したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

孤空の月〜崩れゆく廃坑〜

104M@狼疾走  ◆y6LpjgpWJ2:2011/04/24(日) 20:29:41
==============================

小道に転がり込むレイド。
足に付いた重い防具を脱ぐと、立ち上がって走り出す。

レイドは飲み込まれる直前、蛇の脇を通り過ぎるように逃げ込んだ。
先ほどのゾンビたちとの戦いで炎の剣は魔力切れを起こしていたらしい。
はるか後ろには蛇の頭。レイドが先ほど脱いだ防具を潰し、彼を食おうと高速で迫る!
レイドは後ろを振り向かずただ前を走る――その間に、走るのに邪魔な肩の防具を脱ぎ捨てる。
蛇が迫る。レイドは逃げる!だが、小道の終わりが近づくにつれレイドはある事に気付いた。
先に道はない――崖だ!
だが、レイドは走る速度を緩めず、最後に胸の防具を取ると、勢いをつけて崖を飛び出した。
「う――うぉぉぉおぉぉッッ!!!」
飛び出すと同時に、冷たい風がレイドの身体をすり抜ける。
つららの道を通っていたときとは違う寒さに身を震わせる。
自由落下するレイド。少し遅れ、蛇の頭が道から飛び出してくる!
だが――それ以上にレイドの気を引いたのは、左の視界を覆い尽くすように輝くルビーの壁だった。
「溜まれ……!」
深紅の壁をバックに、レイドは落ちながら己の魔力を剣に溜める。
剣の魔力が尽きれば、代わりになるのは自身の少ない魔力。
だが、蛇を倒すほどの魔力を入れ込むには時間が掛かる――落下する間ではとてもそこまでの力を溜める事などできない。
レイドは地面に接する直前、溜めた魔力による火柱をターボのように放ち、落下の衝撃を和らげる。
真上に大蛇の口が迫る――!レイドは転がる身体を起こし、すぐに蛇から走り出す。
蛇の巨体が着地すると同時に、地面が、ルビーの壁が揺れた。


==============================

剣達が吸血鬼と戦っている地点から離れた小さな穴。
気絶した仲間達はそこにいる。
ナインはそのそばで、動き回る敵を狙い静かに銃を向けていた。


ナインは今の状況を考える。
レイドは離れたきり安否不明。セイスイとグレイは満身創痍で戦える状態ではない。
残りの仲間――剣、アイリ、エゴは、敵である吸血鬼と玲の二人を相手に戦っていた。
アイリは玲と。玲は魔法を放ちながら逃げ回り、それを追いかけるアイリはほとんど彼女に近づけずにいる。
時折玲に近づいたとしても、彼女は風の魔法を使いアイリから強引に離れてゆく。
先程のエゴの戦いも重なって、アイリの顔には疲労が浮かんでいた。
「……………」
ナインは二十日前の玲と吸血鬼との会話を思い出す。
玲は最初は男を警戒していた。
だが、彼女は相手の話術に心を溶かされ敵意を失った――その直後、自分は奈落へ落とされたのだ。

ナインは銃口の先にいる男を見る。
吸血鬼〝イスミ・グァン〟。 奴には剣とエゴが当たっている。
2対1、剣のスピードと荒削りな戦法、そしてエゴの高性能な兵器群に、初めはイスミも押されていた。
だが、イスミは軽いフットワークの回避に変化能力の防御を絡め、中々ダメージの機会を与えない。
更に攻撃を喰らおうと、吸血鬼の力で少しずつ回復してゆく。
剣は少しずつ体力を削られ、エゴはまだまだ動くが、攻撃のパターンを既に読まれている。
敵の体力は未だ底無し。このまま戦闘が長引けばまずい。
「……………」

ナイン・シュガーは思考を巡らせる。
吸血鬼の服の隙間から、かすかに見えるルビーの胸当て。
再生能力があると言うのにわざわざ胸だけを守るのは、そこに弱点があると言う事だ。
胸で考えうる弱点――それは全身の血が行き交う心臓。

「…………」
ナインは静かに狙いを定める。
銃弾一発の殺傷力は小さい。
それでも全弾を一点に当てれば、鉄の扉を貫通させる事もできる。
チャンスは一回。狙いが外れ、こちらに気付かれれば後の祭り。

「………眠いな。コーヒーが欲しいところだ」
血で視界が薄れる中、神経は異様に冴えていた。
ナインは一回のチャンスを待つ――


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板