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シャワールームはピンク色
1
:
ジャストアヒーロー
:2022/07/24(日) 12:12:17 ID:mNrehLYM0
ピンク・ザ・ピンチのテーマ
秘密はなるべく少ないほうがいいよね
友達なのに本当のコトを話せないって
何だか寂しいよね
アタシ日本一有名なスーパーヒロイン
ピンク・ザ・ピンチ
桃美はオジサマも先生も大好きだヨ
でも本当のコトは教えられない
ウソつきは大嫌いなのに
アタシもウソついてる 矛盾してるよね
電者 アタシってヘン?
気休めは言わないで でもありがと♪
トレーニングしたら気が晴れるかな
サイキック・パワーで何でも出来るのに
気持ちだけはどうにもならないの
アタシもっと強くなりたい
憧れのあの人みたいに
2
:
ジャストアヒーロー
:2022/07/24(日) 12:13:41 ID:mNrehLYM0
【ストーリー】
“ピンク・ザ・ピンチ”は日本一有名なスーパーヒロインだ。その正体は九十九桃美(19)というお尻が魅力の女子学生 桃美がピンピンになった理由は殉職した父の相棒だった万我一錠刑事(51・男)を助ける為。祖父の九十九博士が造った助手ロボット“電者”と共に、超能力を駆使して命知らずの錠を援護する。だが桃美は変身しなくてもかなり強い。VTO〈舞闘〉という護身術を八代乙夢先生(28・女)に習っているからである。
桃美が親友と街で遊んでいたある日、身長5mの巨人ロボットが現れ人々をレーザー光線で殺し始めた。親友も殺され、桃美はピンピンに変身してロボを倒す。ロボには男が乗っていて、「ドクロイド」と言い残して爆死した。負傷者の病院への搬送を手伝うピンピン。片脚を失った少女ユウキ(8)を後日ピンピンになって見舞い、そこで出逢ったユウキの兄シンヤ(21)にデートを申し込まれOKする。変身したままデートして親密な仲に。しかしマスコミが騒ぎ始めデートは中断、“ナゾナンジャー”と名乗る女剣士が突然襲って来たが、ピンピンを救ったのは何とシンヤが変身した超人“ブルー・ザ・ナイト”だった。スーパーカップル誕生だ
桃美は乙夢と共にVTO宣伝の為テレビに出演した。いきなり錠が乱入し乙夢に対戦を挑んで来たが、桃美は2人が似合いの男女だと感じる。VTOスクールに戻ると、テレビを観たと言う巨乳美少女ミア(17)が入門して来た。実はミアは錠が追っていた誘拐犯で犯罪組織ドクロイドの女幹部だった。ミア率いるドクロイドはテレビ局を占拠、出演していた眉墨総理大臣に日本の譲渡を要求したが、ピンピンと錠の活躍で戦闘員は全滅。ミアはピンピンの情報で自分が首領に騙されていた事を悟る。総理は無事で、ミアは錠に逮捕され日本の危機はこうして救われた。ライバル同士の乙夢と錠の対戦結果と恋の行方はどうなる???
3
:
全裸とクリーム(第I回)
:2022/07/24(日) 12:21:24 ID:mNrehLYM0
投稿者:九十九桃美
ア タ シ が
ス ー パ ー ヒ ロ イ ン
“ ピ ン ク ・ ザ ・ ピ ン チ ”
に な っ た 理 由 は 、
オ ジ サ マ の
万 我 一 錠 (まんがいち・じょう) 刑 事 を
助 け て あ げ た い と
思 っ た か ら ・ ・ ・ ・ ・ 。
アタシの名前は九十九桃美(つくも・ももみ)。
19歳の女子学生です♪
けっこう髪は長いほうかな?
顔は普通だと思うけど、自分じゃわかんないナ。
V T O 〈 ヴトウ=舞闘 〉
っていうスポーツを習ってます。
彼氏は・・・今は募集中☆
こないだまたケンカして別れちゃった!!!
う〜ん、仕方ないんだよね・・・・・
自分でスーパーヒロインの道を選んだんだし。
今、アタシ“全裸”で台の上に寝かされてる。
おじいちゃんが造った美女アンドロイドの
GOLDY(ゴールディ)とSILVA(シルヴァ)が
アタシのカラダに特殊なクリームを塗ってる最中。
アンドロイドっていうのは人間の形をしたロボットの事。
でもおじいちゃんが造ったアンドロイドは
外見は生身の人間にしか見えないんだ。
アタシの胸を愛撫してる手も人間のように温かい。
このクリームはピンク・ザ・ピンチになった日には
必ず塗られるんだけど、イマイチ意味が解らない。
サイキック・パワー(超能力)を使った後は
すごく神経が疲れるから、その疲労度を軽くする
効果があるんだって・・・・・ホントかな???
「 あ ぁ ン 」
GOLDYの手がアタシの股間に滑り込んだ。
正直、超☆気持ちイイ・・・。
SILVAは乳首をワザと責めている気がする。
アンドロイドなのに微笑を浮かべてる。
おじいちゃんにもこんな顔でサービスしてるの?
アタシ、いつも声を出しちゃうのよね。
おじいちゃんもモニターカメラで観てる筈。
アシスタントロボットの電者(デンジャー)も見てる。
見られてると思うと、恥ずかしいけど興奮する。
・・・アタシ、変態?
GOLDY&SILVAの巧みな指使いに弄ばれるまま、
アタシは快楽に身を任せる。
スーパーヒロインも、悪くない。フフ・・・
4
:
お風呂と電者(第I回)
:2022/07/24(日) 16:14:43 ID:mNrehLYM0
投稿者:九十九桃美
体中クリームでヌルヌルになったア・タ・シ♪
床を滑らないようにGOLDY&SILVAが
両腕を支えてくれたままシャワールームへ。
「ありがと〜、2人共。」
ドアを閉めようとすると、電者がアタシを見てた。
「あ、電者も一緒にオフロ入る?」
電者(DANGER)はアタシの親友。
今ここにいるのは携帯用の手の平サイズで、
アタシの部屋には人間サイズの電者もいるんダ。
もちろん、おじいちゃんが造ったロボットなんだけど
形がすごく変なのね。フフフ・・・
ロケットに手足が生えてるみたいなデザインというか、
まあ男性器(オチンチン♪)みたいなカンジ?
先端が丸い頭部は透明で内部のメカが見えてて、
目の部分は四角いサングラス風になってる。
紳士服のスーツ姿っぽいデザインの胴体部分は
お腹に収納スペースがあるの。
首(普段はないけど)も腕も脚も、
ビヨ〜ンって伸びるんだよ〜☆
手の指は左右各4本ずつあって、
これも触手みたいにニョキニョキと伸びるワケ♪
人間そっくりのアンドロイドが造れるのに
何でこんなマンガみたいなデザインにしたのか
当のおじいちゃんに訊いてみたら、
単純にアタシを笑わせたかったんだって!!!
確かに、初めて電者を見た時は大爆笑しちゃったワ。
でも声や性格はクールな二枚目キャラなの。
その見た目とのギャップが可愛いのよネ☆
ボディシャンプー入りのシャワーを浴びながら
電者のボディもアタシの手で優しく洗ってあげる。
電者自身は気持ちよさとか感じるのかな?
「電者、気持ちイイ?」
「ああ。私はロボットだから皮膚感覚はないが、
想像力はあるからな。」
いつもこんな調子でよく判らないんだ。
GOLDY&SILVAみたいな
顔の表情も電者にはないし・・・。
でも、いい友達なのヨ
5
:
お尻と星空(第3回)
:2022/07/24(日) 16:20:00 ID:mNrehLYM0
投稿者:九十九桃美
お風呂を出たアタシと電者は
メディカルルーム(医療室)を後にする。
まだカラダはポカポカだから、
アタシの部屋まで服を着ないまま行くのダ♪
裸にスリッパだけ履いてね☆
ここはおじいちゃん=九十九博士の研究所で、
おじいちゃんとアタシ以外の人間は誰もいないの。
いるのはほとんどがロボットで、その中でも
感情があるのは電者とGOLDY&SILVAだけ。
だから裸で歩いても全然平気なのね。
“九十九研究所”は、
個人の研究施設としては日本最大級の規模!
アタシの部屋もこの研究所内にあるの。
最上階の一室に住まわせてもらってるんだ。
今、エレベーターが来た。
このエレベーターの中からは街の夜景が見えて、
とっても綺麗なのよぉ〜☆
・・・え? 全裸で大丈夫かって?
外からは見えないガラスになってるから大丈夫!
でも、今日はまだカラダが火照ってるから、
屋上にこのまま行っちゃおー♪
チ〜ン☆
終点に到着。
アタシは屋上にハダカのまま飛び出した。
「 キッ モチ い〜〜〜〜い 」
宇宙の人工衛星から誰かが覗いてるかも知れないネ。
火照ったカラダに夜風が心地良い。
今夜は星がたくさん見えるなあ・・・。
「電者、投げるよぉ〜!」
「またかい桃美? 勘弁してくれよ。」
アタシは星空に向かって電者を放り投げる!
ピュ〜ン☆
空中で止まったところで、
電者は足の裏からジェット噴射。
実は電者は短時間なら空が飛べるんだヨ♪
チカチカと体中のランプを点滅させながら
クルクルとアタシの上空を旋回してくれてる
「電者〜、カッコイイよぉ〜!!!」
・・・・・・は・・・ハクシュン!
6
:
下着とベッド(第4回)
:2022/07/24(日) 16:24:13 ID:mNrehLYM0
投稿者:九十九桃美
アタシたちは屋上から階段で部屋のある階へ降りる。
ちょっとカラダが冷えて乳首がビンビン状態☆
部屋のドアの前で目の網膜スキャンによる本人確認。
面倒だけど、こういう研究所では大事なコトなの。
ドアが開いて中に入ると自動で室内のライトが点く。
「桃美、何か着ないと風邪ひくぞ。」
電者はいつもアタシの事を心配してくれるのヨ。
ロボットなのに御主人様に向かって呼び捨てだけど、
悪気がないから全然気にならない。
携帯サイズの小電者(コデンジャー)を
人間サイズの大電者(ダイデンジャー)に収納する。
ウィ〜ン♪
手足を伸ばして起動する大電者。
「やはりこっちのほうが私自身は好きだな。」
「アタシはどっちも好きだヨ、電者」
大電者の頭の透明な部分にキスしてあげたゾ♪
リモコンのスイッチで壁に収納されたベッドを出す。
テレビも点けてから衣装部屋へ。
アタシ、いつも部屋ではノーブラ・タンクトップに
Tバック・ショーツ姿なのね。
誰も部屋には入って来れないから別にいいんダ♪
今日はアンドロイドに乳首を責められたせいか
タンクトップから“ポッチ”が目立つ。
いつもはそんなに目立たないのに・・・・。
全身が映る鏡の前でアタシはいつも通り
ファイティングポーズを取る。
高く脚を上げ、ハイキックポーズで静止!
もうVTO(舞闘)を始めて数年経つから
カラダはかなり柔軟になったし、
片足でもバランスはまったく崩れない。
アタシは衣装部屋を出てベッドに転がった。
テレビからは今日のニュースが流れてる。
“ピンク・ザ・ピンチ”の事も
たま〜にニュースになってるんだ☆
アタシ一応、日本一有名なスーパーヒロインなの。
正体はバレてないから問題ないけどネ〜。
インターネットでも“ピンク・ザ・ピンチ”の
サイトやコミュニティがたくさんあるみたい。
でもアタシはあんまり見ないようにしてる。
こないだちょっとだけ見たら、
“あのデザインはどうにかならんのか?”
とか悪口いっぱい書き込まれててヘコんだ。
インターネットって、
匿名で好き勝手な事ばかり言う人がいるから
イ ヤ !
7
:
開脚とテレビ(第5回)
:2022/07/24(日) 16:31:53 ID:mNrehLYM0
投稿者:九十九桃美
アタシが今ベッドの上で
どんなポーズしてるか判る?
顔の目の前に股間があって
自分のお尻越しにテレビを観てるの☆
柔軟運動は毎日やってないとすぐ硬くなっちゃう。
だからいつもテレビ観る時はスゴイ格好♪
他人が見たらビックリすると思うヨ。フフ・・
アタシはリモコンでテレビをビデオに切り替えて
“ピンク・ザ・ピンチ”関連の映像集を流す。
アタシが今ベッドの上で
どんなポーズしてるか判る?
顔の目の前に股間があって
自分のお尻越しにテレビを観てるの☆
柔軟運動は毎日やってないとすぐ硬くなっちゃう。
だからいつもテレビ観る時はスゴイ格好♪
他人が見たらビックリすると思うヨ。フフ・・・。
電者はいつもの事だから慣れてるみたいだけど。
「桃美、夜は納豆(なっとう)でいいのかい?」
「うん、いいよ〜。ゴハン炊けたら教えてネ。」
アタシはリモコンでテレビをビデオに切り替えて
“ピンク・ザ・ピンチ”関連の映像集を流す。
最近はほとんどの人がカメラ付き携帯電話を
持ってるから、誰かが必ず映像を撮ってるんだよね。
インターネットなんかで誰に何と言われても、
アタシはピンク・ザ・ピンチのデザインが大好き!
おじいちゃんがアタシに似合うように
一所懸命考えてくれたんだから☆
コスチュームの正式名称は、
“サイキック・パワー強化服”っていうんだ。
アタシは“ピンピンスーツ”って呼んでるけど♪
このPP(サイキック・パワー)強化服を着ると、
アタシの中に眠ってる「気」が引き出されて
いろんな「超能力」を使えるんだヨ!!
見た目はどんな感じかっていうとネ、
基本はピンク色の全身タイツみたいな格好で
脚はハイレグカットされててレオタード風。
口と鼻も外に出てて、
目の部分は青い透明なフード。
髪の毛もポニーテール状に外に出てる。
変身すると強化服の作用で髪は“金髪”になるの。
サイキック・パワー透過性の手袋とブーツは純白。
ベルトにはテレビスクリーンみたいな
四角いバックルがあって、いつも黄色く光ってる。
額(ひたい)には“ぴの丸マーク”という
平仮名の「ぴ」の字をあしらった真っ赤な太陽。
日本の国旗“日の丸”のイメージね。
「ぴ」の字の「○」の部分には、赤いキレイな宝石
“サイキック・ルビー”が埋め込まれてる。
胸(オッパイ♪)には“ダブルPハート”という
アルファベットの「P」を2コ合わせて
真っ赤なハート「」で囲んだデザインの
“ピンク・ザ・ピンチ”シンボルマークがある。
実は「PP」にも「99」にも見えるんだヨ☆
アタシとおじいちゃんの名字が「九十九」だから、
ちょっとだけ遊んでみたんだって。
「9」「P」の丸い部分がちょうど
胸のふくらみにピッタリ合っててちょっとエッチ!
イイカンジだと思わない?
持ってるから、誰かが必ず映像を撮ってるんだよね。
インターネットなんかで誰に何と言われても、
アタシはピンク・ザ・ピンチのデザインが大好き!
おじいちゃんがアタシに似合うように
一所懸命考えてくれたんだから☆
コスチュームの正式名称は、
“サイキック・パワー強化服”っていうんだ。
アタシは“ピンピンスーツ”って呼んでるけど♪
このPP(サイキック・パワー)強化服を着ると、
アタシの中に眠ってる「気」が引き出されて
いろんな「超能力」を使えるんだヨ!!
見た目はどんな感じかっていうとネ、
基本はピンク色の全身タイツみたいな格好で
脚はハイレグカットされててレオタード風。
口と鼻も外に出てて、
目の部分は青い透明なフード。
髪の毛もポニーテール状に外に出てる。
変身すると強化服の作用で髪は“金髪”になるの。
サイキック・パワー透過性の手袋とブーツは純白。
ベルトにはテレビスクリーンみたいな
四角いバックルがあって、いつも黄色く光ってる。
額(ひたい)には“ぴの丸マーク”という
平仮名の「ぴ」の字をあしらった真っ赤な太陽。
日本の国旗“日の丸”のイメージね。
「ぴ」の字の「○」の部分には、赤いキレイな宝石
“サイキック・ルビー”が埋め込まれてる。
胸(オッパイ♪)には“ダブルPハート”という
アルファベットの「P」を2コ合わせて
真っ赤なハート「」で囲んだデザインの
“ピンク・ザ・ピンチ”シンボルマークがある。
実は「PP」にも「99」にも見えるんだヨ☆
アタシとおじいちゃんの名字が「九十九」だから、
ちょっとだけ遊んでみたんだって。
「9」「P」の丸い部分がちょうど
胸のふくらみにピッタリ合っててちょっとエッチ!
イイカンジだと思わない?
8
:
オトコとオンナ(第6回)
:2022/07/25(月) 00:12:41 ID:Wculup1I0
投稿者:九十九桃美
あ、今ビデオ映像で“お尻”が
ズームアップになった〜!!!
ピンピンスーツはレオタードっぽいから、
アタシのお尻はいつも食い込み&丸出し状態。
おじいちゃんに何とかならないかと頼んでも
全然直してくれないの・・・・。
ピンク・ザ・ピンチとして戦ってる時は
そんな事を気にしてる余裕はないんだけど、
ニュース映像とか後で見るとけっこう恥ずかしい。
男性向け雑誌やインターネットで
“ピンピンは国民的オナペット”
な〜んてよく書かれてる。
男の人はアタシのお尻見て興奮するのかなぁ?
別れた彼氏は“桃美のお尻は世界一”と言ってた。
でも、付き合ってる相手って何でも褒めるから
アタシはあんまり真に受けないようにしてるの。
男の人がオナニーしてくれてるんだったら
そんなに悪い気はしないけどネ〜♪
オンナに生まれた以上は
オトコを元気にさせる存在であり続けたいし。
意外と女性のピンピンファンが多いんだって☆
異性に好かれるのも嬉しいけど、
同性に好かれるのはもっと嬉しい気分♪
実はアタシ、女の人も好きなのヨ
9
:
お店とチンピラ(第7回)
:2022/07/25(月) 00:19:20 ID:Wculup1I0
「桃美。」
・・・ん・・・電者の声だ・・・・・・
「桃美、朝だぞ。」
・・・朝・・・・もう朝なの?
「今日は登校日だからそろそろ
起きたほうがいいんじゃないのか?」
ああ、登校日かぁ・・・・・・・まだ眠い・・・
「あと5分だけ寝させて・・・。」
「私は構わないが、昨日寝る前に桃美が
この時間に絶対起こしてって言ったんだぞ?」
「・・・そんな事言ったっけ?・・・・」
アタシ何でそんな事言ったんだろう?
今日は朝食、何を食べようかなぁ・・・・・
朝食・・・・・・アレ? 朝食?
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
完全に目が覚めた〜☆
そうだ、今日は学校の通り道にある
大手ハンバーガーショップ“マッキー”の
新メニュー「MAXバーガー」販売開始日だ!
テレビCMとかで前から宣伝してて、
すごく美味しそうだったから
絶対初日に行って食べるって決めてたんダ。
「起こしてくれてありがとネ、電者。」
「これが私の仕事だからな。」
アタシは急いで出掛ける準備を済ませ、
小電者を専用ポシェットに入れて
ピンク色の自転車で“マッキー”に向かった。
途中、街の人がアタシに声を掛けてくれる。
「桃美ちゃん、おはよう〜。」
「おはようございま〜す☆」
男子高校生がニヤニヤして口笛を吹く。
あ、アタシのミニスカートまくれ上がってた。
ちなみに外出する時はTバックじゃないし、
ブラジャーもちゃんと着けてるのヨ。
店に到着♪
自転車を停めて鍵を掛け、アタシは店内へ。
うわあ・・・・やっぱり並んでる。
20人くらいはいるかな?
でも、どうしても食べたいから並んで待つゾ!!
アタシの前の人は、
スーツ姿の20代後半くらいの男性。
店内は熱気でちょっと暑いから首すじに汗かいてる。
そういうアタシも自転車飛ばして来たから
ワキ汗びっしょりだったりするけどネ・・・。
知らない人でも汗かいてる人見ると
ハンカチで拭いてあげたくなる。
でもいきなりそんな事したら
変なコだと思われるから我慢、我慢。
あ、お兄サン自分のハンカチで拭いた♪
何かスッキリしたナ。フフ・・・。
「何や、えらく混んどるやんけ〜!」
ワザとらしく大きな声で店内に入って来る男。
チラッと見ると、
“暴走族”風の服装をした若い男が4人。
全員いかにもなサングラスをしてる。
「ワシらちょっと急いどるんでなぁ〜。
先に頼ましてもらうで〜。」
まったく、最低な連中・・・・・。
4人のチンピラは列を無視して
先頭に割り込もうとする。
店員も客も何も言わない。
その時、前の男性がチッ!と舌打ちした。
かなり大きな舌打ちだったから
完全にチンピラにも聞こえた。
わあ、マズイよぉ・・・・。
「誰だ? 今、舌打ちしたヤツは。」
チンピラが前の男性に近付いて来る。
男性は目を合わせず、知らないフリをしてる。
でもバレてるみたいだよ・・・どうするの?
「兄ちゃんか? ワシらに文句あるのは。」
「ぼ、僕じゃないです。」
あ〜あ、やっぱり・・・・。
「じゃあ、誰が舌打ちしたんだ、ああ?」
「し、知りませんよ。」
「え〜と、アタシですぅ♪」
アタシは手を挙げた。
チンピラ4人はちょっと驚いた様子。
前の男性もビックリしてる。
エヘヘ・・・・面白くなって来たヨ
10
:
お客とカメラ(第8回)①
:2022/07/25(月) 11:51:18 ID:me0RZ6ZA0
投稿者:九十九桃美
店内の音楽だけが妙に明るい雰囲気で、
実際は・・・・・どうなるのかナ〜?
「ネエチャン、女だからって
大目に見てもらえるとでも思ってんのか?」
「フフ・・・別にィ。」
4人のチンピラがアタシの前に集まる。
他のお客さんたちはちょっと離れていく。
・・・こういう緊張感、たまらないワ☆
「で、どうする気? ボクちゃんたち♪」
「テメェ、なめんじゃねーぞコラ!!!」
思い切り顔を近付けて威嚇するチンピラ。
「で? アタシを殺す? そんな度胸あるの?
店内のカメラも、みんなの携帯電話のカメラも
ボクちゃんたちのコト撮ってるのヨ。」
チンピラたち4人は
店内カメラや客のカメラに気が付く。
「わざわざ証拠を残して犯罪行為をするほど
バカじゃないんでしょ?」
ちょっと不安な表情を見せるチンピラくん。
・・・・・可愛い〜
「もう誰かが警察を呼んだかも知れないネ。」
「な、何ィ?」
11
:
お客とカメラ(第8回)②
:2022/07/25(月) 11:53:45 ID:me0RZ6ZA0
他のお客さんが小さく「帰れ」コールを始めた。
「帰れ、帰れ、帰れ! 帰れ!!・・・・・」
だんだん大きくなる「帰れ」コール!
「何だよ! バカヤローどもが!!」
店内からスゴスゴと退散するチンピラ4人。
パチパチパチ・・・・・・
全員がアタシに拍手してくれてる♪
「お嬢さん、スゴイね〜。
舌打ちした男性が笑顔で近付いて来た。
「おかげで助かったよ。どうぞお先に。」
「ありがと、お兄サン☆」
お兄サンが順番を譲ってくれたヨ☆
「キミみたいに勇気のある女の子は
初めて見たよ。」
サングラスで顔を隠してる人って、
本当は気が小さいんだよネ。
アタシが学校で勉強してるのは「心理学」なの。
12
:
お茶とパーガー(第9回)
:2022/07/25(月) 11:58:27 ID:me0RZ6ZA0
投稿者:九十九桃美
アタシの番が来た〜♪
もちろん「MAXバーガーセット」を注文。
ドリンクはホットのウーロン茶で。
高カロリーの食べ物を食べる時に
甘くて冷たいドリンクは厳禁なの。
運動する直前ならジュースとか
コーラとか飲んでも大丈夫なんだけどね。
アタシも一応“女の子”だから
あまり太らないように気をつけてるんダ☆
ピンク・ザ・ピンチになった時
太ってたら何かカッコ悪いし・・・・。
朝食や昼食で高カロリーの食事を摂っても
そんなに簡単には太らないから、
ハンバーガーとか食べても平気なのヨ。
もちろん毎日食べてたらダメだけど。
夕食・夜食は、低カロリーで野菜中心の
メニューにすると健康的にダイエット出来るの。
これ、VTOスクールで教わったんだ♪
あ〜みんなもう食べてる〜(ヨダレ、ヨダレ)
どんな味なのかなぁ?
席に着いてしばらくすると
女性店員サンが「MAXバーガーセット」を
笑顔で運んで来てくれた。
「先程は有難うございました。」
「あ、どういたしましてデス☆」
「ごゆっくりどうぞ〜。」
アタシは早速ハンバーガーの包みを開けた!
うわあ・・・いい匂い・・・。
デミグラスソースがたまらなく美味しそう〜☆
「いただきま〜す」
ふ わ ぁ あ あ ああああ・・・・・・・・
何なの? この美味しさは・・・・。
みじん切りのタマネギが
ちょっとシャリッとして凄くいい感じ。
ああ、幸せ〜☆☆☆
ここのハンバーガーは今まで
牛肉100%にこだわってたんだけど、
今回の新商品「MAXバーガー」は牛・豚・鶏が
絶妙なバランスでミックスされてるの。
アッという間に食べちゃった。
フライドポテトをつまみながら
満足感に浸るア・タ・シ
次も絶対「MAXバーガー」食べようっと♪
さぁてと、
お店を出たらちょっと
“食後の運動”をする事になるかも・・・ネ。
13
:
武器とパンチラ(第10回)①
:2022/07/25(月) 12:02:35 ID:me0RZ6ZA0
投稿者:九十九桃美
アタシが店を出ようとすると、
また一斉に拍手が沸き起こった!
店員サンもみんな笑顔で手を叩いてる☆
ちょっと照れるナ・・・・・。
アタシは再び自転車に乗って学校へ向かう。
しばらくすると、
後ろから1台のバイクが接近してくる音がした。
思った通りだ。
前方にもバイクが1台、
行く手を邪魔して停まってる。
アタシは横道へ入る。
徐々に人の少ない通りに追いやられている感じ。
ヘルメットで顔を隠しているので
さっきのチンピラかどうかは確認出来ないけど、
服装は同じなので間違いなさそう。
表通りは監視カメラが多いから
カメラのない場所まで追いやるつもりなのね。
もちろん自転車ではバイクから
逃げられる訳がない。
誰もいないビルの谷間に追い詰められた。
行き止まりで監視カメラもない。
バイクは4台。
どうやら仲間は呼んでないみたい。
女の子1人くらい4人いれば十分だと踏んだのね。
アタシは自転車からゆっくり降りて、
バイクのチンピラに向かって立つ。
バイクから3人が降りてこちらに近付いて来る。
1人はチェーンを回しながら、
1人はナイフ、1人は竹刀(しない)を持ってる。
「ボクちゃんたち、ヘルメット取ったら?」
「うるせえアマが!
そのミニスカートの中身まで
血まみれにしたろかいコラ!!」
「悪いけどアタシ、処女じゃないんダ♪」
「・・・こいつ、頭おかしいんちゃうか?」
「いいから早くやっちまおうや。
もう勃起してきたぜヒヒヒ・・・」
「バッキャロー! ワシが先じゃい。」
フフ・・・まるでマンガみたいな連中ね。
チェーンを回してるヤツが要注意かな?
「早く手を出してくれない?」
「何やと?」
「ほら、正当防衛じゃないと
ただの弱い者イジメになっちゃうでしょ?」
「なめんなよワリャ!」
ビュン!
チェーンがアタシの顔に当たる・・・筈だった。
VTO(舞闘)ではあらゆる武器に
素手で立ち向かう方法を教わってきたの
グキッ!
「うぎゃあああああああ!!!」
チェーン男の腕の骨が折れたみたい。
間接が逆に曲がってる。
チェーンはアタシのものに。
敵から奪った武器の使い方もマスターしてる。
チェーンはまるで生きてるように操れる。
ピュンピュンピュン・・・・・
ナイフ男と竹刀男は近付けない。
14
:
武器とパンチラ(第10回)②
:2022/07/25(月) 12:04:28 ID:me0RZ6ZA0
「破!」
チェーンがナイフを持つ手を直撃!
落としたナイフを拾おうとする男の
ヘルメットに“かかと落とし”をお見舞い。
グシャッ!!!
変な音がした。
竹刀でアタシに襲い掛かる3人目の男。
これは楽勝。
後方宙返りで竹刀の攻撃をかわし、
チェーンで腕の自由を奪う。
次の瞬間にはアタシのヒザが男の肋骨に入ってた。
ベキッ!!
これで3人片付いたヨ☆
最後の1人はどうする気かな?
15
:
バイクと救急車(第11回)①
:2022/07/25(月) 12:06:51 ID:me0RZ6ZA0
投稿者:九十九桃美
「ねぇ、どうするの〜?」
逃げる?
それともバイクで突っ込んで来る?
どっちにする?
かなり迷ってるみたいね。
あ、覚悟決めたナ☆
アタシをひき殺すつもりかも?
バイクでこちらに向かって来たヨ。
あのスピードだと完全に殺す気だ!
バカね・・・・
逃げればケガせずに済むのにナ・・・・・。
ドサッ!!!
16
:
バイクと救急車(第11回)②
:2022/07/25(月) 12:08:05 ID:me0RZ6ZA0
それともバイクで突っ込んで来る?
ドサッ!!!
ガッシャ〜
〜〜ン!
!!!!
アタシはバイクを闘牛士のようにかわし、
瞬時にチェーンを男の首に巻き付けて
バイクから引きずり下ろした。
男は全身を地面に叩きつけられ、失神。
バイクは壁に激突し、大破。
「ボクちゃんたち、
もう他人に迷惑掛けちゃ、ダ・メ・よ」
返事はない。
でも4人とも気絶してるから仕方ないネ。
アタシは自転車でその場から走り去る。
そしたら救急車のサイレンが聞こえて来た。
「電者が呼んでおいてくれたのね?」
ポシェットの中の電者に話し掛ける。
「ああ、警察にしようか迷ったがね。」
電者はポシェットの中からいつも様子をうかがってて、
状況に応じてアタシをフォローしてくれる。
もしチンピラが仲間を大勢呼んでいたら
警察に連絡してくれてたと思う。
相手があの4人だけなら
当然アタシが勝つと分かってたみたいネ♪
電者は意思のある携帯電話でもあるの。
今のチンピラたちとのやりとりも全て
録音・録画してるんだヨ。
こんなに頼りになる監視カメラはない。
だから彼らが病院でウソついても意味ないワケ。
あ、失敗した!
ドリンクはコーラにしとけば良かったヨ〜!!
17
:
友達とカラオケ(第12回)①
:2022/07/25(月) 12:10:53 ID:me0RZ6ZA0
週1回の登校日には、
授業が終わった後いつも友達と遊びに行くの。
今日はカラオケルームで騒ごう!という事になり
クミとリカと3人で今ノリノリ〜♪
あ、電者もね。
電者はあんまりノッてないように見えても
意外と歌を聴くのが好きなのヨ。
絶対に電者自身は歌わないけど。
アタシは歌が超大好き☆
「次はモミーの番ね〜。」
クミが歌い終わってアタシにマイクを渡す。
“モミー”というのはアタシのニックネームで、
“ももみ”と呼ぶ友達はあんまりいない。
アタシの名前って発音しにくいからなぁ・・・。
“つくも・ももみ”ってフルネームだと
ほとんどの人が「も」の連続で引っ掛かる。
実は自分でも必ずちゃんと言える自信がないナ。
だけど“九十九桃美”って、いい名前でしょ?
アタシはリモコンで自分が歌う曲を設定する。
「またぁ?」
「モミーは必ずこれ歌うよね〜。」
「ハ〜イ、お待たせしましたぁ☆
アタシ“九十九桃美”の十八番
『 風 』ですう♪」
18
:
友達とカラオケ(第12回)②
:2022/07/25(月) 12:12:14 ID:me0RZ6ZA0
いつも傍(そば)に居るようで
決して触れる事もできない
そう 君は風
風のような女性(ひと)よ
時に優しく 時に冷たく
その涼しげな瞳は
何を見つめているのだろう
BLUE BLUE WIND
You are the wind
風は何処へ向かうのか
風の行方は風も知らない
遥か彼方に居るけれど
決して忘れる事などない
そう 君は海
海の似合う女性(ひと)よ
とても広くて とても深くて
あの澄みきった瞳は
誰を見つめているのだろう
BLUE BLUE WAVE
She is the sea
海は何も恐れない
海がこの惑星(ほし)潤している
BLUE BLUE WIND
You are the wind
風は何処へ向かうのか
風の行方は風も知らない
あ〜キモチ良かったぁ〜
この歌は人気SFドラマの主題歌で、
歌ってるのはセクシーな低音が魅力の
ベテラン男性シンガーなんだけど、
アタシは滅茶苦茶ハマッてるんダ☆
でもアタシってどうやらかなり音痴みたいで、
聴いてる人は相当シンドイらしいの。
リカとクミは友達だから笑ってくれてるけどネ。
友達っていいな・・・・・エヘヘ(汗)
19
:
音楽と睡魔(第13回)①
:2022/07/25(月) 12:14:41 ID:me0RZ6ZA0
投稿者:九十九桃美
今、カラオケルームには静かな音楽が流れてる。
リカはソファーに倒れ込んで寝ちゃったみたい。
多分、疲れてるのかな?
リカはね、夜は“風俗”の仕事をしてるの。
だから昼はいつも寝てるイメージがある。
“天然ちゃん”でホンワカしてて可愛い〜♪
クミは今、彼氏との関係で悩んでる。
アタシは毎日メールでクミの相談に乗ってるけど、
アタシ自身も彼氏と別れたばかりなのよネ・・・。
将来の事でもいろいろ悩んでるみたい。
自分が何をしたいのか判らないって言うの。
アタシの場合は、おじいちゃんから
研究所で働かないかと誘われてるし、
VTOスクールのインストラクターの誘いもある。
あとは警察の仕事にも興味があるんダ。
今、専攻してるのも“犯罪心理学”だしネ☆
でもまだ卒業後の事は決めてない。
クミと2人でいろんな事喋ってるうちに
アタシたちもウトウトし始めた。
何か今日はいろいろあったなぁ・・・・
MAXバーガー・・・・
すご〜く美味しかった・・・・・
クミ・・・リカ・・・・
アタシといつまでも友達でいてネ・・
20
:
音楽と睡魔(第13回)②
:2022/07/25(月) 12:16:14 ID:me0RZ6ZA0
あのチンピラくんたち・・・
大丈夫かな・・・・・
電者・・・時間になったら起こして・・・
眠・・・・・
ド オ オ
オオオ ン!!!
轟音と震動。
「何!?」
目を覚ましたアタシはすぐに周囲をチェックする。
テーブルの上のコップは全部倒れて
床にドリンクがこぼれていた。
でも電者はしっかり立ってる。
「わあ〜、地震だ〜!」
寝ぼけたクミがアタシにしがみついて来る。
リカはまだ起きない。
「電者、今のは地震なの?」
「いや、そんなニュースは流れてない。」
カラオケルームの店員がドアを開けて
慌てた表情で叫んだ。
「早く避難して下さい!」
状況はよく判らないけど、
何か緊急事態が起こってるのは確かね。
「リカ! 起きて!!」
「ん、なぁに〜? モミー・・・」
店の外に出たアタシたちが見た光景は・・・
戦場だった。
21
:
夕日とレーザー(第14回)①
:2022/07/25(月) 12:18:33 ID:me0RZ6ZA0
投稿者:九十九桃美
夕暮れの街は炎と煙に包まれていた。
大勢の人がアタシたちの前を走って逃げて行く。
あっ! あの人、腕がない!!
今、腕がない人が走って行った・・・。
車道の車は乗り捨てられ誰も乗っていない。
「モミー、何があったのかなぁ?」
リカが目をこすりながらアタシに訊いた。
「判らないけど、アタシたちも逃げましょ。」
アタシはみんなが逃げて来る方向を見た。
煙で遠くが見えない。
足音?
ガシャン、ガシャン・・・・・
だんだんこっちに近付いて来る。
煙の中から何かが見えた。
大きい!
5メートルはあるかも知れない。
ロボットだ!
人型のロボットが迫って来る!
目の部分だけが不気味に光ってる。
「クミ、リカ、早く逃げて!!」
アタシがそう言ったと同時に閃光が走った。
22
:
夕日とレーザー(第14回)②
:2022/07/25(月) 12:19:39 ID:me0RZ6ZA0
「きゃあああああああああ!!!!!」
クミの悲鳴が聞こえ、
リカの首が胴体から離れて落ちて行くのが見えた。
他にも何人かの人が体を切断されている。
怪ロボットのレーザー光線がみんなを殺したんだ。
「リカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
アタシは気が動転して叫んだ。
でもどうしようもない。
震えるクミの腕を掴んで走り出していた。
涙が溢れて来て視界がかすむ。
リカ、ごめんね。
でも今はクミだけでも助けないと。
死体の間を縫ってアタシとクミは逃げる。
ビルの谷間の細道に入ってアタシは立ち止まった。
「クミ、ここからは一人で逃げて。」
クミは泣きながらアタシの顔を見た。
「モミーは?」
「アタシはやる事があるから。」
「何する気なの? 殺されるよ。」
「クミ、大丈夫。アタシは絶対死なないから。」
アタシはクミの手をギュッと握った。
「・・・・うん、分かったモミー・・・。」
クミはそう言って他の人と一緒に逃げて行った。
アタシは人目に付かない物陰に隠れ、
ポシェットから電者を取り出した。
「大丈夫かい? 桃美。」
アタシは涙を拭いて小さく頷く。
「ピンク・ザ・ピンチ!」
「OK! 桃美。」
23
:
変身と超能力(第14回)①
:2022/07/25(月) 12:21:52 ID:me0RZ6ZA0
投稿者:九十九桃美
電者はアタシがピンク・ザ・ピンチに
変わるための“変身装置”でもあるの。
アタシが「ピンク・ザ・ピンチ」とコールすると
電者の首が伸びて頭部から特殊な光が発せられる。
この光の中でアタシの着ている服は原子分解され
電者の中に圧縮して収納される。
つまり、一瞬は全裸になるんだけど
誰も見てないから気にしない☆
ほぼ同時にサイキック・パワー強化服が
アタシのカラダの表面で原子再構成される。
この間わずか1秒。
変身完了。
ボクは無敵のスーパーヒロイン、
ピンク・ザ・ピンチになった。
ピンピンスーツを着るといろいろな変化が起こる。
強化服の作用で「気」が高められ、
なぜか男性的な言葉遣いになってしまう。
声も多少低くなるみたいだ。
おかげで肌(脚や口元)の露出が多い割には
ボクの正体がバレずに済んでいる訳だが。
変身後は電者をベルトのバックル部に
原子分解して収納出来る。
こうしておけば邪魔にならないし
いつでも電者と話す事が出来る訳さ。
ボクはレーザーロボのいる通りへ向かった。
「あっ、ピンク・ザ・ピンチだ!」
「頼むぞピンピン!
アイツをやっつけてくれ!」
みんながボクを知っている。
「みんな、危ないから早く逃げろ!」
ボクは通りのど真ん中に飛び出す。
足の裏から「気」を発する事で
ジャンプ力も普段の数十倍になる。
無人のバスの上に降り立つと
ボクはレーザーロボを睨みつけた。
すると、レーザーロボの動きが止まる。
24
:
変身と超能力(第14回)②
:2022/07/25(月) 12:23:11 ID:me0RZ6ZA0
夕陽と炎がボディーに反射して
オレンジ色に見えるが、
全体に黒っぽい体色のようだ。
何となく憎々しい顔付きに見える。
親友のリカを殺した事だけは絶対に許さない。
あちこちで爆発が起きている。
カラオケルームで聞いた轟音は爆発音だった。
コイツ・・・感情はあるのか?
レーザーロボはボクを珍しそうに見ている。
カッ!
またさっきと同じ閃光、レーザー光線だ!
バスは真っ二つになった。
だが、ボクは無傷で生きている。
ドオオオ
オオオオ
ン!!!
大爆発を起こすバスの炎の中でもボクは平気。
サイキック・バリヤー。
「気」のエネルギーを周囲に張る事で
全ての攻撃から身を守る事が出来る。
「おい、貴様。」
ボクはレーザーロボに話しかけてみた。
「ボクは今から貴様をぶっ壊す。
中に誰かいるのなら今のうちに逃げるんだな。」
レーザーロボの反応はない。
言葉が通じないのか、バカにしてるのか、
いまいち判断がつかないが、どっちでもいいさ。
どのみちタダでは済まさない。
ボクのパワーは復讐に使うべきではないが、
スーパーヒロインだって人間だ。
友達を殺されたとあっては感情的にもなる。
ロボットを壊したところで恨みは晴らせない。
そんな事は分かってる。
で も 、 ぶ っ 壊 す 。
25
:
回想と快感(第16回)①
:2022/07/25(月) 18:27:21 ID:Wculup1I0
投稿者:九十九桃美
サイキック・パワー=「気」は
ボクの感情に比例して強くなる。
ボクはレーザーロボに怒りをぶつけた。
ガァン!!!
徐々に破壊されていくロボ。
ギシッ!!
5メートルの鉄人は鉄クズになりつつあった。
こんな事をして何になる?
ボクは虚しい気持ちでいっぱいだった。
リカ・・・・・・
ボクの脳裏にリカとの思い出がよみがえる。
前に一度だけ、リカの家に泊まった事がある。
狭いけど、キレイに片付いた部屋だった。
アタシとリカは一緒にお風呂に入って、
アタシの彼氏の話やリカの仕事の話をしたっけ。
「モミー、彼氏とはエッチしてる?」
「うん、してるヨ♪」
「イケメン?」
「う〜ん、そうでもない。でも優しいんダ☆」
「そうだよね・・・それが一番大事だよね。」
「リカはお仕事でお客さんの事、
好きになっちゃったりしない?」
「その時は好きになる時もあるけど、
次のお客さん来たら忘れちゃうなぁ。
リカって恋愛とか出来ないのかも・・・。」
「そんな事ないよリカ、
まだ出逢ってないだけかも知れないじゃない。」
「そうかなぁ・・・・。」
リカは人気風俗嬢だけあって
すごく色っぽいカラダをしてるの。
アタシは割と筋肉質だけど
26
:
回想と快感(第16回)②
:2022/07/25(月) 18:30:29 ID:Wculup1I0
リカのカラダはプリプリして柔らかそうで、
正直女のアタシが見てもドキドキする。
「モミー、背中洗ってあげる。」
「あ、ありがとうリカ。」
リカが手で優しくアタシの背中を洗ってる。
「モミーのカラダって締まっててカッコイイ。」
「ホントに?
アタシはリカのカラダに憧れるナァ♪」
「リカは全然鍛えてないからすぐ太っちゃうし、
モミーみたいな大きな丸いお尻になりたい。」
「あ、彼氏はアタシのお尻が好きだって
言ってくれてるけど、
リカに褒められると嬉しいな。」
リカの手がアタシのお尻に。
ちょっと変なカンジがした。
「モミー、うつ伏せになってみて。」
アタシは言われるままにうつ伏せに。
リカはしばらくアタシのお尻を愛撫してた。
「モミー、リカの事・・・好き?」
何となくリカの気持ちが判った。
「うん、好きだヨ。」
アタシとリカは泡まみれのまま、
愛し合い始めた。
友達とこんな事するのは初めて。
アタシはリカの巨乳を揉みしだく。
指で乳首を刺激する度にリカは大きく喘いだ。
これって「レズ」なのかな?
フフ・・・何でもいいか〜
リカとそういう事をしたのはそれっきり。
お風呂を出て一緒のお布団で寝たけど、
もういつもの友達同士だった。
そんなリカはもうこの世にいない。
ボクは泣きながらロボを破壊し続けた。
27
:
ドクロイドと爆発(第17回)①
:2022/07/25(月) 18:33:01 ID:Wculup1I0
投稿者:九十九桃美
ロボは道路に倒れ、頭部が外れた。
「あっ!?」
ボクは自分の目を疑った。
中に人間が乗ってる。
搭乗型の操縦ロボットだったんだ!
20〜40歳くらいの男性が全裸で
メカの中に埋め込まれている。
身体中からコードが出てて
まるで部品の一部のようだ。
眉毛も頭髪もツルツルで毛が全くない。
なぜか男性の性器は激しく勃起している。
まさかボクの姿に興奮してるのか?
涙!?
この男、泣いてる????
マスコミのヘリコプターが上空を旋回してる。
まだ安全とは限らないのに・・・。
「・・・・俺、アンタのファンだったよ。」
男は小さな声でそう言った。
ボクはピンク・ザ・ピンチに変身中は
聴力も驚異的に鋭くなるので
ヘリの騒音の中でも呼吸音まで聞き取れる。
「テレビのニュースなんかで
よくアンタの事を観てた。」
「だからボクを生で見て勃起してるのか?」
「いや、これは興奮剤を飲まされたせいだ。
レディーの前ではしたない姿をさらして
済まないな。自分じゃどうしようもない。」
「そうか・・・。
で、何でこんな事をしたんだ?」
「時間がないから手短に話すぞ。
すでにドクロイドが証拠を消すために
遠隔操作で爆破スイッチを入れたようだ。」
カウンターの数字はあと1分弱を示している。
「ドクロイドって何だ?」
「世界征服を企む犯罪組織だ。
このロボットは海外の軍隊に売り込むための
宣伝用試作品で、まだこれ1体しかない。
28
:
ドクロイドと爆発(第17回)②
:2022/07/25(月) 18:34:12 ID:Wculup1I0
殺人兵器のプロモーション活動だったんだ。」
「お前が泣いてる理由は?」
「俺だってこんな事はしたくなかったさ。
だが娘を人質にされてる。
やらなきゃ娘を殺すと脅されてた。」
「ボクの親友も死んだんだぞ。」
「それは・・・済まない事をしたな。」
「お前を助ける方法は?」
「ない。コードを外しても爆発する。」
もう時間が少ししかない。
男は諦めた様子で穏やかな顔をしていた。
「何か、言い残す事はないか?」
「死ぬ前にアンタに直接会えて嬉しかったよ。
テレビで観るよりセクシーだな。」
「複雑な気分だが、
一応ありがとうと言っておこうか。」
「本当に悪かった。許してくれよピンピン。
もし娘に会う事があったらよろしく頼む。
名前はウサミ・トモコだ。」
「解った。心配するな。」
男はうなずいて、微笑んだ。
ゴオオオオ
オオオオ
ン!!!!
レーザーロボと男は木っ端微塵に消えた。
ボクはサイキック・バリヤーの中で
やりきれない思いに打ちひしがれていた。
親友を殺した男が自分のファンの1人だった。
犯罪組織ドクロイド・・・絶対に忘れない。
そういえば、クミは大丈夫だっただろうか?
29
:
ショックと触手(第18回)①
:2022/07/25(月) 18:36:24 ID:Wculup1I0
投稿者:九十九桃美
あれからもう10日が過ぎた。
死んだリカのお葬式に行ったりしたけど、
あとはずっと部屋に引きこもってる。
学校もVTOスクールもずっと休んでるの。
クミもアタシと同じような状態らしい。
テレビを点けるとレーザーロボ関連のニュース
ばかりで、リカの事を思い出すので消したまま。
死傷者は3000人以上も出たのに、
気になるのは親友リカの事だけ。
アタシってスーパーヒロインの資格
ないのかも知れないなあ・・・・。
アタシ1人で世界の平和を守れる訳じゃない。
レーザーロボが爆発した後、
大勢のケガ人を病院に運ぶ手伝いをしたけど、
運んでいる途中で息絶えた子供もいた。
あまりにもたくさんの「死」に直面すると
自分の感覚が麻痺してくるのが判る。
アタシも運が悪ければレーザー光線で
殺されてたかも知れない。
バックルの中で電者が記録していた
レーザーロボの映像をおじいちゃんが分析してる。
何かドクロイドについて解るかもね。
はぁ・・・・・・・・・
前の彼氏と別れた時もこんな感じだったけど、
さすがに今回の事件は精神的ダメージが大きい。
これほど自分の無力さを思い知らされたのは
ピンク・ザ・ピンチになってからは初めて。
アタシがあの場にいたからこそ助かった人もいる。
でもあの日、もしカラオケに寄らずに帰ってたら
リカは死なずに済んだ筈。
そう思うとまた涙が出て来た。
ベッドの横でアタシを心配そうに大電者が見てる。
「電者、アタシやれる事はやったよね?」
「ああ。桃美はベストを尽くした。
たくさんの命を桃美が救ったんだ。」
30
:
ショックと触手(第18回)②
:2022/07/25(月) 18:37:27 ID:Wculup1I0
「ありがとう・・・電者・・・・。」
アタシは号泣した。
電者がいてくれてホントに良かったと思う。
アタシをいつも見守っててくれる友達。
ロボットでも大好き。
大電者の8本の指が触手のように伸びて
アタシの性感帯をそれぞれ愛撫し始めた。
ツライ事があった時はいつもこうやって
忘れさせようとしてくれるの。
アタシのすべてを知ってる電者は、
友達というよりアタシの分身かも知れない。
現実逃避したい時に性的快感が有効なのは
心理学的にも証明されてる。
「 あ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
31
:
メールと先生(第19回)①
:2022/07/25(月) 18:39:20 ID:Wculup1I0
者:九十九桃美
そういえばアタシ最近、メールとか
全然チェックしてなかったなあ・・・。
久し振りに読んでみようかな♪
「電者、メール来てる?」
部屋の掃除をしていた大電者に話し掛けた。
「ああ、電話6件、メール28件たまってる。」
「そんなに?」
「桃美がメールや電話があっても
教えるなと言ったんだぞ。」
「そんな事アタシ言ったっけ?」
「やれやれ・・・。で、どうする?」
「まず電話から再生して。」
アタシはベッドの上で柔軟運動をしながら
大電者が再生する留守番電話の音声を聞く。
「モミー、あたしクミだけど、大丈夫?
あたしはもう元気だから、モミーも早く
復活してね〜。今度旅行でも行こうよ。
あたし温泉とか行ってみたいなあ〜。
モミーもなんか考えといてね〜。じゃあ、
元気になったら電話かメールちょうだいね。
バイバ〜イ。」
クミって本当に優しいな・・・・。
自分もツライ筈なのに明るく振舞っちゃって。
温泉かぁ・・・たまには行ってみようか・・・。
他も友達からの励まし電話ばかりだった。
みんなアタシの事を心配してくれてる。
すっごく元気出て来たゾ〜♪
メールも電者が読んで聞かせてくれる。
32
:
メールと先生(第19回)②
:2022/07/25(月) 18:40:17 ID:Wculup1I0
あ、元彼からのメールだ。
やっぱりもう新しい彼女いるみたい・・・。
アタシがレーザーロボ事件に巻き込まれた事は
クミから聞いたんだって。
「九十九さん、八代です。」
せ、先生〜〜〜〜〜〜〜っ
アタシのVTO(舞闘)の師匠、
八代乙夢(やしろ・おとめ)先生からのメール♪
「お友達が亡くなって落ち込んでるのは
判るけど、そろそろスクールの方に来ない?
私は九十九さんが来ないと寂しいのよ。
貴方ほど才能のある生徒はいないもの。」
先生・・・・・・・。
「あと、ちょっと相談したい事もあるし、
元気になってからでいいから顔見せに来て。
お願いね。」
八代先生がアタシに相談???
何の話だろ?
気になる・・・・・。
久し振りに練習もしたくなってきたし
VTOスクール行ってみようかな?
「お出掛けかい?桃美。」
「久し振りに行ってみっか〜〜〜〜〜☆」
アタシはベッドから宙返りで跳び下りた。
九十九桃美、復活だあああああーーーーー!!!
33
:
自転車とスクール(第20回)①
:2022/07/25(月) 18:42:22 ID:Wculup1I0
投稿者:九十九桃美
アタシは約半月振りに外出した。
すごくお天気もいいし気分爽快〜♪
VTOスクールに行くには、
レーザーロボが破壊した街の中心を通るのが
一番近いんだけど、今は復旧作業中なので
遠回りして行かなければいけないんダ☆
さっき出掛ける前にスクールに電話したら、
八代先生が今日は来てるっていうから
急いで自転車を飛ばしてるトコロ。
自動車の免許も車もあるんだけど、
アタシは自転車が大好き!!!
トレーニングにもなるし、ミニスカルックで
自転車に乗ってるとみんながアタシを見てくれる。
たまにナンパされたりするしネ♪
大きな川に架かってる橋は超難関。
この登り坂を足を地面に着かずに
立ちこぎで乗り切るのがアタシの小さなプライド。
ちょっとしばらく自転車に乗ってなかったから
今日はフラフラでやばいかも?
あとちょっとで頂点に・・・・・。
あ、ダメだ。
足着いちゃったぁ〜〜〜!!!
チリンチリ〜ン♪
「お嬢ちゃん、若いのに情けないのお〜!」
ジャージ姿のお爺さんがバッテリー付き自転車で
アタシを追い抜かして行った。
く、口惜しい・・・・・。
アタシはすぐそのお爺さんを追った。
「お爺さん、その自転車いいネ〜♪
お爺さんは歳いくつ〜?」
「ワシは83じゃ〜!」
「スゴイね〜! 若く見えるヨ〜♪」
「ワシをナンパしても無駄じゃぞ〜。」
34
:
自転車とスクール(第20回)②
:2022/07/25(月) 18:43:33 ID:Wculup1I0
「ウソ〜? 残念〜!」
こういう触れ合いがあるから
自転車って好きなのよネ♪
やっとVTOスクールのあるビルに着いた☆
この高層ビルの25階にエレベーターで上がる。
早く八代先生に会いたくて仕方ない。
25階に着き、エレベーターのドアが開く。
廊下を小走りにVTOスクールへ向かう。
ドアを開けてスクールの中に入ると
いつもの受付のお姉さんが笑顔で迎えてくれた。
「九十九さん、久し振り〜。」
「こんにちは〜♪ 先生来てる?」
「お待ちかねよ。ウフフ・・・。」
アタシは会員カードを機械に通して
トレーニングルームへ向かった。
いつもは先に更衣室で着替えるんだけど、
今日はまず先生の顔が見たいの!
トレーニングルームのドアを開けると
部屋の中は真っ暗だった。
・・・・・・・・あれ、何で?????
35
:
八代乙女とVTO(第21回)①
:2022/07/26(火) 00:00:47 ID:YBDGfUKQ0
投稿者:九十九桃美
受付のお姉さんは
先生が待ってるって言ってたのに・・・・。
アタシは真っ暗なトレーニングルームの
照明スイッチを入れた。
パン!!!
パン!パパン!
パン!!
「えっ!?」
照明が点いたと同時に破裂音がして
アタシは超ビックリ☆☆☆
「せーの、桃美ちゃんお帰りなさ〜い!」
VTOスクールの生徒と講師と八代先生が
声をそろえてアタシを迎えてくれてる♪
パーティー用のクラッカー鳴らしたんだぁ・・・。
大きな布に太字で
☆桃美チャン☆
おかえりなさい!
と書いてある。
「みんな・・・。」
アタシの事、みんな待っててくれたの?
涙が自然と頬を伝う。
最近泣いてばかりだったけど、
嬉し泣きしたのは久し振りだな・・・。
「九十九さん、お帰りなさい。待ってたわ。」
黄色いレオタード姿の八代先生が
アタシのカラダを優しく抱いてくれた。
先生も、笑顔だけどちょっと涙目。
「先生〜〜〜〜!!!」
アタシも先生を強く抱き返した。
36
:
八代乙女とVTO(第21回)②
:2022/07/26(火) 00:02:11 ID:YBDGfUKQ0
先生の頼り甲斐のある筋肉質なボディに
今すごく安らぎを感じてる・・・。
スクールの仲間たちもアタシを囲んで
一緒に泣いたり拍手したりしてくれたヨ♪
八代乙夢先生は28歳の女性格闘家。
アタシはインターネットで先生の事を知った。
もともとアタシは「体操」やってたんだけど、
ダンスや格闘技にも興味が出て来たので
いろいろ探してるうちに先生の
『八代乙夢VTOスクール』を見つけて入門。
まだピンク・ザ・ピンチになる前ね。
先生はダンスと格闘技をミックスした
〈舞闘〉(VTO)という女性向けの護身術
を考案したスゴイ人なんだよ☆
先生はいろんな格闘技やダンスの大会で
過去に何度も優勝してるから、先生の部屋は
メダルやトロフィーがいっぱい!
VTOスクールは日本各地にあって、
先生は指導のためにいつも飛び廻ってる。
そのせいか、先生はまだ独身なの。
アタシが男なら絶対放っておかないんだけどナ♪
あ、でも先生より強い男の人って
そんなにたくさんいないかも・・・・。
トレーニング用のレオタードに着替えたアタシは
みんなと一緒に八代先生の「演舞」を見ていた。
しなやかで力強い先生の動き。
男性的なダイナミックさと
女性らしいセクシーさが
同時に押し寄せてくる。
ある時はカンフーのように激しく、
ある時は日本舞踊のように優雅に、
先生のその華麗な舞いにアタシたちは
ただただウットリ
アタシも早く先生みたいになりたいナ〜☆
37
:
拍手とファイト(第22回)①
:2022/07/26(火) 00:04:44 ID:YBDGfUKQ0
投稿者:九十九桃美
八代先生の見事な「演舞」が終わった。
一同大拍手!!!
「八代先生ステキーーーーーーー!」
「先生すご〜〜〜〜〜〜い♪」
みんなそれぞれ賛辞を口にする。
先生の額にうっすら浮かんだ汗が色っぽい
講師の戸田(とだ)さんがタオルを先生に渡す。
先生は汗を拭きながらアタシのほうを見た。
「九十九さん、私とファイトしてみない?」
“ファイト”とは実戦形式で行なう練習の事。
「はい先生♪ もちろんやります!」
「じゃあ、準備して。」
先生は優しげな微笑みを残して歩いて行った。
うわあ、先生とファイトするの久し振りだ・・・。
「モミー、頑張って!」
仲間が声を掛けてくれる。
部屋の隅にいる小電者が目に入った。
ガッツポーズで応援する電者にウインクで応える。
アタシはいつもの準備運動を始めた。
でも、やっぱりちょっとカラダが重い。
柔軟運動は続けてたから硬くはなってないけど。
ドキドキしてきたヨ☆
「先生、いつでも行けます!」
「そう。じゃあ始めましょ。」
戸田先生がジャッジを務める。
「ではファイト・シミュレーションを始めます。
両名、礼(れい)!」
アタシと八代先生はお互いに深く頭を下げた。
ここからは先生も生徒もない。
「始め!」
戸田先生の開始の合図と同時に
アタシは「敵」に先制攻撃!
正面からいきなり跳びヒザ蹴り。
当然、軽くかわされる。
38
:
拍手とファイト(第22回)マルチ
:2022/07/26(火) 00:06:02 ID:YBDGfUKQ0
着地した瞬間に素早く回し蹴りをお見舞い!!
が、手でガードされ衝撃力を吸収された。
バランスを崩すアタシのボディーに
「敵」の突きが入る!
バシッ!!!
あまり痛くないのは「敵」が本気じゃないからだ。
「敵」はまったく必死な顔を見せない。
涼しげな表情どころか笑っているようにも見える。
アタシは体勢を立て直し、
「敵」に連続手技攻撃を加える!
アタシのスピードより早いスピードで
「敵」はすべての攻撃をガードしてる。
さすがは「八代乙夢」。
アタシが師と仰ぐだけの事はある。
アタシもかなり強くなってる筈なんだけど
「八代乙夢」もどんどんレベルアップしてる。
あ!
「敵」が消えた????
そう思った次の瞬間、呼吸が出来なくなった。
「うぐっ!!!」
「敵」に首をロックされた!
アタシは床に倒され、顔が充血してくのを感じる。
く、苦しい・・・・・・・・・
「そこまで!」
戸田先生のジャッジでファイト終了。
アタシの完敗だ。
武器を持った男性4人にも負けないアタシを
素手で軽く倒せる八代先生の強さって一体・・・。
フラフラしながら定位置に戻り、礼を済ませる。
「先生・・・強過ぎです。」
「フフ、ありがとう。九十九さんも確実に
腕は上がって来てるから大丈夫よ。
今日の練習が済んだら私の部屋に来て。」
「はい、先生。」
メールに書いてた“相談”の件かな?
それにしても、もっとアタシ練習しなきゃネ(汗)
39
:
相談と正体(第23回)①
:2022/07/26(火) 00:09:32 ID:YBDGfUKQ0
投稿者:九十九桃美
練習後、アタシは八代先生の事務室へ♪
先生はバスローブ姿で待っていた。
色っぽ〜〜〜〜い☆☆
先生特製の“はちみつ生姜(しょうが)ドリンク”
をアタシに出してくれたヨ♪
「美味しいです〜先生。」
「ホント? 私はちょっと生姜の味が苦手。」
先生はそう言いながら
アタシの向かい側のソファーに座った。
「どう? 練習して少しは気分が晴れた?」
「はい♪ やっぱりカラダを動かすのって
心にもイイかも知れないですネ。」
「そう、心と体はつながってる。
生きてる限り絶対に切り離せないものなのよ。」
先生は時々遠くを見てるような目をする。
「あ、そうそう、九十九さんに相談があるの。
実はテレビ局から出演依頼があってね。」
「先生がテレビに出るんですかぁ?」
「ええ。しかも全国ネットで生放送の番組なの。」
「すご〜い! 絶対観ます〜☆」
「・・・・九十九さんも一緒に出てくれない?」
「えっ?」
「トークと演舞だけじゃなくて、
ファイトも見せて欲しいって言うのよ。
相手は戸田さんでもいいんだけど
戸田さんは九十九さんが適任だって。」
どうしよう・・・・・・。
テレビには出た事あるけど、
それはピンク・ザ・ピンチとしてのアタシ。
素顔では出た事ないし、ヤバくないかな?
「ほら、九十九さんは若くて可愛いし、
テレビ観た人がVTOに興味を持つ
いいきっかけになると思うのよね。
要はウチの“看板娘”になって欲しいの。」
「ちょっと考えさせてもらっていいですか?」
40
:
相談と正体(第23回)②
:2022/07/26(火) 00:11:09 ID:YBDGfUKQ0
「もちろんよ。返事は来週までに
聞かせてくれればいいからゆっくり考えて。
テレビに顔を出すとリスクもあるだろうけど
メリットも多いと思うの。
私も正直テレビ出演は悩んだんだけど、
宣伝効果を考えたら断るのもどうかと思って。」
これはおじいちゃんに相談したほうがいいかも?
アタシの一存では決められない・・・・。
「ところで、九十九さんは
ピンク・ザ・ピンチを現場で見たの?」
「は!?」
こないだのレーザーロボ事件の事かな?
「私はニュース映像でピンク・ザ・ピンチ
見たんだけど、ちょっと九十九さんと
雰囲気とか体型が似てる感じがするのよ。」
ヤバっ!!!!
「あ、アタシが逃げた後に現われたみたいです。」
アタシがピンピンだという事は絶対に言えない。
先生にウソはつきたくないけど、
こればっかりは仕方ない。
サイキック・パワー強化服に使われている
科学力は悪用されればとんでもない事になる。
もしピンピンの正体がアタシだとバレたら
おじいちゃんや友達や八代先生にまで
何らかの被害が及ぶかも知れない・・・・。
そんな事だけは絶対に避けたいの。
「たまに似てるって友達に言われます。」
「あ、やっぱり言われる?
前からちょっと気になってたのよ。
国民的スーパーヒロインに似てるなんて
ちょっと羨ましいわね。」
「あ、ありがとうございます先生。」
・・・・「ありがとう」っておかしいかな?
別にアタシがピンピンだと疑ってる訳じゃなさそう。
せっかくシャワー浴びたのにまた冷や汗かいたヨ。
「ピンク・ザ・ピンチって金髪だから、
日本人じゃないのかも知れないわね。」
「そうですねぇ・・・・。」
おじいちゃんがあんなに肌の露出の多い
コスチュームデザインにしたから
こんなドキドキする羽目になるのよぉ・・・。
もう〜〜〜〜〜〜〜!!!
41
:
日記と女子高生(第23回)①
:2022/07/26(火) 13:04:31 ID:se28Ph.A0
投稿者:九十九桃美
久し振りに本格的な練習したから
カラダのあっちこっちが痛ぁい・・・・。
今、アタシの部屋で大電者に
マッサージしてもらってるトコロ〜♪
テレビ出演の件はおじいちゃんに話したら
大丈夫だろうって事でオッケーだったヨ。
さっき八代先生にメールしておいた。
今日みたいに完全にやられっぱなしじゃ
カッコ悪いから、少しは放送日までに
VTOの腕を上達させておかないとネ!
あ、でも先生に勝っちゃマズイんだ。
・・・・・・んなワケないか☆
テレビ画面をインターネットにして
クミの日記サイトを見てる。
アタシと同じでクミもしばらくは
日記すら書けない状態だったんだけど、
数日前からぼちぼち書き始めたみたい。
来週は学校で直接会えそうだなぁ・・・。
サイト訪問者はアタシとリカ以外に数人いる。
でももうリカはこの世にいない。
少し前の日記に残ってるリカの書き込み。
“クミ〜〜〜またカラオケルームで
盛り上がろおおおお!!!”
明るいコメントが今はただ哀しい。
またちょっとウルッと来た。
「電者ありがとう。もういいヨ〜♪」
「じゃあ、夕食の準備をして来る。」
42
:
日記と女子高生(第24回)②
:2022/07/26(火) 13:05:35 ID:se28Ph.A0
「今日はね、お豆腐料理がいいな。」
「解った。では豆腐ステーキにしよう。」
日記をさらに古いページに戻すと、
とても懐かしい名前があった。
彩葉(いろは)ちゃんという女子高生。
アタシは彩葉ちゃんとクミのサイトで知り合ったの。
高校で演劇部の部長をやってるという事だった。
ネットでは遠くに住んでる人とも友達になれる。
アタシたちはちょっとだけ年上だから
彩葉ちゃんの恋の相談相手になったり、
逆に演劇の事を教わったりした。
クミとは特に気が合ったみたいで
よくお互いにサイトを行き来してた。
ネット上だけの付き合いなのに親友みたいだったナ。
だけどある日突然、彩葉ちゃんのサイトが消えた。
クミのサイトにも現われなくなったの。
彩葉ちゃんの正確な住所も電話番号も
知らなかったから連絡の取りようがなかった。
彩葉ちゃんは女優になりたがってたんだけど、
今頃どうしてるんだろう?
もう半年以上過ぎた。
生きてるのかどうかさえ判らない。
顔も本名もお互いに知らないんだから
もしどこかですれ違っても気付く事はない。
何だか、寂しいな・・・・。
アタシはインターネット画面をオフにした。
43
:
クルマとおじさま(第25階)①
:2022/07/26(火) 13:07:46 ID:se28Ph.A0
投稿者:九十九桃美
今日は雨。
アタシは車で病院に向かっているトコロ☆
市内ならいつもは自転車を使うんだけど、
雨の日は車で移動するの。
この車、普通の自動車のように見えて
実はスーパーマシーンなのヨ♪
その名は、ピ ン チ ラ ン ナ ー!
おじいちゃんが造った陸・海・空対応車で
もちろん世界に1台しかない。
電者とコンピューターが繋がってるから
アタシが乗ってない無人状態でも
遠隔操縦が可能。
つまり、どこにいても電者がいれば
数分で研究所から飛んで来るというワケ☆
変形スイッチを押せばピンチランナーに
一瞬で変わるんだけど、基本的には
ピンク・ザ・ピンチの時以外は普通車モード。
法的にはピンチランナーは違法車両だから
普段はなるべく法律を守らないとダメでしょ?
スーパーヒロインだからって
緊急時以外は法律を破る事は許されない。
今もちゃんと制限速度を守ってるヨ♪
雨の日は道路が渋滞する。
タイヤがスリップするから運転が慎重になり
全体的に交通の流れが悪くなるのよね。
ピンチランナーは電気自動車なので、
普通車として道路を走っているだけなら
エンジン音はほとんど聴こえない。
雨が車体に当たる音が心地いい。
アタシ、雨って好きなんだ〜
お風呂好きのアタシとしては、
雨は街をキレイにするシャワーだと思うの。
実際には酸性雨で有害なんだけどね。
でも汚染されてないモノなんて現代には何もない。
オジサマ、もう回復してるかなあ・・・。
44
:
クルマとおじさま(第25回)マルチ
:2022/07/26(火) 13:08:48 ID:se28Ph.A0
万我一錠(まんがいち・じょう)刑事は
アタシの死んだお父さんの親友。
アタシのお父さんも刑事だったの。
お父さんの名前は九十九拳(つくも・けん)。
お父さんとオジサマは最高の刑事コンビだった。
“拳&錠”と言えば裏社会でも恐れられる程。
オジサマのほうが先輩刑事だったけど、
プライベートでも本当の兄弟みたいだったナ。
アタシは子供の頃からオジサマが大好きだった。
ちょっとナイーブだったお父さんと違って
オジサマはワイルドで陽気なキャラクター。
いつも冗談ばかり言ってアタシを笑わせてた。
でも、ある事件でオジサマが無茶して
お父さんはそれをかばって死んでしまった。
以来、オジサマは自暴自棄になり
酒に溺れて家族にも逃げられ、
捜査のやり方もメチャクチャになって
いつ死んでもおかしくないような
ヤケッパチ刑事になってしまった。
何度も瀕死の状態で病院に運び込まれてた。
もしかしたらオジサマは死にたかったのかも。
アタシはお父さんが命懸けで守った
オジサマの命を守りたいと思ったの。
それで天才科学者であるおじいちゃん、
九十九博士に頼んでスーパーヒロインになれる
強化服を作ってもらったんだ☆☆
45
:
彼氏とシグナル(第26会)①
:2022/07/26(火) 13:10:42 ID:se28Ph.A0
投稿者:九十九桃美
オジサマはレーザーロボ事件の前日に
たった1人で違法ドラッグの取引現場に突入。
ホント、無鉄砲だよね・・・・。
オジサマには“ピンチシグナル”という
指輪型の発信機をプレゼントしてあるの。
もちろんおじいちゃんが作った装置だけど、
「これは“お守り”だから絶対に外さないでね。」
とアタシが言ったのを信じてくれてるみたい♪
“お守り”というのはウソじゃないしネ。
ピンチシグナルはオジサマの脈拍数の変化から
危機的状況を察知して電者に信号を送る。
アタシは変身してピンチシグナル発信場所へ
ピンチランナーで急行しオジサマを助けるワケ。
なるべくナイショでね。
でも、状況によってはすぐに行けない事もある。
46
:
彼氏とシグナル(第26会)②
:2022/07/26(火) 13:11:15 ID:se28Ph.A0
投稿者:九十九桃美
オジサマはレーザーロボ事件の前日に
たった1人で違法ドラッグの取引現場に突入。
ホント、無鉄砲だよね・・・・。
オジサマには“ピンチシグナル”という
指輪型の発信機をプレゼントしてあるの。
もちろんおじいちゃんが作った装置だけど、
「これは“お守り”だから絶対に外さないでね。」
とアタシが言ったのを信じてくれてるみたい♪
“お守り”というのはウソじゃないしネ。
ピンチシグナルはオジサマの脈拍数の変化から
危機的状況を察知して電者に信号を送る。
アタシは変身してピンチシグナル発信場所へ
ピンチランナーで急行しオジサマを助けるワケ。
なるべくナイショでね。
でも、状況によってはすぐに行けない事もある。
以前彼氏とエッチしてる最中にシグナルが鳴って、
最初は何とか上手く誤魔化して
オジサマの所にすぐに向かったのね。
だけどさすがに2回目は彼氏がキレて大ゲンカ。
そりゃあアタシだって一番イイトコで
中断するのはツライよ〜〜〜〜!!!
オジサマの命が危険だと判ってて
放っておく事なんて絶対に出来ないもん!
アタシの愛するお父さんのピンチを
何度も救ってくれたオジサマ。
最期はオジサマのために死んだお父さんも
きっと後悔はしてなかったと思う。
オジサマがいなければアタシは生まれてなかった。
そして今オジサマを守れるのはアタシだけ。
お父さん、安心して。
アタシは何があってもオジサマを死なせはしない。
こないだはちょっとだけミスしてオジサマに
全治数ヶ月の大ケガをさせちゃったけどね。
まさか火薬倉庫で銃を使うとは思わなかったから
爆発から守ってあげられなかったの。
まあ、入院してたおかげでレーザーロボ事件の時は
現場に来れなかったから逆に良かったかな?
オジサマならヘリコプターで
突っ込んで来てたかも〜〜〜〜〜〜☆
有り得る・・・・・(汗)
47
:
彼氏とシグナル(第26会)②
:2022/07/26(火) 13:11:50 ID:se28Ph.A0
以前彼氏とエッチしてる最中にシグナルが鳴って、
最初は何とか上手く誤魔化して
オジサマの所にすぐに向かったのね。
だけどさすがに2回目は彼氏がキレて大ゲンカ。
そりゃあアタシだって一番イイトコで
中断するのはツライよ〜〜〜〜!!!
オジサマの命が危険だと判ってて
放っておく事なんて絶対に出来ないもん!
アタシの愛するお父さんのピンチを
何度も救ってくれたオジサマ。
最期はオジサマのために死んだお父さんも
きっと後悔はしてなかったと思う。
オジサマがいなければアタシは生まれてなかった。
そして今オジサマを守れるのはアタシだけ。
お父さん、安心して。
アタシは何があってもオジサマを死なせはしない。
こないだはちょっとだけミスしてオジサマに
全治数ヶ月の大ケガをさせちゃったけどね。
まさか火薬倉庫で銃を使うとは思わなかったから
爆発から守ってあげられなかったの。
まあ、入院してたおかげでレーザーロボ事件の時は
現場に来れなかったから逆に良かったかな?
オジサマならヘリコプターで
突っ込んで来てたかも〜〜〜〜〜〜☆
有り得る・・・・・(汗)
48
:
万我一錠と病院(第27回)①
:2022/07/26(火) 18:26:03 ID:se28Ph.A0
投稿者:九十九桃美
病院に着いたアタシはオジサマの病室に向かった。
オジサマが大好きな“アンパン”持ってネ♪
「オジサマ〜〜〜〜〜」
病室のドアを開けると、ベッドの周りには
派手な服装のセクシーなお姉さまが3人。
相変わらずモテモテだぁ☆☆
「こんにちは〜。」
とアタシはお姉さま方に挨拶した。
笑顔で会釈する3人。
「おう、桃美ちゃん。
わざわざ俺の見舞いに来てくれたのかい?」
ガッツポーズを見せるオジサマ。
半月も入院してたのでヒゲは伸び放題。
でも野性的で男らしくて素敵♪
普通なら全治数ヶ月のケガも、オジサマは
超人的な回復力で1ヶ月以内に治してしまうの。
だから余計に無茶するんだけどね・・・。
「うん。いつものアンパン作って来たヨ。
お腹空いた時にでも食べてねオジサマ。」
アタシは手作りアンパンの入った紙袋を渡した。
ウチはお母さんがいなかったから、
小さい頃から料理はしてたんダ。
お父さんと一緒にいろいろ作ったなあ。
お母さんは九十九博士=おじいちゃんの
実の娘なんだけど、アタシを産んですぐに
病気で死んだんだって。
お母さんの顔は写真やビデオでしか知らないの。
「サンキュ〜。ちょうど腹減ってたんだ。
桃美ちゃんの作るアンパンは最高だからなあ。」
豪快にパンを頬張るオジサマ。
とても51歳とは思えない若々しさ☆
お姉さまの1人がスッと紙パック牛乳を差し出す。
このさりげなさはホステスさんなのかな?
オジサマは離婚してからは“女遊び”しまくってる。
付き合ってる女性はここにいる3人だけじゃない。
アタシが内緒で助けるようになってからは、
オジサマは自分が不死身のスーパーコップだと
勘違いしちゃったみたいね。
49
:
万我一錠と病院(第27回)②
:2022/07/26(火) 18:27:52 ID:se28Ph.A0
実際タフなんだけど、死ぬ時は死ぬんだから!
自信満々のヒーローに女性は惹かれるのか、
オジサマの周りにはいつも“イイ女”が絶えない。
相棒や家族を失った孤独感を忘れられるなら
別に悪い事だとは思わないナ。
「あ〜美味かった! 桃美ちゃんまた頼むぜ。」
「うん、またネ。それよりオジサマ、
ちゃんとお守りの指輪してくれてるんだね。」
アタシはピンチシグナルを指差す。
「ああ、これかい? これ桃美ちゃんに
もらってからは俺ツイテルからな。」
「嬉しいな。アタシの言う事聞いてくれて。」
「何だったら俺と結婚するか?
な〜んちゃってな、ウワッハハハハハ・・・・」
大笑いするオジサマにつられて笑うお姉さま方。
フフ・・・・アタシは別にいいけどネ。
親友の娘に手は出せないでしょ?
オ ・ ジ ・ サ ・ マ ♪
50
:
負傷者と選択(第28回)①
:2022/07/26(火) 18:30:25 ID:se28Ph.A0
投稿者:九十九桃美
「じゃあネ〜、オジサマ♪」
しばらく話した後、アタシは病室を出た。
あの様子なら多分来週には退院ね。
ところで、今日この病院に来たのは
オジサマの見舞いだけじゃないんだ。
ドクロイドのレーザーロボが爆発した後、
アタシは負傷者を病院に運ぶ手伝いをしたの。
2人乗りのピンチランナーでは
1回に大人1人しか運べなかったんだけど、
それでも30〜50人は運んだと思う。
この病院にも何人か運んだ。
まだ助かりそうな人を先に運ぶか、
もう助からなそうな重傷者を先に運ぶか、
究極の選択を強いられる状況だったな。
アタシは今にも死にそうな人は見捨てた。
そして若い人をなるべく優先した。
小さい子供なら2人運べたし、
あの状況では仕方ない事だと思う。
命に優先順位をつけるなんてサイテーよね。
でも、そういう判断を瞬時にしないと
さらに死人が増えて行く事になる。
片脚がレーザーで切断された女の子がいた。
アタシが話し掛けるとまだ意識がハッキリしてて、
名前を訊いたら「ユウキ」と答えた。
51
:
負傷者と選択(第28回)②
:2022/07/26(火) 18:32:01 ID:se28Ph.A0
小学生くらいのぽっちゃりした子だった。
空飛ぶピンチランナーの中で
「ピンピンちゃんに助けてもらっちゃった。」
と言ってユウキちゃんは微笑んだ。
あの後、ユウキちゃんが助かったかどうかは
アタシは知らない。
今日、探してみようと思ってるの。
受付で訊けば簡単に判る筈。
ドン!
通路の角を曲がった所で患者さんとぶつかった。
「あ、すみません! 大丈夫ですか?」
倒れた患者さんを助け起こそうとしたら、
その人はアタシの顔を見て恐怖におののいた。
「うわあああああ、すんませんすんません!」
なぜか土下座して謝り始めた。
アレレ???
聞いた事ある声だし、顔も見覚えあるような・・・
「もう2度とあんな事はしませんので
勘弁して下さい姐さん!!」
思い出した☆☆
「あ、あ〜、バイクの“ボクちゃん”ね?
キミもこの病院に入院してたんだ。」
周囲の人が変な目で見てる。
男が女に土下座して謝ってるんだから目立つよね。
「別にキミにとどめを刺しに来た訳じゃないヨ♪」
「そ、そうなんですか?姐さん。」
「早く退院出来るといいネ。」
アタシはその場を立ち去った。
「姐さん、ありがとうございます!」
と後方から声が。
案外いいコなのね・・・。
でも弱い者に強く、強い者に弱い連中だから
あんまり信用しないけど。
・・・「姐さん」だって。
52
:
赤ちゃんと少女(第29回)①
:2022/07/26(火) 18:35:54 ID:se28Ph.A0
者:九十九桃美
「ピンク・ザ・ピンチ!」
「OK!桃美。」
カ ッ !!
ボクは受付のあるロビーに出た。
当然のようにみんながボクの登場にどよめく。
日本一有名なスーパーヒロインだからね♪
受付の年配の女性もちょっと驚いたらしい。
「すみません。ボクがここへ運んだ女の子で、
“ユウキ”というコは入院してますか?」
「あ、はい、今すぐ調べますので。」
「ありがとう。」
待ってる間に何気なく後ろを見ると、
赤ちゃんを抱いた女性がボクのそばに立っていた。
「あの、ピンク・ザ・ピンチさん、
この子を抱いてもらえませんでしょうか?」
「ああ、いいよ。」
ニコニコした可愛い赤ちゃんだ。
ボクに抱かれても全然泣かない。
「しゃ、写真もよろしいでしょうか?」
「もちろん♪」
ボクもこんな赤ちゃんをいつか産むのかな?
撮影が終わるとその女性は赤ちゃんを受け取り
何度も礼を言って去って行った。
「ピンク・ザ・ピンチさま、判りました!」
「あ、ユウキちゃん見つかった?」
「はい。8歳の“アオノ・ユウキ”という
女の子が入院中ですね。」
良かった・・・・生きてたんだ。
教えてもらった病室に着くとネームプレートに
「蒼乃勇気」と書いてあった。
いい名前だな。
ボクは病室に入った。
一番奥の窓際のベッドにユウキちゃんがいたが、
窓の外の雨を見ててボクにはまだ気付いてない。
53
:
赤ちゃんと少女(第29回)②
:2022/07/26(火) 18:39:18 ID:se28Ph.A0
「ユウキちゃん。」
ボクは彼女に声を掛けた。
「あ〜ピンピンちゃんがおみまいに来てくれた!」
ユウキちゃんはあの日と同じ笑顔でボクを見た。
「脚は、痛くない?」
「うん。さいしょはすごぉく痛かったけど、
もうあんまり痛くないよ。」
彼女は嬉しそうにシーツをめくって
包帯が巻かれた半分の長さの左脚を見せた。
「義足(ぎそく)っていうのをつければまた
歩けるようになるってセンセイが言ってた。」
ボクは、思わず泣きそうになった。
何でこんなに明るいんだ?
ボクはユウキちゃんを抱きしめる。
「ピンピンちゃん、いいニオイがするよ。」
「ん? 何のニオイだろう?」
「あのね〜、ママのニオイ♪」
あ、さっきの赤ちゃんを抱いた時に
母乳の香りがピンピンスーツに付いたのかも。
ボクはベッドの横のパイプ椅子に座った。
「ユウキちゃんのママは?」
「ママはいないの。パパとレストランで
エビフライセット食べてかえるときに
大きいロボットが出てきてピカッと光ったら
ビルがたおれてきてパパ死んじゃったの。」
ボクと同じで両親がいなくなったんだ・・・。
まだ8歳の女の子なのに。
「それでね、逃げようとしたら左足がなくて
立てないから少しずつはって逃げたの。」
「そうか・・・・頑張ったね。」
「ねえピンピンちゃん、髪の毛とか爪は
切ってもまた生えてくるのに、
どうして足はまた生えてこないんだろうね?」
どうしてだろうね・・・・・
どうして、だろうね・・・・・・・・・・・・・。
54
:
念力と青年(第30回)①
:2022/07/26(火) 18:44:21 ID:se28Ph.A0
投稿者:九十九桃美
「・・・どうしてだろうね?」
マスクの中で涙が頬を伝うのを感じた。
「ユウキはね、大きくなったらピンピンちゃん
みたいなスーパーヒロインになるの。
それでパパをころした悪いやつを
やっつけてやるんだ。」
「ああ、ユウキちゃんならきっとなれるさ。
世界一強いスーパーヒロインに。
いつかボクと一緒に悪いヤツを倒そうな。」
「うん!」
この子なら本当に夢を叶えるかも知れない。
「ピンピンちゃんはおウチでもそのかっこなの?」
「あ、いや、ウチではピンピンスーツは脱ぐよ。」
「ユウキもそれ着たら空とんだりできるかなあ?」
「空が飛びたいんだったら今でも飛べるよ。」
ボクはサイコキネシス(「念力」とも言う。
物体に直接触れずに気の力だけで動かす超能力。)
で彼女の体を宙に浮かび上がらせた。
「わあ〜〜〜〜、すご〜〜〜い♪」
病室の天井近くまで上げてゆっくりベッドに戻す。
「ピンピンちゃん、ありがと〜!!
ユウキいま空をとんだんだね。」
この笑顔を見てるとボクまで幸せな気分になる。
「ピンク・ザ・ピンチさん!」
背後で男性の声がしたので振り向くと、
背が高くて細身の20歳前後の青年がそこにいた。
ちょっとカッコイイ・・・・
「あ、お兄ちゃん! ピンピンちゃんが
おみまいにきてくれたんだよ〜♪」
55
:
念力と青年(第30回)②
:2022/07/26(火) 18:50:35 ID:se28Ph.A0
TシャツにGパン姿の青年はボクに頭を下げた。
「妹を助けて下さったそうで、
どうもありがとうございました!
私はユウキの兄のアオノ・シンヤと言います。」
「お兄さんですか。はじめまして。」
ボクはシンヤさんと握手した。
何となく急に恥ずかしくなってきたので
ボクはもう帰る事にした。
「じゃあ後はお兄さん、
ユウキちゃんをよろしく頼みます。」
「え〜、もうかえっちゃうの?
ピンピンちゃんまたきてくれる?」
ユウキちゃんは切ない目でボクを見た。
「約束は出来ないな、ユウキちゃん。」
子供だからといっていい加減な事は言えない。
ボクはなぜかシンヤさんと目を合わせず
病室を足早に出た。
何だろう? この妙な感じは・・・・。
まさか一目惚れか?
「ピンピンさん!」
シンヤさんがボクを呼び止めた。
ボクは立ち止まりシンヤさんと目を合わせる。
「私と付き合って頂けないでしょうか?」
え?
これって、 告 白 ?
56
:
ヒロインとデート(第31回)②
:2022/07/27(水) 15:34:12 ID:nY47Qbko0
投稿者:九十九桃美
ボクは国民的スーパーヒロインだけど、
こんな告白みたいな事をされたのは初めてだ。
そりゃあ、けっこう好みのタイプだけど、
この姿で告白されたって事は九十九桃美の姿では
一生会えないって事じゃないのか?
付き合って頂けないでしょうか?
つきあう? つきあうって何だ???
くっ付き合うという事か??
交際しようという事?
え、どうやって? この格好でデートするのか?
待て待て、どこかに一緒に付き合ってくれ
という意味かも知れない。
焦るな、平静を装うんだ。
ボクはピンク・ザ・ピンチだ。
オタオタするなよ、スーパーヒロイン!
「どういう意味だ?」
しまった! 言い方がキツ過ぎた。
いくら心理学を学んでいても、
こればっかりはどうしようもない・・・。
「私は以前からピンピンさんのファンで
一度お会いしたいと思っていたんです。
妹から話を聞いた時、正直羨ましかった。
いや、不謹慎なんですが・・・。
あの、私とこれからデートしてもらえませんか?」
やっぱりそういうお付き合いの申し出か。
「ユウキちゃんと一緒に居てあげなくてもいいのか?」
「妹の容体はもう安定してますし、
ピンピンさんとはもう2度と会えないかも知れない。
今しかないと思ったんです。」
ボクは迷っていた。
さっきの赤ちゃんの時とはワケが違う。
スーパーヒロインがデートって・・・。
シンヤさんはボクに歩み寄り、
ボクの手を握って熱い目で訴えた。
「お願いしますピンピンさん!」
57
:
ヒロインとデート(第31回)
:2022/07/27(水) 15:35:40 ID:nY47Qbko0
うわ、顔近い・・・。
今まで付き合った彼氏の中でも一番イケメンだ。
こんな積極的な告白は初めてだが、
桃美の時にしてほしかったなあ・・・・・。
どうしようかな?
断るべきか、OKするべきか。
「付き合っちゃいなよピンピンちゃん。」
横で見ていた太めのおばちゃんナースが一言。
「こんな男前ならあたしが付き合いたいわぁ♪」
いやいや、そういう問題じゃなくて・・・。
正体は明かせないのに交際なんて出来るのか?
「ボクとデートなんてしたらみんなに見られるぞ。
シンヤさんは平気なのか?」
「はい、平気です!」
即答だ。熱い。熱過ぎる。
ま、デートって言っても今日だけなら問題ないか。
「解った。その申し出、お受けしよう。」
シンヤさんは信じられないという表情でボクを見た。
「やった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
跳び上がって喜ぶシンヤさん。
声、大きいぞ。
「ありがとうございます! ありがとうございます!
ちょっと待ってて下さい、妹に話して来ます。」
「ああ、待ってる。」
ボクもドキドキだ。
ピンク・ザ・ピンチでデートなんて・・・。
「上手くやりなさいよピンピンちゃん!」
おばちゃんナースがボクの肩を叩いて去って行く。
「あ、どうも・・・。」
頑張りますって言うのもおかしいな。
何だろ?この変な感覚。
この後どうなっちゃうんだろう?
58
:
雨とドライブ(第32回)
:2022/07/27(水) 15:39:13 ID:nY47Qbko0
投稿者:九十九桃美
シンヤさんはすぐに病室から笑顔で飛び出て来た。
「お待たせしましたぁ! では参りましょう。」
「ボクをどこへ連れてってくれるんだ?」
「これからドライブなんてどうです?」
「それがいいな。雨だし、あまり人目も気にならない。」
「では私の愛車でドライブしましょう。」
とてもハキハキした好青年だ。
雨は来た時よりも強くなってるようだった。
シンヤさんは傘を差してボクに入るように誘う。
「いや、ボクは雨には濡れないからご心配なく。」
サイキック・バリヤーで雨は弾かれる。
「凄いですね〜、ピンピンさん。」
「シンヤさんも入って行くか?」
「あ、ぜひお願いします。」
相合傘(あいあいがさ)というのはよくあるが、
相合バリヤーというのはあまりないな。
ボクはバリヤーの範囲を広くしてシンヤさんも包む。
「何だか、不思議な空間ですね。」
ボクはシンヤさんの後を付いて行く。
細いけど引き締まった筋肉質な背中に見惚れる。
小さな青い色の自動車がシンヤさんの車のようだ。
ボクのピンチランナーもそんなに大きくはないが、
この車でデートに誘うとは・・・。
「すみません、こんな小さなオンボロ車で。」
「いや、狭いほうがロマンチックかも知れない。」
もちろん今のセリフは社交辞令。
車はハイウェイに乗って雨の中を疾走する。
古いガソリン車なのでエンジン音がかなりうるさい。
あまりお金持ちじゃない事は訊くまでもない。
「ピンピンさんの太もも、色っぽいですね。」
「ありがとう。よく言われる。」
蒼乃真夜(アオノ・シンヤ)さんは21歳。
妹の勇気ちゃん(8歳)と年齢が離れているのは
お母さんが違う異母兄弟だからだと言う。
警備員のバイトをしながら歌手を目指してるそうだ。
59
:
雨とドライブ(第32回)
:2022/07/27(水) 15:40:13 ID:nY47Qbko0
「青騎士」(あおきし)というアマチュアバンドの
リーダーで、ボーカルや作詞・作曲まで彼がやってる。
今、カーステレオでシンヤさんの歌を聴いてるトコ。
ボクは正直こういう音楽ってよく解らない。
でもいい声してるなあ・・・。
雨のハイウェイはかなり視界が悪く、
あまりボクに気付く人もいない。
さっき横を追い抜いて行った観光バスの乗客が
ビックリして窓に張り付いてたけどね。
「ピンピンさんはプライベートで恋人はいるんですか?」
「いたらデートの誘いは受けない。」
「あ、そうですね。失礼な事を訊いてしまいました。」
「シンヤさんこそバンドやってたらモテるだろう?」
「ええ、そこそこは。でもちょっと事情がありまして。」
「そうか。まあ、お互い“ワケあり”って事だ。」
「いずれお話しする機会もあるでしょう。」
「次回のデートがあるとは限らないぞ?シンヤさん。」
「ハハハ、それもそうですね。
60
:
好きとキス(第33回)
:2022/07/27(水) 15:42:26 ID:nY47Qbko0
投稿者:九十九桃美
雨のドライブデート、楽しい♪
「ボクのどんな所が好きなのか聞いてみたい。」
「どんな所? う〜ん、そうだなあ・・・・・」
シンヤさんはカーステレオの音楽を止めた。
「私は全部好きなので難しいですねぇ・・・。」
「このコスチュームは賛否両論なんだがどう思う?」
「嫌いな人なんているんですか? 信じられない。
最高にカッコ良くてセクシーですよ。」
「シンヤさんはボクでオナニーした事はあるのか?」
「えっ?え? 凄い事を訊くんですね、ピンピンさん。」
「どうなんだ?」
「正直言うと・・・あります。何度も。」
「そうか、シンヤさんもあるのか・・・。」
「ない、と言ったほうが良かったのでしょうか?」
「いや、ボクはウソつきは嫌いだ。
正直に答えてくれて嬉しく思ってる。」
しばらく沈黙が続く。
ボクは何を言っているのだろうか?
ピンク・ザ・ピンチの時に恋をした事がないので、
上手く精神バランスが取れてない感じだ。
このサイキック・パワー強化服を着てる時は
いつも誰かを助ける事しか考えてなかった。
強化服の作用で精神は男性的になってるが、
肉体的には“オンナ”のまま。
「シンヤさんはボクを抱いてみたいと思うか?」
61
:
好きとキス(第33回)
:2022/07/27(水) 15:43:21 ID:nY47Qbko0
「今日直接話してみて、ますます好きになりました。
抱けるものなら抱いてみたいというのが本音です。」
「ありがとう。ボクもシンヤさんが好きだ。」
ボクは運転してるシンヤさんの左頬にキスした。
チュッ
口が出てるコスチュームで良かったと思う。
サンキュー、九十九博士♪
「ゆ、夢みたいですね。
ピンピンさんにキスしてもらえるなんて・・・。」
「ボクも初めて会ったその日にキスした事はない。
シンヤさんは、特別だ。」
「感謝します! この事は一生忘れません。」
「今のが最後のキスとは限らないぞ?シンヤさん。」
ボクは今度は「唇」を奪った。
運転中で危ないので短めに済ませる。
「大胆ですね・・・ピンピンさん。」
「ああ、ボクはスーパーヒロインだからな。」
ピンク・ザ・ピンチで恋愛も、悪くない。
62
:
観覧車とカップル(第34回)
:2022/07/27(水) 15:50:09 ID:nY47Qbko0
投稿者:九十九桃美
「あ、観覧車ですね。
ピンピンさん、2人で乗ってみましょうか?」
ハイウェイから遊園地の巨大観覧車が見える。
あそこは動植物園やボートに乗れる池などがあって、
カップルがデートするには最適な場所だ。
雨さえ降っていなければの話だが・・・。
いや、逆に人が少なくてゆっくり楽しめるかも?
雨天の平日の昼間に遊びに来る客はそんなにいない筈。
「楽しそうだ。行こうシンヤさん。」
実は桃美として元カレと来た事が何回もある。
その度にボートに乗ったりしたんだけど、
この遊園地には変なジンクスがあって
“ここでデートしたカップルは必ず別れる”という。
ボクはそんな噂は信じないが、実際別れてるし・・・。
ま、シンヤさんとはこの姿でしか会えないんだから
どこでデートしたとしても長く続く関係じゃない。
今日を楽しもう♪
ハイウェイを下りてしばらく走ると遊園地に到着。
車を駐車場に停め、動物園の入り口から入場した。
思った通り客はほとんどいない。
サイキック・バリヤーの中で2人だけの時間に浸れる。
ボクは自分からシンヤさんの腕を抱いた。
女の武器である胸のふくらみを彼の腕に押し付ける。
「私がデートに誘ったのに、
全部ピンピンさんにリードされてますね。」
「最近イヤな事ばかりだったから、忘れたいんだ。」
「そうですね。今日はイヤな事は忘れましょう。」
当たり前の事だが、ボクに気付いた他の客は
カメラやビデオで撮ったり、メールを打ったりしてる。
だが、気を遣ってか近付いて来る人はいない。
パニックになるほどの人数じゃないね・・・。
ボクはともかく、“ピンク・ザ・ピンチの彼氏”として
シンヤさんが世間に注目されるのは間違いない。
まさか、ボクは売名に利用されているのか?
63
:
観覧車とカップル(第34回)
:2022/07/27(水) 15:51:15 ID:nY47Qbko0
そんな感じじゃないな・・・仮にそうでも別にいいし。
雨の中でもペンギンたちは元気にプールを泳いでる。
売店でアメリカンドッグとお茶を買って食事を済ませ、
ボクらはお目当ての観覧車に乗る事にした。
雨はかなり小降りになってきてる。
ようやくゴンドラに乗り込むとちょっと落ち着いた。
「シンヤさん、疲れた?」
「ええ、やっぱりあれだけ注目されてると・・・。」
「バンドでお客さんの注目を浴びてるだろう?」
「そうなんですけどね・・・ナメてました。」
観覧車にはボクら以外は乗ってないみたいだ。
貸し切り状態にボクはちょっと浮かれた。
シンヤさんにカラダを寄せると、
今度は彼のほうからボクにキスして来た。
まだアメリカンドッグの匂いがするけど、気にしない。
シンヤさんの右手がボクの乳房を優しく包んだ。
観覧車が1周するのは約20分。
時間はたっぷりある。
口が出てるコスチュームでホントに良かった♪
64
:
マスコミと秘密(第35回)
:2022/07/27(水) 15:56:25 ID:nY47Qbko0
投稿者:九十九桃美
ん・・・・日光が・・・・差して来たな・・・・・・。
雨はどうやら上がったようだ。
ゴンドラはもう頂上を過ぎて下り始めている。
男の人って可愛いな・・・・・
さっきまであんなに大きかったのに、
今はこんなに・・・・・。
ボクはシンヤさんのGパンを上げるのを手伝う。
ボクも外した手袋を着けたり、思いっ切りお尻に
食い込んだコスチュームを直したりした。
「シンヤさん、雨は上がったみたいだな。」
「そうですね。もっといろいろ乗って遊びましょう。」
「まだボクと一緒に居たいか?」
「もちろんですよ!ピンピンさん。」
「男性は射精した後は女性への愛情が半減すると
聞いた事がある。シンヤさんはどうなんだ?」
「私はそんな事はないですね。
ピンピンさんさえ良ければずっと一緒に居たいです。」
「そういう訳にも行かないが・・・嬉しいよ。」
ボクは残りの時間は街の景色を楽しむ事にした。
デートの申し込み、断らなくて正解だったなぁ♪
「 あ っ ! 」
何気なく遊園地側の景色を見たボクは目を疑った。
観覧車の周りに数百人の人が集まっている!
マスコミ関係の人間も何人かいるようだ。
ボクはピンク・ザ・ピンチの時には視覚も鋭くなるので
取材用カメラのメーカーの名前まで見える。
「どうしてこんなに早くマスコミが?」
ヘリコプターの音も聞こえて来た。
「ここの近くでたまたま事件があったようだ。」
バックルの中から電者が答えた。
「そりゃ、ピンク・ザ・ピンチがデート中だと
情報が入ればすぐに飛んで来るだろうな。」
電者の口調はやや冷たい。
65
:
マスコミと秘密(第35回)
:2022/07/27(水) 15:57:22 ID:nY47Qbko0
「やっぱりちょっと無茶だったか・・・・。」
ボクは軽率だったかも知れない。
シンヤさんも下の様子を見て戸惑っている。
「シンヤさん、このままだと素顔で街を
歩けなくなるかも知れないぞ。いいのか?」
「私は構いません!」
シンヤさん、本気なんだ・・・。
しかし考えてみれば、ピンク・ザ・ピンチの秘密を
何か知ってるかも知れないとシンヤさんが疑われたら?
そしてユウキちゃんまで巻き込まれたら?
ボクの正体が九十九桃美だとバレなくても
ボクと関わるだけで十分ヤバイんだ。
告白されて舞い上がって、そこまで考えてなかった。
どうしようかな・・・・・。
「シンヤさん、やはり素顔をさらすのは危険だ。
ボクの秘密を知りたがっている悪人は多い。
シンヤさんが良くても、ユウキちゃんやバンド仲間に
何か迷惑が掛からないとも限らない。」
シンヤさんもそこまでは考えてなかったらしい。
「すみません、ピンピンさん。
私がデートになんか誘ったばかりにこんな事に・・・。」
「いや、ボクも初めての事でよく考えなかった。
シンヤさんが謝る事はないさ。」
「どうしたらいいんでしょう?」
「大丈夫、いい方法がある♪」
66
:
透明と強敵(第36回)
:2022/07/28(木) 12:24:30 ID:PZ0jPMUI0
投稿者:九十九桃美
ゴンドラがだんだん乗り場に近付いて行く。
ボクはサイコキネシスでドアロックを外し、
シンヤさんを抱いて誰もいない場所へ跳んだ。
群衆の視線はドアが開いたゴンドラに釘付けのまま。
つまり、ボクらは“透明人間”になったんだ。
ピンク・ザ・ピンチは「気」を操る事が出来るので、
光の進行方向を変える事により視覚的に透明化する。
遊園地から無事に脱出し、人がほとんどいない
植物園の奥の森まで逃げて来た。
「ここならもう安心だろう。」
ボクは透明化を解いた。
濡れたベンチの水分を「気」で蒸発させ、
ボクらはやっと休憩する事が出来た。
「ピンピンさん、ありがとうございました。」
森の中で2人きり。
小鳥のさえずりしか聞こえて来ない。
「もうデートは無理かも知れないな、シンヤさん。」
「ええ。でも貴重な体験でした。」
「ボクも同じだ。こんな楽しいデートはなかったな。」
静かな時間が流れる。
もう別れたほうがいいのにベンチから離れられない。
スーパーヒロインと一般人の恋なんて、
どう考えたって無理に決まってる。
分かってた事なのに・・・・何故?
ザッ!
目前に突然白い何かが降り立った!
67
:
透明と強敵(第36回)
:2022/07/28(木) 12:25:27 ID:PZ0jPMUI0
ボクはとっさにバリヤーを強くし、
シンヤさんを抱いて後方に下がった。
敵か????
その姿はスーパーヒーローっぽいが異様だ。
白いタマゴ型のメタリックな仮面には
黒い「Y」字のゴーグル。
当然、表情はまったく読めない。
体も首元や手袋やブーツが黒いだけで、あとは真っ白。
薄い素材のタイツからは女性の特徴が浮かび上がってる。
なんとなく、八代乙夢先生の体型に似てるが・・・。
「ピンク・ザ・ピンチ、デートは楽しい?」
白い仮面の女がボクに話し掛けた。
聞いた事のない声だ。
「何者だ?」
「私の名前はナゾナンジャー。」
「ふざけてるのか?」
「ふざけてるのはアナタじゃないの?
スーパーヒロインが一般人とデートするなんて、
マスコミ連中が騒ぐのも無理ないわね。」
「・・・・・ボクに何の用だ。」
「私がお仕置きしてあげようと思って。」
自称“ナゾナンジャー”の額のリングが虹色に光り、
光の玉が現われ手の上で光の剣に変わった。
武器を出したという事は敵と見て間違いない。
「シンヤさんは逃げて。」
ボクは小声でシンヤさんにそう言った。
「大丈夫よ。私のお目当てはアナタだけだから!」
ナゾナンジャーがボクに襲い掛かって来た。
速い!!!!!
ブォン!
コ イ ツ は 、 強 敵 だ 。
68
:
ナゾとウソ(第37回)
:2022/07/28(木) 12:28:38 ID:PZ0jPMUI0
投稿者:九十九桃美
白い仮面の女戦士、ナゾナンジャー!
ボクが今まで戦って来た相手とは格が違う。
とにかく動きが速くて、パワーも人間離れしている。
もしコイツが人間だとすると恐るべき強化服だし、
アンドロイドだとしても恐るべき科学力だ。
ボクは今日1日サイキック・パワーを使い過ぎた。
この強敵の相手をするには「気」が足りない。
サイコキネシスもサイキック・ウェーブ(衝撃波)も
こんなスピードの敵にはまったく通用しない。
どうする?
「ピンク・ザ・ピンチ、バリヤーで防御してばかりね。」
敵はこの攻撃を仕掛けながら話す余裕すらあるのか?
サイキック・バリヤーもだんだん弱くなって来た。
どうする? やられるぞ?
そうだ、透明化してみてはどうか?
「消えても無駄よ。」
ナゾナンジャーにはボクが見えているようだ。
レーダーか何か、特殊な装置を備えてるらしい。
デートなんかして浮かれてるからこういう事になるんだ!
「国民的スーパーヒロインも人気だけって事ね。」
言わせておけば・・・・・。
カッ!
「うわあっ!!!」
ナゾナンジャーが突然倒れた!
今の光は???
「ブルー・ザ・ナイト参上。」
それはシンヤさんの声だった。
ボクが振り向くと、そこにいたのは青いカラダの怪物。
どう見てもモンスターだ。
体中にトゲトゲがあり、手や足には鋭い爪。
瞳のない眼は不気味に光を放っている。
69
:
ナゾとウソ(第37回)
:2022/07/28(木) 12:29:39 ID:PZ0jPMUI0
でも彼はスーパーヒーロー。
ブルー・ザ・ナイトは有名な正義の超人なんだ。
今の光はおそらく彼の必殺技ブルー・フラッシュ。
ナゾナンジャーもまさかブルー・ザ・ナイトが
ここにいるとは思わなかったようで油断したらしい。
「ブルー・ザ・ナイトか・・・。」
起き上がったナゾナンジャーはそうつぶやくと
額のリングから何かを発射した。
パーーーーン!
閃光弾、つまり“目くらまし”だ。
その間にナゾナンジャーは撤退したらしい。
はぁ・・・・助かったんだ・・・・・・・。
雪のようなものが森の中を舞っている。
ボクはブルー・ザ・ナイトの所へ歩み寄った。
「ピンク・ザ・ピンチ、私は貴女にこの姿だけは
見られたくなかった・・・・。」
ブルー・ザ・ナイトの前で立ち止まる。
「何を言ってるんだ?シンヤさん。姿がどうであっても
ボクが好きなシンヤさんである事に変わりはない。」
そしてボクはブルー・ザ・ナイトを抱きしめた。
ちょっとトゲトゲが痛いが関係ない。
「シンヤさんがナイトだったなんて・・・・・。」
「ウソつきは嫌いじゃなかったんですか?」
「こうして正体を明かしてくれたんだからシンヤさんは
ウソつきじゃないさ。助けてくれて、ありがとう。」
実は“ピンク・ザ・ピンチ”というネーミングは
“ブルー・ザ・ナイト”を参考にしたものなんだ。
まさか“先輩”がボクのファンだとは思わなかった。
雪のようなものが舞い散る森の中で、
ボクとナイトはいつまでも抱き合っていた。
スーパーヒロインとスーパーヒーロー、
“スーパーカップル”の誕生・・・・・・・かな?
70
:
博士と身体検査(第38回)
:2022/07/28(木) 15:52:39 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
「ずいぶんゴキゲンじゃないか桃美くん。」
アタシの事をいつも“桃美くん”と呼ぶおじいちゃん。
祖父の九十九博士は69歳とは思えないくらい元気。
さすがに白髪の頭の毛は薄くなって来てはいるけど、
背中も曲がってないし、全然ボケてないし、
まだまだアッチのほうも現役らしいヨ♪
アタシ、今メディカルルームで身体検査中
おじいちゃんは医師免許も持ってるので、アタシは
小さい頃から他のお医者さんに診てもらった事はないの。
だから、おじいちゃんの前でハダカでも全然平気☆
「フフ・・・判るぅ? 実は今日ね・・・・・」
アタシは“ブルー・ザ・ナイト”との話を聞かせた。
「ほう、それは良かったなあ。しかし、
桃美くんも相変わらずやる事が大胆だな。」
「ピンピンスーツ着たままデートするとあんまり
女の子らしく出来ないから変な感じだったヨ。」
「ワハハ、デートするために作った服じゃないからな。」
「しばらくは会わない事にしたんだ。シンヤさんが
マスコミに注目されてる間はいろいろ面倒だから。
結局はアタシのほうは正体を見せなかったの。
どこかでナゾナンジャーが見てるかも知れなかったし。」
「そのナゾナンジャーというのはかなり手強いのか?」
「うん、アタシが今まで戦った中で一番強かった。
まるで・・・・・・・」
「・・・まるで、何なんだ?」
「ううん、何でもない。」
八代乙夢先生のように圧倒的な強さだった。
でも、ナゾナンジャーが八代先生である筈がない。
声も違ってたし、アタシを襲う理由もない。
「電者、おじいちゃんに映像を見せてあげて。」
「了解。」
71
:
博士と身体検査(第38回)
:2022/07/28(木) 15:53:25 ID:aB7J0jUo0
机の上にいた小電者は記録した映像をスクリーンに映す。
ナゾナンジャーの動きは電者の高性能カメラでも
完全に捉える事が出来ないくらいの速さ。
やっぱりスゴイ・・・・。
「これは、もし普通の人間が強化服を着てるとすると、
かなりの肉体的ダメージがある筈だが・・・・。」
「おじいちゃんもそう思う?」
「しかも女性のようだし、う〜ん・・・・・。」
「もしかしてドクロイドと関係あるのかなぁ?」
「今の段階では何とも言えんが、その可能性もある。」
「今度また現われたらどうしたらいい?」
「今回はピンク・ザ・ピンチのサイキック・パワーの
状態がベストではなかったが、ベストの状態なら
絶対に勝てない相手ではないんじゃないかな?」
「そうかなぁ・・・・。」
「どんな豪速球を投げるピッチャーでも
毎試合バッターを抑え続ける事は出来ない。
人間は必ず順応するんだ。」
順応・・・・・。
72
:
バットとボール(第39回)
:2022/07/28(木) 15:56:16 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
おじいちゃんはいつもアタシに
自分自身で答えを見つけるように仕向ける。
ヒントは与えてくれるけど正解は教えてくれないの。
学校の登校日になってもアタシはまだ悩んでた。
久し振りに親友のクミと直接会えて嬉しかったけど、
ナゾナンジャーの事が頭から離れない。
「モミー、まだリカの事で悩んでるの?」
「え? あ、ああ、違うのクミ。VTOでどうやったら
先生を超えられるのかって考えてたんダ。」
食堂でクミとお昼ごはんを食べながら話してる。
八代先生に勝つ事とナゾナンジャーに勝つ事は
なぜかアタシの中では同じ事のような気がしてた。
どちらもアタシより圧倒的に強い女性だから。
「ふぅん・・・・。でも人間って不思議だよね。
あんなに悲しかったのに、時間が経てばだんだん
その状況に慣れて来るんだから。」
クミはちょっと大人っぽくなったみたい。
彼氏とは最近上手く行ってるらしいから
気持ちに余裕があるのかも知れないな・・・。
ん????
時間が経てばだんだんその状況に慣れて来る?
人間は必ず順応するとおじいちゃんも言ってた。
そうか!!!
練習に時間を掛けるしかないんだ!
近道なんてないんだ!
アタシ何を考えてたんだろう?
サイキック・パワーや科学力に頼り過ぎてた。
「クミ、ありがとう。答えが見つかったヨ☆」
「え、急にどうしたの?」
「アタシ今日はカラオケ行くのやめて、
バッティングセンターに行こうと思うんだけど、
クミも一緒に来る?」
「・・・・・バッティングセンター?」
学校が終わった後、アタシとクミはバスに乗って
一番近いバッティングセンター(打撃練習場)へ向かう。
「モミーって野球好きだったっけ?
あたしは昔ソフトボールやってたから
何回か行った事はあるんだけど・・・。」
「お父さんと一緒に1回だけ行った事があるんだ。
73
:
バットとボール(第39回)
:2022/07/28(木) 15:57:33 ID:aB7J0jUo0
小さい頃だったから後ろで見てただけなんだけどね。」
バッティングセンターに着くと、アタシは早速
上級者コースのピッチングマシンを選んだ。
バットは武器にもなるのでVTOで使い方は習ってる。
でも、ボールを打つのは初めて。
「お嬢さん大丈夫? このマシンはプロ用だよ。」
男性の係員さんが心配そうにアタシに忠告した。
「多分、大丈夫です♪」
アタシはレンタルのバットを持って打席に立った。
「モミー、頑張って!」
クミが後ろから応援してくれてる。
アタシはクミに軽くウインクした。
初球。
バスッ!
・・・・・・・・・バットを振る事も出来なかった。
これで時速130キロ? 全然見えなかったよ・・・・。
アタシの動体視力は普通の人よりいい筈なのに。
このマシンのボールは時速170キロまで出るらしい。
バスッ!
2球目もバットは出ない。
後ろで見てる男性たちがニヤニヤしてる。
3球目は何とかバットを振ったけど、空振り。
勢い余ってコケちゃった☆
「お嬢さ〜ん、もうやめといたほうがいいぞ〜。」
バカにした笑い声が聞こえて来る。
4球目。
チッ!
今回はバットにボールがかすった。
5球目、6球目、7球目、8球目もチップ。
でも、球がだんだん見えて来てる。
目がスピードに“順応”してるんだ。
もう男たちの嘲笑はアタシには聞こえていない。
アタシはボールだけに気を集中した。
9球目!
74
:
涙と友情(第40回)
:2022/07/28(木) 16:00:32 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
時速130キロの直球がゆっくりに見える☆☆
もらったぁ!!!
カン!!
「ぐっ!」
バットに当たったボールはアタシのお腹を直撃。
アタシは思わず地面にうずくまった。
「お〜い、ボール止めて〜!」
係員の男性やクミが心配そうにグラウンドに入って来た。
「モミー、大丈夫?」
「・・・・油断してたから、効いたヨ・・・。」
自然に涙が目からこぼれ落ちた。
「お嬢さん、女性にはこのレベルは無理だよ。
バットに当てたのは確かに凄いけど、
初心者コースでやったほうがいいよ?」
係員さんとクミに支えられてグラウンドを出る。
後ろのベンチに座ってしばらく休憩。
「ねえモミー、どうしてこんな無茶するの?
絶対にこれをやらないと強くなれないの?」
「・・・・これをやらないと、絶対勝てないの。」
「・・・本気なんだ、モミー。」
カキーン!
がっちりした男性が同じマシンのボールを打ってる。
今、アタシを見てバカにした顔で笑った。
「あたし、モミーが納得するまで付き合う!」
クミはいつも、アタシの変な行動にもあまり驚かない。
もしかしたらアタシがピンク・ザ・ピンチだと
気付いてるのかも知れない・・・・。
「このぶんだと徹夜になるかも知れないよ?」
「モミーが頑張ってるのにあたしだけ帰れないから。」
「クミ・・・・。」
「だって友達だもん♪」
「アタシって変なのに、いつも見守っててくれるのね。」
「モミーの事、変だなんて思ったコトないよ。」
「ありがとう、クミ。」
アタシがもしナゾナンジャーに殺されたら、
この優しいクミを悲しませる事にもなるんだ。
75
:
涙と友情(第40回)
:2022/07/28(木) 16:02:07 ID:aB7J0jUo0
そしてシンヤさんもユウキちゃんも、
オジサマも先生もおじいちゃんも電者も、
日本中のピンク・ザ・ピンチファンも・・・・。
アタシは1人じゃない。
「桃美。」
クミの横のベンチにいた小電者がアタシを呼んだ。
「なあに? 電者。」
「桃美は大事な事を忘れてるぞ。
集中力を高めるには糖分を摂取する必要がある。」
「あ、そうかぁ。お昼から何も食べてないし、
ここに来てからも何も飲んでない。」
「運動前にダイエットは必要ないから
ジュースでも飲んだらどうだい?」
「わあ、電者くんアッタマいい〜♪
モミー、あたし自販機で買って来るよ。何がいい?」
「あ、ピーチジュースがあったら・・・。」
「分かったぁ、待っててね。」
クミは自動販売機コーナーに走って行った。
「本当に優しいコだな。桃美はいい友達に恵まれてる。」
「うん。でも電者の事も親友だと思ってるよ♪」
「私の場合は桃美のサポートが仕事だ。」
「友情は感じてない?」
「友情という言葉は定義が曖昧だな。」
フフ、そういう素直じゃない所も好きだヨ
76
:
ジュースと練習(第41回)
:2022/07/28(木) 23:50:55 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
「モミー、買って来たよ〜♪」
クミが缶ジュースを2本持って戻って来た。
「一応、ピーチは2種類あったから両方買って来たの。
モミーの好きなほう選んで。」
「わ〜、ありがとネ。」
アタシは片方の商品名を見てちょっと驚いた。
“ピンク・ザ・ピーチ”だって・・・・・。
何かピンピンもどきの変なキャラクターが描いてある。
知らない間に缶ジュースにまでなってたんだ。
1度は飲んでおいたほうがいいかな?
「ピンク・ザ・ピーチのほうにするヨ。」
「そう言うと思った♪」
やっぱりクミ気付いてるのかな・・・・?
アタシはピンク・ザ・ピーチを少しだけ味見した。
あ☆ 美味しい♪
桃の香りと微炭酸がいい感じ。
半分だけ飲んで、クミと残り半分を“かえっこ”した。
アタシたちはよくこの“かえっこ”をするんダ。
クミの飲んでたのは割とスタンダードな桃ジュース。
これはこれでアタシはけっこう好き。
ジュースをグイッと飲み干してアタシは立ち上がった。
「よ〜し、エネルギー満タン。行って来る!」
「頑張れモミー♪」
グラウンドから出て来たがっちり体型の男性が
ニヤニヤしながらアタシの肩をポンポンと2回叩いた。
「おネエちゃん、もし前に球が飛んだら何かおごるよ。」
「もし1回も前に飛ばなかったらエッチしてもいいヨ。」
「ヒュ〜、言うねえ・・・。その約束忘れるな。」
「忘れても平気。打つから。」
今回も130キロ直球のみにマシンを設定。
打席に入り、素振りを1回する。
ブン!
バットが空を切る音が後ろの男性たちを沸かせた。
テレビで観た予告ホームランのポーズを思い出し、
アタシはバットの先でホームランゾーンを指してみた。
77
:
ジュースと練習(第41回)
:2022/07/28(木) 23:52:03 ID:aB7J0jUo0
ちょっと演出過剰かな? 大爆笑が起こってる。
投球開始のブザーが鳴った。
初球が来る。
カァ〜ン!
ホームランゾーンにボールは飛んだ。
これで賭けはアタシの勝ち。
後ろからはクミの声しか聞こえない。
2球目以降も全てホームラン。
他のコースの人も打つのをやめてアタシの打撃を見てる。
さすが電者、ジュースの糖分のおかげで
脳が活性化されてるのが自分でもハッキリ判る。
ボールの縫い目が見えるし、バットも狙い通りに出る。
ちょっとボールが遅くてイライラするくらい☆
静まり返った男性たちに目もくれず、
アタシはどんどんボールのスピードを上げて行く。
最高速度の170キロですらホームランに出来る。
面白くないので変化球にしたり、
反対側の打席に立ったりしたけど結果は同じ。
そしてアタシはついにバットを捨てた。
ベースの上に立って170キロの球をよけてみる。
もちろん1球もアタシの体には当たらない。
慣れて来たのでわざと数ミリの所でよけてみたりする。
完全にスピードに対する恐怖感は消えた。
ボールを素手でキャッチ出来るようになるには
かなり時間が掛かったけど、何とかクリア。
これならナゾナンジャーの速さにも対応出来る筈!
「クミ、終わったヨ。」
アタシは明け方近くまで練習してたので、
他のお客さんはみんな帰っちゃったみたい。
そんな中、クミだけは最後まで付き合ってくれたの。
寝てるけどネ
78
:
番組と緊張(第42回)
:2022/07/28(木) 23:54:52 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
ついに八代先生と一緒にテレビ出演する日が来た。
番組名は「GO!GO!わいど」。
「午後」と「ゴーゴー」が掛かってるダジャレね。
奥様方に大人気の田島豪(たじま・ごう)さんが
司会を務めるお昼の生ワイドショー番組で、
先生とアタシが出るのは「今注目のヒト」のコーナー。
八代先生とは事前にメールや電話で話したけど、
直接会うのは今回のテレビ出演の話を聞いたあの日以来。
生放送なので、退院して家で療養中のオジサマや
親友クミにもあらかじめ連絡してある。
日本各地のVTOスクール関係者も観てるかな?
正体を明かしていないシンヤさんやユウキちゃんには
残念ながら知らせる訳には行かなかった。
番組はすでに放送が始まってて、出番の時間が来たら
担当者が呼びに来る段取りになってるの。
先生とは同じ控え室なので、アタシは
割とリラックスしてテレビを観てる。
今日は女性の美容と健康特集をやってるから、
その流れでVTO〈舞闘〉の紹介をするんだと思う。
実はアタシ、昨日の夜はあまり眠れなかった。
初めての事だし、先生とファイトするのも久し振り。
こないだのバッティングセンターの猛練習の成果が
ちゃんと出るかどうかはまだ分からない。
あの練習はナゾナンジャー対策でやったんだけど、
当然VTOテクニックの向上にも役立ってる。
でも機械の投げたボールと人間の動きとはまったく別。
八代先生だってさらにレベルアップしてる筈だし・・・。
頑張って見応えのあるファイトを見せたいナ♪
さっき初めてプロのメイクさんにメイクしてもらって、
鏡を見るとちょっといつもよりキレイなアタシがいる。
もちろん八代先生もすごくキレイで見とれちゃう☆
アタシと先生はVTOスクールのレオタードの上に
ジャージの上下を着て待機中。
「九十九さん、私すごく緊張してるんだけど貴方は?」
「あ、アタシはちょっとだけ緊張してます。」
「私はやっぱり断れば良かったと後悔してるわ。」
「先生、司会の人が上手く導いてくれますから、
心配しなくても大丈夫ですヨ♪」
79
:
番組と緊張(第42回)
:2022/07/28(木) 23:55:50 ID:aB7J0jUo0
「私ね、男性に愛想笑いが出来ないのよ。
テレビ観てる人が変に思うんじゃないかと・・・。」
「強い女性の代表なんですから、堂々としてて下さい。」
「フフ、弟子に励まされるなんてダメな師匠ね。」
「そんな事ないです。先生が出て行けば
その場の空気は先生の色に一瞬で変わりますから。」
「それ、私がよく生徒に言ってる言葉ね。
踊りも闘いも、まず自分の空気にする事が大事。
九十九さん、ちょっと手を貸してくれる?」
「あ、はい。」
先生はアタシの手を取って先生自身の左胸に当てた。
八代先生の小振りな美乳の弾力と温もりを感じる。
その奥から心臓の激しい鼓動が伝わって来た。
ドクドクドク・・・
本当に緊張してるんだ・・・・。
八代乙夢先生がとても人間的に思える。
服の上からでも判る、先生の硬く突起した乳頭を
手の平の真ん中でアタシは感じてた。
「しばらくこうしてていい?」
「先生が落ち着くのなら・・・。」
セクハラと言えばセクハラになる行為だけど、
アタシは全然イヤじゃない。
誰かがこの光景を見たら変に思うかも知れないけど、
アタシは先生を尊敬してる。
先生が望む事ならアタシは何でもする。
他の人がどう思おうと関係ない。
アタシは八代乙夢が好き
80
:
スタジオと司会者(第43回)
:2022/07/28(木) 23:58:11 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
「こちらでしばらくお待ち下さい。」
担当者に案内されて、スタジオのセット裏で
アタシと八代先生はスタンバイ♪
スタジオの中からは司会者の軽妙な喋りと
たくさんの女性の笑い声が聞こえてくる。
全国ネットの超人気テレビ番組の生放送、
緊張するなと言うほうが無理だよね。
先生はずっとアタシの手を握ってる。
こんなに落ち着かない先生の姿を見るのは初めてかも?
アタシはいつも堂々としてる先生しか見てないから。
でも、セットって案外いい加減な作りなんだ・・・。
見えない所にお金掛けても仕方ないもんね。
「・・・・では、今話題の“VTO”の創始者である
八代乙夢さんに登場して頂きましょう! どうぞ〜!」
スタジオの中の司会者の紹介と同時に担当者が合図した。
八代先生だけが先に出て行く。
頑張れ先生!
スタジオから大きな拍手が。
アタシは生徒代表として後で紹介される段取りなの。
「いや〜、ようこそおいで下さいました。
なかなか色っぽい女性ですなあ〜。
今日は僕も張り切っちゃおうかな?」
「はじめまして、八代乙夢と申します。」
「どうぞお座り下さい先生。」
「はい、ありがとうございます。」
「失礼ですが、先生はおいくつなんですか?」
「28歳です。」
「ご結婚は?」
「・・・・独身です。」
「ほう、それは奇遇ですな。僕も独身なんですよ。
2年前に浮気がバレて妻に離婚されましてねぇ。」
スタジオ観覧客は大爆笑。
「え〜、それではVTOとはどういうものなのか、
先生からみなさんに解説してもらいましょうか。」
81
:
スタジオと司会者(第43回)
:2022/07/28(木) 23:59:18 ID:aB7J0jUo0
「はい、分かりました。VTO(ヴトウ)は
ダンスを意味する“舞踏”と戦いを意味する“武闘”
を掛け合わせた造語で、舞うように闘うという意味で
“舞闘”と名付けました。」
「舞うように闘うんですか。先生はダンスや格闘技の
大会で何度も優勝してるんですってねぇ。」
「はい。」
「これは女性の護身術の一種と思っていいんですか?」
「そうですね。VTOは男性には教えていません。」
「先生は実際に男性に襲われた経験というのは?」
「・・・・・何度かあります。」
「VTOは役に立ちましたか?」
「もちろんです。」
「男性が武器を持ってた事は?」
「女性を襲うような男性は必ず武器を持っています。
VTOではあらゆる武器を想定して訓練しています。」
「相手がどんな男性でも大丈夫なんですか?」
「よほどの格闘技経験者でない限りは・・・。」
「すごい自信ですなぁ先生は。僕はこれでも若い頃は
レスリング部に入ってたんですよ。」
「そうですか・・・。」
「今でも腕相撲なら大抵負けませんな。」
「私は腕力では負けると思います。」
「腕力では? 先生は何なら僕に勝てるんですか?」
「・・・・実戦ならば。」
「・・・・・・・・ハハ、面白い女性ですなあ先生は。
ちょっと生徒さんの話も聞いてみましょうか。
生徒さん、どうぞ〜!」
やっとアタシの出番だ♪
82
:
CMとレオタード(第44回)
:2022/07/29(金) 15:38:51 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
担当者さんの合図でアタシはセットに入った。
九十九桃美としての初テレビ出演だ♪
でも、意外とどうって事ないなぁ・・・・。
やっぱりピンク・ザ・ピンチでいつも注目されてるし、
カメラで撮られる事も慣れてるからかな?
拍手の中、観覧席以外の人が気になった。
あれっ?????
オジサマがいる?????
万我一錠刑事がスタジオの隅で親指を立てて
ニッコリ笑ってアタシを見てる!!!
オジサマ、家で療養中じゃなかったの?
アタシはちょっとビックリしたけど、
表情は変えずに八代先生の隣りに座った。
「こんにちは。これはまた可愛いお嬢さんだねえ。
お名前と年齢を教えて下さい。」
司会の田島豪さんの不自然な髪型に目が行ってしまう。
どうしてカツラだと日本中のみんなが知ってるのに
わざわざ被ってるんだろう?
別にハゲてても誰も気にしないと思うんだけど・・・。
「こんにちは〜。九十九桃美、19歳です♪」
「九十九さんは先生を尊敬してますか?」
「はい。アタシの憧れの女性です。
アタシも先生みたいに強くて色っぽい
女の人になりたいと思っています。」
「先生、九十九さんのVTOのセンスはどうですか?」
「ウチの生徒の中ではトップの実力を持っています。」
「では九十九さんも僕より強いのかな?」
さっきから田島さんは何が言いたいんだろう?
レスリング経験者である事を自慢したいのかなぁ?
「・・・・おそらく九十九さんが本気を出せば
田島さんを5秒で殺せると思います。」
八代先生の一言でスタジオの空気が凍り付いた。
先生も田島さんの態度にはカチンと来てたんだ・・・。
田島さんの、テレビでは絶対見られない表情を見た。
83
:
CMとレオタード(第44回)
:2022/07/29(金) 15:40:08 ID:vhYoE2Qw0
笑顔なのに目が全然笑ってない。
「・・・・それは大したもんですなあ、ハハハ。
VTOはとても素晴らしい護身術という事ですね。
先生にはあの有名なピンク・ザ・ピンチですら
かなわないかも知れませんな。
それではここでCM入れまぁす。」
明るく振舞ってはいるが、かなり頭に来ているようだ。
八代先生に挑発的な事を言う自分のほうが悪いのに。
スタッフがバタバタとセットチェンジを始めた。
CM明けは八代先生の演舞を見せる事になってる。
先生がジャージを脱いでレオタード姿になるのを
田島さんはチラチラ見てる。
腹が立っててもそういうトコは見逃さないのネ☆
八代先生はさすがに本番には強いなあ・・・。
本番前はあんなに緊張してたのに、今はまるで別人。
セットチェンジが終わり、演舞とファイトが出来る
スペースの前にアタシと先生と田島さんは立った。
どうもオジサマが視界に入って落ち着かない。
そう言えばオジサマと八代先生ってまだお互いに
会った事ない筈だから、後で紹介しなきゃね。
CMが明けると先生のVTO演舞が日本中に流れた。
何人の女性が憧れ、何人の男性が興奮しただろう?
こないだスクールで見た演舞より素晴らしい
先生が大きく脚を開く度にアタシがドキドキする。
田島さんもまばたきを忘れて先生に見入ってるヨ☆
どうしてこんなにエロティックかつ凛々しい芸術的な
演舞が出来るのかアタシのレベルでは解らない。
次はいよいよ先生とアタシのファイト。
少しはいい所を見せられるかなぁ?
桃美、ファイト!
84
:
出会いとヤラセ(第45回)
:2022/07/29(金) 15:46:43 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
再びCMに入り、アタシもジャージを脱いで
八代先生とのファイトの準備を始めた。
司会の田島さんも八代先生の演舞を見て
VTOが優れた格闘技である事を認めたみたい。
さっきまでの目の奥の怒りが消えている。
「さあ、それではVTOの先生と生徒の
実戦形式でのファイトを見せて頂きましょう!
九十九さん、準備は出来ていますね?」
「はい! いつでも行けます。」
「では、僕が審判を務めさせて頂きます。
両名、位置について下さい。」
アタシと先生は広いスペースに向かい合って立つ。
練習の成果がちゃんと出せるかな?
テレビに映ってる事は平気だけど、
ある程度ハイレベルなファイトを見せないと
先生にも恥をかかせる事になる。
「両名、礼!」
さあ、ここからは敵。負けないゾ!
「ちょっと待ってくれないかぁ?」
あれ、オジサマの声だ。
スタジオ中の視線がオジサマに集まった。
「師匠と弟子が戦っても面白くないんじゃないか?
結果は見えてるんだから意味がないだろう?」
「ちょっと・・・あなたは誰なんですか?」
田島さんの口調が何か不自然。
もしかして事前に打ち合わせしてたの?
スタッフも誰も止めないなんておかし過ぎる。
「俺は万我一錠。桃美ちゃんの知り合いだ。」
「本当ですか? 九十九さん。」
「あ、はい。アタシのお父さんの親友です。」
「関係者の方という事ですね? それで万我一さん、
あなたはどうしろと言うのですか?」
「俺の仕事は刑事だ。もちろん格闘技経験者だが、
実は最近までケガで入院していて今も療養中なんだ。
しかしそれでも女に負けるとは思えない。
どうだろう? 俺を先生と戦わせてくれないかな?」
オジサマ、一体何を言ってるの???
85
:
出会いとヤラセ(第45回)
:2022/07/29(金) 15:48:37 ID:vhYoE2Qw0
「九十九さん、万我一さんが入院してたと言うのは
ウソじゃないんですね?」
「はい、それは本当ですけど・・・」
「解りました。では先生、この挑戦を受けますか?」
八代先生は無表情でオジサマを見ていた。
田島さんはこの展開に持って行くために
わざと挑発的な事を言ってたのかも・・・・。
「お断りします。」
八代先生は冷静にそう答えた。
「どうしてですか? 先生。VTOの強さを
証明するチャンスじゃないですか!」
と田島さんは先生に突っ掛かる。
「ケガ人と戦っても仕方ないですし、こんなヤラセに
付き合うほど私はお人好しじゃありません。」
フフ、さすが先生、ちゃんと見抜いてる☆
「先生、本当は男と戦った事なんてないんだろ?」
オジサマは八代先生の強さを知らないんだ・・・。
「万我一刑事、九十九さんから話は聞いてます。
ずいぶん型破りな刑事さんだそうですね。
どういうつもりか知りませんが、私が貴方を
再入院させたら税金の無駄遣いになります。」
「大丈夫さ。俺を倒せば先生の強さに憧れて
たくさんの生徒が入って来る。先生が納める税金で
俺の入院費くらいまかなえるって寸法だ。」
オジサマの言う事も一理あるなあ・・・。
先生がアタシを倒しても逆にヤラセだと思われるだけ。
刑事であるオジサマを倒したほうが説得力あるかも?
「万我一刑事は私を倒して何の得があるのですか?
男が女を倒しても尊敬されるとは思えませんけど。」
「もし俺が勝ったら先生と1度デートしたいね。」
デート???
オジサマ、八代先生にまで手を出す気?
彼女ならたくさんいるじゃない・・・・・。
先生はどうするつもりなんだろう?
「・・・・私の事がお好きなんですか?」
「俺は強くてセクシーな女に目がなくてね。」
今、視聴率グングン伸びてるだろうなあ・・・。
全国ネットの生放送で“告白”してるんだから。
ケンカを売る理由が「デートしたいから」って、
さすがオジサマ・・・・・・。
86
:
対決と約束(第46回)
:2022/07/29(金) 15:51:31 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
「さあ、どうしますか先生?」
田島さんはどうしても2人に対決してもらいたいみたい。
アタシもちょっとこの対決、見てみたくなって来たゾ♪
「・・・・・恥をかいても知りませんよ。」
「挑戦を受けてくれるんだな? もしも俺が
勝ったら先生とデートという約束は守ってもらうぜ。」
「そんな約束はしてません。」
「まあ、いいさ。とにかくやろう♪やろう♪」
入院していたにも関わらず浅黒い顔のオジサマは
ニコニコしながら前に出て来た。
上着を脱ぐと、鍛え抜かれた男の筋肉があらわになる。
まだキズ跡は残ってるけど、今こうしてここにいる事
自体が普通では考えられない。
オジサマの回復力はまるでマンガのヒーローだね☆
「テレビをご覧の皆様、大変なハプニングが
起こりました。VTOの達人である八代乙夢先生に
男性刑事が突然“挑戦状”を叩き付けたのです。
僕も長い間この番組をやって来ましたが、こんな事は
前代未聞です。一体どうなってしまうのか?」
この田島さんって人、わざとらしい司会者だなぁ・・・。
先生は表情を全く変えてないけど、オジサマに
ケンカを売られたと同時にデートの申し込みをされた
気分は複雑だろうなと思う。
「では、九十九さんがジャッジをお願いします。」
「あ、そうか。アタシがやるべきですよね。
オジサマ、ルールはどうするの?」
「俺はVTOのルールで構わないぜ。
だが詳しくは知らんから反則技だけ教えてくれ。」
「股間への攻撃と目潰し・噛み付き
以外なら何でもありだよ。」
「そうか。案外簡単だな、桃美ちゃん。」
先生とオジサマは向かい合って立った。
オジサマは先生にウインクして見せる。
先生は当然無視・・・。
先生はそういうふざけた態度の男が一番嫌いなのに〜。
「それでは始めます。両名、礼!」
87
:
対決と約束(第46回)
:2022/07/29(金) 15:53:28 ID:vhYoE2Qw0
アタシの号令に2人は頭を下げた。
「始め!」
最強の男と最強の女の戦いが始まった!!!!
日本中が今テレビ画面に釘付けになってる筈。
先制攻撃を加えたのは八代先生。
激しい突きや蹴りでオジサマの反撃を許さない。
でもアタシも練習で動体視力が鍛えられたから
八代先生の動きがハッキリ見える。
オジサマにも先生の動きは見えているらしく、
全ての攻めをガードしながら反撃の隙をうかがってる。
ちょっと先生と距離を置くオジサマ。
「なるほど。女にしちゃなかなかやるじゃないか。」
「そちらもケガ人とは思えない動きね。」
88
:
寝技と判定(第47回)
:2022/07/29(金) 15:55:22 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
アタシが一番興奮してるかも知れない・・・。
ほぼ互角の実力の2人の対決。
オジサマはまだケガが完治してなくて、
本来の実力じゃないのに八代先生に全然負けてない。
あっ!!!
先生のハイキックを受け止めたオジサマが
強引に先生を倒して寝技に持ち込んだ。
捕まってしまうと男の力に女がかなう筈がない。
八代先生はこのピンチをどうやって切り抜ける?
というか・・・何か、すごくエッチな感じがする。
汗に濡れたカラダで男と女が激しく絡み合う姿は
ちょっとテレビの生放送ではギリギリかも?
先生に下からの攻撃をさせないために
オジサマは先生の胸に顔を密着させている。
先生の顔がちょっと赤いのは苦しい体勢のせいなのか、
女性としての恥じらいなのかは判らない。
何とか体を反転させて逃れようとする先生。
オジサマは後ろから執拗に首を絞めようとするが
先生も簡単には隙を与えない。
逆にオジサマに関節技を仕掛けに行きチャンスを狙う。
さっきから何度もオジサマの手が先生の胸を触ってる。
この勝負を受けたのは八代先生自身だし、
その行為はセクハラでもルール違反でもない。
ただ、同じ女性としてドキドキするのは事実。
まして2人ともアタシの尊敬する人なんだから。
寝技の攻防が続くうちに、先生のレオタードが
だんだん食い込んで来た・・・・。
白いお尻の片方が丸見えになってるぅ〜☆☆
ちょっと前のほうもアブナイよぉ〜〜〜〜〜!!!
どうしよう?
もうファイト終了させたほうがいいかな?
チラッと司会の田島さんを見ると
手でバツを作って首を振っていた。
ヤバイから試合をストップさせろという意味だ。
89
:
寝技と判定(第47回)
:2022/07/29(金) 15:56:27 ID:vhYoE2Qw0
アタシが声を出そうとしたその時、オジサマが
片手で先生のレオタードの食い込みを直した。
オジサマ?????
試合中に何でそんな事を?
一瞬の隙を見せたオジサマは先生に関節技を決められ、
あえなくタップ(降参の合図)をした。
「勝者、八代乙夢・・・。」
アタシはちょっと信じられない逆転劇に
あぜんとしたまま判定を下した。
誰が見てもオジサマが完全に勝っていた試合だ。
八代先生は何も言わずにスタジオを出て行った。
「繋がった骨がまた折れるかと思ったぜ〜♪」
オジサマは照れ笑いをしながら立ち上がる。
「俺が負けたから先生とのデートは無理って事だな。」
「・・・・予想外の展開にスタジオの観覧客は
静まり返っています。VTOはこの屈強な男性刑事を
本当に降参させてしまいました。これはヤラセでは
ありません。九十九さんもありがとうございました。」
「あ、いえ・・・。」
「ここでCMをご覧下さい。」
CMに入ると、アタシはすぐオジサマのそばに行った。
「オジサマ、どうしてあんな事を?」
「何の事だい?」
「八代先生のレオタードを直したでしょ?」
「・・・・・勝ち負けより大切な事はあるさ。」
オジサマが女性にモテる理由が解った気がした。
万我一錠刑事はやっぱり生身のスーパーヒーローだ
90
:
アクビと伝言(第48回)
:2022/07/29(金) 16:02:30 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
控え室に戻ると八代先生はもう着替え終わって
1人静かに鏡を見ていた。
アタシも早く着替えて帰る仕度しなきゃ。
メイクを落とし始めると先生が話し掛けて来た。
「九十九さん、“彼”は何か言ってた?」
「あ、はい。勝ち負けより大切な事はある、と。」
「そう・・・・。」
「オジサマに今日の事は連絡してあったんですけど、
まさかスタジオに来るとは思ってなかったんです。
刑事さんだからテレビ局にも知り合いが多くて、
この番組のプロデューサーも知ってたんだそうです。
それで急遽ああいう形で飛び入り参加したんだと
言ってました。すみません、アタシのせいで・・・。」
「九十九さんが謝る事ないわ。
貴方も何も知らなかったんでしょ?」
「・・・はい。」
「勝ったらデートと言ったのも予定通りだった訳ね。」
「いえ、あれは先生の演舞を見て
本当にデートしたいと思ったそうですヨ。」
「え・・・・ウソよ、そんな事。」
「先生、オジサマはウソつくような人じゃないです。」
先生はそのまま黙り込んでしまった。
日本中の人が観てる前でデートを申し込まれたんだから
女性としては嬉しいような迷惑なような話だよね。
でも結果的に先生が勝ったんだし、
オジサマも諦めてたみたいだし。
アタシはメイクを落とし終えて更衣室の中に入った。
そう言えば、アタシ着替えた意味なかったなぁ・・・。
「九十九さん。」
カーテンの向こうから先生が再び話し掛けて来た。
「はい、先生。」
「・・・・私、完全に負けてたわね。」
「それは、オジサマは警察でもトップクラスの
格闘技術を持ってる人ですから、仕方ないです。」
「私もまだまだって事かな・・・。
ケガ人だと思って甘く見てたかも知れない。
今日はスクールに戻ったら練習付き合ってね。
91
:
アクビと伝言(第48回)
:2022/07/29(金) 16:05:41 ID:vhYoE2Qw0
何か寝技対策を考えなきゃ。」
「はい、お付き合いさせて頂きます!」
控え室を出たアタシと先生がロビーを通ると、
オジサマと番組スタッフが談笑していた。
八代先生は一瞬オジサマを見て立ち止まったけど、
何も言わず無表情のままその場を離れた。
八代先生の高級車をアタシが運転して、
先生は後部席で目をつむっている。
疲れて眠ってるのかも?
ふああああああああ・・・・・・・・・あ(涙)
アタシも昨日の夜はほとんど眠ってないから
テレビ局を出た途端にアクビが出始めた。
あ、トラックの運転手のお兄さんに見られてた☆
「九十九さん、運転交代しましょうか?」
「だ、大丈夫です。先生はゆっくりしてて下さい。」
先生にもルームミラーで見られてた・・・アハハ〜♪
「九十九さんは今好きなヒトっているの?」
「はい♪ こないだやっと新しい彼氏が
出来たトコです。あんまり会えないんですけど。」
「そう・・・私は恋愛はどうもダメね。」
「先生、今日の放送を観て先生のファンになった
男性もいっぱ〜〜〜いいると思いますヨ♪」
「フフ、ありがとう。せっかくテレビに出たんだから、
VTOを始める女性も増えるといいわね。」
「そうですね〜。」
先生の顔にようやく笑顔が戻ってホッとした。
「九十九さん、万我一刑事に・・・
伝えてほしい事があるんだけど。」
「はい。」
「あんな勝ち方では私は納得出来ないの。
何か借りが出来たみたいでイヤだから、
まだ気が変わらないんだったら約束の事、
私のほうは別に受けても構わないと伝えて。」
「オジサマとデートするんですかぁ???」
「・・・・・1回だけよ。」
「わあ〜〜〜〜、オジサマ喜びますぅ!!!
電者、早速オジサマにメールしといて♪」
「了解、桃美。」
もしオジサマと先生がカップルになったら・・・・
何だか凄くワクワクするのは何故だろう?
両親がいないアタシにとっては
万我一錠刑事は“お父さん”みたいな存在だし、
八代乙夢先生は“お母さん”みたいな存在。
2人が仲良くなってくれたらこんなに嬉しい事はない。
ヒ ャ ッ ホ ーーーーーーーーーー ィ
92
:
返信とセーラ(第49回)
:2022/07/30(土) 14:33:04 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
「桃美、万我一刑事からメールの返信が来たぞ。」
と電者。 さすがオジサマ、早いなぁ・・・・。
「電者、先生にも聞こえる大きさで読んで。」
「解った。」
アタシは運転しながら、ルームミラーに映る
八代先生の表情をチラッと見た。
「桃美ちゃん、メール見た。
先生が俺とデートしてもいいと言ったそうだが、
悪いけど断わっておいてくれないか?」
えっ? どうして???
「俺が勝ったらデートという約束だったんだから、
負けてデートするのは俺の主義に反する。
先生には気持ちだけ頂いたと伝えてくれ。」
オジサマ・・・・・。
「先生も生放送という事で緊張してただろうし、
俺もまだベストコンディションじゃなかった。
出来ればもう1度先生と戦ってみたい。
その時もし俺が勝ったら今度こそデートしたいなあ。
・・・・・・・・とメールはここまでだ、桃美。」
「ありがと、電者。」
ある意味、オジサマらしいかも・・・・・。
ただの女ったらしじゃない所がカッコイイんだもんネ。
でも、せっかく先生が心を許しかけたのになぁ〜。
オジサマも先生も独自のプライドを持ってる大人だし、
アタシみたいな子供の思い通りになる訳がない。
先生、何にも言わないけど怒ってるのかな?
「・・・・・九十九さん、また伝言お願いね。」
と、先生はとても落ち着いた感じで話し始めた。
「私はいつでも万我一刑事の挑戦を受けます。
お互いベストの状態でまたファイトしましょう。
私が勝った時に何をしてもらうかは考えておきます。」
八代先生、やっぱり大人だなぁ・・・・
ス・テ・キ
アタシと先生がVTOスクールに戻ると、
セーラー服を着た美少女が受付の所に立っていた。
93
:
返信とセーラ(第49回)
:2022/07/30(土) 14:34:24 ID:72i1z69Y0
彼女の名前は黒部ミア(くろべ・みあ)。
アクション女優を目指す17歳の高校生だそうで、
今日の「GO!GO!わいど」を観て、
VTOがどうしても習いたくなったんだって☆
ストレートの長い髪がキレイな、真面目そうなコだ。
アタシと先生のファイトが見れなくて残念だった
と言うので目の前でたっぷり見学させてあげたゾ♪
アタシも練習の成果があったのか、八代先生に
完全にやられっ放しにはならなくなったかも?
先生もアタシの上達ぶりにちょっと驚いてる。
でも寝技に持ち込まれると先生にはかなわない。
寝技ってちょっと感じちゃうから恥ずかしいナ・・・。
ミアちゃんは早速明日から入門する事になった。
また1人、可愛い後輩が増えて嬉しい〜♪
何か、今日は1日いろいろあって、もうクタクタ。
帰ったらすぐ寝よう。
おウチに帰還。
眠ぅい。
おやすみ・・・・。
94
:
巨乳と女優(第50回)
:2022/07/30(土) 14:37:12 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
セーラー服の時はまったく気付かなかったけど、
ミアはすごくバストの豊かな女の子だった。
顔立ちが清純そうな感じなので超アンバランス☆
彼女が更衣室で着替えてる時はつい見てしまうし、
いつもレオタードがはち切れそうでドキドキする。
さすが女優さんを目指してるだけあって、
普通の人とはオーラのレベルが違うなあ・・・
八代先生もミアを気に入ってるみたいだヨ。
練習も真面目にやるし、人なつっこい性格なので
あっという間にVTOスクールのアイドルになった。
アタシにも積極的にいろんな事を訊いて来るので、
先輩気分がちょっとだけ気持ちイイ♪
彼女ならきっと夢を叶えるだろうと思う。
ある日、クミとカラオケに行こうとしてたら
街でセーラー服のミアと偶然会ったので、
3人で歌いに行く事になった。
ミアはクミともすぐに打ち解けた。
クミは割と人見知りするタイプなので
こんなにすぐに心を開くのは珍しい。
「何か彩葉ちゃんのコト思い出すね。」
とアタシはクミに耳打ちする。
「あ、うん・・・そうだね・・・・・・。」
クミの日記サイトで知り合った女優志望の
女子高生の名前が“彩葉”(いろは)だった。
彩葉ちゃんとは直接会った訳じゃないんだけど、
何となくこうして3人で盛り上がってると
あの時の楽しさを思い出すの。
「桃美センパ〜イ、今クミさんと何の
ナイショ話をしたんですかぁ?」
「ミアは“彩葉”って名前に聞き覚えない?」
「イロハ? 初めて聞く名前です。」
「そうかぁ、やっぱり別人だよネ。」
アタシはミアに彩葉ちゃんの事を説明した。
「インターネットってそういう事よくありますね。
ある日突然音信不通になる人はいます。」
95
:
巨乳と女優(第50回)
:2022/07/30(土) 14:38:12 ID:72i1z69Y0
「ミアはどうしてアクション女優になりたいの?
ミアくらいの顔とボディがあれば、普通の女優や
タレントになら今すぐにでもなれそうなのに。」
「わたし、ハリウッド女優のミッシェル・クイーン
さんの大ファンなんですよ〜。
日本だとアクション女優ってB級なイメージだけど、
クイーンさんみたいなヒトを見てるとアクションも
演技の大切な要素だと思えるんです。」
「・・・・ミアちゃんってすごいね〜。
あたしもミアちゃんの夢、応援するね。」
「ありがと〜、クミさん。」
ホント、年下なのにしっかりしたコだなぁ・・・。
「わたし、テレビ観て思ったんですけど、
桃美センパイはピンク・ザ・ピンチに似てますね。」
あ、来た☆
「実はアタシがピンク・ザ・ピンチなの〜♪
こないだ八代先生にも同じ事言われたヨ。」
「クミさんはどう思います?」
「・・・・あ、あたしはモミーとピンピンが
そんなに似てるとは思わないな。モミーのほうが
ちょっと細いような気がするし・・・・。」
クミ、もしかしてアタシをかばってくれてるの?
でも変身前のほうがちょっと細いのは事実。
ピンク・ザ・ピンチになると、強化服の
「気」の増幅作用の影響で少し筋肉が張るからネ。
「桃美センパイは素でめちゃくちゃ強いから
変身する必要ないですよねぇ?」
「そういう事〜♪」
アタシは心の中でリカの事を思い出してた。
いくら素で強くても殺人兵器の前では無力。
スーパーヒロインにならなきゃ
あの巨大なレーザーロボは倒せなかったし、
ナゾナンジャーとだって素のままでは戦えない。
アタシより強いかも知れないオジサマだって
銃で心臓を撃ち抜かれれば簡単に死ぬ。
人間って本当に弱い生き物だよね・・・。
弱いからこそ「力」を持ってる者が
助けて守ってあげないとネ
96
:
検査と疑惑(第51回)
:2022/07/30(土) 14:40:34 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
すっかり暗くなっちゃった♪
アタシたち3人は駅まで一緒に歩いていた。
「あ、センパイ、わたし他に用事があったんだ。
今日はここで失礼しま〜す。」
「ああ、そうなの? ミア、またね〜」
「ミアちゃん、バイバ〜イ♪」
ミアの姿が角を曲がって見えなくなり、
アタシとクミがまた駅のほうに歩き始めると
前方にオジサマの姿が見えた。
「オジサマ〜♪」
アタシはオジサマに手を振って存在を知らせる。
早足で近付いて来るオジサマの表情が妙に険しい。
まさか・・・・刑事の顔?
「桃美ちゃん、今セーラー服のコと一緒だったな。」
「うん。VTOスクールの後輩の黒部ミアちゃん。
あのコがどうしたの? オジサマ。」
「友達かぁ・・・・・それならいいんだ。
おう、クミちゃん久し振りだなぁ〜。」
「ご無沙汰してます〜万我一さん。
こないだのテレビ観ましたよ♪」
「いや〜、カッコ悪い所を見られちゃったなあ、
ワハハ・・・・・・・ところで、ちょっと2人に
大事な話があるんだが、これからいいかい?」
「はい、あたしはいいですよ。」
「アタシも別にいいヨ、オジサマ。」
何だか、様子がおかしいな・・・・・。
アタシたちは近くにあったオジサマの車の後部席で
その“大事な話”を聞く事になった。
運転席のオジサマの横顔が街のネオンで陰になる。
「・・・・実はな、最近“行方不明者”が
急に増え始めてるんだ。例の巨大ロボット事件で
数百人の身元不明者が出たおかげで
なかなか捜査が進んでないんだが、
どうやらスポーツ関係者がたくさん消えてる。
特に格闘技をやってる若者がな。」
97
:
検査と疑惑(第51回)
:2022/07/30(土) 14:41:32 ID:72i1z69Y0
「・・・・オジサマはその人たちが
何者かに誘拐されてると言いたいのね?」
「ああ、俺はそう思ってる。夜逃げや自殺なんかで
行方不明になるケースもあるから偶然かも知れん。
ただ、あちこちで聞き込みをしているうちに
“セーラー服の美少女”が浮かび上がって来たんだ。
スポーツ関係者が行方不明になる少し前に現われ、
行方不明になったと同時にその少女も消えてる。」
「万我一さんはミアちゃんを疑ってるんですか?」
クミが思わず口をはさんだ。
「さっき、俺と目が合った途端に突然逃げ出した
ような気がしたんだよ。友達を疑ってすまないな、
クミちゃん。だがこれが俺の仕事だ。2人とも
彼女の事で知ってる事を全部教えてくれないか?」
「・・・・うん、解ったオジサマ。」
アタシはオジサマにミアの事を全部話した。
さっき歌ったカラオケの曲名や食べたものまで。
電者が録ってた映像や声もコピーして渡した。
あの可愛らしいミアが誘拐事件に関わってるなんて、
アタシは信じたくない。
クミはうっすら涙を浮かべてる・・・・。
アタシはクミの肩をそっと抱いてなぐさめた。
さっきまでの楽しかった時間が幻のような気がする。
「2人ともありがとう。今日は家まで送ろう。」
オジサマはそう言うと、車を発進させた。
98
:
誘惑とボンテージ(第52回)
:2022/07/30(土) 14:44:02 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
オジサマの勘はやっぱり当たってた。
翌日、黒部ミアはVTOスクールの
若い生徒25人と共に消えてしまった。
さすがに今回は行方不明者の人数が多いので
警察も誘拐事件として本格的に捜査を開始した。
八代先生とオジサマは久し振りに再会した訳だけど、
対決やデートをしてる場合じゃない。
夕方のニュースでは、街の監視カメラが捉えていた
黒部ミアらしきセーラー服の少女や生徒たちが
観光バスに乗り込んで行く映像が流された。
黒部ミアというのもおそらく本名ではない筈。
誘拐の目的は一体何なの?
オジサマの話だと身代金の要求も一切ないと言う。
何の手掛かりも得られないまま時が流れて行った。
学校が夏休みに入ったある日、
アタシは大好きな納豆をお箸でかき回しながら
テレビ「GO!GO!わいど」を観ていた。
おやつに納豆食べるのってヘン?
今日のゲストは眉墨(まゆずみ)総理大臣かぁ。
司会の田島さん、かなり緊張してるみたい。
さすがに八代先生を挑発したような無礼な態度は
総理大臣相手には出来ないみたいね。
何しろ日本で一番“権力”を持ってる人だもの。
でも政治の話は難しくてアタシには解らない。
今日のトークはつまんないなぁ・・・・・。
アタシがビデオでも観ようかとリモコンを取った時、
テレビの中から悲鳴が聞こえた。
また、何かヤラセの演出?
銀の仮面に黒タイツの集団がスタジオに入って来た。
「何だ君たちは?」
それが田島さんの最期の言葉となった。
銀仮面の1人の鋭いツメが田島さんの喉を貫く。
テレビの生放送でこれほど残酷な場面が
流れた事は過去にないかも知れない。
眉墨総理の白髪が血しぶきを浴びて赤く染まる。
99
:
誘惑とボンテージ(第52回)
:2022/07/30(土) 14:45:05 ID:72i1z69Y0
これは、ヤラセじゃない。
「みなさぁん、我々に逆らうとこうなる事を
よ〜く覚えておくのね。アハハハハハハ・・・」
聞き覚えのある、この声は・・・・・・
画面にゆっくりと映り込んで来たのは、
黒いボンテージ服を着た黒部ミアだった。
巨乳が今にもはみ出しそうな衣装は戦闘服???
「わたしはドクロイドのブラック・ザ・キャット。」
犯罪組織ドクロイド!!!!!
黒部ミアはドクロイドの一員だったんだ!
どうやら彼女がこの一団のリーダーらしい。
「このテレビ局は我々ドクロイドが占拠した。
眉墨総理に直接話したい事があって来たのよ。」
眉墨総理は顔に付いた番組司会者の血液を
ハンカチで拭きながらミアを睨んだ。
「私は日本の総理として犯罪者には屈しない!」
「はいはい。」
ミアが指を鳴らして合図をすると、
観覧客の1人が見せしめに殺された。
銀仮面の額にある黒十字から何か
光弾のようなモノが走ったように見えた。
あの黒十字、中心に緑色の玉が埋め込まれてて、
確かレーザーロボの額にも同じモノがあった。
ドクロイドのシンボルマークなのかも知れない。
「総理、あなたが反抗的な態度を取る度に
一般人を1人1人殺して行くわよ?」
「・・・・解った。話を聞こう。」
「日本を、ドクロイドに譲ると国民に宣言して。」
「・・・・・・・バカな!」
本気で言ってるの? ミア・・・・・・・。
100
:
日本と総理大臣(第53回)
:2022/07/30(土) 14:47:18 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
「総理、口の利き方に気をつけなさいよ。」
また1人、ミアの合図で観覧客が殺された。
「国民の命を守るのが総理の仕事なんじゃないの?」
「私の仕事は日本の国を守る事だ。
そんな要求は呑めない。君たちが何者かは知らんが、
時間の無駄だ。早く私を殺せばいい。」
眉墨総理の立場はよく解る。
イエスでもノーでも結果は同じなんだから。
もしドクロイドがこの国を支配したら、
どのみち逆らう者は皆殺しになるだろう。
「総理を殺したって新しい総理が生まれるだけ。
あなたの命なんて何の価値もないのよ。
大事なのは今のあなたが持ってる権力と影響力。
総理が我々ドクロイドに屈服する姿を
全国民に生放送で見せる事に意義があるの。」
「君がドクロイドとやらのリーダーなのか?」
「わたしは首領さまの使いに過ぎない。
偉大なる首領さまがこんな所に来る必要はないわ。
眉墨総理などとは格が違うお方なのよ。」
「ただの使いの人間に国を譲り渡せる訳がない!」
「あら、そう。」
そしてまた1人、死者が増えた。
銀仮面=ドクロイド兵が数人で死体を運んで
田島さんの死体の上に積み上げる。
総理は目をつむって沈黙している。
「あなたが日本を譲ると宣言するまで、
10分置きに1人ずつ誰かを殺して行くわ。
このテレビ局には芸能人や著名人もいるから、
そのまま黙ってるなら彼らも死ぬ事になる。
テレビを観てる日本国民はどう思うかしらね?」
こんな事をしても、そう簡単に日本が
ドクロイドのものになるとは思えない。
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