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第1審判決

58いのげ:2006/04/05(水) 03:55:53
28日、東京地裁が言い渡した園児割りばし死亡事故の判決要旨は次の通り。

 【前提事実】

 検察側が主張する(1)4歳児の杉野隼三ちゃんが割りばしをくわえたまま転倒し、のどにけがをした(2)その後、頻繁に嘔吐(おうと)を繰り返した(3)意識レベルが低下してぐったりした状態だった−の事実をほぼ認定できる。

 【被告の過失】

 担当医の根本英樹被告は転倒で割りばしがのどに刺さったことを聞けば、体勢などによっては割りばしの先が頭蓋(ずがい)内に届いたことも想定できた。頭蓋内損傷は患者の死に直結する極めて危険なものだが、のどの単なる裂傷にすぎないと軽信し、傷口に消毒薬を塗り、抗生剤を処方しただけで帰宅させた。

 なおカルテには「髄膜炎の可能性」などの記載があるが、裁判所はこれらの記載は、翌朝の急逝に動転し、診察で意識状態を正しく把握せずに軽症と診断して帰宅させた点の落ち度を自覚して取り繕おうとした被告が書き加えたと認める。

 頭蓋内損傷の可能性を否定するため、付き添いの母親に間診し、転倒の瞬間を見ていなかったときには、本人にも問診を試みるべきだ。割りばし全部が発見されていないことなどを聞き出すことができた可能性は高い。

 次の段階には、2つの選択肢がある。1つは専門分野の範囲内で情報を集める。具体的には、ファイバースコープで観察し傷の深さや方向を調べる。もう1つは直ちに頭部のCT撮影を行う。脳神経外科の当直医に相談し、実施してもらうのが相当だ。

 それから脳神経外科医に引き継ぎ、割りばし除去などの治療を講ずる。直ちに開頭手術を行うことも考えられる。

 いずれを選択しても最終的には、のどを貫通した割りばしが頭蓋内にまで達し、小脳にも刺さっている事故の全貌(ぜんぼう)が分かるものと思われる。

 最後に、結果回避可能性と因果関係について判断する。

 割りばし片で挫滅した左頚静脈を再建することが死を回避する唯一の措置だったが、直ちに脳神経外科医に引き継いだとしても、静脈再建は技術的、時間的に極めて困難だったと認められる。救命可能性はもちろん延命可能性も極めて低かったとの合理的疑いが残る。

 【結論】

 被告には、予見義務や結果回避義務を怠った過失があるが、過失と死亡との因果関係には合理的な疑いが残るので、業務上過失致死事件について無罪である。

 【付言】

 被告は「患者の病態を慎重に観察し把握する」という医師として基本的、初歩的な作業を怠ったことへの批判に謙虚に耳を傾けるべきだ。小さな体で生命が危険な状態にあることを訴え続けたのに、被告は事前情報などを重視してサインを見落とし、救命に向けた真摯(しんし)な治療を受けさせる機会を奪う結果となった。

 被告が他科の専門医に相談しようと思わなかったことに、他科との垣根の高さが背景にあるならば、これが解消されなければならないことは論をまたない。

 診療科目の豊富さだけでなく、他科との連携で相乗的な専門的医療行為を享受できるところに総合病院の存在意義があり、杏林大病院はわが国屈指の人的、物的設備を誇る総合病院としてその要請は高い。本件は、医療従事者にさまざまな課題や教訓を与えている。

 本件で隼三ちゃんが遺(のこ)したものは「医師には眼前の患者が発するサインを見逃さないことをはじめとして、真実の病態を発見する上で必要な情報の取得に努め、専門性にとらわれることなく、患者に適切な治療を受ける機会を提供することが求められている」というごく基本的なことだ。

 本件が語るところを直視し、誰もが二度と悲惨な体験をすることがない糧とすることが隼三ちゃんの供養となり、鎮魂となるものと考える。


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