したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

もし勇者シリーズがC.E.or00世界に来たら(避難所)

35660 ◆nZAjIeoIZw:2010/06/27(日) 09:43:54 ID:I7LYjBeI0
 外見から判断できる武装や戦闘方法よりもまず、根拠も何もない感想が頭の中に浮かび上がる。強い。間違いなく。恐ろしく、と付け加えるべきであろう。
 舞人はガインと共にこれまで両手足の指では足りぬ数だけ、犯罪者たちの繰りだしてきた巨大なロボットを相手にし、その全てに勝利を収めてきた。
 勝利の星に飾られた戦歴ではあるが、決して楽に勝てたとは言えない。旋風寺コンツェルンの最新技術と莫大な資金を惜しみなく投じたマイトガインをしても、運の善し悪しで勝敗が変わっていた様な辛勝もある。
 こちらの命を奪いにかかってくる凶悪な犯罪者達との戦いの中で培われ、ユニウス・セブンの上で我が身を省みず命を捨てて戦うテロリストたちの気迫を浴びた練磨された舞人の、戦士としての直感が告げる。

――戦うな、アレを敵にするな、背を向けて逃げ出せ。

 それを舞人の矜持が、誇りが、誓いがねじ伏せる。
 我知らず、舌で唇を舐めていた。皮膚に痛みを覚えるほどの緊張に乾いていた唇が、かすかに湿り気を取り戻し、わずかに緊張が解れる。

『舞人』
「大丈夫だ、ガイン」

 常に戦場で共にあった相棒が、名前を呼んできた。人工的に知性と人格を与えられたガインの声は、既に耳に親しんで長い時間が経っていたが、ここまで緊張に強張った響きを耳にするのは初めてであった。
 生物としての本能を有する舞人と違い、0と1の羅列から成るガインにさえ分かるほどの強敵。
 おそらくそれも、感知できるエネルギー量や過去の戦いのデータから推測できるダイノガイストの戦闘能力だけが原因ではない。
 ユニウスでわずかとはいえ対峙した時とは違い、今度ははっきりと敵と認識された上での対峙。そして、ダイノガイストに敵と認められたがゆえに全身で受け止めなばならぬ、ダイノガイストの闘争の気配。
 それのなんと強大である事よ。山を覆う木々を根こそぎ吹き飛ばす嵐のごとき激しさが、波一つない湖面のように抑え込まれている。
 今は理性の鎖に繋がれて抑えられたその力が、ダイノガイストの明確な戦闘の意思のもと振るわれたなら、それはどれほどの破壊を齎すだろうか。
 それを受け止めねばならぬのが、自分達であるのだと、舞人は静かに受け入れた。ともすれば恐怖に囚われかねぬ緊張に襲われている舞人であったが、その胸の奥には確かな高揚の灯火が煌々と燃えていた。
 旋風寺舞人。
 十五歳という若輩ながら地球圏有数の超巨大財団の総帥を務め、父祖が築いた一大帝国をさらに巨大なものにした天才というほかない経営の天才。
 容姿端麗、学問は言うに及ばず、武道も幼いころから嗜みプロの格闘家複数を相手にしても容易くいなす文武両道の逸材。
 幾百万、幾千万の社員達の頂点に君臨するにふさわしい風格を既に持ち、輝かんばかりのカリスマ性を持つ。
 おおよそほとんどの全人類がその経歴を知れば、欠点のない完璧な人間と称するだろう少年であるが、舞人とて所詮は一個の人間。恐怖を覚える事はある。足がすくむ事もある。抱えた責任に押しつぶされそうになる事もある。
 そうであるだけならば、舞人は凡百の人間よりも多く天賦の才能と環境に恵まれただけの人間であったろう。
 しかし彼は舞人がそのような一般的な富裕層の人間や天才と呼ばれる人種と一線を画すのは、心を萎縮させる負の感情すべてを乗り越える資質と心の強さを併せ持った人間であったことだ。
 生まれながらにそうだったのか、そうならなければならぬから、そうなったのかは分からぬが、いまダイノガイストの前に居る旋風寺舞人という少年は、敵がかつてないほど強大であるからという理由で背を向ける男では断じてない。
 強大であるという点において前例のない敵と戦うという現実を前に、舞人の背をひと押ししたのは、全力を尽くして戦える敵との遭遇に歓喜する戦士としての本能であった。
 巨大ロボを一機投入してまで自分をおびき寄せたダイノガイストが、この場から離脱するのをおめおめと見逃すわけもない。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板