息を混じらせながら彼の名を呼ぶ。呼ぶ。呼ぶ。
「踊ってくれよ、私と一緒に。
皆でワルツを踊ろう。
ここまで材料を揃えれば十分だろう? もうその螺旋を収めておくことなど出来ないだろう?
だって、もしかしたら君が籍を置いていた園芸部の後輩かも知れない。ああ、五十鈴君が信奉するスーパーアイドルとやらのファンの一員も混じっているかも知れない。
彼らは普段スリープさせている。
無理やり脳をアクティブにしているものだから、負担がバカにならなくてね。
あまり長いこと酷使をしていると、すぐ使い物にならなくなってしまう。逐一材料を確保してもいいが、そんなことを繰り返せば足がついてしまうだろう?」
喜色を孕んだ声。
嗤っている。嗤っている。嗤っている。
逆鱗の縁を優しく小指でなぞってやるように――悪魔の愛を含んだ嘲笑とはまるで別物。
太極太陽を背にした神父の表情は暗く影に覆われているが、歪曲する弦月の口だけははっきりと分かる。これが悪鬼の形相でなくて何だと言う。
この男は、
邪気眼大学を、
この場所に通う学生達のことを、虫ケラ程にも思っていない。
「さあ五十鈴君。甲君。みんなでKUNRENへ行軍と洒落込むかい? それとも、待ちきれないからここで始めるかい? 私はどっちでも構わないよ。」
君達を殺害できるならね。
広場に天地を含めて充溢する愉快げな殺意が、それを言葉より雄弁に物語る。
カノッサ機関。異能者からもっとも忌み嫌われる仇敵。世界を股に掛けて蜷局を巻くその毒蛇(ヨルムンガルド)の猛毒が、今、彼らへ邪悪な牙を剥こうとしている。
450
:
圓五十鈴
:2013/10/22(火) 13:57:53 ID:nQ3KlcZ.
>>447-449
「あ、あらあらあら…?これ、ちょっとヤバイんじゃなくて?」
この現状もそうだが、何よりも神父の頭がヤバイ。
この数の傀儡を即席で用意したわけでない事は、アホの五十鈴にもわかる。
つまり、かなり前から“仕込み”を行っていたという事だ。
一体何のために?
どうやら甲に構ってほしいようだが、もしかして好きなのかな。
さてはこいつホモか。
汚らわしいホモ!
「…甲さん、パンツをお脱ぎなさい。それで大人しくなるはずですわ」
パンツのためにこれほど大勢の生徒を巻き込むとは、まったく常軌を逸している。
五十鈴を始め、他の“快楽天”達でさえそこまではすまい。
このままでは何をしでかすかわからない、ここは素直にパンツを渡すのが身のためである。
「何アホな事言ってんすか」
突然のの声に我に帰った五十鈴は、光の速度で声の方へと振り返る。
そこにおわすは、我が麗しの…
「凛!?ぶっ、ぶっ、ブヒィーーーー!!」
玄武だっつってんのに、一瞬で豚と化す五十鈴。
げに恐ろしきは穹凛、スーパーアルティメットアイドルの名は伊達ではない。
凛は五十鈴の狂乱に顔を顰めつつ、見えぬ双眸を開いて神父を睨み据える。
「私の庭で随分と勝手な真似をしてくれたっすね、カノッサさん。KUNREN?寝言抜かしてんじゃねーっすよ。あんたは今この場で…」
「ンハァー!!凛たんがお目目開いてますわ!レアですわァー!私も!私も睨んでくださいまし!さぁ!」
「お前ちょっと黙れよ」
451
:
甲
:2013/10/22(火) 20:55:19 ID:d00FHvaQ
>>447
>>448
>>449
>>450
「―――…た」
豹変したエルガ
蝕まれた太陽
耳障りな唄
取り囲まれる気配――取り囲んだ奴等
剣、アイツ(ルビカンテ)の剣
両の眼に映り込む現実を正しく理解する
「――見つけた――」
夥しく加速する展開
それら全てを等しく拳に握り込み、甲は静かに立ち上がる
一歩
神父――いや、既にそれは神父以外の何者かに変容した――エルガに向けて足を踏み出す
二歩目を踏む次の瞬間には――――
――――――既にそこに甲の姿は無く
「お前が、邪気大(オレ)の敵だ――」
瞬く間に間合いを詰めた烈火の気配はエルガの正面にて弾ける
固く、硬く握りしめられた鋼の拳が――必殺の勢いを持って振るわれた
452
:
クズ
:2013/10/23(水) 03:15:46 ID:N47qOxKY
時計塔広場に狂熱が渦を巻く。
本性の凶相をいよいよ露わにした神父・エルガ。彼が従えるはイスカリオテの烙印を押された洗脳学徒兵、広場を取り囲む軍勢およそ数十。
この期に及んでビアン変態道を貫く快楽四天王・圓五十鈴。
鋼鉄の拳を堅く、硬く握り締めて立ち上がる元実働部隊・甲。
そして――
「私の庭で随分と勝手な真似をしてくれたっすね、カノッサさん。KUNREN?寝言抜かしてんじゃねーっすよ。」
現在、邪気大最大勢力を召し抱える女帝、もとい今を時めくスーパーアルティメッドアイドル・穹凛。
事態を取り巻く役者が揃い踏みを始める。
歯止めは利かない。
正気を外れて猛回転を続ける地獄の歯車はもはや、完膚無きまでに粉砕されるか、己の役割を達して地獄を顕現させることでしか一切の静止は叶わない。
すなわち―――来るべき運命の終結へ向けて、状況は加速を開始した。
最初にアクセルを踏んだのは、
「お前が、邪気大(オレ)の敵だ――」
やはり甲。
邪気眼大学の一本槍が先陣を切り、烈火のごとき紅蓮の気勢を軌跡として疾走する。
二歩目からその姿の目視はすでに不能。
まるで間合いを消し飛ばしたかのような出鱈目な踏み込みを見せた半機半人の英雄が、今や鉄塊と化した自慢の拳を狂神父へと振り抜く。
砲弾かと錯覚する圧倒的重量感。
紛うことなき必殺の速度で迫るそれを前に、神父は尚悪魔のような哄笑を崩さず、
近くに控えていた洗脳学徒兵、『第十三聖十字軍』の襟を引っ掴み、強引に人肉の盾とした。
「少し大人げないかな?」
心にもない言葉を空々しく嘯いて、神父が口角をさも愉快そうに吊り上げる。
拳を振り抜くこともできる。
そのまま盾にされた学徒ごと神父を殴り飛ばして、機先を制することも可能だが――神父は、この甲という男は、そういうことが決してできないと確信していた。
例え甲が躊躇いなく拳を振るったとして、それでも神父に支障はない。
何故なら次手は既に、打ってある。
453
:
クズ
:2013/10/23(水) 03:19:10 ID:N47qOxKY
【全体攻撃】
直後。
空が吼えた。
否――大風が、来る。
予兆は一瞬。
刹那の内に爛れた大熱を孕む猛風が、真正面から甲へと吹き付ける。
否、その風速は叩き付けると表現するのが近い。地上の物を容易く引き剥がすあかしまの風が、熱量を伴って時計塔広場に荒れ狂い、甲を吹き飛ばそうとする。
当然その余波は甲後方の人間へも牙を剥いた。
繁みとを隔てる木製の柵が。敷設されていたベンチが。果ては木立、地面に敷き詰められた煉瓦、地に伏せ損ねたイスカリオテの軍勢の一部に至るまで、地面から剥がされたものは全て猛烈な速度で襲来した。
太陽風―――ヘリオガバルスの神威の一つ。
「そう易々と接近は許さん、大人しく吹き散りたまえ。」
地獄のような光景の中、一人嗤う神父は泰然と。
まるで何事もなかったかのように淀みない歩調で後退り、再び詰められた間合いを離そうと試みる。
以前、いつか彼が見せた一対一の精神は、事ここに至っては微塵もない。卑劣極まる戦法、相手を一方的に蹂躙する非道こそが、本来の神父の戦闘スタイルであった。
454
:
穹凛/圓五十鈴
:2013/10/23(水) 09:42:25 ID:fIb0Wex.
>>453
「五十鈴さん!」
「がってん承知の助ですわ!」
ずいと前に出て、凛を庇うように立つ五十鈴。
涼しげな顔で凛の分まで太陽風を受け切る姿、まさにメイン盾。
これで勝つる。
(とはいえ、実力も然る事ながら、生徒を人質に取るこすい手口…厄介っすね。長引くとヤバイかもっす)
「という事で、将を射んと欲するなら馬とか兵子とかシカトで将をスナイプっす」
声と同時、五十鈴の背から4本の音叉ナイフが空中に放り投げられる。
凛がギターの弦を弾くと空中で音叉が震え、空気が爆ぜて音叉ナイフに推進力を与える。
裏切りの軍勢の隙間を縫うようにして、4本の銀の矢が様々な角度からエルガへと飛来する。
455
:
甲
:2013/10/23(水) 22:59:22 ID:ZYMqTNhY
振り被った拳の向かう先
目指すべき敵の表情<カオ>が愉悦に――醜悪に歪む
「―――」
敵は拳と自分自身との間に、虚ろに囚われた『命』を割り込ませた
加速する全身に緊急停止のシグナルを奔らせる
無理な制動に軋む関節
踏み締める足先の地面が抉れ
敵を撃つ為に振るわれた拳は洗脳された学生の鼻先で止まる
「………下衆が」
吐き捨てるような呟きは
しかし大熱を孕む猛風に掻き消える
勢いを失った不安定な体勢は、叩きつけられる風に為す術もなく攫われて行く
「――が、は…ッ」
吹き飛んだ甲の身体は
広場中央、時計塔にその背を強かに打ち付けた
456
:
クズ
:2013/10/24(木) 04:15:52 ID:pFxrkERE
「ふふ、ふふははは、あッははははははは! いやいや全く恐れ入る……敬服するよ、君たちの強く結ばれた絆には。」
熱風が凪ぎ、暴威が止む。
煉瓦敷きの大半は剥落して地面が野晒しになり、
周囲に生い茂っていた秋めく木立は、熱気に灼かれて黒ずみ、幹には深刻な罅が走って、自然として息絶えてしまっていることが一目で判った。判ってしまえた。
地獄のような光景。
それを顕現させたのは、洗脳兵を人質にして笑みを浮かべた黒僧衣の神父。
情に篤い気質をまんまと利用し、肉薄する甲を広場中央の時計塔に叩きつけた彼は、満悦した様子で醜悪に形相を歪めている。
ロ グ
「君らの今までの活動記録を見たことがある。
切磋琢磨、刻苦勉励、実に美談だ心を打つよ。艱難、辛苦の数々を絆の力で乗り越えてきたんだね。
だが、しかし……。
故に君たちは、致命的な弱点をも抱えている。
私のような手合い──要するに、甲君が言うところの”下衆”が敵では、手も足も出ない状況が成立しうるということなのだ。」
気の毒そうに、憐れむように。
語りかけるその姿は正しく神父然として、しかし隠しきれぬ悪意が言葉の背後に蠢いている。
普通はこの優勢を利用して勝利へ畳み掛けようとするものだが、人質の優位性をよほど確信しているのか、神父は攻めに出る気配を見せず滔々と長広舌を垂れ始めた。
余裕の表れか。
それとも、ただ相手の心を傷つけたいだけか。
「本心を打ち明けると、私もこんな方法に打って出るのは辛い。
嗚呼、心が痛む。こんな所業、今すぐにでも投げだして君らの手傷を看てやりたいと切に願っている。
けれど……勝利者とは常に。
そういった愚直で、脳の足りない手合いを好餌とし、糧とし、利用してきた者だ。
使い潰しの駒風情が指し手に弓を引けるのか、いいやできない。そして、この邪気眼大学は、そんな負け犬の量産施設に過ぎないことに何故気付かない?
見るに堪えない嘆かわしい。どうした、後輩を傷害するのが怖いかね? それとm」
ビ、と。
銀色の閃光が時計塔広間を飛翔した。
都合四条。神父の言葉が途切れる。瞬間──紅蓮の爆風が、神父を起点として巻き起こる。
一瞬辺りを火の色に染め、直後カラン、と、ぼろぼろになった煉瓦敷きにナイフが四つ滑っていった。今のは、飛来するナイフを弾くための爆風だったのだ。
その衝撃の余波をもろに受け、人質の生徒が吹き飛ばされる。ごろごろと力なく転がり、やがて甲の足元で止まった。
期せずして、神父は人質を失った。
457
:
時計塔広間→時計塔広場
:2013/10/24(木) 04:25:06 ID:pFxrkERE
大した威力の爆発ではない。
脈を確かめれば存命であることが確認できるはずだ。
とはいえ、それは神父の配慮による命拾いなどでは当然ありえない。爆風の出力を適当に設定したことによる僥倖である。
この男が生徒の命を虫けら以下に扱っていることに、依然変わりはないのだ。
「────────────────────────────────。」
煙が晴れていく。
その向こうに見える神父の表情は、やはり歪んでいた。
嘲笑にではなかった。こめかみに通った一筋の赤い筋は、不意打ちにように放たれたナイフを防ぎきれていないことの表れ。
歪んだ表情が何を示すかは、低い唸りをあげて天地鳴動させる上空の陰陽太陽が代弁している。尋常でない敵意、殺意、悪意のマーブル模様。すなわち、抑えられぬ激怒。
「…………宜しい。」
一言、告げて。
神父は右手を、す、と掲げた。
瞬間、地に伏せ太陽風を辛うじてやり過した洗脳兵、『第十三聖十字軍』の残存兵が。
それぞれの得物を携え、立ち上がる。
頭をだらりと下げ、蠢動する虚ろな眼球は──今や、穹凛と圓五十鈴の両名に固定されていた。標的確認。そして、
「殺せ。」
ドオ、と大地が上下に揺れる。
それは気味の悪いほど同一のタイミングで、洗脳学徒兵が地を蹴った衝撃。
ロングソード、ハルバード、ランス、ドラゴンスレイヤー、倭刀、スレッジハンマー、トンファー、etcetc。
これまでのやり取りで幾らか数を減らしたとはいえ、いまだ二人を囲んで袋にできる程度の勢力を維持した集団が、砂糖菓子に群がる蟻のごとく一斉に全周囲から襲いかかっていく。
「手足をもぎ取ってやれ。物好きな買い手がつくかもしれん。ははは、意気のいい芋虫が出来上がるな。」
徹頭徹尾、外道畜生。
百人に問えばその誰もが生かしておく価値なしと答えるだろう。
こんな下衆に邪気眼大学が、破壊されようとしている。クーデターを煽り、生徒同士を同士討ちさせ、内から弱った大学を喰らおうと顎門を開けている。
これがカノッサ。
人命も人心も人情も、簡単に踏み躙り凌辱する人非人。
嘔吐を催すほどの悪意。手段を選ばない残虐な殺意。熱病を運び罹患者を破壊しつくす毒蛇の牙が、嗤う。
今度こそ神父に人質はおらず、人質を盾にする悪辣な手は使用できない。拳は届く。白刃は届く。しかしここから、カノッサ機関上位幹部・守護天使の本領が発揮される。
・ ・ ・ ・
「どうした、立てよ甲君。私は丸腰だぞ。それとも君らしく、彼女らを助けにでも行くのかな?」
【穹凛・圓五十鈴 >> 洗脳され操られた邪気大生、『第十三聖十字軍』が大挙】
458
:
穹凛/圓五十鈴
:2013/10/24(木) 09:22:21 ID:JggQEj0U
>>455-457
「甲センパイ!」
ーーーチッ。
吹き飛ばされた甲に、凛は舌打ちをひとつ。
あのまま殴り抜けば、こうはならなかったろうに。
確かに生徒を傷付けるのは気が引けるが、自分の身とどちらが大事かなど考えるまでもない。
だいたい、あの神父の手が入ってる時点で、彼を倒しても生徒が無事で済む確証などないではないか。
つーか、お前を倒すのはこの私だ!
あんな奴に遅れを取るなど、他ならぬ凛のプライドが許さない。
(だが好都合!これで勝つる!)
ナイフが弾かれるまでは予想通り。
神父の鼓動が怒りの音色を奏でるのを聴き、凛は再度勝利を確信する。
プライドが高く自己中心的、冷酷だが冷静ではない。
自己紹介ではない、“千里耳”で会話を盗み聞いた凛が分析した、神父の性格である。
そしてやはり、挑発を受け流せる性格ではないようだ。
待っていた。
生徒(人質)達が神父から離れる、その時を。
「ダン、“魔眼”の解放を許可するっす」
ところで、“バロールの魔眼”というものを御存知だろうか。
直視したものを即死せしめる、ケルト神話に伝わる最強の魔眼である。
しかし神話は所詮神話、この邪気眼大学の歴史においても、そのような理不尽な“眼”の存在が確認された事はない。
では、“バロールの魔眼”とは伝説にのみ伝わる空想の産物に過ぎないのか?
否。
“バロールの魔眼”は確かに存在する。
存在するのだ。
◆
「ククク…ようやくか…」
サークル棟の屋上から双眼鏡を覗く男、“撮り青龍”ことダニエル・ジョーンズは、盗聴器の受信機から発せられた凛の声にニヤリと笑う。
ターゲットの周囲に人影は無し、“魔眼”の解放にうってつけのシチュエーションだ。
「はぁぁぁぁぁ…!」
きゅぴーん。
ダニエルの眼が怪しい輝きを放つ。
「唸れ!我が“魔眼”!!」
話は戻って、“バロールの魔眼”。
“バロールの魔眼”によって齎される死は、何も心臓麻痺とかデスノート的な呪殺系のやつでは断じてない。
要は視界に入った者が死にさえすれば良いのだ。
そう、それこそが彼、ダニエルの所有する“バロールの魔眼”。
それは…
「目からビィィィーーーーーーーーッム!!!!」
破壊光線による物理的殺傷である。
◆
「黒幕ぶって調子こいてるっすけど、思慮が足りなかったっすね。こんな行き当たりばったりの戦闘、避けるべきだった」
迫る生徒達を前にして尚、凛は不敵な笑みを浮かべ続ける。
「私がアホみたいに一人で突っ込んでくるとでも?五十鈴さんは生存能力だけはハンパないっすからね、こっちも安心して“仕込み”が出来たっす」
スパァァァァァァン!!
気の利いた音を立てて、生徒達の足元に何かが突き刺さる。
凛の水着姿が眩しいブロマイドだ。
「さがれ、破廉恥ども。これ以上の狼藉は、この“ダブり朱雀”皇宗一郎が許さん」
軽やかに降り立ったその男、イケメン。
しかし凛がプリントされたTシャツを身に纏う、残念なイケメンだ。
「凛様、つつがなく完了致しました」
「うむ。あ、そうそう…神父さん、さっきの話の続きっすけどね。もうちょい周り見た方が良いっすよぉ。ーーー例えば右とか」
その言葉と同時。
右ではなく左から、漆黒の波動が神父めがけて疾駆していた。
459
:
甲
:2013/10/24(木) 18:52:37 ID:C4fObB62
>>456
>>457
>>458
吹き荒ぶ熱風の中立ち上がる
「……違ぇ、全然違ぇーぞカノッサ機関……」
足元に転がった生徒を植え込みに横たえる
「目先の勝ちじゃねえ、俺が、今、テメェの前に立ってるのはここを守護する為だ
テメェを潰す為に振るった拳で他の誰かを傷付けちまったら意味がねーんだよ――」
暴風荒れる広場に、聞こえる筈のない――いや
きっとあの敵には届くはずのない言葉は消えて行く
言葉が消えて行くのなら
その想いは硬く握った拳に乗せる
「”螺旋眼”――起動」
甲の纏う気配が一段階大きくシフトする
エルガを真っ直ぐ睨みつける眼――左眼に”緑色の螺旋模様”が輝き出す
「(足りねぇ、足りねぇ、足りてねぇ――奴が何かを仕出かすのなら
――――――それを超える、突破する、貫く為の”疾さ”が要る!!!)」
内燃する邪気が”螺旋の力”に導かれ、唸りを上げる
『螺旋眼』能力行使第二段階――”OVER LIMIT”
自身の肉体を加速させていく
黒髪は”赤”に染まり
高まる鼓動は激烈なビートを刻む
「(廻れ――廻れ――廻れ――!!!!
奴に届く為に――奴に一撃をブチかます為に――!!!!)」
広場の熱風に負け無い激熱の気配を孕んだ甲は
クラウチングスタートの体勢を取る
「――行くぜ」
宣言と共に――蹴り足で爆ぜる地面
赤い閃光と化した甲は真っ直ぐに――愚直にエルガを目指す
その直進の最中
『――もうちょい周り見た方が良いっすよぉ。ーーー例えば右とか』
鋭敏になった感覚が凛の声を拾う
オーケー分かった
なら右――俺は右だ――!!!
「――――ッ!!!」
エルガの右側面から振るわれる右拳
”バロールの魔眼”は上から
”凛の波動”は左から
”甲の拳”は右から
ここに三方向よりの挟撃が完成する
「こっちを……向けぇえええええええええええッ!!!!!!」
460
:
ドクズ
:2013/10/24(木) 22:13:52 ID:pFxrkERE
「黒幕ぶって調子こいてるっすけど、思慮が足りなかったっすね。こんな行き当たりばったりの戦闘、避けるべきだった」
この女は、何を、宣っている?
凛の不敵な挑発が、忿怨に軋む神父の更なる怒火を煽る。
手勢の差は歴然。二人に対し聖十字軍は数十人規模。そもそも純粋な物量で敗北している。圧殺は自明。
だというのに。
絶体絶命の窮地にあるというのに、女は笑っている。
神経に不快な信号が走った――同時、何度もフラッシュバックする過去の光景。
”危機的状況にあって尚不敵に笑う敵手”。たとえ如何ほどの優勢を誇ろうと、その度に覆してきた手合いが浮かべていた表情は、まさしく―――。
「私がアホみたいに一人で突っ込んでくるとでも?五十鈴さんは生存能力だけはハンパないっすからね、こっちも安心して“仕込み”が出来たっす」
「ふざけるな、餓鬼が!! 講釈を垂れるつもりか? 私が重ねた齢の半分も生きていない分際でッ!!」
怒号を上げる。
振り払う。脳にこびりつく不吉なイメージから逃れようと藻掻く。
次の瞬間、洗脳学徒兵の征進が止まった。
「――? 何をしている。貴様らの命は使い潰しの消耗品だッ!! 死をもって教示しろッ!! 真に仰ぐべき王は我らカノッサの……、…………?!」
誰かいる。
一人、増えている。
イスカリオテの軍勢は竦んだ訳ではない。そんな知能は既に奪っている。
ならば、縫い付けたのは――またもや、想定外の闖入者。美男子(服装については触れない)が、二人を背にして、大挙した軍勢の前に立ちはだかる。
この、パターンは。パズルが勝手に組み上げられていくかのように、抑えようとすればするだけ凶兆が膨張していく。
刹那、
「うむ。あ、そうそう…神父さん、さっきの話の続きっすけどね。もうちょい周り見た方が良いっすよぉ。ーーー例えば右とか」
・ ・
ズオ、と、左方から漆黒の波動が襲来した。
バロールの魔眼、視認した対象を死に至らしめる逸話を持つそれは、物理的殺傷をもって伝承を再現する。
意味するところは極大の威力。
直撃すれば一溜まりもないだろうそれが、神父の半身を跡形もなく消し飛ばそうとして、―――その時再び、全空が吼えた。
直後、太陽の熱嵐がまたもその猛威を振るう。
同じく神話に語り継がれるヘリオガバルスの神威が、バロールの即死伝承と相克し、波動を直前で縫い止める。
否、先程とは桁が違った。
肺腑に吸えば痛めかねない莫大な熱気が、地上を更地にせんと凄まじい風速で荒れ狂う。
時計塔をも僅かに傾がせた暴悪な熱風が――僅かに、しかし確実に、漆黒の波動を押し返そうとしている。腐っても守護天使。有する攻撃力、鍛錬の年季は学生を超越する。
そして、轟々と耳を劈く風の唸りでも掻き消せぬ、神父の憎悪が絶叫となって迸った。
461
:
ドクズ
:2013/10/24(木) 22:14:42 ID:pFxrkERE
「………関係あるか。
関係があるかッ!! たかが糞餓鬼が一人増えただけで、貴様らに何が出来るッ!?
教えておこう、イスカリオテの総軍が、年単位の裏工作で築き上げた軍勢がたったこれだけと思ったか? だったら貴様らの脳は実にめでたい構造だッ!!
先程、私が下した指示は”総動員命令”。
この意味が解るか?
―――――今、同時多発的に、邪気眼大学全域で洗脳兵による攻撃が行われているッ!!」
ズドン、と重い震動が響き渡った。
震源は時計塔広場ではない。邪気眼大学の、何処か。
広場の騒乱で気付かなかったのか――意識を向ければ颶風の唸りに混じって、叫び声や爆発、得物同士の激突音がひっきりなしに連続している。
即ち、大学全域が戦場。知らぬ内に、各地で戦端が開かれていた。
屋根瓦や魔力灯、建材が砲弾のように降り注ぐ。何かに掴まっていなければたちまち高空へ攫われてしまう暴力風に加え、周囲の景色があまりの熱量で蜃気楼のごとく歪み始める。
文字通り、桁の数が違う。
より精度の高い地獄を顕現させながら、神父が熱嵐の大音にも負けぬ叫びを張り上げる。
「度重なる自治会の騒乱。
大学への不信感……そんながたがたの状態で、総攻撃など受けたらどうなるッ!?
貴様のお陰だな、穹凛ッ!! 貴様が筆頭となって勢力図を掻き乱してくれたお陰で、事態はここまで混迷を極め、内部崩壊を計画より速やかに進行させることができたッ!!
感謝の念が絶えんよッ!! 貴様らのめでたい脳みそになァッ!!
もう止められん……地獄の歯車は輪転するッ!!
邪気眼大学は滅びるッ!! 『楽園』などというふざけた夢想もここまでだッ!!
ふははははッ、開戦してしばらく経ったが、何人死んだかなァッ!? 百か千か、どちらが死のうが私にとっては踏み潰す虫の死骸が増えたに過ぎんがッ!!
貴様らなど所詮その程度だ……ッ!! 無力ッ、非力ッ!! 塵めらッ!! 貴様らは何にもなれぬ虚ろだッ!!
ならば死ねッ!! 滅べッ!! 跡形もなく壊れて消えろォッ!!」
この上――更に熱嵐は、擂り鉢状を形成しようとしていた。
飄風、或いは飆風。
地上の一切を上空へ巻き上げ、蹂躙し、中空で分解させる大破壊の顕現。
もはや洗脳兵も何も関係ない。神父は広場からこの竜巻の径を広げ、大学全域を呑み込む超巨大の破壊嵐を作り上げようとしている。
地獄の歯車。
血の色に赤錆びたそれが、恭しく、黙示録を招来しようとした、その時。
「こっちを……向けぇえええええええええええッ!!!!!!」
疾走する紅蓮の影が。
もはや立つことも叶わぬはずの熱嵐を、鮮やかな輝線を、愚直に、直線に描いて。
迫る。迫る。再び神父に肉薄する。上、左、そして右。三方向からの挟撃突貫が、狂神父へと迫っていく。その矜持を懸けて。
「ぐ、な、……こ、の……貴様らぁぁぁぁぁぁあああああああああああああッッッッッ!!!!」
もはや風景の視認ができぬほど狂い叫ぶ太陽神の暴風が、力の天秤をなして一進一退の拮抗を始める。
後は、力の丈が、想いの丈が、勝負を決める。
462
:
弩凛と愉快な仲間達
:2013/10/25(金) 01:47:03 ID:YCQvvfhQ
>>459-461
「……バロールを……」
信じ難い光景だった。
五十鈴を“最強の盾”とするなら、ダニエルはまさしく“最強の矛”。
それを受け止めるどころか、押し返しつつあるとは。
だが、同時にわかった事がある。
この神父と言えども、“バロールは無視出来ない脅威だという事だ”。
「ダァァァァン!!後でスク水でもメイド服でも着てやるから、そのまま最大出力で撃ち続けろっす!!こいつを逃がすな!!」
遥か彼方から、ブヒィィィという嘶きを“千里耳”が捉える。
これであと30秒はイケるはず。
一方、五十鈴と皇は洗脳兵を押し留めるのに奮闘していた。
鋼の皮膚を持つ五十鈴はまだ良いが、皇はやり辛そうな様子だ。
アーティファクサーたる皇は、所謂マジックアイテムの使い手である。
使用には当然魔力を必要とし、その消費量はアイテムが強力であるほど加速度的に増す。
下手に傷付けられない以上、薙ぎ払う事も出来ない。
およそ考え得る限り、この状況は皇にとって最悪と言えた。
それでも尚、凛はこう言う。
「皇、10秒で良い!この風をなんとかしてほしいっす!出来るっすね!?」
その言葉を受けて、皇はニヒルな笑みを浮かべ応えた。
「凛様。貴女のためならば永遠(とわ)にでも」
スパァァァァァァン!!
気の利いた音を立てて、凛を囲むように何かが地面に突き刺さる。
凛の際どい格好が刺激的なブロマイドだ。
そのブロマイドを支点に、凛の周囲に結界が構築される。
「外界からの干渉を遮断する結界です。故に凛様、思い切りイッちゃってくださいませ」
「…あとで殺す!」
しっかりセクハラも忘れないその姿、変態的。
しかし、どこかカッコイイ変態であった。
「甲センパイ!ちゃんとキメてくださいよ!?」
凛がギターを掻き鳴らす。
それに伴い、凄まじい音の奔流が生まれる。
およそ一個人の力で生み出されるエネルギー量ではない。
『私がアホみたいに一人で突っ込んでくるとでも?五十鈴さんは生存能力だけはハンパないっすからね、こっちも安心して“仕込み”が出来たっす』
そう、仕掛けは既に打っていた。
その正体は、先に神父のこめかみに傷を入れた音叉ナイフ。
皇はこの大学の至るところに、前もって音叉ナイフを打ち込んでいたのだ。
それも、それぞれに皇の魔力を込めた上で。
件の音叉ナイフは本来、それ自体による攻撃を目的としたものではない。
共鳴現象を魔術的に強化した、音の増幅装置。
「…私のせいで邪気大が混乱すか、確かにそうかもしんないっすね。…で?だからなんすか?」
夥しい数の音を制御しながら、凛は静かに口を開いた。
この暴風と轟音の中、その声はやけによく通って聞こえる。
「私達異能者(はぐれもの)が、普通に勉強して、部活して、飲み会して。友達作ったり、恋をしたり、将来を夢見たり、挫折して泣いちゃったり。喧嘩したり、いがみ合ったりーーーーアイドルに夢中になったり。それってそんなに悪い事っすかね?邪気大の他に、そういう事出来る場所あるっすかね?」
ーーーーぎしり。
猛り狂う音と魔力に、空間が軋む。
「それが邪気眼大学で、それが私達。私はやめるつもりないっす。ましてあんたみたいなクソヤローに、必死こいて生きてる生徒達(わたしたち)をクズ呼ばわりなんてされたくない!!!!」
込められた魔力が、解放の言葉を待ち望む。
「妬いてんじゃねーっすよ、クソガキ。ーーーー“灼熱のパルフェ・グラッセ”」
凛の指が弦を撫でる。
凛の全魔力を込めた音色が、何重にも増幅されて甲を爆発的に強化した。
463
:
甲
:2013/10/25(金) 23:24:08 ID:GYy0RkBE
>>460
>>461
>>462
狂者が吠える――己こそが勝者だと
猛る気配に呼応して暴風は更に狂い荒れる
「(押し、返される――――!!!)」
”螺旋眼”の能力を行使し吹き付ける熱波を回し、散らす
しかしそれ以上は進めない――全力を持ってして、そこに留まることが精一杯で
「――――ちッ」
甲の進行が止まった
勢いが死に、叩き付けられる凶風が甲の身体を再び攫おうとした
その時
『甲センパイ!ちゃんとキメてくださいよ!?』
荒れ狂う熱風を切り裂いて――聴こえるギターの音色があった
『――――“灼熱のパルフェ・グラッセ”』
「――――――」
音はそのまま身体に溶け込んでいき
甲の全身の力が、かつて無い程の充実を見せる
「ぉ――ぉおおおおおおおおおお!!!!」
左眼の”螺旋眼”に溢れる緑光が渦を巻き、輝いて
己を襲う暴熱風を叩き散らし――――甲は、悠然と立ち上がる
背中越しに、凛に親指を立てる
「上ッ等だスーパーアイドル、ビシっとキメて来っから――よーく見とけよ」
ニヤリと笑うその姿、不屈
今ここに、”踏み出す力”を手に入れた
「――おい、見たかよカノッサ機関
俺だけじゃ踏み出せなかったもう一歩が、アイツの――穹のお陰で進めるんだぜ」
螺旋を描く眼が、射抜くような視線をエルガに向ける
「これが俺達、これが邪気眼大学だ
一人じゃ足りねぇ一歩でも、一人じゃなきゃあ踏み越えられる
繋がりが力になるって事を――それを育む所が邪気眼大学(ここ)だって事を」
右拳を真っ直ぐ突き出して
「――――教えてやる」
”螺旋眼”の力を全開放する
突き出した拳を中心に――紅蓮の邪気が渦を巻く
「刮目しやがれ、これが”螺旋眼”決戦奥義」
そして顕現する甲の――突き進む甲の『魂』
「これが――『俺のドリル』だぁあああああああああああああああッ!!!!!」
ギャァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
赤く煌めく極大の『ドリル』が唸りを上げて回転を始め
「ブッ――――貫けぇえええええええええええ!!!!!」
『魂』その物と化した甲が突撃する
広場を覆う夥しい熱風を喰い散らかし――その悉くを推進力に変えてドリルは加速する
己を襲う脅威であった暴風は、今――その全てが甲の味方となる
何物をも止める事を許さない『ドリル』がエルガを貫かんと一直線に突き進む――!!!
464
:
ゴミクズ
:2013/10/27(日) 14:37:10 ID:7ikwledQ
のたうち擾乱する、禍つ太陽の暴熱風。
大学上空の気圧や対流系をも巻き込みながらずるりと重々しく回転を始めたそれは、激烈な気象変化を誘発した。
先ず天が黒ずむ。
俄に濃くなる冥暗を一瞬切り裂く雷鳴は紫電。
それらが旋回する熱流に引きずられながら運ばれて、蜷局を巻く一層巨大な暗黒の積乱雲(へび)。
地上の一切を呑み込もうと暴悪に吹き荒ぶ熱風はさながら蛇の毒息で、ごうごうと地獄の底から響いてくるようなおどろおどろしい唸り声は怪物のそれを連想させる。
そして、渦巻く黒雲の中心で鈍く波動を放ちながら発光する天体――黒曜に侵蝕され、太極図そのものと化した太陽。
通常の気象では有り得ない異常な空が、たった一つの真実を指し示す。
長く、本当に長く――邪気大を苛み続けたクーデター。
その事態が、終局を迎えつつある。
「くすしきめぐみ われをすくい、まよいしこのみも たちかえりぬ おそれをしんこうに かえたまいし わがしゅのみめぐみ とうときかな―――ァアアアアアァァア」
地獄のような空を賛美歌で祝福する狂神父。
徐々に広場の熱風は渦状を成す―――完成したらその径は大学全域へ一気に拡大する。
そうなれば大学に息づく全ての生物、全ての営み、全ての軌跡が瞬きの内に高高度へと攫われ、歪め撓んだ大気の暴力によってバラバラに破壊されることは正しく自明で。
だからこそ。
神父エルガは、賛美歌を朗々と詠いあげて破滅の招来を祝福している。
この期に及んで、熱風が更にその風量を増大させていく。バロールの魔眼を、赤化した甲の拳を、それらを合算した挟撃すらも押し流そうと狂奔する熱病の凶風。
甲が神父とタイマンを張った以前、こんなことを漏らした。
”底が見えない”。
今にして思えばそれは、正鵠を確かに射貫いていた。戦闘が終盤に差し掛かった現在をして尚、神父の力は弥栄に上がり減衰する兆しはない。
異能者とてそれぞれのガソリンを消費して能力を発動する。
ならば限界は訪れるのが必然。
だというのに、今の神父は常軌を逸していた。少なくとも、この男は能力者の道理を踏み越えた次元に立っている。
守護天使――世界を蝕(は)む毒蛇、カノッサの技術の粋をその身に結集した”怪物”。
それでも。
そんなことは怖れ怯む理由になどならない。
少なくとも、この半壊した時計塔広場で、たった一つしかない命を張って死闘を挑む彼らにとっては。
465
:
ゴミクズ
:2013/10/27(日) 14:37:54 ID:7ikwledQ
「私達異能者(はぐれもの)が、普通に勉強して、部活して、飲み会して。友達作ったり、恋をしたり、将来を夢見たり、挫折して泣いちゃったり。喧嘩したり、いがみ合ったりーーーーアイドルに夢中になったり。それってそんなに悪い事っすかね?邪気大の他に、そういう事出来る場所あるっすかね?」
邪気眼大学現最大勢力を率いる女帝(エンプレス)の少女が、そんな年相応なことを口にする。
恥も照れも見せず。
まるで胸を張って、自分の通うこの大学を誇るように。
真っ直ぐな、直視できぬほど眩しさを放つその真っ直ぐな言葉は、ちっぽけな雑音など掻き消すこの残酷な暴風の中でも不思議とよく通った。
誰かからの借り物なんかじゃない。
彼女だけの言葉。
「それが邪気眼大学で、それが私達。私はやめるつもりないっす。ましてあんたみたいなクソヤローに、必死こいて生きてる生徒達(わたしたち)をクズ呼ばわりなんてされたくない!!!!」
嵐が頭上で渦巻いてようが。
心ない人間から、どれだけ嘲笑と悪口を浴びようが。
きっと、彼女には関係ない。逆境を跳ね除けるように己の矜持を高らかに音色へ乗せ、スーパーアルティメットアイドル・穹凛のオンステージに易々と変えてしまうのだろう。
学生らしく、あるがまま昂ぶり滾る心の熱が少女の指に憑依し、魂揺さぶる弦の調べを彼女の得物より解き放つ。
世界を震わせる才能が、その真価を、魅せる。
「妬いてんじゃねーっすよ、クソガキ。ーーーー“灼熱のパルフェ・グラッセ”」
刹那。
熱狂風の絶叫を引き千切り、穹凛のクライマックス・ステージが幕を開ける。
暴虐を、暴戻を、全ての悪を粉砕するアナーキーのプレイングが、邪気眼大学全域へ浸透し、共鳴し、爆発的なエモーションを奏であげている。
氷菓のように甘く、されど迸る灼熱のグルーヴ。
これが穹凛の完璧(パルフェ)。
そして――――大学全域で幾重にも相乗された昂揚の波紋が、たった一人の男へと収斂していく。
「――おい、見たかよカノッサ機関
俺だけじゃ踏み出せなかったもう一歩が、アイツの――穹のお陰で進めるんだぜ」
緑閃の燐光が、渦動する。
螺旋。直進する鋼鉄(はがね)の意志が、超級の激励を背に受け進軍。
前へ、ひたすらに前へ。愚直と嘲われたそれは確かに一歩を刻んだ。一度は押し返され、蹂躙の空へと舞い上げられそうになったその足で。
止まらない。
この男は、もう、止まりはしない。
「これが俺達、これが邪気眼大学だ
一人じゃ足りねぇ一歩でも、一人じゃなきゃあ踏み越えられる
繋がりが力になるって事を――それを育む所が邪気眼大学(ここ)だって事を」
一度は届かなかった、そして今度こそ叩き付ける右拳を、己が睨み据える眼前の敵――神父・エルガへと真っ直ぐに突き出して、
「――――教えてやる」
螺旋眼、超全開内燃。
鋼の拳から立ち昇った目の覚めるような鮮烈にして壮麗の紅蓮が、魂魄の形をここに錬成する。
「刮目しやがれ、これが”螺旋眼”決戦奥義」
様相、まさしく螺旋。ひたすらに螺旋。無限に上昇する思念衝角は、今まさに破壊嵐を築こうと渦巻く熱気流の運動エネルギーをも喰らって更に回転力を押しあげる。
すなわちそれは、敵の気勢を殺ぎ、己の呵成を燃やす。
紛れもない必殺の形がここに体現する。
刻まれたその魂の名は。
「これが――『俺のドリル』だぁあああああああああああああああッ!!!!!」
466
:
ゴミクズ
:2013/10/27(日) 14:39:11 ID:7ikwledQ
―――瞬間。
あらゆる音を置き去りに炸裂する鋼鉄の疾駆。
其は流星。地獄の熱も逆風も突っきって押し通る、紅蓮の尾を引く流星。
瞬きを許さぬ超高速の赤は輝線を熱狂嵐の最中に走らせる。定規を宛がって確かめるまでもない。戦士の歩みに揺らぎなど、あろうはずもない故に。
「ブッ――――貫けぇえええええええええええ!!!!!」
手には螺旋。
あらゆる理不尽や不条理を貫き砕く力の結晶が、吹き荒れる砂塵の向こう、愕然とした形相の神父を――――遂に、捉える。
「キ、サ、マ、ラ………ッッ、薄ら汚ないゴミクズ共がァァァァァァァアアアアアアッッッ!!!」
神父は鬼の形相で瞬時に十字を切る。
即時、展開された完全を示す球体の立体魔法陣が黒僧衣を包んで界を結んだ。
コンマ秒も違わぬ刹那、甲渾身の衝角突進が真正面から激突。体勢を低く落として耐衝撃防御を取る神父をしかし、一瞬で数十mも後方へ押し退けた。
その上、左方には死の魔眼波動。
神父の敗北必至と思われたこの状況で、だが口元は弦月を描く。
立体魔法陣――通常は平面である陣の構成式の解が三乗となるように組み立てられた理論モデル。
結界として機能させるとき、大抵の場合、その強度は平面陣を軽く数倍上回る。無論、それを現実の術式として現出するのは壮絶に難度を極め、また球体という完全曲面を構成するのは実に複雑な手順が要る。
それを一瞬で編み上げた神父の技量はやはり、怪物。今、神父を守っているこの立体守護陣は、攻性大魔術の直撃すらも凌ぐだろう。
だが。
相性が致命的に悪かった。
死をもたらす漆黒の波動が結界強度を著しい速度で『殺』している。
結界面を穿つドリルの突貫力が、その隙を見逃すはずもなく―――完全球面結界に、バキリ、とヒビが蜘蛛の巣状に広がっていく。
「なっ………ッ!!? ふ、ふざ……けるな……そんな、ことが……ッ!!! こ、こんな理不尽が……み、認められて、たまるか………ッ!!!!」
余裕然としていた顔貌が歪む。恐れと怨みに歪んでいく。
敗北する。
守護天使の一翼たる己が、惨めに敗北を喫する。
長年かけて培った地位と実力、そしてプライドをへし折られて、負け犬となってしまう。
何故。負け犬はこのガキ共だ。私じゃない。私は奪う側の人間なのだ。だから、奪われるのは、壊されるのは、私の役目ではないのに――。
「お、おい、わ、解っているのかッ!!! 私に手を上げることが、何を意味するのか……ッ!!!
宣戦布告だぞ……ッ!!! カノッサ機関の敵だと宣戦布告することになるんだぞッ!!! 貴様らの一存で、こんな……ッ!!! 世界を股に掛けて暗躍する巨大組織を敵に回すのかッ!!!」
どうしようもなく亀裂は広がっていく。
終ぞ口を衝いて出た言葉は、あまりに情けない内容だった。
自尊心にしがみつき、必死の形相で吠える姿は、他人からすれば果たしてどちらが負け犬に映るのか。
人に問うまでもない。
もうすぐ結果は出る―――勝敗という決定的な形で。
それを象徴するように、亀裂が陣全体に及んでいくのを神父は立て直すことができない。間に合わない。構成式の再構築より、破壊の速度が圧倒的に速すぎる。
割れる。割れる。割れる割れる割れ
「や、やめ――――」
熱嵐がその風を死んだように凪いで。
閃光すら伴って炸裂した衝撃が球面を叩き割り、神父の土手っ腹に強烈至極の一撃が突き刺さった。
――――直後、爆轟が、大学全域を激震させる。
467
:
ゴミクズ
:2013/10/27(日) 14:46:19 ID:7ikwledQ
「がッ――グ、おォォォォォオオオオオオオァァアア――――――ォォオオオオオオオオオオオオオオォォオオオオ!!?」
黒僧衣が凄まじい勢いで後方へ消えた。
木立を薙ぎ倒し、外周の街路樹を突っ切り、料理店や雑貨屋が軒を連ねる学生大通りを貫いても、その勢いは微塵も殺がれず神父の身体は吹き飛んでいく。
やがて失速し、川面を切って跳ねる小石のように地面へ数度打ち付けられ、転がりながらようやく静止した。
止まった場所は。
天上にまで聳える巨大な、ひたすらに巨大な扉。邪気眼大学、校門前。
創立以来ずっと大学の入り口を務めてきた、重厚な年季と共に荘厳すら感じさせるその無骨な門番に、神父は張り付けのように叩き付けられていた。
ずる、と重力に従い、崩れ落ちる。
それを、校門前を主戦場としていた学生達が、目の当たりにした。予想外の闖入者。何故この人が。一体何があった。呆然とどよめきが、校内に吹き荒れていた鉄風雷火を沈黙させる。
ずっと響いていた同士討ちの戦いの音が、止む。
その時。誰もが直感した―――大学内をずっと包んでいた不穏な空気が、徐々に霧散しつつあると。
神父との神経接続を遮断され、洗脳兵の動きも鈍っていく。
つまり、大学を騒乱させた長い事件が。
今、やっと。
終わ
「……………………………………はあ? なんっだ、そりゃあ。」
ぎょろ、と。
神父の双眸が、今まで視たことのない光を宿す。
睨む、否、睨め付ける。
酸鼻極まる汚臭を帯びた黒ずんだ粘性が、外界にどろりと溢れ出す醜悪な錯覚。
雰囲気が豹変する。口調が激変する。深層に秘められていた凶暴が、はっきりした攻撃性を伴って、ようやく彼らの前にその正体を露見させる。
「臭え臭え、ゲロ臭っえなあオイッ!
”必死こいて生きている”ぅ? ”繋がりが力になる”ぅ?
ク、ヒヒ、ゲヒャヒャヒャヒャ、何だそりゃ流行りの文句かよ――――笑わッせんじゃねえぞクソガキ!!
乳臭え青臭えゲロカス共がよッ!!
くッせえ万能感に浸りやがって、何でもできるとか思い上がってんじゃねえよなあ!?
てめえらの絆なんざなぁ、ちッせえ擦れ違いで破れる程度のもんだッ!! それを仰いで崇めてあげくの果てには力になるだぁ!? 白痴かよテメェらはッ!!
人ってのはなぁ、些細なことで他人を疑って、裏切って、殺し合うようにできてんのさ!! カミサマがそう設計してんだよッ!!
現にテメェら見ただろう、見てきたんじゃねえのかッ、オイ!?
仲間が仲間に悪口浴びせる光景をッ!!
仲間が仲間を疑う有様をッ!!
傷つくのが嫌だから傷つけて、テメえの弱さを他人に押しつけ自分は強いとせせら笑うッ!!
クッせえエゴをクッせえ理屈こねて正当化してよお、喚いてゴネて自分は悪くないって必死こいて言い聞かせてんだろうがッ!! 所詮そんなもんだテメえらなんざッ!! 違えのかよ、アァッ!?
『結束』、『絆』、『連帯感』、ハッ、まやかしだ結局ンなもんはッ!!
そんなモノを何年と後生大事に育んだその末路は結局ろくでもねえもんだとッ!! それをテメえら、嫌になるほど味わったんじゃねえかよッ!!?
あァ、もしかして忘れちまったのかなあ!?
なら思い出させてやる……テメェらが力だと盲信してるそれが、如何にちっぽけでッ、壊れやすいッ、くッだらねえものなのかをよぉ!!! ゲヒャッ、ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!」
終わっていない。
神父は、まだ己の敗北を認めていない。
血反吐を吐きながら、半身を鮮血で染めながら、最後の抵抗のように張り裂けそうな咆吼を号砲のように轟かす。
正真正銘、最後の最後、溜まった悪意の澱が邪気眼大学に牙を剥こうとしていた。
468
:
穹凛と愉快な仲間達
:2013/10/28(月) 02:47:46 ID:5gi/PS1.
>>463-467
屋内スレ
>>144
「なんちゅー威力っすか…」
恐ろしいと、凛は心底思う。
『俺のドリル(あんなもの)』をまともに受けては、五十鈴でさえ致命傷は免れまい。
まして、人間の体など…
(防御も回避も不可能、“貫く”事だけに特化した、まさに決戦奥義。いや…それよりも真に恐ろしいのは…)
凛は、先の同時攻撃を思い返す。
甲がただの一言で凛の真意を読み取り、連携に加わってみせた一連の動きを。
(冷静に考えれば、あれは異常っす。即座に最適解を導き出す判断力、そしてその判断を信じる決断力と勇気。そして…“死んでも構わない”という、ある意味自分の命を見放した感性。少なくともこれだけ揃ってなきゃ出来るものじゃない)
その目に映るもの全てを灼き尽くす“バロールの魔眼”に、あらゆるものを微塵に砕く音の衝撃波。
仮に凛の攻撃が左から来ると確信していたとしても、その中に飛び込むなど常人には出来ないに違いない。
こと戦闘時において、常人とは感度が違う。
一種の狂人ーーーー魅入られている。
そして、それを受け尚咆哮する神父もまた、もはや人ではない。
凛の“千里耳”は校門から響く怨嗟の声を鮮明に聞き取っていた。
「…みんな、よくやったっす。ダンは“眼”が回復するまで隠れて休み、指示が来るまで待機。皇はまだ動ける“猟犬”達と合流、指揮を執って洗脳された生徒達の鎮圧を。五十鈴さんはこの場を頼むっす」
声が震えるのを上手く隠せたか、“千里耳”を持つ凛にもわからなかった。
今の一撃で倒せなかったとなると、もはや打つ手は無いように思える。
残る魔力は僅か、音叉で増幅するにも、元となる魔力が少なくては話にならない。
(…しばらく忘れてたっすね。私は…ジョン・レノンになりたかったんだ)
初めから、こんな馬鹿げた支配欲を抱いていたわけではない。
最初はただ純粋に、みんなに勇気を与えたかっただけだ。
暗闇に迷う人の手を取り、導くような事は出来ないかもしれない。
それでも、足元を照らす事くらいなら。
そう信じて歌っていたはずなのにーーーー
(…ま、今更っすけどね。一度権力の味を知っちゃったら、もう普通の女の子に戻るとか無理だし)
そう、自分はこの大学の支配者。
スーパーアルティメットアイドル・穹凛様だ。
ただの一生徒でないのならば、責任がある。
残る魔力が僅かなど、言い訳にもならない。
自分がやらねばならないのだ。
「その状態でですか?」
凛とした声が響くと同時、乾いた発砲音が響いた。
凛は頭を跳ねさせ、そのままゆっくりと倒れ伏す。
声の主は、左目を眼帯で覆った黒髪の女性。
予備弾倉のポーチがいくつも取り付けられた市街地迷彩の戦闘服に身を包み、腹の辺りにはスリングで吊られた短機関銃、背中にはボルトアクション式の狙撃銃。
そして右手に握られた拳銃の銃口からは、うっすらと硝煙が立ち昇りーーーー
「凛様ーーーー!」
ぱんぱんっ。
目にも止まらぬクイックドロウ。
皇と五十鈴は凛が撃たれた事に怒りを覚える暇もなく、頭に一発ずつ銃弾を受ける。
「銃など私に効くと思いまして!?…って、あれ?魔力が…」
ようやく状況を認識し、眼帯の女をブチ殺すべく臨戦態勢を取った五十鈴は、己の魔力がいくらか回復している事に気付く。
凛と皇ものろのろと立ち上がり、ぽかんとした表情を浮かべていた。
「魔力回復用の弾丸です。気休め程度ですが。絵面が少々ショッキングなので、不意打ちじみた真似をさせて頂きました」
この抑揚のない声を、甲は知っているはずだ。
かつて修道服に身を包み、“十一”を名乗る男の右腕として弾丸の雨を降らせた少女の声を。
「お久しぶりです、甲様。虎眼様から連絡を受け急行しました」
戦闘服の左肩には、部隊証だろうか、炎を象ったエンブレムが。
そこには、こう刺繍されていた。
“Spit Fire”とーーーー。
469
:
穹凛と愉快な仲間達
:2013/10/28(月) 02:48:38 ID:5gi/PS1.
>>463-467
屋内スレ
>>144
「す、スピット・ファイア!?卒業したはずじゃ…」
「? 誰です、あなた?」
まただよ(笑)
疑問符を浮かべるスピット・ファイアに、凛は何もかも諦めた表情を浮かべる。
無論スピット・ファイアはプロであり、凛の事は覚えているし、資料でも確認している。
茶目っ気を出したのだ。
三年間前は人形のような彼女も、社会に出て成長したらしい。
胸部のボリュームには全く成長が見られないが。
「そんな事より、お願いしますよ。期待外れな演奏だと、また忘れてしまうかも」
「…上っ等!“快楽天”はさっきの指示通りに!私はあのクソ神父をぶっ飛ばしてくるっす。これだけ魔力が回復すれば充分!!」
回復した魔力は僅かなれど、増幅すれとなれば話は別だ。
あと一発程度なら、なんとか技を撃てるはずーーーー
「…?これは…歌?」
またしても不意打ち。
大学全体を包む解呪の歌声に、凛は震えが収まっていくのを感じる。
そうだ、一人じゃない。
“快楽天”に、センパイに、ついでにムカつく貧乳女。
そして、愛すべき生徒(ファン)達。
「誰だか知らないっすけど、私の“音界”に侵入したみたいっすね。まぁ当然歌は私の方が上手いけど、この歌に私のギターを乗せてやれば…!」
鳴り響くギター。
ボーカルに演奏がつけば、その威力は倍増。
音叉による共鳴効果で、更に倍増ドン。
僅かな魔力を振り絞った音は、増幅に増幅を重ね、巨大な奔流へと成長していく。
「ターゲット捕捉!食らえーーーー!」
「では私も。そのゲスな顔を吹っ飛ばしてやるぜ」
ギターを掻き鳴らす凛に、スピット・ファイアが追随する。
構えるは狙撃銃、L96A1。
.338ラプアマグナム弾に対応したモデルだ。
わざわざこの場で持ち出すという事は、例によって弾丸か銃そのものかに凶悪な仕掛けがされているに違いない。
「“一撃のシーケンス”!!!!」
「“タスラム”」
放たれたのは超高周波を収束した音の矢と、禍々しい魔力を発する破滅の弾頭。
吹き荒ぶ暴風をものともせず、神父めがけ一直線に突き進む。
470
:
甲
:2013/10/29(火) 00:38:43 ID:TevkoINs
>>467
>>468
>>469
「――――――ッはぁ――!!」
手応え――有り
正門前通路、石畳をあらかた刳り進んだ先
役目を終えた『ドリル』は赤い粒子となり霧散し
左眼の螺旋模様はチリチリと、火花の様に緑光を散らす
「(――オーバーヒート…あー…ったく、アホほど魔力注ぎやがって…)」
視線をこちらに歩いて来る穹凛に向ける
「……ま、お陰でなんとかなったけどな」
次いで、現れたスピットファイアに煙を上げる手を上げ応えた
「(虎眼か……校内の同時騒乱の気配も小さくなってるって事は
………やれ、大変な現場を何とかしてくれたみてーだな……)」
虎眼だけでは無かろう
騒乱はほぼ邪気大全体に起こっていたはず
ここまでエルガと闘う自分達にさしたる影響も無かったという事は、それを抑えてくれた”誰か”が居たという証
「……今度、打ち上げ……宴会の一つでも打たねーとな」
くく、と小さく笑う
見えない味方の頼もしさを感じつつ
「ま、それもこれも――労いも、感謝も、祝いも、もうちょい後だな」
正門の敵――批判を糾弾を呪詛を垂れ流す敵に、再び進む
「――ぎゃーぎゃーうっせぇつーの
もうそろそろ僻みにしか聞こえねーんだよ、駄々っ子かオッサン」
最早冷静さを欠いたエルガに憐憫の眼差しを向ける
「誰かを下に見て、自分の方が上だってイキがって
それが強さだって勘違いしてんのはさ、テメーらの方じゃねーか、ぁあ?
世界を股に掛けて暗躍する秘密結社、カノッサ機関さんよぉ
認めろよ――そんで理解しろっての
お前らは、お前らの言う
青臭くて不確で脆くて壊れやすくて――そういう尊い力に勝てねーんだって事を」
再び甲の内燃機関が全力で回り出す
「さぁ、花道は譲るぜ
――――魅せたれ、邪気眼大学」
振るう右手を伝う”螺旋の力”が風を巻き起こす
突風はエルガまでの道のりにある塵芥を吹き飛ばし
そこに一本の”道”を作り出した
471
:
名も無き邪気眼使い
:2013/11/01(金) 12:23:38 ID:00dqYppM
>>466-467
>>470
「御意」
刹那、甲の隣を一陣の風が吹き抜ける。
腰に刀を帯びた患者衣の少女、宮本虎眼である。
甲の作った“道”を、文字通り風の如く駆ける虎眼。
その驚異的な速度を生み出しているのは脚力ではない。
僅かな誤差も許さぬ筋肉の緊張と弛緩、そして神懸かり的な体重移動によるものである。
「はしゃいじゃってまぁ。ついさっきまで、生徒達に囲まれてヘバってたのにね」
次いで、後方から気取った声が響く。
ナルシズムの権化、鵺だ。
「やあ、お疲れ。僕の部下達を動けるだけ持ってきた、もう大丈夫だ」
こんな時でも仕立ての良いスーツに袖を通し、光る靴の爪先には泥一つ付いていない。
スピット・ファイアの「お前はもっと働け」という視線が突き刺さるが、全く気にしてはいないようだ。
「ヴェニス、最近ストレス溜まってるんだろ?たまには発散したらどうだい」
「主にあんたのせいだけどねぇ…」
顔をヒクつかせながら応えるのは、かつて宝具科で教鞭を取り、虎眼を吸血鬼へと変じさせた忌むべき魔女、ヴェニスである。
しかし、今やそんなおどろおどろしい雰囲気は一切なく、鵺に頭が上がらない様子を見るに、弱みでも握られて良いように使われているのだろう。
疲れ切ったOLのような佇まいが哀れみを誘う。
「ま、良いけどねぇ。これ撃ったら魔力カラだから、今日はもう働かなくて良いし」
ヴェニスが手をかざした空間に波紋が生まれる。
そこから引き摺り出されたのは、白銀に輝く一本の槍(ランス)。
莫大な魔力が注がれた槍は更に輝きを増し、四つの光翼を展開する。
「“輝く四翼(ゲオルギウス)”」
ヴェニスが竜殺しの聖人の名を唱えると、槍は先行する虎眼を追い越し、弾丸の如き速度で放たれた。
『祈りを捧げ投擲したなら、必ず当たり竜をも屠る』という物語を具現するように。
槍自らが意思を持つが如く、翼をはためかせエルガを貫かんと飛翔する。
そして虎眼もまた、エルガを間合いに捉えていた。
「貸し一つで御座いますね、ルビカンテ殿」
居合。
一の太刀で機先を制し、二の太刀で仕留める技法である。
それは構えこそ似ているものの、居合ではなかった。
何故ならそれは、一太刀で仕留めるための構えなのだから。
それ故、もし仕留め損なえば、懐に潜り込まれこちらが討たれるだろう。
しかしそれは、適切な間合いで刀を抜いたなら、直ちに敵を絶命させる事が出来るという自信の裏返しでもある。
そして今まさに、必殺の白刃が鞘より抜き放たれた。
「“一輪椿”」
472
:
東風谷春晶/車椅子の娘
:2013/11/03(日) 00:30:59 ID:DuAKITbY
「空が少しよくないね」
“雲が晴れるよう”
僅かばかり空を覆う雲が消え去る…・・・様に写る。
「景色もあまりよくない」
“煌々と輝くよう”
螺旋が産み出した余波。神父へ向かう道程の周囲、そこに舞う土埃も消え去り、示す矛先がより鮮やかになる・・・・・・様に見える。
「きっと貴方の言う通り、人は弱い。心移ろう。でも、『だからこそ繋がる』」
“生の心、連なるよう”
景色に合わせて、信頼し合う仲間達の希望に合わせ、その力が何倍にも何乗にも増していく・・・・・・様に感じる。
「貴方に此処の誰をも、悪し様に言っていい権利なんて、何処にもない!」
“膿んだ心、弱まるよう”
神父を覆う、圧倒的な覇気。それが弱まる・・・・・・様に思える。
車椅子に座る少女の、詠唱とも言えない単純な言葉の羅列で、周囲の世界は、背景は、魔力と邪気で、都合良く捻れ曲がる。
味方に力がみなぎり、敵の力を削ぎ落としていく。
世界全てを巻き込みこの場そのものを演出する。
少女は視覚を対象にした幻術に特化した、風景魔術師。姓は違えどあの『海野』の娘。
身に纏うは会員限定グッズの法被。車椅子には『穹凛命』の三文字がでかでかと書かれたのぼりをはためかせている。
邪気眼大学附属高校一年、東風谷春晶。穹凛ファンクラブ特殊演出担当の筆頭。
「邪気大は、負けない!!」
良い事言ってはいるが、服装で台無しであった。
473
:
カノン・A・カペルマイスター
:2013/11/04(月) 17:04:40 ID:Fd5kwh5A
>>467
「そーだなァ。
確かに、この空はあんまよくねェやなァ?青いのはどこ行った、青いのは」
扉の前。
何時からいたのか、銀の色が滞空していた。
目が覚めたかのように背伸びをし、響き渡る歌を堪能するように目を閉じて、両の腕を大きく広げる。
低い振動音が大気を震わせる。
「そこの小物くせえ野郎。
テメエ、本当に神父か?俺の知ってる神父と違うんですがねェ?」
銀色の背後の空間が、水面の如く波打つ。
彼が記憶している限り、神父とは天の父と子と聖霊に仕える、固っ苦しい奴らだった。
確かに異教徒どもを殲滅したり殴ったりしていいとか教えていた奴もいたけれど、基本的には皆、優しかった。
そして、皆、語り口は多少違えども、口をそろえて言っていたことがある。
「確かこうだったか。
『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』」
言葉が解けて消えて、空気の波間から切っ先が顔を出す。
それは無機物…金属の構成物でありながら、幾つもの塊が有機的なシルエットを形成していた。
50メートルを超え、100メートルに迫ろうかという巨体。
鋼の、竜だった。
その鼻先(?)に降り立って、カノンは言葉を続ける。
「『隣人を自分のように愛しなさい。』」
笑って言って、銀色の姿は淡い光の粒となって霧散する。
同時、続く振動音が高音へとトーンを跳ね上げ、最早人の耳には聞こえぬ領域へ。
装甲と装甲、パーツとパーツの隙間にラインが走って、大気に現れ切らぬ身に幻想的な紋様を浮かび上がらせた。
『カミサマは確かに人間をえげつなく創られたのやもしれんが、同時に絆を紡ぐことを望まれたようだぞ』
竜が鳴くように笑う。
機首を上げ、その視線は真っ直ぐ天へ、黒陽へ。
『脆く儚くしかし美しく強く。
――――あァ、俺もそっちの方が好きだ』
テメエは”仲間”が何とかしてくれそうだ。
だから、俺は、”アレ”を何とかしよう。
『神父、テメエは、「そういうの」に負けるんだろうよ』
音もなく、風を切り、全身を宙に踊らせて。
巨竜は黒陽への突撃を実行した。
474
:
神父って本当に屑だわ
:2013/11/07(木) 01:00:31 ID:UfArvvbs
「――――ヒハッ!!」
絶叫後、再度爆轟する太陽の凶風。
ただならぬ事態を察して一早く神父の身柄を取り押さえようとした賢明な生徒たちが、次の瞬間には紙切れか塵の如く無情に中空へと舞い上げられてしまった。
蜃気楼が大気の透度を著しく歪曲させ、視界の殆どを奪っている。
突如、ボウ、と路傍の草花が発火点を超えて炎を上げ、燎原の手はそのまま周辺の建造物にさえ及ぼうとしている。
最早、この世の光景ではない。
これは一人の男によって顕現した、地獄そのもの。
邪気眼大学に突きつけられた、逃れ得ぬ終末の最後通牒。―――或いはその名を、『黙示録』。
その時、感受性の高い者の脳内にザッピングノイズが走る。何処かの世界線、何処かの時間軸で、同じように業火に包まれる邪気眼大学を目にしたような、そんなありえない錯覚が萌芽する。
幻像の中で哄笑を上げていたのは、神父ではなく、死去したはずの”黄金”の男だったが。
状況は違うが、意味する所は変わらない。
すなわち―――今、邪気眼大学の興亡は、神父と対峙する生徒たちの双肩に委ねられている、という事実であった。
大学敷地の端の端、天高く聳える校門前に追い詰められ、今や敗北は免れえないはずの神父が―――嘗て無いまでに、黒曜の異能を昂ぶらせている。
甲が放った渾身のドリルは土手っ腹に直撃した。
無事でいられる筈がない。
そんな今までの常識、圧倒的真実を嘲笑うかのように、高笑いをする神父は狂ったように悪罵を続ける。
「阿呆が……救いようのない塵屑共ッ!
乳臭ェ小便臭ェ、理屈にもなってねえ感情論を莫迦みてえにペラペラとッ!
いいか、世界を回しているのは常に、残酷なまでの真理だ―――他人を蹂躙し、陵辱し、喰い散らかした者が勝者となるのだッ!!
捕食者と被捕食者の関係よッ!! 食物連鎖のピラミッドッ!! その頂点ッ!! テメエらは下層も下層、最下層、屍肉を貪られて骨を晒して惨めにくたばるのがお似合いという訳だなあッ!!
死んだあともそうやってクソッタレな神様相手に宣っているがいい……テメエらに用意されてるのは身の毛もよだつ地獄だがなァッ!!
ヒヒッ、アハハハッ、ヒャヒャヒャヒャ―――神聖守護方陣、三乗展開ッッ!!」
直後、狂熱風が一直線に切り裂かれ(
>>470
)、襲来した音の壁と魔弾(
>>469
)を、一瞬で展開した高難度の立体結界にて殺傷力を封殺しにかかる。
所詮児戯。磨き抜かれた精鋭の技量とは比するべくもなし。
地獄で年季の差を怨むのだな。
そう見下す神父の身体が、直後、巨大な鉄扉に轟音を伴って叩き付けられた。
「ぐ、が……ッ!! な、何……ッ!!!」
堅牢を誇る赤錆びた門にガオン、と神父は結界ごと扉にめり込んでいく。
想定外の威力に目を剥く神父。
先程は突貫力に優れた甲のドリルと、死の波動による合わせ技で破られた。
今度は、強大な一矢と化した爆音の奔流と、寒々しいまでに致命へと照準を定められた破滅の弾頭。バリエーションは違うが、本質的には同じ戦法。一方で削り、一方で貫く。
だが、それだけではこの威力は説明がつかない。
何故なら穹凛の一撃には、甲ほどの突貫力は存在しないことは確認済みだからだ。
しかし強化系の術式を施した痕跡は見られない。では、一体――その時神父は、この戦場に響く歌声(屋内
>>144
)を知覚した。
何処から聞こえてくるのかは分からない。
だが確かに届けられた祈りの歌は、穹凛の音楽性と絶妙にシナジーをなして、威力を際限なく向上させている。
あとは、甲のアシストが絶妙だった。熱風で勢いを殺がれないよう直線の道を作り上げてやることで、一切の無駄なく神父へと攻撃を届かせることに成功したのだ。
如何に集団訓練を積んだ軍隊でもこうはいかないであろう、見事なまでの個と個のマッチングであった。個を殺し群をなすのではない。それぞれが互いに切磋琢磨して、認め合いながら高め合うからこその団結。
475
:
神父って本当に屑だわ
:2013/11/07(木) 01:01:51 ID:UfArvvbs
反吐が出る。
反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る。
反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る反吐が出る。
「糞餓鬼共がァ……生温いんだよォッ!!!」
神聖立体結界、多重起動。
神父を球状に守る完全結界が光量を爆発的に解き放つ。
球面に描かれた象徴はセフィロトの樹――人間が天上の意志に到達するグノーシスの階梯図。
かつてない神性。かつてない聖性。瞬間、結界が三層重ねられ、累乗的に増強する。たった三層だが、その強度を単純計算すれば天文学的な数値にまで達しているだろう。
四人五人程度では力を結集したところで、どうしたって破りようのない超高度結界。
が。
メゴオ、と不吉な音がした。肩を竦ませて結界面を反射的に見ると、最表層の結界が、致命的に窪んでいた。
天文学的数値の強度が早くも綻びの兆しを見せている。莫迦な、理論的に有り得ない。今にもガチガチと鳴りだしそうな歯を食い縛って、神父は凶相を浮かべながら尚も食い下がるように怒号を上げる。
そうだ。
まだ終わっていない。
神父の切り札は、まだ尽きてはいないのだ。
「めでてえなあ……。
全く本当めでてえよなあ、テメェラ塵共はッ!!!
誰一人気付かなかったのか……これだけ雁首揃えておきながら、ハッ!! テメェらはやっぱり無能ッ!! 滓の集団だッ!!!
まさかよお……俺が一人でテメエらとじゃれてるだけだと思ったか?
カノッサの守護天使様がァッ!!! こういう不測の事態に備えてねえとでもッ!!? この【曜】の守護天使ッッ、七天七曜のジオジャエルガ様がァアッッ!!!!」
顔面をぐしゃぐしゃに歪ませて狂い嗤う神父が視線を向けたのは――”上空”。
紫電を迸らせながら蜷局を巻く漆黒の積乱雲。
高層に漂っていた秋空の寒冷前線と、地上で猛威を上げていた太陽の熱風とで生じた激烈な気温差の招く、災害規模の暴風雨の足音。
否、それだけでは済まさない。
あれはただの積乱雲ではない―――超発達積乱雲(スーパーセル)。
引き起こされる破壊は激甚。並の積乱雲の比ではない。竜巻は当然、ダウンバーストやガストフロントによる強風被害の相乗、及び暴風雨による救助困難で、多数の死者が出ることは免れない。
それを、都市部に匹敵して人口の密集する学園都市――邪気眼大学で集中的に誘発したら、どうなるか。
「伊達や酔狂でテメェらを挑発してた訳じゃあねえんだぜ……。
俺の戦い方はこういうものよッ!!
解りやすい餌に釘付けにしておいて、取り返しの付かないほどに事態を傾かせるッ!!
クーデターもッ、してこの俺さえもッ!! ただの撒き餌に過ぎねえッ!! ヒハハハハ、あーあ、こうなったのは全部テメエらの所為だからなァッ!!!
テメエらが白痴みてえに俺に向かってきたお陰で、これからこの邪気眼大学が地獄絵図に変わりまァすッ!!! ほぉら見てろよ今からテメェらの大事な大事な楽園をよ、ソドムみてえな廃墟に変えてやっからよおッ!!!」
絶望を宣告するように。
上空に広がる、曇天を覆い尽くすほど巨大な白光の魔法陣。
磔刑のキリストを象徴に描いたそれが、スーパーセル内部に最適な刺激を行って、最悪の結果をもたらそうとしている。
あの魔法陣を破壊しに行けば、それこそ神父の思う壷。何をするかは分からないが――先程から神父が手を添えている頸元のロザリオを見るに、歓迎できない類であるのは自明。
これでチェックメイト。
どちらかの手を緩めれば、その時点で敗北が決定的になるダブルチェックであった。
そう――神父は最初から、自分が追い詰められても勝利が確定するように事態を巧妙に仕組んでいた。王道には程遠い臆病者の哲理だが、最終的な勝利さえ手に入れられれば構わない神父には相性の良い戦術。
476
:
神父って本当に屑だわ
:2013/11/07(木) 01:03:38 ID:UfArvvbs
「終わりだァッ!!! 俺の勝利だッ!!! 俺が勝者だァッ!!! さあ神妙に死を受け入れろ、惨めにくたばりやがれェエッ、邪気眼大学ゥゥウウウッッ!!!!」
意気揚々と、二層目の結界が破られようとしていても関係ないとでも言うように、神父が高々と手を振り上げる。
手を降ろせば終わり。
一匹の怪物(へび)と化した積乱雲が、邪気眼大学を更地にするまで暴れ回る手筈。
幕切れは間近、そして舌なめずりなど神父はしない。
そして、
手が、
振り下ろされ、
――――――――――――――――――“雲が晴れるよう”。(
>>472
・チェックポイント通過)
一筋の光明が、雲間から差す。
雨が来ない。嵐が来ない。竜巻が、ガストフロントが、ダウンバーストが。
鈍い色の暗雲が立ちこめていたはずの空から、陽光が射していた。地上を覆っていた重苦しい冥暗を照らす、心洗われる清浄たる光景は、ヤコブの梯子と呼ばれる天候現象だった。
積乱雲(へび)が、のたうっている。世界を覆ってしまえそうな長大な身を捩って震える様は、耐えがたい苦悶に喘いでいるような。
環境歪曲干渉。
人の業とは思えぬその超次元の専門術技は、より一般的な呼称に換言すれば―――『幻術』。
「きっと貴方の言う通り、人は弱い。心移ろう。でも、『だからこそ繋がる』」
そんな。
神父の掠れた声を他所に、空が明度を取り戻していく。
自重で瓦解するバベルの塔のように、雷鳴と暴雨の渦が、ぐずぐずとその醜悪な面貌を中空に散らし溶かしていく。
切り札たるスーパーセルを滅ぼそうとしているのは、圧倒的規格外。奇術団(パレード)を統べる長の娘、東風谷春晶。邪気大は負けないと、高らかに絆を宣言したその服装は、やはり変態の手勢であった。
神父は愕然と、晴れゆく空を見上げる。
想定していた事態を見越して設置していた凶悪無比なダブルチェックを、容易く外された。
動揺が大きい。眼球が定まらず眼窩の中で蠢く。息がぜいぜいと荒い。こんな、己の齢の半ばにも達さない餓鬼共に、神父の策謀が跡形もなく崩されてしまうとは。
が。
だが。
まだ、チェックでは、ない。
「…………・ひひひひひひひひひひひひ。テメエらの負けだ、邪気眼大学。」
瞬間、キュゴ、と、空が逆回しになった。
晴れかけた黒雲が再び、まるでビデオの逆再生のようにスーパーセルを再構成していく。
環境歪曲干渉のカウンター? だがそれは想像を絶する高等技術だ。それこそ生業としている家系でもない限り、習得は壮絶な難度を極めるはず。
違う、違うのだ。
臆病者を舐めてはいけない。不慮の事態は常に最悪を想定する。
ならば、こうした規格外の手によって切り札を破壊されてしまうことも、頭に入れて手を打っていたのだとしたら?
そう――例えば、あの積乱雲は何らかの『コア』を起点にして生み出された産物だったとしたら。例え積乱雲を場当たり的、対処療法的に何とかしたとしても、『コア』を破壊されない限り、”何度でも再生する”。
そして、『コア』の正体は、また露見していない。
守護天使。
世界規模の怪物組織、カノッサ機関が産み落とした魔人。
これがその本領。力の差だけではない。勝利の為なら何でもする醜悪なる執念の桁が違う。
球体をなす結界の中で、神父はもはや、狂笑を浮かべていなかった。腕を組み、悠然とした態度は、追い詰められた敵手ではなく勝利を確信した者のそれに違いなく。
477
:
神父って本当に屑だわ
:2013/11/07(木) 01:06:25 ID:UfArvvbs
「一瞬、ビビったぜ……。
万一、億に一、京に一レベルで想定していたが、まさか本当にしでかしやがる手合いが出るとはな。
あぁ……認めてやるよ、テメエらは手強かった。俺が過去に相対してきた難敵の中で、十指には入れてもいいぐらいには認めてやっても構わねえ。
だが、もういいだろう?
カノッサって言やあ、いい年した大人が小便漏らしちまう大組織なんだぜ。
守護天使はその中でも恐怖の象徴。反抗勢力の本拠地に出向いて、正面から潰してしまえる極大戦力。それ相手にここまで食い下がったんだ、十分歴史に残る偉業だとは思わねえか?
だからよ……そろそろここらで、仕舞いにしようや。安心しな、派手に地獄へ送ってやる。霊魂の一つだって残しやしねえよ……。
―――――じゃぁ、あばよ。」
終わり。
今度こそ、終わり。
神父の張り巡らせた最後の策謀が、邪気眼大学を終わらせる。
空から射していた光条が、復活していく積乱雲の渦によって一つ、一つ潰されていく。地上に暗闇が再来しようとしている。
あァ〜あ、参ろうやァな、参ろうやァなァあ。ぱらいその寺にィぞ、参ろうやァなァあ。黒雲の中心、黒曜の影に侵蝕され太極図のような姿の太陽が、楽園の賛歌を低く鳴動して唄う。
おかしい。
ヤコブの梯子現象が現れたということは、光源たる太陽は空を覆う積乱雲の頭上に存在していなければならない。
だが、黒曜に蝕まれた太陽は、積乱雲の中心に浮いている。
相反する二つの事実。
それが導き出す、『コア』の在処は―――。
「確かこうだったか。
『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』」
鼻歌でも囀るように、不快な賛歌を遮るように。
恐らく世界で最も親しまれているだろう、隣人愛という教えを謳ったのは――――滞空する銀色の影(
>>473
)。
だが、人のシルエットをしていない。両翼を背に生やし、爬虫類を彷彿とさせる輪郭をしているが、そのサイズはあまりに巨大で皮膚面がそもそも生物とは懸け離れた鋼鉄(はがね)。
無機物の竜である。
その鼻先で、即ち神父のすぐ眼前で、謎めいた人影が軽やかに聖句を紡ぐ。
「『隣人を自分のように愛しなさい。』」
「………ふ、ふざけるな……。おちょくっているのか、貴様ァッ!!!」
凝縮した太陽風の熱球を叩き付けるも、燐光となって消えた後では無意味に地面に爆裂して煉瓦敷きをめくるのみ。
何処だ、一体何処にいった。
神父が視線を巡らせた先、見付けたのは――上空。
存在するものがないはずの中空に浮かんだ幾何学的な輝線が、真っ直ぐ、真っ直ぐ―――スーパーセルの『コア』である擬太陽へと飛翔していくのを、見た(チェックポイント通過)。
『カミサマは確かに人間をえげつなく創られたのやもしれんが、同時に絆を紡ぐことを望まれたようだぞ』
「……………………ッッッッ」
不味い。
露見(バレ)ている。
あの擬太陽を破壊されれば、終わるのは神父の目論見だ。
即座に擬太陽の攻撃機能を発動。太陽風の爆発で銀竜の接近を阻止しようとするが―――反応が、ない。
478
:
神父って本当に屑だわ
:2013/11/07(木) 01:07:20 ID:UfArvvbs
(チイッ!! スーパーセルの再生に多大なエネルギーを使っちまったッ!! あの幻術使いが……ッ!!!)
止めなくては。
何にも優越する最優先事項を、擬太陽の破壊阻止へと変更。未だ続く猛攻を防ぐ結界を維持したまま、神父も飛翔の準備をする。
太陽風をジェット気流のように背面へ設置し、一気に高度を上昇してやればいい。近接用に開発した高速戦闘の手段だが、応用を利かせてやれば体の良い飛行手段に早変わりするのだ。
自身がめり込んでいる校門鉄扉に、ダン、と両肘をつき、一気に飛びだそうと勢いを溜めて、
「“輝く四翼(ゲオルギウス)”」(
>>471
)
凄まじい速度で飛来した光の槍が、そうはさせじと神父を再び鉄扉へと縫い付けた。
「ギャ、ガハァァア………ッッッッ!!!!??」
知覚できなかった。
完全に擬太陽へ向かう銀竜へ意識を定めていた。
ここに来てまた新たな手勢の登場。人生に疲れたような女の放った、竜殺しの伝承を装填された聖ジョージの槍。
輝く正義の穂先は――結界第三層を貫いた。が、そこで速度が相殺されたのか、神父の腹部すれすれで止まっている。三乗の三層、三位一体を重ねがけした結界の強度はまだ信頼できる。
危うく油断で致命を招くところだった。己らしくない緩みに襟を正そうとして、
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そこで、ダブルチェックに気付いた。
(………あ? あの銀竜を止められなければ、スーパーセルが………だが、止めに行こうと飛び出す隙を衝かれたら…………!!!?!?)
詰んでいる。
詰まされたのは、自分の方だった。
「……あ、………あああ、ああああああ。………………グガアァアァァァアアアァァァァァァアアアッッッッ!!!!!」
耐えがたい屈辱が、プライドに深刻な亀裂を走らせる。
壊れゆく自我に思わず絶叫を喉から迸らせた神父は、人性を捨て去った怪物そのものの形相で、なりふり構わず指を掛けたのは頸のロザリオ。
後々面倒になるが、構わない。
ここで神性を解放―――『天使化』する。そして、太陽神の神威で、終わらせる。
最後の最後の最終手段。本来なら、使わない方が望ましい手。だが、もうそんな拘りにしがみついていられる段階ではない。
このロザリオのネックレスを引き千切り、『天使化』した姿で、生成した極小の太陽を落とすだけで終わる。フレア、プロミネンス、太陽嵐――惑星級の天文現象が、この世から邪気眼大学の痕跡を灼き尽くしてくれる。
【曜】の守護天使、ジオジャエルガとして、任された務めを完璧に果たす。
それがカノッサの誓い。カノッサの宿命。
例えその為に人間性を失い果てることになろうとも、守護天使は恐怖せず、法悦に浸りながら受け入れなくては。そうでなくては、極大戦力・守護天使に相応しいとは言えないから。
「糞……ッ、糞ッ!! 糞糞糞ォッ!!! よくも、こんな………殺してやる……ッ!!! 絶対にッ!!!! 怪物に成り果ててでも貴様らの息の根を止め――――――」
ザグン、と。
ロザリオに伸ばした手の甲に、灼熱が突き刺さった。
それが痛覚だと認識する以前に神父の目を惹きつけたのは、あまりに眩い光を放つ黄金の輝き。
・ ・. ・. ・ ・ ・
黄金のナイフが、突き刺さっていた。
理解不能が度を超している。神父は結界に守られているはずだ。学生達の猛攻が届いてないのだから自明。なら、このナイフは何処から飛んできた?
空間も、時間も、何もかもを無視したナイフの一投が、神父の思考を真っ白に染め上げる。
479
:
神父って本当に屑だわ
:2013/11/07(木) 01:12:48 ID:UfArvvbs
――――それが、決定的な神父の敗因となった。
戦場を音無く駆け抜ける影。
黄金の光にほんの一瞬、意識に隙を生んだ神父に――元邪気会副会長、宮本虎眼の白刃が肉薄する。
「“一輪椿”」
「がァッッ、なァア……ッ!!! ぐ、オォォオオオァオァアアアアアッッ!?!!?」
頸削ぎの一太刀。
あまりに単純、しかし故に究極の斬撃が第三層結界面に激突した。
間合い、虚を捉えた呼吸、何れを取っても剣戟の高みに位置する横薙ぎの一閃が、ギャギャギャギャギャ、と少しずつ結界に刃を食い込ませていく。
無論、穹凛の”一撃のシーケンス”、スピット・ファイアの”タスラム”、ヴェニスの”輝く四翼”はまだ活きている。都合四つの攻撃が、それぞれ一つの生き物のように噛み合いながら完全球面を破ろうとしていた。
加え、東風谷春晶の幻術によって結界強度に影を落とされているのが、ここに来て地味に効果を発揮している。
神父は歯を食い縛りながら、まだ大丈夫だと己に言い聞かせる。
如何に度重なる妨害を受けて本来の性能が満足に発揮できていないとはいえ、現時点でも強度は並の平面結界を遙かに上回っているのだ。
時間は残されている。
脳内で組み上げた球面結界の構成式を再起動。
幻術による妨害を抵抗値として式に組み込み、再計算することで、三位一体の天文学的数値の強度を取り戻そうと試みる。
が、そこに、想像だにせぬ横槍が入る。
状況に取り残されていた周囲の一般生徒が、それぞれの得物を手に―――神父を倒すべき敵と見定め、一斉に攻勢を仕掛けた。
放たれる異能、異能、異能の嵐。
それぞれが己の力の名を高らかに叫びながら、たった一人の本当の敵へ集中砲火を開始する。
「グガァァァアアアアアアアアアアッッ!!!? ナ、何故・・…何故だああああああッ!!!!」
ここで。
ここに来て。
何故、再び一致団結するのだ。
滅茶苦茶にしたはずだ。
二度と結束が叶わぬように、その絆を、連帯感を、ぐちゃぐちゃに嬲ってやった。
今や学生達は二分して、憎み合い、大学に不信の目を向けるように画策して、それは確かに成功したはずだ。
何故。おかしい。こんなのはありえない。
反抗勢力の芯鉄となりうる英雄的素質の持ち主である甲はオーバーヒートで倒れ臥し、ならば逆転の要素など、再び学生達が一致団結することなど、毛ほどの見込みも存在しないはずなのに。
――――よく見れば。神経接続を切られて昏倒した洗脳兵たちが意識を回復して、攻撃できないまでも補強術式で助力している。
(有り得ないッ!
カノッサの研究機関が開発した最新の洗脳呪式がッ!!?
それに、万一術が解除されて余計な口を割らないよう脳神経系を副次的に壊滅させるはず……なのにッ!! 何だ、これは、一体、何が起きているッ!!?)
神父は知る由もない。
宝具学科に在籍の生徒、ウー・リー・ウーが屋内から人知れず呪式を逆算し、学生をイスカリオテの呪縛から解放していたことを。(チェックポイント通過)
そして彼女だけではない。他にも影で動く生徒達がいた。
『悪意の第三者』。
クーデター中、そう呼ばれていた彼らは今、洗脳兵の脳神経を再び十全に機能させるため、高度な脳医学の専門知識を要する外科的な術式を先程から展開していたのだった。
無論、失敗はない。
何故なら彼らは、元・隠密部隊の一派。失敗を許されない裏方のプロ。
そして、他ならぬ隠密のトップを張っていた伝説的存在、鵺の御姿を戦場のただ中で目にしてしまったら、失敗など那由多の一にも起こるはずがない。
480
:
神父って本当に屑だわ
:2013/11/07(木) 01:15:50 ID:UfArvvbs
(一体……何が、…………起こっ、て…………!)
神父の背筋に零度の冷たい気配が駆け下りる。
未知の感覚だった。
否、カノッサの守護天使として辣腕を振るうようになってから長年縁の無かった、おぞましい感覚。
怖じ気。
そう、神父は恐怖している。
心胆が小刻みに震え、顔色は青ざめて昂揚の色が失せている。
張り巡らせた策謀は打ち砕かれて、刃折れ矢尽き果てた。こんなことが、こんな理不尽が、起こっていいのか。カノッサが、守護天使の一翼が、こんな。
「誰かを下に見て、自分の方が上だってイキがって
それが強さだって勘違いしてんのはさ、テメーらの方じゃねーか、ぁあ?
世界を股に掛けて暗躍する秘密結社、カノッサ機関さんよぉ
認めろよ――そんで理解しろっての
お前らは、お前らの言う
青臭くて不確で脆くて壊れやすくて――そういう尊い力に勝てねーんだって事を」
「キ、貴様、ラ…………この、ゴミクズ共めがアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
殺到する攻撃の数々が、神父の視界を極彩色に染め上げて。
やがて混じり合い一つの輝きをなす。
その色は――黄金。
数百数千の学生の邪気が、想像を絶する濃度と密度で渾然一体として調和した時に発した輝きの色。
それは、歴史上未確認の現象だった。
ただ邪気を重ねるだけではこうはならない。相克するか、少しの割合で相乗するだけに終わるというのは、学問的にも常識のことだった。
少人数ならば、二人か三人なら奇跡的な確率で完全な調和もありえるかも知れない。
だが、数千。この学園都市、邪気眼大学に集う数千もの学生が一斉に放った邪気が馴染み、シンクロするなどということは、奇跡に奇跡を如何ほど累乗したところで無意味なほど途方もない確率だ。
偶然引き当てたのか? 否、それはきっと、違うのだろう。
今、この瞬間、常識は塗り替えられる。
創世より数千の歳月を重ねてきたこの世界が初めて目にする眩さが、流星となって――――神父の身体を、校門の鉄扉ごと、邪気眼大学から吹き飛ばした。
481
:
神父って本当に屑だわ
:2013/11/07(木) 01:17:23 ID:UfArvvbs
ほぼ、同時。
大学の頭上をずっと覆っていた積乱雲が、ゆっくりと拡散しながら消えていく。
銀竜カノンが擬太陽の破壊に成功したのだろうか。それとも、神父が倒されたことで術式そのものが破綻したのだろうか。
――光が地上に降り注ぐ。
偽ものの太陽に遮られていた本物の太陽。
それにちらちらと混じった黄金の粒子。
ぽてんと、扉型の風穴が残された校門壁の上に、白くてまん丸い和菓子が一つ、控えめに乗っかった。
だが、そんなことは喝采に湧いて盛り上がる学生達には関係ない。
長く。
本当に永く。
邪気眼大学を苛んだ暗雲が、ようやく、晴れる。
【最終戦績】
[成功]神父エルガをぶっとばす 1000pts
[成功]洗脳兵の救助 1000pts
[成功]擬太陽の破壊 1000pts
――――――――――――――――――――
3000pts ⇒ 【評価S ベストエンディング】
482
:
鵺と愉快な仲間達
:2013/11/07(木) 10:12:54 ID:pCBicEm.
「終わった…わねぇ。帰って美顔マッサージして寝よ」
「あ、それ私も教えてほしいです」
疲れ切った表情で呟くヴェニスに、スピット・ファイアが同調する。
お疲れ様ムードが二人を包む中、鵺の口からは「はぁ?」という声が漏れた。
「何言ってるんだ、これからだろう。ヴェニスは大学上層部と交渉(ネゴ)、1ドルでも多く報酬を引き出してきてくれ。スピット・ファイアは長となって社員を指揮、大学の復旧にあたれ。我が社のイメージを少しでも上昇させるんだ」
おう、あくしろよ。
その言葉に、ヴェニスの表情から一切の感情が失われ、スピット・ファイアは小声で「出たよ」と呟く。
ちなみに労災はおりない。
虎眼はと言えば、拙者は関係ないでござる^ ^と言わんばかりに、チンタラ歩きながら戻ってくる。
「鵺殿、車椅子がどっか行ったで候」
「風で吹っ飛ばされたんでしょ。給料から引いとくから、好きなの頼んでおきな」
「解せぬ」
虎眼は白目を剥いて天を仰ぐ。
いつになったら電動車椅子が買えるんだろう。
多分ずっと買えないんだろうな、ド畜生。
「じゃ、僕はアイゼンテックの御令嬢と会食の予定が入ってるから。やれやれ、モテる男は辛いね」
鵺は忙しい忙しいと言いながら、ニヤケ顔で車に乗り、去っていった。
残された女性陣はマジかよあいつという表情を浮かべている。
「…オー人事行こうかしら」
「無理でしょ…貴女、鵺様にいくら借金あると思ってるんですか」
「汚いなさすが鵺殿きたない」
彼女達の明日はどっちだ。
483
:
凛と愉快な仲間達
:2013/11/07(木) 10:13:40 ID:pCBicEm.
「勝っ…た…」
急激に力が抜け、ぺたんと尻餅をつく凛。
文字通り、最後の一滴まで魔力を絞り尽くした。
もはや存在するのも嫌になるくらいの疲労感だ。
皇や五十鈴も同じようで、好機とばかりに凛に襲いかかる事も忘れ、その場に座り込んでいる。
(もっと上手く立ち回れるつもりでいたんだけどな…)
凛はこの三年間、大小様々な抗争や事件に関わり、常に最前線に立った。
しかし、そのどれ一つとして、かつて“黄金時代”の面々がこなしたクエストには遠く及ばず、それがどうしようもなく不満だった。
今の自分なら、あいつらよりずっとスマートに解決してみせるのに。
しかし、いざ蓋を開ければこれだ。
事前に打った布石は、即席で仕込んだにしてはこれ以上ないものだった。
だというのに、結局自分の力だけでは何も出来ず、挙句、目の敵にしていた甲に丸投げする始末。
侮っていた?
否、自惚れていたのだ。
これほどの無力感に苛まれる事は、三年前にすらなかったように思う。
(…ま、結果オーライっすかね)
髪を撫でる爽やかな風に、凛は別の感情が芽生えるのを感じた。
確かに自分一人では何も出来なかった。
しかし晴れやかだ。
やはり邪気大は、自分にとって最高のーーーー
「凛ッ!!“オトナ白虎”が…ダンテ教授が!!」
血相を変えて走ってきたのは、“撮り青龍”ことダニエル・ジョーンズだ。
“魔眼”の力を行使し過ぎたせいか、目を真っ赤に血走らせている。
恐らくは目が空気に触れるだけで激痛が走る状態だろうに、そんな事は気にも留めず、必死に声を張り上げている。
「ダンテ先生がどうかしたんすか?そういえば、戦闘中も姿が見えなかったっすけど…」
嫌な予感がする。
そんな、もう終わったはずだろう?
「ーーーーダンテ教授が死んだ。殺されたんだ」
洗脳兵にではない。
何故そんな事が言えるのか?
答えは簡単だ。
ダンテ教授の死体には、知性を奪われた洗脳兵には出来るはずもない“趣向”が凝らされていたのだから。
ーーーーまるで笑っているかのように口を耳元まで割くという、悪趣味な趣向が。
484
:
甲
:2013/11/07(木) 23:14:12 ID:V8tFpqp.
「おとといきやがれ、ってな」
喝采に湧く邪気眼大学正門前は賑やかで
あぁ、ここはこうじゃなくっちゃなぁなんて頬を緩ませる
真っ赤なマフラーを巻き直して人並みを歩く
キラキラ舞う懐かしい”黄金”に眼を細め
校門に置き去りにされた”まんじゅう”を手に取った
「――やれやれ…お節介、ご苦労さんです」
ぽつり呟き、苦笑
数秒の黙祷の後、その場を後にした
――――――――――
――――――――
――――――
――――
「さて……お、あった…」
先程の時計塔広場まで戻ってきた甲は砕けた剣の柄を拾う
それはとある”悪魔”の所有物
「あの人が容易にどうこうなったとは思えねーんだが…」
何かの伏線だと悪いし、と回収を完了
「ま、次に会ったら返すかね」
くるりくるりと掌で弄びながら研究棟に歩き去るのだった
485
:
穹凛
:2013/11/08(金) 15:40:25 ID:WzaZVLnA
早朝、校門を入ってすぐの広場。
まだ先日の破壊の痕跡が残るこの場所に、人だかりが出来ていた。
その中には、邪気眼大学最大派閥の長、穹凛もいる。
「これ、ヤバくない?」
「あいつがやったんだよ!動画の!」
「ちょっと、どうするのよ?風紀委員は何やってるの!?」
彼らが囲んでいるのは、暴風にもめげず直立不動を続けていた、学園長を模した銅像。
いつもと違う点があるとすれば、銅像の首がもぎ取られ、人間のそれにすげ変えられている事だろう。
目の見えぬ凛にも、それが誰のものであるかはすぐに分かった。
“四神快楽天”が一人、ダニエル・ジョーンズだ。
「“スマイリー・フェイス”……ッ!」
固く握る凛の拳から、血が流れ落ちる。
ダニエルの口は、笑っているかのように耳元まで割かれていた。
486
:
宮本虎眼
:2013/11/09(土) 15:46:18 ID:fpaCPRVk
「はぁっ…はぁっ…!」
後者裏に座り込み、息を荒げる痩躯の少女。
虎眼だ。
「なんとか巻いたか…」
先日の一斉メール以来、虎眼は逃げ続けていた。
“標的を殺さなければ、毎日生徒を一人ずつ殺す”。
なるほど、考えたものだ。
この方法ならば、実際に生徒を捕らえたり、仕掛けを施したりせずとも、見せしめに何人か殺すだけで全校生徒を人質に置く事が出来る。
最初に狙った生徒の人選も秀逸だ。
“四神快楽天”という現邪気大における武闘派二人、脅迫にはこれ以上ない。
加えて、件の動画に見られる残虐な殺害方法…今、生徒達は気が気ではないだろう。
(だからと言って、殺される気は毛頭無いが)
ならばどうするか。
決まっている、あの笑う男を斬る他ない。
して、どうやって引き摺り出そうか。
(…全然わかんにゃい)
虎眼は自分のアホさを心底呪った。
487
:
名も無き邪気眼使い
:2013/11/09(土) 21:15:43 ID:AZ86XBz2
校門前広場、学園長銅像前。
酸鼻極まる猟奇シーンが演出されたその銅像を囲んでいた群衆が、どよめきと同時、穹凛からそれぞれ蹌踉めくように後ずさった。
否、正確には凛の隣で群衆の一人と化していた男子生徒からであった。
取り立てて特筆すべき点が見受けられない、平々凡々とした東洋的外見。顔立ちも美形でなければ不細工でもないし、体付きも痩せぎすでも肥えてもなくまた筋肉質という訳でもない。
・ ・
簡単に纏めてしまえば、ものの見事に『普通』であった。
何の因果か際だった個性の持ち主が揃っている邪気眼大学では、ある意味で目立つステータスなのかも知れない。
そんな青年が、銅像の首――口を耳元まで裂かれたダニエル・ジョーンズの生首を見上げながら、
「………ぐっ、ひっぐ……っふ……う」
泣いていた。
ガチ泣きしていた。
群衆はその様子にドン引きして後ずさったのであった。
「ふざけんな……。何だよ、これ……! 何でこんな惨い仕打ちができんだよ……信じられねえ……!!」
歯を食い縛って、しかし尚抑え切れぬ嗚咽。
双眸から絶えず涙を溢れさせ、だが瞳を決して瞑ることなく死後を穢されたダニエルの首から眼差しを逸らすこともせず、ただ何か激情を耐え忍ぶように拳を硬く硬く握り締める。
全体的に自己陶酔と取られてもおかしくない程オーバーだが、彼からすれば本気の男泣きである。
やがて、ぐしゅ、と子供のように鼻を鳴らしながら腕で目元を擦り、
「穹凛さん、ッスよね。あの、俺、ふ、風紀委員の者なんですけど。お話を窺いたくて……。お時間、取らせてもらってもいいですか。」
傍らの穹凛に、そう話しかけた。
纏った雰囲気は高圧的でも威圧的でもなく、新人らしき初々しさを醸している。
腕章に描かれたエンブレムは確かに風紀委員所属の人間であることを示していた―――が、些細な違和感がある。それはデザインの微妙な差異か、それともどこか質感が違っているのか。
およそ彼は悪人ではないことは誰の目にも明らかだ
だが、風紀委員の身分を偽装しなければならない事情が背後にあるのも同様に確かなようで。大した理由じゃない気もするが。
「聴取にあたって、場所は、何処でもいいんで……。そ、そうだ、自己紹介しなきゃ。俺、あの、荒土命哉っていいます。それで、ど、どうでしょう……、か?」
488
:
穹凛
:2013/11/09(土) 21:57:17 ID:fpaCPRVk
>>487
「…!え、ああ…風紀委員…?」
荒土と名乗る青年に声をかけられた穹は、ハッと我に返り、慌てて荒土に向き直った。
本来、穹グループと風紀委員会は敵対関係にある。
古今東西、独裁者は自分のものにならない権威を憎む。
凛にとって風紀委員は目の上のたんこぶでしかない。
しかし、今は状況が状況だ。
「私に協力出来る事なら喜んで。でもその前に、ダンを…被害者を弔ってやってほしいっす」
これ以上仲間が晒し者になっているのは我慢ならない。
現在は神父エルガがカノッサと判明、撃退したため、邪気大には葬儀屋がいない。
風紀委員の管轄かは微妙なところだが、少なくとも自分がやるよりは相応しかろう。
(あと、出来れば別の風紀委員呼んでほしいっす…こいつ100パーアホだし)
489
:
名も無き邪気眼使い
:2013/11/11(月) 21:41:38 ID:SQjTPI1s
「私に協力出来る事なら喜んで。でもその前に、ダンを…被害者を弔ってやってほしいっす」
凛の要望に、荒土は神妙な顔で応える。
ダン――『彼のいた世界』では確か、ダニエルという人名の愛称だ――という彼女の呼び方からして、彼女と被害者が親しい関係だったことは容易に推測できた。
だから、無惨に変わり果てた彼の姿を目にした凛の胸裡に沸き起こる感情も、おおよそは。
荒土は早速行動に移す。
胸部ホルダーの通信機に何事か話しかけると、風紀委員の腕章をした少女が二人、現場へと急遽駆けつけた。
レイピアを持った流麗な金髪の少女が、見た目にそぐわぬ気迫で怒号を上げ、未だ遠巻きに銅像を囲んでいた群衆を(なかば物理的に)散らし、てきぱきとKEEP OUTの封鎖テープで現場を区画して保存する。
一方、黒のドロワーズが特徴的なゴシック風ドレスを身に纏う、『紅蓮』の髪をツインテールにした少女が銅像へと駆け寄って、硝子でも扱うように首を優しく抱いて、持参したシーツで包む。
これからダニエル・ジョーンズの首は教会へと運ばれる。
葬儀の際には、少女の繰る『地獄の業火』が鎮魂歌に乗せて、彼の魂を永しえの安息が待つ冥府へと誘なってくれるはずだ。
「……凛さん、その。」
荒土の瞳が、彼の言わんとしている言葉を物語る。
ダニエルは彼女のファンクラブで重要なポジションを占めていた人物。
確か先だって死体で発見された数学科教授、ジャコモ・ダンテ教授も彼女と密接な関わりがあったと事前の情報で知っていた。
凛の手から流れ滴る血は、壮絶なまでに硬く握り締められたことによる出血だろう。彼女の無念が、荒土の心を強く強く揺さぶって、かけるべき言葉を見失わせる。
所詮、同情心。同じ境遇を経験した者にしか彼女の心境を慮ることなど、どうやってもきっと出来はしない。
だから、口を衝いて出そうになった色々な感情を、ぐ、と、呑み込んで胸奥に押しやった。
今、必要なのは慰めではなく、確かな一歩だ。
「………………凛さん。一連の殺人事件の実行犯と思しき人物に、心当たりは?」
眦を決し、凛に問う。
ちなみにこの時点ですでに、『風紀委員と穹凛一派が反目している』という情報などとうに忘れ去っているのである。100%天然果汁のアホであった。
490
:
穹凛
:2013/11/11(月) 23:36:48 ID:ZR9LukDo
「あ……」
連れていかないで。
凛は出掛かった言葉を、なんとか飲み込んだ。
弔ってくれと頼んだのは自分ではないか。
今ここで、自分までもが狼狽えてどうする。
自分にしか出来ない事があるはずだ。
「あの男…“スマイリー・フェイス”について知っている事は、正直なところ自分でも驚くほどに少ないっす。それとも、知る事を避けていたのか…」
凛は他人の心音を聴き取る事で、簡単な読心術を行う事が出来る。
あの男の心音は、初めから異常だった。
黒く禍々しいものが胎動しているかのような不協和音。
だからこそ、凛は“スマイリー”を手の内に引き込んだのだ。
敵に回す事を恐れたから。
「…なんにせよ、ここで話せる内容ではないっすね。場所はどこでも。あらぬ疑いを呼びたくないっすから、風紀委員所有の部屋でも貸していただければ」
そして、もうちょいマシな人に代わってもらおう。
491
:
名も無き邪気眼使い
:2013/11/14(木) 22:39:46 ID:XBnswD2o
「スマイリー、フェイス……。」
直訳すれば笑い顔。
瞬間、脳裏で耳触りな哄笑を想起する。
ダニエルの腿をナイフで突き刺しながら、おぞましいパーティを提案してきた猟奇殺人者。
見る者を竦ませる狂気の形相。甲高い笑い声が意識の奥でずっと木霊して、あれは本当に同じ人間なのかと疑念を抱いてしまうほど常軌を逸した精神性。
約束は守る――。その宣言通り、学内に死者が出始めていた。
(―――――。)
激情を堪える。
一番辛いのは、自分ではない。
今はすべきことをする。それでしか、彼女の思いに応えることはできない。
「…なんにせよ、ここで話せる内容ではないっすね。場所はどこでも。あらぬ疑いを呼びたくないっすから、風紀委員所有の部屋でも貸していただければ」
「そ、そうッスね……! じゃあ早速、本部の執務室で!」
と、近くの建物の壁に指を滑らせる。
スライドするように壁面に表示されたのは、邪気眼大学の構内見取り図。
姉妹校・邪科学大学からの技術提供によって、ここ数年の内に導入された新システムである。KUNRENの仮想空間プログラムを発展させたテクノロジーらしい。
荒土には知ったことではない。現在地を示す光点から、風紀委員本部までの道順を目線で辿る。そう遠くない場所だ。
早速行きましょう、と凛を促し、早速移動を開始した。
◆
本部前。
「お疲れ様です。例の件で事情を聴取したいので、穹凛さんを連」
「誰だお前」
…………。
いきなり門前で行き詰まった。
屈強極まりない頑強なマッスルのゴリラ(戦士科3年)から鋭い眼光をズシバシ浴びながら、荒土は怯みながらも必死に食い下がる。
「ちょ、ちょっと! 委員長さんから話通ってないんですか!? 本日付で配属になった荒土命哉です! ホラ腕章!」
「知らんもんは知らん。つーか公的委員職詐称だな。特に風紀委員の詐称は重罪だから覚悟しておけよ。オイ、コイツを取調室に放り込んでおけ」
「とりつく島もねえ! いやせめて確認取ってくださいよ! ねえちょっと!!」
「それと、穹凛」
視線が、今度は凛に刺さる。
穹凛、と名前を呼ぶその野太い声音に、荒土は不穏な色を感じ取った。
凛一派と風紀委員は反目している。それにしたって、何の容疑もかかっていない者に対する物言いにしては、剣呑な響きを孕みすぎている。
「貴様、及び貴様の側近である”快楽四天王”を重要参考人として連行するようにとのお達しが丁度、上から出されたところでな。
”スマイリー・フェイス”について、知っていることを洗いざらい喋ってもらおう。
執務室で丁重におもてなししてもらえ。」
懐から取り出した令状を広げ、ゴリラはそう言い放った。
取調室ではなく執務室。
最大派閥トップの彼女への配慮なのか、それとも罪状が見つからなかった時に問題にしないようにする為か。
建物の中から数人の風紀委員がぞろぞろと現れ、凛に同行を求める。手錠でも取り出しかねない物々しい様子。これではまるで、犯罪者への対応そのものではないか。
「ああ。穹凛、一つ訂正する。」
ゴリラが軽侮を顔に滲ませながら、溜息混じりに言った。
「今は四天王ではなく、二天王だったな? ……連れていけ。」
―――風紀委員。
邪気会に成り代わり統治組織として巨大に成長した公的委員職。
現実の警察と同じく、彼らはもはや一枚岩ではない。この男のように、中には強権を振り翳して苛烈に当たる者も存在する。
単音の絶叫を迸らせてブチギレた荒土が、数人がかりで引きずられるようにして連行されていく。
選手交代。舞台は風紀委員執務室へ。
492
:
名も無き邪気眼使い
:2013/11/15(金) 01:19:13 ID:e0gB4OuI
>>491
荒土の後に続いて、風紀委員会本部まで同行した凛。
いきなりの足止めに、内心でフルツッコミを入れる。
(ド新人かよ!つーか今日からかよ!)
それであの行動力とは恐れ入る、これは将来は大物やもしれぬ。
喚き立てる荒土の声を聴きつつ、彼の評価を改めるのであった。
『それと、穹凛』
「はい?」
『貴様、及び貴様の側近である”快楽四天王”を重要参考人として連行するようにとのお達しが丁度、上から出されたところでな。”スマイリー・フェイス”について、知っていることを洗いざらい喋ってもらおう。
執務室で丁重におもてなししてもらえ。』
何の事はない、予想出来ていた事だ。
癇に障るのは事実だが、何も臍を曲げ大騒ぎする程の事でもない。
いきなり仲良しこよしというのが土台無理な話なのだ、自分が譲れば問題にもなるまい。
そこまで思考が進んだところで、ゴリラの口から、聞き捨てならない言葉が飛び出した。
『今は四天王ではなく、二天王だったな?……連れていけ。』
「………」
何人が気付いただろうか。
凛を包む空気が一変した事に。
「ーーー雑魚にな、」
唇の端を吊り上げた、挑発的で、幼さの残る顔立ちに似合わぬ色香を孕んだ笑み。
それは光り輝くアイドルのものではなく、この大学を支配する独裁者の顔だった。
「…付き合ってる暇は無いんだ」
獣の群れに、魚が迷い込んだかのような違和感。
周囲の熱を根刮ぎ奪う、氷のように冷たい声。
「お勤め御苦労」
そのままゴリラの横を通り抜け、風紀委員達の方へと歩を進める。
一切の感情も見て取れぬその表情は、彼らに塵芥ほどの価値も認めてはいなかった。
「さ、行きましょうか。執務室」
うって変わって、にこりと微笑む凛。
言い終えた時、“それ”はもう、アイドルの顔に戻っていた。
493
:
黒髪の女
:2013/11/15(金) 22:10:47 ID:d7itZfvM
「さむい・・・もっと厚着してくればよかった。」
どうやら講義のあとらしき女性が、寮に向かって歩いていた。
「何か温かい飲み物でも買いましょう」
自販機で、おしるこを買い、近くのベンチに座った。
494
:
黒髪の女
:2013/11/15(金) 22:53:00 ID:d7itZfvM
「ふう・・・」
女は一息つき
「物騒ですし、帰りましょう」
ベンチから立つと、また寮へと帰っていった
495
:
名も無き邪気眼使い
:2013/11/16(土) 20:14:49 ID:bdwirGNE
凛が風紀委員を供だって執務室へ去る。
形としては”委員が凛を連行している”はずだが――荒土の目には終始どうしても、”彼女が連れている”ようにしか映らなかった。
(これが、邪気大現自治会トップ、穹凛……。)
アルティメットアイドル。
脚光を浴びる彼女の背面に隠された、もう一つの姿。
頂点に君臨する独裁者、女帝の覇道――何千という麾下を率いて進軍する王の器は、グループに亀裂が入った内部分裂目前の逆境においても軒昂で、微細な毀損すらないようだ。
現に、その威風を間近で浴びたゴリラは、お化けを見た子供のように情けなく股を小水で濡らしていた。
荒土を取調室へ引きずろうとしていた風紀委員でさえ、彼女から距離があったにも関わらず、立ち呆けたまま正常な判断力を未だに取り戻していない。
力の入ってない手から四肢を剥がし、皺になった服を叩いて直しながら思う。
確かに凄まじかった。
穹凛へ向けられた敵意、悪意、害意の矛先を一瞬にして握り砕いてしまった、ガレオンを呑む大渦のごとき支配力の波動。
だが、荒土は恐懼や戦慄してはいない。
まして彼女に惚れたとか、ファンになりたいとか、そういうことではなく――。
「カッコよかったなー。凄みっつーのかな、ああいうの。う〜む、やっぱアイドルってすげーわ。」
腕を組んで、うんうんと頷く荒土。
これぞまさしく小学生並みの感想である。徹頭徹尾バカであった。
しかしはたと我に返った荒土は、こうしちゃいられない、と凛の後を追うように、すぐさま執務室へと駆けて行った。
風紀委員に潜り込んだ元々の目的は、一連の”フィースト・オブ・フール”事件にまつわる情報の収集。ラッキーとはいえ難を逃れたのだから、この機会を逃すわけにはいかない。
前もって用意していた認証カードをタッチし、ゲートを通過。
セキュリティ周りは彼をパスしているので、要するにあのゴリラに何らかの理由で通達が行っていないのか、もしくは通達を無視したようだ。
「ったく、これから散々”奉仕活動(クエスト)”に使い倒されるって交換条件なんだから、しっかり通達しといてくれよなあ! おかげで無駄な手間かかっちまった!」
ここにはいない委員長に向けてごちながら、
オ プ テ ィ カ ル ス テ ル ス
「――――C-MAPsアプリケーション、光学装甲面屈折率操作。」
そう呟いた瞬間、荒土の姿が景色から消滅した。
[執務室組と合流へ、屋内に続く]
496
:
名も無き邪気眼使い
:2015/09/24(木) 01:16:31 ID:wXb66Sb2
『風紀委員……この大学には二つ以上あるの?』
小柄の女生徒がつぶやくと、麻呂眉毛の和服の男が懐かしそうに語る
『さてな。
同じ名前の違うものがあるのは、この場所ではよくあることよ。
麻呂が知っている風紀委員はジャッジメンツという二つ名があったのう……
初期のジャッジメンツは校内清掃が主な活動内容じゃったとか。』
『へー、でも腕はたつんでしょ?』
女生徒は笑う。
『ああ、風紀委員をこの大学で出来る程度の力は備えていたようじゃ』
麻呂も笑う。
他愛のない、雑踏の中の先輩と後輩の話
497
:
名も無き邪気眼使い
:2015/09/24(木) 21:04:08 ID:O9o9xpIk
大学を騒がせた騒動が一段落し、
祭りの喧騒が階下より聞こえる校舎の屋上。
先程、西の森を魔術により観察していた男。《ノエル=フルーレス》は、
寝そべったまま空を見ていた。
「はてさて、どうしたものかなー」
何かをしたいが、上手い方法が浮かばない。
手慰みに、虹色の蝶を産み出そうとして、やめた。
格好つける場面でも、その必要もなさそうだから。
とはいえ、どうしようか。
ちょっと前に人の気配がしたが、もういないだろうか。
とりとめもない事を思いつつ、ボーッと過ごす。
498
:
眼帯の者
:2015/09/24(木) 21:30:41 ID:wXb66Sb2
「海鮮邪気そばうまうま」
急遽販売された(謎の材料で出来ている)海鮮邪気そばを食べながら、
屋上に休憩へとやってきた眼帯の生徒がいる
「疲れたー!流石に戦闘の後のライブはグダグダだったな」
どへーっと段差へ腰を掛ける
499
:
名も無き邪気眼使い
:2015/09/24(木) 22:02:36 ID:O9o9xpIk
>>498
「おや? 貴方は」
体重を感じさせない動きで起き上がると、
滑る様な歩きで眼帯の男に近付き
「こんばんは。先ほど西の森で戦ってた人ですね?」
話しかけてきた男は、少年といっていい風貌で、どこか生気を感じさせない気配だった。
500
:
ノエル=フルーレス
:2015/09/24(木) 22:04:49 ID:O9o9xpIk
//名前抜けてた。スマホでやるの難しいのぅ
501
:
眼帯の者
:2015/09/24(木) 22:08:47 ID:wXb66Sb2
>>499
「おっす、こんばんは!」
話しかけられて、顔を上げる。
「ああ、途中からだけど戦いに参加していた。
俺、軽音部でさ。ライブが中止になったら困ると思って、行ってみたんだ。」
手元の海鮮邪気そばの具がピクピクと動いている。
「やっぱ、この大学の人ってスゲーよな!よくわかんねーけど、カッコいい。」
頭はそれほどよろしくなさそうだ。
502
:
ノエル=フルーレス
:2015/09/24(木) 22:26:13 ID:O9o9xpIk
>>501
「なるほど、演奏のステージというのは時期が重要ですからねー」
そばの具材に多大な興味を引かれつつ、どうにか返答する。
「ええ、そうですね」
良くわからないけど凄い。
それは、ノエルも同じ認識だった。
503
:
眼帯の者
:2015/09/24(木) 22:33:58 ID:wXb66Sb2
>>502
「あんまり他に気が散ってしまうと演奏を聞くどころでもなさそうだしな」
うーんと唸りながら
「この大学からは、いい刺激を受けそうだぜ!」
ピクピクと動く具を口に運ぶ。
「この邪気そばが気になるのか?
なんか、騒動が収まった後……森の禁魚が片付いた辺りだったかな。
急に売られだしたんだ。
アンタも食ってみるか?」
具の活きは良いようだ
504
:
ノエル=フルーレス
:2015/09/24(木) 22:47:11 ID:O9o9xpIk
>>503
やっぱりか。やっぱりあの禁魚か。
ほぼ確信したが、確証はないわけで。
「い、いやー遠慮しておきます。
踊り食いはちょっと趣味ではないので」
やんわりと断るに留めた。
刺激ならすぐに受けそうだ。
何か妙な副作用とかで。
505
:
眼帯の者
:2015/09/24(木) 22:55:42 ID:wXb66Sb2
>>505
「そうか。結構美味いんだけどな。」
海鮮邪気そばを口に運びながら
「そうだ。ここであったのも何かの縁だ。自己紹介でもするかな。」
ほぼ無くなった邪気そばを置き、立つ。
「俺の名前はシルヴィオ・アンダース。魔導機械科の一年だ。
最近の趣味はギターなんだぜ!」
自分を親指で指差しながら笑顔で言う。
506
:
ノエル=フルーレス
:2015/09/24(木) 23:09:07 ID:O9o9xpIk
>>505
「シルヴィオさん、ですね。
私はノエル。ノエル=フルーレスです」
そう返事をしつつ、はにかむ笑顔でぺこりと頭をさげる。
「私の学科と学年は、えーっと、
どうなってるんだっけ?」
首を傾げながら思い起こそうと頑張る。
色々テキトーなようだ。
「ギターですか。いいですねー
機会があれば是非聞いてみたいです」
結局、答えが出なかったか、話しを変えた。
507
:
シルヴィオ・アンダース
:2015/09/24(木) 23:19:18 ID:wXb66Sb2
>>506
「ノエルさんか。よろしくな!」
こちらも合わせて頭を下げる。
そういえば、この大学には様々な者がいる。
よくわからないことはたくさんあるのだろう。
と、なんとなく思ったらしい。
「まだ始めて半年くらいだから、そんなに上手い訳じゃないけど、数曲は弾けるぜ。
そうだな……機会があったら弾いてみせるさ。」
508
:
ノエル=フルーレス
:2015/09/24(木) 23:41:56 ID:O9o9xpIk
>>507
「う〜ん、後で確認してみますかねー」
バツが悪くなったのか、言い訳じみた独り言を吐く。
「楽しみにしてますね」
半年で人前で弾くほどだ。筋がいいのだろう。期待を膨らませつつ応える。
「さて、夜も大分ふけてきましたね」
そう言って、屋上の縁へ歩いていく。
「妙なモノが出てくる前に、退散しますね。それではまた。」
そう言って、屋上の縁から外へ一歩踏み出す。
落下するかに思われた身体はそのまま夜空に溶け込むように消えていった。
//レス遅くてすみません。お相手ありがとうございましたー!
509
:
シルヴィオ・アンダース
:2015/09/24(木) 23:50:02 ID:wXb66Sb2
>>508
「ああ、良い演奏が出来るように練習するさ」
割と一生懸命練習はしているらしい。
「もう、こんな時間か。確かにこの場所は妙なもの、出そうだな」
丑三つ時とかきっと怖いだろう
「おう!またな!」
手を振りつつ、その夜空に消える様に少し驚くも再会を楽しみにした。
「さて、帰りますかな!」
寮に戻ったあと、邪気そばの影響で鱗が生えたりしたらしいが、おおむね大丈夫だったとか
//こちらこそ、楽しかったです!ありがとうございました!
510
:
名も無き邪気眼使い
:2015/09/27(日) 00:03:24 ID:kCYawYDk
「…いやぁ、良いねぇ、祭りは良い」
ビビッビビビシビシビビビビビ
【ヨーヨー】と呼ばれるゴム紐付き水風船を巧みに弾き、祭りを練り歩く
先の蜂騒動はどこ吹く風
まるで何事もなかったかのように盛り上がリ続ける【文化祭】である
その辺の逞しさこそが、まぁ邪気大らしさかな――と笑い
「変わってねぇな、と言いたい所だけれど――」
懐かしさを感じるそこかしこ
目を細めて思い出す、あの頃の日々
「…ま、昔は昔、今は――今か」
はてさてこの度の来訪ではどんな出来事が起こるやら
湯気立つ邪気ソバの蓋を開けつつそんな事に思いを馳せる事にする
「………あ」
「そういや………俺、ここ…卒業してねぇや」
何年目かの真実であったりして
511
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/01(木) 16:59:30 ID:ouy/tbO.
『この前の文化祭事件の顛末聞いたか!? 』
『聞いた聞いた! もうだめだって時に、今までの沈黙を破るかのように、学内屈指の実力者達が戻ってきてあっという間に解決したって!』
『ここ数年、何もなかったのになんで今……?』
邪気眼大学に通う者達は、それぞれに異能という特異性を持ってはいる者の、基本的に感性は一般人とそう変わらない者が多い。故に、噂話も彼らにとっては好物なのだ。
構内を賑わす話題、それは時期の変遷に移ろうものだが……今現在は専ら、先の文化祭の出来事に集約していた。
「英雄達の帰還、ですか」
一人の男が、その事をデカデカと掲げた校内紙を広げつつ、一人呟く。
その身に着た白衣は其処彼処に薬品と油の汚れに塗れている。
不意に、その視線が記事に書かれた写真のある一点に注がれた。同時に男の両眼から機械音じみた音が聞こえてくる。
男の両眼は写真の中のボヤけた一つの影を捉え、それを内部で高精細化していく。
「……間違いない、あの人達が"来た"……いや」
そこで男は首を振り、
「"居る"んだ、今も"此処"に……!」
そのことがたまらなく嬉しいとばかりに、唇を歪ませた。
「……ああ、いけない。赴任先の挨拶に遅れる所でした。どうやらこの騒動で機械工もやらかしたことですし、挽回の一助にならないと」
かく言う男も、一度はこの学校を去り、そして戻ってきた者である。
かつて技術を学んだ学舎で、今度は教える側として。
512
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/02(金) 22:47:49 ID:n05Mka4A
「んー……やはりいろいろガタが来てますね」
ベンチに座りながら手にした球状の何かをガチャガチャ弄り回している。
「思えばこの"眼"も此処で作ったんだっけか――懐かしいなあ」
そう言って思いを馳せる嘗ての日々。
強敵との戦い、友との出会い。
セピア色の記憶に郷愁じみた思いを抱く。
「しかし、まぁ……なんですかね」
そう言って一拍おき、あたりを見回し
「ちょっと興に乗りすぎましたか……?」
あたりに広がったメンテナンス待ちの義眼を見やり、ため息を付いた。
傍から見ると男の周りに多数の目玉が転がっており、かなりシュールな光景である。
513
:
甲
:2015/10/02(金) 22:56:54 ID:raHniD6o
>>512
ふと歩いていると
コロコロコロ…こつん
「……あん?――うぉあ!!?め、目玉!!?」
つま先に何か目玉が当たった
「な、な、な…何ご、とぉおおお!!??」
見上げると床一面に目玉、目玉、目玉…
只事では無いその光景に目を白黒させる
「事件性アリアリ……あり?」
目玉の広場の中心に人影を確認して声を上げる
「あれ、お前――」
514
:
遊馬
:2015/10/02(金) 23:04:40 ID:n05Mka4A
叫びに気づき、しかし男は手にした義眼から視線を外さず
「あ……っと、驚かせてすみません。義眼なんですよ、怪しい物じゃないですし、俺も怪しい者じゃ……」
見るからに怪しい光景の中心で、怪しげな男は怪しげに語るが――
ここで男はある事に気がつく。
「……この声」
男のセピア色の記憶が、色づいて鮮やかに再生され始めた。
反射的に顔を上げ、同時に言葉が口をついて出る。
「甲先輩?」
515
:
甲
:2015/10/02(金) 23:12:24 ID:raHniD6o
>>514
「アスマ!アスマじゃあねえか!!」
旧知の友への再開に喜びの声
顔中に笑みを浮かべ
「ははは、ひっさし振りだなぁ!こんな場所で会えるなんてよ!
何だよお前も文化祭見に来た―――――おっと、っと――のかよ?」
床中の目玉――遊馬手製の義眼を踏まないように器用につま先で歩き
遊馬の座るベンチへと近づいた
516
:
遊馬
:2015/10/02(金) 23:23:20 ID:n05Mka4A
>>515
「甲先輩! まさかこんなところで会えるなんて!」
思わず破顔させつつ、手にした機械のことなど忘れて
器用に近づいてくる甲を迎え入れる。
「えぇ、勿論それも目的の一つなんですが、それだけじゃなくて……」
そういうと白衣のポケットをゴソゴソと探り、
「この度、機工学部の研究員兼、非常勤講師として働くことになりました
どうも前回の騒動でウチの学部もやらかしたみたいで……汚名返上の一助になれたらな、と」
やっとこさ何かを取り出した、その手には教員証が握られていた。
517
:
小柄なねこみみめいど
:2015/10/02(金) 23:29:44 ID:xyeRDj0c
「はいはいてっしゅー…」
たった今まで勝手に営業していたのか
はたまた何かの出遅れか
文化祭に出店していたと思しき一団が台車でガタゴトと大荷物を運びながら通りかかる
その中のひとつ、看板に使われていたらしき大きな板にはこう書かれていた
ねこきっさ「にゃんにゃんめいど 〜邪気眼大学臨時支店 ロックハートを添えて〜」
…属性盛りすぎである
518
:
甲
:2015/10/02(金) 23:34:19 ID:raHniD6o
>>516
「邪気眼使いは引かれ合う――だっけか?あの迷信、信じたくなったぜ」
数年振りの再開に弾む声
「は?機械工学の……講師ぃ!?」
素直に驚いた、かつて同じ生徒として時間を共にした
自分を”先輩”と慕ってくれる目の前の遊馬が、講師として戻ってきたという
「……はぁ〜……立派になったモンだ…」
感心の呟き、しみじみ
改めて年月の経過を感じるのであった
519
:
甲
:2015/10/02(金) 23:44:11 ID:raHniD6o
>>517
「ねこ喫茶…メイド?…いや、ロックと言われりゃその姿勢はロックだけれど」
困惑の表情
どの層狙いかわかんねー、と思った
「あ、そっちは……階段」
気付くだろうか、台車の行く先に待つ階段に
520
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/02(金) 23:45:20 ID:n05Mka4A
>>517
「猫耳メイド……ロックハート……?」
あざとさを通り越してシュールさすら感じられる取り合わせの看板を見つけ、首をひねる。
ちょっとだけ興味が出たのは内緒であった。
>>518
「そういえば、あの頃もそんな噂ともつかないジンクスが、まことしやかに囁かれてましたっけ」
なつかしいなぁ、とばかりに甲の言葉を噛みしめる。
「講師といっても、小さな演習授業一コマだけですけどね。生体工学演習……有り体にいえばサイボーグの授業ですよ」
何かむず痒いのか、照れたようにはにかむ。
「そういう甲さんも、あの頃よりも更に力つけたんじゃないですか? 見ましたよ、この前の事件の顛末を記事で」
あの頃からの伝家の宝刀……願わくは間近で見たかったと内心残念な面持ち。
521
:
小柄なねこみみめいど
:2015/10/02(金) 23:56:20 ID:xyeRDj0c
>>519
>>520
が…駄目ッ!
台車で先頭を行く彼女は荷物が大きすぎて前方視界が塞がれている!
ガクッ
「…あ」
―ドンガラガッシャン!!
意識の外にあった段差によるバランス崩壊
それはあっさりと階段の下へと荷物ごと彼女を連れ去った
522
:
甲
:2015/10/03(土) 00:00:38 ID:3yRrPSnI
>>520
「サイボーグ、成る程なぁ…お前さんは、あの頃から続くその道で
そこまでの学を深めてきたんだなぁ…」
学生時代から伸びたその道を逸れず進むは至難の道程
それを体現した目の前の男に尊敬の念を抱かずには居られない
自分に鑑みると……「やれやれ」と小さく溜息が漏れた
「まぁ、”力”はなぁ…ここを出た後も、それなりに場数は踏んだつもりだけれども」
道は未だ定まらず
ふらりふらりと過去をなぞるここ最近である
「――…って、あぶね…」
ふと、視界の端の台車が
>>521
「―――落ちたぁ!?」
階段の下に真っ逆さま
「あ、アスマ!医務室に連絡!!
おい!大丈夫か!!今行くぞ!」
階下に飛び降り、ねこみみめいどを救出しようと伸し掛かる台車に手を掛ける
523
:
遊馬
:2015/10/03(土) 00:11:50 ID:8S9HTOag
#レス順入れ替え
>>522
「俺も此処でてから色々ありましたけど……何か未来に残すとしたら、やっぱここかなって思ったんです」
そう言って目を細め、これまでのことを思い返す。
「今度暇ができたら、手合わせしてみたいですね。考えてみたら俺、甲先輩と戦ったこと一度もないんですよ……って」
半ば能天気な笑いを浮かべ、闘争を望む言葉を言う。やはり学生時代の血が疼くのか。
が、その時視界の端に少女の姿が……
>>521
「あ……あ、あああああああ!?」
滑落していく少女の姿を見つけて思わず立ち上がり、
「起きろ……形動義眼!」
握りしめたままの義眼を起動させると、その手を少女に向けて突き出す。
「ASFーー展開」
そこから放たれるのは運動エネルギーを瞬間的にゼロにする領域。
少女に向けて展開し、少しでも落下のダメージを減らそうとする。
「了解っす先輩! 今連絡入れました!」
義眼から聞こえる通信音。
どうやらさほど時間をおかずに助けはきそうだ。
524
:
小柄なねこみみめいど
:2015/10/03(土) 00:26:56 ID:oGMdXyMs
#失礼、レス順入れ替えます
>>523
「―!」
運動エネルギーの消失
俄かには反応し得ないであろう状況にも、
彼女はその身に受けた感覚で直感的に理解する
全身を動かし、器用な身のこなしで体勢を整える
>>522
「…いえーい」
まるでネコのような身のこなしで本体はそのまま綺麗に着地してみせた…ように見えた
―が
ぐき
「…あぐ」
着地の衝撃で足を挫いていた
うずくまる黒いメイド服、そして黒い猫耳を身に付けた小柄な少女
かつて台車に手をかけた人間を兄と呼んでいた女性に似ているような気がしなくもない…が
【落下してくる台車の荷物は既にあらぬ方向へと落下しており
台車自体はアスマのASFにひっかけられ、衝撃はさほどではなさそうだ】
525
:
甲
:2015/10/03(土) 00:36:20 ID:3yRrPSnI
>>523
「(――反応が、速い…!へ、腕を上げたのはお互い様じゃねぇか…!)」
階下に躍り出るその刹那にねこみみめいどに掛かる”力”を知覚する
状況に即した適切な判断力から、遊馬の成長の片鱗を垣間見る
耳に入った《手合わせ》の言葉に、心躍る響きを覚える
>>524
「わりと余裕――…って、おい」
着地失敗を確認し駆け寄る
「立てそうか?医務室連絡してあるからちょいとの辛抱だ」
手を差し伸べる
526
:
遊馬
:2015/10/03(土) 00:44:51 ID:8S9HTOag
>>524
「……間に合いました、か?」
恐る恐る少女の方を見ると、どうやら無事な様子。
ほっとひと安心するが、よく見ると立ち方がおかしい。
「アナライズ――足首に軽い挫傷ですか。いや、あの階段から落ちてそれで済むというのは……」
ASFの補助が多少あったとはいえ、ここまで軽傷なのは少女の身体能力の賜物だろう。
さすが邪気眼大学、と驚嘆しつつもスキャンデータをすかさず医療班に転送する。
>>525
「そうだ、台車の方は……あ――流石ですね、先輩」
あの義眼の転がる足場で瞬間的に台車を掴む地形把握、
一瞬で階段まで追いつく身体の瞬発力。
どちらも遊馬にはない力だ。
「(なんの気なしに、こんな芸当する……だからこそ、この人は)」
不謹慎、と理解しつつも男は唇を歪ませ、
「(この人は……面白い)」
527
:
神裏ケイ/ねこみみめいど
:2015/10/03(土) 00:54:25 ID:oGMdXyMs
>>525
>>526
「このくらい…平k つっ」
立ち上がり、手を取り強がって見せるが、顔をしかめるものの
「ありがとうございま…す?」
甲の顔を見て、キョトン
「ちょっと!ケイちゃん大丈夫にゃ!?」
近くにいた同僚と思しきこれまた白ねこみみの女性が階段下を覗き込んでいる
ぴーぽーぴーぽー
―遠くから医療班の気の抜けたサイレンが聞こえてきた
528
:
甲
:2015/10/03(土) 01:07:51 ID:3yRrPSnI
>>526
「やれやれ、肝を冷やした……助かったぜ、アスマ!」
ビッと親指を立てる――サムズアップ
この表現は、変わっていないのであった
「さっすが講師サマ……ってな」
ニヒヒといたずらっぽく笑う
>>527
「おっと無理しなさんな……って、あれ?」
きょとんとしたねこみみめいどの顔をマジマジと見て
「……ケイか?」
これまた数年振りの見知った顔であった
ぴーぽーぴーぽー
遠く聞こえるサイレンの音
「――ってサイレンって何!?」
救急車とか導入してんのかよ!と驚いた
「おいおい…今日は知り合いによく合う…あれ?今何時…うわ、やべ」
慌てたように時計を確認すると
「アスマ!ここを頼む、ケイ!わりぃ!ちょいと野暮用の途中だったんだ!またな!」
そう口早に告げると
階段踊り場の開け放たれた窓からひらりと外に出るのであった
//ごめん、半端だけど今日は落ちますね!
//おやすみ!
529
:
遊馬
:2015/10/03(土) 01:14:52 ID:8S9HTOag
>>527
「……どうやら医療班も無事到着したみたいですね」
遠くに聞こえるサイレンの音を聞いて一安心。
と、何処からとも無く現れた白猫の女性を見て
「お仲間、でしょうか? 語尾がなんともわかりやすくネコですね
あの、この方のご友人ですか?」
お話を聞こうと白い女性に声をかける。
>>528
「へへ、世辞はよしてくださいよ、先輩に言われるとむず痒いです」
こちらも照れたような、いたずらめいた微笑み浮かべる。
そして、こちらもサムズアップ。
「(そういえば、この挨拶も久しぶりだな……)」
そう思うと、理由もわからず楽しくなってくる。
と、急に慌てだした甲の言葉を受けて
「あ、は、はい! 現場の引き継ぎはこっちで……!」
そう言うとそのまま外に出た後の窓から顔を覗かせ、
「お気をつけて―!」
大声で、笑いながら見送るのだった。
#お疲れ様です!
530
:
神裏ケイ/ねこみみめいど
:2015/10/03(土) 01:27:16 ID:oGMdXyMs
>>528
「あ…えーと…うん…うん?…あ」
彼女にしては珍しく眼が泳ぎまくっていた…が
「…ばいばーい」
急ぎ立ち去る甲に小さく手を振って見送る
>>529
「え?あ、うん!ミケはケイちゃんのお友達だにゃ!」
白猫の方の女性は快活に答えてみせた…その時
ぴーぽーぴー ズギャギャギャ
現場へと高速で駆けつけたそれは―救急車などではなかった
気の抜けた警告音を発する2つの回転灯を据え付けた白いヘルメット、そして白衣
そのものずばり、頭に救急車のアレを小さくした奴を乗せ
救急箱を携えた医者のような何かであった
531
:
遊馬
:2015/10/03(土) 01:34:32 ID:8S9HTOag
>>530
「なるほど、では身元引受人は貴女に……」
などと言いながらサイレンの出所を探すと……
「な、んだ、これ」
現れたのは救急車でも車でもなく、サイレンを頭に乗せた医者だった。
「(あ、あれ? 今の邪気大って医者が救急車やってるのか?)」
困惑しながら医者とケイ、ミケを見渡し
「あの……お医者さまですか?」
観念したかのように尋ねた。
532
:
神裏ケイ/ねこみみめいど
:2015/10/03(土) 01:43:28 ID:oGMdXyMs
>>531
「はにゃー…」
ミケと名乗った女性も、突如現れた冗談としか思えないような人物の姿に
口を開けたまま固まっている
そしてそんなアスマ、ミケの2人を尻目に黒縁メガネに白衣の男は平然と答える
「その問いはイエスだ、細かい事は省くが貴方の走査情報に助けられた、迅速に出れたよ。
怪我人は…と君、あまりムリをしない方が良い」
「…そんなオオゴトじゃないし」
アスマに礼を言いながら、途中でフラフラと階段を上がってきたケイの方を振り向き声をかけた
533
:
遊馬
:2015/10/03(土) 08:32:14 ID:8S9HTOag
>>532
「あ、ありがとうございます。情報が役に立ったなら何よりです」
冷静に患者の様子を見ている医者を見て、安心すると同時に本当に医者なんだ、というおどろきが顔に浮かぶ。
「……とはいえ、まだ安静にしないとマズそうですね」
フラフラと歩くケイを見て、どうしたものかと
#書いてる途中で寝落ちしてしまいました……ごめんなさい
534
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/05(月) 21:46:45 ID:j1g86WCc
「流石にもう、宴もお開きですかー」
夜も深まりつつあり、冷え込み始めた大学構内。
数日前まではこんな時間でもヒャッハーしていた学生どもが跋扈していたはずだが、今はもう静かなものだ。
そんな中をじっくりと、味わうように歩くのも楽しいものだ。
と、角つきの彼女はそう思う。
宴は終わり。
邪気大の、いつもの騒がしい日々がやってくる。
とはいえ、まだ静かに飲みたい奴らのために店を開いているところもある。
「……おお、おでん」
そのうちの一つにぽつんと、おでんの屋台があった。
コンビニでも始まりましたよね、おでん。
問題は、どうしてこれが大学構内にあるんだという話。
いや、後夜祭的なとこもあるんだろうけれど。大学生に出すもんだろうか、これ。
少なくとも自分がいたころの文化祭にはなかったなあ、とか思いながら、のれんをくぐって、
「お兄さんとりあえず卵10個とちくわぶとがんもどき5個ずつお願いします」
535
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/05(月) 22:15:51 ID:2sNuGB2Q
「んー、美味しそうな匂いですねー」
生者の気配の薄い、どこか幽鬼じみた男が、
おでんに釣られて、ふらふらと迷い出てきた。
536
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/05(月) 22:36:23 ID:j1g86WCc
>>535
もっきゅもっきゅと卵12個めを頬張っていた女が振り向く。
ごっくり飲み込んで、
「私の隣、空いてますけどどうします?
あ、お兄さん、大根3つお願いします」
537
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/05(月) 22:49:09 ID:2sNuGB2Q
>>536
「あ、すみません。じゃあお言葉に甘えて」
そう言って、隣の席にすっと座る。
「すっかり涼しくなりましたねー」
蒟蒻とちくわを頼みつつ、軽く話をふる
538
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/05(月) 22:54:23 ID:j1g86WCc
>>537
「はいどうも。
気づいたらちょっと肌寒いくらいですから、時の流れって残酷ですよねぇ」
くすくすと橙の目を細めて笑いながら、上品に口を開いてちくわを丸呑みする。
「んぐ。
……そういえば、あの蝶はあなたが?気配が似てる気がしますが」
文化祭の時の蜂騒動の話で切り返す。
根拠?なぁに、女の勘だ。
539
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/05(月) 23:08:44 ID:2sNuGB2Q
>>538
「全くです。月日が過ぎるのは本当に速い」
そう返事はするものの、彼女の食べ方が気になる。上品な仕草と食事量が釣り合って無い。丸のみって。
「!」
目を開いて驚く。
あの蝶だけで元を追える人がいるとは。
「ええ、良くわかりましたね」
隠す事でもないので正直に言うが
内心な衝撃は大きい。
540
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/05(月) 23:37:24 ID:j1g86WCc
>>539
彼女の食事の次の被害者は卵らしい。
ニワトリよりは大きくダチョウよりは小さいそれを丸呑み……は流石にせずに箸で割って食った。
「でもここは時間が本当にゆっくりすぎるんですよね。
私、もう卒業したの随分前の気がするんですけど」
どうして変わってないんでしょうねえ、と小さく呟いて。
「あら、当たってしまいました」
ぶっちゃけ適当だったんだけどなー、と思いながら皿に残っていた最後の一つ、大根を一口。
なお一口=一口で呑む、というアレ。
「アレのおかげで随分久々にはしゃげました、有難うございます。
懐かしい人も新人さんもいて、いやあ、いい戦いでした。
……お礼にここの代金は私が持ちますよ」
にっこり笑って、紙幣を2枚ほど置いて立ち上がる。
お姉さんこんなにもらえませんよ、いやいやこの人の分もここから出してください、などとやり取りして、
「流石にそろそろ寒いので、申し訳ないんですが引き上げますね。
また機会があれば、ゆっくりと」
丁寧に一礼し、足音もなく立ち去る。
その足取りはご機嫌に軽かった。
541
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/06(火) 00:39:00 ID:LnrWIrB.
>>540
「へぇー、それでは先輩って事になりますねー」
と返事を返すが、多分に生返事だった。
それは、彼女の言葉に思う所があるから。
果たして時計の針は進めなかったか、進められなかったか。
変わらなかったか、変われなかったかーーー
「はい、正解です」
カマかけに見事にかかり、自身の腑抜けを覚えながら、大根熱くないのかなと思う。
「ーーーそう言って頂けるなら、“呼んだ”甲斐がありました」
奢りは流石に、と断りかけたが、店員と問答を始めたのを見て、甘える事にした。
「分かりました。それでは“また”」
そう。“また”ーーー
そうして出会う為に、帰る為に、
此処はこうなのだろうと、真実がどうであれ、ノエルはそう思っている。
そうでれば“また”会えるだろうから。
店を出るのに財布を開けない事に恐縮しつつ、
夜の闇へ溶けるように消えていった。
542
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/08(木) 01:20:02 ID:h5wlEPZE
【西の森】
文字通り邪気大の西に存在する広大な森。そこには大小様々な魔獣が住み着き、力を持たぬ者なら一夜も越えられない危険地帯とも言われている
「この度は場所をお貸しいただき、ありがとうございました!」
そんな剣呑な場所に似つかわしくない快活な声。見れば複数の邪気大生が1人の女性に頭を下げていた
「い、いえいえ……皆様のお役に立てたのなら良かった、ですよ……」
“たじたじ”という言葉がよく似合う様子で頭を下げ返す黒衣の女性
何とも異様な光景でもある
それでは、と去っていった学生達を見送ると、彼女は近くにあった大樹の根元に座って天を仰ぐ
その様子は祭りの余韻を味わっているようにも見えた
「ふふ……いつの時代でも、ここの皆さんは元気いっぱいで……眩しいくらいです……」
そう微笑むと、先程の学生から貰った“邪気コーヒー”を一口
「……あふゅいでふ」
相変わらず猫舌のようで
543
:
甲
:2015/10/08(木) 22:45:12 ID:HW/z7y9E
【学内某所――おでん屋台にて】
「う〜…さむさむ、やってる?おぉ、いい匂い…」
「じゃあね、取り敢えず大根と……あん?どうしたい大将、浮かない顔で」
「は?この間大量に食う客が居て?この大学結構食う客が来ると思って?
仕入れを3倍にしたけど?あれ以来普通の食欲の客しか来ない?…何だそりゃ?」
「すえぞおでも来たのかよ……いや、そりゃ災難だったなぁ」
「じゃあ取り敢えず大根ね」
普通に食事を始めた
544
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/08(木) 23:22:48 ID:S8E83HiI
>>543
「最近はおでんが流行りなんですかねー」
話声を聞き付けて、ゆらりと幽霊みたいに出現した。
545
:
甲
:2015/10/08(木) 23:25:36 ID:HW/z7y9E
「ごっそさん」
「あぁ、いやもういらねーよ…いや、そんなすがるように見られてもだな…」
「ま、まぁそう、このおでんと違ってさ、うまい話はそうそう続かない…ってことで」
ーーーーーーー
「…夜の寒さもすっかり秋だねぇ…」
「………宿無しにゃ、辛いぜ」
夜は更ける
546
:
甲
:2015/10/09(金) 23:04:53 ID:y/xKuUq2
「…何か、きのう誰かとすれ違った…ような、無性に謝らにゃならんような…」
そんな気分
気を取り直して
「……」
気を取り直しても
「………まぁ、暇」
暇人
547
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/09(金) 23:22:07 ID:axVGM2.c
>>546
「奇遇ですね。私も誰かとすれ違った気がするんです」
半透明な姿で空気中から滲み出てきた
548
:
甲
:2015/10/09(金) 23:31:07 ID:y/xKuUq2
>>547
「そりゃあ確かに、案外すれ違ったのは俺らかもな――よう、ノエル」
懐かしい声に軽口ひとつ、滲み出る半透明に挨拶を
「虹色の蝶々とはな、粋な使いは受け取ったぜ
どうだい、お前さんのご期待にゃ添えられたかな?」
549
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/09(金) 23:41:40 ID:axVGM2.c
>>548
「お久しぶりです。甲さん」
感慨深く、ゆっくりと返事を返す。
「期待、ですか・・・」
自分の事だというのに、妙に考え込んで
「・・・うん、そうですね。ともかく、嬉しいですね」
気持ちが纏まっていないながらも、
胸中に陰りは無いようだ
550
:
甲
:2015/10/09(金) 23:49:40 ID:y/xKuUq2
>>549
「はは、ひっさし振りだなぁオイ!
登場の仕方にすら懐かしさを覚えるぜ?」
「呼ぶだけ呼んで会えず終いじゃ味気ねーなと思ってたんだ
こっちこそ、また会えて嬉しいぜ」
右手を差し出す、握手の構え
「邪気大、気に掛けててくれてたのか
…まぁ、俺が言うのも変な話かもしれねーけど、サンキューな」
551
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/10(土) 00:07:00 ID:M9rs6uGU
>>550
「大分年月が経ちましたが、覚えているものですね、貴方のドリル」
「・・・出会えた事に感謝します。最初のときも、今も」
差し出された手をとり握手。
「少し余裕が出来て、戻ってみたら、随分と寂しく感じました
」
握った手の力は、とても弱々しく華奢だ。
「色々考えましたが、結局の所そうしたい。楽しみたいから、此処にいるのです。以前と変わりなく」
552
:
甲
:2015/10/10(土) 00:19:20 ID:UXi4YIG6
>>551
力強く握手を一振り
「そうだなぁ、まぁ時間は平等に過ぎ去っていくっつーか
いつまでも同じままじゃあ居れなかったのかもな…みんなも、ここも、俺だって」
少しだけ、弱く微笑む
「けどまぁさ!」
パン、と手を叩く
寂しさを感じたというノエルと自分の心を払拭するように
「何の因果かこうしてまた、俺達はここに居る
そうさ、その”今”ってやつを――この一瞬を楽しみゃそれで良いんだよな」
大袈裟か、と苦笑した
553
:
ノエル=フルーレス
:2015/10/10(土) 00:43:19 ID:M9rs6uGU
>>552
「堂々巡りには、なり得ませんから。良くも、悪くも」
甲の弱い笑みに、これまで辿ったであろう自分の知らない道のりを見た気がした。
「そう。楽しむこと。単純に、気軽にやることです。
例え間違いがあっても、そんなのあって当たり前だと思います」
だから、大袈裟でもないかも。っと、笑顔。
「ーーー夜起きてるのがめっきり辛くなりました。
それでは、“また”」
最後の一言を殊更強調し、背を向けたと同時に霞のように消えた。
//レス遅くてすみません。ありがとうございました!。
554
:
甲
:2015/10/10(土) 00:56:28 ID:UXi4YIG6
>>553
「こうしてフラリと立ち寄りゃあ、誰かに会える
それは懐かしい再開かもしれねーし、新しい出会いかもしれねぇ」
「……それで良いし、そういうのも楽しいんじゃねぇかな、きっと」
うん、とひとつ噛みしめるように頷いて
「あぁ、またな」
ふわりと消えた旧友に、再開を約束して
「よし、楽しむか」
自分もその場を後にするのだった
//うぃ、こちらこそ!ありがとやした!!
555
:
名も無き邪気眼使い
:2015/10/15(木) 01:07:53 ID:HwO9r1mU
許可を取っているのだろうか、構内にはラーメン屋の屋台が
「最後にもう一つ、その“JAVAN スパイス”には常軌を逸した脂肪燃焼効果があります。かけすぎには、ご用心を」
「ふぇ?」
そう眼鏡の男性に告げられて胡椒の缶を振る手が止まる白衣の女性
「あ、あ〜……マジで?ありがとう、危うく死ぬところだったよ」
「何事も程々に、ですね。それでは」
「そ、それじゃ……」
闇夜に消えていく“紅茶が好きそうな眼鏡の男性”を見送りながら彼女は考える
「なんか見た事が…あるような?相方がいそうな?……うん、まぁいいや」
ズルズル、今宵も疲れた身にラーメンが染みる
556
:
名も無き邪気眼使い
:2016/12/04(日) 15:52:56 ID:a5xWWn9k
ttp://ux.nu/pzUdz
マスク美人
557
:
人妻
:2017/04/04(火) 14:32:51 ID:naSp/cyE
人妻出会い系サイト セフレ不倫若妻・熟女中出しSEX体験談
人妻 男性無料出会い系サイト&掲示板
http://aeruyo.2-d.jp/zds06/0001/
地域別|セフレ募集出会い
http://aeruyo.2-d.jp/sefuredeai/0013/
エロ写メ
http://aeruyo.2-d.jp/free/adult/1/
人妻書き込み一覧
http://aeruyo.2-d.jp/sefuredeai/sex/hitozemzdeai/
セフレ募集書き込み一覧
http://galscom.eek.jp/aeruyo/zds05/000/
逆サポート掲示板で逆サポ出会い
http://aeruyo.2-d.jp/zds12/00/
人妻逆援助交際掲示板
http://aeruyo.2-d.jp/zds15/00/
熟女出会い系サイト
http://galscom.eek.jp/aeruyo/zds08/000/
テレクラdeツーショット・テレフォンセックス
http://aeruyo.2-d.jp/adaruto/deai03/2syotto01/005/
人妻から高齢熟女まで出会い掲示板
http://aeruyo.2-d.jp/zds07/0001/
熟女,人妻,主婦,不倫,セフレ専門出会いサイト 人妻専門出会い
高齢者・中高年 · 厳選の人妻出会い · 30代以上 · 中年・熟女
人妻出会い系サイト セフレ不倫若妻・熟女中出しSEX体験談
人妻(若妻熟女)と出会い系サイトでセフレになり不倫浮気セックスする方法
出会い系で知り合った20代の人妻と昼間に会ってきた時のガチ体験談
人妻出会い掲示板 人妻出会い系サイト 人妻出会い系サイト セフレ人妻出会い
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板