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ネット、メディア規制関連情報スレ11

973。・゜*ヽ(´ー`)/。・゜*:2011/08/08(月) 11:13:31 ID:8JVofjak
■米国「人身売買被害者保護法」がたどった変化

それを強力に後押ししたのは、議定書採択より一足早く「人身売買被害者保護法」を成立させた米国の意向だ。そこには、人身売買をめぐる議論を、国際的な経済格差の解消や、移民や労働者の権利擁護からできるだけ切り離し、国際犯罪に対する警察・司法当局の断固たる措置が求められている、というかたちに誘導しようとする米国政府の意図がみえる。

現に、「人身売買」が米国で問題とされるとき、立場の弱い移民労働者に対する搾取といった「労働者の権利」「移民の権利」問題への取り組みは後回しにされ、犯罪行為である売買春の取り締まりばかりに力点が置かれる。(この点は、外国人研修生制度のような外国人労働者の搾取を可能にしている法制度より先に、漫画やアニメを含んだポルノやロリコンメディアを槍玉に挙げる、日本の一部「反人身売買」団体にも共通している。)

はじめ米国の「人身売買被害者保護法」が想定していたのは、過去の「強制労働・強制移住」に対する取り組みがそうであったように、アジアやアフリカや中南米における強制労働や強制売春の問題や、米国に連れてこられて強制労働・強制売春に従事させられる外国人の権利侵害だった。しかし「保護法」が成立すると、外国人の強制売春については売春をさせられている人が「被害者」として扱われるような法制度が(問題はあるけれど一応)できたにも関わらず、他者に売春を強制させられている米国市民はいまだに「売春者」として犯罪者扱いされているのは不当ではないか、という議論が起きた。

実際のところ、「保護法」の恩恵を受けるためには厳しい要件があり(たとえば、加害者への法的追求に被害者が全面協力することが要求されているが、加害者は「協力すれば被害者本人や本国に残る家族に危害を加える」と脅すことがあり、司法に全面協力するのは難しい)、外国人の被害者がそれほどきちんと保護されているわけではない。また、「保護法」によってもたらされる恩恵の大部分(在留資格、公的医療、生活保護)は、米国市民なら「保護法」以前から受け取る資格があるものばかりだ。

そもそも「保護法」はこれらの公的サービスに(本来は受給資格がない)外国人の人身売買被害者がアクセスできるようにするための法律であり、外国人だからといって米国市民には認められない「在米特権」のようなものが与えられるわけではない。

しかし、形だけとはいえ売春に従事させられている外国人のことを「被害者」として扱う法制度ができたにも関わらず、同じように売春に従事させられている米国市民が「被害者」ではなく「犯罪者」として扱われている、という指摘は、基本的に正しかった。ここで「基本的に」と限定しているのは、「保護法」成立とは関係なく、外国人の被害者だって「犯罪者」しかも「犯罪をおかした不法滞在者」として扱われることのほうが多いという点で、「外国人被害者だけ優遇されている」という認識は間違っているからだが、国内の被害者も「被害者」として扱われるべきだという点においては間違っていない。

そして二〇〇三年および二〇〇八年に「保護法」が延長されるたびに、外国人被害者救済から、国内の、しかも未成年の「人身売買」被害に(正しくは、その対策と称する重罰化と取り締まり強化に)その重点が移されている(この傾向は、現在審議中の二〇一一年延長法案によってさらに加速している)。

また同時に、これは一九九四年にはじめて成立し、その後なんども延長されている「女性への暴力法」にも共通する話なのだが、はじめはごく小さな範囲で被害者支援と司法的対策を盛り込んだ「保護法」は、その後被害者支援に使われる予算を増やす方向ではなく、予防・責任者追求という名のもとに、厳罰化や取り締まり強化といったかたちでより警察・司法の機能を強化する方向に重点が移動している。人身売買の予防や被害者の救済と社会復帰ではなく、どれだけ多くの犯罪者を刑務所に送り込んだかということが施策の成功を測るバロメータになってしまっているのだ。




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