[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
シャワールームはピンク色
1
:
ジャストアヒーロー
:2022/07/24(日) 12:12:17 ID:mNrehLYM0
ピンク・ザ・ピンチのテーマ
秘密はなるべく少ないほうがいいよね
友達なのに本当のコトを話せないって
何だか寂しいよね
アタシ日本一有名なスーパーヒロイン
ピンク・ザ・ピンチ
桃美はオジサマも先生も大好きだヨ
でも本当のコトは教えられない
ウソつきは大嫌いなのに
アタシもウソついてる 矛盾してるよね
電者 アタシってヘン?
気休めは言わないで でもありがと♪
トレーニングしたら気が晴れるかな
サイキック・パワーで何でも出来るのに
気持ちだけはどうにもならないの
アタシもっと強くなりたい
憧れのあの人みたいに
62
:
観覧車とカップル(第34回)
:2022/07/27(水) 15:50:09 ID:nY47Qbko0
投稿者:九十九桃美
「あ、観覧車ですね。
ピンピンさん、2人で乗ってみましょうか?」
ハイウェイから遊園地の巨大観覧車が見える。
あそこは動植物園やボートに乗れる池などがあって、
カップルがデートするには最適な場所だ。
雨さえ降っていなければの話だが・・・。
いや、逆に人が少なくてゆっくり楽しめるかも?
雨天の平日の昼間に遊びに来る客はそんなにいない筈。
「楽しそうだ。行こうシンヤさん。」
実は桃美として元カレと来た事が何回もある。
その度にボートに乗ったりしたんだけど、
この遊園地には変なジンクスがあって
“ここでデートしたカップルは必ず別れる”という。
ボクはそんな噂は信じないが、実際別れてるし・・・。
ま、シンヤさんとはこの姿でしか会えないんだから
どこでデートしたとしても長く続く関係じゃない。
今日を楽しもう♪
ハイウェイを下りてしばらく走ると遊園地に到着。
車を駐車場に停め、動物園の入り口から入場した。
思った通り客はほとんどいない。
サイキック・バリヤーの中で2人だけの時間に浸れる。
ボクは自分からシンヤさんの腕を抱いた。
女の武器である胸のふくらみを彼の腕に押し付ける。
「私がデートに誘ったのに、
全部ピンピンさんにリードされてますね。」
「最近イヤな事ばかりだったから、忘れたいんだ。」
「そうですね。今日はイヤな事は忘れましょう。」
当たり前の事だが、ボクに気付いた他の客は
カメラやビデオで撮ったり、メールを打ったりしてる。
だが、気を遣ってか近付いて来る人はいない。
パニックになるほどの人数じゃないね・・・。
ボクはともかく、“ピンク・ザ・ピンチの彼氏”として
シンヤさんが世間に注目されるのは間違いない。
まさか、ボクは売名に利用されているのか?
63
:
観覧車とカップル(第34回)
:2022/07/27(水) 15:51:15 ID:nY47Qbko0
そんな感じじゃないな・・・仮にそうでも別にいいし。
雨の中でもペンギンたちは元気にプールを泳いでる。
売店でアメリカンドッグとお茶を買って食事を済ませ、
ボクらはお目当ての観覧車に乗る事にした。
雨はかなり小降りになってきてる。
ようやくゴンドラに乗り込むとちょっと落ち着いた。
「シンヤさん、疲れた?」
「ええ、やっぱりあれだけ注目されてると・・・。」
「バンドでお客さんの注目を浴びてるだろう?」
「そうなんですけどね・・・ナメてました。」
観覧車にはボクら以外は乗ってないみたいだ。
貸し切り状態にボクはちょっと浮かれた。
シンヤさんにカラダを寄せると、
今度は彼のほうからボクにキスして来た。
まだアメリカンドッグの匂いがするけど、気にしない。
シンヤさんの右手がボクの乳房を優しく包んだ。
観覧車が1周するのは約20分。
時間はたっぷりある。
口が出てるコスチュームでホントに良かった♪
64
:
マスコミと秘密(第35回)
:2022/07/27(水) 15:56:25 ID:nY47Qbko0
投稿者:九十九桃美
ん・・・・日光が・・・・差して来たな・・・・・・。
雨はどうやら上がったようだ。
ゴンドラはもう頂上を過ぎて下り始めている。
男の人って可愛いな・・・・・
さっきまであんなに大きかったのに、
今はこんなに・・・・・。
ボクはシンヤさんのGパンを上げるのを手伝う。
ボクも外した手袋を着けたり、思いっ切りお尻に
食い込んだコスチュームを直したりした。
「シンヤさん、雨は上がったみたいだな。」
「そうですね。もっといろいろ乗って遊びましょう。」
「まだボクと一緒に居たいか?」
「もちろんですよ!ピンピンさん。」
「男性は射精した後は女性への愛情が半減すると
聞いた事がある。シンヤさんはどうなんだ?」
「私はそんな事はないですね。
ピンピンさんさえ良ければずっと一緒に居たいです。」
「そういう訳にも行かないが・・・嬉しいよ。」
ボクは残りの時間は街の景色を楽しむ事にした。
デートの申し込み、断らなくて正解だったなぁ♪
「 あ っ ! 」
何気なく遊園地側の景色を見たボクは目を疑った。
観覧車の周りに数百人の人が集まっている!
マスコミ関係の人間も何人かいるようだ。
ボクはピンク・ザ・ピンチの時には視覚も鋭くなるので
取材用カメラのメーカーの名前まで見える。
「どうしてこんなに早くマスコミが?」
ヘリコプターの音も聞こえて来た。
「ここの近くでたまたま事件があったようだ。」
バックルの中から電者が答えた。
「そりゃ、ピンク・ザ・ピンチがデート中だと
情報が入ればすぐに飛んで来るだろうな。」
電者の口調はやや冷たい。
65
:
マスコミと秘密(第35回)
:2022/07/27(水) 15:57:22 ID:nY47Qbko0
「やっぱりちょっと無茶だったか・・・・。」
ボクは軽率だったかも知れない。
シンヤさんも下の様子を見て戸惑っている。
「シンヤさん、このままだと素顔で街を
歩けなくなるかも知れないぞ。いいのか?」
「私は構いません!」
シンヤさん、本気なんだ・・・。
しかし考えてみれば、ピンク・ザ・ピンチの秘密を
何か知ってるかも知れないとシンヤさんが疑われたら?
そしてユウキちゃんまで巻き込まれたら?
ボクの正体が九十九桃美だとバレなくても
ボクと関わるだけで十分ヤバイんだ。
告白されて舞い上がって、そこまで考えてなかった。
どうしようかな・・・・・。
「シンヤさん、やはり素顔をさらすのは危険だ。
ボクの秘密を知りたがっている悪人は多い。
シンヤさんが良くても、ユウキちゃんやバンド仲間に
何か迷惑が掛からないとも限らない。」
シンヤさんもそこまでは考えてなかったらしい。
「すみません、ピンピンさん。
私がデートになんか誘ったばかりにこんな事に・・・。」
「いや、ボクも初めての事でよく考えなかった。
シンヤさんが謝る事はないさ。」
「どうしたらいいんでしょう?」
「大丈夫、いい方法がある♪」
66
:
透明と強敵(第36回)
:2022/07/28(木) 12:24:30 ID:PZ0jPMUI0
投稿者:九十九桃美
ゴンドラがだんだん乗り場に近付いて行く。
ボクはサイコキネシスでドアロックを外し、
シンヤさんを抱いて誰もいない場所へ跳んだ。
群衆の視線はドアが開いたゴンドラに釘付けのまま。
つまり、ボクらは“透明人間”になったんだ。
ピンク・ザ・ピンチは「気」を操る事が出来るので、
光の進行方向を変える事により視覚的に透明化する。
遊園地から無事に脱出し、人がほとんどいない
植物園の奥の森まで逃げて来た。
「ここならもう安心だろう。」
ボクは透明化を解いた。
濡れたベンチの水分を「気」で蒸発させ、
ボクらはやっと休憩する事が出来た。
「ピンピンさん、ありがとうございました。」
森の中で2人きり。
小鳥のさえずりしか聞こえて来ない。
「もうデートは無理かも知れないな、シンヤさん。」
「ええ。でも貴重な体験でした。」
「ボクも同じだ。こんな楽しいデートはなかったな。」
静かな時間が流れる。
もう別れたほうがいいのにベンチから離れられない。
スーパーヒロインと一般人の恋なんて、
どう考えたって無理に決まってる。
分かってた事なのに・・・・何故?
ザッ!
目前に突然白い何かが降り立った!
67
:
透明と強敵(第36回)
:2022/07/28(木) 12:25:27 ID:PZ0jPMUI0
ボクはとっさにバリヤーを強くし、
シンヤさんを抱いて後方に下がった。
敵か????
その姿はスーパーヒーローっぽいが異様だ。
白いタマゴ型のメタリックな仮面には
黒い「Y」字のゴーグル。
当然、表情はまったく読めない。
体も首元や手袋やブーツが黒いだけで、あとは真っ白。
薄い素材のタイツからは女性の特徴が浮かび上がってる。
なんとなく、八代乙夢先生の体型に似てるが・・・。
「ピンク・ザ・ピンチ、デートは楽しい?」
白い仮面の女がボクに話し掛けた。
聞いた事のない声だ。
「何者だ?」
「私の名前はナゾナンジャー。」
「ふざけてるのか?」
「ふざけてるのはアナタじゃないの?
スーパーヒロインが一般人とデートするなんて、
マスコミ連中が騒ぐのも無理ないわね。」
「・・・・・ボクに何の用だ。」
「私がお仕置きしてあげようと思って。」
自称“ナゾナンジャー”の額のリングが虹色に光り、
光の玉が現われ手の上で光の剣に変わった。
武器を出したという事は敵と見て間違いない。
「シンヤさんは逃げて。」
ボクは小声でシンヤさんにそう言った。
「大丈夫よ。私のお目当てはアナタだけだから!」
ナゾナンジャーがボクに襲い掛かって来た。
速い!!!!!
ブォン!
コ イ ツ は 、 強 敵 だ 。
68
:
ナゾとウソ(第37回)
:2022/07/28(木) 12:28:38 ID:PZ0jPMUI0
投稿者:九十九桃美
白い仮面の女戦士、ナゾナンジャー!
ボクが今まで戦って来た相手とは格が違う。
とにかく動きが速くて、パワーも人間離れしている。
もしコイツが人間だとすると恐るべき強化服だし、
アンドロイドだとしても恐るべき科学力だ。
ボクは今日1日サイキック・パワーを使い過ぎた。
この強敵の相手をするには「気」が足りない。
サイコキネシスもサイキック・ウェーブ(衝撃波)も
こんなスピードの敵にはまったく通用しない。
どうする?
「ピンク・ザ・ピンチ、バリヤーで防御してばかりね。」
敵はこの攻撃を仕掛けながら話す余裕すらあるのか?
サイキック・バリヤーもだんだん弱くなって来た。
どうする? やられるぞ?
そうだ、透明化してみてはどうか?
「消えても無駄よ。」
ナゾナンジャーにはボクが見えているようだ。
レーダーか何か、特殊な装置を備えてるらしい。
デートなんかして浮かれてるからこういう事になるんだ!
「国民的スーパーヒロインも人気だけって事ね。」
言わせておけば・・・・・。
カッ!
「うわあっ!!!」
ナゾナンジャーが突然倒れた!
今の光は???
「ブルー・ザ・ナイト参上。」
それはシンヤさんの声だった。
ボクが振り向くと、そこにいたのは青いカラダの怪物。
どう見てもモンスターだ。
体中にトゲトゲがあり、手や足には鋭い爪。
瞳のない眼は不気味に光を放っている。
69
:
ナゾとウソ(第37回)
:2022/07/28(木) 12:29:39 ID:PZ0jPMUI0
でも彼はスーパーヒーロー。
ブルー・ザ・ナイトは有名な正義の超人なんだ。
今の光はおそらく彼の必殺技ブルー・フラッシュ。
ナゾナンジャーもまさかブルー・ザ・ナイトが
ここにいるとは思わなかったようで油断したらしい。
「ブルー・ザ・ナイトか・・・。」
起き上がったナゾナンジャーはそうつぶやくと
額のリングから何かを発射した。
パーーーーン!
閃光弾、つまり“目くらまし”だ。
その間にナゾナンジャーは撤退したらしい。
はぁ・・・・助かったんだ・・・・・・・。
雪のようなものが森の中を舞っている。
ボクはブルー・ザ・ナイトの所へ歩み寄った。
「ピンク・ザ・ピンチ、私は貴女にこの姿だけは
見られたくなかった・・・・。」
ブルー・ザ・ナイトの前で立ち止まる。
「何を言ってるんだ?シンヤさん。姿がどうであっても
ボクが好きなシンヤさんである事に変わりはない。」
そしてボクはブルー・ザ・ナイトを抱きしめた。
ちょっとトゲトゲが痛いが関係ない。
「シンヤさんがナイトだったなんて・・・・・。」
「ウソつきは嫌いじゃなかったんですか?」
「こうして正体を明かしてくれたんだからシンヤさんは
ウソつきじゃないさ。助けてくれて、ありがとう。」
実は“ピンク・ザ・ピンチ”というネーミングは
“ブルー・ザ・ナイト”を参考にしたものなんだ。
まさか“先輩”がボクのファンだとは思わなかった。
雪のようなものが舞い散る森の中で、
ボクとナイトはいつまでも抱き合っていた。
スーパーヒロインとスーパーヒーロー、
“スーパーカップル”の誕生・・・・・・・かな?
70
:
博士と身体検査(第38回)
:2022/07/28(木) 15:52:39 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
「ずいぶんゴキゲンじゃないか桃美くん。」
アタシの事をいつも“桃美くん”と呼ぶおじいちゃん。
祖父の九十九博士は69歳とは思えないくらい元気。
さすがに白髪の頭の毛は薄くなって来てはいるけど、
背中も曲がってないし、全然ボケてないし、
まだまだアッチのほうも現役らしいヨ♪
アタシ、今メディカルルームで身体検査中
おじいちゃんは医師免許も持ってるので、アタシは
小さい頃から他のお医者さんに診てもらった事はないの。
だから、おじいちゃんの前でハダカでも全然平気☆
「フフ・・・判るぅ? 実は今日ね・・・・・」
アタシは“ブルー・ザ・ナイト”との話を聞かせた。
「ほう、それは良かったなあ。しかし、
桃美くんも相変わらずやる事が大胆だな。」
「ピンピンスーツ着たままデートするとあんまり
女の子らしく出来ないから変な感じだったヨ。」
「ワハハ、デートするために作った服じゃないからな。」
「しばらくは会わない事にしたんだ。シンヤさんが
マスコミに注目されてる間はいろいろ面倒だから。
結局はアタシのほうは正体を見せなかったの。
どこかでナゾナンジャーが見てるかも知れなかったし。」
「そのナゾナンジャーというのはかなり手強いのか?」
「うん、アタシが今まで戦った中で一番強かった。
まるで・・・・・・・」
「・・・まるで、何なんだ?」
「ううん、何でもない。」
八代乙夢先生のように圧倒的な強さだった。
でも、ナゾナンジャーが八代先生である筈がない。
声も違ってたし、アタシを襲う理由もない。
「電者、おじいちゃんに映像を見せてあげて。」
「了解。」
71
:
博士と身体検査(第38回)
:2022/07/28(木) 15:53:25 ID:aB7J0jUo0
机の上にいた小電者は記録した映像をスクリーンに映す。
ナゾナンジャーの動きは電者の高性能カメラでも
完全に捉える事が出来ないくらいの速さ。
やっぱりスゴイ・・・・。
「これは、もし普通の人間が強化服を着てるとすると、
かなりの肉体的ダメージがある筈だが・・・・。」
「おじいちゃんもそう思う?」
「しかも女性のようだし、う〜ん・・・・・。」
「もしかしてドクロイドと関係あるのかなぁ?」
「今の段階では何とも言えんが、その可能性もある。」
「今度また現われたらどうしたらいい?」
「今回はピンク・ザ・ピンチのサイキック・パワーの
状態がベストではなかったが、ベストの状態なら
絶対に勝てない相手ではないんじゃないかな?」
「そうかなぁ・・・・。」
「どんな豪速球を投げるピッチャーでも
毎試合バッターを抑え続ける事は出来ない。
人間は必ず順応するんだ。」
順応・・・・・。
72
:
バットとボール(第39回)
:2022/07/28(木) 15:56:16 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
おじいちゃんはいつもアタシに
自分自身で答えを見つけるように仕向ける。
ヒントは与えてくれるけど正解は教えてくれないの。
学校の登校日になってもアタシはまだ悩んでた。
久し振りに親友のクミと直接会えて嬉しかったけど、
ナゾナンジャーの事が頭から離れない。
「モミー、まだリカの事で悩んでるの?」
「え? あ、ああ、違うのクミ。VTOでどうやったら
先生を超えられるのかって考えてたんダ。」
食堂でクミとお昼ごはんを食べながら話してる。
八代先生に勝つ事とナゾナンジャーに勝つ事は
なぜかアタシの中では同じ事のような気がしてた。
どちらもアタシより圧倒的に強い女性だから。
「ふぅん・・・・。でも人間って不思議だよね。
あんなに悲しかったのに、時間が経てばだんだん
その状況に慣れて来るんだから。」
クミはちょっと大人っぽくなったみたい。
彼氏とは最近上手く行ってるらしいから
気持ちに余裕があるのかも知れないな・・・。
ん????
時間が経てばだんだんその状況に慣れて来る?
人間は必ず順応するとおじいちゃんも言ってた。
そうか!!!
練習に時間を掛けるしかないんだ!
近道なんてないんだ!
アタシ何を考えてたんだろう?
サイキック・パワーや科学力に頼り過ぎてた。
「クミ、ありがとう。答えが見つかったヨ☆」
「え、急にどうしたの?」
「アタシ今日はカラオケ行くのやめて、
バッティングセンターに行こうと思うんだけど、
クミも一緒に来る?」
「・・・・・バッティングセンター?」
学校が終わった後、アタシとクミはバスに乗って
一番近いバッティングセンター(打撃練習場)へ向かう。
「モミーって野球好きだったっけ?
あたしは昔ソフトボールやってたから
何回か行った事はあるんだけど・・・。」
「お父さんと一緒に1回だけ行った事があるんだ。
73
:
バットとボール(第39回)
:2022/07/28(木) 15:57:33 ID:aB7J0jUo0
小さい頃だったから後ろで見てただけなんだけどね。」
バッティングセンターに着くと、アタシは早速
上級者コースのピッチングマシンを選んだ。
バットは武器にもなるのでVTOで使い方は習ってる。
でも、ボールを打つのは初めて。
「お嬢さん大丈夫? このマシンはプロ用だよ。」
男性の係員さんが心配そうにアタシに忠告した。
「多分、大丈夫です♪」
アタシはレンタルのバットを持って打席に立った。
「モミー、頑張って!」
クミが後ろから応援してくれてる。
アタシはクミに軽くウインクした。
初球。
バスッ!
・・・・・・・・・バットを振る事も出来なかった。
これで時速130キロ? 全然見えなかったよ・・・・。
アタシの動体視力は普通の人よりいい筈なのに。
このマシンのボールは時速170キロまで出るらしい。
バスッ!
2球目もバットは出ない。
後ろで見てる男性たちがニヤニヤしてる。
3球目は何とかバットを振ったけど、空振り。
勢い余ってコケちゃった☆
「お嬢さ〜ん、もうやめといたほうがいいぞ〜。」
バカにした笑い声が聞こえて来る。
4球目。
チッ!
今回はバットにボールがかすった。
5球目、6球目、7球目、8球目もチップ。
でも、球がだんだん見えて来てる。
目がスピードに“順応”してるんだ。
もう男たちの嘲笑はアタシには聞こえていない。
アタシはボールだけに気を集中した。
9球目!
74
:
涙と友情(第40回)
:2022/07/28(木) 16:00:32 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
時速130キロの直球がゆっくりに見える☆☆
もらったぁ!!!
カン!!
「ぐっ!」
バットに当たったボールはアタシのお腹を直撃。
アタシは思わず地面にうずくまった。
「お〜い、ボール止めて〜!」
係員の男性やクミが心配そうにグラウンドに入って来た。
「モミー、大丈夫?」
「・・・・油断してたから、効いたヨ・・・。」
自然に涙が目からこぼれ落ちた。
「お嬢さん、女性にはこのレベルは無理だよ。
バットに当てたのは確かに凄いけど、
初心者コースでやったほうがいいよ?」
係員さんとクミに支えられてグラウンドを出る。
後ろのベンチに座ってしばらく休憩。
「ねえモミー、どうしてこんな無茶するの?
絶対にこれをやらないと強くなれないの?」
「・・・・これをやらないと、絶対勝てないの。」
「・・・本気なんだ、モミー。」
カキーン!
がっちりした男性が同じマシンのボールを打ってる。
今、アタシを見てバカにした顔で笑った。
「あたし、モミーが納得するまで付き合う!」
クミはいつも、アタシの変な行動にもあまり驚かない。
もしかしたらアタシがピンク・ザ・ピンチだと
気付いてるのかも知れない・・・・。
「このぶんだと徹夜になるかも知れないよ?」
「モミーが頑張ってるのにあたしだけ帰れないから。」
「クミ・・・・。」
「だって友達だもん♪」
「アタシって変なのに、いつも見守っててくれるのね。」
「モミーの事、変だなんて思ったコトないよ。」
「ありがとう、クミ。」
アタシがもしナゾナンジャーに殺されたら、
この優しいクミを悲しませる事にもなるんだ。
75
:
涙と友情(第40回)
:2022/07/28(木) 16:02:07 ID:aB7J0jUo0
そしてシンヤさんもユウキちゃんも、
オジサマも先生もおじいちゃんも電者も、
日本中のピンク・ザ・ピンチファンも・・・・。
アタシは1人じゃない。
「桃美。」
クミの横のベンチにいた小電者がアタシを呼んだ。
「なあに? 電者。」
「桃美は大事な事を忘れてるぞ。
集中力を高めるには糖分を摂取する必要がある。」
「あ、そうかぁ。お昼から何も食べてないし、
ここに来てからも何も飲んでない。」
「運動前にダイエットは必要ないから
ジュースでも飲んだらどうだい?」
「わあ、電者くんアッタマいい〜♪
モミー、あたし自販機で買って来るよ。何がいい?」
「あ、ピーチジュースがあったら・・・。」
「分かったぁ、待っててね。」
クミは自動販売機コーナーに走って行った。
「本当に優しいコだな。桃美はいい友達に恵まれてる。」
「うん。でも電者の事も親友だと思ってるよ♪」
「私の場合は桃美のサポートが仕事だ。」
「友情は感じてない?」
「友情という言葉は定義が曖昧だな。」
フフ、そういう素直じゃない所も好きだヨ
76
:
ジュースと練習(第41回)
:2022/07/28(木) 23:50:55 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
「モミー、買って来たよ〜♪」
クミが缶ジュースを2本持って戻って来た。
「一応、ピーチは2種類あったから両方買って来たの。
モミーの好きなほう選んで。」
「わ〜、ありがとネ。」
アタシは片方の商品名を見てちょっと驚いた。
“ピンク・ザ・ピーチ”だって・・・・・。
何かピンピンもどきの変なキャラクターが描いてある。
知らない間に缶ジュースにまでなってたんだ。
1度は飲んでおいたほうがいいかな?
「ピンク・ザ・ピーチのほうにするヨ。」
「そう言うと思った♪」
やっぱりクミ気付いてるのかな・・・・?
アタシはピンク・ザ・ピーチを少しだけ味見した。
あ☆ 美味しい♪
桃の香りと微炭酸がいい感じ。
半分だけ飲んで、クミと残り半分を“かえっこ”した。
アタシたちはよくこの“かえっこ”をするんダ。
クミの飲んでたのは割とスタンダードな桃ジュース。
これはこれでアタシはけっこう好き。
ジュースをグイッと飲み干してアタシは立ち上がった。
「よ〜し、エネルギー満タン。行って来る!」
「頑張れモミー♪」
グラウンドから出て来たがっちり体型の男性が
ニヤニヤしながらアタシの肩をポンポンと2回叩いた。
「おネエちゃん、もし前に球が飛んだら何かおごるよ。」
「もし1回も前に飛ばなかったらエッチしてもいいヨ。」
「ヒュ〜、言うねえ・・・。その約束忘れるな。」
「忘れても平気。打つから。」
今回も130キロ直球のみにマシンを設定。
打席に入り、素振りを1回する。
ブン!
バットが空を切る音が後ろの男性たちを沸かせた。
テレビで観た予告ホームランのポーズを思い出し、
アタシはバットの先でホームランゾーンを指してみた。
77
:
ジュースと練習(第41回)
:2022/07/28(木) 23:52:03 ID:aB7J0jUo0
ちょっと演出過剰かな? 大爆笑が起こってる。
投球開始のブザーが鳴った。
初球が来る。
カァ〜ン!
ホームランゾーンにボールは飛んだ。
これで賭けはアタシの勝ち。
後ろからはクミの声しか聞こえない。
2球目以降も全てホームラン。
他のコースの人も打つのをやめてアタシの打撃を見てる。
さすが電者、ジュースの糖分のおかげで
脳が活性化されてるのが自分でもハッキリ判る。
ボールの縫い目が見えるし、バットも狙い通りに出る。
ちょっとボールが遅くてイライラするくらい☆
静まり返った男性たちに目もくれず、
アタシはどんどんボールのスピードを上げて行く。
最高速度の170キロですらホームランに出来る。
面白くないので変化球にしたり、
反対側の打席に立ったりしたけど結果は同じ。
そしてアタシはついにバットを捨てた。
ベースの上に立って170キロの球をよけてみる。
もちろん1球もアタシの体には当たらない。
慣れて来たのでわざと数ミリの所でよけてみたりする。
完全にスピードに対する恐怖感は消えた。
ボールを素手でキャッチ出来るようになるには
かなり時間が掛かったけど、何とかクリア。
これならナゾナンジャーの速さにも対応出来る筈!
「クミ、終わったヨ。」
アタシは明け方近くまで練習してたので、
他のお客さんはみんな帰っちゃったみたい。
そんな中、クミだけは最後まで付き合ってくれたの。
寝てるけどネ
78
:
番組と緊張(第42回)
:2022/07/28(木) 23:54:52 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
ついに八代先生と一緒にテレビ出演する日が来た。
番組名は「GO!GO!わいど」。
「午後」と「ゴーゴー」が掛かってるダジャレね。
奥様方に大人気の田島豪(たじま・ごう)さんが
司会を務めるお昼の生ワイドショー番組で、
先生とアタシが出るのは「今注目のヒト」のコーナー。
八代先生とは事前にメールや電話で話したけど、
直接会うのは今回のテレビ出演の話を聞いたあの日以来。
生放送なので、退院して家で療養中のオジサマや
親友クミにもあらかじめ連絡してある。
日本各地のVTOスクール関係者も観てるかな?
正体を明かしていないシンヤさんやユウキちゃんには
残念ながら知らせる訳には行かなかった。
番組はすでに放送が始まってて、出番の時間が来たら
担当者が呼びに来る段取りになってるの。
先生とは同じ控え室なので、アタシは
割とリラックスしてテレビを観てる。
今日は女性の美容と健康特集をやってるから、
その流れでVTO〈舞闘〉の紹介をするんだと思う。
実はアタシ、昨日の夜はあまり眠れなかった。
初めての事だし、先生とファイトするのも久し振り。
こないだのバッティングセンターの猛練習の成果が
ちゃんと出るかどうかはまだ分からない。
あの練習はナゾナンジャー対策でやったんだけど、
当然VTOテクニックの向上にも役立ってる。
でも機械の投げたボールと人間の動きとはまったく別。
八代先生だってさらにレベルアップしてる筈だし・・・。
頑張って見応えのあるファイトを見せたいナ♪
さっき初めてプロのメイクさんにメイクしてもらって、
鏡を見るとちょっといつもよりキレイなアタシがいる。
もちろん八代先生もすごくキレイで見とれちゃう☆
アタシと先生はVTOスクールのレオタードの上に
ジャージの上下を着て待機中。
「九十九さん、私すごく緊張してるんだけど貴方は?」
「あ、アタシはちょっとだけ緊張してます。」
「私はやっぱり断れば良かったと後悔してるわ。」
「先生、司会の人が上手く導いてくれますから、
心配しなくても大丈夫ですヨ♪」
79
:
番組と緊張(第42回)
:2022/07/28(木) 23:55:50 ID:aB7J0jUo0
「私ね、男性に愛想笑いが出来ないのよ。
テレビ観てる人が変に思うんじゃないかと・・・。」
「強い女性の代表なんですから、堂々としてて下さい。」
「フフ、弟子に励まされるなんてダメな師匠ね。」
「そんな事ないです。先生が出て行けば
その場の空気は先生の色に一瞬で変わりますから。」
「それ、私がよく生徒に言ってる言葉ね。
踊りも闘いも、まず自分の空気にする事が大事。
九十九さん、ちょっと手を貸してくれる?」
「あ、はい。」
先生はアタシの手を取って先生自身の左胸に当てた。
八代先生の小振りな美乳の弾力と温もりを感じる。
その奥から心臓の激しい鼓動が伝わって来た。
ドクドクドク・・・
本当に緊張してるんだ・・・・。
八代乙夢先生がとても人間的に思える。
服の上からでも判る、先生の硬く突起した乳頭を
手の平の真ん中でアタシは感じてた。
「しばらくこうしてていい?」
「先生が落ち着くのなら・・・。」
セクハラと言えばセクハラになる行為だけど、
アタシは全然イヤじゃない。
誰かがこの光景を見たら変に思うかも知れないけど、
アタシは先生を尊敬してる。
先生が望む事ならアタシは何でもする。
他の人がどう思おうと関係ない。
アタシは八代乙夢が好き
80
:
スタジオと司会者(第43回)
:2022/07/28(木) 23:58:11 ID:aB7J0jUo0
投稿者:九十九桃美
「こちらでしばらくお待ち下さい。」
担当者に案内されて、スタジオのセット裏で
アタシと八代先生はスタンバイ♪
スタジオの中からは司会者の軽妙な喋りと
たくさんの女性の笑い声が聞こえてくる。
全国ネットの超人気テレビ番組の生放送、
緊張するなと言うほうが無理だよね。
先生はずっとアタシの手を握ってる。
こんなに落ち着かない先生の姿を見るのは初めてかも?
アタシはいつも堂々としてる先生しか見てないから。
でも、セットって案外いい加減な作りなんだ・・・。
見えない所にお金掛けても仕方ないもんね。
「・・・・では、今話題の“VTO”の創始者である
八代乙夢さんに登場して頂きましょう! どうぞ〜!」
スタジオの中の司会者の紹介と同時に担当者が合図した。
八代先生だけが先に出て行く。
頑張れ先生!
スタジオから大きな拍手が。
アタシは生徒代表として後で紹介される段取りなの。
「いや〜、ようこそおいで下さいました。
なかなか色っぽい女性ですなあ〜。
今日は僕も張り切っちゃおうかな?」
「はじめまして、八代乙夢と申します。」
「どうぞお座り下さい先生。」
「はい、ありがとうございます。」
「失礼ですが、先生はおいくつなんですか?」
「28歳です。」
「ご結婚は?」
「・・・・独身です。」
「ほう、それは奇遇ですな。僕も独身なんですよ。
2年前に浮気がバレて妻に離婚されましてねぇ。」
スタジオ観覧客は大爆笑。
「え〜、それではVTOとはどういうものなのか、
先生からみなさんに解説してもらいましょうか。」
81
:
スタジオと司会者(第43回)
:2022/07/28(木) 23:59:18 ID:aB7J0jUo0
「はい、分かりました。VTO(ヴトウ)は
ダンスを意味する“舞踏”と戦いを意味する“武闘”
を掛け合わせた造語で、舞うように闘うという意味で
“舞闘”と名付けました。」
「舞うように闘うんですか。先生はダンスや格闘技の
大会で何度も優勝してるんですってねぇ。」
「はい。」
「これは女性の護身術の一種と思っていいんですか?」
「そうですね。VTOは男性には教えていません。」
「先生は実際に男性に襲われた経験というのは?」
「・・・・・何度かあります。」
「VTOは役に立ちましたか?」
「もちろんです。」
「男性が武器を持ってた事は?」
「女性を襲うような男性は必ず武器を持っています。
VTOではあらゆる武器を想定して訓練しています。」
「相手がどんな男性でも大丈夫なんですか?」
「よほどの格闘技経験者でない限りは・・・。」
「すごい自信ですなぁ先生は。僕はこれでも若い頃は
レスリング部に入ってたんですよ。」
「そうですか・・・。」
「今でも腕相撲なら大抵負けませんな。」
「私は腕力では負けると思います。」
「腕力では? 先生は何なら僕に勝てるんですか?」
「・・・・実戦ならば。」
「・・・・・・・・ハハ、面白い女性ですなあ先生は。
ちょっと生徒さんの話も聞いてみましょうか。
生徒さん、どうぞ〜!」
やっとアタシの出番だ♪
82
:
CMとレオタード(第44回)
:2022/07/29(金) 15:38:51 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
担当者さんの合図でアタシはセットに入った。
九十九桃美としての初テレビ出演だ♪
でも、意外とどうって事ないなぁ・・・・。
やっぱりピンク・ザ・ピンチでいつも注目されてるし、
カメラで撮られる事も慣れてるからかな?
拍手の中、観覧席以外の人が気になった。
あれっ?????
オジサマがいる?????
万我一錠刑事がスタジオの隅で親指を立てて
ニッコリ笑ってアタシを見てる!!!
オジサマ、家で療養中じゃなかったの?
アタシはちょっとビックリしたけど、
表情は変えずに八代先生の隣りに座った。
「こんにちは。これはまた可愛いお嬢さんだねえ。
お名前と年齢を教えて下さい。」
司会の田島豪さんの不自然な髪型に目が行ってしまう。
どうしてカツラだと日本中のみんなが知ってるのに
わざわざ被ってるんだろう?
別にハゲてても誰も気にしないと思うんだけど・・・。
「こんにちは〜。九十九桃美、19歳です♪」
「九十九さんは先生を尊敬してますか?」
「はい。アタシの憧れの女性です。
アタシも先生みたいに強くて色っぽい
女の人になりたいと思っています。」
「先生、九十九さんのVTOのセンスはどうですか?」
「ウチの生徒の中ではトップの実力を持っています。」
「では九十九さんも僕より強いのかな?」
さっきから田島さんは何が言いたいんだろう?
レスリング経験者である事を自慢したいのかなぁ?
「・・・・おそらく九十九さんが本気を出せば
田島さんを5秒で殺せると思います。」
八代先生の一言でスタジオの空気が凍り付いた。
先生も田島さんの態度にはカチンと来てたんだ・・・。
田島さんの、テレビでは絶対見られない表情を見た。
83
:
CMとレオタード(第44回)
:2022/07/29(金) 15:40:08 ID:vhYoE2Qw0
笑顔なのに目が全然笑ってない。
「・・・・それは大したもんですなあ、ハハハ。
VTOはとても素晴らしい護身術という事ですね。
先生にはあの有名なピンク・ザ・ピンチですら
かなわないかも知れませんな。
それではここでCM入れまぁす。」
明るく振舞ってはいるが、かなり頭に来ているようだ。
八代先生に挑発的な事を言う自分のほうが悪いのに。
スタッフがバタバタとセットチェンジを始めた。
CM明けは八代先生の演舞を見せる事になってる。
先生がジャージを脱いでレオタード姿になるのを
田島さんはチラチラ見てる。
腹が立っててもそういうトコは見逃さないのネ☆
八代先生はさすがに本番には強いなあ・・・。
本番前はあんなに緊張してたのに、今はまるで別人。
セットチェンジが終わり、演舞とファイトが出来る
スペースの前にアタシと先生と田島さんは立った。
どうもオジサマが視界に入って落ち着かない。
そう言えばオジサマと八代先生ってまだお互いに
会った事ない筈だから、後で紹介しなきゃね。
CMが明けると先生のVTO演舞が日本中に流れた。
何人の女性が憧れ、何人の男性が興奮しただろう?
こないだスクールで見た演舞より素晴らしい
先生が大きく脚を開く度にアタシがドキドキする。
田島さんもまばたきを忘れて先生に見入ってるヨ☆
どうしてこんなにエロティックかつ凛々しい芸術的な
演舞が出来るのかアタシのレベルでは解らない。
次はいよいよ先生とアタシのファイト。
少しはいい所を見せられるかなぁ?
桃美、ファイト!
84
:
出会いとヤラセ(第45回)
:2022/07/29(金) 15:46:43 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
再びCMに入り、アタシもジャージを脱いで
八代先生とのファイトの準備を始めた。
司会の田島さんも八代先生の演舞を見て
VTOが優れた格闘技である事を認めたみたい。
さっきまでの目の奥の怒りが消えている。
「さあ、それではVTOの先生と生徒の
実戦形式でのファイトを見せて頂きましょう!
九十九さん、準備は出来ていますね?」
「はい! いつでも行けます。」
「では、僕が審判を務めさせて頂きます。
両名、位置について下さい。」
アタシと先生は広いスペースに向かい合って立つ。
練習の成果がちゃんと出せるかな?
テレビに映ってる事は平気だけど、
ある程度ハイレベルなファイトを見せないと
先生にも恥をかかせる事になる。
「両名、礼!」
さあ、ここからは敵。負けないゾ!
「ちょっと待ってくれないかぁ?」
あれ、オジサマの声だ。
スタジオ中の視線がオジサマに集まった。
「師匠と弟子が戦っても面白くないんじゃないか?
結果は見えてるんだから意味がないだろう?」
「ちょっと・・・あなたは誰なんですか?」
田島さんの口調が何か不自然。
もしかして事前に打ち合わせしてたの?
スタッフも誰も止めないなんておかし過ぎる。
「俺は万我一錠。桃美ちゃんの知り合いだ。」
「本当ですか? 九十九さん。」
「あ、はい。アタシのお父さんの親友です。」
「関係者の方という事ですね? それで万我一さん、
あなたはどうしろと言うのですか?」
「俺の仕事は刑事だ。もちろん格闘技経験者だが、
実は最近までケガで入院していて今も療養中なんだ。
しかしそれでも女に負けるとは思えない。
どうだろう? 俺を先生と戦わせてくれないかな?」
オジサマ、一体何を言ってるの???
85
:
出会いとヤラセ(第45回)
:2022/07/29(金) 15:48:37 ID:vhYoE2Qw0
「九十九さん、万我一さんが入院してたと言うのは
ウソじゃないんですね?」
「はい、それは本当ですけど・・・」
「解りました。では先生、この挑戦を受けますか?」
八代先生は無表情でオジサマを見ていた。
田島さんはこの展開に持って行くために
わざと挑発的な事を言ってたのかも・・・・。
「お断りします。」
八代先生は冷静にそう答えた。
「どうしてですか? 先生。VTOの強さを
証明するチャンスじゃないですか!」
と田島さんは先生に突っ掛かる。
「ケガ人と戦っても仕方ないですし、こんなヤラセに
付き合うほど私はお人好しじゃありません。」
フフ、さすが先生、ちゃんと見抜いてる☆
「先生、本当は男と戦った事なんてないんだろ?」
オジサマは八代先生の強さを知らないんだ・・・。
「万我一刑事、九十九さんから話は聞いてます。
ずいぶん型破りな刑事さんだそうですね。
どういうつもりか知りませんが、私が貴方を
再入院させたら税金の無駄遣いになります。」
「大丈夫さ。俺を倒せば先生の強さに憧れて
たくさんの生徒が入って来る。先生が納める税金で
俺の入院費くらいまかなえるって寸法だ。」
オジサマの言う事も一理あるなあ・・・。
先生がアタシを倒しても逆にヤラセだと思われるだけ。
刑事であるオジサマを倒したほうが説得力あるかも?
「万我一刑事は私を倒して何の得があるのですか?
男が女を倒しても尊敬されるとは思えませんけど。」
「もし俺が勝ったら先生と1度デートしたいね。」
デート???
オジサマ、八代先生にまで手を出す気?
彼女ならたくさんいるじゃない・・・・・。
先生はどうするつもりなんだろう?
「・・・・私の事がお好きなんですか?」
「俺は強くてセクシーな女に目がなくてね。」
今、視聴率グングン伸びてるだろうなあ・・・。
全国ネットの生放送で“告白”してるんだから。
ケンカを売る理由が「デートしたいから」って、
さすがオジサマ・・・・・・。
86
:
対決と約束(第46回)
:2022/07/29(金) 15:51:31 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
「さあ、どうしますか先生?」
田島さんはどうしても2人に対決してもらいたいみたい。
アタシもちょっとこの対決、見てみたくなって来たゾ♪
「・・・・・恥をかいても知りませんよ。」
「挑戦を受けてくれるんだな? もしも俺が
勝ったら先生とデートという約束は守ってもらうぜ。」
「そんな約束はしてません。」
「まあ、いいさ。とにかくやろう♪やろう♪」
入院していたにも関わらず浅黒い顔のオジサマは
ニコニコしながら前に出て来た。
上着を脱ぐと、鍛え抜かれた男の筋肉があらわになる。
まだキズ跡は残ってるけど、今こうしてここにいる事
自体が普通では考えられない。
オジサマの回復力はまるでマンガのヒーローだね☆
「テレビをご覧の皆様、大変なハプニングが
起こりました。VTOの達人である八代乙夢先生に
男性刑事が突然“挑戦状”を叩き付けたのです。
僕も長い間この番組をやって来ましたが、こんな事は
前代未聞です。一体どうなってしまうのか?」
この田島さんって人、わざとらしい司会者だなぁ・・・。
先生は表情を全く変えてないけど、オジサマに
ケンカを売られたと同時にデートの申し込みをされた
気分は複雑だろうなと思う。
「では、九十九さんがジャッジをお願いします。」
「あ、そうか。アタシがやるべきですよね。
オジサマ、ルールはどうするの?」
「俺はVTOのルールで構わないぜ。
だが詳しくは知らんから反則技だけ教えてくれ。」
「股間への攻撃と目潰し・噛み付き
以外なら何でもありだよ。」
「そうか。案外簡単だな、桃美ちゃん。」
先生とオジサマは向かい合って立った。
オジサマは先生にウインクして見せる。
先生は当然無視・・・。
先生はそういうふざけた態度の男が一番嫌いなのに〜。
「それでは始めます。両名、礼!」
87
:
対決と約束(第46回)
:2022/07/29(金) 15:53:28 ID:vhYoE2Qw0
アタシの号令に2人は頭を下げた。
「始め!」
最強の男と最強の女の戦いが始まった!!!!
日本中が今テレビ画面に釘付けになってる筈。
先制攻撃を加えたのは八代先生。
激しい突きや蹴りでオジサマの反撃を許さない。
でもアタシも練習で動体視力が鍛えられたから
八代先生の動きがハッキリ見える。
オジサマにも先生の動きは見えているらしく、
全ての攻めをガードしながら反撃の隙をうかがってる。
ちょっと先生と距離を置くオジサマ。
「なるほど。女にしちゃなかなかやるじゃないか。」
「そちらもケガ人とは思えない動きね。」
88
:
寝技と判定(第47回)
:2022/07/29(金) 15:55:22 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
アタシが一番興奮してるかも知れない・・・。
ほぼ互角の実力の2人の対決。
オジサマはまだケガが完治してなくて、
本来の実力じゃないのに八代先生に全然負けてない。
あっ!!!
先生のハイキックを受け止めたオジサマが
強引に先生を倒して寝技に持ち込んだ。
捕まってしまうと男の力に女がかなう筈がない。
八代先生はこのピンチをどうやって切り抜ける?
というか・・・何か、すごくエッチな感じがする。
汗に濡れたカラダで男と女が激しく絡み合う姿は
ちょっとテレビの生放送ではギリギリかも?
先生に下からの攻撃をさせないために
オジサマは先生の胸に顔を密着させている。
先生の顔がちょっと赤いのは苦しい体勢のせいなのか、
女性としての恥じらいなのかは判らない。
何とか体を反転させて逃れようとする先生。
オジサマは後ろから執拗に首を絞めようとするが
先生も簡単には隙を与えない。
逆にオジサマに関節技を仕掛けに行きチャンスを狙う。
さっきから何度もオジサマの手が先生の胸を触ってる。
この勝負を受けたのは八代先生自身だし、
その行為はセクハラでもルール違反でもない。
ただ、同じ女性としてドキドキするのは事実。
まして2人ともアタシの尊敬する人なんだから。
寝技の攻防が続くうちに、先生のレオタードが
だんだん食い込んで来た・・・・。
白いお尻の片方が丸見えになってるぅ〜☆☆
ちょっと前のほうもアブナイよぉ〜〜〜〜〜!!!
どうしよう?
もうファイト終了させたほうがいいかな?
チラッと司会の田島さんを見ると
手でバツを作って首を振っていた。
ヤバイから試合をストップさせろという意味だ。
89
:
寝技と判定(第47回)
:2022/07/29(金) 15:56:27 ID:vhYoE2Qw0
アタシが声を出そうとしたその時、オジサマが
片手で先生のレオタードの食い込みを直した。
オジサマ?????
試合中に何でそんな事を?
一瞬の隙を見せたオジサマは先生に関節技を決められ、
あえなくタップ(降参の合図)をした。
「勝者、八代乙夢・・・。」
アタシはちょっと信じられない逆転劇に
あぜんとしたまま判定を下した。
誰が見てもオジサマが完全に勝っていた試合だ。
八代先生は何も言わずにスタジオを出て行った。
「繋がった骨がまた折れるかと思ったぜ〜♪」
オジサマは照れ笑いをしながら立ち上がる。
「俺が負けたから先生とのデートは無理って事だな。」
「・・・・予想外の展開にスタジオの観覧客は
静まり返っています。VTOはこの屈強な男性刑事を
本当に降参させてしまいました。これはヤラセでは
ありません。九十九さんもありがとうございました。」
「あ、いえ・・・。」
「ここでCMをご覧下さい。」
CMに入ると、アタシはすぐオジサマのそばに行った。
「オジサマ、どうしてあんな事を?」
「何の事だい?」
「八代先生のレオタードを直したでしょ?」
「・・・・・勝ち負けより大切な事はあるさ。」
オジサマが女性にモテる理由が解った気がした。
万我一錠刑事はやっぱり生身のスーパーヒーローだ
90
:
アクビと伝言(第48回)
:2022/07/29(金) 16:02:30 ID:vhYoE2Qw0
投稿者:九十九桃美
控え室に戻ると八代先生はもう着替え終わって
1人静かに鏡を見ていた。
アタシも早く着替えて帰る仕度しなきゃ。
メイクを落とし始めると先生が話し掛けて来た。
「九十九さん、“彼”は何か言ってた?」
「あ、はい。勝ち負けより大切な事はある、と。」
「そう・・・・。」
「オジサマに今日の事は連絡してあったんですけど、
まさかスタジオに来るとは思ってなかったんです。
刑事さんだからテレビ局にも知り合いが多くて、
この番組のプロデューサーも知ってたんだそうです。
それで急遽ああいう形で飛び入り参加したんだと
言ってました。すみません、アタシのせいで・・・。」
「九十九さんが謝る事ないわ。
貴方も何も知らなかったんでしょ?」
「・・・はい。」
「勝ったらデートと言ったのも予定通りだった訳ね。」
「いえ、あれは先生の演舞を見て
本当にデートしたいと思ったそうですヨ。」
「え・・・・ウソよ、そんな事。」
「先生、オジサマはウソつくような人じゃないです。」
先生はそのまま黙り込んでしまった。
日本中の人が観てる前でデートを申し込まれたんだから
女性としては嬉しいような迷惑なような話だよね。
でも結果的に先生が勝ったんだし、
オジサマも諦めてたみたいだし。
アタシはメイクを落とし終えて更衣室の中に入った。
そう言えば、アタシ着替えた意味なかったなぁ・・・。
「九十九さん。」
カーテンの向こうから先生が再び話し掛けて来た。
「はい、先生。」
「・・・・私、完全に負けてたわね。」
「それは、オジサマは警察でもトップクラスの
格闘技術を持ってる人ですから、仕方ないです。」
「私もまだまだって事かな・・・。
ケガ人だと思って甘く見てたかも知れない。
今日はスクールに戻ったら練習付き合ってね。
91
:
アクビと伝言(第48回)
:2022/07/29(金) 16:05:41 ID:vhYoE2Qw0
何か寝技対策を考えなきゃ。」
「はい、お付き合いさせて頂きます!」
控え室を出たアタシと先生がロビーを通ると、
オジサマと番組スタッフが談笑していた。
八代先生は一瞬オジサマを見て立ち止まったけど、
何も言わず無表情のままその場を離れた。
八代先生の高級車をアタシが運転して、
先生は後部席で目をつむっている。
疲れて眠ってるのかも?
ふああああああああ・・・・・・・・・あ(涙)
アタシも昨日の夜はほとんど眠ってないから
テレビ局を出た途端にアクビが出始めた。
あ、トラックの運転手のお兄さんに見られてた☆
「九十九さん、運転交代しましょうか?」
「だ、大丈夫です。先生はゆっくりしてて下さい。」
先生にもルームミラーで見られてた・・・アハハ〜♪
「九十九さんは今好きなヒトっているの?」
「はい♪ こないだやっと新しい彼氏が
出来たトコです。あんまり会えないんですけど。」
「そう・・・私は恋愛はどうもダメね。」
「先生、今日の放送を観て先生のファンになった
男性もいっぱ〜〜〜いいると思いますヨ♪」
「フフ、ありがとう。せっかくテレビに出たんだから、
VTOを始める女性も増えるといいわね。」
「そうですね〜。」
先生の顔にようやく笑顔が戻ってホッとした。
「九十九さん、万我一刑事に・・・
伝えてほしい事があるんだけど。」
「はい。」
「あんな勝ち方では私は納得出来ないの。
何か借りが出来たみたいでイヤだから、
まだ気が変わらないんだったら約束の事、
私のほうは別に受けても構わないと伝えて。」
「オジサマとデートするんですかぁ???」
「・・・・・1回だけよ。」
「わあ〜〜〜〜、オジサマ喜びますぅ!!!
電者、早速オジサマにメールしといて♪」
「了解、桃美。」
もしオジサマと先生がカップルになったら・・・・
何だか凄くワクワクするのは何故だろう?
両親がいないアタシにとっては
万我一錠刑事は“お父さん”みたいな存在だし、
八代乙夢先生は“お母さん”みたいな存在。
2人が仲良くなってくれたらこんなに嬉しい事はない。
ヒ ャ ッ ホ ーーーーーーーーーー ィ
92
:
返信とセーラ(第49回)
:2022/07/30(土) 14:33:04 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
「桃美、万我一刑事からメールの返信が来たぞ。」
と電者。 さすがオジサマ、早いなぁ・・・・。
「電者、先生にも聞こえる大きさで読んで。」
「解った。」
アタシは運転しながら、ルームミラーに映る
八代先生の表情をチラッと見た。
「桃美ちゃん、メール見た。
先生が俺とデートしてもいいと言ったそうだが、
悪いけど断わっておいてくれないか?」
えっ? どうして???
「俺が勝ったらデートという約束だったんだから、
負けてデートするのは俺の主義に反する。
先生には気持ちだけ頂いたと伝えてくれ。」
オジサマ・・・・・。
「先生も生放送という事で緊張してただろうし、
俺もまだベストコンディションじゃなかった。
出来ればもう1度先生と戦ってみたい。
その時もし俺が勝ったら今度こそデートしたいなあ。
・・・・・・・・とメールはここまでだ、桃美。」
「ありがと、電者。」
ある意味、オジサマらしいかも・・・・・。
ただの女ったらしじゃない所がカッコイイんだもんネ。
でも、せっかく先生が心を許しかけたのになぁ〜。
オジサマも先生も独自のプライドを持ってる大人だし、
アタシみたいな子供の思い通りになる訳がない。
先生、何にも言わないけど怒ってるのかな?
「・・・・・九十九さん、また伝言お願いね。」
と、先生はとても落ち着いた感じで話し始めた。
「私はいつでも万我一刑事の挑戦を受けます。
お互いベストの状態でまたファイトしましょう。
私が勝った時に何をしてもらうかは考えておきます。」
八代先生、やっぱり大人だなぁ・・・・
ス・テ・キ
アタシと先生がVTOスクールに戻ると、
セーラー服を着た美少女が受付の所に立っていた。
93
:
返信とセーラ(第49回)
:2022/07/30(土) 14:34:24 ID:72i1z69Y0
彼女の名前は黒部ミア(くろべ・みあ)。
アクション女優を目指す17歳の高校生だそうで、
今日の「GO!GO!わいど」を観て、
VTOがどうしても習いたくなったんだって☆
ストレートの長い髪がキレイな、真面目そうなコだ。
アタシと先生のファイトが見れなくて残念だった
と言うので目の前でたっぷり見学させてあげたゾ♪
アタシも練習の成果があったのか、八代先生に
完全にやられっ放しにはならなくなったかも?
先生もアタシの上達ぶりにちょっと驚いてる。
でも寝技に持ち込まれると先生にはかなわない。
寝技ってちょっと感じちゃうから恥ずかしいナ・・・。
ミアちゃんは早速明日から入門する事になった。
また1人、可愛い後輩が増えて嬉しい〜♪
何か、今日は1日いろいろあって、もうクタクタ。
帰ったらすぐ寝よう。
おウチに帰還。
眠ぅい。
おやすみ・・・・。
94
:
巨乳と女優(第50回)
:2022/07/30(土) 14:37:12 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
セーラー服の時はまったく気付かなかったけど、
ミアはすごくバストの豊かな女の子だった。
顔立ちが清純そうな感じなので超アンバランス☆
彼女が更衣室で着替えてる時はつい見てしまうし、
いつもレオタードがはち切れそうでドキドキする。
さすが女優さんを目指してるだけあって、
普通の人とはオーラのレベルが違うなあ・・・
八代先生もミアを気に入ってるみたいだヨ。
練習も真面目にやるし、人なつっこい性格なので
あっという間にVTOスクールのアイドルになった。
アタシにも積極的にいろんな事を訊いて来るので、
先輩気分がちょっとだけ気持ちイイ♪
彼女ならきっと夢を叶えるだろうと思う。
ある日、クミとカラオケに行こうとしてたら
街でセーラー服のミアと偶然会ったので、
3人で歌いに行く事になった。
ミアはクミともすぐに打ち解けた。
クミは割と人見知りするタイプなので
こんなにすぐに心を開くのは珍しい。
「何か彩葉ちゃんのコト思い出すね。」
とアタシはクミに耳打ちする。
「あ、うん・・・そうだね・・・・・・。」
クミの日記サイトで知り合った女優志望の
女子高生の名前が“彩葉”(いろは)だった。
彩葉ちゃんとは直接会った訳じゃないんだけど、
何となくこうして3人で盛り上がってると
あの時の楽しさを思い出すの。
「桃美センパ〜イ、今クミさんと何の
ナイショ話をしたんですかぁ?」
「ミアは“彩葉”って名前に聞き覚えない?」
「イロハ? 初めて聞く名前です。」
「そうかぁ、やっぱり別人だよネ。」
アタシはミアに彩葉ちゃんの事を説明した。
「インターネットってそういう事よくありますね。
ある日突然音信不通になる人はいます。」
95
:
巨乳と女優(第50回)
:2022/07/30(土) 14:38:12 ID:72i1z69Y0
「ミアはどうしてアクション女優になりたいの?
ミアくらいの顔とボディがあれば、普通の女優や
タレントになら今すぐにでもなれそうなのに。」
「わたし、ハリウッド女優のミッシェル・クイーン
さんの大ファンなんですよ〜。
日本だとアクション女優ってB級なイメージだけど、
クイーンさんみたいなヒトを見てるとアクションも
演技の大切な要素だと思えるんです。」
「・・・・ミアちゃんってすごいね〜。
あたしもミアちゃんの夢、応援するね。」
「ありがと〜、クミさん。」
ホント、年下なのにしっかりしたコだなぁ・・・。
「わたし、テレビ観て思ったんですけど、
桃美センパイはピンク・ザ・ピンチに似てますね。」
あ、来た☆
「実はアタシがピンク・ザ・ピンチなの〜♪
こないだ八代先生にも同じ事言われたヨ。」
「クミさんはどう思います?」
「・・・・あ、あたしはモミーとピンピンが
そんなに似てるとは思わないな。モミーのほうが
ちょっと細いような気がするし・・・・。」
クミ、もしかしてアタシをかばってくれてるの?
でも変身前のほうがちょっと細いのは事実。
ピンク・ザ・ピンチになると、強化服の
「気」の増幅作用の影響で少し筋肉が張るからネ。
「桃美センパイは素でめちゃくちゃ強いから
変身する必要ないですよねぇ?」
「そういう事〜♪」
アタシは心の中でリカの事を思い出してた。
いくら素で強くても殺人兵器の前では無力。
スーパーヒロインにならなきゃ
あの巨大なレーザーロボは倒せなかったし、
ナゾナンジャーとだって素のままでは戦えない。
アタシより強いかも知れないオジサマだって
銃で心臓を撃ち抜かれれば簡単に死ぬ。
人間って本当に弱い生き物だよね・・・。
弱いからこそ「力」を持ってる者が
助けて守ってあげないとネ
96
:
検査と疑惑(第51回)
:2022/07/30(土) 14:40:34 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
すっかり暗くなっちゃった♪
アタシたち3人は駅まで一緒に歩いていた。
「あ、センパイ、わたし他に用事があったんだ。
今日はここで失礼しま〜す。」
「ああ、そうなの? ミア、またね〜」
「ミアちゃん、バイバ〜イ♪」
ミアの姿が角を曲がって見えなくなり、
アタシとクミがまた駅のほうに歩き始めると
前方にオジサマの姿が見えた。
「オジサマ〜♪」
アタシはオジサマに手を振って存在を知らせる。
早足で近付いて来るオジサマの表情が妙に険しい。
まさか・・・・刑事の顔?
「桃美ちゃん、今セーラー服のコと一緒だったな。」
「うん。VTOスクールの後輩の黒部ミアちゃん。
あのコがどうしたの? オジサマ。」
「友達かぁ・・・・・それならいいんだ。
おう、クミちゃん久し振りだなぁ〜。」
「ご無沙汰してます〜万我一さん。
こないだのテレビ観ましたよ♪」
「いや〜、カッコ悪い所を見られちゃったなあ、
ワハハ・・・・・・・ところで、ちょっと2人に
大事な話があるんだが、これからいいかい?」
「はい、あたしはいいですよ。」
「アタシも別にいいヨ、オジサマ。」
何だか、様子がおかしいな・・・・・。
アタシたちは近くにあったオジサマの車の後部席で
その“大事な話”を聞く事になった。
運転席のオジサマの横顔が街のネオンで陰になる。
「・・・・実はな、最近“行方不明者”が
急に増え始めてるんだ。例の巨大ロボット事件で
数百人の身元不明者が出たおかげで
なかなか捜査が進んでないんだが、
どうやらスポーツ関係者がたくさん消えてる。
特に格闘技をやってる若者がな。」
97
:
検査と疑惑(第51回)
:2022/07/30(土) 14:41:32 ID:72i1z69Y0
「・・・・オジサマはその人たちが
何者かに誘拐されてると言いたいのね?」
「ああ、俺はそう思ってる。夜逃げや自殺なんかで
行方不明になるケースもあるから偶然かも知れん。
ただ、あちこちで聞き込みをしているうちに
“セーラー服の美少女”が浮かび上がって来たんだ。
スポーツ関係者が行方不明になる少し前に現われ、
行方不明になったと同時にその少女も消えてる。」
「万我一さんはミアちゃんを疑ってるんですか?」
クミが思わず口をはさんだ。
「さっき、俺と目が合った途端に突然逃げ出した
ような気がしたんだよ。友達を疑ってすまないな、
クミちゃん。だがこれが俺の仕事だ。2人とも
彼女の事で知ってる事を全部教えてくれないか?」
「・・・・うん、解ったオジサマ。」
アタシはオジサマにミアの事を全部話した。
さっき歌ったカラオケの曲名や食べたものまで。
電者が録ってた映像や声もコピーして渡した。
あの可愛らしいミアが誘拐事件に関わってるなんて、
アタシは信じたくない。
クミはうっすら涙を浮かべてる・・・・。
アタシはクミの肩をそっと抱いてなぐさめた。
さっきまでの楽しかった時間が幻のような気がする。
「2人ともありがとう。今日は家まで送ろう。」
オジサマはそう言うと、車を発進させた。
98
:
誘惑とボンテージ(第52回)
:2022/07/30(土) 14:44:02 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
オジサマの勘はやっぱり当たってた。
翌日、黒部ミアはVTOスクールの
若い生徒25人と共に消えてしまった。
さすがに今回は行方不明者の人数が多いので
警察も誘拐事件として本格的に捜査を開始した。
八代先生とオジサマは久し振りに再会した訳だけど、
対決やデートをしてる場合じゃない。
夕方のニュースでは、街の監視カメラが捉えていた
黒部ミアらしきセーラー服の少女や生徒たちが
観光バスに乗り込んで行く映像が流された。
黒部ミアというのもおそらく本名ではない筈。
誘拐の目的は一体何なの?
オジサマの話だと身代金の要求も一切ないと言う。
何の手掛かりも得られないまま時が流れて行った。
学校が夏休みに入ったある日、
アタシは大好きな納豆をお箸でかき回しながら
テレビ「GO!GO!わいど」を観ていた。
おやつに納豆食べるのってヘン?
今日のゲストは眉墨(まゆずみ)総理大臣かぁ。
司会の田島さん、かなり緊張してるみたい。
さすがに八代先生を挑発したような無礼な態度は
総理大臣相手には出来ないみたいね。
何しろ日本で一番“権力”を持ってる人だもの。
でも政治の話は難しくてアタシには解らない。
今日のトークはつまんないなぁ・・・・・。
アタシがビデオでも観ようかとリモコンを取った時、
テレビの中から悲鳴が聞こえた。
また、何かヤラセの演出?
銀の仮面に黒タイツの集団がスタジオに入って来た。
「何だ君たちは?」
それが田島さんの最期の言葉となった。
銀仮面の1人の鋭いツメが田島さんの喉を貫く。
テレビの生放送でこれほど残酷な場面が
流れた事は過去にないかも知れない。
眉墨総理の白髪が血しぶきを浴びて赤く染まる。
99
:
誘惑とボンテージ(第52回)
:2022/07/30(土) 14:45:05 ID:72i1z69Y0
これは、ヤラセじゃない。
「みなさぁん、我々に逆らうとこうなる事を
よ〜く覚えておくのね。アハハハハハハ・・・」
聞き覚えのある、この声は・・・・・・
画面にゆっくりと映り込んで来たのは、
黒いボンテージ服を着た黒部ミアだった。
巨乳が今にもはみ出しそうな衣装は戦闘服???
「わたしはドクロイドのブラック・ザ・キャット。」
犯罪組織ドクロイド!!!!!
黒部ミアはドクロイドの一員だったんだ!
どうやら彼女がこの一団のリーダーらしい。
「このテレビ局は我々ドクロイドが占拠した。
眉墨総理に直接話したい事があって来たのよ。」
眉墨総理は顔に付いた番組司会者の血液を
ハンカチで拭きながらミアを睨んだ。
「私は日本の総理として犯罪者には屈しない!」
「はいはい。」
ミアが指を鳴らして合図をすると、
観覧客の1人が見せしめに殺された。
銀仮面の額にある黒十字から何か
光弾のようなモノが走ったように見えた。
あの黒十字、中心に緑色の玉が埋め込まれてて、
確かレーザーロボの額にも同じモノがあった。
ドクロイドのシンボルマークなのかも知れない。
「総理、あなたが反抗的な態度を取る度に
一般人を1人1人殺して行くわよ?」
「・・・・解った。話を聞こう。」
「日本を、ドクロイドに譲ると国民に宣言して。」
「・・・・・・・バカな!」
本気で言ってるの? ミア・・・・・・・。
100
:
日本と総理大臣(第53回)
:2022/07/30(土) 14:47:18 ID:72i1z69Y0
投稿者:九十九桃美
「総理、口の利き方に気をつけなさいよ。」
また1人、ミアの合図で観覧客が殺された。
「国民の命を守るのが総理の仕事なんじゃないの?」
「私の仕事は日本の国を守る事だ。
そんな要求は呑めない。君たちが何者かは知らんが、
時間の無駄だ。早く私を殺せばいい。」
眉墨総理の立場はよく解る。
イエスでもノーでも結果は同じなんだから。
もしドクロイドがこの国を支配したら、
どのみち逆らう者は皆殺しになるだろう。
「総理を殺したって新しい総理が生まれるだけ。
あなたの命なんて何の価値もないのよ。
大事なのは今のあなたが持ってる権力と影響力。
総理が我々ドクロイドに屈服する姿を
全国民に生放送で見せる事に意義があるの。」
「君がドクロイドとやらのリーダーなのか?」
「わたしは首領さまの使いに過ぎない。
偉大なる首領さまがこんな所に来る必要はないわ。
眉墨総理などとは格が違うお方なのよ。」
「ただの使いの人間に国を譲り渡せる訳がない!」
「あら、そう。」
そしてまた1人、死者が増えた。
銀仮面=ドクロイド兵が数人で死体を運んで
田島さんの死体の上に積み上げる。
総理は目をつむって沈黙している。
「あなたが日本を譲ると宣言するまで、
10分置きに1人ずつ誰かを殺して行くわ。
このテレビ局には芸能人や著名人もいるから、
そのまま黙ってるなら彼らも死ぬ事になる。
テレビを観てる日本国民はどう思うかしらね?」
こんな事をしても、そう簡単に日本が
ドクロイドのものになるとは思えない。
101
:
日本と総理大臣(第53回)
:2022/07/30(土) 14:49:00 ID:72i1z69Y0
これはレーザーロボの時と同じで“宣伝”ね。
ミアみたいな美少女をリーダーにしたのも
宣伝効果やインパクトを考えての事に違いない。
ミアはきっとドクロイドに利用されてるんだ。
アタシが行くしかない!
「電者!」
テレビ画面から目を離して後ろを見ると、
さっきまでそこにいた筈の大電者がいない。
「あれ? 電者・・・・」
大電者はキッチンから何かを持って出て来た。
「桃美、戦いの前には糖分摂取だ。」
あ、“ピンク・ザ・ピーチ”ね♪
アタシは落ち着いてその缶ジュースを飲んだ。
そして大電者から小電者を取り出し、変身。
「ピンク・ザ・ピンチ!」
「OK! 桃美。」
ボクは一瞬でピンク・ザ・ピンチになり、
高速飛行が可能な万能マシーン“ピンチランナー”
の格納庫に直接通じる秘密の穴に飛び込んだ。
これが滑り台みたいでけっこう気持ちイイ。
ピンチランナーに乗り込み、出撃準備開始。
「ピンチランナー発進!」
ボクの指令で正面のゲートが開きトンネルが現われ、
ピンチランナーはレールの上を滑走し始める。
トンネル内の滑走路は裏山の森の中まで続く。
ピンチランナーの発進場所が九十九研究所
ではないように見せかけるための工夫なんだ。
もちろん車体にはレーダーに感知されないような
特殊な仕掛けもしてあるし、ボクの透明化能力で
車体ごと姿を消せば誰かに目撃される事もない。
ピンチランナーは大空に飛び出し、現場に向かう。
テレビ局までなら3分と掛からない。
ピピピピピピピ・・・・・・・・・・・
ピンチシグナルだ!
信号の発信地点はテレビ局。
「万我一刑事、もう現場に着いて大暴れ
してるようだな。ボクが行くまで死ぬなよ。」
102
:
戦闘員と証拠隠滅(第54回)
:2022/07/30(土) 22:56:02 ID:rZlZSuVg0
投稿者:九十九桃美
テレビ局の近くまで来たので透明になって低空飛行し、
周囲の状況をチェックする。
ドクロイド兵が数十人で局の周囲を見張っている。
警察はかなり離れた所で様子をうかがっているが、
すでに何人か死傷者も出ているようだ。
万我一刑事はどこにいるんだろう?
ボクは警察が陣取っている場所のすぐ近くに
ピンチランナーを着陸させた。
透明化を解いてボクが姿を現すと歓声が起こる。
「ピンク・ザ・ピンチが来てくれたぞ!」
「これでもう大丈夫だ!」
指揮官らしき太ったヒゲの男がボクに歩み寄って来る。
「ピンク・ザ・ピンチさん、私がここの責任者の
犬塚(いぬづか)です。」
ボクは軽く握手をした後、犬塚さんから状況を聞く。
万我一刑事はまた独断で動いているらしい。
信号はテレビ局の中をゆっくり移動しているから、
おそらく通風孔か何かを使っているのだろう。
犬塚さんと打ち合わせをし、ボクは再び透明化した。
ドクロイド兵の能力がよく分からないうちは
あまり無茶な事は出来ない。
局内には総理を始め、多くの人質がいるのだから。
ボクはドクロイド兵にバレないように局内に潜入。
眉墨総理大臣のいるスタジオへ向かう。
「GO!GO!わいど」に出演しておいて良かった。
テレビ局内は複雑なので初めてなら迷ったかも?
局内の通路やロビーにも死体がごろごろ転がっている。
みんなツメで突き刺された跡や十字の傷跡がある。
ボクは死体のキズの深さから十字光弾の威力を調べた。
十字光弾は頭がい骨をも貫通しているので、
警察の武装が耐え得るかどうかは微妙なカンジだ。
誰もいない場所に1人でいるドクロイド兵を発見。
アイツを倒して調べてみようか?
ボクは透明化を解いた。
「あっ!」
突然現われたボクに驚くドクロイド兵。
女の声?
そういえば体型も女性っぽい。
103
:
戦闘員と証拠隠滅(第54回)
:2022/07/30(土) 22:57:24 ID:rZlZSuVg0
素早い動きで襲い掛かって来るが、運動能力自体は
ピンピンじゃなくても勝てそうなレベル。
十字光弾を撃って来ても、サイキック・バリヤーで
簡単にはね返す事が出来る。
周囲の壁にいくつもの十字型の穴があいた。
警察の防弾チョッキや盾でも大丈夫かも知れない。
しかし、普通のキックやパンチがまったく効かない。
神経がないのか、アンドロイドなのか?
格闘中、偶然ドクロイド兵の額の黒十字に
ボクの衝撃波=サイキック・ウェーブがヒット!
するとドクロイド兵は急に力が抜けたように倒れた。
最大の武器を放つ場所は最大の弱点という事か?
いや、油断は出来ない。
調べようと近付くと、変なニオイがした。
ドクロイド兵が溶けている!
銀仮面の口から不気味な色の液体が流れ出ている。
マスクやスーツを残して中身は完全に消えた。
ドクロイドお得意の証拠隠滅か・・・。
戦闘員など使い捨ての道具に過ぎないんだ。
バックル内の電者が、外にいる警察に
ドクロイドの情報をどんどん送っている筈。
ドクロイド兵が数人走って来る足音が聞こえたので、
ボクは再び姿を消した。
104
:
超級刑事とスケット(第55回)
:2022/07/30(土) 23:10:29 ID:rZlZSuVg0
投稿者:九十九桃美
ドクロイド兵たちがどんどん集まって来た。
溶けたドクロイド兵が死ぬ前に仲間を呼んだのかも?
透明になってるボクには気付いてないので、
天井にくっついてやり過ごす。
あれ?
何か天井の裏からゴソゴソする音が聞こえる。
次の瞬間、通風口の格子が外れて、
真っ黒い何かがドクロイド兵たちの上に落っこちた。
ガッシャ〜〜〜〜ン!
・・・・・万我一刑事だ。
バトルスーツを着ているので重量が重過ぎたんだ。
「こりゃどうも失礼。」
万我一刑事は拳銃を2丁取り出して、
ドクロイド兵たちに乱射した。
バン!バン!バン!
もちろん効かないので、徐々に追い詰められて行く。
防弾性のバトルスーツも十字光弾の連続攻撃で
かなりヤバイ状態になって来た。
ボクはサイコキネシスで万我一刑事の銃口を
1人のドクロイド兵の額に向けさせた。
弾丸が額の黒十字に命中するとやはり倒れる。
「へえ〜、そこがお前らの弱点かぁ♪」
しかし、動きが素早いので射撃の名手である
万我一刑事でもそう簡単には額には当たらない。
ボクはサイコキネシスでドクロイド兵の動きを止め、
的を狙いやすくしたりしてバックアップ。
どんどんドクロイド兵は倒れて溶けて行くが、
次々と援軍がやって来てキリがない。
仕方ないので透明化を解いてボクのほうに
ドクロイド兵を引き付ける事にした。
「ピンク・ザ・ピンチ、登場!」
ちょっとふざけてポージングしてみたりする。
そして大乱戦。
だが、いつまでもバトルが終わらない。
ドクロイド兵は一体何人いるんだ?
万我一刑事もすでに弾がなくなったようだ。
105
:
超級刑事とスケット(第55回)
:2022/07/30(土) 23:11:24 ID:rZlZSuVg0
その時、通路の奥で白い何かが動いた。
白い仮面の女戦士、ナゾナンジャーか!!!
やはり彼女もドクロイドの仲間だったんだ・・・・。
1対1でも強敵なのに、この状態では勝ち目はない。
ナゾナンジャーがこちらに走って来た。
どうする?
どうする???
ズバッ!!!
ナゾナンジャーは光る剣でドクロイド兵の首を斬った。
・・・・・・・・・どういう事だ?
「ピンク・ザ・ピンチ、こいつらは私に任せて。」
「ナゾナンジャー、お前ドクロイドじゃないのか?」
「今日の私の気分は“助っ人”気分なのよ。」
信用していいのかどうか判らないが、助かった。
「そうか・・・・じゃあ、ここは任せるが、
もしボクを騙したらいつか必ずお前を殺すからな。」
「ええ。いつでもその挑戦、受けて立つわ。」
「・・・・・・・ありがとう、ナゾナンジャー。」
ボクは透明化して総理のいるスタジオへ向かった。
待ってろ、ブラック・ザ・キャット!
106
:
子猫ちゃんと遺言(第56回)
:2022/07/30(土) 23:15:01 ID:rZlZSuVg0
投稿者:九十九桃美
結果的にドクロイド兵たちを1箇所に
集中させる事が出来たようだ。
「GO!GO!わいど」のスタジオの前には
たった2人しか見張りがいない。
ボクは見張りを倒し、スタジオ内に入った。
眉墨総理はまだ無事だったが、
死体の山はまた数人増えている。
ボクはスタジオ内のドクロイド兵を
1人ずつ倒し始めた。
ブラック・ザ・キャットが異変に気付いたらしい。
「どうやらピンク・ザ・ピンチが来たようね。」
総理を立たせて首にツメを食い込ませるキャット。
総理は覚悟を決めているのか、意外と冷静だ。
ボクは次々にドクロイド兵を倒して行く。
「ピンク・ザ・ピンチ、すぐに姿を見せないと
眉墨総理を殺すわよ?」
「残念だな、ブラック・ザ・キャット。
ボクは警察でもボディーガードでもない。
総理大臣がどうなろうと知った事じゃない。」
「じゃあ、あなたはここへ何しに来たの?」
「頭のおかしな飼い主に騙されてる、
可哀相な子猫ちゃんを助けに来たのさ。」
「誰の事を言ってるのかしら?」
「・・・・・判ってる筈だ。」
ボクが最後のドクロイド兵を倒し終わると、
観覧客たちは一斉にスタジオから逃げ出した。
だが、カメラマンだけはプロ根性で逃げ出さない。
「さあ子猫ちゃん、クライマックスだ。」
ボクはキャットの正面に立って透明化を解く。
「・・・ピンク・ザ・ピンチ、本当にいいのね?」
キャットの鋭いツメが食い込んで、総理は顔を歪めた。
「多分、今の視聴率は99%だな。
眉墨総理を殺した瞬間にお前を殺す。」
「・・・・・残りの1%は何を観てるのかしら?」
「教育上良くないからママが消したんだろう。」
「面白い冗談ね。・・・あなたにわたしは殺せない。
107
:
子猫ちゃんと遺言(第56回)
:2022/07/30(土) 23:16:37 ID:rZlZSuVg0
わたしの体内には爆弾が埋め込まれてる。
わたしが死んだら爆発してテレビ局は吹っ飛ぶわ。」
「ドクロイドらしい汚いやり方だ。
レーザーロボの時も同じだった。」
「レーザーロボってドクロイドロボ1号の事?
あれはあなたが破壊したんでしょ?」
「バカな事を言わないでくれ。あのロボットは
ドクロイドの遠隔操作で自爆したんだ。」
「・・・・・・・そんな話は初耳だわ。」
「中に乗ってた男がこれは宣伝だと言ってた。
娘を人質に取られてるから仕方なくやったと。」
「人が乗ってた? ドクロイドロボは
自分で考えて動いてたんじゃないの?」
「そう聞かされてたのか? あれは搭乗型の
操縦ロボットだ。人工知能で動いてた訳じゃない。
どうやらドクロイドは身内も平気で騙すらしいな。」
「・・・・どんな男が乗ってたの?」
「録画した映像がある。」
バックル内の電者がすぐにレーザーロボの
映像を探し出して空中に拡大投影する。
「 あ っ ! 」
キャットは思わず声を上げ、総理から手を離した。
床に座り込んだ総理も目の前の映像に見入っている。
これは九十九博士にしか見せてなかったものなので、
総理大臣でも初めて見る映像の筈だ。
「・・・・・わたしの、お父さんだわ・・・。」
お父さん?
という事は、
ブラック・ザ・キャット=黒部ミアは
この映像の男が死ぬ直前に言っていた、
娘の「ウサミ・トモコ」だったのか!
キャットは父が爆死するまでの映像を見た。
映像が終わると、キャットも床にへたり込んだ。
泣いている。
親子でドクロイドに騙されていたんだ。
結果的に父親の遺言を娘に直接伝えた形になり、
ボクは彼との約束を果たした事となった。
108
:
逮捕と大空(第57回)
:2022/07/30(土) 23:19:21 ID:rZlZSuVg0
投稿者:九十九桃美
「総理大臣!」
スタジオに万我一刑事が入って来た。
バトルスーツはボロボロだが大ケガはしてないようだ。
「総理、ご無事で何よりです。
ドクロイドの戦闘員は我々が全滅させました。
“ナゾナンジャー”と名乗るスーパーヒロインにも
かなり助けてもらいましたが。」
ナゾナンジャー、
悪い奴じゃなかったみたいだな・・・・・。
「ご苦労だった、万我一刑事。」
「えっ? 総理がなぜ私の名前を?」
「この番組に出てたじゃないか。あの放送を観て
私もこの番組に出たくなったんだ。」
「そうだったんですか・・・光栄です。」
万我一刑事は眉墨総理と握手した。
「ピンピンも事件解決に協力してくれてありがとな。
良かったら今度、俺とデートでもどうだい?」
「彼女がいる男性の誘いは受けない。それに、
まだ事件は解決してないだろう? 万我一刑事。」
「ああ、そうだな。」
泣き崩れているキャットのほうを見る万我一刑事。
「黒部ミア、キミが誘拐した人たちは
今どこにいるのか教えてもらえないか?」
キャットは顔を上げてボクと万我一刑事を見た。
「・・・・・その全滅した戦闘員がそうよ。」
「何だって!?」
誘拐された人たちがドクロイド兵だった?
じゃあ、VTOスクールの生徒も・・・・。
「全員ドクロイドによって改造手術されていたのよ。」
「・・・・誘拐は戦闘員の確保が目的だった訳か。
詳しい事は警察のほうで訊く事にしよう。
黒部ミア、誘拐などの容疑で逮捕する。」
万我一刑事は手錠を取り出し、キャットに掛けた。
すると眉墨総理がスーツの上着を脱いで、
ボンテージ姿のキャットに羽織らせた。
キャットは意外そうな目で総理を見る。
109
:
逮捕と大空(第57回)
:2022/07/30(土) 23:22:56 ID:rZlZSuVg0
「君はドクロイドに騙されていたんだろう?
罪を憎んで人を憎まず。いい言葉だね。」
「総理・・・・・。」
キャットの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
さすが日本の総理大臣だけあって器が大きい人だ。
ドクロイドの首領とは格が違う。
ボクらがテレビ局の建物から出ると、
避難した人やマスコミや警察などでごった返していた。
眉墨総理大臣の無事な姿を見て拍手が沸き起こる。
手を振って笑顔で応える総理。
ん?
空から何かが舞い降りて来る。
ブルー・ザ・ナイトだ!
その異様な姿に驚く者はほとんどいない。
彼が悪人でない事はみんなが知ってるから。
ボクの傍に着地したナイトはその翼を畳んだ。
「急いで飛んで来たんですが、
どうやらもう終わってしまったようですね。」
「ブルー・ザ・ナイト、来てくれただけで嬉しい。」
ボクはナイトに抱きついてキスしたい気持ちを抑え、
平静を装って彼と握手した。
ボクとナイトが恋人同士なのを世間に知られたくない。
「あ!」
キャットが突然声を上げた。
「体内の爆弾のスイッチが入ったわ!
20秒後に爆発する!! みんな、逃げて!!!」
レーザーロボの時と同じで遠隔操作か?
しかし、たった20秒ではこれだけの人間を
安全な場所に避難させるのは無理だ。
サイキック・バリヤーで総理や万我一刑事だけなら
守れるかも知れないが・・・・・
ブルー・ザ・ナイトを見てピンと来た!
空だ!!!
ボクはキャットの脇を抱えて上空へ飛んだ。
サイキック・パワー全開!
「・・・・・あと10秒よ。」
爆弾の威力が判らないので、
とにかく最速で上昇するしかない。
「わたし、もうすぐお父さんの所に行くのね。」
「・・・助けてやれなくて済まない。」
「どうせ死刑になるんだから同じ事よ。
ありがとうセンパイ・・・・・・・離れて!!」
ボクはキャットを離した。
・・・・・・・・センパイ?
ミアは「桃美」の事をそう呼んでいた。
グオオオオオ
オオオオオオ
ン!!!!!
レーザーロボの爆発より強力だ。
もし地上で爆発していたら、おそらく
テレビ局から半径500メートル以内の建物は
跡形もなく吹っ飛んでいただろう。
サイキック・バリヤーを張る余力もギリギリだった。
さよなら、ブラック・ザ・キャット。
さよなら、黒部ミア。
さよなら、ウサミ・トモコ。
さよなら・・・・・・・・・・後輩。
110
:
優しさとお節介(最終回)
:2022/07/30(土) 23:27:59 ID:rZlZSuVg0
投稿者:九十九桃美
愛機ピンチランナーで九十九研究所に帰還。
もうクタクタ・・・・。
「ツクモ・モモミ。」
ピンク・ザ・ピンチから桃美に戻る変身解除コールだ。
「お疲れ、桃美。よく頑張ったな。」
電者がアタシをいたわってくれる。
美女アンドロイドのGOLDYとSILVAに
また疲労軽減クリーム塗ってもらお
そして数日後。
アタシはクミと2人で山奥の温泉旅館に来たの♪
部屋の庭に専用の露天風呂があって、
アタシとクミは誰にも気を遣う事なく
昼間っからのんび〜りと湯に浸かってるトコ。
「気持ちイイね〜、モミー。」
「うん♪ でもアタシと一緒で良かったの?クミ。
彼氏と一緒に来たほうが良かったんじゃない?」
「・・・・実は、彼とはもう別れちゃったの。」
「え? 上手く行ってたんじゃなかったの?」
「あたし、二股掛けられてたみたいなのね。」
二股・・・・・ありがちだけどキツイよね。
でもクミの元彼の悪口言っても仕方ないし・・・。
クミって優しいからあんまり他人の事を疑わないの。
「・・・ミアちゃん、アクション女優になりたいって
言ってたね。あれは本当だったのかなあ?」
「ミアの話がどこまで本当だったかは
今となっては判らないよね・・・・。」
ある意味、日本一有名な女優になったのかも?
総理大臣やピンク・ザ・ピンチと共演したんだから。
「何かみんなあたしの前から消えて行っちゃうなあ。
リカもミアちゃんも彼も・・・・。」
「アタシは絶対消えないから安心して、クミ。」
「あ、うん。モミーの事は信じてるよ。」
「そう言えば、彩葉ちゃんも突然消えちゃったけど、
今頃どうしてるんだろうね?」
「・・・・モミー、彩葉の事なんだけど、
実はそんなコは最初からいないの。」
111
:
優しさとお節介(最終回)
:2022/07/30(土) 23:32:15 ID:rZlZSuVg0
・・・・・・・・・・・・・いない?
「だってクミ、あんなに楽しそうにしてたのに。」
「・・・ごめん。あたしの独り芝居だったの。
日記サイトにコメントくれる人が少ないから、
ちょっと寂しくて自作自演しちゃったんだ。
でも虚しいからもうやめようと思ってたら
モミーが彩葉に話し掛けて来て、返事したら
だんだんややこしくなって来て突然消えたの。」
「・・・・・・・そうだったんだ・・・。」
「ずっとウソついててごめんね、モミー。」
「ううん、クミは悪気があった訳じゃないんだから
気にしなくてもいいよ。アタシだってクミに
隠してる事あるし・・・・・・・。」
アタシがピンク・ザ・ピンチだとは告白してない。
でもクミはもう気付いてるかも知れないな・・・。
この際だから、教えちゃおうか?
「クミ、実はね・・・・・」
「モミー、言わないで。あたし、モミーにどんな
秘密があったとしても全然構わないから。きっと
あたしの事を思ってそうしてくれてるんだよね?」
「・・・・・・ありがとう、クミ。」
こんないい友達がいて、アタシって幸せ者だネ♪
八代先生にオジサマが再びファイトを申し込んだ。
VTOスクールで深夜に行なわれたこの対決。
お互いにベストコンディションでの戦いだ☆
ジャッジはまたアタシ。
オジサマが勝ったら八代先生とデート
先生が勝った場合の条件は何と、オジサマが今
付き合ってる女性たち全員と別れるという事。
かなり厳しい条件だけど、オジサマは承諾した。
でも結果はオジサマの勝利。
アタシには先生がわざと負けたように見えたけどネ。
デート当日、ボクはピンク・ザ・ピンチになり
透明化して2人の様子をずっとうかがっていた。
悪趣味かも知れないが、気になるものは気になる。
八代先生がスカートを穿いてる姿を初めて見た。
だが、相変わらず万我一刑事の前では笑顔を見せない。
2人は車で海へ向かった。
ボクもピンチランナーで空から追跡する。
電者がいろいろボクに説教してるが関係ない。
海辺の公園で車を降りた2人。
ほとんど人はいないので、なかなかいい感じだ。
2人は海が見渡せるベンチに座った。
1時間経過。
そして2時間経過。
太陽の位置もかなり低くなって来た。
会話も全く盛り上がってない。
万我一刑事が明るく話し掛けても
八代先生があまり喋らないからだ。
ボクはだんだんイライラして来て、
ある作戦を思い付いた。
さっきからボクの周りを飛んでるハチがいる。
ボクはハチをサイコキネシスで
2人のほうへ向かわせた。
ハチに驚いて立ち上がる2人。
ボクはさらに、2人が重なって倒れるように
上手く2人の足を滑らせた。
ハチは遠くへ逃がす。
夕方の公園で芝生の上に重なっている男女。
万我一刑事が下で八代先生が上。
慌てて起き上がろうとする八代先生を
万我一刑事が両腕で引き止めた。
「しばらくこうしていたいな、先生。」
「・・・・しばらくって、どれくらい?」
「そうだな、キスするまでっていうのはどうだい?」
「私とキスしたいんですか?」
「したいからデートに誘ったんだ。まだ早いか。」
「・・・・・・そうでもないわ。」
八代先生は自分から万我一刑事に唇を重ねた。
さて、ボクはそろそろ帰るとしようか。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板