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孤空の月〜崩れゆく廃坑〜

220Mark@黎明、そののち:2020/05/24(日) 16:29:52
◆◆◆



ジ・アースの飛行艇の救護室は緊急の治療のための魔法道具や機材が並び、メイはベッドに寝かされながら治療を施されていた。
彼の身体には魔法の機材がいくつも繋がれ、冒険者たちに見せたかつての屈強さはなくか細い呼吸を繰り返していた。
「ナ……イン、グレイさん……、エゴちゃん……」
治療室に入ってきた冒険者たちの姿を捉えると、メイの目に光が灯った。

「メイ……、なんで、こんな事……」
いつも冷静さを保っていたナインが、眉間に皺を浮かべ、顔に陰を落としうつむく。握られた拳が震えていた。
「街の人が、怪物に……エネルギーを吸われているのを見て、……黙っていられなかったんだ……君たちが……勝って、よかった……」
「だからってこんな自殺行為なんてしなくてよかっただろ!!」
ナインと一緒にいたグレイが叫んだ。
「……――俺は、いいんだよ」
メイは弱弱しく笑う。グレイは歯を食いしばって目を反らした。

「――メイオジサン、もうダメなノ?もう元気にならなイの?」
泣きそうになっているエゴの頭をメイは優しく撫でる。
「……いいや、ユニバース王国の医療はとっても、進んでる……だから、もしかしたら治るかも、しれない……いいや……治して、みせるよ……」

メイと行動を共にしていた三人の奥で、剣が何か言いたげに押し黙っていた。
「どうした?新之、剣、くん……」
「……メイさん。俺、あんたがいなかったら多分負けてた。本当に、ありがとう。――そして、ごめん」
「……いいんだ、よ」
メイはまた笑った。

「……絶対、元気になれよ」
「もちろんだ。……俺………も、精一杯、頑張る」
剣の言葉に、メイはグーサインで返した。
弱弱しい見た目とは裏腹に、力強さを感じさせた。




◆◆◆




「きみたちは今回の件で魔物と賞金首を生け捕りにし、さらにはこの鉱山のルビーの謎を突き止め無力化した。大きな報酬を約束しよう。――だが、」
救護室の外の廊下で、イアンはアイリとレイドを呼び話していた。
穏やかだったイアンの声のトーンが下がる。

「あのルビーを自由にさせるのは無理だ」


レイドの顔が一瞬曇る。だが、すぐに次の可能性を探そうとする。
「でも、今回は悪い奴があの力を悪用してしまったってだけで……いい人達の手に渡ればいいんだろう!?」
「そういう問題じゃないんだ。それに、あのルビーは"悪い奴に利用された"前例が多すぎる」
「そんな……」
レイドは苦し気にうつむく。アイリもまた、悲しそうな顔で彼を見ていた。


イアンはレイドとアイリを交互に見、困ったような顔をする。
「……君の言う"ルビーに自我がある"確証は掴めないが、似たような魔力を持った宝石、鉱石を集めて研究する山脈がある。我々は今回の騒動の元となったルビーを、その森に寄付しようと思っている。あの森は魔法使いたちの聖域だ。よからぬ事を企てる輩も、簡単に手出しはできないだろう」
「……ルビーに外の世界を見せると、約束したんだ」
「ルビーが永遠に森から出れないまま、とは言ってないよ」
「―――!?」

うつむいていたレイドが目を丸くしてイアンを見る。

「魔法の力でルビーに眠っている自我を引き出し、その姿を映し出せたら、一番信頼できるだろう君たちの同伴を条件に一時的に外に出すことができるかもしれない。君たちは今回の件の功労者だ、それくらいの手は回してあげよう」
レイドの顔が遠目からでもわかるほど輝き、晴れやかになっていく。
それを見たアイリがようやく安心した表情を浮かべたのを、イアンは横目で見て安堵した。


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